JP5878699B2 - 鋼製品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面処理により表面の耐摩耗性と疲労特性を向上させ、優れた耐摩耗特性と疲労特性を発揮して耐久性に優れた鋼製品およびその製造方法に関する。
各種の鋼材からなる機械部品や金型類等の鋼製品は、その耐摩耗性や疲労特性を向上させる目的で、その表面部に窒素や炭素を侵入させることにより、表面硬度や表面圧縮応力を向上させる方法が適用されている。具体的には、ガス窒化処理、塩浴窒化処理、イオン窒化処理、プラズマ窒化処理、ガス浸硫窒化処理、塩浴浸硫窒化処理、浸炭処理、浸炭窒化処理などがあげられる。これら各種の表面硬化処理は、幅広い分野の鋼製品に適用されている。
これらの中でも、浸炭処理や浸炭窒化処理は、深い硬化深度が得られることから、例えばクランクシャフトやギヤ等の自動車分野をはじめとして幅広い分野で適用が進んでいる。特に、浸炭窒化処理は、材料表面に炭素だけでなく窒素も拡散させることにより、表面部の軟化抵抗が向上することから、多くの開発がなされてきている(例えば、下記の特許文献1、2、3)。
また、ガス浸炭窒化処理において、粒界酸化層が生成する問題等を解決することにより、疲労強度をさらに向上させるものとして、真空浸炭窒化処理の開発も活発に行われている(例えば、下記の特許文献4、5)。
しかしながら、上記浸炭窒化処理は、一般に、鋼材中に炭素を浸透させるため、炭素が拡散しやすいオーステナイト状態で実施され、鋼材の変態点よりも高温に加熱する必要がある。このため、オーステナイト結晶粒が粗大化して材料特性が劣化したり、熱処理歪が大きくなったりしやすい。したがって、寸法精度の厳しい機械部品等には適用が困難で、あえて適用したとしても、処理後に歪を矯正する追加工程が必要となり、追加工程によって表面の圧縮残留応力が低下し、疲労強度が低下するといった問題を生じかねない。
一方、鋼の変態点以下の温度で実施される窒化処理は、浸炭に比べて熱処理歪が少ないことから、各種の機械部品や金型類に幅広く利用されている。このような窒化処理は、従来、表面硬化によって耐摩耗性を向上させる目的で実施される場合が大半であった。
機械構造用部品等にとって、疲労強度の向上と熱処理歪の低減を両立させることは非常に重要な課題である。そこで、近年では、疲労特性を改善する目的で窒化処理を採用する研究が進められている(例えば、下記の特許文献6、7)。
また、各種金型は、機械的応力や熱応力が繰り返し加わる製品であるため、材料強度をできるだけ落とさないよう、熱処理は低温で行うのが好ましい。特に、微細形状を有する精密加工用金型やヒートサイクルによる繰り返し熱応力が負荷となるダイカスト金型では、耐摩耗性だけでなく疲労強度を向上することが金型寿命に大きな影響を与えることとなる。そこで、金型の疲労強度を向上する方法についても開発が行われている(例えば、下記の特許文献8)。
また、鋼の変態点以下で鋼材中に炭素を拡散させる方法が開示されている(例えば、下記の特許文献9、10)。さらに、そのような低温浸炭処理に窒化処理を組み合わせることにより、歪を低減するだけでなく、窒化層の耐摩耗性と、浸炭層もしくは浸炭窒化層の靭性とを兼ね備えた特性を得る方法も開示されている(例えば、下記の特許文献11)。
特許第2724456号 特開平7−173603 特WO2009/054530 特開平11−158601 特開2006−28541 特開平10−30632 特開平11−72159 特開平10−287965 特開平8−176791 特開平6−172943 特開2005−36279 特開2006−249486
特許文献6および7には、深い表面硬化層を形成させることにより、機械部品の疲労強度等を向上させることが開示されている。
特許文献6の〔段落0004〕に記載があるように、軟窒化用鋼材を使用すると高い疲労強度が得られる一方で、表面近傍の拡散層にも窒化物が析出して硬さが極端に高くなって矯正が困難になる。このため、材料表面で硬度が上がらないようにして深い硬化層を形成することにより疲労強度を向上させるため、時効硬化元素として窒化物や炭化物を形成しないCuを一定量添加している。ところが、〔段落0020〕に記載があるとおり、Cuは鋼材の表面品質を悪化させ易い元素であるため、鍛造時の作業性や不良品率が悪化するという弊害を伴うと考えられる。
一方、特許文献7には、窒化化合物層の下に窒素拡散層が形成され、硬度が高くかつ靭性も備え、疲労強度も備えた軟窒化歯車が開示されている〔段落0017等〕。しかしながら、特許文献7の歯車は、Crが約1%含まれていることに加え、通常の窒化処理方法ではフェライト領域で炭素を材料中に拡散させることができないため、非常に硬度の高いCrNが多数析出しているはずである。したがって、実際に形成される窒素拡散層は析出したCrNの影響を受けるはずであり、得られる靭性が実用上耐えうるものかどうかは甚だ疑問である。
特許文献8は、熱間加工用金型に関するものである。熱間加工用金型は、機械的応力に加え、ヒートサイクルによる繰り返し熱応力が負荷となり、熱疲労によるクラックが表面に発生することが寿命を決める。
一般に、窒素拡散層中の炭素濃度は、特許文献8の〔段落0011〕に記載のある通り、母材の炭素濃度よりも低下する。浸炭性ガスを含んだ窒化雰囲気においてNとCが格子間拡散するときは、CよりもNの侵入が優先されるため、Cの大部分は窒素拡散層よりも深い部分へ押しやられるからである。
特許文献8は、その窒素拡散層中の炭素濃度を母材の炭素濃度の80%以上100%未満に制御することにより、耐ヒートクラック性を向上させようとするものである。しかしながら、特許文献8には、その具体的な理由について一切言及されていない。
すなわち、特許文献8において、〔図4〕に見られる粒界析出物は、Nの侵入によって粒界に押しやられて濃化した炭素が炭化物を形成したものであると考えられる。この炭化物は、周囲に析出した窒化物に比べて硬度が低いことから、上記炭化物によって炭素が濃化した部分のヒートクラックが進展しやすいという理由にはならない。また、上記炭化物が表面に対して平行に形成されるのに対し、ヒートクラックは表面に対して垂直に進展することから、炭素濃度が高いことがヒートクラックの進展を助長する直接原因になっているとは考えられない。炭素濃度が高い部分では、窒素濃度が低下しているはずであり、窒化物よりも軟質の炭化物を形成する炭素の濃度が高いことは、むしろ靭性の向上に寄与するものと考えられる。このように、特許文献8は、拡散層の窒素濃度と炭素濃度の関係について考慮されたものではない。
