図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ制御システム33を備えるパラボラアンテナ10の全体構成を示す断面図である。パラボラアンテナ10は、地上の基地局に設置され、人工衛星や彗星・小惑星など目標とする天体(以下、「目標天体」と称する)との間で電波を送信および/または受信するために用いられる。
パラボラアンテナ10は、具体的には、目標天体との間で電波を送信および/または受信する機能を有するアンテナ装置11と、アンテナ装置11を予め定める鉛直軸線J1および水平軸線J2まわりに回動させるアンテナ駆動装置12と、地面に固定して設置される基台13とを含んで構成される。
アンテナ装置11は、図1に示すように、放物面反射器21aを有し、電波を送信および/または受信するアンテナ本体21と、鉛直軸線J1と同軸となるように設けられ、基台13に鉛直軸線J1まわりに回転可能に支持される円板状の回転台22と、回転台22上に設置され、回転台22と一体的に回転する支持台23と、長手方向の中間部において支持台23に水平軸線J2まわりに回転可能に支持され、長手方向の一端部24aにアンテナ本体21が固定されるアンテナ支持部24とを含んで構成される。本実施形態では、アンテナ装置11は、鉛直軸線J1と水平軸線J2とが同一平面上に配置されるように構成されている。
アンテナ駆動装置12は、駆動力を発生し、その駆動力をアンテナ装置11に伝達して、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させるアジマス駆動部31と、駆動力を発生し、その駆動力をアンテナ装置11に伝達して、アンテナ本体21を水平軸線J2まわりに回動させるエレベーション駆動部32と、アンテナ本体21が目標天体に向き、移動する目標天体をアンテナ本体21が追尾するようにアジマス駆動部31およびエレベーション駆動部32の動作を制御するアンテナ制御システム33とを含んで構成される。
本実施形態では、図1に示すように、アジマス駆動部31は、発生した駆動力を、アンテナ装置11における回転台22に伝達して、回転台22を鉛直軸線J1まわりに回動させるように構成されている。詳細には後述するが、アジマス駆動部31は、中心軸線L1が鉛直軸線J1に一致するように、回転台22に固定して設けられた従動側歯車50aを含み、回転台22には、この従動側歯車50aを介して駆動力が伝達される。
回転台22は、アジマス駆動部31によって駆動力が伝達されると、その駆動力によって鉛直軸線J1まわりに回動する。回転台22には、アンテナ本体21が一体的に回動するように設けられているので、アジマス駆動部31によって回転台22に駆動力が伝達されることによって、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させることができる。
同様に、エレベーション駆動部32は、発生した駆動力を、アンテナ装置11におけるアンテナ支持部24に伝達して、アンテナ支持部24を水平軸線J2まわりに回動させるように構成されている。エレベーション駆動部32は、中心軸線が水平軸線J2に一致するように、アンテナ支持部24の他端部24bに固定して設けられた円弧状のラック50bを含み、アンテナ支持部24には、このラック50bを介して駆動力が伝達される。
アンテナ支持部24は、エレベーション駆動部32によって駆動力が伝達されると、その駆動力によって水平軸線J2まわりに回動する。アンテナ支持部24には、アンテナ本体21が一体的に回動するように設けられているので、エレベーション駆動部32によってアンテナ支持部24に駆動力が伝達されることによって、アンテナ本体21を水平軸線J2まわりに回動させることができる。
図2は、アジマス駆動部31の構成の一例を簡略的に示す系統図である。アジマス駆動部31とエレベーション駆動部32とは、従動側歯車50aとラック50bの構成が相違している点を除き、他の構造は同様であるので、以下では、アジマス駆動部31の構造についてのみ説明し、エレベーション駆動部32の構造については説明を省略する。
アジマス駆動部31は、アンテナ装置11を回動させるための駆動力を発生する駆動力発生部40と、駆動力発生部40によって発生される駆動力をアンテナ装置11に伝達する駆動力伝達部41とを含んで構成される。
また、駆動力伝達部41は、駆動力断続部42と、入力歯車43と、第1伝達軸44と、第1傘歯車45aと、第2傘歯車45bと、第2伝達軸46と、第1ウォーム歯車47aと、第2ウォーム歯車47bと、第1駆動側歯車48aと、第2駆動側歯車48bと、位相調整用のカップリング49と、アンテナ装置11における回転台22に固定して設けられる従動側歯車50aとを含んで構成される。
図2に示すように、駆動力発生部40によって発生される駆動力は、駆動力断続部42を介して入力歯車43に入力される。入力歯車43は、軸線J3に沿って延び、軸線J3まわりに回転可能に支持される第1伝達軸44の長手方向の一端部に、第1伝達軸44と同軸となるように固定して設けられ、第1伝達軸44の長手方向の他端部には、第1傘歯車45aが、第1伝達軸44と同軸となるように固定して設けられる。
第2傘歯車45bは、軸線J4に沿って延び、軸線J4まわりに回転可能に支持される第2伝達軸46の長手方向の中央部に、第2伝達軸46と同軸となるように固定して設けられ、前記第1傘歯車45aに噛合するように設けられる。第2伝達軸46の長手方向の一端部には、第1ウォーム歯車47aが第2伝達軸46と同軸となるように固定して設けられ、また第2伝達軸46の長手方向の他端部には、第1ウォーム歯車47aと同一に構成される第2ウォーム歯車47bが第2伝達軸46と同軸となるように固定して設けられる。
第1駆動側歯車48aは、第1ウォーム歯車47aに噛合するとともに、従動側歯車50に噛合するように、軸線L2まわりに回転可能に設けられる。また、第2駆動側歯車48bは、第1駆動側歯車48aと同一に構成されており、前記と同様に、第2ウォーム歯車47bに噛合するとともに、従動側歯車50aに噛合するように、軸線L2に平行な軸線L3まわりに回転可能に設けられる。従動側歯車50は、軸線L2,L3に平行であって、鉛直軸線J1に一致する軸線L1まわりに回転可能に、アンテナ装置11における回転台22に固定して設けられる。
