JP5887116B2 - 特定のニュートン粘性係数を有するアルギン酸及び/又はその塩を含有するインクジェット吐出用インク、該インクジェット吐出用インクを用いたハイドロゲルの形成方法、並びに、該インクジェット吐出用インクにより形成されたハイドロゲル - Google Patents
特定のニュートン粘性係数を有するアルギン酸及び/又はその塩を含有するインクジェット吐出用インク、該インクジェット吐出用インクを用いたハイドロゲルの形成方法、並びに、該インクジェット吐出用インクにより形成されたハイドロゲル Download PDFInfo
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Description
医療分野では、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴のサイズがマイクロメータオーダであることから、液滴吐出ヘッドから吐出される液体(液滴)をゲル化させ、マイクロビーズを作成したものが、ドラッグデリバリーシステム(DDS)などの開発に用いられている。また、再生医療の分野では、細胞を入れた液体を液滴吐出ヘッドから吐出し、ゲル化させて、三次元構造を作る開発が行われている。
また下記特許文献2では、互いに接触するとゲル化する2種類の液体を、液滴吐出ヘッドの異なるノズルから液滴として吐出し、前記2種類の液滴を同じ位置に着弾させて前記2種類の液体をゲル化し、ゲルを製造するようにしている。
これら特許文献は、ゲル化する液体としてアルギン酸塩水溶液を記載しているが、アルギン酸及び/又はその塩を含む液体をインクとして吐出する場合、吐出性(例えば、吐出安定性及び連続吐出性など)が悪く、生産性が悪かった。
そこで、ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とハイブリッドさせるアルギン酸及び/又はその塩として、特定のニュートン粘性係数を有するアルギン酸及び/又はその塩を使用することで、良好なゲル形成性と良好なインクの吐出性(例えば、吐出安定性及び連続吐出性など)とを両立することを可能にした。
<1>
(1)ニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩、
(2)水、並びに
(3)ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するインクジェット吐出用インク。
ここで前記ニュートン粘性係数は、せん断速度10(1/sec)での粘度ηAが20mPa・sとなるように前記アルギン酸及び/又はその塩に水を加えて、前記アルギン酸及び/又はその塩の水溶液を作成し、該アルギン酸及び/又はその塩の水溶液の、せん断速度1000(1/sec)での粘度ηBを測定し、粘度ηBに対する粘度ηA(20mPa・s)の比(ηA/ηB)を算出した値である。
<2>
インク全量に対する前記アルギン酸及び/又はその塩の濃度が、0.2質量%以上1.0質量%以下である、<1>に記載のインクジェット吐出用インク。
<3>
前記アルギン酸及び/又はその塩に対する、前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物のインク中の含有量比が、質量比で1.0以上である、<1>又は<2>に記載のインクジェット吐出用インク。
<4>
粘度が1cP以上10cP以下である、<1>〜<3>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
<5>
水の含有量が90質量%以上である、<1>〜<4>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
<6>
更に、グリセリンを含有し、水及びグリセリンの含有量の合計が90質量%以上である、<1>〜<5>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
<7>
前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、<1>〜<6>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
<8>
前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が、ゼラチン及びコラーゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、<1>〜<7>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
<9>
前記アルギン酸及び/又はその塩の前記ニュートン粘性係数が、1.02以上1.04以下である、<1>〜<8>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
<10>
<1>〜<9>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インクをインクジェット法で吐出し、アルカリ土類金属塩水溶液に打滴することを含む、ハイドロゲルの形成方法。
<11>
<1>〜<9>のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インクにより形成されたハイドロゲル。
本発明は上記<1>〜<11>にかかるものであるが、その他の事項(例えば、下記〔1〕〜〔11〕)についても参考のため記載している。
