JP5880999B2 - 液体−液晶間相転移と液晶欠陥の相互作用による物体移動機構および物体移動方法 - Google Patents
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Description
4-pentyl-4’-cyanobiphenyl等,液晶性の物質は、分子が等方(無秩序)となった液体状態と、分子が一定の方向に配向した液晶状態を取ることができ、所定の温度(相転移温度)において液体状態と液晶状態との間で状態が可逆変化する。そして、かかる物質中に、相転移温度が含まれる温度勾配が存在した場合には、物質中に、液体相と液晶相とが界面を挟んで同時に存在する状態となる。
本発明は、かかる内部に液体相と液晶相とが界面が存在する物質における液体−液晶間相転移と液晶欠陥の相互作用による物体移動機構および物体移動方法に関する。
また、液晶は、電界や磁界を加えて液晶分子の配向方向を変化させるとその粘性が変化する。つまり、液晶は、電気粘性流体としての性質も有しているので、この性質を利用した軸受やダンパー等が開発されている。
第2発明の液体−液晶間相転移を利用した物体移動機構は、第1発明において、前記液晶を乱す処理が、前記物質と接触すると、該物質中に液晶欠陥を形成し得る処理であることを特徴とする。
第3発明の液体−液晶間相転移を利用した物体移動機構は、第1または第2発明において、前記温度勾配形成手段は、前記物質を冷却する冷却手段と、該冷却手段に対して離間した位置に配設された、前記物質を加熱する加熱手段と、を備えていることを特徴とする。
第4発明の液体−液晶間相転移を利用した物体移動方法は、液体状態と液晶状態とを取り得る物質に、該物質と接触すると液晶を乱す処理が施された接触面を有する移動部材をその接触面が前記物質と接触するように配設し、前記物質中に、相転移温度を含む温度勾配を形成させ、前記物質中における相転移温度の相転移領域を移動させることを特徴とする。
第5発明の液体−液晶間相転移を利用した物体移動方法は、第4発明において、前記液晶を乱す処理が、前記物質と接触すると、該物質中に複数の液晶欠陥を形成し得る処理であることを特徴とする。
第2発明によれば、液晶を乱す処理が複数の液晶欠陥を物質中に形成し得る処理であるので、移動部材を相転移領域の移動に追従させて移動させやすくなる。
第3発明によれば、液晶相側と液体相側の位置を逆転させれば、相転移領域の移動に伴う物体の移動方向を逆向きにすることができるから、物体を一方向だけでなく、双方向に移動させることができる。
第4発明によれば、物質に加える熱エネルギを調整すれば、相転移温度の相転移領域を液晶相側から液体相側に向かって移動させることができる。すると、移動部材には、物質と接触する接触面に液晶を乱す処理が施されているので、この処理が行われた個所に相転移領域が到達すると、相転移領域とともに移動部材を移動させることができる。
第5発明によれば、液晶を乱す処理が複数の液晶欠陥を物質中に形成し得る処理であるので、移動部材を相転移領域の移動に追従させて移動させやすくなる。
本発明の物体移動機構は、物質に熱エネルギを加えることによって物質中の物体を移動させるものであり、物体の移動に、物質の液晶−液体間の界面の移動を利用することに特徴を有している。
図1において符号Mは、固定プレートBP上に配置された物質Mを示している。この物質Mは、例えば、4-pentyl-4’-cyanobiphenylや4-methoxy-benzilidene-4-butyl-aniline等の温度を変えることによって液晶状態(図1中液晶層LCで示す)を液体状態(図1中液体層Lで示す)との間で状態を変化させることができる物質を示している。
なお、図1では、物質Mが固定プレートBP上に配置されている場合を示しているが、本発明の物体移動機構を適用する装置では、物質Mを配置する部材は特に限定されない。例えば、物質Mは、箱状の部材内に収容した状態としてもよく、とくに限定されない。
図1に示すように、固定プレートBPの下面には、ヒータなどの加熱手段Hと、チラー等の冷却手段Cが設けられている。
この加熱手段Hは、固定プレートBPを介して物質Mを加熱することができるものであり、少なくとも、物質Mを、その液晶−液体間の相転移温度Tcよりも高い温度まで加熱できる機能を有するものである。