駆動力伝達部41は、駆動力発生部40から入力歯車43を軸線J3まわりに矢符A1で示す回転方向に回動させる駆動力が入力されると、入力歯車43、第1伝達軸44および第1傘歯車45aが一体となって回転方向A1に回動し、これによって第1傘歯車45aに噛合する第2傘歯車45bに、該第2傘歯車45bを軸線J4まわりに矢符B1で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達される。
そして、第2傘歯車45bに駆動力が伝達されると、第2傘歯車45b、第2伝達軸46、ならびに第1および第2ウォーム歯車47a,47bが一体となって回転方向B1に回動し、第1ウォーム歯車47aに噛合する第1駆動側歯車48aに、該第1駆動側歯車48aを軸線L2まわりに矢符C1で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達されるとともに、第2ウォーム歯車47bに噛合する第2駆動側歯車48bに、該第2駆動側歯車48bを軸線L3まわりに矢符D1で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達される。
これによって、第1および第2駆動側歯車48a,48bは、それぞれの軸線L2,L3まわりに回転方向C1,D1に同期して回動し、第1および第2駆動側歯車48a,48bに噛合する従動側歯車50aに、該従動側歯車50aを軸線L1まわりに矢符E1で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達される。これによって、従動側歯車50aが固定される回転台22に駆動力が伝達され、回転台22とともにアンテナ本体21を回転方向E1に回動させる。
また駆動力伝達部41は、駆動力発生部40から入力歯車43を軸線J3まわりに矢符A2で示す回転方向に回動させる駆動力が入力されると、入力歯車43、第1伝達軸44および第1傘歯車45aが一体となって回転方向A2に回動し、これによって第1傘歯車45aに噛合する第2傘歯車45bに、該第2傘歯車45bを軸線J4まわりに矢符B2で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達される。
そして、第2傘歯車45bに駆動力が伝達されると、第2傘歯車45b、第2伝達軸46、ならびに第1および第2ウォーム歯車47a,47bが一体となって回転方向B2に回動し、第1ウォーム歯車47aに噛合する第1駆動側歯車48aに、該第1駆動側歯車48aを軸線L2まわりに矢符C2で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達されるとともに、第2ウォーム歯車47bに噛合する第2駆動側歯車48bに、該第2駆動側歯車48bを軸線L3まわりに矢符D2で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達される。
これによって、第1および第2駆動側歯車48a,48bは、それぞれの軸線L2,L3まわりに回転方向C2,D2に同期して回動し、第1および第2駆動側歯車48a,48bに噛合する従動側歯車50aに、該従動側歯車50aを軸線L1まわりに矢符E2で示す回転方向に回動させる駆動力が伝達される。これによって、従動側歯車50aが固定される回転台22に駆動力が伝達され、回転台22とともにアンテナ本体21を回転方向E2に回動させる。
このように、アジマス駆動部31は、駆動力発生部40によって発生される駆動力を駆動力伝達部41によって回転台22に伝達することによって、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに、回転方向E1,E2に回動させる。同様に、エレベーション駆動部32は、駆動力発生部40によって発生される駆動力を、アンテナ支持部24の他端部24bに設けられるラック50bに伝達することによって、アンテナ本体21を水平軸線J2まわりに、回転方向F1,F2(図1参照)に回動させる。
図3は、図2に示す駆動力発生部40および駆動力断続部42の構成の一例を簡略的に示す系統図である。以下、アジマス駆動部31およびエレベーション駆動部32における駆動力発生部40および駆動力断続部42について詳細に説明する。
駆動力発生部40は、アンテナ本体21を鉛直軸線J1(アジマス駆動部31の場合)または水平軸線J2(エレベーション駆動部32の場合)(以下、「軸線J」と称する)まわりに回動させるべき回転速度Vに関して、予め定められた複数の速度範囲のそれぞれに対応付けられた複数の電動機51a〜51cを備えて構成されている。
具体的には、駆動力発生部40は、アンテナ本体21を軸線Jまわりに低速の速度範囲で回動させるときに用いられる低速用電動機51aと、アンテナ本体21を軸線Jまわりに低速よりも速い中速の速度範囲で回動させるときに用いられる中速用電動機51bと、アンテナ本体21を軸線Jまわりに中速よりも速い高速の速度範囲で回動させるときに用いられる高速用電動機51cとを備えて構成されている。低速・中速・高速の速度範囲は、それぞれ重複していてもよい。以下、各電動機51a〜51cを区別する必要がない場合には、電動機51と記す。
また駆動力断続部42は、電動機51によって発生される駆動力が入力歯車43へ伝達される接続状態と、電動機51によって発生される駆動力が入力歯車43へ伝達されない未接続状態とに切換える複数のクラッチ機構52a,52bを備えて構成されている。各クラッチ機構52a,52bは、たとえば電磁クラッチによって実現される。
具体的な構造について説明すると、高速用電動機51cの出力軸71cは、第3の減速機53cの駆動側歯車54に連結されている。第3の減速機53cは、前記入力歯車43を含んで構成され、駆動側歯車54に入力される回転を減速して、入力歯車43に連結される第1伝達軸44へ出力する。このように、高速用電動機51cによって発生される駆動力は、第3の減速機53cを介して、第1伝達軸44へ出力される。