(1)ニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩、
(2)水、並びに
(3)ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するインク。
ここで前記ニュートン粘性係数は、せん断速度10(1/sec)での粘度ηAが20mPa・sとなるように前記アルギン酸及び/又はその塩に水を加えて、前記アルギン酸及び/又はその塩の水溶液を作成し、該アルギン酸及び/又はその塩の水溶液の、せん断速度1000(1/sec)での粘度ηBを測定し、粘度ηBに対する粘度ηA(20mPa・s)の比(ηA/ηB)を算出した値である。
〔2〕
インク全量に対する前記アルギン酸及び/又はその塩の濃度が、0.2質量%以上1.0質量%以下である、上記〔1〕に記載のインク。
〔3〕
前記アルギン酸及び/又はその塩に対する、前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物のインク中の含有量比が、質量比で1.0以上である、上記〔1〕又は〔2〕に記載のインク。
〔4〕
粘度が1cP以上10cP以下である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のインク。
〔5〕
水の含有量が90質量%以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のインク。
〔6〕
更に、グリセリンを含有し、水及びグリセリンの含有量の合計が90質量%以上である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のインク。
〔7〕
前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のインク。
〔8〕
前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が、ゼラチン及びコラーゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のインク。
〔9〕
前記アルギン酸及び/又はその塩の前記ニュートン粘性係数が、1.02以上1.04以下である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のインク。
〔10〕
上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のインクをインクジェット法で吐出し、アルカリ土類金属塩水溶液に打滴することを含む、ハイドロゲルの形成方法。
〔11〕
上記〔10〕に記載のハイドロゲルの形成方法により形成されたハイドロゲル。
また本発明によれば、該インクを用いたハイドロゲルの形成方法、並びに、該ハイドロゲルの形成方法により形成されたハイドロゲルが提供される。
(2)水、並びに
(3)ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物
を含有するインクに関する。
ここで前記ニュートン粘性係数は、せん断速度10(1/sec)での粘度ηAが20mPa・sとなるように前記アルギン酸及び/又はその塩に水を加えて、前記アルギン酸及び/又はその塩の水溶液を作成し、該アルギン酸及び/又はその塩の水溶液の、せん断速度1000(1/sec)での粘度ηBを測定し、粘度ηBに対する粘度ηA(20mPa・s)の比(ηA/ηB)を算出した値である。
上述のニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩は、アルギン酸の分子内又は分子間での相互作用が弱いため、インクジェット法などによる吐出に適用した際に大きなせん断応力が掛けられた場合でも高分子化しにくいという性質を有する。本発明のインクは、このような特定の数値範囲のニュートン粘性係数を有するアルギン酸及び/又はその塩と、ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含有するが、インク中を安定的に圧力が伝わり、吐出性が良好となるため、良好なゲル形成性と良好なインクの吐出性とが同時に達成されるものと考えられる。
本発明のインクは、ハイドロゲル形成用インクとして好ましく使用できる。
以下に、本発明のインクに使用する材料について説明する。
本発明のインクは、ニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩を含有していることを特徴としている。ここで、ニュートン粘性係数とは、上述のようにして算出したηA/ηBの値である。
ニュートン粘性係数は、アルギン酸及び/又はその塩の固有の値である。ニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩は、水溶液等にした際に、ニュートン流動を示す傾向が高い。ニュートン流動とはニュートンの粘性法則に従った流動をいい、具体的には、流れのせん断応力(接線応力)と流れの速度勾配(ずり速度、せん断速度)とが比例した粘性の性質を持つ流体の流動を意味する。アルギン酸及び/又はその塩が、上記特定の数値範囲のニュートン粘性係数を有することで、良好なゲル形成性と良好なインクの吐出性(例えば、吐出安定性及び連続吐出性など)に寄与すると考えられる。
なおアルギン酸及び/又はその塩の粘度は、Anton Paar社製 PhysicaMCR302等により測定することができる。
