本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、電流が流れる経路である電力供給路に沿って電流が流れる際、電源の+極により近い側を上流側と呼び、電源の−極により近い側を下流側と呼ぶこととする。
本実施形態では、本発明のモータ制御装置の一例として、車両のパワーウィンドウ装置PWに組み込まれたパワーウィンドウECU(以下、単にECUと呼ぶ)について説明する。すなわち、本実施形態に係るモータ制御装置であるECUは、車両に備えられた開閉体としてのウィンドウガラスWDを開閉駆動させるための車両用モータMを制御するものである。
パワーウィンドウ装置PWについては、ECUを除いた部分の構成が公知であり、当該構成の一例について図1を用いて概説すると、ウィンドウガラスWDが車両ドアDR内に昇降自在に配設され、同じく車両ドアDR内に配設されたXアーム式の昇降機構XMが、車両用モータMからギアGRを介して駆動力が伝達されることによりウィンドウガラスWDを昇降させる。図1は、パワーウィンドウ装置の構成を示す模式図である。
車両用モータMは、ウィンドウガラスWDを開閉駆動させるためのDCモータであり、電力が供給されることで正転又は反転することが可能である。車両用モータMへの電力供給については、図2に示すように、ECUが車両用電源(以下、バッテリB)からの電力を車両用モータMへ供給することによって行われる。また、図2に示すように、車両用モータMにはホールICやエンコーダ等からなる回転検出装置RDが備えられており、この回転検出装置RDからECUに向けて、モータMの回転と同期したパルス信号(速度検出信号,回転速度信号等)が出力される。図2は、パワーウィンドウ装置の電気構成図である。
ECU1は、車両用モータMへの電力供給を制御するものであり、例えば図3や図6に示すように、バッテリBからの電力を車両用モータMへ供給するために形成された電力供給路としてのモータドライブ回路2と、マイクロコンピュータからなる制御回路18と、を備える。また、図3や図6に示すように、モータドライブ回路2中には、電界効果トランジスタとしてのMOSFET(Metal−Oxilde−Semiconductor Field−Effect Transistor、すなわち、MOSトランジスタ)109,306,307,308,309が配置されている。
ECUは、操作スイッチからの操作信号に基づいてバッテリBからの電力を供給して車両用モータMを正逆回転させる。具体的に説明すると、車両には操作スイッチとして、車両のエンジンの起動及び停止を切り替える際に操作されるイグニッションスイッチIG、ウィンドウガラスWDを閉方向に移動させる際に操作される閉スイッチUP、ウィンドウガラスWDを開方向に移動させる際に操作される開スイッチDNが備えられている。各操作スイッチは、オンオフ自在に構成され、閉スイッチUP及び開スイッチDNについては、乗員によって操作されると、操作信号をECUに対して出力する。
そして、イグニッションスイッチIGがオンとなっている間、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されると、ECUの制御回路18が、当該スイッチUP,DNからの操作信号に基づき、モータドライブ回路2を通じてバッテリBからの電力を車両用モータMに供給する。これにより、閉スイッチUPや開スイッチDNにて受け付けた開閉操作に応じて車両用モータMが正逆回転しウィンドウガラスWDが開閉移動(昇降)するようになる。
なお、本実施形態では、モータドライブ回路2中に配置されたMOSFET109,307,309のゲート端子に所定のデューティ比で電圧信号が入力されることにより、車両用モータMの回転速度をPWM制御することが可能である。
より詳しく説明すると、前述の回転検出装置RDからパルス信号が出力されると、制御回路18のマイクロコンピュータが当該パルス信号を解析して上下方向におけるウィンドウガラスWDの現在位置を特定する。そして、制御回路18は、特定したウィンドウガラスWDの現在位置に対応したディーティ比でMOSFET109,307,309のゲート端子に電圧信号を入力することで、当該ディーティ比に応じてMOSFET109,307,309のオンオフが切り替わるようになる。これにより、車両用モータMへの印加電圧が上記デューティ比に応じた大きさに制御され、これに伴って、車両用モータMの回転速度が上記デューティ比に応じた速度に制御されることとなる。
以上のように本実施形態では車両用モータMの回転速度をPWM制御し、これにより、ウィンドウガラスWDの昇降速度をその現在位置に応じて調整することが可能となる。この結果、ウィンドウガラスWDが開き切る際または閉じ切る際にウィンドウガラスWDと窓枠(不図示)との衝突によって衝撃音が発生するのを抑えるために、車両用モータMの回転速度を落としてウィンドウガラスWDの昇降速度を減速させることが可能になる。
また、モータドライブ回路2については、その他端に備えられた入力端子(−)がバッテリBの陰極に接続されており、バッテリBの陰極については図3に示すようにグランドに接地されている。このような回路構成を利用して、ECUは、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されない間、車両用モータMの端子同士をグランドに接続して短絡させることによりモータ回転を制止するブレーキ制御を実行する。このブレーキ制御により、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されない間においては、ウィンドウガラスWDを確実に静止保持しておくことが可能となる。
さらに、本実施形態に係るECUは、イグニッションスイッチIGがオフとなっている期間中にも、モータ回転を制止するブレーキ制御を実行することができ、ウィンドウガラスWDを確実に静止保持しておくことが可能となる。かかる構成については次項以降にて詳しく説明する。
<<本実施形態に係るECUの第1構成例>>
本実施形態に係るECUの第1構成例について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係るECUの構成についての第1例を示す図である。
第1構成例に係るECU1は、所謂リレー駆動型のECUであり、図3に示すように、マイクロコンピュータからなる制御回路18、モータドライブ回路2、モータドライブ回路2内に配置された2つのリレー104,105を備えている。
モータドライブ回路2は、一方の入力端子(+)側でヒューズHを介してバッテリBの陽極に接続され、他方の入力端子(−)側でバッテリBの陰極に接続されている。なお、本実施形態において、バッテリBの陰極はグランドに接地されているので、モータドライブ回路2の入力端子のうち、バッテリBの陰極に接続されている側の端子(−)は、グランドに接地されていることになる。
また、図3に示すように、モータドライブ回路2中、一方の入力端子(+)から幾分下流に位置する地点と、他方の入力端子(−)から幾分上流に位置する地点との間にはノイズ除去コンデンサ21が配置されており、さらに、ノイズ除去コンデンサ21の下流位置にはノイズ除去インダクタ22が配置されている。
