JP5872795B2 - 鉄道車両用車体 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両用車体に関し、特には簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を向上したものに関する。
例えば電車等の鉄道用旅客車の車体は、一般に床構、側構、妻構、屋根構を有するほぼ六面体として構成された箱状の構造物となっている。
また、鉄道車両用車体は、軽量化とともに、振動抑制による乗り心地改善や衝突安全性の向上のため、剛性を確保することも要求される。
従来、踏切事故や脱線衝突事故に対する安全性を向上するために、車体側面方向から側構体に作用する荷重に対する強度を向上させることを目的として、床構の横梁、側構体の側柱、及び、屋根後退の垂木を同一断面内に配置した補強骨組部を、車体長手方向の複数箇所に配置した鉄道車両が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、特許文献1に記載された技術では、車体の屋根構、側構、床構といった各構体における構造部材の配置等の基本設計に及ぼす制約が多く、車両の設計自由度が低くなってしまう。また、既存の車両には適用することが極めて困難である。
また、本願の発明者らは、後述する特許文献2において、左右の側構に設けられた戸袋柱の上端部間を、枕木方向に延びた円筒状の吊手棒によって連結し、これによって車体剛性を向上させて振動抑制等を図ることを提案している。
また、特許文献3には、吊手棒を安価に提供することを目的として、一体成型されたパイプによって、左右の壁部を連結することが記載されている。
また、特許文献4には、車体の横荷重に対する強度不足を解消して万一の場合の乗客の安全を図るため、胴部のコーナ部に三角形のガセット状の連結部材を設けることが記載されている。
特開2007− 62440号公報 特開2010− 52511号公報 特開平 5−131926号公報 特開2007−161084号公報
特許文献2に記載された従来技術においては、それ以前の従来技術との比較においては比較的簡素な構成によって車体剛性を向上できるが、左右の戸袋柱間を連結するため、既存の車体に適用しようとした場合、既存の吊手棒の設計や配置の変更が必要である。また、車体中央の通路部には吊手を配置する必要がない場合であっても、当該手法を適用しようとする限り、枕木方向の全幅にわたって吊手棒を配置する必要があるため、車両設計時における制約が大きくなる。
また、特許文献3に記載された技術においては、車体剛性向上や車体強度向上は考慮されておらず、さらに、既に吊手棒などが設けられた既存の車体に適用することは難しい。
また、特許文献4に記載された技術においては、単に横荷重に対する車体強度向上を目的としており、車体弾性振動に対する剛性向上について配慮されていない。
また、構体の強度部材どうしを結合するため、着脱作業は煩雑であり、既存の車両に後付けによって適用することは困難である。
本発明は上述した問題に鑑みなされたものであって、簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明の鉄道車両用車体は、屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、側構上部近傍から車幅方向内側へ突き出して設けられた荷棚と、前記荷棚の車幅方向内側の端部と前記吊手棒とを連結する荷棚端部吊手棒間連結部材と、前記荷棚の基部と前記吊手棒とを連結する荷棚基部吊手棒間連結部材と、前記側構の上部と前記吊手棒受とを連結する側構連結部材とを備えることを特徴とする。