特許文献9は、鋼の変態点以下の温度での炭素拡散技術について開示している。すなわち、プラズマ浸炭によってフェライトの存在する温度領域、すなわち変態点以下の温度で浸炭している〔段落0015、0024等〕。
しかしながら、710〜720℃という従来の浸炭方法よりも低温で浸炭自体は実施しているものの〔表2〕、従来の浸炭処理と同様に浸炭層の硬度を上げるために焼入れを行っている〔段落0030〕。したがって、結局のところ、変態点以上に加熱する際の歪や、焼入れ・焼戻し時の歪の発生は避けることができない。
一方、〔段落0025、0026〕には、浸炭処理を窒化処理等の表面硬化法と組合せることができる旨の記載はあるが、具体的な実施方法の開示も実施例について一切の言及がない。仮に、実施できるとしても、窒化処理の前後に焼入れ処理が必要と考えられ、生産性の低いプラズマ処理装置を用いて低温浸炭するメリットを得られない方法であり、実用レベルの記述がないのは明らかである。
特許文献10は、イオン浸炭窒化もしくは真空ガス軟窒化により、窒化雰囲気に過剰にCOガスを供給して耐摩耗性の高い金型とすることを開示するものである〔段落0030〕。
しかしながら、〔図2〜6〕のEPMA分析結果を見る限り、化合物層(ε相の鉄窒化物層)では炭素濃度の上昇が見られるものの、拡散層では母材の炭素濃度と同じになっている。
このような化合物層および拡散層は、炭素濃度が低いものと比べると靭性が向上し、欠けや割れ等が抑制されて耐摩耗性の向上はある程度期待できる。しかしながら、疲労特性の向上まで求めるには十分な靭性が得られない。そのためには、化合物層だけでなく拡散層中の炭素濃度も、母材より高くすることが必要である。
特許文献11では、前処理としてフッ化することによって、プラズマや真空装置等を使用せずに常圧で、変態点以下の浸炭処理が可能であることが開示されている。この方法は、浸炭処理後の焼入れを用いることなく、炭化物を多数析出させることで表面部の硬度を上昇させ、耐摩耗性を向上させている。
ところが、耐摩耗性を十分に向上させようとすると、かなりの炭化物を析出させる必要があるはずであることから、炭化物の粗大化や偏析が生じやすくなり、疲労強度の向上にとってはマイナスが多くなる。したがって、十分な耐摩耗性と疲労強度を両立させるのは困難だと思われる。
特許文献12は、フッ化の後に鋼材表面から炭素を優先的に侵入させ、その後の窒化処理時の窒素拡散を抑制して窒化層の硬度を制御し、耐摩耗性と靭性を有した窒化層を形成することが開示されている。
ところが、各種製品の小型化や高機能化が一層進むのにしたがって、機械部品等に対する負荷がますます高くなってきている。このため、低温処理の適用による低歪化はもちろんであるが、単に窒化層の硬度を制御するだけではなく、より高い靭性を持つ表面層を設計した機械部品等の開発が急務となっている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、熱処理歪が少なく、耐摩耗性に加え優れた疲労特性を兼ね備えた鋼製品およびその製造方法を提供することを目的とする。
一般に、窒化処理された鋼材表面の窒素拡散層は、たとえ低窒素濃度として硬度を抑制したとしても、窒素が侵入することによって炭素がより深いところへ押しやられてしまい、低炭素濃度となってしまうことが回避できない。この低炭素濃度の窒素拡散層は、高炭素濃度で同等硬さの窒素拡散層よりも靭性に劣ることが分かった。したがって、耐摩耗性という面では、ある程度窒素濃度が高い拡散層が必要となる一方、疲労特性を兼ね備えるためには、より靭性の高い炭素主体の拡散層、すなわち母材よりも炭素濃度の高い炭素濃化拡散層を形成することが重要であると考えられた。
さらに、鋼の変態点より低い温度で炭素および窒素を拡散させ、炭素濃度を母材濃度よりも高くした機械部品等は、焼入れ等の工程を付加する必要が無く、熱処理歪も非常に少ない。また、実質的に残留オーステナイトがほとんど存在しない状態であり、残留オーステナイトの分解による寸法の経時変化も少ない。さらに、靭性に富んだ炭素濃化拡散層が形成されて高い疲労強度を発現させることが可能となる。このため、低温処理を行うことは強度向上にとって極めて有効な手段であるといえる。
そこで、鋭意検討を重ねた結果、鋼材の表層部に炭素濃度が母材の炭素濃度よりも高い状態の窒素拡散層を形成させることにより、より高い疲労強度を有する部材となり、高い耐摩耗性と高い疲労強度を両立させることが可能で、優れた鋼製品となることを突き止めた。すなわち、侵入させた窒素によって炭素が排斥されて炭素濃度が低下する現象を起こさせず、むしろ上昇させる手法を見出した。これにより、炭素の濃化と窒素の濃化が両立した拡散層を形成し、この拡散層の母材側に窒素よりも炭素濃度の高い炭素主体の層を形成させることに成功したのである。
すなわち、上記目的を達成するため、本発明の鋼製品は、
鋼材表面に炭素および窒素の拡散層が形成された鋼製品であって、
その表層部に、炭素濃度が母材炭素濃度よりも高く、かつ窒素濃度が0.5質量%以上であり、その窒素濃度の最高値が1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲にある第一拡散層が形成され、
上記第一拡散層の母材側に、炭素濃度が母材炭素濃度および窒素濃度よりも高く、かつその窒素濃度が0.5質量%未満である第二拡散層が、少なくとも厚み30μm以上形成され、
上記第一拡散層および第二拡散層に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物は、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界への偏析を起こしていない
ことを要旨とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の鋼製品の製造方法は、
鋼材表面に炭素および窒素の拡散層が形成された鋼製品の製造方法であって、
その表層部に、炭素濃度が母材炭素濃度よりも高く、かつ窒素濃度が0.5質量%以上であり、その窒素濃度の最高値が1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲にある第一拡散層を形成し、
上記第一拡散層の母材側に、炭素濃度が母材炭素濃度および窒素濃度よりも高く、かつその窒素濃度が0.5質量%未満である第二拡散層を、少なくとも厚み30μm以上形成し、
第一拡散層および第二拡散層を形成させる熱処理の温度を600℃以下とし、