また、モータドライブ回路2の高圧側には、各リレー104及び105の接点のうち、図3中、記号aが付された第1接点が直列状態で備えられており、低圧側には、図3中、記号bが付された第2接点が直列状態で備えられている。さらに、モータドライブ回路2中、各リレー104,105の第2接点b同士を結んでいる部分と、グランドに接地している側の入力端子(−)との間には、MOSFET109が配置されている。
MOSFET109は、例えば、高速スイッチングが可能なパワーMOSFETからなり、ドレイン端子が各リレー104,105の第2接点b同士を結んでいる部分に接続され、かつ、ソース端子がグランドに接地された入力端子(−)に接続された状態で配置されている。すなわち、MOSFET109のソース端子は、グランドに接続されていることになる。そして、MOSFET109は、ゲート端子に後述する制御回路18からの出力電圧が印加されることによりオンとなる。
なお、図3に図示されたMOSFET109は、N型チャンネルのMOSFETであり、制御回路18とゲート端子との間には、ゲート端子への印加電圧の変動を抑制するゲート抵抗106が配置されている。また、MOSFET109とゲート端子とソース端子との間には、MOSFET109をオフ作動する際に両端子間の寄生容量に溜まった電荷を放電してゲート電位をグランド電位に確定するための放電抵抗107が配置されている。さらに、モータドライブ回路2中、各リレー104,105の第1接点a同士を結んだ部分と第2接点b同士を結んだ部分とを連結している部分には、環流ダイオード108が配設されており、この環流ダイオード108により、MOSFET109がオン状態からオフ状態にスイッチングした瞬間に発生する車両用モータMの逆起電力によってMOSFET109が破損するのを防止している。
制御回路18を構成するマイクロコンピュータは、図示しないROM、RAM等のメモリ、CPU、A/Dコンバータ及びタイマー等で構成されている。また、図3に示すように、制御回路18の入力端子のうちの一つは、逆接続防止ダイオード23及び電流制限抵抗11を介してイグニッションスイッチIGに接続されている。
そして、イグニッションスイッチIGがオンとなると、制御回路18がバッテリBからの電力を受けて起動する。起動状態の制御回路18は、MOSFET109をオン状態(通電状態)にするためにゲート端子に向けて電圧を出力する。つまり、制御回路18は、本発明の電力出力部に相当し、MOSFET109と接続され、バッテリBからの電力によって起動している間にMOSFET109のゲート端子に向けて電圧を出力する。
本実施形態において、バッテリBから制御回路18への電源供給は、制御回路18に接続された定電圧電源回路17を経由して行われ、この定電圧電源回路17によってバッテリ電圧(例えば12V)が5Vの電圧に変換され、変換後の電圧が動作電圧として制御回路18に供給される。定電圧電源回路17は、逆接続防止ダイオード29を介してバッテリBの陽極に接続されている一方で、モータドライブ回路2の入力端子(−)を介してグランドに接地されている。また、図3に示すように、定電圧電源回路17の、バッテリBの陽極に接続されている側の端子と、グランドに接地されている側の端子との間には、電源瞬断防止コンデンサ30が配置されている。
なお、制御回路18の入力端子とイグニッションスイッチIGとの間を接続している回路中、逆接続防止ダイオード23との電流制限抵抗11との間の地点からは、グランドに向けて分岐回路が敷設されており、当該分岐回路中には、制御回路18に向かう電流を制限するためのプルダウン抵抗26が配設されている。また、電流制限抵抗11と制御回路18との間の地点は、イグニッションスイッチIGオフ中に当該地点の電位をグランド電位に確定する理由から、プルダウン抵抗14を介してグランドに接地されている。
一方、イグニッションスイッチIGがオフとなると、バッテリBから制御回路18への電力供給が遮断され、制御回路18は、非起動状態となる。つまり、イグニッションスイッチIGは、本発明のスイッチ部に相当し、制御回路18を起動状態とするためにオンとなり、制御回路18を非起動状態とするためにオフとなる。
また、本実施形態では、制御回路18が非起動状態となると、制御回路18を構成するCPUが非作動状態となり、定電圧電源回路17から供給される動作電圧の消費が最小限に抑えられる。一方で、制御回路18が非起動状態である間においても、上記のCPUを非作動状態から作動状態へ復帰させるための機構、具体的には、制御回路18に備えられたタイマーが計時を開始してから所定時間に達した時にウェイクアップ信号を生成してCPUに出力する信号生成回路だけは作動している。これにより、本実施形態では、イグニッションスイッチIGがオフとなった期間中、制御回路18を非起動状態に保持しつつも、一時的にCPUを非作動状態から作動状態に復帰させて、制御回路18の状態を非起動状態から、所定期間だけ起動するウェイクアップ状態へ移行させることが可能である。
以上のような構成のECU1において、イグニッションスイッチIGがオンとなっている状態において、電流廻り込み防止ダイオード24及び電流制限抵抗12を介して閉スイッチUPに接続された入力端子に、閉スイッチUPからの操作信号(以下、閉信号)が入力されると、制御回路18は、車両用モータMを正転させるように上記2つのリレー104,105のうち、一方のリレー104の接点を切り替える。
具体的に説明すると、閉信号の入力に伴い制御回路18から信号(図3中、記号OUTPにて表記されており、以下、閉動作信号と呼ぶ)が出力され、閉動作信号OUTPが反転増幅器102にて増幅された後に一方のリレー104の励磁コイルRcにのみ入力される。ここで、一方のリレー104は、車両用モータMの一方の端子に接続されており、閉動作信号OUTPが励磁コイルRcに入力されると第1接点aが閉じるようになっている。他方のリレー105は、車両用モータMの他方の端子に接続されており、励磁コイルRcに信号が入力されない限り、第2接点bが閉じるようになっている。これにより、車両用モータMには、リレー104側の端子からリレー105側の端子に向かうように電流が流れ、結果として車両用モータMが正転するようになる。
なお、制御回路18に備えられた閉信号用の入力端子と閉スイッチUPとの間を接続している回路中、電流廻り込み防止ダイオード24と電流制限抵抗12との間の地点からは、モータドライブ回路2の高圧側、より具体的には、前述のノイズ除去インダクタ22の下流位置に向けて分岐回路が敷設されており、当該分岐回路中には、制御回路18から流れる電流を制限するためのプルアップ抵抗27が配設されている。また、電流制限抵抗12と制御回路18との間の地点は、閉スイッチUPが操作されていない間に当該地点の電位をグランド電位に確定する理由から、プルダウン抵抗15を介してグランドに接地されている。
一方、イグニッションスイッチIGがオンとなっている状態において、電流廻り込み防止ダイオード25及び電流制限抵抗13を介して閉スイッチUPに接続された入力端子に、開スイッチDNからの操作信号(以下、開信号)が入力されると、制御回路18は、車両用モータMを反転させるように上記2つのリレー104,105のうち、他方のリレー105の接点を切り替える。