また、本発明の他の鉄道車両用車体は、屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、側構上部近傍から車幅方向内側へ突き出して設けられた荷棚と、前記荷棚の車幅方向内側の端部と前記吊手棒とを連結する荷棚端部吊手棒間連結部材と、前記荷棚の基部と前記吊手棒とを連結する荷棚基部吊手棒間連結部材と、前記側構の上部と前記吊手棒とを連結する側構連結部材とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、吊手棒受、吊手棒、荷棚、及び、荷棚端部吊手棒間連結部材が屋根構と側構との相対角度変化を拘束する効果、及び、屋根構、側構の面外変形を拘束する効果の少なくとも一方が得られることによって車体の剛性が向上する。これによって、振動抑制による乗り心地改善や衝突安全性の向上を図ることができる。
また、このような荷棚端部吊手棒間連結部材や後述する各連結部材は、例えばビス等によって容易に着脱可能なジョイントを用いて取り付けることが可能であり、さらに車体側に新たな設置座を設ける必要がないことから、設計済の新造車あるいは現在運用中の既存の車体にも小規模な設計変更や改修によって適用することができ、汎用性、実用性が高い。
また、荷棚端部吊手棒間連結部材、荷棚基部吊手棒間連結部材、及び、荷棚が、実質的にトラス状類似の強固な構造体を構成することによって、上述した効果を促進できる。
また、側構連結部材を備えることによって、車体の剛性をよりいっそう向上させて、上述した効果をさらに促進することができる。
なお、本発明において、吊手受棒は屋根構から直接突き出したものに限らず、例えば灯具受等の他部品を介して屋根構に取り付けられたものも含むものとする。
本発明において、前記荷棚は車幅方向にほぼ沿って伸びかつ車両前後方向に離間して配置された複数のブラケット、及び、複数の前記ブラケット間にわたして配置された荷物載置部材を有し、前記荷棚基部吊手棒間連結部材の車幅方向外側の端部は、前記ブラケットの前記側構側の端部に結合される構成とすることができる。
さらに、この場合、前記荷棚端部吊手棒間連結部材と前記荷棚基部吊手棒間連結部材とを、車両の前後方向における位置を隣接又は一致させて配置した構成とすることができる。
上記各発明において、前記吊手棒は枕木方向に離間して複数設けられ、複数の前記吊手棒の間を連結するとともに枕木方向にほぼ沿って延びた吊手棒間連結部材を備える構成とすることができる。
これによれば、車体の剛性をよりいっそう向上させて、上述した効果をさらに促進することができる。
以上のように、本発明によれば、簡素かつ小規模な構成によって車体の剛性を効果的に向上した鉄道車両用車体を提供することができる。
本発明を適用した鉄道車両用車体の第1実施形態の模式的横断面図である。 第1実施形態の鉄道車両用車体の斜視断面図である。 第1実施形態の鉄道用車体の模式的平面視図である。 図3のIV−IV部矢視断面図である。 図3のV−V部矢視断面図である。 本発明を適用した鉄道車両用車体の第2実施形態の模式的平面視図である。 図6のVII−VII部矢視断面図である。 本発明の比較例、第1実施形態、第2実施形態の車体の固有振動モードの一例を示す図である。 本発明の比較例、第1実施形態、第2実施形態の車体における実軌道模擬加振時の加速度PSDを示すグラフであって、車体中央の床面のデータを示している。 本発明の比較例、第1実施形態、第2実施形態の車体における実軌道模擬加振時の加速度PSDを示すグラフであって、車体中央窓寄の床面のデータを示している。 本発明の比較例、第1実施形態、第2実施形態の車体における実軌道模擬加振時の加速度PSDを示すグラフであって、車体中央付近の腰掛フレームのデータを示している。
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1、第2実施形態に係る鉄道車両用車体について説明する。
なお、以下の説明では、レールの長手方向(車両の進行方向)を前後方向、軌道面におけるレール長手方向と直角をなす方向を横方向(枕木方向)、軌道面に垂直な方向を上下方向と称する。
<第1実施形態>
第1実施形態の鉄道車両用車体(以下単に「車体」と称する)1は、例えば片側4ドアの通勤型電車のステンレス鋼製車体である。
図1は、本発明を適用した鉄道車両用車体の第1実施形態の模式的横断面図である。
図2は、第1実施形態の鉄道車両用車体の斜視断面図である。
図3は、第1実施形態の鉄道用車体の模式的平面視図である。
