以下、赤外線シャッター機構および赤外線測定器の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1〜4に示す赤外線測定器1は、「赤外線測定器」の一例であって、後述するように、別個に製造された赤外線センサ2および赤外線シャッター機構3が一体化されて構成されている。赤外線センサ2は、図3,4に示すように、支持基板10、絶縁層11、導体層12,14,16、強誘電体層13、保護膜15および赤外線吸収膜17を備えて、図1に示すように、平面視略方形状に形成されている。なお、図3,4、および後に参照する図6,8〜10や、図13,14,16〜20においては、「赤外線シャッター機構」や「赤外線測定器」の構成についての理解を容易とするために、「基板」、「層」および「膜」の厚みを実際の厚みとは相違させて図示している。
支持基板10は、「センサ側支持基板」に相当し、一例として、シリコンや酸化マグネシウム等によって、物理的な厚みが数十μm〜数mm程度で、一辺の長さが数mm〜数cm程度の平板状に形成されている。この支持基板10は、赤外線IRの受光時における「センサ本体」から支持基板10への伝熱を阻止するために、その厚み方向において「センサ本体」と重なる領域に、平面視矩形状で深さ数nm〜数μm程度の凹部H(図1,3,4,6参照)が形成されている。絶縁層11は、酸化シリコンや酸化アルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されて、導体層12等によって支持基板10上に形成される各種電極等と支持基板10とを相互に絶縁すると共に、後述するように支持基板10に形成される支持枠10aや支柱10b(図6参照)と相まって「センサ本体」を支持する「センサ側支持部」を構成する。
導体層12は、強誘電体層13、導体層14および赤外線吸収膜17と相まって「センサ本体」を構成する層であって、一例として、白金やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。この導体層12は、支持基板10の厚み方向において強誘電体層13と重なる部位が、強誘電体層13からセンサ信号を取り出すための1対の電極の1つとして機能する。また、図1に示すように、導体層12は、上記の電極として機能する部位から、一例として、赤外線センサ2の4つの角部のうちの1つ(この例では、右下の角部)まで連続的に形成されており、導体層12によって構成された電極を、バンプ4(図3,4参照)を介して赤外線シャッター機構3に接続するバンプ接続部P1aを構成する。さらに、導体層12は、一例として、上記の電極やバンプ接続部P1aを構成する部位とは別個に、赤外線センサ2の4つの角部のうちの他の2つ(図1に示す左上の角部および左下の角部)にも形成されており、これらの部位が、バンプ接続部P3a,P4aを構成する。
強誘電体層13は、一例として、チタン酸ジルコン酸鉛やタンタル酸リチウム等によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成された焦電型赤外線センサ膜で構成されている。導体層14は、導体層12と同様にして、一例として、白金やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。この導体層14は、支持基板10の厚み方向において強誘電体層13と重なる部位が、強誘電体層13からセンサ信号を取り出すための1対の電極の他の1つとして機能する。保護膜15は、酸化シリコンやポリイミド等によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されて、導体層16によって構成されるバンプ接続部P2a等(図1参照)を支持基板10に対して絶縁する絶縁層として機能する。
導体層16は、導体層14で構成された電極を赤外線シャッター機構3にバンプ4を介して接続するための層であって、導体層12,14と同様にして、白金やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されて、一端部が導体層14に接続されると共に、他端部がバンプ接続部P2a(図1参照)を構成する。赤外線吸収膜17は、各種金属材料や有機材料(カーボン、ポリイミドおよびアルミニウム等)によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されると共に、表面平滑性がある程度低下させられている。
この赤外線センサ2では、前述したように、赤外線IRの受光時に赤外線吸収膜17に生じて導体層14を介して強誘電体層13に伝熱した熱が導体層12や絶縁層11を介して支持基板10に奪われてしまうことのないように、図3,4,6に示すように、支持基板10の中央部に凹部Hが形成されて、絶縁層11と支持基板10との間に空隙18が形成されている。この場合、本例の赤外線センサ2では、図3〜6に示すように、支持基板10に形成された凹部Hにおける側壁部位が「センサ本体」の外縁部を支持する支持枠10a(「センサ本体外縁支持部」の一例)として機能する。また、凹部Hの内側領域には、複数の支柱10b(「センサ本体内側支持部」の一例)が設けられている。
また、本例の赤外線センサ2では、複数の支柱10bを備えて「センサ側支持部」が構成されると共に、支持枠10aと支持枠10aに対して最も近接する支柱10bとの間の距離、および最も近接し合う各支柱10b,10bの間の距離が互いに等しく規定されている。具体的には、この赤外線センサ2では、一例として、8×8=64本の支柱10bが等間隔でマトリクス状に設けられると共に、支持枠10aおよび支持枠10aに最も近い支柱10bの間の距離と、隣接する支柱10b,10bの間の距離とが互いに等しくなっている(「センサ本体」を支持する構成要素が等間隔で設けられている)。なお、図3,4では、赤外線センサ2の構成についての理解を容易とするために、2×2本の支柱10bを図示している。
さらに、この赤外線センサ2では、図6に示すように、支持枠10aや、各支柱10bによって絶縁層11が支持されている領域(支持枠10aおよび各支柱10bに対して支持基板10の厚み方向で重なる領域)に、「センサ本体」が形成されていない「非センサ領域」が設けられている。具体的には、図1,3〜6に示すように、この赤外線センサ2では、一例として、平面視において「センサ本体」が9×9=81個のマトリクス状に配置された矩形状のセルに区分けされて、各セルの間に上記の「非センサ領域」が形成されている。なお、図3,4では、赤外線センサ2の構成についての理解を容易とするために、3×3個のセルを図示している。これにより、この赤外線センサ2では、「センサ本体」が形成された領域には、凹部Hからなる空隙18が設けられ、支持枠10aや支柱10bの存在によって空隙18が存在しない領域には、「センサ本体」が存在しないため、「センサ本体」から支持基板10への伝熱が十分に規制されている。また、本例の赤外線センサ2では、隣接する各セルの導体層12,12同士、強誘電体層13,13同士、および導体層14,14同士を相互に電気的に接続するために、隣接する各セルが相互に連結されている。
一方、赤外線シャッター機構3は、赤外線センサ2による検出対象の波長領域(一例として、10000nm±2000nmの範囲:以下、「対象波長領域」ともいう)の赤外線IRをチョッピングするチョッピング機構として機能するシャッター機構(赤外線変調器)であって、図3,4に示すように、支持基板20、絶縁層21、導体層22、赤外線透過薄膜積層体23,25、犠牲層24、支持層26、導体層27および反射率低減層29を備えると共に、両赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ(空隙)28が形成されて構成されている。支持基板20は、「機構側支持基板」に相当し、一例として、シリコンやゲルマニウム等(「赤外線を透過可能な材料」の一例)によって、物理的な厚みが数十μm〜数mm程度で、一辺の長さが数mm〜数cm程度の平板状に形成されている。絶縁層21は、導体層22によって支持基板10上に形成される導体パターンと支持基板20とを相互に絶縁するための層であって、酸化シリコンやポリイミド等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。