具体的に説明すると、開信号の入力に伴い制御回路18から信号(図3中、記号OUTMにて表記されており、以下、開動作信号と呼ぶ)が出力され、開動作信号OUTMが反転増幅器103にて増幅された後に他方のリレー105の励磁コイルRcにのみ入力される。他方のリレー105では、開動作信号が励磁コイルRcに入力されることで第1接点aが閉じるようになる。この際、一方のリレー104では、励磁コイルRcに信号が入力されない限り、第2接点bが閉じるようになっている。これにより、車両用モータMには、リレー105側の端子からリレー104側の端子に向かうように電流が流れ、結果として車両用モータMが反転するようになる。
なお、制御回路18に備えられた開信号用の入力端子と開スイッチDNとの間を接続している回路中、電流廻り込み防止ダイオード25と電流制限抵抗13との間の地点からは、モータドライブ回路2の高圧側、より具体的には、前述のノイズ除去インダクタ22の下流位置に向けて分岐回路が敷設されており、当該分岐回路中には、制御回路18から流れる電流を制限するためのプルアップ抵抗28が配設されている。また、電流制限抵抗13と制御回路18との間の地点は、開スイッチDNが操作されていない間に当該地点の電位をグランド電位に確定する理由から、プルダウン抵抗15を介してグランドに接地されている。
また、イグニッションスイッチIGがオンとなっている状態において、開信号及び閉信号のいずれも入力されていない間、すなわち、閉スイッチUP及び開スイッチDNのいずれもが操作されていない間、車両用モータMの回転を制止するブレーキ制御が実行される。
具体的に説明すると、イグニッションスイッチIGがオンとなっている状態において、開信号及び閉信号のいずれも入力されていない間、制御回路18から各リレー104,105の励磁コイルRcへの信号の出力はなく、このため、各リレー104,105では第2接点bが閉じるようになる。これにより、車両用モータMの端子同士がグランドに接続されて短絡するようになり、車両用モータMの回転が制止されるようになる。
なお、前述したように、各リレー104,105では、励磁コイルRcに信号入力がない限り、第2接点bが閉じるようになっている。したがって、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されていない間、換言すると、開信号及び閉信号のいずれも入力されていない間は、車両用モータMは、回転制止状態(ブレーキ状態)で維持されることになる。この結果、イグニッションスイッチIGオン中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されない間においては、ウィンドウガラスWDを確実に静止保持しておくことが可能となる。
ところで、上述した車両用モータMの正転駆動、反転駆動及びブレーキ制御を実行するためには、MOSFET109がオン状態、すなわち、通電状態となっている必要がある。このために、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、制御回路18は、MOSFET109のゲート端子に向けて電圧を出力する。制御回路18からの出力電圧(図3中、記号OUTFETにて表記)は、非反転増幅器101により増幅されてゲート端子に印加されるようになる。
そして、出力電圧OUTFETがゲート端子に印加される結果、ゲート端子−ソース端子間に電位差(図3中、記号FETGSにて表記)が生じ、この電位差FETGSがゲート通電限界電圧VTH以上となるとMOSFET109がオン状態となる。ここで、ゲート端子−ソース端子間の電位差は、MOSFET109のゲート入力信号に相当し、また、ゲート通電限界電圧VTHとは、MOSFET109をオンするために必要なゲート端子−ソース端子間の電位差の最小値のことである。
また、前述したように、第1構成例に係るECU1は、車両用モータMの回転速度をPWM制御することが可能であり、具体的に説明すると、ウィンドウガラスWDの昇降中、すなわち、車両用モータMの回転駆動中、制御回路18がウィンドウガラスWDの現在位置に応じたディーティ比でゲート電圧を印加してMOSFET109をスイッチングすることにより、車両用モータMの回転速度が上記のデューティ比にて制御される。なお、モータドライブ回路2中には、上記PWM制御に起因して発生するリップルノイズを除去するためのコンデンサ(PWMリップルノイズ除去コンデンサ)109が配置されている。
さらに、本実施形態では、イグニッションスイッチIGがオフとなっている期間中にもMOSFET109のゲート通電を行ってブレーキ制御を実行することが可能である。以下では、第1構成例に係るECU1の特徴として、イグニッションスイッチIGのオフ時にMOSFET109のゲート通電を行うための構成について説明する。
本実施形態では、図3に示すように、MOSFET109のゲート端子及びソース端子の間に、放電抵抗107と並列状態でコンデンサ201が配置されている。制御回路18は、このコンデンサ201と回路的に接続されている。また、コンデンサ201とMOSFET109のソース端子の間にはアナログスイッチ203が配置されており、このアナログスイッチ203は通常、切状態(オフ状態)にあり、制御回路18からの入信号(図3中、記号CCONTにて表記)が入力されることにより入状態(オン状態)となる。
そして、アナログスイッチ203が入状態となっている間、制御回路18がMOSFET109のゲート端子に向けて電圧を出力すると、その出力電圧OUTFETがコンデンサ201に印加され、この結果、コンデンサ201に電荷が蓄えられるようになる。
なお、本実施形態では、放電抵抗107とMOSFET109のソース端子の間にもアナログスイッチ202が配置されている。このアナログスイッチ202は、制御回路18がゲート端子に向けて電圧を出力するにあたってオン状態となるものである。したがって、制御回路18は、ゲート端子に向けて電圧を出力する間、アナログスイッチ202に対して入信号(図3中、記号ENABLEにて表記)を出力する。換言すると、制御回路18からの出力電圧OUTFETは、アナログスイッチ202に入信号ENABLEが入力されることに連動して、ゲート端子に入力されることとなる。
以上のようにMOSFET109のゲート端子及びソース端子の間に、蓄電状態のコンデンサ201が配置されていれば、制御回路18の出力電圧OUTFETがMOSFET109のゲート端子に印加されない状況であっても、コンデンサ201における蓄電電圧をゲート端子に印加し、MOSFET109をオンとすることが可能である。ここで、コンデンサ201における蓄電電圧とは、電荷を蓄えた状態のコンデンサ201の極板間に形成された電位差によって生じる電圧のことである。
つまり、本実施形態では、MOSFET109のゲート端子に電圧を印加するために電荷を加える蓄電部としてコンデンサ201が設けられており、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間、コンデンサ201における蓄電電圧がゲート端子に印加されるようになっている。この結果、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間、すなわち、ゲート端子に向けた制御回路18からの電力出力が遮断されている間にもMOSFET109をオン状態で保持することが可能になる。
