JP5883376B2 - 摩擦撹拌表面処理方法、及びその方法を含む履帯用シューの製造方法 - Google Patents

摩擦撹拌表面処理方法、及びその方法を含む履帯用シューの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、被処理材に摩擦熱を与えて表面を加工処理する摩擦撹拌表面処理方法、及びその方法を含む履帯用シューの製造方法に関する。
従来より、建設機械に使用される履帯用シュー等の摺動部材は、摺動することによって表面が摩耗する等の影響を受けるので、摺動部材を長持ちさせるために摺動部材の表面には各種の加工処理が行われている。
このような加工処理の1つとして、例えば被処理材に鋼材が用いられている場合には、被処理材をオーステナイト状態になるまで加熱した後、急冷することでマルテンサイト状態にして硬度を得る焼入れ方法が知られているが、被処理材の全体を加熱する焼入れ方法では被処理材の局所的な急冷が難しい等の問題があり、被処理材の表面を上手く改質できない等の問題があった。
そこで、特許文献1に開示されている表面硬化処理方法のように円筒状のツールと呼ばれる回転工具を用い、ツールと被処理材との間で局所的に発生した摩擦熱を利用して周囲の温度上昇を抑えることにより、被処理材の表面を改質する摩擦撹拌表面処理方法が従来技術の1つとして提案されている。
具体的には、この従来技術の摩擦撹拌表面処理方法は、ツールを被処理材に押し当てた状態で回転させながら移動させると、被処理材の表面のうちツールが通過した部分が摩擦熱によって加熱され、塑性流動が引き起こされるので、被処理材の表面の金属組織が微細化されると共に、被処理材の表面に存在する欠陥が減少する。これにより、被処理材の表面の硬度が高められるので、被処理材の摺動性能を向上させることができる。
ここで、従来技術の摩擦撹拌表面処理方法によって形成される被処理材の表面における硬化領域の上面側の形状、及び上面に対する垂直断面の形状は、被処理材の特性、回転工具と被処理材との接触円の直径、ツールを被処理材の表面から内部へ押し込んで挿入する挿入深さ、ツールの移動軌跡、ツールの回転速度、及びツールの移動速度等の回転条件の影響を受けるが、被処理材の表面全体において均一になることが好ましい。
特開2010−229473号公報
従来技術の摩擦撹拌表面処理方法では、被処理材の表面における被加工面の面積がツールを1回だけ推進させたときの移動軌跡の面積より大きい場合には、被処理材の被加工面に対してツールの移動軌跡が同方向に一部重複又は隣接するようにツールを複数回に渡って推進させる加工処理(以下、便宜的にマルチパス処理と呼ぶ)が行われる。このとき、ツールは既に形成された硬化領域の近傍を通過することになるので、この硬化領域が伝播した熱によって再び加熱されて軟化し、被処理材の被加工面において所望の硬化領域と硬度が得られないことが問題になっている。
図18は従来技術の摩擦撹拌表面処理方法で加工処理された被処理材の硬化領域と硬度との関係を示す図である。
図18に示すように、従来技術の摩擦撹拌表面処理方法によって被処理材50の被加工面51に対してマルチパス処理が行われたことにより、被処理材50の被加工面51の硬度は高くなっているが、被処理材50の被加工面51のうちツールの移動軌跡が重複又は隣接した部分52付近の硬度は、なだらかに減少していることが分かる。
このようなマルチパス処理によって形成された被処理材50の硬化領域の軟化を抑制する方法として、マルチパス処理において隣接するツールの移動軌跡の間隔を広げることにより、既に形成された硬化領域に伝播する熱を緩和させることも考えられる。しかしながら、熱の伝播はツールの回転条件に依存するので、この回転条件に合わせたツールの通過経路を確保する作業が煩雑であると共に、被処理材50の被加工面51に対してツールを同方向に推進させる回数が減少するので、得られる硬化領域自体が小さくなることが懸念されている。