また中速用電動機51bの出力軸71bは、第2の減速機53bに連結されている。第2の減速機53bは、入力側の回転速度を減速して、出力軸71dへ出力する。この出力軸71dの一端は、高速用電動機51cの出力軸71cと同軸となるように、第3の減速機53cの駆動側歯車54に連結されている。第2のクラッチ機構52bは、この出力軸71dに設けられ、第2の減速機53bに入力される駆動力が第3の減速機53cへ伝達される接続状態と、第2の減速機53bに入力される駆動力が第3の減速機53cへ伝達されない未接続状態とに切換える。このように、中速用電動機51bによって発生される駆動力は、第2の減速機53b、第2のクラッチ機構52bおよび第3の減速機53cを介して、第1伝達軸44へ出力される。
また、低速用電動機51aの出力軸71aは、第1の減速機53aに連結されている。第1の減速機53aは、入力側の回転速度を減速して、出力軸71eへ出力する。この出力軸71eの一端は、第2の減速機53bに連結されている。第1のクラッチ機構52aは、この出力軸71eに設けられ、第1の減速機53aに入力される駆動力が第2の減速機53bへ伝達される接続状態と、第1の減速機53aに入力される駆動力が第2の減速機53bへ伝達されない未接続状態とに切換える。このように、低速用電動機51aによって発生される駆動力は、第1の減速機53a、第1のクラッチ機構52a、第2の減速機53b、第2のクラッチ機構52bおよび第3の減速機53cを介して、第1伝達軸44へ出力される。
なお、駆動力伝達部41は、第1〜第3の減速機53a〜53cおよび出力軸71d,71eをさらに含んで構成される。本実施形態では、駆動力伝達部41は、高速用電動機51cの回転速度が、駆動力伝達部41によって1/4000に減速されて回転台22に伝達され、中速用電動機51bの回転速度が、1/80000に減速されて回転台22に伝達され、低速用電動機51aの回転速度が、1/1600000に減速されて回転台22に伝達されるように構成されている。すなわち、第1および第2の減速機53a,53bはいずれも、入力側の回転速度を1/20に減速して、各出力軸71e,71dへ出力する。
これら各電動機51a〜51cおよび各クラッチ機構52a,52bの動作は、アンテナ制御システム33によって、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させるべき回転速度Vazと水平軸線J2まわりに回動させるべき回転速度Velとに基づいて制御される。
具体的には、アンテナ制御システム33は、アジマス駆動部31に関して、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させるべき回転速度Vazが、予め定める低速の速度範囲であれば、アンテナ本体21をその回転速度Vazで回動させるための回転速度w1で低速用電動機51aの出力軸71aが回動するように低速用電動機51aを駆動させ、さらに、低速用電動機51aによって発生される駆動力が入力歯車43に入力されるように、第1および第2のクラッチ機構52a,52bを接続状態にする。
同様に、アンテナ制御システム33は、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させるべき回転速度Vazが、予め定める中速の速度範囲であれば、アンテナ本体21をその回転速度Vazで回動させるための回転速度w2で中速用電動機51bの出力軸71bが回動するように中速用電動機51bを駆動させ、さらに、中速用電動機51bによって発生される駆動力が入力歯車43に入力されるように、第2のクラッチ機構52bを接続状態にするとともに、第1のクラッチ機構52aを未接続状態にする。
またアンテナ制御システム33は、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させるべき回転速度Vazが、予め定める高速の速度範囲であれば、アンテナ本体21をその回転速度Vazで回動させるための回転速度w3で高速用電動機51cの出力軸71cが回動するように高速用電動機51cを駆動させ、さらに、第1および第2のクラッチ機構52a,52bを未接続状態にする。
このように、アンテナ制御システム33は、アンテナ本体21を回動させるべき回転速度Vazに応じて、駆動させるべき電動機51を選択して駆動させるとともに、その選択した電動機51によって発生される駆動力が入力歯車43に伝達するように、各クラッチ機構52a,52bの状態を切換えるように制御する。アンテナ制御システム33は、エレベーション駆動部32に関しても同様に制御する。
図4は、本発明の一実施形態に係るアンテナ制御システム33の構成を示す概念図である。図5は、本発明の一実施形態に係るアンテナ制御システム33の構成を示すブロック図である。
アンテナ制御システム33は、アンテナ装置11が設置されているアンテナ棟86に設けられるアンテナ制御部81、回転角度検出部82、および1次側制御装置83と、アンテナ棟86とは別の棟である観測・制御棟85に設けられる2次側制御装置84とを含んで構成される。
アンテナ制御部81は、モータコントローラ81aを含み、アジマス駆動部31およびエレベーション駆動部32に含まれる駆動力発生部40および駆動力断続部42の動作を制御する。具体的には、アンテナ制御部81は、1次側制御装置83から送信される回転指令信号Saまたは回転指令信号Sbに基づいて、各電動機51a〜51cおよび各クラッチ機構52a,52bの動作を制御する。各電動機51a〜51cは、モータコントローラ81aによって制御される。
本実施形態では、1次側制御装置83からアンテナ制御部81へ送信される回転指令信号Sa,Sbには、アンテナ本体21を鉛直軸線J1まわりに回動させるべき回転方向Dazおよび回転速度Vaz、ならびにアンテナ本体21を水平軸線J2まわりに回動させるべき回転方向Delおよび回転速度Velを示すデータが含まれ、回転指令信号Sa,Sbを受信したアンテナ制御部81は、回転速度Vaz,Velに応じた電動機51によって発生される駆動力がアンテナ装置11へ伝達するように、各電動機51a〜51cの回転速度および回転方向、ならびに各クラッチ機構52a,52bの接続状態・未接続状態の切換えを制御する。