また、冷却手段Cは、固定プレートBPを介して物質Mを冷却することができるものであり、前記加熱手段Hからある程度離間した位置に配置されている。この冷却手段Cは、少なくとも、物質Mを、その液晶−液体間の相転移温度Tcよりも低い温度まで冷却できる機能を有するものである。
そして、加熱手段Hおよび冷却手段Cは、両者の温度を調整して物質M中に形成される温度勾配を調整する制御手段Sに連結されている。
物質Mは、相転移温度Tcより高温では液体、相転移温度Tcより低温では液晶となるので、物質M内には、右側に液体相Lの領域、左側に液晶相LCの領域が形成され、両領域の間に相転移領域IFが形成されるのである。
かかる加熱手段Hおよび冷却手段Cを備えた温度勾配形成手段を設けた場合には、冷却手段Cが物質から奪う熱エネルギと、加熱手段Hから物質に供給する熱エネルギとを調整すれば、物質M中に形成させる温度勾配Tgを自由に調整することができる。つまり、加熱手段Hの温度や冷却手段Cの温度を調整するだけで、冷却手段Cと加熱手段Hとの間に形成される相転移領域IFの位置及び移動を調整することができるので、相転移領域IFの移動の制御が容易になるし、制御手段Sの構成も簡単な構成とすることができる。
図1において、符号MPは物質M上に載せられている移動部材、つまり、本実施形態の物体移動機構において移動される移動部材を示している。この移動部材MPは、例えば、平板などであるが、その形状などはとくに限定されない。
この移動部材MPは、その接触面(図1では下面)が物質Mと接触するように配設されており、しかも、物質Mと接触した状態を維持したまま所定の移動方向に沿って移動できるように保持されている。例えば、図2であれば、後述する相転移領域IFは左右方向に移動するが、移動部材MPも左右方向に沿って、物質Mと接触したまま移動することができるように保持されている。
そして、移動部材MPの接触面には、液晶LC状態の物質Mと接触すると、物質Mの液晶LCの状態を乱す処理、つまり、液晶LC中の液晶分子の配向を乱す処理a(以下、欠陥処理aという)が施されている。例えば、液晶LC状態の物質Mと接触すると、物質M中の分子配向場のエネルギーが増加するようなラビング処理が施されている。具体的には、垂直配向処理や平行配向処理、あるいはそれらの複合処理等を挙げることができる。
なお、移動部材MP自体、または、移動部材MPにおいて物質Mと接触する部分を、液晶LC状態の物質Mと接触すると物質M中の分子配向場のエネルギーが増加するような物質で構成しても、同様の効果を得ることができる。例えば、移動部材MPの表面に上記物質の層を設けるなどの処理を行ってもよい。液晶LC状態の物質Mと接触すると物質M中の分子配向場のエネルギーが増加するような物質は、例えば、ポリスチレンや界面活性剤などを挙げることができるが、とくに限定されない。
つぎに、上記のごとき物体移動機構において、移動部材MPを移動させる方法を説明する。
まず、加熱手段Hによって物質Mの一部を相転移温度Tcより高温に加熱し、冷却手段Cによって物質Mの一部を相転移温度Tcより低温に冷却して、物質M中に相転移領域IFが形成されるように調整する。そして、移動部材MPを液体相L上に配置する。
つまり、物質Mに加える熱エネルギを調整して、物質Mの温度勾配Tgを変化させる、言い換えれば、相転移領域IFを移動させれば、物質M中と接触している移動部材MPを移動させることができるのである。
液晶相LC中では、全液晶分子がある方向に配向した状態で存在しているのに対し、液体中では分子が無秩序な状態(等方状態)で存在している。すると、移動部材MPにおいて欠陥処理aが施されていると、物質Mと移動部材MPを含む系全体では、移動部材MPにおいて欠陥処理aが液晶相LC中に存在するよりも移動体mが液体相L中に存在する方がエネルギ的に低い状態をとることになる。なぜなら、欠陥処理aによって、液晶相LC中の液晶分子の配向が乱されるからである。