導体層22は、一例として、上記の赤外線透過薄膜積層体23を構成する各薄膜の形成に使用した導電材料(例えば、ゲルマニウムやシリコン)やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。この導体層22は、図2に示すように、赤外線透過薄膜積層体23を図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P9bを構成する部位と、バンプ4を介して赤外線センサ2のバンプ接続部P1aに接続されるバンプ接続部P5aおよび図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P5bを構成する部位と、バンプ4を介して赤外線センサ2のバンプ接続部P2aに接続されるバンプ接続部P6aおよび図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P6bを構成する部位と、バンプ4を介して赤外線センサ2のバンプ接続部P3aに接続されるバンプ接続部P7aを構成する部位と、バンプ4を介して赤外線センサ2のバンプ接続部P4aに接続されるバンプ接続部P8aを構成する部位とを別個独立して形成している。
赤外線透過薄膜積層体23は、「A赤外線透過薄膜積層体」に相当し、支持基板20における赤外線IRの入射面の裏面(図3,4における下面:「機構側支持基板における一方の面」の一例)に、高屈折率材料で形成した薄膜および低屈折率材料で形成した薄膜を交互に積層した薄膜積層体(「赤外線を透過可能な導電性材料」の一例)で構成されている。また、赤外線透過薄膜積層体25は、「B赤外線透過薄膜積層体」に相当し、赤外線透過薄膜積層体23と同様にして、高屈折率材料で形成した薄膜および低屈折率材料で形成した薄膜を交互に積層した薄膜積層体(「赤外線を透過可能な導電性材料」の一例)で構成されている。なお、上記の高屈折率材料としては、ゲルマニウムやシリコン等を使用し、低屈折率材料としては、硫化亜鉛やセレン化亜鉛等を使用することができる。
この場合、赤外線透過薄膜積層体23,25については、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長に対する1/4の奇数倍となる条件を満たすことを条件として、各種屈折率の材料で任意の厚みに形成することができる。なお、赤外線透過薄膜積層体23,25は、単体において(光学的に分離した状態:互いに接していない状態において)赤外線IRを反射するミラー層として機能し、互いに接して光学的に一体化した状態において、赤外線IRを透過させるように構成されている。また、本例の赤外線シャッター機構3では、上記の赤外線透過薄膜積層体25が、支持基板20の厚み方向で赤外線透過薄膜積層体23に対向配置された状態で、後述するように犠牲層24および支持層26で構成される「機構側支持部」によって支持基板20に対して非接触状態で支持されている。
犠牲層24は、赤外線シャッター機構3の製造時に赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ28を形成すると共に、その一部が赤外線透過薄膜積層体23,25の間に残存させられて、支持層26と相まって「機構側支持部」を構成する。この場合、この犠牲層24については、酸化シリコン、シリコンおよび各種有機物等で形成することができ、また、その厚みd(すなわち、ギャップ28の高さ(光学的厚み):赤外線透過薄膜積層体23,25の常態における離間距離)については、ギャップ28内に満たされる気体(各種のガスや空気など:一例として、空気)、或いは真空の屈折率nとの積(nd)が、上記の対象波長領域の中心波長に対する1/4となる条件を満たすことを条件として、任意に規定することができる。
支持層26は、犠牲層24と相まって「機構側支持部」を構成する層であって、一例として、酸化シリコンやポリイミドによって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されている。導体層27は、赤外線透過薄膜積層体25を図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P10b(図2参照)を構成する層であって、一例として、上記の赤外線透過薄膜積層体25を構成する各薄膜の形成に使用した導電材料(例えば、ゲルマニウムやシリコン)やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。
反射率低減層29は、いわゆる「無反射コーティング層(AR層)」であって、赤外線シャッター機構3における赤外線IRの入射面(支持基板20における赤外線透過薄膜積層体23の形成面の裏面:図3,4における上面:「機構側支持基板における他方の面」の一例)に形成されて、赤外線シャッター機構3に入射しようとする赤外線IRが大きく反射されるのを阻止する。この反射率低減層29は、ゲルマニウムやシリコン等の高屈折率材料で形成した薄膜(対象波長領域を透過可能な薄膜)と、硫化亜鉛やセレン化亜鉛等の低屈折率材料で形成した薄膜(対象波長領域を透過可能な薄膜)とを積層した積層体で構成されている。この場合、反射率低減層29の光学的厚み(nd)は、対象波長領域の中心波長に対する1/2となる条件を満たすことを条件として、各種屈折率の材料で任意の厚みで形成することができる。
この赤外線シャッター機構3では、赤外線透過薄膜積層体25に大きな撓みが生じることのないように、赤外線透過薄膜積層体25の外縁領域に設けられた「薄膜積層体外縁支持部」と、赤外線透過薄膜積層体25の内側領域に設けられた複数の「薄膜積層体内側支持部」とで構成される「機構側支持部」によって赤外線透過薄膜積層体25を支持する構成が採用されている。具体的には、図2〜4,7,8に示すように、この赤外線シャッター機構3では、一例として、平面視において赤外線透過薄膜積層体25が9×9=81個のマトリクス状に配置された矩形状のセルに区分けされて、これらのセル群の周囲、および各セルの間に支持層26が形成されると共に、この支持層26に対して支持基板20の厚み方向で重なる位置の犠牲層24が残存させられて、支持層26と相まって赤外線透過薄膜積層体25を支持する構成が採用されている。なお、図3,4では、赤外線シャッター機構3の構成についての理解を容易とするために、3×3個のセルを図示している。
この場合、本例の赤外線シャッター機構3では、上記のセル群の周囲に形成された支持層26、およびこの支持層26に対して支持基板20の厚み方向で重なる位置の犠牲層24(支持枠24a)が相まって「薄膜積層体外縁支持部」が構成されると共に、上記の各セルの間に形成された支持層26、およびこの支持層26に対して支持基板20の厚み方向で重なる位置の犠牲層24(支柱24b)が相まって「薄膜積層体内側支持部」が構成されている。また、本例の赤外線シャッター機構3では、複数の支柱24bを備えて「機構側支持部」が構成されると共に、支持枠24aと支持枠24aに対して最も近接する支柱24bとの間の距離、および最も近接し合う各支柱24b,24bの間の距離が互いに等しく規定されている。
具体的には、この赤外線シャッター機構3では、一例として、8×8=64本の支柱24bが等間隔でマトリクス状に設けられると共に、支持枠24aおよび支持枠24aに最も近い支柱24bの間の距離と、隣接する支柱24b,24bの間の距離とが互いに等しくなっている(「B赤外線透過薄膜積層体」を支持する構成要素が等間隔で設けられている)。なお、図3,4では、赤外線シャッター機構3の構成についての理解を容易とするために、2×2本の支柱24bを図示している。これにより、この赤外線シャッター機構3では、赤外線透過薄膜積層体25に大きな撓みが生じる事態が回避されている。なお、本例の赤外線シャッター機構3では、赤外線透過薄膜積層体25において隣接する各セル同士を相互に電気的に接続するために、隣接する各セルが相互に連結されている。
この赤外線測定器1の製造に際しては、まず、赤外線センサ2および赤外線シャッター機構3をそれぞれ製造する。なお、一例として、赤外線センサ2についての製造方法、および赤外線シャッター機構3の製造方法についてこの順で説明するが、赤外線センサ2および赤外線シャッター機構3の製造順序は特に限定されるものではない。
赤外線センサ2の製造に際しては、まず、支持基板10の一面(後に、赤外線シャッター機構3に対向させられる面:図3,4,6における上面)に絶縁層11を形成する。次いで、公知の半導体製造プロセスに従い、導体層12、強誘電体層13および導体層14を絶縁層11の上にこの順で形成する。この際には、各層12〜14毎に、これらを支持基板10上の所望の領域に形成するためのマスクパターン(図示せず)を形成することで、マスクパターンから露出している部位だけに所望の層を形成する。これにより、前述した「センサ本体」を構成する各セルがマトリクス状に配置されて絶縁層11の上に形成されると共に、セル群の周囲、および各セルの間に「非センサ領域」が形成される。また、各層12〜14の形成に際しては、図5,6に示すように、後に絶縁層11をエッチングして凹部Hを形成するための丸孔19(エッチングホール)を各セルの中央部に連通形成する。