上記第一拡散層および第二拡散層に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物が、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界への偏析を起こさない
ことを要旨とする。
本発明の鋼製品は、第一拡散層は、拡散層の靭性向上に寄与する炭素の濃度が母材中の炭素濃度よりも高く、窒素濃度を従来の浸炭窒化処理よりも高めに設定しても残留オーステナイトが新たに発生することは無く、機械部品等を使用する際の軟化抵抗を向上させることが可能となることから、高い靭性と耐摩耗性を有する拡散層である。さらに、その第一拡散層の母材側に形成された第二拡散層は、炭素主体の拡散層であり、優れた靭性を有することから、疲労強度の向上に極めて有用な拡散層である。上記の第一拡散層と第二拡散層が、鋼材の深さ方向に連続形成した表面層構造を有することによって、高い耐摩耗性と高い疲労強度を兼ね備えた機械部品等となるのである。
すなわち、第一拡散層は、その処理温度が低いことも作用して、微細分散した炭化物、窒化物等の析出物が形成されている。さらに窒素の侵入によって内部へ押しやられて濃度の減少が起こる炭素の濃度が母材炭素濃度よりも高い。すなわち、拡散層の硬度上昇による摩耗抑制効果を発揮させる窒素と、拡散層の靭性向上に寄与する炭素の双方の濃度が高くなっている。したがって、クラック等が発生しにくく、耐摩耗性が一層向上し、かつ疲労特性にも優れたものとなる。
また、上記第一拡散層の母材側に第二拡散層が形成されている。第二拡散層は、それほど硬度は高くないものの靭性に優れた炭素主体の拡散層であり、機械的応力が繰り返し加えられた場合にも、優れた疲労特性を示す。また、表面にクラック等の欠陥が発生するような過酷な使用環境においても、上記第二拡散層がクラックの進展を抑制する。例えば、ダイカスト金型等のように機械的応力だけでなく、加熱と急冷が繰り返される熱応力によって圧縮と引張が繰り返される熱疲労にも強い表面層となる。
また、鋼の変態点温度以下で上記拡散層を形成させた場合、歪量が少なく、高精度の機械部品等にも利用可能である。しかも、第一拡散層中の窒素濃度を1.0質量%以上としても、残留オーステナイト量は増加せず、残留オーステナイトの分解による形状の経時変化や疲労強度の低下も抑制することができる。
また、本発明、第一拡散層および第二拡散層に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物は、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界への偏析を起こしていないため
繰り返し応力が加わった場合でも、その析出物を起点とした疲労破壊を起こす可能性は極めて低く、疲労強度が低下する要因にならない。したがって、疲労強度に優れた鋼製品となる。
本発明において、第一拡散層および第二拡散層は、母材に比べて残留オーステナイトの増加を伴わない場合には、
残留オーステナイトの分解による経時変化が少なくなり、極めて寸法精度およびその安定性に優れたものとなる。
本発明の鋼製品の製造方法は、第一拡散層は、拡散層の靭性向上に寄与する炭素の濃度が母材中の炭素濃度よりも高く、窒素濃度を従来の浸炭窒化処理よりも高めに設定しても残留オーステナイトが新たに発生することは無く、機械部品等を使用する際の軟化抵抗を向上させることが可能となることから、高い靭性と耐摩耗性を有する拡散層である。さらに、その第一拡散層の母材側に形成された第二拡散層は、炭素主体の拡散層であり、優れた靭性を有することから、疲労強度の向上に極めて有用な拡散層である。上記の第一拡散層と第二拡散層が、鋼材の深さ方向に連続形成した表面層構造を有することによって、高い耐摩耗性と高い疲労強度を兼ね備えた機械部品等となるのである。
すなわち、第一拡散層は、その処理温度が低いことも作用して、微細分散した炭化物、窒化物等の析出物が形成されている。さらに窒素の侵入によって内部へ押しやられて濃度の減少が起こる炭素の濃度が母材炭素濃度よりも高い。すなわち、拡散層の硬度上昇による摩耗抑制効果を発揮させる窒素と、拡散層の靭性向上に寄与する炭素の双方の濃度が高くなっている。したがって、クラック等が発生しにくく、耐摩耗性が一層向上し、かつ疲労特性にも優れたものとなる。
また、上記第一拡散層の母材側に第二拡散層が形成されている。第二拡散層は、それほど硬度は高くないものの靭性に優れた炭素主体の拡散層であり、機械的応力が繰り返し加えられた場合にも、優れた疲労特性を示す。また、表面にクラック等の欠陥が発生するような過酷な使用環境においても、上記第二拡散層がクラックの進展を抑制する。例えば、ダイカスト金型等のように機械的応力だけでなく、加熱と急冷が繰り返される熱応力によって圧縮と引張が繰り返される熱疲労にも強い表面層となる。
また、鋼の変態点温度以下で上記拡散層を形成させた場合、歪量が少なく、高精度の機械部品等にも利用可能である。しかも、第一拡散層中の窒素濃度を1.0質量%以上としても、残留オーステナイト量は増加せず、残留オーステナイトの分解による形状の経時変化や疲労強度の低下も抑制することができる。
また、本発明の製造方法は、第一拡散層および第二拡散層に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物は、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界への偏析を起こしていないため、繰り返し応力が加わった場合でも、その析出物を起点とした疲労破壊を起こす可能性は極めて低く、疲労強度が低下する要因にならない。したがって、疲労強度に優れた鋼製品となる。
また、第一拡散層および第二拡散層を形成させる熱処理の温度が600℃以下であるため、鋼の変態点より大幅に低い温度での処理となることによって、歪量を極めて小さく抑制することが可能となる。加えて、結晶粒や炭化物、窒化物、炭窒化物、金属間化合物等の析出物の粗大化も抑制されることから、材料強度の低下による疲労強度の低下が抑制される。
以上に述べたように、本発明の鋼製品およびその製造方法は、処理温度が低温であることから歪が少ないため厳しい寸法公差に耐えうるばかりでなく、耐摩耗性に加え優れた疲労特性を有するものとなる。