ニュートン粘性係数(ηA/ηB)は、吐出性の理由から、0.93以上1.07以下であることが好ましく、0.95以上1.05以下であることがより好ましく、1.02以上1.04以下であることが最も好ましい。
これら上述のニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩は、1種単独で使用しても良いが、2種以上を組み合わせて使用することも好ましい形態である。
このようなアルギン酸及び/又はその塩の本発明のインクにおける濃度(すなわち、インク全量に対する上記アルギン酸及び/又はその塩の濃度)は、0.2質量%以上1.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上0.7質量%以下が更に好ましい。インク中における上記アルギン酸及び/又はその塩の濃度をこのような範囲にすることにより、良好なゲル形成性と良好なインクの吐出性とがより好適な水準で両立できる。
本発明のインクは、水を含有している。本発明のインク中の水とは、例えば上記市販品のアルギン酸及び/又はその塩に予め含まれる水のみならず、別途インク中に添加した水をも包含するものである。
本発明のインクにおける水の含有量は90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。また本発明のインクにおける水の含有量は好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99.0質量%以下である。
本発明のインクは、ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有している。ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンは、細胞接着性に優れるという性質を有している。
ペプチド結合を有する化合物としては、ペプチド結合(アミド結合のうちアミノ酸同士が脱水縮合して形成される結合)を有する化合物である限り特に制限されないが、タンパク質、タンパク質を主成分とする混合物等が挙げられ、具体的にはゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリリン等が好ましく挙げられる。このうち、ゲル構造化の容易性の観点から、ゼラチン、コラーゲンがより好ましく、ゼラチンが特に好ましい。
グリコサミノグリカンとしては、長鎖の通常枝分かれがみられない多糖であり、従来公知のものが使用できる。グリコサミノグリカンは塩の状態であってもよく、例えばナトリウム塩が好ましく挙げられる。グリコサミノグリカンとして、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン等が好ましく挙げられ、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸がより好ましい。
本発明のインクに使用されるペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物としては、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましく、ゼラチン及びコラーゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることがより好ましい。
また本発明のインクにおいて、上述のアルギン酸及び/又はその塩に対する、ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物のインク中の含有量比が、質量比で1.0以上であることが細胞接着性の理由から好ましい。前記含有量比は、質量比で2.0以上であることがより好ましく、質量比で3.0以上であることが特に好ましい。また前記含有量比は、質量比で10.0以下であることが好ましい。
本発明のインクは、上述の各成分の他に、必要に応じて公知の乾燥防止剤、粘度調製剤、防腐剤、界面活性剤等を添加剤として添加することができる。
本発明のインクは、更に、グリセリンを含有することが好ましい。グリセリンを含有することで、インクの粘度を好適な範囲に調整することが可能となるだけでなく、水の蒸発を防止することができるからである。本発明のインクは、グリセリンを含有すると共に、水及びグリセリンの含有量の合計が90質量%以上であることが連続吐出性を良好にすることから好ましい。水及びグリセリンの含有量の合計は、93質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。また本発明のインクにおける水及びグリセリンの含有量の合計は好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99.0質量%以下である。
本発明のインクがグリセリンを含有する場合、グリセリンの含有量は5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。
また、インクの表面張力は、インクジェット吐出時の安定性、インクの保存安定性の観点から、30〜60mN/mが好ましく、30〜50mN/mがより好ましく、30〜40mN/mが更に好ましい。