続いて、保護膜15を形成する。この際には、導体層12においてバンプ接続部P1a,P3a,P4aとすべき部位、導体層14、および「非センサ領域」が保護膜15によって覆われることのないようにマスクパターン(図示せず)によって覆った状態で保護膜15を形成する。なお、以下に説明する各層の形成工程においてもマスクパターンを使用するが、マスクパターンを用いて所望の領域だけに所望の層を形成する技術については公知のため、このマスクパターンについての詳細な説明を省略する。続いて、導体層14の外縁部に掛かるように導体層16を保護膜15の上に形成する。これにより、導体層14,16が相互に電気的に接続された状態となる。次いで、導体層14の表面を覆うようにして赤外線吸収膜17を形成する。これにより、「センサ本体」の形成が完了する。
続いて、導体層12におけるバンプ接続部P1a,P3a,P4a、および導体層16におけるバンプ接続部P2aにバンプ4をそれぞれ形成する。なお、バンプ4については、赤外線センサ2側に形成せずに、赤外線シャッター機構3におけるバンプ接続部P5a〜P8aに形成することもできる。また、赤外線センサ2におけるバンプ接続部P1a〜P4a、および赤外線シャッター機構3におけるバンプ接続部P5a〜P8aの双方にバンプ4をそれぞれ形成することもできる。
次いで、各要素11〜17(およびバンプ4)を形成した面の側から、マスクパターン(図示せず)を用いたエッチング処理(例えば、エッチングガスを用いたドライエッチング処理)を実行する。この際には、上記の各丸孔19を通過して支持基板10に達したエッチングガスによって支持基板10の表面がエッチングされることにより、支持基板10の表面に凹部Hが形成される。この場合、「センサ本体」を構成する各セル毎に丸孔19が形成されているため、図5に示すように、丸孔19を通過したエッチングガスによって、同図に破線で示す円形の領域内において支持基板10がエッチングされて、支持基板10の表面に凹部H(空隙18:図3,4,6参照)が形成されると共に、破線で示す各円形の領域外の支持基板10がエッチングされずに残存することで支持枠10aや支柱10b(図3,4,6参照)が形成される。これにより、導体層12、強誘電体層13、導体層14および赤外線吸収膜17で構成された「センサ本体」の各セルと、支持基板10との間に空隙18が形成されると共に、この「センサ本体」が支持枠10a、支柱10bおよび絶縁層11を介して支持された状態となり、赤外線センサ2が完成する。
一方、赤外線シャッター機構3の製造に際しては、まず、公知の半導体製造プロセスに従い、支持基板20の一面(後に、赤外線センサ2に対向させられる面:図3,4,8における下面)に、絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体23を形成する。次いで、絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体23を覆うようにして犠牲層24を形成した後に、犠牲層24の表面において支持基板20の厚み方向で赤外線透過薄膜積層体23に重なる位置に赤外線透過薄膜積層体25を形成する。この際には、赤外線透過薄膜積層体25を犠牲層24上の所望の領域に形成するためのマスクパターン(図示せず)を形成することで、マスクパターンから露出している部位だけに赤外線透過薄膜積層体25を形成する。これにより、前述した各セルがマトリクス状に配置されて犠牲層24の上に形成される。また、赤外線透過薄膜積層体25の形成に際しては、図7,8に示すように、後に犠牲層24をエッチングしてギャップ28を形成するための丸孔25a(エッチングホール)を各セルの中央部に形成する。
続いて、赤外線透過薄膜積層体25に接するように導体層27を形成した後に、この導体層27、および赤外線透過薄膜積層体25が形成されている領域を除いて支持層26を形成する。この際には、図7,8に示すように、赤外線透過薄膜積層体25におけるセル群の周囲、および各セルの間に、赤外線透過薄膜積層体25に接するように支持層26が形成される。次いで、支持基板20における赤外線IRの入射面(赤外線透過薄膜積層体23,25等を形成した面の裏面:図3,4における上面)に反射率低減層29を形成する。
続いて、赤外線透過薄膜積層体25等を形成した面の側から、マスクパターン(図示せず)を用いたエッチング処理(例えば、エッチングガスを用いたドライエッチング処理)を実行する。この際には、上記の各丸孔25aを通過して犠牲層24に達したエッチングガスによって赤外線透過薄膜積層体23,25の間の犠牲層24がエッチングされることにより、赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ28が形成される。この場合、赤外線透過薄膜積層体25の各セル毎に丸孔25aが形成されているため、図7に示すように、丸孔25aを通過したエッチングガスによって、同図に破線で示す円形の領域内において犠牲層24がエッチングされてギャップ28(図3,4,8参照)が形成されると共に、破線で示す各円形の領域外の犠牲層24がエッチングされずに残存することで支持枠24aや支柱24b(図3,4,8参照)が形成される。これにより、赤外線透過薄膜積層体23と、赤外線透過薄膜積層体25の各セルとの間にギャップ28が形成されると共に、赤外線透過薄膜積層体25が支持枠24a、支柱24bおよび支持層26を介して支持されて赤外線透過薄膜積層体23,25が対向した状態となり、赤外線シャッター機構3が完成する。
次いで、赤外線センサ2における強誘電体層13や赤外線吸収膜17等の形成面と、赤外線シャッター機構3における赤外線透過薄膜積層体23,25等の形成面とを対向させると共に、赤外線センサ2に形成したバンプ4が赤外線シャッター機構3の導体層22におけるバンプ接続部P5a〜P8aに接するように赤外線センサ2および赤外線シャッター機構3を重ねた状態において、赤外線センサ2および赤外線シャッター機構3を加熱しつつ、超音波を印加する。これにより、各バンプ4が溶融して赤外線シャッター機構3のバンプ接続部P5a〜P8aに溶着する結果、赤外線センサ2および赤外線シャッター機構3が一体化した状態となる。また、この状態においては、赤外線センサ2の導体層12(1対の電極の一方)がバンプ接続部P1a,P5aに接続されたバンプ4を介して赤外線シャッター機構3における導体層22のうちの1つに電気的に接続されると共に、赤外線センサ2の導体層14(1対の電極の他方)が導体層16およびバンプ接続部P2a,P6aに接続されたバンプ4を介して赤外線シャッター機構3における導体層22のうちの他の1つに電気的に接続される。これにより、赤外線測定器1が完成する。
この赤外線測定器1では、赤外線シャッター機構3における支持基板20に入射した赤外線IRを赤外線透過薄膜積層体23,25によって反射または透過させることで、赤外線センサ2の赤外線吸収膜17に入射する赤外線IRをチョッピングする構成が採用されている。具体的には、この赤外線測定器1の使用に際しては、赤外線シャッター機構3の信号線接続部P9b,P10bと駆動制御部(図示せず)とを信号線(図示せず)を介して電気的に接続すると共に、赤外線シャッター機構3の信号線接続部P5b,P6bと測定回路(図示せず)とを信号線(図示せず)を介して電気的に接続することで、赤外線センサ2の導体層12,14を測定回路に接続する。
この場合、この赤外線測定器1における赤外線シャッター機構3は、上記の駆動制御部によって赤外線透過薄膜積層体23,25に対して電圧が印加されていない状態において、図9に示すように、赤外線透過薄膜積層体23,25の間に、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長(この例では、10000nm)に対する1/4である2500nm程度(「nd=1/4λ」に対する1倍の例(奇数倍の一例))のギャップ28が形成される。このように、ギャップ28(本例では、空気で形成された「低屈折率層」)が形成された状態(「各赤外線透過薄膜積層体の間に電圧が印加されずに各赤外線透過薄膜積層体の間にギャップが形成された状態」の一例)では、赤外線透過薄膜積層体23における赤外線透過薄膜積層体25側の面、および赤外線透過薄膜積層体25における赤外線透過薄膜積層体23側の面において赤外線IRが反射される結果、赤外線IRの透過が規制される。以下、この状態を「閉状態」ともいう。
また、この赤外線シャッター機構3では、「薄膜積層体外縁支持部」を構成する支持枠24aおよび支持層26に加えて、「薄膜積層体内側支持部」を構成する各支柱24bおよび支持層26によって赤外線透過薄膜積層体25の各セルが支持されている。このため、この赤外線シャッター機構3では、セル群からなる十分に広い赤外線透過薄膜積層体25を備えているにも拘わらず、赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ28が形成された状態においても、赤外線透過薄膜積層体25に大きな撓みが生じる事態が回避されている。この結果、閉状態において、赤外線透過薄膜積層体25の一部が赤外線透過薄膜積層体23に接する事態が回避されている。