図4は、図3のIV−IV部矢視断面図である。
図5は、図3のV−V部矢視断面図である。
車体1は、屋根構10、側構20、床構30及び妻構90(図3参照)等を有するほぼ六面体状に形成されている。
屋根構10は、屋根外板11及び垂木12を有して構成される。
屋根外板11は、車体1の外表面部となる波形形状の部材である(波形部分の図示は省略)。屋根外板11は、車体1の横断面における形状が、上方が凸となる円弧状に湾曲して形成されている。
垂木12は、車幅方向にほぼ沿って伸びた梁状の部材である。垂木12は、屋根外板11の下面に沿って配置され、屋根外板11に対して例えばスポット溶接、レーザ溶接等により複数個所で固定されている。垂木12は、車体1の前後方向に分散して複数設けられている。
側構20は、車体1の左右両側面部を構成する部分であって、図2等に示すように、外板21、ドア開口22、窓開口23等を有して構成されている。
また、側構20の上端部でありかつ屋根構10の左右側端部には、幕板受20aが設けられている。
幕板受20aは、屋根外板11の車幅方向両端部における下面部にそれぞれ接合され、車体1の長手方向に伸びた部材である。
外板21は、車体1の外表面部となる板状の部材である。外板21の上端部及び下端部は、屋根構10及び床構30の車幅方向における両端部とそれぞれ接合されている。
ドア開口22は、旅客乗降用の図示しないドアが開閉可能に設けられる部分である。ドア開口22は、車体1の一方の側面に例えば4つがほぼ等間隔に分散して設けられている。
窓開口23は、隣接する一対のドア開口22の中間部等に設けられている。
戸袋内柱24及び戸尻柱25は、ドア開口22の両側にそれぞれ設けられドアを収容する戸袋に備えられる部材である。戸袋内柱24は、戸袋の入口側に設けられ、戸尻柱25はその反対側(ドア開口22から遠い側)に設けられる。戸袋内柱24及び戸尻柱25は、鉛直方向にほぼ沿って伸びて形成され、その下端部は床構30の車幅方向における端部と隣接して配置されている。また、戸袋内柱24及び戸尻柱25の上部には傾斜部24a、25aが設けられている。傾斜部24a、25aは、上端部が下端部に対して枕木方向中央側となるように内傾している。傾斜部24a、25aは、幕板受20aと隣接して配置され、その上端部が幕板受20aに固定されている。戸袋内柱24及び戸尻柱25は、一つの戸袋につき1本ずつが平行に設けられている。
また、窓開口23の上部には、上下方向に延びた柱状部材26が設けられている。柱状部材26は、例えばいわゆるハット形の横断面形状を有する梁を、側構20の内面にスポット溶接等で固定することによって形成されている。
床構30は、車体1の床面部を構成する部分であって、図示しない側梁、横梁、枕梁等によって構成されるフレームの上面部に床板を固定して構成されている。
また、車体1は、さらに灯具受け40、前後吊手棒50、吊手棒受60、横吊手棒71,72、荷棚80等を備えている。
灯具受け40は、車室内を照明する図示しない照明機器が装着される灯具支持部材であって、車体1の前後方向に延びたハット形断面の梁状に形成されている。灯具受け40は、車幅方向に離間して例えば一対が設けられ、屋根構10の車幅方向中央部における下面に装着されている。また、灯具受け40は、車体1の前後方向におけるほぼ全長にわたって形成されている。
左右の灯具受け40の間には、空調用のダクトD(図1、図4等参照。図2では図示を省略)が配置されている。
前後吊手棒50は、車両の前後方向に延びて配置された丸パイプ状の部材であって、吊手S(図4参照)が取り付けられるものである。前後吊手棒50は、車幅方向に間隔を隔てて例えば2本が並行して設けられている。左右の前後吊手棒50は、左右の灯具受け40の下方にそれぞれ配置されている。
また、左右の前後吊手棒50は、図2、図3に示すように、横吊手棒71,72によって、相互に連結されている。
吊手棒受60は、灯具受け40と前後吊手棒50とを連結し、前後吊手棒50を吊り下げて支持する支柱状の部材である。吊手棒受60の上端部は、図示しない内張り板を介して灯具受け40の下面に固定されている。また、吊手棒受60の下端部には、前後吊手棒50が固定されている。