回転角度検出部82は、アンテナ本体21の各軸線J1,J2まわりの回転角度を検出して、検出信号Saz,Selを1次側制御装置83に送信する。本実施形態では、回転角度検出部82は、2つのインクリメント型のロータリエンコーダ82a,82bによって実現され、各ロータリエンコーダ82a,82bと1次側制御装置83とは、専用のケーブル87によって接続されている。
AZ用ロータリエンコーダ82aは、回転台22の鉛直軸線J1まわりの回転角度を検出可能にアンテナ装置11に取り付けられ、AZ用ロータリエンコーダ82aからは、A相、B相、Z相の各パルスが、検出信号Sazとして1次側制御装置83へ出力される。また、EL用ロータリエンコーダ82bは、アンテナ支持部24の水平軸線J2まわりの回転角度を検出可能にアンテナ装置11に取り付けられ、EL用ロータリエンコーダ82bからは、A相、B相、Z相の各パルスが、検出信号Selとして1次側制御装置83へ出力される。
本実施形態ではインクリメント型のロータリエンコーダによって実現されているが、これに限らず、アブソリュート型のロータリエンコーダによって実現されてもよい。また、回転角度検出部82は、ロータリエンコーダに限らず、たとえばポテンショメータによって実現されてもよい。
2次側制御装置84は、ユーザ操作用の端末装置であり、マウスおよびキーボードなどによって実現される操作部84aと、液晶表示装置などによって実現される、画像を表示可能な表示部84bとを含んで構成される。
2次側制御装置84は、システム全体の起動指令および終了指令ならびにアンテナ本体21の回転動作の停止指令を1次側制御装置83に入力するために用いられるとともに、アンテナ本体21を目標天体に自動的に導入・追尾させるために必要な目標天体の移動経路情報を、1次側制御装置83に入力するために用いられる。
ここで、目標天体の移動経路情報とは、複数の時刻における目標天体の天球座標を示す情報であり、本実施形態では、天球座標として、2000年分点による赤道座標を用いて示されている。
また2次側制御装置84は、アンテナ本体21が今現在どの方向を向いているのかを示すデータが1次側制御装置83から送信され、該データに基づいて、表示部84bの表示画面に表示される星図上に、アンテナ本体21が今現在どの方向を向いているのかをポインタによって表示する機能を有している。
このような機能を有する2次側制御装置84は、たとえばPC(Personal Computer)によって実現される。2次側制御装置84は、インターネットあるいは構内LAN(Local Area Network)を介して、1次側制御装置83と通信可能に接続される。
1次側制御装置83は、2次側制御装置84からインターネットあるいは構内LANを介して入力される目標天体の移動経路情報と、回転角度検出部82から送信される検出信号Saz,Selとに基づいて、所定の計算処理を行って、アンテナ制御部81に対して回転指令信号Saまたは回転指令信号Sbを送信する処理を行う。この処理は、回転角度取得部91と、目標座標演算部92と、差分演算部93と、導入用回転指令信号生成部94と、追尾用回転指令信号生成部95とによって実行される。
1次側制御装置83は、たとえばPCによって実現され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および時刻情報生成源96を含んで構成される。CPUは、ROMに格納されるプログラムを実行することによって、回転角度取得部91と、目標座標演算部92と、差分演算部93と、導入用回転指令信号生成部94と、追尾用回転指令信号生成部95として機能する。ROMには、前記プログラムのほか、演算に必要な各種のデータが格納される。またRAMは、CPUのワークエリアとして用いられる。時刻情報生成源96は、正確な時刻を常に取得できるものであればよく、たとえばGPS衛星から送信される時刻情報に基づいて常に正確な時刻を取得するように構成されてもよい。
回転角度取得部91は、各ロータリエンコーダ82a,82bから送信される各相のパルス数をカウントすることによって、アンテナ本体21の各軸線J1,J2まわりの基準位置からの現在の回転角度を取得し、アンテナ本体21が現在向いている方位角および高度を示す地平座標を演算する。
目標座標演算部92は、2次側制御装置84から入力される目標天体の移動経路情報に基づいて、複数の時刻における目標天体の2000年分点による赤道座標を歳差補正することによって、視位置による赤道座標に変換し、さらに赤道座標を方位角および高度によって示される地平座標に変換する。
さらに、目標座標演算部92は、前記のようにして得られた複数の時刻における目標天体の地平座標を、スプライン関数を用いて補間することによって、予め定める第1時間T1間隔の各時刻における目標天体の地平座標の推算データを生成する。本実施形態では、2次側制御装置84において正秒ごとの目標天体の天球座標がユーザによって入力され、目標座標演算部92では、座標変換した正秒ごとの目標天体の地平座標に基づいて、0.1秒ごと目標天体の地平座標の推算データが生成される。すなわち、前記予め定める第1時間T1は、0.1秒である。
差分演算部93は、回転角度取得部91によって演算されるアンテナ本体21の現在の地平座標と、目標座標演算部92によって生成される推算データにおける現在時刻での目標天体の地平座標との差分を演算し、差分の大きさが大きい場合には、アンテナ本体21を目標天体へ速やかに向けるための「導入モード」を選択し、差分の大きさが小さい場合には、アンテナ本体21を目標天体に追尾させる「追尾モード」を選択する。いずれのモードが選択されるかによって、後述するように、アンテナ制御部81による電動機51の制御方法が異なる。