また本発明のインクは、アルギン酸及び/又はその塩として、上述のニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩のみを含有することが好ましい。すなわち、本発明のインクは、上述のニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下の範囲外である(すなわち、ニュートン流動を示す傾向が低い)アルギン酸及び/又はその塩を含有しないことが好ましい。インク中に非ニュートン流体のアルギン酸及び/又はその塩を含有しないことが、良好なインクの吐出性を得る観点から好ましい。
本発明は、上記本発明のインクをインクジェット法で吐出し、アルカリ土類金属塩水溶液に打滴することを含む、ハイドロゲルの形成方法にも関する。
このような方法により、アルギン酸及び/又はその塩を含有する本発明のインクと、アルカリ土類金属塩水溶液とが混合されることでハイドロゲルが形成される。
インクキャビティ内の圧力を電気パルス信号により増大させる方式としては、インクキャビティの一部を圧電素子で形成し、この圧電素子に電気パルス信号を与えて圧電素子を変形させることによりインクキャビティを変形させ、インクキャビティの容積を減少させてインクキャビティ内の圧力を瞬時に高める方式や、インクキャビティ内のインクを電気パルス信号で加熱してインクの一部を気化させ、インクの蒸気によってインクキャビティ内の圧力を瞬時に高める方式等があるが、本願発明では、これらのいずれの方式をも採用することができる。なお、インクキャビティはインクタンクに連通しており、インクの噴射によりインクキャビティ内のインクが減少すると、インクタンクからインクが補充される。インクジェット法によれば、液滴の大きさは電気パルス信号により制御されるので、均一な大きさの液滴が噴射される。
すなわち、本発明のハイドロゲルの形成方法としては、特開2008−126459号公報に記載のゲルの製造方法、及び、特開2010−125403号公報に記載のゲルの製造方法がそれぞれ適用可能であり、好ましい範囲も同様である。
本発明は、本発明のハイドロゲルの形成方法により形成されたハイドロゲルにも関する。
本発明の方法によれば、任意の一次元、二次元又は三次元構造を有するハイドロゲルを形成することができる。ここで、一次元構造は、直線状、二次元構造は、シート状又は曲線状、三次元構造は立体状の構造を意味する。
本発明のハイドロゲルは、細胞接着性に優れたペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するため、例えば再生医療分野における足場材料(Scaffold)としての利用が期待される。
表1に示す処方の材料を用いて、各実施例及び比較例で用いるインクを調製した。調製したインクについて、以下に記載する方法で吐出安定性、連続吐出性及びゲル形成性を評価した。評価結果を表1に示した。また調製したインクの粘度の測定を、Anton Paar社製 PhysicaMCR302により行い、その結果も表1に示した(インクの粘度の単位はcP)。
なお、表1に示した各材料は以下のとおりである。表中の数値はインク全量における各材料の質量%を意味する。なお表1中、材料の質量%が記載されていない場合、(すなわち空欄となっている場合)は、当該材料がインク中に含有されないことを表す。更に、アルギン酸ナトリウムに対する、ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンのインク中の含有量比(質量比)も表1中に合わせて示した。
アルギン酸ナトリウム ULV−L3G ((株)キミカ製)
アルギン酸ナトリウム IL−2 ((株)キミカ製)
アルギン酸ナトリウム80〜120 (和光純薬工業(株)製)
アルギン酸ナトリウム300〜400 (和光純薬工業(株)製)
ゼラチンAP ((株)ニッピ製)
マイクロヒアルロン酸FCH (キッコーマンバイオケミファ(株)製)
コンドロイチン硫酸Cナトリウム (和光純薬工業(株)製)
グリセリン (大洋製薬(株)製)
せん断速度10(1/sec)での粘度ηAが20mPa・sとなるようにアルギン酸ナトリウムに水を加えて、アルギン酸ナトリウムの水溶液を作成した。このアルギン酸ナトリウムの水溶液の、せん断速度1000(1/sec)での粘度ηBを測定し、粘度ηBに対する粘度ηA(ηAは20mPa・s)の比(すなわち、ηA/ηB)をニュートン粘性係数として算出した。
なおアルギン酸ナトリウムの水溶液の粘度の測定は、Anton Paar社製 PhysicaMCR302により行った。
ニュートン粘性係数(ηA/ηB)が0.90以上1.10以下の範囲となるアルギン酸ナトリウムを、ニュートン流動を示すアルギン酸ナトリウムとした。すなわち、アルギン酸ナトリウムULV−L3及びULV−L3G(共に(株)キミカ製)がニュートン流動を示すアルギン酸ナトリウムであった。
以下の方法に従って吐出安定性について評価した。
具体的には、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、調製したインクを充填後パージし、10ノズルを観察し正常吐出ノズルの割合を計算した。その後、再びパージし、同様に10ノズルを観察し正常吐出ノズルの割合を計算する評価を2回繰り返し、計3回の平均を求め、評価した。
正常吐出ノズルの割合の平均が95%以上の場合を「AA」、80%以上95%未満の場合を「A」、70%以上80%未満の場合を「B」、50%以上70%未満の場合を「C」、50%未満の場合を「D」と評価した。B以上であることが実用上好ましい。
以下の方法に従って連続吐出性について評価した。