吊手棒受60は、前後吊手棒50の両端部及び中間部に配置されている。中間部の吊手棒受60は、例えば、車両前後方向における位置がドア開口22の両端部近傍に配置されている。
横吊手棒71,72は、横方向に直線状に延びて配置された丸パイプ状の部材であって、左右の前後吊手棒50を連結するとともに、吊手Sが取り付けられるものである。
横吊手棒71の両端部は、左右の吊手棒受60の下端部近傍にそれぞれ固定されている。
横吊手棒72の両端部は、前後の吊手棒受60の中間部において、前後吊手棒50にT字ジョイントを介して固定されている。T字ジョイントは、前後吊手棒50が挿入される円筒の外周面から、横吊手棒72の端部が挿入される円筒を径方向に立設したものである。
荷棚80は、座席腰掛上部に設けられ、手荷物などが載せられる部分である。
荷棚80は、ブラケット81、パイプ82等を有して構成されている。
ブラケット81は、側構20の車室内側に配置される内装パネルPから、車幅方向内側へ突き出して形成された部材である。
ブラケット81は、内装パネルPを介して、パネルPの裏側に設けられた図示しない受金に固定されるフランジ部81aを備えている。
ブラケット81は、例えば、アルミニウム合金等の鋳造品である。
ブラケット81は、荷棚80の車両前後方向における両端部に設けられている。
パイプ82は、前後のブラケット81間に渡して配置された例えば丸パイプであって、車幅方向に離間して複数本が配列されている。
パイプ82は、手荷物などが載せられる部分である。
また、最も車幅方向内側に配置されたパイプ82は、後述する荷棚端部吊手棒間連結部材110が取り付けられる基部としても機能する。
妻構90は、図3に示すように、車体1の前後方向における両端部に設けられ、妻面を構成するものである。
また、車体1は、以下説明する側構連結部材100、荷棚端部吊手棒間連結部材110、荷棚基部吊手棒間連結部材120等が備えられている。
側構連結部材100は、例えば鋼等の丸パイプとして形成され、横方向にほぼ沿って延びるとともに、前後吊手棒50と側構20の上部とを連結するものである。
図4等に示すように、側構連結部材100の吊手棒50側の端部は、T字ジョイントJを介して前後吊手棒50に連結されている。また、側構連結部材100の側構20側の端部は、戸袋内柱24の傾斜部24aの上端部近傍に、例えば図示しないジョイントを介して、ボルト−ナット等で固定されている。
図4に示すように、側構連結部材100は、吊手棒側端部101、側構側端部102、中間部103を備えている。側構連結部材100は、一本の丸パイプを曲げ加工することによってこれらの各部を形成し、S字上に屈曲して一体に成形されている。
吊手棒側端部101は、吊手棒50から枕木方向外側に延びた部分であり、水平ないしは外側がやや持ち上がるように緩やかに傾斜している。
側構側端部102は、荷棚80の傾斜に沿って、枕木方向内側が外側に対して高くなるように傾斜している。
中間部103は、吊手棒側端部101と側構側端部102とを連結する部分であって、側構側端部102側のほうが高くなるように傾斜している。
このような側構連結部材100の形状は、例えば、荷棚80に載せられる荷物との干渉を避けることを考慮して設定される。
また、図3に示すように、側構連結部材100は、上方から見た平面形はほぼ直線状とされ、枕木方向に沿って配置されている。
荷棚端部吊手棒間連結部材110は、例えば鋼等の丸パイプ材によって形成され、荷棚80の最も車幅方向内側(突端部側)のパイプ82と、前後吊手棒50とを連結するものである。
図5に示すように、荷棚端部吊手棒間連結部材110は、実質的にストレートな丸パイプとして形成されるとともに、その両端部は、T字ジョイントJを介して、前後吊手棒50及びパイプ82に連結されている。
このようなT字ジョイントJは、例えばビス等によって各部材に締結され、容易に着脱可能となっている。
荷棚端部吊手棒間連結部材110は、前後吊手棒50側の端部がパイプ82側の端部よりも高くなるように傾斜して配置されている。