すると、相転移領域IFが液晶相LC側から液体相L側に移動する場合、移動部材MPにおいて液体相Lと接している接触面の欠陥処理aによって液晶LC中に配向の乱れが生じないように、移動部材MPが液体相Lと接触した状態を維持し続けようとする。言い換えれば、物質Mと移動部材MPを含む系がエネルギ的に低い状態を維持しようとするために、移動部材MPが液体相Lと接触した状態を維持し続けようとする。このため、相転移領域IFが液晶相LC側から液体相L側に移動する場合には、移動部材MPは、その欠陥処理aの部分が相転移領域IFの位置に配置されているかのように、相転移領域IFとともに移動するのである。
なお、移動部材MPを保持する構成はとくに限定されず、温度勾配形成手段によって相転移領域IFが移動される方向に沿って移動するように移動部材MPさせることができるようになっていればよい。
例えば、固定プレートBPの上面と平行にレールを配設し、このレールにスライダなどを介して移動部材MPを取り付ける。すると、移動部材MPをレールに沿ってしかも移動部材MPの接触面を物質Mと接触させたまま移動させることができる。
また、移動部材MPは物質M上に載せておくだけでもよく、この場合には、相転移領域IFの移動方向に沿って、自由に移動部材MPを移動させることができる。
なお、上記例では、加熱手段Hや冷却手段Cは固定プレートBPの外面から物質Mを加熱冷却する場合を説明したが、物質Mを加熱冷却できるのであれば、加熱手段Hや冷却手段Cを設ける位置はとくに限定されない。例えば、加熱手段Hや冷却手段Cを物質Mに直接接触させて加熱冷却してもよい。
逆に、物質Mの相転移温度が室温よりも低い場合であれば、図1における加熱手段Hに冷却手段Cを設けてもよい。つまり、図1における固定プレートBPの両側に冷却手段Cを設けてもよい。この場合も、一方の冷却手段Cだけで物質Mを冷却しても、物質M中に相転移温度Tcを含む温度勾配を形成させることができるし、また、両冷却手段Cによる冷却状態を調整しても、物質M中に相転移温度Tcを含む温度勾配を形成させることができる。
例えば、図1であれば、右側に液晶相LCの領域、左側に液体相Lの領域が形成されているので、相転移領域IFを右側から左側に移動させれば、移動体mを右側から左側に向かって移動させることができる。この状態から、液晶相LCの領域と液体相Lの領域を逆転させて、左側に液晶相LCの領域、右側に液体相Lの領域が存在するようにすれば、相転移領域IFを左側から右側に移動させたときに、移動体mを左側から右側に向かって移動させることができるのである。
LC 液晶相
M 物質
MP 移動部材
a 欠陥処理
IF 相転移領域
Tc 相転移温度
Tg 温度勾配
Claims (5)
- 液体状態と液晶状態とを取り得る物質と、
該物質中に、相転移温度を含む温度勾配を形成させる温度勾配形成手段と、
前記物質に接触した状態で配置され、該物質に接触した状態で移動可能に設けられた移動部材と、を備えており、
該温度勾配形成手段は、
前記物質中において相転移温度の相転移領域を移動させる相転移領域調整機能を有しており、
前記移動部材は、
前記温度勾配形成手段によって相転移領域が移動される方向に沿って移動するように配設されており、
前記物質と接触する接触面に、液晶を乱す処理が施されている
ことを特徴とする液体−液晶間相転移を利用した物体移動機構。 - 前記液晶を乱す処理が、
前記物質と接触すると、該物質中に液晶欠陥を形成し得る処理である
ことを特徴とする請求項1記載の液体−液晶間相転移を利用した物体移動機構。 - 前記温度勾配形成手段は、
前記物質を冷却する冷却手段と、
該冷却手段に対して離間した位置に配設された、前記物質を加熱する加熱手段と、を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の液体−液晶間相転移を利用した物体移動機構。 - 液体状態と液晶状態とを取り得る物質に、該物質と接触すると液晶を乱す処理が施された接触面を有する移動部材をその接触面が前記物質と接触するように配設し、
前記物質中に、相転移温度を含む温度勾配を形成させ、
前記物質中における相転移温度の相転移領域を移動させる
ことを特徴とする液体−液晶間相転移を利用した物体移動方法。 - 前記液晶を乱す処理が、
前記物質と接触すると、該物質中に液晶欠陥を形成し得る処理である
ことを特徴とする請求項4記載の液体−液晶間相転移を利用した物体移動方法。
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