さらに、この赤外線測定器1における赤外線シャッター機構3では、赤外線透過薄膜積層体23,25の間に駆動制御部によって数V〜数十V程度の電圧が印加されたときに、赤外線透過薄膜積層体23,25の間に静電引力が生じて、図10に示すように、赤外線透過薄膜積層体25において、支持枠24a、および支持基板20の厚み方向において支持枠24aに重なる部位の支持層26(薄膜積層体外縁支持部)や、各支柱24b、および支持基板20の厚み方向で各支柱24bに重なる部位の支持層26(薄膜積層体内側支持部)によって支持されていない部位が赤外線透過薄膜積層体23に面的に接して赤外線透過薄膜積層体23,25が光学的に一体化する。
このように、各赤外線透過薄膜積層体23,25の間に電圧が印加されて赤外線透過薄膜積層体23と赤外線透過薄膜積層体25の各セルとが光学的に一体化した状態では、赤外線透過薄膜積層体23における赤外線透過薄膜積層体25側の面、および赤外線透過薄膜積層体25における赤外線透過薄膜積層体23側の面における赤外線IRの反射が極く小さなものとなる結果、各赤外線透過薄膜積層体23,25の厚み方向への赤外線IRの透過が許容される。以下、この状態を「開状態」ともいう。
これにより、この赤外線測定器1における赤外線シャッター機構3では、駆動制御部によって電圧を印加する状態と電圧を印加しない状態との2種類の状態を一定周期で交互に繰り返すことにより、赤外線IRを一定周期でチョッピングすることが可能となっている。この場合、この赤外線測定器1では、赤外線センサ2に対する赤外線IRの入射を許容するときには、赤外線シャッター機構3の赤外線透過薄膜積層体23,25を光学的に一体化させ、赤外線センサ2に対する赤外線IRの入射を規制するときには、赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ28を形成するだけの簡単な制御でよいため、赤外線IRを確実かつ容易にチョッピングして赤外線センサ2(赤外線吸収膜17)に対して入射させることが可能となっている。
また、この赤外線測定器1によれば、赤外線シャッター機構3の赤外線透過薄膜積層体23,25を導電性材料で形成したことにより、「A赤外線透過薄膜積層体」や「B赤外線透過薄膜積層体」とは別個に駆動用電極を形成した構成(図示せず)と比較して、赤外線シャッター機構3を閉状態にするための(赤外線透過薄膜積層体23,25に電圧を印加するための)専用の電極の形成が不要となる分だけ、赤外線測定器1の製造コストを低減できると共に、赤外線透過薄膜積層体23,25の質量を十分に小さくすることができるため、赤外線シャッター機構3を高速に、しかも安定して駆動することが可能となっている。
また、赤外線シャッター機構3が開状態となって赤外線IRの透過が許容された状態においては、赤外線センサ2に対する赤外線IRの入射量に応じて赤外線吸収膜17が発熱し、この熱によって強誘電体層13が加熱される。これにより、赤外線吸収膜17に生じた熱量、すなわち、赤外線シャッター機構3を透過して赤外線センサ2の入射面に入射した赤外線IRの照射量に応じた電流値の検出信号が強誘電体層13から出力される。この場合、この赤外線測定器1の赤外線センサ2では、導体層12、強誘電体層13、導体層14および赤外線吸収膜17で構成された「センサ本体」が形成された領域には、凹部Hからなる空隙18が設けられ、支持枠10aや支柱10bの存在によって空隙18が存在しない領域には、「センサ本体」が存在しないため、赤外線IRの受光時における「センサ本体」から支持基板10への伝熱が十分に規制されている。また、各支柱10bによって「センサ本体」が支持されているため、この「センサ本体」に撓みが生じる事態が回避されている。この結果、「センサ本体」が支持基板10(凹部Hの底面)に接して「センサ本体」から支持基板10に伝熱する事態が回避されている。
このように、この赤外線シャッター機構3では、赤外線透過薄膜積層体25の外縁領域に設けられた「薄膜積層体外縁支持部(本例では、犠牲層24における支持枠24a、および支持基板20の厚み方向で支持枠24aに重なる部位の支持層26)」と、赤外線透過薄膜積層体25の内側領域に設けられた「薄膜積層体内側支持部(本例では、犠牲層24における各支柱24b、および支持基板20の厚み方向で各支柱24bに重なる部位の支持層26)」とを備えて、赤外線透過薄膜積層体25を支持する「機構側支持部」が構成されると共に、赤外線透過薄膜積層体25における「機構側支持部」によって支持されていない部位が赤外線透過薄膜積層体23,25の間に電圧が印加された状態において赤外線透過薄膜積層体23に接して赤外線透過薄膜積層体23,25が光学的に一体化するように構成されている。また、この赤外線測定器1では、赤外線シャッター機構3と、赤外線シャッター機構3を透過した赤外線IRを受光してセンサ信号を出力する赤外線センサ2とを備えている。
したがって、この赤外線シャッター機構3、および赤外線測定器1によれば、赤外線透過薄膜積層体25の内側領域が各支柱10bおよび支持層26によって支持されているため、赤外線透過薄膜積層体25に大きな撓みが生じる事態を好適に回避することができる結果、赤外線透過薄膜積層体23,25の間に電圧が印加されていない状態において赤外線透過薄膜積層体25が赤外線透過薄膜積層体23に接して赤外線IRの透過が許容されてしまう事態を回避することができる。これにより、赤外線IRの検出感度を向上させる(赤外線センサ2からのセンサ信号の出力を大きくする)ために広く形成した赤外線センサ2における赤外線IRの受光面積の広さに応じて、赤外線透過薄膜積層体25を十分に広く形成した構成において、赤外線センサ2(「センサ本体」)に入射する赤外線IRを確実にチョッピングすることができる。
また、この赤外線シャッター機構3によれば、複数の「薄膜積層体内側支持部」を備えて「機構側支持部」を構成すると共に、「薄膜積層体外縁支持部」と「薄膜積層体外縁支持部」に対して最も近接する「薄膜積層体内側支持部」との間の距離、および最も近接し合う各「薄膜積層体内側支持部」の間の距離を互いに等しく規定したことにより、赤外線透過薄膜積層体25に部分的な撓みが生じる事態を回避することができるため、赤外線透過薄膜積層体23,25間にギャップ28を形成する際に、赤外線透過薄膜積層体25の全域を赤外線透過薄膜積層体23に対して確実に離間させることができる。
さらに、この赤外線シャッター機構3によれば、支持基板20を形成している材料よりも屈折率が低い材料によって支持基板20における他方の面に反射率低減層29を形成したことにより、支持基板20における赤外線透過薄膜積層体23,25等の形成面とは反対側の面(赤外線IRの入射面)において赤外線IRが大きく反射されて赤外線シャッター機構3の赤外線IRの透過率が低下する事態を回避して、開状態において赤外線センサ2に対して十分な量の赤外線IRを入射させることができる。
また、この赤外線測定器1によれば、導体層12、強誘電体層13、導体層14および赤外線吸収膜17で構成される「センサ本体」の外縁領域に設けられた「センサ本体外縁支持部(本例では、支持基板10における支持枠10a、および支持基板10の厚み方向で支持枠10aに重なる部位の絶縁層11)」と、「センサ本体」の内側領域に設けられた「センサ本体内側支持部(本例では、支持基板10における各支柱10b、および支持基板10の厚み方向で各支柱10bに重なる部位の絶縁層11)」とを備えて、「センサ本体」を支持する「センサ側支持部」を構成すると共に、「センサ本体外縁支持部」および「センサ本体内側支持部」によって支持されている領域に、導体層12、強誘電体層13、導体層14および赤外線吸収膜17が形成されていない「非センサ領域」を設けた赤外線センサ2を備えたことにより、「センサ本体」に撓みが生じて「センサ本体」の一部が支持基板10に接した状態となる事態を回避することができるため、赤外線IRの検出感度を向上させる(「センサ本体」からのセンサ信号の出力を大きくする)ために赤外線IRの受光面積を広く形成した構成において、赤外線IRの受光時における「センサ本体」から支持基板10への伝熱を好適に回避することができる結果、赤外線IRの受光量を正確に測定することができる。
さらに、この赤外線測定器1によれば、複数の「センサ本体内側支持部」を備えて「センサ側支持部」を構成すると共に、「センサ本体外縁支持部」と「センサ本体外縁支持部」に対して最も近接する「センサ本体内側支持部」との間の距離、および最も近接し合う各「センサ本体内側支持部」の間の距離を互いに等しく規定したことにより、「センサ本体」に部分的な撓みが生じる事態を回避することができるため、「センサ本体」の全域を支持基板10に対して離間させた状態を確実に維持することができる。