第1構成例に係るECU1の有効性について、従来のリレー駆動型のECU3と対比して説明すると、従来のリレー駆動型のECU3は、図4に示すように、回路構成の面で第1構成例に係るECU1と共通する点が多い反面、上記のコンデンサ201のように、MOSFET109のゲート端子に電圧を印加するために電荷を加える蓄電部が設けられていない点で相違する。図4は、従来のECUの構成例としてリレー駆動型ECUの構成を示す回路図であり、同図中、図3と同じ符号が付された機器については、第1構成例に係るECU1に設けられたものと同様であるため、説明を省略する。
したがって、従来のリレー駆動型のECU3では、イグニッションスイッチIGがオフとなると、制御回路18が非起動状態となり、かかる状態では、もはやMOSFET109のゲート端子に電圧を印加することができなくなってしまう。この結果、従来のリレー駆動型のECU3では、イグニッションスイッチIGのオフ中、MOSFET109を通電状態で維持することができず、上述のブレーキ制御を実行することができない。このため、従来のリレー駆動型のECU1を組み込んだパワーウィンドウ装置においては、イグニッションスイッチIGのオフ中にウィンドウガラスWDを静止保持しておくための機器を別途設けたり、イグニッションスイッチIGのオフ中にも制御回路18を強制的に起動状態で維持したりしていた。
これに対して、第1構成例に係るECU1であれば、前述したように、イグニッションスイッチIGのオフ中、コンデンサ201における蓄電電圧がゲート端子に印加されるため、制御回路18からゲート端子への電力出力が遮断されたとしてもMOSFET109をオン状態で保持することが可能になる。したがって、本実施形態では、イグニッションスイッチIGのオフ中にもブレーキ制御を実行することが可能であるため、従来のように、イグニッションスイッチIGのオフ時にウィンドウガラスWDを静止保持するために、機器を別途設けたり、あるいは、制御回路18を強制的に起動状態で維持したりする必要がない。
なお、第1構成例に係るECU1は、MOSFET109のゲート端子とソース端子との間にコンデンサ201を配置することによって成り、比較的容易な構成にて、ゲート端子に向けた電圧出力が遮断されている間にMOSFET109をオン状態に維持しておくことが可能なモータ制御装置を実現したものである。
次に、第1構成例に係るECU1の動作例について、図5を参照しながら説明する。図5は、第1構成例に係るECUの動作例を示すタイミングチャートである。
第1構成例に係るECU1では、イグニッションスイッチIGがオンとなっている間、制御回路18は、起動状態となっており、MOSFET109のゲート端子に対して電圧を出力している。換言すると、制御回路18からの出力電圧OUTFETがゲート端子に印加される。なお、制御回路18がゲート端子に対して電圧を出力することが可能な状態、すなわち、起動状態にある間には、制御回路18からの入信号ENABLEがアナログスイッチ202に入力され、これにより、アナログスイッチ202が入状態となる。
また、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されていない間は、各リレー104,105で第2接点bが閉じており、これにより、車両用モータMの端子同士がMOSFET109を介してグランドに接続されて短絡する結果、車両用モータMの回転が制止される。すなわち、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されていない間は、ブレーキ制御が実行される。
さらに、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されていない間には、制御回路18からの入信号CCONTがアナログスイッチ203に入力されて、アナログスイッチ203が入状態(オン状態)となる。これにより、制御回路18からコンデンサ201までの回路が通電状態となり、制御回路18からの出力電圧OUTFETがコンデンサ201にも印加され、結果として、コンデンサ201に電荷が蓄えられるようになる。
一方、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中に閉スイッチUPが操作されると、その操作が続行される期間中(図5中、a時点〜b時点までの間)、制御回路18は、一方のリレー104の励磁コイルRcに対して閉動作信号OUTPを出力する。これにより、一方のリレー104では第1接点aが閉じ、他方のリレー105では第2接点bが閉じるようになる。この結果、車両用モータMには、リレー104側の端子からリレー105側の端子に向かうように電流が流れ、車両用モータMが正転駆動してウィンドウガラスWDを上昇させる。
他方、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中に開スイッチDNが操作されると、その操作が続行される期間中(図5中、c時点〜d時点までの間)、制御回路18は、他方のリレー105の励磁コイルRcに対して開動作信号OUTMを出力する。これにより、一方のリレー104では第2接点bが閉じ、他方のリレー105では第1接点aが閉じるようになる。この結果、車両用モータMには、リレー105側の端子からリレー104側の端子に向かうように電流が流れ、車両用モータMが反転駆動してウィンドウガラスWDを下降させる。
なお、車両用モータMを回転駆動している間、制御回路18は、モータ回転速度をPWM制御するために、ウィンドウガラスWDの現在位置に応じたディーティ比でMOSFET109のゲート端子に電圧を出力する。これにより、制御回路18からゲート端子への出力電圧OUTFET、及び、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGSについては、上記のデューティ比に応じてオンオフ制御(ディーティ制御)されるようになる。
また、車両用モータMを回転駆動している間、制御回路18は、アナログスイッチ203に対する入信号CCONTの出力を中断し、アナログスイッチ203を切状態とする。つまり、車両用モータMの回転駆動中には、MOSFET109のゲート端子とソース端子に接続される機器を、放電抵抗107のみに限定する。これは、車両用モータMをPWM制御する際に、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGS、すなわち、MOSFET109へのゲート入力信号について、ゲート端子−ソース端子間の容量に起因して遅れが生じるのを防止するためである。
そして、閉スイッチUPや開スイッチDNの操作が終了した後、予め設定された時間が経過した時点(図5中、e時点)、制御回路18が、アナログスイッチ203に対する入信号CCONTの出力を再開し、アナログスイッチ203を入状態とする。これにより、制御回路18からの出力電圧OUTFETが再びコンデンサ201に印加され、コンデンサ201に電荷が蓄えられるようになる。