また、図3に示すように、荷棚端部吊手棒間連結部材110は、上方から見た平面形はほぼ直線状とされ、枕木方向に沿って配置されている。
荷棚基部吊手棒間連結部材120は、例えば鋼等の丸パイプ材によって形成され、荷棚80のブラケット81のフランジ部81aと、前後吊手棒50とを連結するものである。
図5に示すように、荷棚基部吊手棒間連結部材120は、実質的にストレートな丸パイプとして形成されるとともに、前後吊手棒50側の端部は、T字ジョイントJを介して、前後吊手棒50に連結されている。
また、荷棚基部吊手棒間連結部材120の荷棚80側の端部は、筒状体の一方にフランジを形成したジョイント121を介して、ブラケット81のフランジ部81aに連結されている。
ジョイント121は、荷棚基部吊手棒間連結部材120の端部が例えば筒状部に挿入され固定された状態で、そのフランジをフランジ部81aとともに、内装パネルPの裏側に設けられた図示しない受金に、ビスの共締め等によって固定される。
荷棚基部吊手棒間連結部材120は、前後吊手棒50側の端部がブラケット81側の端部に対して高くなるように傾斜して配置されるが、その傾斜度は荷棚端部吊手棒間連結部材110に対して緩やかとなっている。
また、図3に示すように、荷棚基部吊手棒間連結部材120は、上方から見た平面形はほぼ直線状とされ、枕木方向に沿って配置されている。
さらに、荷棚端部吊手棒間連結部材110と荷棚基部吊手棒間連結部材120とは、車両の前後方向における位置が近接して配置され、荷棚80と協働して実質的にトラス状の構造体を形成するようになっている。
以上説明した第1実施形態によれば、荷棚80の先端部及び基部と、前後吊手棒50とを連結することによって、屋根構10−灯具受40−吊手棒受60−前後吊手棒50−荷棚端部吊手棒間連結部材110及び/又は荷棚基部吊手棒間連結部材120−荷棚80−側構20が順次連結され、屋根構10と側構20との相対角度変化を拘束するトラス構造類似の構造体が形成される。
さらに、前後吊手棒50と、側構20の戸袋内柱24とを連結することによって、屋根構10−灯具受40−吊手棒受60−前後吊手棒50−側構連結部材100−戸袋内柱24−幕板受20a−屋根構10が順次連結され、屋根構10と側構20との相対角度変化を拘束するトラス構造類似の構造体が形成される。
これらの構造体は、屋根構10及び側構20の面外変形を拘束する効果も有する。これによって、車体1の剛性が向上し、振動の抑制による乗り心地の改善や衝突安全性の向上を図ることができる。
ここで、側構連結部材100、荷棚端部吊手棒間連結部材110、荷棚基部吊手棒間連結部材120以外の各要素は、一般的な鉄道車両用車体であれば通常設けられているものであることから、第1実施形態においては、簡素な構成の連結部材100、110、120を設けることによって、上述した効果を得ることができ、既存の車両であっても小規模な設計変更、施工等によって、車両の質量、コストをほとんど増加させることなく効果的に車体剛性を向上することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した鉄道車両用車体の第2実施形態について説明する。なお、以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と実質的に同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図6は、第2実施形態の鉄道車両用車体の模式的平面図である。
図7は、図6のVII−VII部矢視断面図である。
図6に示すように、第2実施形態の鉄道車両用車体においては、ドア前後の吊手棒受60の間で前後吊手棒50、横吊手棒71、側構連結部材100を撤去し、これらに代えて左右の側構20間を連結する左右側構間連結部材130を設けている。
図7に示すように、左右側構間連結部材130は、例えば丸パイプによって一体に形成され、ほぼ枕木方向に沿って配置されている。