次に、「赤外線シャッター機構」および「赤外線測定器」の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、前述した赤外線測定器1、およびその赤外線シャッター機構3の構成要素と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図11〜14に示す赤外線測定器1Aは、「赤外線測定器」の他の一例であって、上記の赤外線測定器1における赤外線センサ2に代えて、「赤外線センサ」の他の一例である赤外線センサ2aを備えると共に、赤外線測定器1における赤外線シャッター機構3に代えて、「赤外線シャッター機構」の他の一例である赤外線シャッター機構3aを備えて構成されている。この赤外線測定器1Aは、前述した赤外線測定器1と同様にして、公知の半導体製造プロセスに従って赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aをそれぞれ別個に製造した後に、これらを一体化することで製造されている。
赤外線センサ2aは、図13,14に示すように、基板40の一方の面に導体層41が形成されると共に、基板40の他方の面に導体層42が形成され、かつ、導体層41の一部を覆うようにして赤外線吸収膜43が形成されると共に、この赤外線吸収膜43の周囲に保護膜44が形成されて構成されている。基板40は、それ自体が焦電型の赤外線センサとして機能すると共に、赤外線センサ2aの支持基板として機能する板体であって、セラミック板や、PZTおよびTiBA等の強誘電体材料の層によって物理的な厚みが数十μm〜数mm程度で、一辺の長さが数mm〜数cm程度の平板状に形成されている。導体層41,42は、基板40からセンサ信号を取り出すための1対の電極の1つとして機能する層であって、一例として、白金やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。赤外線吸収膜43は、各種金属材料や有機材料(カーボン、ポリイミドおよびアルミニウム等)によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されると共に、表面平滑性がある程度低下させられている。
一方、赤外線シャッター機構3aは、赤外線センサ2aによる検出対象の波長領域(一例として、10000nm±2000nmの範囲:以下、「対象波長領域」ともいう)の赤外線IRをチョッピングするチョッピング機構として機能するシャッター機構(赤外線変調器)であって、図13,14,16に示すように、支持基板20、絶縁層21、導体層22,27,33、赤外線透過薄膜積層体23,25,31、犠牲層24,30、支持層26,32および反射率低減層29を備えると共に、赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ(空隙)28が形成され、かつ、赤外線透過薄膜積層体25,31の間にギャップ(空隙)34が形成されて構成されている。
この赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体23,25,31の3つの赤外線透過薄膜積層体を備えている点において赤外線シャッター機構3とは相違している。この場合、この赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体23が「第1の赤外線透過薄膜積層体」に相当し、赤外線透過薄膜積層体25が「第2の赤外線透過薄膜積層体」に相当し、赤外線透過薄膜積層体31が「第3の赤外線透過薄膜積層体」に相当する。また、赤外線透過薄膜積層体31は、赤外線透過薄膜積層体23,25と同様にして、高屈折率材料(ゲルマニウムやシリコン等)で形成した薄膜および低屈折率材料(硫化亜鉛やセレン化亜鉛等)で形成した薄膜を交互に積層した薄膜積層体(「赤外線を透過可能な導電性材料」の一例)で構成されている。
犠牲層30は、赤外線シャッター機構3aの製造時に赤外線透過薄膜積層体25,31の間にギャップ34を形成すると共に、その一部が赤外線透過薄膜積層体25,31の間に残存させられて、支持層32と相まって「機構側支持部」を構成する。この場合、この犠牲層30については、酸化シリコン、シリコンおよび各種有機物等で形成することができ、また、その厚みd(すなわち、ギャップ34の高さ:赤外線透過薄膜積層体25,31の常態における離間距離)については、ギャップ34内に満たされる気体(各種のガスや空気など:一例として、空気)、或いは真空の屈折率nとの積(nd)が、上記の対象波長領域の中心波長に対する1/4となり、かつ、赤外線透過薄膜積層体23,25間のギャップ28の高さと一致するとの条件を満たすことを条件として、任意に規定することができる。
支持層32は、犠牲層30と相まって「第2の機構側支持部」を構成する層であって、犠牲層24と同様に、一例として、酸化シリコンやポリイミドによって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されている。導体層33は、赤外線透過薄膜積層体31を図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P11b(図12参照)を構成する層であって、一例として、上記の赤外線透過薄膜積層体31を構成する各薄膜の形成に使用した導電材料(例えば、ゲルマニウムやシリコン)やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。
この場合、この赤外線シャッター機構3aでは、上記の赤外線シャッター機構3における「薄膜積層体外縁支持部」、「薄膜積層体内側支持部」、およびこれらで構成された「機構側支持部」に相当する構成要素が、「第1の薄膜積層体外縁支持部」、「第1の薄膜積層体内側支持部」、および「第1の機構側支持部」にそれぞれ相当する。また、この赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体31に大きな撓みが生じることのないように、赤外線透過薄膜積層体31の外縁領域に設けられた「第2の薄膜積層体外縁支持部」と、赤外線透過薄膜積層体31の内側領域に設けられた複数の「第2の薄膜積層体内側支持部」とで構成される「第2の機構側支持部」によって赤外線透過薄膜積層体31を支持する構成が採用されている。
具体的には、図12,15,16に示すように、この赤外線シャッター機構3aでは、一例として、平面視において赤外線透過薄膜積層体31が9×9=81個のマトリクス状に配置された矩形状のセルに区分けされて、これらのセル群の周囲、および各セルの間に支持層32が形成されると共に、この支持層32に対して支持基板20の厚み方向で重なる位置の犠牲層30が残存させられて、支持層32と相まって赤外線透過薄膜積層体31を支持する構成が採用されている。この場合、図13,14,16に示すように、赤外線透過薄膜積層体25の各セルと、赤外線透過薄膜積層体31の各セルとは、支持基板20の厚み方向で重なる位置にそれぞれ設けられている。なお、図13,14では、赤外線シャッター機構3aの構成についての理解を容易とするために、3×3個のセルを図示している。
この場合、本例の赤外線シャッター機構3aでは、上記のセル群の周囲に形成された支持層32、およびこの支持層32に対して支持基板20の厚み方向で重なる位置の犠牲層30(支持枠30a)が相まって「第2の薄膜積層体外縁支持部」が構成されると共に、上記の各セルの間に形成された支持層32、およびこの支持層32に対して支持基板20の厚み方向で重なる位置の犠牲層30(支柱30b)が相まって「第2の薄膜積層体内側支持部」が構成されている。また、本例の赤外線シャッター機構3aでは、複数の支柱30bを備えて「第2の機構側支持部」が構成されると共に、支持枠30aと支持枠30aに対して最も近接する支柱30bとの間の距離、および最も近接し合う各支柱30b,30bの間の距離が互いに等しく規定されている。
具体的には、この赤外線シャッター機構3aでは、一例として、8×8=64本の支柱30bが等間隔でマトリクス状に設けられると共に、支持枠30aおよび支持枠30aに最も近い支柱30bの間の距離と、隣接する支柱30b,30bの間の距離とが互いに等しくなっている(「第3の赤外線透過薄膜積層体」を支持する構成要素が等間隔で設けられている)。なお、図13,14では、赤外線シャッター機構3aの構成についての理解を容易とするために、2×2本の支柱30bを図示している。これにより、この赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体31に大きな撓みが生じる事態が回避されている。なお、本例の赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体31において隣接する各セル同士を相互に電気的に接続するために、隣接する各セルが相互に連結されている。