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、被処理材を効率良く加工処理することができ、被処理材の表面において十分な硬度を得ることができる摩擦撹拌表面処理方法、及びその方法を含む履帯用シューの製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の摩擦撹拌表面処理方法は、ツールを被処理材に押し当てた状態で回転させながら移動させ、この被処理材に摩擦熱を与えて表面を加工処理する摩擦撹拌表面処理方法において、前記被処理材の表面のうち前記ツールによる加工処理が行われる被加工面に沿って、前記ツールを前記被加工面の表面から内部へ押し込んで挿入する挿入深さ未満に溝部を設定するとともに、前記被処理材の表面に対して前記ツールの移動軌跡が同方向に一部重複又は隣接するように前記ツールを複数回に渡って推進させる加工処理が行われたときに、前記被処理材の表面のうち前記ツールの移動軌跡が重複又は隣接した部分付近に形成される硬化領域の深さ以上に前記溝部を設定した熱絶縁部を形成する熱絶縁部形成工程と、前記ツールを前記被加工面に押し当てた状態で回転させながら前記熱絶縁部形成工程で形成された前記熱絶縁部に対して並進させ、前記被加工面のうち前記熱絶縁部を挟む両側の面を加工処理する加工処理工程とを含むことを特徴としている。
このように構成した本発明は、加工処理工程においてツールを被処理材の被加工面に押し当てた状態で回転させながら熱絶縁部に対して並進させることにより、ツールが被加工面のうち熱絶縁部を挟む両側の一方の面を通過すると、この面がツールとの間で発生する摩擦熱によって局所的に加熱されて硬化領域となる。そして、ツールが被加工面のうち熱絶縁部を挟む両側の他方の面を通過しても、この他方の面とツールとの間で発生した摩擦熱は熱絶縁部によって既に硬化領域となった面側へ伝播することが妨げられるので、被加工面の硬化領域が再び加熱されて軟化することを抑制することができる。これにより、被処理材の表面において高い硬度を確保することができる。
また、熱絶縁部はツールの回転条件に依存することなく熱の伝播を遮断するので、熱絶縁部形成工程における熱絶縁部の形成にツールの回転条件を考慮する必要がなく、熱絶縁部形成工程を容易に実施することができる。さらに、加工処理工程では、ツールを被処理材の被加工面に押し当てて熱絶縁部に沿って容易に推し進めることができるので、被処理材の加工処理を迅速に行うことができる。このように、被処理材を効率良く加工処理することができ、被処理材の表面において十分な硬度を得ることができる。
また、熱絶縁部は溝部を有することから、この溝部によって被処理材の被加工面の表面積が大きくなるので、加工処理工程においてツールとの間で発生した摩擦熱で加熱された被処理材を表面側からだけでなく側面側からも冷却することができる。これにより、被処理材の冷却効率を向上させることができる。
また、本発明は、加工処理工程においてツールを被加工面に対して溝部の深さよりも深く押し込んで加工処理が行われることにより、得られる被処理材の硬化領域を内部へ拡大させることができるので、被処理材の表面だけでなく内部が損傷することを効果的に防止することができる。しかも、熱絶縁部形成工程において溝部の深さはツールの挿入深さに対して熱絶縁部として機能するのに十分な深さに設定されているので、加工処理工程においてツールを被加工面に対して溝部の深さより深く押し込んでも、被加工面の硬化領域が軟化することを十分に抑制することができる。
また、本発明に係る履帯用シューの製造方法は、前記発明における摩擦撹拌表面処理方法を含むことを特徴としている。このように構成すると、履帯用シューは製造過程において既に熱絶縁部である溝部が形成されるので、当該摩擦撹拌表面処理方法の熱絶縁部形成工程を実施する手間を省くことができ、都合が良い。
本発明の摩擦撹拌表面処理方法、及びその方法を含む履帯用シューの製造方法によれば、被処理材の表面に熱絶縁部を導入し、ツールを被加工面に押し当てた状態で回転させながら熱絶縁部に対して並進させ、被加工面のうち熱絶縁部を挟む両側の面を加工処理することにより、被処理材の加工処理が容易になると共に、被加工面のうち熱絶縁部を挟む両側の一方の面において発生する熱が他方の面に及ぼす影響を緩和することができる。これにより、被処理材を効率良く加工処理することができ、被処理材の表面において十分な硬度を得ることができる。
本発明に係る摩擦撹拌表面処理方法の第1実施形態が適用される建設機械の一例として挙げた油圧ショベルの構成を示す図である。 図1に示す走行体の構成を説明する図である。 図2に示すアイドラの構成を説明する図である。 図2に示す履帯の構成を説明する図である。 図2に示すガイドローラの構成を説明する図である。 図1に示すフロント作業機のバケットの構成を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法の熱絶縁部形成工程を説明する斜視図である。 図7に示す矢視A図である。 