本発明の鋼製品およびその製造方法における拡散層の層構造を示す模式図である。 上記拡散層の層構造を成分濃度で示した線図である。 断面EPMA分析結果上に太い実線および破線で近似曲線を示した図である。 SUS420J2材における実施例と比較例のロックウェル試験結果を示す図である。 SUS420J2材における実施例と比較例の摩耗試験結果を示す図である。 実施例と比較例の回転曲げ疲労試験における疲労限の結果を示した図である。 SKD61材における実施例と比較例の表層部の断面硬度を示した図である。 SKD61材における実施例の表層部の断面EPMA分析結果を示した図である。 上記実施例の最表層部の断面EPMA分析結果を示した図である。 SKD61材における比較例の表層部の断面EPMA分析結果を示した図である。 上記比較例の最表層部の断面EPMA分析結果を示した図である。 SKD61材における実施例と比較例の回転曲げ疲労試験結果を示した図である。
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
図1−1は、本発明の第1実施形態の鋼製品およびその製造方法における拡散層の層構造を示す模式図である。図1−2は、上記拡散層の層構造を成分濃度で示した線図である(化合物層は示していない)。以下の説明において、拡散層の「炭素濃度」「窒素濃度」については、EPMA等を用いて深さ方向の濃度変化を測定した場合、その実測値が、炭化物、窒化物の生成等の影響を受けて振れの大きな値となり、任意の深さにおける「炭素濃度」および「窒素濃度」を的確に表すものとはならないため、それらの深さ方向の濃度曲線の局所的な大きな振れを考慮せず、図1−3の実線および破線で示したようなスムーズな近似曲線として表した場合の濃度として説明する。
本発明の鋼製品は、鋼材表面に炭素および窒素の拡散層が形成された鋼製品である。
本発明では、鋼材の表層部に、化合物層1、その内層に母材4の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有し高硬度かつ靭性を有する第一拡散層2、さらにその内層に高い靭性を有する炭素濃化拡散層である第二拡散層3が形成されている。上記化合物層1、第一拡散層2および第二拡散層3は、例えば、鋼の変態点よりも低い温度において鋼材表面に炭素および窒素を拡散浸透させる熱処理を行うことにより形成することができる。
まず、本発明の鋼製品として使用可能な鋼材について説明する。
上記鋼材としては、機械部品や金型等の材料として使用可能なものであれば、各種の材料を適用することができる。例えば、構造用圧延鋼材、高張力鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、軸受鋼、ばね鋼、肌焼鋼、窒化鋼、快削鋼、耐食鋼、耐熱鋼等をあげることができる。
特に、上記鋼材としては、母材の炭素濃度が0.1〜0.5質量%のものを好適に使用することができる。
つぎに、化合物層1について説明する。
上記化合物層1は、鋼材の最表面に形成されうるもので、窒化処理で母材4中の鉄と窒素や炭素が化合することにより形成された鉄炭化物、鉄窒化物、鉄炭窒化物の少なくともいずれかからなるものである。上記化合物層1は、使用目的によってその厚みをゼロとする場合もあり、その厚さが調整される。化合物層1の厚さの調節は、処理温度、処理時間、ガス組成(窒素ポテンシャル)等のパラメーター制御によって変化させることが可能である。
例えば、耐摩耗性や摺動する相手材との耐凝着性も重視される場合には、2μm以上とするのが望ましく、より好ましくは3μm以上とする。一方、その厚みが15μmを超える場合は、その最表面層が多孔質となり易く、クラック発生の起点となり易いことから、その厚さは15μm以下とするのが望ましく、より好ましくは10μm以下とする。
一方、この最表層の化合物層1は、延性が無く、かつ弾性変形能もほとんど有しない。このため、表面に大きな引張り、曲げ、剪断の応力や、局所的な圧縮応力を受ける用途の場合、上記化合物層1はクラックや剥離等を起こし易く、破壊起点となることから、2μm未満とするのが望ましく、より好ましくは1μm以下とする。
また、摺動する相手材との耐凝着性等が問題とならず、疲労強度が重要となる場合は、最表面の化合物層1をゼロとしても構わない。化合物層1をゼロとするときは、上述したのと同様に熱処理条件の操作で、化合物層1を生成させない処理を行う。また、化合物を生成させる熱処理を行ったあと、化合物層1を機械的に除去してもよい。
つぎに、第一拡散層2について説明する。
上記第一拡散層2は、母材4に炭素と窒素が拡散浸透して炭素および窒素が濃化された耐摩耗性を有する拡散層である。この第一拡散層2は、炭素濃度が母材4の炭素濃度よりも高く、かつ窒素濃度が0.5質量%以上であり、その窒素濃度の最高値が1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲にある。
この第一拡散層2は、最表層に化合物層1が存在する場合は第2層となり、最表層に化合物層1が存在しない場合は第1層となる。
このとき、上記第一拡散層2中の炭素濃度が、母材4の炭素濃度よりも低いと、疲労強度の大幅な向上は期待できない。なぜなら、炭素濃度が低いことは、拡散させる窒素量を調節して硬度を抑制することも可能となる一方、結局のところ、硬質の窒化物が分散析出した靭性の低い硬化層となってしまうからである。
一方で、炭素を十分に拡散させた場合には、表面部の過度な硬度上昇が抑制されるうえ、比較的靭性の高い硬化層を得ることができる。窒化物に比べてやや軟質な炭化物が多数析出するうえ、C同様に鋼材中に侵入してくるNの量も抑制されるからである。したがって、上記第一拡散層2中の炭素濃度は、母材4の炭素濃度以上とする。
さらに、上記の第一拡散層2中の炭素濃度は、第二拡散層3中の炭素濃度以上とすることが望ましい。
また、靭性を十分に向上させることを考慮した場合、第一拡散層2中の炭素濃度は、母材4の炭素濃度よりも0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上高くすることが望ましい。例えば、一般的な炭素鋼、合金鋼、高温工具鋼である、S45C、SCM435、SKD61等であれば、上記第一拡散層2中の平均炭素濃度は、0.5質量%以上とすることが望ましい。
一方で、上記第一拡散層2中の炭素濃度を高くし過ぎると、粗大炭化物の析出や炭化物の粒界偏析を起こし易い。そうなると、耐摩耗性の向上は期待できるものの、疲労強度の面で悪影響を与える可能性が高い。鋼の変態点以下の低温処理とした場合、炭素を過飽和に固溶させても炭化物やその凝集による粗大化による上述した状況には比較的陥りにくい。しかしながら、耐疲労性を確保する意味から、最高炭素濃度は2.0質量%とするのが望ましく、より好ましくは1.5質量%以下とする。