また、閉スイッチUPや開スイッチDNの操作が終了すると、2つのリレー104,105の第2接点bが閉じた状態に戻り、次の操作が行われるまでの間、当該状態のままで保持されることになる。
以上までに説明してきた一連の動作は、イグニッションスイッチIGのオン中、閉スイッチUP又は開スイッチDNが操作される度に繰り返される。
一方、イグニッションスイッチIGがオフとなった時点(図5中、f時点)で、制御回路18は、非起動状態となり、制御回路18からMOSFET109のゲート端子への出力電圧OUTFETがオフとなる。また、制御回路18からの出力電圧OUTFETがオフとなることに伴い、制御回路18からアナログスイッチ202への入信号ENABLEの出力が中断され、アナログスイッチ202が切状態となる。
そして、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間、MOSFET109のゲート端子には、コンデンサ201における蓄電電圧が印加されるようになる。これにより、引き続き、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGSがゲート通電限界電圧VTH以上に維持され、MOSFET109がオン状態で維持されることになる。この結果、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間にも、車両用モータMの両端子がMOSFET109を介してグランドに接続されて短絡するようになる。すなわち、本実施形態では、前述したように、イグニッションスイッチIGオフ中にもブレーキ制御を実行することが可能である。
なお、制御回路18からの出力電圧OUTFETがオフとなっている間には、アナログスイッチ202が切状態となっており、放電抵抗107とコンデンサ201との間の接続が断たれている。これにより、コンデンサ201からグランドへの放電を抑え、蓄電電圧の持続時間をより長く確保することが可能となる。
その一方で、MOSFET109のゲート端子とソース端子との間の寄生容量に起因したリーク電流の発生等により、コンデンサ201における蓄電電圧は経時的に減少し、これに伴って、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGSも緩やかに減少してしまう。ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGSがゲート通電限界電圧VTHを下回るまで減少してしまうと、MOSFET109をオン状態で保持できなくなり、結果として、ブレーキ制御が実行できず、ウィンドウガラスWDが適切に静止保持されなくなってしまう。
そこで、本実施形態では、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間、制御回路18の状態は、非起動状態に保持されつつ、周期的に非起動状態からウェイクアップ状態へ切り替えられるようになっている。そして、ウェイクアップ状態の制御回路18は、コンデンサ201に電荷を蓄えるために起動してコンデンサ201に電圧を出力することが可能である。
より具体的に説明すると、本実施形態では、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間、制御回路18が非起動状態となるものの、制御回路18中のCPUを非作動状態から作動状態へ復帰させるためにウェイクアップ信号を生成してCPUに出力する信号生成回路だけは作動している。そして、制御回路18に備えられたタイマーがイグニッションスイッチIGのオフ時刻から計時を開始し、計時開始から所定時間に達した時点(図5中、g時点)で、上記の信号生成回路がウェイクアップ信号を生成してCPUに出力する。
ウェイクアップ信号をうけたCPUは、一時的に非作動状態から作動状態に復帰し、これに伴って、制御回路18の状態が非起動状態からウェイクアップ状態に切り替えられる。その後、制御回路18の状態は、所定時間だけ(図5中、g時点〜h時点までの期間)、ウェイクアップ状態で維持され、その間、制御回路18からの出力電圧OUTFETがオンとなり、これに併せて、制御回路18からの入信号ENABLEがアナログスイッチ202に入力され、アナログスイッチ202が入状態となる。
以上のように制御回路18の状態を所定時間だけ非起動状態からウェイクアップ状態へ切り替えることにより、イグニッションスイッチIGのオフ中、制御回路18がウェイクアップ状態にある期間だけ、制御回路18からの出力電圧OUTFETをコンデンサ201に印加することが可能となる。この結果、リーク電流の発生等により減少したコンデンサ201における蓄電電圧を、減少前の大きさまで戻すことが可能となる。
以降、周期的(例えば、図5中のi時点、k時点及びm時点)に制御回路18の状態を非起動状態からウェイクアップ状態に切り替え、ウェイクアップ状態に切り替える都度、所定時間だけ制御回路18からの入信号ENABLEをアナログスイッチ202に入力するとともに、制御回路18からの出力電圧OUTFETをオンとする。これにより、イグニッションスイッチIGのオフ中、コンデンサ201における蓄電電圧が印加されたゲート端子の電位とソース端子の電位との間の電位差FETGSを、ゲート通電限界電圧VTH以上に維持することが可能となる。
換言すると、本実施形態では、イグニッションスイッチIGのオフ中、周期的に制御回路18の状態を非起動状態からウェイクアップ状態に切り替えることとし、非起動状態からウェイクアップ状態への切り替えは、上記の電位差FETGSがゲート通電限界電圧VTHを下回る前に行われることになっている。これにより、コンデンサ201における蓄電電圧がリーク電流の発生等により減少したとしても、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGSをゲート通電限界電圧VTH以上に維持しておくことが可能となる結果、イグニッションスイッチIGのオフ中、確実にMOSFET109をオン状態に維持しておくことが可能になる。
なお、ウェイクアップ状態への切り替えのインターバルについては、コンデンサの容量やMOSFET109の仕様等に応じて適宜な時間に設定することとすればよい。具体的に説明すると、例えば、コンデンサ201の放電速度、すなわち、コンデンサ201における蓄電電圧の減少速度を求め、当該減少速度に基づいて、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETGSがゲート通電限界電圧VTH以上を維持しつつ、ウェイクアップ状態への切り替え周期が極力大きくなるように上記インターバルを設定する。
<<本実施形態に係るECUの第2構成例>>
次に、本実施形態に係るECUの第2構成例について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係るECUの構成についての第2例を示す図である。なお、同図中、図3と同じ符号が付された機器については、第1構成例に係るECU1に設けられたものと同様であるため、説明を省略する。