本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法の加工処理工程を説明する斜視図である。 図9に示す矢視B図である。 図10に示すツールと第1の突出部の拡大図である。 図9に示す矢視E図である。 図9に示すC−C線に沿う断面図である。 図9に示すD−D線に沿う断面図である。 本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法で加工処理された被処理材の硬化領域と硬度との関係を示す図である。 本実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法で用いるツールの他の一例を示す図である。 本実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法が適用される被処理材の被加工面の推奨される幅を説明する図である。 従来技術の摩擦撹拌表面処理方法で加工処理された被処理材の硬化領域と硬度との関係を示す図である。
以下、本発明に係る摩擦撹拌表面処理方法、及びその方法を含む履帯用シューの製造方法を実施するための形態を図に基づいて説明する。
[摩擦撹拌表面処理方法の第1実施形態]
本発明に係る摩擦撹拌表面処理方法の第1実施形態は、例えば建設機械に適用される。この建設機械は、例えば図1に示すように油圧ショベル1から成り、この油圧ショベル1は、車体を走行させる走行体2と、この走行体2の上側に旋回装置3bを介して旋回可能に取り付けられ、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動し、掘削等の作業を行うフロント作業機4とから構成されている。
旋回体3は、前方に配置され、作業者が乗車して運転するキャブ7と、後方に配置され、車体のバランスを保つカウンタウェイト6と、これらのキャブ7とカウンタウェイト6との間に配置され、エンジン(図示せず)を内部に収容するエンジンルーム5とを備えている。
走行体2は、図2に示すように旋回装置3bを支持するトラックフレーム11と、このトラックフレーム11の前後方向に沿う一端に取付けられて回動駆動するスプロケット12と、トラックフレーム11の前後方向に沿う他端に回動可能に取付けられたアイドラ13と、これらのスプロケット12及びアイドラ13の外周に無端状に巻かれた履帯14と、この履帯14を内側から案内するガイドローラ15とを有しており、スプロケット12が回動駆動することで履帯14が回動して地面と摺動し、車体が移動するようになっている。
アイドラ13は、例えば図3に示すように軸線が左右方向に配置された円筒体13aと、この円筒体13aの中空部分に介装された軸部(図示せず)と、この軸部の両端に設けられ、内側で円筒体13aを保持する保持部13bと、円筒体13aの外周のうち中央部分が径方向外側へ突出し、履帯14が外周面に摺動する摺動部13cとを有している。
履帯14は、例えば図2、図4に示すように両端が巻回方向に沿って互いに連結された複数のリンク16と、これらのリンク16の外周に設けられたシュー17とを有しており、このシュー17は、リンク16の外周に沿って離隔して配置され、左右方向に延設して外側へ突出した複数の凸部17aを有している。
ガイドローラ15は、例えば図2、図5に示すようにスプロケット12とアイドラ13との間にそれぞれ離隔して配置され、トラックフレーム11の下側に回動可能に取り付けられた7つの下側ローラ15aと、スプロケット12とアイドラ13との間に互いに離隔して配置され、トラックフレーム11の上側に回動可能に取付けられた上側ローラ15bとから構成されている。
この上側ローラ15bは、例えば軸線が左右方向に向けられた状態で離隔して配置され、履帯14のリンク16が外周面に摺動する円筒状の一対の摺動部15b1と、これらの摺動部15b1の間に設けられ、リンク16の左右方向の動きを規制する規制部15b2とから構成されている。
この規制部15b2は、例えば左右方向に沿う中空部を有し、左右方向に沿う両端の外径が摺動部15b1の外径よりも大きく設定されている。また、トラックフレーム11の上方には、各摺動部15b1の中空部分及び規制部15b2の中空部を挿通する軸部18が配置されており、トラックフレーム11の上部には、この軸部18の基端を固定する固定部19がボルト20等で取り付けられている。
フロント作業機4は、図1に示すように旋回体3から前方へ延設され、上下方向に回動する作業腕を有し、この作業腕は、例えば基端が旋回体3に回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブーム4aと、このブーム4aの先端に回動可能に取り付けられたアーム4bとから構成されている。