図6は、アンテナ本体21の現在の地平座標S0と現在時刻での目標天体の地平座標P0とに基づいて導入/追尾モードを決定するための方法の一例を示す図である。図6では、現在時刻での目標天体の地平座標P0を原点とし、横軸(x軸)を方位角、縦軸(y軸)を高度としている。
図6に示すように、各時刻での目標天体の地平座標P0に対しては、追尾モードが実行される追尾モード領域A1と、追尾モードが実行されるときに目標とされる、追尾モード領域A1よりも一回り小さな追尾誤差許容領域A2とが予め設定される。
図6に示す例では、追尾モード領域A1は、−X0≦x≦X0かつ−Y0≦y≦Y0の範囲として設定され、追尾誤差許容領域A2は、−X1≦x≦X1かつ−Y1≦y≦Y1(ただし、0<X1<X0および0<Y1<Y0)の範囲として設定されている。各領域A1,A2の大きさおよび形状は、ユーザによって適宜変更することができる。
差分演算部93は、回転角度取得部91によって演算されるアンテナ本体21の現在の地平座標S0が、現在時刻での目標天体の地平座標P0について規定される追尾モード領域A1の範囲外に位置していると判定すると導入モードを選択し、該追尾モード領域A1の範囲内に位置していると判定すると追尾モードを選択する。
差分演算部93によって導入モードが選択されると、導入用回転指令信号生成部94によって、導入モードに応じた回転指令信号Saが生成され、生成された回転指令信号Saがアンテナ制御部81へ送信される。
一方、差分演算部93によって追尾モードが選択されると、追尾用回転指令信号生成部95によって、追尾モードに応じた回転指令信号Sbが生成され、生成された回転指令信号Sbがアンテナ制御部81へ送信される。
本実施形態では、1次側制御装置83とアンテナ制御部81とは、RS−232Cシリアル通信ケーブル88を用いて、シリアル通信を行うように接続されている。すなわち、1次側制御装置83において生成される回転指令信号Sa,Sbは、シリアル通信によってアンテナ制御部81へ送信される。一実施例では、速度が9600bps、データビットが8bit、ストップビットが1bitおよびパリティービットなしの通信仕様で通信が行われる。
導入モードでは、導入用回転指令信号生成部94によって、回転角度取得部91によって演算されるアンテナ本体21の現在の地平座標S0と、目標座標演算部92によって生成される目標天体の地平座標の第1時間T1間隔の推算データとに基づいて、アンテナ本体21を各軸線Jまわりに回動させるべき回転方向Daz,Delおよび回転速度Vaz,Velが演算され、これらの各情報を含む回転指令信号Saが、即時にアンテナ制御部81へ送信される。
一方、アンテナ制御部81は、この回転指令信号Saを受信すると、即時に、回転指令信号Saに含まれる各情報Daz,Del,Vaz,Velに基づいて、回転速度Vaz,Velに応じた電動機51によって発生される駆動力がアンテナ装置11へ伝達するように、各電動機51a〜51cの回転速度および回転方向、ならびに各クラッチ機構52a,52bの接続状態・未接続状態の切換えを制御する。このように、導入モードでは、リアルタイムで回転指令信号Saがアンテナ制御部81へ送信され、該回転指令信号Saに基づく動作がリアルタイムで実行される。
電動機51が駆動することによってアンテナ本体21が回動すると、差分演算部93によって、アンテナ本体21の現在の地平座標S0と現在時刻での目標天体の地平座標P0との差分が再度演算され、アンテナ本体21の現在の地平座標S0が、未だ追尾モード領域A1の範囲外に位置していると判定されると、再び導入用回転指令信号生成部94によって回転指令信号Saが生成され、アンテナ制御部81へ送信される。
このように、導入モードは、アンテナ本体21の現在の地平座標S0が、現在時刻での目標天体の地平座標P0について規定される追尾モード領域A1の範囲内に達するまで継続して実行される。そして、アンテナ本体21の現在の地平座標S0が、現在時刻での目標天体の地平座標P0について規定される追尾モード領域A1の範囲内に達すると、導入モードが終了し、追尾モードに移行する。
本実施形態では、導入モードの継続期間には、目標座標演算部92によって生成される推算データの時間間隔に従って、0.1秒ごとに回転指令信号Saを送信するように構成されている。
また、追尾モードでは、追尾用回転指令信号生成部95によって、回転角度取得部91によって演算されるアンテナ本体21の現在の地平座標S0と、目標座標演算部92によって生成される目標天体の地平座標の第1時間T1間隔の推算データとに基づいて、アンテナ本体21の地平座標S0が追尾誤差許容領域A2の範囲内に納まるように、アンテナ本体21を各軸線Jまわりに回動させるべき回転方向Daz,Delおよび回転速度Vaz,Velが演算され、これらの各情報を含む回転指令信号Sbが、アンテナ制御部81へ送信される。
図7は、追尾モードにおける1次側制御装置83とアンテナ制御部81との間での回転指令信号Sbの送受信のタイミングを説明するための図である。追尾モードでは、1次側制御装置83からアンテナ制御部81に対し、予め定める第2時間T2ごとに、第2時間T2よりも短いパルス幅T3のパルス列から成るRTS(Request To Send)信号が時刻同期信号として送信される。本実施形態では、1次側制御装置83には、正確な時刻情報を生成する時刻情報生成源96が設けられており、毎正秒の瞬間に、パルス幅T3が0.1秒未満のパルスを発生するRTS信号が時刻同期信号として送信される。
また、時系列的に隣接する各2つのパルスの各発生タイミング間には、回転指令信号Sbを送受信可能な送受信可能期間T4が予め設定され、この送受信可能期間T4において、1次側制御装置83からアンテナ制御部81へ回転指令信号Sbが送信される。
本実施形態では、RTS信号と回転指令信号Sbや回転指令信号Sbに対するアンサー信号が互いに干渉することを防止するために、正秒直後のパルス幅T3よりも僅かに長い期間T5と、正秒直前の所定の期間T6とが、送受信禁止期間として設定され、この送受信禁止期間T5,T6を避けて送受信可能期間T4が設定されている。