また、上記第一拡散層2中の窒素濃度は0.5質量%以上とし、その窒素濃度の最高値を1.0質量%以上5.0質量%以下とする。
第一拡散層2中の窒素濃度を0.5質量%以上とするのは、この第一拡散層2に十分な耐摩耗性も付与させるためである。
第一拡散層2における窒素濃度の最高値が1.0質量%未満では、疲労強度の向上に有効なだけの大きな残留圧縮応力が得られず、耐疲労性の面で十分な特性が得られない。なぜなら、鋼製品として使用した際の第一拡散層2の軟化抵抗を十分得られず、炭素よりも窒素を鋼材中に侵入させた方が、第一拡散層2中の残留圧縮応力が上昇しやすいからである。
一方、上記第一拡散層2中の窒素濃度の最高値が5.0質量%を超える場合には、疲労強度の低下を招く危険性が高くなる。なぜなら、Nと同様に金属格子間侵入型の元素であるCの濃度を十分に向上させることが難しくなる。また、硬度の過上昇や靭性の低下も起こし易い。しかも、鋼製品として使用した際に、その表面部に応力が加わるとクラック等の欠陥を発生し易くなるからである。
また、上記第一拡散層2の厚さは、使用用途、すなわち耐摩耗性をどの程度必要とするかによって、適宜設定することができる。望ましくは、3μm以上とし、より好ましくは5μm以上とする。上記第一拡散層2は、鋼材表面の硬度および耐摩耗性を向上させるだけでなく、表面部に残留圧縮応力も付与させるため、疲労強度の面でも効果を発揮するからである。
つぎに、第二拡散層3について説明する。
上記第二拡散層3は、上記第一拡散層2の母材4側に形成される、炭素が主体として濃化された拡散層である。この第二拡散層3は、炭素濃度が母材4の炭素濃度および第二拡散層3の窒素濃度よりも高く、かつその窒素濃度が0.5質量%未満であり、さらに少なくとも厚み30μm以上形成されている。
この炭素主体の第二拡散層3が形成されることによって、上記第一拡散層2を下から支え、本発明の鋼製品の靭性を大幅に向上させるのに有用な効果を与える。
上記第二拡散層3中の窒素濃度が0.5質量%以上になると、第二拡散層3中の炭素濃度を十分に上昇させることが難しくなり、狙いとする靭性が得られないため、その上限濃度は0.5質量%未満とする。
第二拡散層3の厚さは、30μm以上とする。すなわち、この第二拡散層3は、最表面から母材4に向かって硬度が徐々に低下し、表面からの特定の深さの部位に応力集中することを回避する傾斜機能層である。加えて、第二拡散層3は、例えば表面に近い側の化合物層1や第一拡散層2にクラック等が発生する程度の応力が加わった場合、その進展を抑制する。したがって、第二拡散層3は、優れた疲労強度を発揮するためにある程度の厚さを有することが必要となる。
負荷となる応力がそれほど高くない場合や部材が肉薄である場合は、靭性がそれほど重要では無いため、例えば、鋼材表面部に窒素主体の拡散層が形成される従来の窒化処理品でも、使用可能なレベルとなる。しかしながら、本発明の狙いである高い疲労特性を実現するには、大きな応力が加わってもクラック等の発生を抑制し、仮に欠陥が発生してもその進展を抑制するだけの靭性を発揮する層にしなければならない。
上記第二拡散層3の厚さが30μm未満だと、特にクラック等の進展を抑制する機能が十分でない。したがって、本発明では第二拡散層3の厚さを30μm以上とする。より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。
つぎに、本発明の鋼製品の製造方法について説明する。
上記のような表面層構造は、例えばつぎのような方法でつくることができる。
基本的には、窒素源となるガスおよび炭素源となるガスを含む雰囲気ガスの中に鋼材を置き、所定の温度に加熱して所定の時間保持することにより、窒素および炭素を鋼材の表面から拡散浸透させることにより、第一拡散層2および第二拡散層3を形成し、必要に応じて化合物層1を形成する。
このとき、第一拡散層2および第二拡散層3を形成させる熱処理の温度は、鋼の変態点よりも低温の600℃以下とするのが好ましい。
そして、第1段階として相対的に低温でCを拡散浸透させる。このとき、炭素を浸透させすぎると第2段階で窒素が浸透しなくなる。つぎに第2段階で、少し温度を上げてガス組成のバランスをみながら長時間をかけてNとCを拡散浸透させる。
通常のガス窒化処理やガス軟窒化処理では、その処理雰囲気中に炭素源ガスを含んでいたとしても、母材4がフェライトを呈する温度では炭素を鋼材表面から内部へ拡散させることが極めて難しい。そこで、最初にフッ素化合物やフッ素ガス、塩素化合物や塩素ガス等のハロゲン系物質を補助的に、好ましくは前処理用として用いることによって、表面から炭素が拡散浸透し易くなり、低温での炭素拡散を比較的容易に実現できる。
また、プラズマ窒化処理等を用いることも可能である。この場合、ある程度の陰圧状態、望ましくはある程度の真空状態中での処理が必要である。ただし、表面処理層全体の均一性や生産性に劣ることから、ほぼ大気圧で実施可能なハロゲン化処理を利用した上述の方法が好ましい。
ハロゲン化処理を利用する処理において、鋼材表面に形成させたハロゲン化物は、炭素をスムーズに鋼材表面部へ拡散させてやるためには除去することが望ましい。ハロゲン化物の除去は、ハロゲン化された鋼材を還元することによって行うことができる。この際の還元は、単に水素ガスを用いたのでは、低温で水素ガスが分解しづらく還元するのに時間を要する。そこで、比較的低温で分解しやすく、活性なHを発生するアンモニアや炭化水素系のガスを用いることにより、効率的に還元を進めることができる。
さらに、アンモニアを用いて還元を行うと、アンモニアがその後の窒化処理にも利用でき、装置が簡素化できることからより望ましい。このとき、アンモニアを分解させ過ぎると、分解で発生したNが、Cの拡散経路を大きく減らしてしまい、鋼材表面に十分にCを拡散させることができなくなる。このため、その濃度および処理温度には注意する必要がある。このときの温度は600℃以下であることが望ましい。
上記処理温度が600℃を超えると、ハロゲン化等の前処理方法を適用したり、プラズマ処理等を適用したとしても、炭素を窒素と同等以上に鋼材の表面に侵入させることが難しくなる。このため、炭素を排斥しながら窒素が拡散してしまい、表面の靭性が低下する現象が起きやすくなる。したがって、本発明の鋼製品は、600℃以下で炭素および窒素拡散層を形成させたものであることが望ましい。