また、フロント作業機4は、アーム4bの先端に回動可能に取り付けられ、図6に示すように開口部が形成されたバケット4cを有している。このバケット4cは、例えば開口部から土砂等を収容する収容部25と、この収容部25の外側面のうち基端側の中央部分に左右方向に離隔して設けられ、アーム13の先端を取り付ける一対のブラケット26a,26bとを有している。収容部25は、例えば奥側へ弓状に湾曲し、底面を形成する底板25aと、この底板25aの左右両側に設けられ、両側面を形成する一対の側板25b,25cとから成っている。
さらに、バケット4cは、例えば収容部25の各側板25b,25cのうち開口部側の端部に開口外側へ突出するように設けられ、側板25b,25c側から土砂等を切り込む一対のサイドカッタ27a,27bと、収容部25の底板25aの先端部に左右方向にそれぞれ離隔して開口外側へ突出するように設けられ、先端側から土砂等を切り込む5つのツース28a〜28eとを有しており、これらのサイドカッタ27a,27bとツース28a〜28eによって掘削時の抵抗が減少し、バケット4cにかかる負荷が軽減されるようになっている。
このように構成した油圧ショベル1に適用される本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法の加工処理が行われる被処理材は、例えば上述した走行体2のシュー17、アイドラ13、下側ローラ15a、上側ローラ15b、サイドカッタ27a,27b、及びツース28a〜28eから成っている。
本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法による加工処理は、これらのシュー17、アイドラ13、下側ローラ15a、上側ローラ15b、サイドカッタ27a,27b、及びツース28a〜28eの摺動面圧が高くなる部分に行われる。従って、被処理材の被加工面は、シュー17の凸部17aのうち地面との摺動面、アイドラ13の摺動部13cの摺動面、下側ローラ15aの摺動部の摺動面、上側ローラ15bの摺動部15b1の摺動面、サイドカッタ27a,27bの内側面、及びツース28a〜28eの内側面である。
そして、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法にあっては例えば以下の手順のようにして被処理材の加工処理が行われる。
本発明に係る摩擦撹拌表面処理方法の第1実施形態は、図7、図8に示すように被処理材30の表面のうちツール35による加工処理が行われる被加工面31に沿って熱絶縁部を形成する熱絶縁部形成工程と、図9に示すようにツール35を被加工面31に押し当てた状態で回転させながら熱絶縁部形成工程で形成された熱絶縁部に対して並進させ、被加工面31のうち熱絶縁部を挟む両側の面を加工処理する加工処理工程とを含んでいる。
具体的には、ツール35は、例えば図11に示すように円筒状に形成された軸部35aと、この軸部35aの先端に設けられ、頂部が被処理材30の被加工面31に向かう曲面状に形成された曲面部35bと、この曲面部35bの頂部に設けられた突起部35cとから構成されている。
熱絶縁部形成工程において形成される熱絶縁部は、例えば図7、図8に示すように被処理材30の表面側から内部に向かって陥没する複数の溝部32を有しており、これらの溝部32の深さIは、例えば図11に示すように加工処理工程でツール35を被加工面31の表面から内部へ押し込んで挿入する挿入深さH以上に設定されており、ツール35と被処理材30との接触円の直径dは、例えばツール35の軸部35aの外径よりも若干小さく設定されている。なお、溝部32は、例えば被処理材30の表面を切削して形成されているが、鋳造やプレス加工などにて溝部を形成しても良い。
また、図9,図10に示すように加工処理工程では被処理材30の被加工面31に対してツール35の移動軌跡が同方向に溝部32を挟んで隣接するようにツール35を複数回に渡って推進させるので、各溝部32がツール35の進行方向Lに沿って形成されることにより、被処理材30の表面はツール35の進行方向Lに対して垂直方向に凹凸が交互に繰り返し現れるようになっている。