具体的には、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、調製したインクを充填した。10ノズルを使用して4kHzの周波数で各インクの吐出を行い、20分後に10ノズル全てで異常なく吐出がされている場合を「A」、1〜2ノズルにおいて不吐出又は飛翔曲がりが生じている場合を「B」、3〜5ノズルにおいて不吐出又は飛翔曲がりが生じている場合を「C」、6ノズル以上で不吐出又は飛翔曲がりが生じている場合、又は、すべてのノズルで吐出開始自体が不可能な場合を「D」と評価した。B以上であることが実用上好ましい。
CaCl210質量%水溶液をシャーレに充填した。調製したインクを充填した富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、28℃の温度で10plの液滴の吐出量で吐出を行い、シャーレ上にインクを吐出して、前記CaCl210質量%水溶液に該インクを打滴し、1mm(幅)×7mm(長さ)のハイドロゲルのラインを形成した。
ハイドロゲルのライン幅の変動割合((最大幅−最小幅)/最小幅(%))を測定し、ゲル形成性を評価した。
ライン幅の変動について、5%以下の変動割合の場合を「AA」、5%より大きく10%以下の変動割合の場合を「A」、10%より大きく20%以下の変動割合の場合を「B」、評価不能な場合(すなわち、ハイドロゲルが形成出来なかった場合)を「C」と評価した。A以上であることが実用上好ましい。
一方で、ニュートン粘性係数が1.10より大きいアルギン酸ナトリウムを使用した比較例1〜4のインクは、ゲル形成性は良好であったものの、吐出安定性及び連続吐出性に問題があった。また比較例1のアルギン酸ナトリウムの濃度を薄めて使用した比較例5のインクは、吐出性が僅かに改善されたものの、ハイドロゲルが形成出来なかった。
以上より、ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するインクを使用してハイドロゲルを形成する場合に、アルギン酸及び/又はその塩のうち、上記特定の数値範囲のニュートン粘性係数を有するアルギン酸及び/又はその塩を使用することで、良好なゲル形成性を有する濃度でアルギン酸及び/又はその塩を含むインクであっても、良好なインクの吐出性(例えば、吐出安定性及び連続吐出性など)が同時に達成された。
このような本発明のインクを用いて形成されたハイドロゲルは、細胞接着性に優れたペプチド結合を有する化合物又はグリコサミノグリカンを少なくとも含有するため、再生医療分野において利用できるものと考えられる。
Claims (11)
- (1)ニュートン粘性係数が0.90以上1.10以下である、アルギン酸及び/又はその塩、
(2)水、並びに
(3)ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するインクジェット吐出用インク。
ここで前記ニュートン粘性係数は、せん断速度10(1/sec)での粘度ηAが20mPa・sとなるように前記アルギン酸及び/又はその塩に水を加えて、前記アルギン酸及び/又はその塩の水溶液を作成し、該アルギン酸及び/又はその塩の水溶液の、せん断速度1000(1/sec)での粘度ηBを測定し、粘度ηBに対する粘度ηA(20mPa・s)の比(ηA/ηB)を算出した値である。 - インク全量に対する前記アルギン酸及び/又はその塩の濃度が、0.2質量%以上1.0質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット吐出用インク。
- 前記アルギン酸及び/又はその塩に対する、前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物のインク中の含有量比が、質量比で1.0以上である、請求項1又は2に記載のインクジェット吐出用インク。
- 粘度が1cP以上10cP以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
- 水の含有量が90質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
- 更に、グリセリンを含有し、水及びグリセリンの含有量の合計が90質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
- 前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
- 前記ペプチド結合を有する化合物及びグリコサミノグリカンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が、ゼラチン及びコラーゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
- 前記アルギン酸及び/又はその塩の前記ニュートン粘性係数が、1.02以上1.04以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インク。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インクをインクジェット法で吐出し、アルカリ土類金属塩水溶液に打滴することを含む、ハイドロゲルの形成方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット吐出用インクにより形成されたハイドロゲル。
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