送受信禁止期間における各期間T5,T6は、たとえば0.1秒にそれぞれ設定され、送受信可能期間T4は、たとえば0.8秒に設定される。すなわち、この場合には、追尾用回転指令信号生成部95は、毎正秒間に設定された0.8秒の送受信可能期間T4に回転指令信号Sbを送信する。
ここで、追尾用回転指令信号生成部95によって生成される回転指令信号Sbについて説明する。追尾用回転指令信号生成部95は、RTS信号における一のパルスの発生タイミングと該一のパルスの次のパルスの発生タイミングとの間にアンテナ制御部81によって実行されるべき回転指令(すなわち、アンテナ本体21を各軸線Jまわりに回動させるべき回転方向Daz,Delおよび回転速度Vaz,Vel)を含む回転指令信号Sbを、前記一のパルスの直前の送受信可能期間T4に送信するように構成されている。
換言すれば、アンテナ制御部81は、送受信可能期間T4に回転指令信号Sbを受信すると、その回転指令信号Sbに基づく電動機51の制御動作を、その送受信可能期間T4の直後のパルスの発生タイミングと次のパルスの発生タイミングとの間に実行するように構成されている。
また、回転指令信号Sbは、隣接するパルスの発生タイミング間の時間(すなわち第2時間T2)よりも短い第7時間T7ごとにアンテナ制御部81によって実行されるべき回転指令を含むように生成される。
本実施形態では、追尾用回転指令信号生成部95は、一の送受信可能期間T4に、その一の送受信可能期間T4の直後の正秒から次の正秒までの1秒間(以下、「次の1秒間」と称する)に、アンテナ制御部81によって0.1秒ごとに実行されるべき10個の回転指令を含む回転指令信号Sbを送信する。
このため、追尾用回転指令信号生成部95では、次の1秒間に実行されるべき10個の回転指令が、回転角度取得部91によって演算されるアンテナ本体21の現在の地平座標S0と、目標座標演算部92によって生成される目標天体の地平座標の第1時間T1間隔の推算データとに基づいて、前もって演算される。
一方、アンテナ制御部81は、送受信可能期間T4に回転指令信号Sbを受信すると、その回転指令信号Sbに含まれる10個の回転指令を分解し、1次側制御装置83から送信されるRTS信号に同期して、その送受信可能期間T4の直後のRTS信号のパルスの発生タイミングから0.1秒ごとに、前記10個の回転指令を順次実行する。
本実施形態によれば、アンテナ本体21を目標天体の移動に合わせて追尾させる際、正確な時刻情報を生成する時刻情報生成源96が備えられる1次側制御装置83からアンテナ制御部81に対して、第2時間T2間隔の各時刻にパルスを発生するRTS信号が送信される。したがって、アンテナ制御部81は、このRTS信号に同期して電動機51の回転速度を回転指令信号Sbに基づいて制御することで、正確な時刻に電動機51を制御することが可能となる。これにより、アンテナ制御部81に時刻情報生成源を設ける必要がなくなるので、装置全体の構造を簡素化することができるとともに、設置コストを抑制することができる。
また本実施形態によれば、追尾モードにおいて、短い時間間隔(本実施形態では、0.1秒間隔)で電動機51の速度を制御するように構成されているので、アンテナ本体21を軸線J1,J2まわりに滑らかに回動させることができる。
また本実施形態によれば、アンテナ本体21を目標天体の移動に合わせて追尾させる際、1次側制御装置83は、隣接する一対の正秒の間において、各正秒間の第2時間T2よりも短い第7時間T7ごとにアンテナ制御部81によって実行されるべき複数の回転指令を含む回転指令信号Sbを生成し、その回転指令信号Sbを前記隣接する一対の正秒のうちの先の正秒の直前の送受信可能期間T4にアンテナ制御部81へ送信する。そして、アンテナ制御部81では、1次側制御装置83から受信した回転指令信号Sbに基づいて、当該回転指令信号Sbの受信直後のパルスの発生タイミングから、前記第7時間T7ごとに電動機51の回転速度を制御する。
このように、隣接する一対の正秒の間に第7時間T7ごとに行われる電動機51の回転速度の制御を、第7時間T7ごとに回転指令信号を送信することによって行うのではなく、隣接する一対の正秒のうちの先の正秒よりも前にまとめて送信された複数の回転指令に基づいて行うので、回転指令信号Sbの通信速度や回転指令信号Sbを生成するための演算に要する時間に起因して時間的正確性に欠ける制御となってしまうことを防止することができる。
また本実施形態によれば、アンテナ制御部81と1次側制御装置83との通信間隔を1秒間隔とし、0.1秒間隔で実行される10個の回転指令を含む回転指令信号Sbをアンテナ制御部81へ送信するように構成されている。これにより、通信データ量を低減することができるため、9600bps程度の低速の伝送路を用いることができる。したがって、アンテナ制御部81と1次側制御装置83との間の距離を長くとることができ、装置を設計する際の自由度を向上させることができる。また、電動機51から発生するノイズによって生じる不具合についても低減することができる。
図8は、アンテナ制御システム33による各電動機51a〜51cの切換動作を説明するための図である。先ず、アンテナ本体21を回動させるべき回転速度Vが加速していく場合について説明する。
アンテナ制御システム33は、速度指令信号から取得した回転速度Vが低速の速度範囲であるときには、第1および第2のクラッチ機構52a,52bを接続状態となるように動作させるとともに、低速用電動機51aに電力を供給して、低速用電動機51aを回転速度Vに応じた回転速度w1で駆動させる。
このとき、低速用電動機51aによって発生された駆動力は、駆動力伝達部41を介して回転台22に伝達され、アンテナ本体21を回動させるとともに、中速用電動機51bおよび高速用電動機51cにも伝達される。したがって、低速用電動機51aのアンテナ本体21への駆動力伝達時には、中速用電動機51bの出力軸71bが、第1の減速機53aによって減速された回転速度で回転し、また高速用電動機51cの出力軸71cが、第1および第2の減速機53a,53bによって減速された回転速度で回転する。