ここで、便宜的に図9に示す左側の被処理材30の凸部を第1の突出部31a、右側の被処理材30の凸部を第2の突出部31bと呼ぶことにする。以下、これらの第1、第2の突出部31a,31bの表面に対して実施する加工処理工程を主に説明し、残りの部分の被加工面31に対して実施する加工処理工程も同様であるので、重複する説明を省略する。なお、各突出部31a,31bの幅Wは、例えば図11に示すようにツール35の軸部35aの外径よりも若干大きく設定されている。
本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法の加工処理工程では、図10、11に示すようにまずツール35を軸線G周りに回転させながら第1の突出部31aの表面に押圧し、ツール35を第1の突出部31aの表面から内部へ押し込んで予め設定した挿入深さHまで挿入する。そして、図9、図12に示すようにツール35を溝部32に沿って進行方向Lへ並進させる。
このとき、ツール35が第1の突出部31aを摺動することにより、ツール35と第1の突出部31aとの間に摩擦熱が発生し、図13、図14に示すようにこの摩擦熱によって第1の突出部31aのうちツール35の通過領域31a1が局所的に加熱されて硬化領域となる。
次に、ツール35を第1の突出部31aの表面から引き離してツール35を軸線G周りに回転させたまま第2の突出部31bの表面に押圧し、ツール35を第2の突出部31bの表面から内部へ押し込んで予め設定した挿入深さHまで挿入する。そして、ツール35を溝部32に沿って進行方向Lへ並進させる。
このとき、上述した第1の突出部31aの場合と同様にツール35が第2の突出部31bを摺動することにより、ツール35と第2の突出部31bとの間に摩擦熱が発生し、この摩擦熱によって第2の突出部31bのうちツール35の通過領域31b1(図15参照)が局所的に加熱されて硬化領域となる。
図15に示すように、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法によって被処理材30の被加工面31に対して加工処理が行われたことにより、被処理材30の被加工面31の硬度は高くなっており、しかも被処理材30の被加工面31のうち溝部32付近の硬度は減少していないことが分かる。
ここで、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法と異なり、仮に熱絶縁部形成工程を実施する前に被処理材30の表面のうち第1の突出部31aと第2の突出部31bの表面に相当する部分を加工処理した後、熱絶縁部形成工程を実施して被処理材30の表面に第1の突出部31aと第2の突出部31bとを離隔する溝部32を形成した場合には、第1の突出部31a及び第2の突出部31bのうち溝部32付近が軟化する熱影響が残るので、各突出部31a,31b全体において十分な硬度が得られなくなる。
また、熱影響が残った第1の突出部31a及び第2の突出部31bのうち溝部32付近を切削した場合には、切削量が増えて切削作業が煩雑になるだけでなく、溝部32の幅が大きくなることによって第1の突出部31a及び第2の突出部31bの表面の面積が小さくなるので、各突出部31a,31bの強度が低下することになる。
上述のように構成した本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法によれば、熱絶縁部形成工程において第1の突出部31aと第2の突出部31bとの間に溝部32を形成しておくことにより、加工処理工程において第2の突出部31bの表面を加工処理しても、第2の突出部31bで発生した摩擦熱が既に硬化領域となった第1の突出部31aへ伝播することを防止でき、図15に示すように第1の突出部31a及び第2の突出部32bにおいて安定した硬化領域を得ることができる。
さらに、第1の突出部31a及び第2の突出部31bで発生した摩擦熱は溝部32によって各突出部31a,31b内に閉じ込められ、各突出部31a,31b内を伝播するので、各突出部31a,31bを深部まで加熱することができる。これにより、第1の突出部31a及び第2の突出部31bにおいて高い硬度を確保することができる。
また、溝部32には空気があり、この空気は各突出部31a,31bの熱伝導率よりも低いことからツール35の回転条件に依存することなく熱の伝播を遮断し、しかも溝部32は被処理材30の表面を切削することで簡単に形成できるので、熱絶縁部形成工程を容易に実施することができる。さらに、加工処理工程では、ツール35を第1の突出部31a及び第2の突出部31bの表面に順に押し当てて溝部32に沿って合計2回推し進めるだけで良いので、被処理材30の加工処理を迅速に行うことができる。このように、被処理材30を効率良く加工処理することができ、被処理材30の表面において十分な硬度を得ることができる。