第2構成例に係るECU4は、所謂Hブリッジ型のECUであり、図6に示すように、制御回路18、モータドライブ回路2を備えるとともに、第1構成例において備えられていた2つのリレー104,105の代わりに、4つのMOSFET306,307,308,309が備えられている。
より詳しく説明すると、4つのMOSFET306,307,308,309のうち、第1MOSFET306及び第3MOSFET308は、モータドライブ回路2の高圧側に直列状態で備えられている。第1MOSFET306及び第3MOSFET308は、P型チャンネルのパワーMOSFETであり、各々のソース端子同士が連結された状態でバッテリBの陽極に接続されている。一方、第1MOSFET306のドレイン端子は、車両用モータMの一方の端子に接続されており、第3MOSFET308のドレイン端子は、車両用モータMの他方の端子に接続されている。
また、第1MOSFET306及び第3MOSFET308の各々のゲート端子は、制御回路18の出力端子とゲート抵抗302,312を介して接続されている。これにより、第1MOSFET306及び第3MOSFET308の各々のゲート端子に対して制御回路18からの出力電圧を個別に印加することができ、以て、第1MOSFET306及び第3MOSFET308の各々のオンオフを個別にスイッチングすることが可能となる。なお、第1MOSFET306及び第3MOSFET308では、それぞれ、ゲート端子とソース端子との間に放電抵抗304,310が配置されている。
一方、4つのMOSFET306,307,308,309のうち、第2MOSFET307及び第4MOSFET309は、モータドライブ回路2の低圧側に直列状態で備えられている。第2MOSFET307及び第4MOSFET309は、N型チャンネルのパワーMOSFETであり、各々のソース端子同士が連結された状態でグランドに接続されている。一方、第2MOSFET307のドレイン端子は、車両用モータMの端子のうち、第1MOSFET306のドレイン端子が接続されている側の端子に接続されており、第4MOSFET309のドレイン端子は、第3MOSFET308のドレイン端子が接続されている側の端子に接続されている。
また、第2MOSFET307及び第4MOSFET309の各々のゲート端子は、制御回路18の出力端子とゲート抵抗303,313を介して接続されている。これにより、第2MOSFET307及び第4MOSFET309の各々のゲート端子に対して制御回路18からの出力電圧を個別に印加することができ、以て、第2MOSFET307及び第4MOSFET309の各々のオンオフを個別にスイッチングすることが可能となる。なお、第2MOSFET307及び第4MOSFET309では、それぞれ、ゲート端子とソース端子との間に放電抵抗305,311が配置されている。
以上のような構成のECU4において、イグニッションスイッチIGがオンとなっている状態において、閉スイッチUPから制御回路18の入力端子に操作信号としての閉信号が入力されると、制御回路18は、車両用モータMを正転させるように上記4つのMOSFET306,307,308,309のオンオフを制御する。
具体的に説明すると、閉信号の入力に伴い制御回路18から電圧信号(図6中、記号OUTHPにて表記されており、以下、第1高圧側信号と呼ぶ)が出力され、第1高圧側信号OUTHPが非反転増幅回路301にて増幅された後に第1MOSFET306のゲート端子に印加されて、第1MOSFET306がオン状態となる。また、制御回路18から第1高圧側信号OUTHPが出力される際、同時に、制御回路18から他の電圧信号(図6中、記号OUTLMにて表記されており、以下、第1低圧側信号)が出力され、第1低圧側信号が非反転増幅回路301にて増幅された後に第4MOSFET309のゲート端子に印加されて、第4MOSFET309がオン状態となる。これにより、車両用モータMには、第1MOSFET306側から第4MOSFET309側に向けて電流が流れ、結果として車両用モータMが正転するようになる。
一方、イグニッションスイッチIGがオンとなっている状態において、開スイッチDNから制御回路18の入力端子に操作信号としての開信号が入力されると、制御回路18は、車両用モータMを反転させるように上記4つのMOSFET306,307,308,309のオンオフを制御する。
具体的に説明すると、開信号の入力に伴い制御回路18から電圧信号(図6中、記号OUTHMにて表現されており、以下、第2高圧側信号と呼ぶ)が出力され、第2高圧側信号OUTHMが非反転増幅回路301にて増幅された後に第3MOSFET308のゲート端子に印加されて、第3MOSFET308がオン状態となる。また、制御回路18から第2高圧側信号OUTHMが出力される際、同時に、制御回路18から他の電圧信号(図6中、記号OUTLPにて表記されており、以下、第2低圧側信号)が出力され、第2低圧側信号が非反転増幅回路301にて増幅された後に第2MOSFET307のゲート端子に印加されて、第2MOSFET307がオン状態となる。これにより、車両用モータMには、第3MOSFET308側から第2MOSFET307側に向けて電流が流れ、結果として車両用モータMが反転するようになる。
また、第2構成例に係るECU4は、第1構成例に係るECU1と同様、車両用モータMの回転速度をPWM制御することが可能である。具体的に説明すると、ウィンドウガラスWDの上昇中、すなわち、車両用モータMの正転中、制御回路18がウィンドウガラスWDの現在位置に応じたディーティ比で第1低圧側信号OUTLMを印加して第4MOSFET309をスイッチングすることで、正転時の車両用モータMの回転速度が上記のデューティ比にて制御される。反対に、ウィンドウガラスWDの下降中、すなわち、車両用モータMの反転中、制御回路18がウィンドウガラスWDの現在位置に応じたディーティ比で第2低圧側信号OUTLPを印加して第2MOSFET307をスイッチングすることで、反転時の車両用モータMの回転速度が上記のデューティ比にて制御される。
なお、本実施形態では、車両用モータMの回転速度をPWM制御するにあたり、低圧側のMOSFET、すなわち、第2MOSFET307及び第4MOSFET309を所定のディーティ比でスイッチングすることとしたが、これに限定されるものではなく、高圧側のMOSFET、すなわち、第1MOSFET306及び第3MOSFET308を所定のデューティ比でスイッチングすることとしてもよい。
また、第2構成例では、第1構成例と同様、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUP及び開スイッチDNのいずれもが操作されていない間には、ブレーキ制御が実行される。具体的に説明すると、イグニッションスイッチIGオン中、閉スイッチUP及び開スイッチDNが操作されていない間、制御回路18は、第1低圧側信号OUTLMを第4MOSFET309のゲート端子に向けて出力するとともに、第2低圧側信号OUTLPを第2MOSFET307のゲート端子に向けて出力する。これにより、低圧側のMOSFET307,309が通電状態となり、車両用モータMの端子同士がグランドに接続されて短絡するようになって、車両用モータMの回転が制止されるようになる。