そして、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v2まで上昇すると、アンテナ制御システム33は、第1のクラッチ機構52aを接続状態から未接続状態に切換えるとともに、瞬時に中速用電動機51bに電力を供給して、中速用電動機51bを起動させる。低速用電動機51aは、その後アンテナ制御システム33によって駆動停止される。
このように、低速用電動機51aから中速用電動機51bに切換える際には、中速用電動機51bの駆動力を回転台22に伝達するための第2のクラッチ機構52bが既に接続状態にあり、また中速用電動機51bの出力軸71bは低速用電動機51aによって回転されているので、第1のクラッチ機構52aを未接続状態にして瞬時に中速用電動機51bに電力を供給することにより、中速用電動機51bをスムーズに衝撃なく駆動させることができる。
同様に、速度指令信号から取得した回転速度Vが中速の速度範囲であるときには、アンテナ制御システム33は、第2のクラッチ機構52bを接続状態に維持するとともに第1のクラッチ機構52aを未接続状態に維持した状態で、中速用電動機51bを回転速度Vに応じた回転速度w2で駆動させる。
このとき、中速用電動機51bによって発生された駆動力は、駆動力伝達部41を介して回転台22に伝達され、アンテナ本体21を回動させるとともに、高速用電動機51cにも伝達される。したがって、中速用電動機51bのアンテナ本体21への駆動力伝達時には、高速用電動機51cの出力軸71cが、第2の減速機53bによって減速された回転速度で回転する。
そして、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v5まで上昇すると、アンテナ制御システム33は、第2のクラッチ機構52bを接続状態から未接続状態に切換えるとともに、瞬時に高速用電動機51cに電力を供給して、高速用電動機51cを起動させる。中速用電動機51bは、その後、アンテナ制御システム33によって駆動停止される。
高速用電動機51cと第3の減速機53cとの間にはクラッチ機構が設けられておらず、また中速用電動機51bから高速用電動機51cに切換える際には、高速用電動機51cの出力軸71bは中速用電動機51bによって回転されているので、第2のクラッチ機構52bを未接続状態にして瞬時に高速用電動機51cに電力を供給することにより、高速用電動機51cをスムーズに衝撃なく駆動させることができる。
以降、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v5よりも大きい場合には、アンテナ制御システム33は、第1および第2のクラッチ機構52a,52bを未接続状態に維持した状態で、高速用電動機51cを回転速度Vに応じた回転速度w3で駆動させる。
本実施形態では、アンテナ本体21を回動させるべき回転速度Vは、恒星時の1倍速(23時間56分4秒)を1,000として規定されるものとする。すなわち、回転速度V=1,000は、アンテナ本体21を恒星時の1倍速で回動させるときの速度に相当する。
また、アンテナ本体21を回動させるべき回転速度Vに応じた各電動機51a〜51cの回転速度w1〜w3は、低速用電動機51aの回転速度w1[Hz]が、w1=V×3.713847×10−2によって演算され、中速用電動機51bの回転速度w2[Hz]が、w2=V×1.856923×10−3によって演算され、高速用電動機51cの回転速度w3[Hz]が、w3=V×9.284617×10−5によって演算されるものとする。
本実施形態では、低速用電動機51aから中速用電動機51bへの切換え時の回転速度v2は、v2=1,616に選択されている。すなわち、低速用電動機51aの回転速度w1が60Hz(=1,616×3.713847×10−2)まで上昇すると、アンテナ制御システム33は、第1の減速機53aの減速比1/20に応じて、中速用電動機51bを、回転速度w2=3Hz(=1,616×1.856923×10−3)で駆動させる。
また、中速用電動機51bから高速用電動機51cへの切換え時の回転速度v5は、v5=32,311に選択されている。すなわち、中速用電動機51bの回転速度w2が60Hz(=32,311×1.856923×10−3)まで上昇すると、アンテナ制御システム33は、第2の減速機53bの減速比1/20に応じて、高速用電動機51cを、回転速度w3=3Hz(=32,311×9.284617×10−5)で駆動させる。
また、本実施形態では、高速用電動機51cの回転速度w3の上限が60Hzに設定されている。したがって、アンテナ本体21を回動させるべき回転速度Vが、V=646,230(=60÷9.284617×105)を越えた場合には、アンテナ制御システム33は、高速用電動機51cは、回転速度w3=60Hzで駆動させる。
次に、アンテナ本体21を回動させるべき回転速度Vが減速していく場合について説明する。アンテナ制御システム33は、速度指令信号から取得した回転速度Vが高速の速度範囲であるときには、第1および第2のクラッチ機構52a,52bを未接続状態となるように動作させるとともに、高速用電動機51cに電力を供給して、高速用電動機51cを回転速度Vに応じた回転速度w3で駆動させる。
そして、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v6(ただし、v5<v6)まで低下すると、中速用電動機51bを起動させる。本実施形態では、中速用電動機51bの起動時の速度v6が、v6=37,697に選択されている。すなわち、高速用電動機51cの回転速度w3が3.5Hz(=37,697×9.284617×10−5)まで低下した段階で、アンテナ制御システム33は、中速用電動機51bを起動し、第2の減速機53bの減速比1/20に応じて、回転速度w2=3Hz(=37,697×1.856923×10−3)で中速用電動機51bを駆動させる。この時点では、第2のクラッチ機構52bは未接続状態が維持されている。