また、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法は、溝部32は、被処理材30の表面側から内部に向かって陥没しているので、加工処理工程において各突出部31a,31bとツール35との間で発生した摩擦熱を表面側と側面側から放熱することができる。さらに、冷却水等の冷却剤を溝部32に与えれば、各突出部31a,31bの冷却効果をより発揮させることができる。従って、被処理材30の冷却効率を向上させることができる。
また、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法は、加工処理工程においてツール35を第2の突出部31bの表面から内部へ押し込んで挿入しても、ツール35は溝部32の深さI以下までしか到達しないので、第2の突出部31bで発生した摩擦熱が溝部32の下側から既に硬化領域となった第1の突出部31aへ伝わることを回避することができ、第1の突出部31aが軟化することを確実に抑制することができる。これにより、被処理材30の表面の強度を高めることができ、優れた摺動性能を得ることができる。
また、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法で製造されたシュー17は、溝部32の形成が製造過程の一工程に含まれているので、他の被処理材30であるアイドラ13、下側ローラ15a、上側ローラ15b、サイドカッタ27a,27b、及びツース28a〜28eよりも加工処理が簡単である。そして、地面と摺動するシュー17の外周面が本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法の加工処理によって硬化されているので、シュー17の摺動面の摩耗を抑えることができ、油圧ショベル1の安定的な走行状態を実現させることができる。
また、本発明の第1実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法が適用される油圧ショベル1は、被処理材30の被加工面31としてアイドラ13の摺動部13cの摺動面、下側ローラ15aの摺動部の摺動面、上側ローラ15bの摺動部15b1の摺動面、サイドカッタ27a,27bの内側面、及びツース28a〜28eの内側面に熱絶縁部形成工程及び加工処理工程が実施されてこれらの部品が加工処理されているので、油圧ショベル1が動作することで各部品に働く摺動面圧から保護することができる。これにより、アイドラ13、下側ローラ15a、上側ローラ15b、サイドカッタ27a,27b、及びツース28a〜28eの高寿命化を図ることができるので、これらの部品の交換作業の頻度を減少させることができる。
[摩擦撹拌表面処理方法の第2実施形態]
本発明の摩擦撹拌表面処理方法の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図11に示すように溝部32の深さIが加工処理工程でツール35を被加工面31の表面から内部へ押し込んで挿入する挿入深さH以上に設定されたのに対して、第2実施形態は、溝部の深さIは、例えば加工処理工程でツール35を被加工面31の表面から内部へ押し込んで挿入する挿入深さH未満、かつ被処理材30の表面に対してツール35の移動軌跡が同方向に一部重複又は隣接するようにツール35を複数回に渡って推進させる加工処理、すなわちマルチパス処理が行われたときに、被処理材30の表面のうちツール35の移動軌跡が重複又は隣接した部分付近に形成される硬化領域(例えば、図18に示す被処理材50の被加工面51のうちツール35の移動軌跡が重複又は隣接した部分52付近の硬化領域)の深さ以上に設定されたことである。その他の構成は第1実施形態と同じであるので、同一又は対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略している。
このように構成した本発明の第2実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法によれば、加工処理工程において軸線G周りに回転したツール35を各突出部31a,31bの表面から内部へ押し込んで溝部32の深さIよりも深く挿入することにより、各突出部31a,31bの硬化領域が深部へ拡がるので、被処理材30の内部が損傷することを効果的に防止することができる。特に、加工処理工程においてツール35が各突出部31a,31bを通過する通過領域31a1,31b1が深くなるので、加工処理が行われる前後の各突出部31a,31bの表面を容易に区別することができる。これにより、加工処理工程における加工処理の進行具合を把握でき、被加工面31の処理残しを抑えることができる。