この赤外線測定器1Aの製造に際しては、まず、赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aをそれぞれ製造する。なお、一例として、赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aの順で製造する方法について説明するが、赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aの製造順序は特に限定されるものではない。
赤外線センサ2aの製造に際しては、まず、基板40の一方の面に導体層41を形成すると共に、他方の面に導体層42を形成する。次いで、導体層41の中央領域(後に、赤外線シャッター機構3aにおける赤外線透過薄膜積層体23,25,31と対向させられる矩形状の領域)に赤外線吸収膜43を形成する。続いて、赤外線吸収膜43を形成した領域、およびバンプ接続部P1a〜P4a(図11参照)として機能させるべき領域を除いて導体層41の上に保護膜44を形成する。次いで、導体層41におけるバンプ接続部P1a〜P4aにバンプ4をそれぞれ形成する。なお、バンプ4については、赤外線センサ2a側に形成せずに、赤外線シャッター機構3aにおけるバンプ接続部P5a〜P8a(図12参照)に形成することもできる。また、赤外線センサ2aにおけるバンプ接続部P1a〜P4a、および赤外線シャッター機構3aにおけるバンプ接続部P5a〜P8aの双方にバンプ4をそれぞれ形成することもできる。これにより、赤外線センサ2aが完成する。
一方、赤外線シャッター機構3aの製造に際しては、前述した赤外線シャッター機構3の製造工程と同様の手順に従って、支持基板20の一方の面(後に、赤外線センサ2aに対向させられる面:図13,14における下面)に、各構成要素21〜27,30〜33を形成すると共に、支持基板20の他方の面に反射率低減層29を形成する。なお、各構成要素21〜27や反射率低減層29の形成方法については、赤外線シャッター機構3の製造時におけるこれらの形成方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、犠牲層30(支持枠30aおよび支柱30b)の形成方法は、赤外線シャッター機構3の犠牲層24と同様であり、赤外線透過薄膜積層体31の形成方法は、赤外線シャッター機構3の赤外線透過薄膜積層体25と同様であり、支持層32の形成方法は、赤外線シャッター機構3の支持層26と同様であり、導体層33の形成方法は、赤外線シャッター機構3の導体層27と同様であるため、これらの構成要素30〜33の形成方法についても、詳細な説明を省略する。
続いて、赤外線透過薄膜積層体31を形成した面の側から、マスクパターン(図示せず)を用いたエッチング処理(例えば、エッチングガスを用いたドライエッチング処理)を実行する。この際には、赤外線透過薄膜積層体31の各セルに形成した丸孔31aを通過して犠牲層30に達したエッチングガスによって赤外線透過薄膜積層体25,31の間の犠牲層30がエッチングされることにより、赤外線透過薄膜積層体25,31の間にギャップ34が形成されると共に、赤外線透過薄膜積層体25の各セルに形成した丸孔25aを通過して犠牲層24に達したエッチングガスによって赤外線透過薄膜積層体23,25の間の犠牲層24がエッチングされることにより、赤外線透過薄膜積層体23,25の間にギャップ28が形成される。
この場合、赤外線透過薄膜積層体31の各セル毎に丸孔31aが形成されているため、図15に示すように、丸孔31aを通過したエッチングガスによって、同図に破線で示す円形の領域内において犠牲層30がエッチングされてギャップ34(図13,14,16参照)が形成されると共に、破線で示す各円形の領域外の犠牲層30がエッチングされずに残存することで支持枠30aや支柱30bが形成される。また、赤外線透過薄膜積層体25の各セル毎に丸孔25aが形成されているため、図15に示すように、丸孔25aを通過したエッチングガスによって、同図に破線で示す円形の領域内において犠牲層24がエッチングされてギャップ28(図13,14,16参照)が形成されると共に、破線で示す各円形の領域外の犠牲層24がエッチングされずに残存することで支持枠24aや支柱24bが形成される。
これにより、赤外線透過薄膜積層体23と、赤外線透過薄膜積層体25の各セルとの間にギャップ28が形成された状態で、赤外線透過薄膜積層体25が支持枠24a、支柱24bおよび支持層26を介して支持されて赤外線透過薄膜積層体23,25が対向した状態となり、かつ、赤外線透過薄膜積層体25の各セルと、赤外線透過薄膜積層体31の各セルとの間にギャップ34が形成された状態で、赤外線透過薄膜積層体31が支持枠30a、支柱30bおよび支持層32を介して支持されて赤外線透過薄膜積層体25,31が対向した状態となって、赤外線シャッター機構3aが完成する。
次いで、赤外線センサ2aにおける赤外線吸収膜43の形成面と、赤外線シャッター機構3aにおける赤外線透過薄膜積層体23,25,31等の形成面とを対向させると共に、赤外線センサ2aに形成したバンプ4が赤外線シャッター機構3aの導体層22におけるバンプ接続部P5a〜P8aに接するように赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aを重ねた状態において、赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aを加熱しつつ、超音波を印加する。これにより、各バンプ4が溶融して赤外線シャッター機構3aのバンプ接続部P5a〜P8aに溶着する結果、赤外線センサ2aおよび赤外線シャッター機構3aが一体化した状態となる。また、この状態においては、赤外線センサ2aの導体層41(1対の電極の一方)がバンプ接続部P1a,P5aに接続されたバンプ4を介して赤外線シャッター機構3aにおける導体層22のうちの1つに電気的に接続される。次いで、図13に示すように、その一端部を赤外線センサ2aの導体層42に接続した信号線5の他端部を、赤外線シャッター機構3aの導体層22における信号線接続部P12a(図12参照)に電気的に接続する。これにより、赤外線測定器1Aが完成する。
この赤外線測定器1Aでは、赤外線シャッター機構3aにおける支持基板20に入射した赤外線IRを赤外線透過薄膜積層体23,25,31によって反射または透過させることで、赤外線センサ2aの赤外線吸収膜43に入射する赤外線IRをチョッピングする構成が採用されている。具体的には、この赤外線測定器1Aの使用に際しては、赤外線シャッター機構3aの信号線接続部P9b,P10b,P11b(図12参照)と駆動制御部(図示せず)とを信号線(図示せず)を介して電気的に接続すると共に、赤外線シャッター機構3aの信号線接続部P5b,P12b(図12参照)と測定回路(図示せず)とを信号線(図示せず)を介して電気的に接続することで、赤外線センサ2aの導体層導体層41,42を測定回路に接続する。
この場合、この赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構3aは、上記の駆動制御部によって、赤外線透過薄膜積層体23,25(「2組の赤外線透過薄膜積層体」のうちの一方)の間、および赤外線透過薄膜積層体25,31(「2組の赤外線透過薄膜積層体」のうちの他方)の間に電圧が印加されていない状態において、図17に示すように、赤外線透過薄膜積層体23,25の間に、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長(この例では、10000nm)に対する1/4である2500nm程度(「nd=1/4λ」に対する1倍の例(奇数倍の一例))のギャップ28が形成されると共に、赤外線透過薄膜積層体25,31の間に、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長(この例では、10000nm)に対する1/4である2500nm程度(「nd=1/4λ」に対する1倍の例(奇数倍の一例))のギャップ34が形成される。
このように、ギャップ28,34(本例では、空気で形成された「低屈折率層」)が形成された状態(「対向する2組の赤外線透過薄膜積層体の間に電圧が印加されずに各赤外線透過薄膜積層体の間にギャップが形成された状態」の一例)では、赤外線透過薄膜積層体23における赤外線透過薄膜積層体25側の面、赤外線透過薄膜積層体25における赤外線透過薄膜積層体23側の面、赤外線透過薄膜積層体25における赤外線透過薄膜積層体31側の面、および赤外線透過薄膜積層体31における赤外線透過薄膜積層体25側の面において赤外線IRが反射される結果、赤外線IRの透過が規制される。以下、この状態を「閉状態」ともいう。