そして、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v5よりも小さな速度v4まで低下するまでは、第2のクラッチ機構52bを未接続状態に維持した状態で、アンテナ制御システム33は、中速用電動機51bおよび高速用電動機51cを回転速度Vに応じた回転速度w2,w3でそれぞれ駆動させ、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v4まで低下すると、第2のクラッチ機構52bを未接続状態から接続状態に切換えるとともに、高速用電動機51cを駆動停止する。速度v4は、v5(=32,311)未満の適宜の値に選択される。
このように、本実施形態では、高速用電動機51c側のクラッチ板の回転速度と中速用電動機51b側のクラッチ板の回転速度とが同一または略同一となるように、換言すれば、第2の減速機53bの減速比1/20を考慮して、高速用電動機51cの回転速度w3に対応した回転速度w2で中速用電動機51bが回転するように、中速用電動機51bおよび高速用電動機51cをそれぞれ駆動させた状態で、第2のクラッチ機構52bを未接続状態から接続状態に切換えているので、高速用電動機51cから中速用電動機51bに切換える際に、第2のクラッチ機構52bをスムーズに衝撃なく接続状態に切換えることができる。
同様に、アンテナ制御システム33は、速度指令信号から取得した回転速度Vが中速の速度範囲であるときには、第1のクラッチ機構52aを未接続状態となり、第2のクラッチ機構52bを接続状態となるように動作させるとともに、中速用電動機51bに電力を供給して、中速用電動機51bを回転速度Vに応じた回転速度w2で駆動させる。
そして、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v3(ただし、v2<v3)まで低下すると、低速用電動機51aを起動させる。本実施形態では、低速用電動機51aの起動時の速度v3が、v3=1,885に選択されている。すなわち、中速用電動機51bの回転速度w2が3.5Hz(=1,885×1.856923×10−3)まで低下した段階で、アンテナ制御システム33は、低速用電動機51aを起動し、第1の減速機53aの減速比1/20に応じて、回転速度w1=3Hz(=1,885×3.713847×10−2)で低速用電動機51aを駆動させる。この時点では、第1のクラッチ機構52aは未接続状態が維持されている。
そして、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v2よりも小さな速度v1まで低下するまでは、第1のクラッチ機構52aを未接続状態に維持した状態で、アンテナ制御システム33は、低速用電動機51aおよび中速用電動機51bを回転速度Vに応じた回転速度w1,w2でそれぞれ駆動させ、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v1まで低下すると、第1のクラッチ機構52aを未接続状態から接続状態に切換えるとともに、中速用電動機51bを駆動停止する。速度v1は、v2(=1,616)未満の適宜の値に選択される。
このように、本実施形態では、中速用電動機51b側のクラッチ板の回転速度と低速用電動機51a側のクラッチ板の回転速度とが同一または略同一となるように、換言すれば、第1の減速機53aの減速比1/20を考慮して、中速用電動機51bの回転速度w2に対応した回転速度w1で低速用電動機51aが回転するように、低速用電動機51aおよび中速用電動機51bをそれぞれ駆動させた状態で、第1のクラッチ機構52aを未接続状態から接続状態に切換えているので、中速用電動機51bから低速用電動機51aに切換える際に、第1のクラッチ機構52aをスムーズに衝撃なく接続状態に切換えることができる。
以降、速度指令信号から取得した回転速度Vが速度v1よりも小さい場合には、アンテナ制御システム33は、第1および第2のクラッチ機構52a,52bを接続状態に維持した状態で、低速用電動機51aを回転速度Vに応じた回転速度w1で駆動させ、回転速度VがV=8まで低下すると、低速用電動機51aを駆動停止する。
このようにアンテナ制御システム33は、各電動機51a〜51cを切換える際に、ヒステリシスを設けて制御しているので、ハンチングの発生を防止することができる。
以上のように、本実施形態によれば、アンテナ本体21を回動させるべき速度に関して低速・中速・高速の各速度範囲ごとに電動機51a〜51cが設けられている。したがって、各電動機51a〜51cに関して、各速度範囲において必要とされる出力に適した電動機を選択することにより、低速から高速までの広い速度範囲において、アンテナ本体21を精度良く駆動させることができる。これにより、アンテナ本体21の向きを追尾対象の衛星の位置へ正確に導入し、追尾させることができる。
またこのように、複数の速度範囲ごとに電動機51a〜51cを設けることによって、アンテナ本体21の回転速度の範囲を広くすることができ、衛星の追尾性能を向上させることができる。
駆動力発生部40を構成する各電動機は、誘導電動機(インダクションモータ)によって実現されるのが好ましい。これにより、サーボモータなどの高価な電動機を用いる場合に比べて、低コスト化を図ることができる。
また、誘導電動機を用いることによって、サーボモータなどを用いる場合に比べて、電動機自体の寿命を長くすることができる。さらに、誘導電動機は、サーボモータとは異なり、特殊な部品を用いることなく構成されるので、故障などの不具合が生じた場合であっても、メンテナンスを容易に行うことができる。
なお、本実施形態では、アンテナ本体21を回動させるべき速度を3段階に区分して、各速度範囲に対応するように電動機51a〜51cが設けられているが、区分する段階数は、3つに限らず、2つであってもよく、また4つ以上であってもよい。
さらに、本実施形態では、図2および図3に示される構造が、アジマス駆動部31およびエレベーション駆動部32のいずれにも採用されているが、これに限らず、他の実施形態では、いずれか一方、すなわちアジマス駆動部31またはエレベーション駆動部32のみに採用されてもよい。