また、仮に被処理材30の表面にマルチパス処理が行われたときに、被処理材30の表面のうちツール35の移動軌跡が重複又は隣接した部分付近に形成される硬化領域の深さ以上の溝部32が熱絶縁部形成工程において形成されているので、加工処理工程においてツール35を各突出部31a,31bの表面から内部へ押し込んで溝部32の深さIより深く挿入しても、被加工面31の硬化領域が軟化することを十分に抑制することができる。従って、被処理材30を上手く改質できるので、被処理材30の摺動性能を向上させることができる。
なお、上述した本実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法は、熱絶縁部形成工程において形成される熱絶縁部が溝部32である場合について説明したが、この場合に限らず、熱絶縁部は、被処理材30の熱伝導率よりも低ければ溝部32でなくても良い。
また、本実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法は、加工処理工程においてツール35に突起部35cがある場合について説明したが、この場合に限らず、図16に示すようにツール35に突起部35cはなくても良い。
また、本実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法は、第1の突出部31a及び第2の突出部31bの幅が図11に示すようにツール35の軸部35aの外径よりも若干大きく設定された場合について説明したが、この場合に限らず、第1の突出部31a及び第2の突出部31bの幅Wは、例えば図17に示すようにツール35の軸部35aの外径以下に設定されていても良い。この場合、加工処理工程において各突出部31a,31b全体を加熱し易くなるので、所望の硬化領域と硬度を迅速に得ることができる。
また、本実施形態に係る摩擦撹拌表面処理方法が適用される油圧ショベル1の部品の個数は上述した個数に限定されるものではない。
1 油圧ショベル(建設機械)
2 走行体
3 旋回体
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
11 トラックフレーム
12 スプロケット
13 アイドラ
13a 円筒体
13b 保持部
13c 摺動部
14 履帯
15 ガイドローラ
15a 下側ローラ
15b 上側ローラ
15b1 摺動部
15b2 規制部
16 リンク
17 シュー
17a 凸部
18 軸部
19 固定部
25 収容部
25a 底板
25b,25c 側板
26a,26b ブラケット
27a,27b サイドカッタ
28a〜28e ツース
30 被処理材
31 被加工面
31a 第1の突出部
31b 第2の突出部
32 溝部(熱絶縁部)
35 ツール
35a 軸部
35b 曲面部
35c 突起部

Claims (3)

  1. ツールを被処理材に押し当てた状態で回転させながら移動させ、この被処理材に摩擦熱を与えて表面を加工処理する摩擦撹拌表面処理方法において、
    前記被処理材の表面のうち前記ツールによる加工処理が行われる被加工面に沿って、前記ツールを前記被加工面の表面から内部へ押し込んで挿入する挿入深さ未満に溝部を設定するとともに、前記被処理材の表面に対して前記ツールの移動軌跡が同方向に一部重複又は隣接するように前記ツールを複数回に渡って推進させる加工処理が行われたときに、前記被処理材の表面のうち前記ツールの移動軌跡が重複又は隣接した部分付近に形成される硬化領域の深さ以上に前記溝部を設定した熱絶縁部を形成する熱絶縁部形成工程と、
    前記ツールを前記被加工面に押し当てた状態で回転させながら前記熱絶縁部形成工程で形成された前記熱絶縁部に対して並進させ、前記被加工面のうち前記熱絶縁部を挟む両側の面を加工処理する加工処理工程とを含むことを特徴とする摩擦撹拌表面処理方法。
  2. 請求項1に記載の摩擦撹拌表面処理方法において、
    前記加工処理工程の後に、前記溝部に冷却剤を与える冷却工程を更に有することを特徴とする摩擦撹拌表面処理方法。
  3. 請求項1又は2に記載の摩擦撹拌表面処理方法を含む履帯用シューの製造方法。
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