ここで、処理温度が550℃を超えると、機械加工等により発生した残留応力の開放が顕著となる。したがって、寸法精度の要求が厳しい鋼製品では、550℃以下で炭素および窒素拡散層が形成されたものであることがより望ましい。
一方、上記処理温度が低すぎると、十分な疲労強度を得るために極めて長い時間を必要とし、高コストとなる。したがって、処理温度は、400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上である。
また、このとき炉内に供給するアンモニアガスの濃度は30容量%以下が好ましく、20容量%以下がより好ましい。
このとき用いる炭素源ガスとしてはCOガスもしくはCOガスを含有するガス、炭化水素系のガス等を用いることができる。具体的には、COガスとH、N、COガスの混合ガスであるRXガスが安価で、好適に用いることができる。このときの炭素源ガスの濃度は、1容量%以上、より好ましくは3容量%以上であり、COガスを含むRXガスを用いる際には、5容量%以上、より好ましくは15容量%以上とすることが望ましい。
本発明における拡散層構造を低温処理で得るには、真空中でプラズマ等を利用した窒化処理方法を用いることができる。また、材料や材料の表面状態を考慮したうえで、適正なフッ化処理等のハロゲン化処理を前処理として実施すると、常圧下の窒化処理でも上記拡散層構造を形成させることができる。ハロゲン化処理を利用した方法は、装置や作業面等に関するコストの低減が図れる上、大型の製品や精密形状を有する製品等であっても安定的に上記拡散層構造を得ることができ、より望ましい。
本発明の高い耐摩耗性と優れた疲労特性を両立する鋼製品は、第一拡散層2および第二拡散層3を形成させる過程において、これらの拡散層中に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物は、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界等への偏析を起こしていない状態であることが望ましい。
本発明の鋼製品の表層部に形成された第一拡散層2および第二拡散層3は、炭素を過飽和の状態で拡散、固溶させた状態となっている。このような状態で、炭化物、窒化物、炭窒化物が粗大化したり結晶粒界に偏析したりすれば、そこを起点とした破壊が起こり易くなり、疲労特性を劣化させかねない。よって、本発明の鋼製品は、第一拡散層2および第二拡散層3中には、3μmを超える炭化物、窒化物、炭窒化物等の析出物が形成していないことが好ましい。炭化物、窒化物、炭窒化物等の析出物の大きさとして好ましいのは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。
本実施形態の鋼製品およびその製造方法の作用効果はつぎのようなものである。
すなわち、本実施形態の鋼製品は、フッ化処理等の適正な前処理が施された後、適切にコントロールされた雰囲気においてその表面から炭素と窒素の拡散が行われる。これによって、母材4の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有する炭素濃化拡散層が形成される。この拡散層は、炭素が濃化した状態で窒素も濃化した耐摩耗層(第一拡散層2)が表面側に形成され、窒素濃度の低い炭素主体の拡散層(第二拡散層3)が少なくとも30μm以上母材4側に形成される。これらの第一拡散層2と第二拡散層3を形成することにより、優れた強度と靭性の高い表面層を持つものとなる。
また、本実施形態の鋼製品は、鋼の変態温度以下の温度、好適には600℃以下、さらに好適には550℃以下の温度範囲で、上記第一拡散層2および第二拡散層3が形成されている。このような低温熱処理により、熱処理歪自体が小さくなる。さらには、残留オーステナイトがほぼ存在しないことから、残留オーステナイトの分解による経時変化が少なくなる。このように、極めて寸法精度に優れたものとなる。さらに、炭素濃度が母材の炭素濃度よりも濃化した層である第一拡散層2および第二拡散層3中に、粗大な炭化物等の析出物を形成していない場合には、より高い疲労強度を有するものとなる。
さらに、鋼製品の使用用途に応じて、ハードショットピーニングや微粒子ピーニング、ウォータージェットピーニング等により、表面の圧縮応力を増加させる方法を適用することができる。このようにすることにより、より疲労強度を向上させることができる。そのような方法を適用したものについても、より疲労特性の優れた鋼製品となり、本発明の鋼製品に好適に利用できる。
以上のように、上述した方法等を用いて形成された表面層を持つ本発明の鋼製品は、優れた耐摩耗性と疲労特性を併せ持つものとなる。
次に、実施例について説明する。
試験用材料として、機械構造用炭素鋼および合金鋼であるS45C、SCr415、SCM435、SMnC420、ステンレス鋼であるSUS420J2、SUS304、工具鋼であるSKH51、SKD61、ばね鋼であるSUP12を用意した。なおこれらの材料は、材料特性を整えるため、予め焼入れ、焼戻し等の調質が行われたものである。
実施例:上記の各試験片をN中で400℃に加熱した後、NFガスを含む雰囲気中で30分間保持するフッ化処理を行い、その表面にフッ化膜を形成させた。その後、450℃に昇温し、10容量%のNHガスを含む雰囲気中で脱フッ素処理を実施した。さらに、その温度で5容量%のNHガスおよび30容量%のRXガス(N、H、CO、COの混合ガス)を含む雰囲気中で1時間保持した。その雰囲気濃度を維持した状態で、570℃まで3℃/分で昇温し、5容量%のNHガスおよび50容量%のRXガスを含む雰囲気中で2.5時間保持した。その後、Nガス雰囲気で常温まで冷却した。
比較例1:SUS420J2製の試験片に対し、上記フッ化処理を実施した後、450℃に昇温し、10容量%のNHガスを含む雰囲気中で脱F処理を実施した。その後、50容量%のNHガスおよび30容量%のRXガスを含む雰囲気中で570℃まで3℃/分で昇温し、50容量%のNHガスおよび50容量%のRXガスを含む雰囲気中で2.5時間保持した。その後、Nガス雰囲気中で常温まで冷却したものを用意した。
比較例2:SKH51製の試験片に対し、上記フッ化処理を実施した後、450℃に昇温し、10容量%のNHガスを含む雰囲気中で脱F処理を実施した。さらに、その温度で5容量%のNHガスおよび30容量%のRXガスを含む雰囲気中で30分間保持し、さらに1容量%のNHガスおよび50容量%のRXガスを含む雰囲気中で570℃まで3℃/分で昇温し、その雰囲気濃度を維持した状態で2.5時間保持した。その後、Nガス雰囲気中で常温まで冷却した。