また、この赤外線シャッター機構3aでは、「第2の薄膜積層体外縁支持部」を構成する支持枠30aおよび支持層32に加えて、「第2の薄膜積層体内側支持部」を構成する各支柱30bおよび支持層32によって赤外線透過薄膜積層体31の各セルが支持されているため、セル群からなる十分に広い赤外線透過薄膜積層体31を備えているにも拘わらず、赤外線測定器1における赤外線シャッター機構3の赤外線透過薄膜積層体25と同様にして、赤外線透過薄膜積層体25,31の間にギャップ34が形成された状態においても、赤外線透過薄膜積層体31に撓みが生じる事態が回避されている。この結果、閉状態において、赤外線透過薄膜積層体25の一部が赤外線透過薄膜積層体23に接する事態、および赤外線透過薄膜積層体31の一部が赤外線透過薄膜積層体25に接する事態が回避されている。
さらに、この赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体23,25(「2組の赤外線透過薄膜積層体」のうちの一方)の間、および赤外線透過薄膜積層体25,31(「2組の赤外線透過薄膜積層体」のうちの他方)の間に駆動制御部によって数V〜数十V程度の電圧がそれぞれ印加されたときに、赤外線透過薄膜積層体23,25の間、および赤外線透過薄膜積層体25,31の間に静電引力が生じて、図18に示すように、赤外線透過薄膜積層体23,25が面的に接触して光学的に一体化すると共に、赤外線透過薄膜積層体25,31が面的に接触して光学的に一体化する結果、赤外線透過薄膜積層体23,25,31のすべてが光学的に一体化するように構成されている(「3つの赤外線透過薄膜積層体が光学的に一体化し」との状態の一例)。
このように、各赤外線透過薄膜積層体23,25,31の間に電圧が印加されて両赤外線透過薄膜積層体23,25,31が厚み方向で光学的に一体化した状態では、赤外線透過薄膜積層体23における赤外線透過薄膜積層体25側の面、赤外線透過薄膜積層体25における赤外線透過薄膜積層体23側の面、赤外線透過薄膜積層体25における赤外線透過薄膜積層体31側の面、および赤外線透過薄膜積層体31における赤外線透過薄膜積層体25側の面における赤外線IRの反射が極く小さなものとなる結果、各赤外線透過薄膜積層体23,25,31の厚み方向への赤外線IRの透過が許容される。以下、この状態を「開状態」ともいう。
これにより、この赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構3aでは、駆動制御部によって電圧を印加する状態と電圧を印加しない状態との2種類の状態を一定周期で交互に繰り返すことにより、赤外線IRを一定周期でチョッピングすることが可能となっている。また、赤外線シャッター機構3aが開状態となって赤外線IRの透過が許容された状態においては、赤外線センサ2aに対する赤外線IRの入射量に応じて赤外線吸収膜43が発熱し、この熱によって基板40が加熱される。これにより、赤外線吸収膜43に生じた熱量、すなわち、赤外線シャッター機構3aを透過して赤外線センサ2aの入射面に入射した赤外線IRの照射量に応じた電流値の検出信号が強誘電体層13から出力される。
このように、この赤外線シャッター機構3aでは、赤外線透過薄膜積層体25の外縁領域に設けられた「第1の薄膜積層体外縁支持部(本例では、犠牲層24における支持枠24a、および支持基板20の厚み方向で支持枠24aに重なる部位の支持層26)」と、赤外線透過薄膜積層体25の内側領域に設けられた「第1の薄膜積層体内側支持部(本例では、犠牲層24における各支柱24b、および支持基板20の厚み方向で各支柱24bに重なる部位の支持層26)」とを備えて、赤外線透過薄膜積層体25を支持する「第1の機構側支持部」が構成され、かつ、赤外線透過薄膜積層体31の外縁領域に設けられた「第2の薄膜積層体外縁支持部(本例では、犠牲層30における支持枠30a、および支持基板20の厚み方向で支持枠30aに重なる部位の支持層32)」と、赤外線透過薄膜積層体31の内側領域に設けられた「第2の薄膜積層体内側支持部(本例では、犠牲層30における各支柱30b、および支持基板20の厚み方向で各支柱30bに重なる部位の支持層32)」とを備えて、赤外線透過薄膜積層体31を支持する「第2の機構側支持部」が構成されると共に、赤外線透過薄膜積層体25における「第1の機構側支持部」によって支持されていない部位が赤外線透過薄膜積層体23,25の間に電圧が印加された状態において赤外線透過薄膜積層体23に接して両赤外線透過薄膜積層体23,25が光学的に一体化し、かつ、赤外線透過薄膜積層体31における「第2の機構側支持部」によって支持されていない部位が赤外線透過薄膜積層体25,31の間に電圧が印加された状態において赤外線透過薄膜積層体25に接して両赤外線透過薄膜積層体25,31が光学的に一体化するように構成されている。また、この赤外線測定器1Aでは、上記の赤外線シャッター機構3aと、赤外線シャッター機構3aを透過した赤外線IRを受光してセンサ信号を出力する赤外線センサ2aとを備えている。
したがって、この赤外線シャッター機構3a、および赤外線測定器1Aによれば、赤外線透過薄膜積層体25の内側領域が各支柱24bおよび支持層26によって支持されると共に、赤外線透過薄膜積層体31の内側領域が各支柱30bおよび支持層32によって支持されているため、赤外線透過薄膜積層体25,31に大きな撓みが生じる事態を好適に回避することができる結果、赤外線透過薄膜積層体23,25の間、および赤外線透過薄膜積層体25,31の間に電圧が印加されていない状態において赤外線透過薄膜積層体25が赤外線透過薄膜積層体23に接したり、赤外線透過薄膜積層体31が赤外線透過薄膜積層体25に接したりして赤外線IRの透過が許容されてしまう事態を回避することができる。これにより、赤外線IRの検出感度を向上させる(赤外線センサ2aからのセンサ信号の出力を大きくする)ために広く形成した赤外線センサ2aにおける赤外線IRの受光面積の広さに応じて、赤外線透過薄膜積層体25,31を十分に広く形成した構成において、赤外線センサ2aに入射する赤外線IRを確実にチョッピングすることができる。
また、この赤外線シャッター機構3aによれば、複数の「第1の薄膜積層体内側支持部」を備えて「第1の機構側支持部」を構成すると共に、「第1の薄膜積層体外縁支持部」と「第1の薄膜積層体外縁支持部」に対して最も近接する「第1の薄膜積層体内側支持部」との間の距離、および最も近接し合う各「第1の薄膜積層体内側支持部」の間の距離を互いに等しく規定し、かつ、複数の「第2の薄膜積層体内側支持部」を備えて「第2の機構側支持部」を構成すると共に、「第2の薄膜積層体外縁支持部」と「第2の薄膜積層体外縁支持部」に対して最も近接する「第2の薄膜積層体内側支持部」との間の距離、および最も近接し合う各「第2の薄膜積層体内側支持部」の間の距離を互いに等しく規定したことにより、赤外線透過薄膜積層体25,31に部分的な撓みが生じる事態を回避することができるため、赤外線透過薄膜積層体23,25間、および赤外線透過薄膜積層体25,31間にギャップ28,34を形成する際に、赤外線透過薄膜積層体25の全域を赤外線透過薄膜積層体23に対して確実に離間させ、かつ、赤外線透過薄膜積層体31の全域を赤外線透過薄膜積層体25に対して確実に離間させることができる。
さらに、この赤外線シャッター機構3aによれば、支持基板20を形成している材料よりも屈折率が低い材料によって支持基板20における他方の面に反射率低減層29を形成したことにより、支持基板20における赤外線透過薄膜積層体23,25,31等の形成面とは反対側の面(赤外線IRの入射面)において赤外線IRが大きく反射されて赤外線シャッター機構3aの赤外線IRの透過率が低下する事態を回避して、開状態において赤外線センサ2aに対して十分な量の赤外線IRを入射させることができる。
なお、「赤外線センサ」、「赤外線シャッター機構」および「赤外線測定器」の構成は、上記の赤外線センサ2,2a、赤外線シャッター機構3,3aおよび赤外線測定器1,1Aの構成に限定されない。例えば、赤外線透過薄膜積層体25を9×9=81個のセル状に区分けして、このセル群の周囲、および各セルの間に支持層26を形成すると共に、犠牲層24で構成した支持枠24a、各支柱24bおよび支持層26によって、上記の各セルを支持する構成の赤外線シャッター機構3や、赤外線透過薄膜積層体25,31をそれぞれ9×9=81個のセル状に区分けして、このセル群の周囲、および各セルの間に支持層26,32を形成すると共に、犠牲層24,30で構成した支持枠24a,30a、各支柱24b,30bおよび支持層26,32によって、上記の各セルを支持する構成の赤外線シャッター機構3aを例に挙げて説明したが、「各赤外線透過薄膜積層体」をセル状に区分けする数、およびこれに対応して設ける「薄膜積層体内側支持部」の数は、上記の例示に限定されず、「各赤外線透過薄膜積層体」の物理的な強度を確保でき、かつ、電圧の印加時に「各赤外線透過薄膜積層体」を光学的に一体化させ得る範囲内において、任意の数に規定することができる。