さらに、第2構成例では、第1構成例と同様、イグニッションスイッチIGのオフ中にも低圧側のMOSFET307,309のゲート通電を行ってブレーキ制御を実行することが可能である。より具体的に説明すると、図6に示すように、低圧側のMOSFET307,309の各々のゲート端子及びソース端子の間には、放電抵抗305,311と並列状態でコンデンサ401,404が配置されている。そして、制御回路18は、このコンデンサ401,404と回路的に接続されている。
また、各コンデンサ401,404と低圧側のMOSFET307,309のソース端子の間にはアナログスイッチ403,405が配置されており、このアナログスイッチ403,405は、制御回路18からの入信号(図6中、記号CCONTにて表記)が入力されることにより入状態(オン状態)となる。そして、アナログスイッチ403,405が入状態となっている間に制御回路18が第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPを出力すると、各出力信号(電圧信号)が対応するコンデンサ401,404に印加され、この結果、コンデンサ401,404に電荷が蓄えられるようになる。
したがって、第2構成例では、第1構成例の場合と同様に、イグニッションスイッチIGがオフとなって制御回路18から低圧側のMOSFET307,309の各々のゲート端子への電圧出力が遮断されたとしても、コンデンサ401,404における蓄電電圧を対応するMOSFET307,309のゲート端子に印加し、これらのMOSFET307,309をオンとすることが可能である。
なお、第2構成例においても、低圧側のMOSFET307,309の各々のソース端子と放電抵抗305,311との間にアナログスイッチ402,406が配置されている。そして、制御回路18は、低圧側のMOSFET307,309の各々のゲート端子に向けて電圧信号を出力する際、アナログスイッチ402,406に対して入信号(図6中、記号ENABLEにて表記)を出力する。
以上のような構成により、第2構成例に係るECU4についても、第1構成例に係るECU1と同様の効果を奏することになる。つまり、第2構成例に係るECU4は、図7に示すように、従来のHブリッジ型のECU5と比較すると、回路構成の面で当該ECU5と共通する点が多い反面、上記のコンデンサ401,404を備えている点で相違する。図7は、従来のECUの構成例としてHブリッジ型ECUの構成を示す回路図であり、同図中、図6と同じ符号が付された機器については、第2構成例に係るECU4に設けられたものと同様であるため、説明を省略する。
そして、第2構成例では、イグニッションスイッチIGのオフ中、コンデンサ401,404における蓄電電圧を低圧側のMOSFET307,309のゲート端子に印加する。これにより、低圧側のMOSFET307,309については、制御回路18からのゲート端子への電力出力が遮断されたとしてもオン状態で保持することが可能となる結果、イグニッションスイッチIGのオフ中にもブレーキ制御を実行することが可能となる。
次に、第2構成例に係るECU4の動作例について、図8を参照しながら説明する。図8は、第2構成例に係るECUの動作例を示すタイミングチャートである。
第2構成例に係るECU4では、イグニッションスイッチIGがオンとなっている間、制御回路18は、起動状態となっており、かかる状態では、各MOSFET306,307,308,309のゲート端子に対して電圧を出力することが可能である。なお、前述したように、制御回路18が起動状態にある間には、制御回路18からの入信号ENABLEがアナログスイッチ402,406に入力され、これにより、アナログスイッチ402,406が入状態となる。
また、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されていない間、制御回路18は、第1低圧側信号OUTLMを第4MOSFET309のゲート端子に向けて出力するとともに、第2低圧側信号OUTLPを第2MOSFET307のゲート端子に向けて出力する。これにより、低圧側のMOSFET307,309が通電状態となる結果、ブレーキ制御が実行され、車両用モータMの回転が制止されるようになる。
さらに、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されていない間には、制御回路18からの入信号CCONTがアナログスイッチ403、405に入力されて、アナログスイッチ403、405が入状態(オン状態)となる。これにより、制御回路18からコンデンサ401,404までの回路が通電状態となり、制御回路18からの出力電圧、具体的には第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPが、それぞれ、対応するコンデンサ401,404にも印加され、結果として、コンデンサ401,404に電荷が蓄えられるようになる。
一方、イグニッションスイッチIGがオンとなっている期間中、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されると、先ず、その時点(図8中のa時点やe時点)でブレーキ制御が中断される。つまり、閉スイッチUPや開スイッチDNが操作されると、制御回路18は、第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPの出力を中断する。
その後、制御回路18は、操作されるスイッチの種類に応じて4つのMOSFET306,307,308及び309の各々のオンオフをスイッチングする。例えば、閉スイッチUPが操作された場合、当該操作が終了するまでの間(図8中、b時点からc時点までの期間)、制御回路18は、第1MOSFET306のゲート端子に向けて第1高圧側信号OUTHPを出力するとともに、第4MOSFET309のゲート端子に向けて第1低圧側信号OUTLMを出力する。これにより、第1MOSFET306及び第4MOSFET309がオン状態となり、車両用モータMには、第1MOSFET306側から第4MOSFET309側に向けて電流が流れ、車両用モータMが正転するようになる。
反対に、開スイッチDNが操作された場合、当該操作が終了するまでの間(図8中、f時点からg時点までの期間)、制御回路18は、第3MOSFET308のゲート端子に向けて第2高圧側信号OUTHMを出力するとともに、第2MOSFET307のゲート端子に向けて第2低圧側信号OUTLPを出力する。これにより、第3MOSFET308及び第2MOSFET307がオン状態となり、車両用モータMには、第3MOSFET308側から第2MOSFET307側に向けて電流が流れ、車両用モータMが反転するようになる。
なお、車両用モータMを回転駆動している間、制御回路18は、モータ回転速度をPWM制御するために、ウィンドウガラスWDの現在位置に応じたディーティ比で、低圧側のMOSFET307,309のゲート端子に向けて電圧信号(具体的には、第1低圧側信号や第2低圧側信号)を出力する。この結果、第2MOSFET307におけるゲート端子−ソース端子間の電位差(図6及び8中、記号FETLPにて表記)、及び、第4MOSFET309におけるゲート端子−ソース端子間の電位差(図6及び8中、記号FETLMにて表記)が、上記のデューティ比に応じてオンオフ制御(ディーティ制御)されるようになる。