これらの表面層を調査した結果を表1に示す。なお表面硬度測定にはマイクロビッカース硬度試験機を使用した。
通常、母材4中の炭素濃度が高い物質では、特に表面からの窒素拡散に伴う炭素の排斥が見られ、窒素の拡散層部分には母材4よりも炭素濃度が低下した拡散層が形成することが多い。すなわち、CがNHの分解で発生するHと化合し、メタン等の炭化水素を形成することに伴う脱炭現象や、格子間に存在していたCが格子間に侵入してくるNによって母材4の内部側へ押しやられる現象等が発生するからである。
本実施例の鋼材については、上記の炭素濃度の低下した拡散層の形成は認められず、いずれも母材濃度よりも高い炭素濃度を有する拡散層を形成している。そして、窒素濃度の最高値が1.0質量%以上5.0質量%以下である、第一拡散層2の形成が確認された。また、その第一拡散層2の母材4側には母材4よりも炭素濃度の高い第二拡散層3が形成していることも確認された。さらに、本実施例の全ての鋼種について、その表面硬度が十分に上昇していることがわかる。したがって、各実施例は、耐摩耗性も十分に向上しているといえる。
一方、比較例1のSUS420J2製試験片の表面硬度は、実施例のSUS420J2製試験片の表面硬度とほとんど差はない。ところが、窒化拡散層においては、主に窒素が拡散した拡散層を形成しており、その拡散層部分は窒素濃度の最大値が7質量%前後と高めであった。その結果、窒素と同じ格子間拡散型である炭素の濃度は0.1〜0.25質量%程度となっており、母材の炭素濃度である約0.34質量%よりも大幅に低下していた。また、上記窒素拡散層の母材側にも炭素の濃化した領域は認められなかった。
図2は、実施例のSUS420J2製試験片と比較例1のSUS420J2製試験片の表面の脆性を簡易的に確認するため、ロックウェル(Cスケール)で表面に圧痕をつける試験を行った結果である。
実施例は、圧痕の周囲にクラックの進展や剥離等がほぼ確認されないことから、硬度が高いだけでなく、その硬化層の靭性も高いことが分かる。
一方、比較例は、圧痕の周囲に大きなクラックが発生し、進展している様子が多数観察される。同材質の実施例の試験片と表面の硬度には大きな差はないものの、その表面層はC濃度が低いことによって靭性が大幅に低下していることが分かる。
図3は、実施例のSUS420J2製試験片と比較例1のSUS420J2製試験片(φ10mmのピン形状に加工してから窒化処理を実施したもの)を用い、相手材にSUJ2製の円盤を用いてピンオンディスクによる摩耗試験を実施した結果である。
図3より、実施例、比較例とも、窒化処理を実施されていないものに比べると耐摩耗性が向上している。ところが、実施例と比較例を対比すると、比較例は摩耗距離(時間)が長くなるにつれて摩耗量が加速的に大きくなっていることが分かる。
試験片の摩耗面を観察すると、比較例の方は単純に摩耗を起こしているだけでは無く、割れや欠けも発生していることが分かった。この割れや欠けの発生による摩耗面の脱落が、摩耗試験の長時間側で摩耗量の増加を加速しているものと考えられる。この点からも単純に硬度が高いだけでなく、靭性も兼ね備えた表面層となっていることが結果的に耐摩耗性をより向上させる要因となっており、実施例の部材は耐久性の高い表面層を有することが分かる。
比較例2のSKH51製試験片については、第一拡散層2にあたる部分の平均的な窒素濃度が0.3〜0.4質量%程度であり、表面近傍の最高濃度も0.7〜0.8質量%程度となっていた。その結果、比較例2の表面硬度は、実施例のSKH51製試験片の表面硬度よりも大きく低下している。処理後の母材硬度である約770Hvよりは上昇しているものの、大きな耐摩耗性の向上は期待できないレベルであった。
また、第二拡散層2にあたる部分の厚さも、実施例のSKH51製試験片に形成されている厚さよりもかなり薄くなっている。したがって、疲労強度的にも実施例と比較して低いものと考えられる。
これらの結果から、窒素を適切な濃度で拡散させた場合には、炭素の内部への拡散を助長し、炭素濃化層を厚めに形成させることができるものと考えられ、拡散層中の窒素濃度の適正化が、耐摩耗性と疲労特性の向上に寄与することが分かる。
第一拡散層2および第二拡散層3中の析出物について、本処理中に生成、成長した炭化物およびもしくは窒化物、炭窒化物の大きさは、多くの材料で1μmを下回っていることから、ほぼ全て1μmを下回るものと考えられた。一方、処理前にすでに形成している炭化物等と見分けることは難しく、特に炭素濃度の高いSKH51などでは比較的粗大な炭化物の形成が見られた。ここで、処理前後で確認すると、析出物の最大大きさには変化が見られない。したがって、母材が1.0質量%を超えるような、ある程度高い炭素濃度を有する鋼材であっても、炭化物の形状制御等を行うことにより、析出物への応力集中を起こしづらくして、疲労強度に優れた表面処理材とすることが可能であると考えられる。
試験用材料として、SCM435、SMnC420、SKD61を用い、小野式回転曲げ試験片を作製し、回転疲労曲げ試験を実施した。SCM435およびSKD61については、実施例1と同様に、材料特性を整えるため、試験片形状に加工する前に予め焼入れ、焼戻し等の調質が行われたものである。SMnC420は、熱間鍛造品を機械加工した非調質のものを用いた。
実施例:上記各試験片を400℃までN中で昇温させてフッ化処理を行い、その表面にフッ化膜を形成させた。その後、10容量%のNHガスおよび50容量%のRXガスを含む雰囲気中で400℃から500℃まで2℃/分で昇温し、さらに10容量%のNHガス、50容量%のRXガスおよび10容量%のHガスを含む雰囲気中で15時間保持した。その後、Nガス雰囲気で常温まで冷却した。
比較例:SCM435、SMnC420、SKD61の回転曲げ疲労試験片に対し、実施例と同様にフッ化処理を行った。その後、10容量%のNHガスを含む雰囲気中で400℃から500℃まで2℃/分で昇温し、さらに10容量%のNHガス、50容量%のRXガスおよび10容量%のHガスを含む雰囲気中で15時間保持した。その後、Nガス雰囲気で常温まで冷却した。
これらの試験片の炭素濃度および窒素濃度を調査した結果を表2に示す。
なお、比較例の第一拡散層2部分の濃度については、炭素濃度が低目となっているが、窒素濃度が高い第一拡散層2に相当する部分の濃度を示した。また、炭化物や窒化物の存在によって炭素濃度および窒素濃度の値が局所的に大きく振れているが、その値は拡散層中の任意の深さにおける炭素および窒素濃度を的確に表しているものではないため、表中にはそれらの深さ方向の濃度曲線の大きな振れを考慮せずスムーズな近似曲線とした場合の値を示した。