また、「各赤外線透過薄膜積層体」をセル状に区分けしない構成を採用することもできる。具体的には、赤外線シャッター機構3における赤外線透過薄膜積層体25を赤外線透過薄膜積層体23と同様にして連続的に形成すると共に、両赤外線透過薄膜積層体23,25の間に支持枠24aや各支柱24bを設けて赤外線透過薄膜積層体25を支持する構成(図示せず)や、赤外線シャッター機構3aにおける赤外線透過薄膜積層体25,31を赤外線透過薄膜積層体23と同様にして連続的に形成すると共に、両赤外線透過薄膜積層体23,25の間に支持枠24aや各支柱24bを設けて赤外線透過薄膜積層体25を支持し、かつ、両赤外線透過薄膜積層体25,31の間に支持枠30aや各支柱30bを設けて赤外線透過薄膜積層体31を支持する構成(図示せず)を採用することもできる。このように、「各赤外線透過薄膜積層体」の数を赤外線シャッター機構3,3aの例と異なる数に規定した構成、或いは、「各赤外線透過薄膜積層体」を区分けしない構成を採用した場合においても、赤外線シャッター機構3,3aと同様の効果を奏することができる。
また、「各赤外線透過薄膜積層体」をセル状に区分けすると共に、「赤外線センサ」の「センサ本体」をセル状に区分けする構成を採用する場合においては、上記の赤外線測定器1のように、「赤外線シャッター機構」における「各赤外線透過薄膜積層体(この例では、赤外線透過薄膜積層体25)」の区分け数(本例では、9×9=81個)と、「赤外線センサ」における「センサ本体」の区分け数(本例では、9×9=81個)とを互いに相違する数とすることもできる。具体的には、一例として、「赤外線シャッター機構」における「各赤外線透過薄膜積層体」を9×9=81個に区分けすると共に、「赤外線センサ」における「センサ本体」を3×3=9個に区分けすることができる。このような構成を採用した場合においても、上記の赤外線測定器1と同様の効果を奏することができる。
さらに、複数の「薄膜積層体内側支持部」を備えて構成された「機構側支持部」を有する赤外線シャッター機構3や、複数の「第1の薄膜積層体内側支持部」を備えて構成された「第1の機構側支持部」、および複数の「第2の薄膜積層体内側支持部」を備えて構成された「第2の機構側支持部」を有する赤外線シャッター機構3aを例に挙げて説明したが、「薄膜積層体内側支持部」、「第1の薄膜積層体内側支持部」および「第2の薄膜積層体内側支持部」については、少なくとも1つ設けることで、「B赤外線透過薄膜積層体」、「第2の赤外線透過薄膜積層体」および「第3の赤外線透過薄膜積層体」に大きな撓みが生じる事態を回避することができる。
また、「センサ側支持基板と、センサ側支持基板の一方の面側に配置されたセンサ本体と、センサ側支持基板およびセンサ本体の間に空隙を形成しつつセンサ側支持基板に対してセンサ本体を支持するセンサ側支持部とを備えた赤外線センサ」の構成は、上記の赤外線センサ2の構成に限定されない。例えば、図19に示す赤外線測定器1Bの赤外線センサ2bは、支持枠10a、支柱10bおよび絶縁層11によって「センサ本体」を支持する上記の赤外線センサ2の構成に代えて、支持枠10a、支柱10bおよび保護膜15によって「センサ本体」を支持する構成が採用されている。なお、この赤外線センサ2bにおいて前述した赤外線センサ2の構成要素と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
この赤外線センサ2bでは、赤外線IRの受光時に赤外線吸収膜17に生じて導体層14を介して強誘電体層13に伝熱した熱が導体層12や絶縁層11を介して支持基板10に奪われてしまうことのないように、支持基板10の中央部に凹部Hが形成されて、絶縁層11と支持基板10との間に空隙18が形成されている。この場合、図20に示すように、この赤外線センサ2bでは、支持基板10に形成された凹部Hにおける側壁部位で構成された支持枠10a、およびこの支持枠10aに対して支持基板10の厚み方向で重なる位置に形成された保護膜15が相まって「センサ本体」の外縁部を支持する「センサ本体外縁支持部」として機能する。また、この赤外線センサ2bでは、複数の支柱10bと、支柱10bに対して支持基板10の厚み方向で重なる位置に形成された保護膜15が相まって「センサ本体」の内側領域を支持する「センサ本体内側支持部」として機能する。
また、本例の赤外線センサ2bでは、前述した赤外線センサ2と同様にして、複数の支柱10bを備えて「センサ側支持部」が構成されると共に、支持枠10aと支持枠10aに対して最も近接する支柱10bとの間の距離、および最も近接し合う各支柱10bの間の距離が互いに等しく規定されている。具体的には、この赤外線センサ2bでは、一例として、8×8=64本の支柱10bが等間隔でマトリクス状に設けられると共に、支持枠10aおよび支持枠10aに最も近い支柱10bの間の距離と、隣接する支柱10b,10bの間の距離とが互いに等しくなっている(「センサ本体」を支持する構成要素が等間隔で設けられている)。なお、図19では、赤外線センサ2の構成についての理解を容易とするために、2本の支柱10bを図示している。
さらに、この赤外線センサ2bでは、支持枠10aや各支柱10bが形成された領域に、「センサ本体」が形成されていない「非センサ領域」が設けられて、この「非センサ領域」に保護膜15を形成する材料が充填されている。具体的には、この赤外線センサ2bでは、前述した赤外線センサ2と同様にして、一例として、平面視において「センサ本体」が9×9=81個のマトリクス状に配置された矩形状のセルに区分けされて、各セルの間に上記の「非センサ領域」が形成されている。なお、図19では、赤外線センサ2bの構成についての理解を容易とするために、3個のセルを図示している。これにより、この赤外線センサ2bでは、「センサ本体」が形成された領域には、凹部Hからなる空隙18が設けられ、支持枠10aや支柱10bの存在によって空隙18が存在しない領域には、「センサ本体」が存在しないため、「センサ本体」から支持基板10への伝熱が十分に規制されている。
このように、この赤外線測定器1Bによれば、「センサ本体」の外縁領域に設けられた「センサ本体外縁支持部(この例では、支持枠10a、および支持枠10a上の保護膜15)」と、「センサ本体」の内側領域に設けられた「センサ本体内側支持部(この例では、各支柱10b、および各支柱10b上の保護膜15)」とを備えて、「センサ本体」を支持する「センサ側支持部」を構成すると共に、「センサ本体外縁支持部」および「センサ本体内側支持部」によって支持されている領域に、導体層12、強誘電体層13、導体層14および赤外線吸収膜17が形成されていない「非センサ領域」を設けた「センサ本体」を有する赤外線センサ2bを備えたことにより、前述した赤外線センサ2を備えた赤外線測定器1と同様の効果を奏することができる。
また、この赤外線測定器1Bによれば、複数の「センサ本体内側支持部」を備えて「センサ側支持部」を構成すると共に、「センサ本体外縁支持部」と「センサ本体外縁支持部」に対して最も近接する「センサ本体内側支持部」との間の距離、および最も近接し合う各「センサ本体内側支持部」の間の距離を互いに等しく規定したことにより、前述した赤外線センサ2を備えた赤外線測定器1と同様の効果を奏することができる。
なお、赤外線シャッター機構3と赤外線センサ2bとを一体化して赤外線測定器1Bを構成した例について説明したが、前述した赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構3aと、赤外線測定器1Bにおける赤外線センサ2bとを一体化した「赤外線測定器」(図示せず)を構成することもできる。また、赤外線シャッター機構3と赤外線センサ2aとを一体化して「赤外線測定器」(図示せず)を構成したり、赤外線シャッター機構3aと赤外線センサ2とを一体化して「赤外線測定器」(図示せず)を構成したりすることもできる。さらに、支持基板10における支持枠10aを「センサ本体外縁支持部」として使用すると共に、支持基板10における各支柱10bを「センサ本体内側支持部」として使用する構成を例に挙げて説明したが、支持基板10と絶縁層11との間(或いは、支持基板10と保護膜15との間)に、任意の層(例えば、犠牲層24,30と同様の層)を設けて、この層における所望の領域を残存させるようにエッチング処理することで、支持枠10aや支柱10bと同様の構成要素を形成することもできる。
加えて、焦電型赤外線センサの一例である強誘電体層13を有する赤外線センサ2,2bを備えた赤外線測定器1,1B、および焦電型赤外線センサの他の一例である基板40を有する赤外線センサ2aを備えた赤外線測定器1Aを例に挙げて説明したが、焦電型赤外線センサに代えて、サーモパイル型赤外線センサやサーミスタ等の各種熱型センサ、および量子型赤外線センサなどを採用して「赤外線センサ」を構成して「赤外線測定器」を構成することができる。