また、車両用モータMを回転駆動している間、制御回路18は、アナログスイッチ403、405に対する入信号CCONTの出力を中断し、アナログスイッチ403,405を切状態とする。つまり、車両用モータMの回転駆動中、低圧側のMOSFET307,309のゲート入力信号に遅れが生じないように、各MOSFET307,309のゲート端子とソース端子に接続される機器を、放電抵抗305,311のみに限定する。
そして、スイッチの操作が終了してから所定時間が経過した時点(図8中、d時点やh時点)で、制御回路18は、第1低圧側信号OUTLMを第4MOSFET309のゲート端子に向けて出力し、第2低圧側信号OUTLPを第2MOSFET307のゲート端子に向けて出力する。これにより、ブレーキ制御が再び実行されるようになる。
また、ブレーキ制御が再開されてから予め設定された時間が経過した時点(図8中、i時点)で、制御回路18が、アナログスイッチ403,405に対する入信号CCONTの出力を再開し、アナログスイッチ403,405を入状態とする。これにより、制御回路18からの出力電圧である第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPが、それぞれ、対応するコンデンサ401,404に再び印加され、コンデンサ401,404に電荷が蓄えられるようになる。
以上までに説明してきた一連の動作は、イグニッションスイッチIGのオン中、閉スイッチUP又は開スイッチDNが操作される度に繰り返される。
一方、イグニッションスイッチIGがオフとなった時点(図8中、j時点)で、制御回路18は、非起動状態となり、制御回路18から低圧側のMOSFET307,309のゲート端子への出力電圧、すなわち第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPがオフとなる。また、第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPがオフとなることに伴い、制御回路18からアナログスイッチ402,406への入信号ENABLEの出力が中断され、アナログスイッチ402,406が切状態となる。
そして、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間、第2MOSFET307のゲート端子には、コンデンサ401における蓄電電圧が印加されるようになり、第4MOSFET309のゲート端子には、コンデンサ404における蓄電電圧が印加されるようになる。これにより、引き続き、低圧側のMOSFET307,309の各々では、ゲート端子−ソース端子間の電位差FETLP,FETLMがゲート通電限界電圧VTH以上に維持され、低圧側のMOSFET307,309の双方がオン状態で維持されることになる。
以上の結果、第2構成例についても第1構成例と同様、イグニッションスイッチIGがオフとなっている間であっても、車両用モータMの両端子が低圧側のMOSFET307,309を介してグランドに接続されて短絡し、車両用モータMの回転に対してブレーキ制御を実行することが可能である。なお、この間、コンデンサ401,404からグランドへの放電を抑える目的から、制御回路18からの出力電圧がオフとなっている間、アナログスイッチ402,406が切状態となっており、放電抵抗305とコンデンサ401との間の接続、及び、放電抵抗311とコンデンサ404との接続がそれぞれ断たれている。
一方、第2構成例においても、低圧側のMOSFET307,309の各々のゲート端子とソース端子との間の寄生容量に起因したリーク電流の発生等により、コンデンサ401,404における蓄電電圧は経時的に減少し、これに伴って、低圧側のMOSFET307,309の各々のゲート端子−ソース端子間の電位差FETLP,FETLMが緩やかに減少してしまう。
このため、第2例においても、制御回路18に備えられたタイマーがイグニッションスイッチIGのオフ時刻から計時を開始し、計時開始から所定時間に達した時点(図8中、k時点)で、制御回路18中の信号生成回路がウェイクアップ信号を生成してCPUに出力することとしている。この結果、イグニッションスイッチIGがオフとなった後、制御回路18の状態は、非起動状態からウェイクアップ状態へ切り替えられ、ウェイクアップ状態にある間に制御回路18は、電荷を蓄えるためにコンデンサ401,404に向けて電圧を出力するようになる。なお、制御回路18がウェイクアップ状態にあり制御回路18からの出力電圧がオンとなっている間は、制御回路18からの入信号ENABLEがアナログスイッチ402,406に入力され、アナログスイッチ402,406が入状態となる。
制御回路18の状態は、所定の期間(図8中、k時点〜l時点までの間)だけウェイクアップ状態で維持された後に、再び非起動状態に移行する。その後は、周期的(例えば、図5中のm時点、o時点及びq時点)に制御回路18の状態が非起動状態からウェイクアップ状態に切り替わる。そして、ウェイクアップ状態へ切り替わる都度、所定時間だけ制御回路18からの入信号ENABLEをアナログスイッチ202に入力するとともに、制御回路18からの出力電圧、すなわち、第1低圧側信号OUTLM及び第2低圧側信号OUTLPをオンとする。
以上のように、第2構成例においても、イグニッションスイッチIGのオフ中、コンデンサ401における蓄電電圧が印加されたゲート端子の電位と対応するソース端子の電位との間の電位差FETLP、及び、コンデンサ404における蓄電電圧が印加されたゲート端子の電位と対応するソース端子との電位との間の電位差FETLMが、それぞれソースゲート通電限界電圧VTH以上に維持されることとなる。
<<その他の実施形態について>>
以上までに説明してきた実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、上記の実施形態では、車両用のウィンドウガラスWDを開閉駆動させるための車両用モータを制御するECUについて説明したが、ウィンドウガラスWDは車両に備えられた開閉体の一例であり、本発明のモータ制御装置は、ウィンドウガラスWD以外の開閉体、例えば、ドア等を開閉駆動させるための車両用モータを制御する場合にも利用可能である。さらに、本発明のモータ制御装置は、開閉体以外の被駆動体、例えばワイパ装置を駆動させるための車両用モータを制御する場合にも利用可能である。
また、上記の実施形態では、電界効果トランジスタのゲート端子に向けて電圧を出力する電圧出力部の一例として、マイクロコンピュータからなる制御回路18を挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、DSPやゲートアレイで構成した電力出力部であってもよい。また、上記の実施形態では、制御回路18及びその周辺インタフェースが分離したECUについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、マイコンや周辺インタフェースがシステムICとして一体化したECUであってもよい。