図4は、これらの試験片について、各鋼材における実施例と比較例の疲労限を比較した結果である。
図4より、いずれの鋼材においても実施例の疲労強度が比較例のものより向上していることが分かる。
表2における、比較例のSCM435材、SMnC420材の試験片(第一拡散層2相当部の窒素濃度の最高値が5質量%を超える)は、明らかに表面起点の破壊を起こす場合が多い。窒素濃度が高すぎる場合には、炭素濃度が母材4よりもそれほど低くなっていない場合でも最表面に近い部分が脆化し、そこを起点とした破壊が発生することにより、疲労強度が低下しやすいものと考えられる。
少なくとも実施例の試験片においては、高荷重側で破断したいずれの試験片においても析出物を起点とした形態の破面は確認されていない。それらの試験片表層部の断面を調査した結果、いずれの試験片においても3μmを超えるような析出物は確認されていない。析出物はいずれもほぼ1μm以下であり、そのような微小の析出物についても粒界偏析を起こしているような状況は確認されなかった。このことから、少なくとも3μmを超えるような析出物が存在せず、またそれらの析出物が粒界偏析を起こしていない場合には、疲労強度を低下させる要因とはなりにくく、疲労強度を阻害しないものといえる。
図5は、上記鋼材のうち、一例としてSKD61の試験片について表層部における断面の硬度分布を測定した結果である。
図6−1は、実施例について、NとCの濃度分布をEPMA分析にて測定した結果である。その表面部分を拡大したものを図6−2に示す。
図7−1は、比較例について、NとCの濃度分布をEPMA分析にて測定した結果である。その表面部分を拡大したものを図7−2に示す。
図5より、硬度面においては実施例と比較例の間にはほとんど差が無く、明確に硬度には現れないものの疲労強度に影響を与える要因が両者間に存在していることが分かる。
実施例である図6−2と比較例である図7−2を比較すると、図6−2の第一拡散層2部分では、丸で囲んだ部分に示されるように、窒素濃化層が形成しているにも関わらず、その中の炭素濃度は母材4の濃度よりも明らかに高い値となっていることが分かる。さらに、その第一拡散層2の炭素濃度は、第二拡散層3中の炭素濃度以上となっており、窒素濃化層でありながら、靭性にも優れた層となっているものと考えられる。
一方、比較例である図7−2において、実施例の第一拡散層2に相当する部分の炭素濃度は、丸で囲んだ部分に示されるように、母材4の炭素濃度と同等レベルである。母材4の炭素濃度と比較して、明確に濃度の低下を起こしているレベルではないものの、実施例と比較すれば靭性面で劣るものと考えられる。これらが、疲労強度として差が現れている主要因であるものと考えられる。
さらに、第二拡散層3部分を比較した場合、実施例、比較例とも母材4の炭素濃度よりも高い炭素濃化層を形成しているものの、実施例の炭素濃度の方が明らかに高い値を示している。この点も実施例のものの方が比較例のものよりも優れた疲労強度を示す要因の一つになっているものと考えられる。
図8は、上記SKD61材における実施例および比較例の回転曲げ疲労試験の結果を示す。
図8より、比較例の結果に対して実施例の結果は、単に疲労限の応力が向上しているだけではなく、試験応力が高いほどその差が大きくなる傾向を示している。
これは第一拡散層2の靭性が高い上、仮にそこに微細なクラックや欠陥等が発生するような環境でも、高濃度の炭素濃化層を有する第二拡散層3がその進展を抑制しているためであるものと考えられる。
したがって、これらの結果から、本発明の拡散層構造は、特により負荷の厳しい条件においても疲労特性を向上させるものである。よって、本発明の低温浸炭窒化層構造を有する鋼製品は、単に表面硬度の上昇による耐摩耗特性が向上しているだけではなく、過酷な環境で使用される場合に特に優れた疲労特性を合わせ持ち、結果として優れた耐久性を有するものとなる。
本発明は、各種の鋼材を使用した耐久性を必要とする鋼製品に適用できる。特に、各種の機械部品や金型等に好適に適用することができる。例えばクランクシャフトや歯車等、寸法制度が厳しく、耐摩耗特性も必要でありながら、比較的大きな応力が負荷となる機械部品や、温度差の大きいヒートサイクルが繰り返し負荷となるダイカスト用金型等に好適に利用できる。
1 化合物層
2 第一拡散層
3 第二拡散層
4 母材

Claims (3)

  1. 鋼材表面に炭素および窒素の拡散層が形成された鋼製品であって、
    その表層部に、炭素濃度が母材炭素濃度よりも高く、かつ窒素濃度が0.5質量%以上であり、その窒素濃度の最高値が1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲にある第一拡散層が形成され、
    上記第一拡散層の母材側に、炭素濃度が母材炭素濃度および窒素濃度よりも高く、かつその窒素濃度が0.5質量%未満である第二拡散層が、少なくとも厚み30μm以上形成され、
    上記第一拡散層および第二拡散層に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物は、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界への偏析を起こしていない
    ことを特徴とする鋼製品。
  2. 第一拡散層および第二拡散層は、母材に比べて残留オーステナイトの増加を伴わない請求項1記載の鋼製品。
  3. 鋼材表面に炭素および窒素の拡散層が形成された鋼製品の製造方法であって、
    その表層部に、炭素濃度が母材炭素濃度よりも高く、かつ窒素濃度が0.5質量%以上であり、その窒素濃度の最高値が1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲にある第一拡散層を形成し、
    上記第一拡散層の母材側に、炭素濃度が母材炭素濃度および窒素濃度よりも高く、かつその窒素濃度が0.5質量%未満である第二拡散層を、少なくとも厚み30μm以上形成し、
    第一拡散層および第二拡散層を形成させる熱処理の温度を600℃以下とし、
    上記第一拡散層および第二拡散層に析出した炭化物、窒化物、炭窒化物が、その大きさが3μm以下で、かつ結晶粒界への偏析を起こさない
    ことを特徴とする鋼製品の製造方法。
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