左右側構連結部材130の端部131は、戸袋内柱24の傾斜部24aに固定されるとともに、車幅方向内側が高くなるように傾斜して配置されている。
左右側構連結部材130の中央部132は、ほぼ水平に配置されるとともに、端部131に対して低い位置に設けられている。
左右側構連結部材130は、端部131の車幅方向内側の部分と中央部132の車幅方向外側の部分とをつなぐ中間部133を有し、この中間部133は、車幅方向外側が高くなるように傾斜して配置されている。
また、中央部132は、枕木方向に離間した複数の位置において、灯具受け40から下方に延びた支柱134によって支持されている。
以上説明した第2実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
以下、各実施形態の効果について、より詳しく説明する。
以下、上述した各実施形態の鉄道車両用車体の車両試験台加振試験結果について、本発明の比較例と対比して説明する。
比較例の鉄道車両用車体は、実施形態1の車両から、側構連結部材100、荷棚端部吊手棒間連結部材110、荷棚基部吊手棒間連結部材120を撤去したものである。
車両試験台は、レール断面形状を模擬した軌条輪と呼ばれる装置が回転し、これに接した供試車両の車輪が回転することで走行を模擬できるようになっている。また、軌条輪は上下方向に変位することによって、車両に加振力を付与可能となっている。
加振方法は、左右それぞれの車輪に、3〜30Hzでほぼ平坦な周波数特性を持つ無相関のランダム派を同時に入力する「バンドランダム加振」と、走行時に計測した軸箱加速度を再現する「実軌道模擬加振」とした。
加振時の振動は、車体(床21点、屋根21点、側10点)に設置した加速度ピックアップにより計測した。
後述する図8の線分が交差する点が、車体各面の加速度ピックアップを配置した点に相当する。
そのほか、車体中央部の腰掛の加速度もあわせて測定した。
図8は、比較例、第1実施形態、第2実施形態それぞれの車体に対するバンドランダム加振時の振動を計測し、腰掛を除く52点の加速度によって振動モード解析を実施した結果を示す図である。
最右欄のZ−10等の記号は、振動形状の特徴を表したもので、最初の文字は、Aが屋根と床が車体中央部で逆位相に変形するもの、Zはその判別が難しいことを示し、その後の2桁の数字は、1つ目が屋根、2つ目が床の腹の数を表す。
また、Jは車体断面にせん断変形を生じるモードであり、屋根と床の腹の数が常に同一であったため、数字は一桁とした。
また、各モードの左下の数値は各モードの固有振動数、モード減衰比を表す。
図8によると、J−2モードでは条件による固有振動数の差異がほとんどないが、それ以外は、いずれのモードも比較例に対して第1実施形態、第2の実施形態で固有振動数が上昇しており、各連結部材が車体の剛性を向上する効果を有することがわかる。
また、第1実施形態と第2実施形態との固有振動数の比較では、ほぼ同一か、若干第2実施形態が高い傾向がある。
減衰比に関しては、各連結部材によりZ―10モードでやや値が小さくなっているのを除いて、同一モードでは極端な差はない。
次に、実軌道模擬加振時(走行速度83km/h相当)に測定した振動加速度のうち、代表的な測定点として、図6に示した床上2点、腰掛1点における加速度パワースペクトル密度(PSD)を計算した結果を、図9乃至図11に示す。
これによると、比較例では総じてA−31モードに対応すると考えられる10.8Hz付近のピークが卓越しており、第1実施形態及び第2実施形態では、このピークが高周波側にシフトしている。
ピーク高さは、床測点では若干、腰掛では大幅に低減している。
なお、図10に示す床車体中央窓寄り、図11に示す腰掛では、J−1モードに対応する7.2Hz付近にもピークが存在し、同様にピークが高周波側に移動している。
なお、図9乃至図11の凡例には、比較例の場合に計算した乗り心地レベルLを基準とした場合のLの増減をあわせて示した。
これによると、図9、図10に示す床上では3.1〜3.5dB、図11に示す腰掛では3.8〜6.2dB程度低減していることがわかる。
振動モードごとにピーク高さの増減にばらつきはあるものの、全体としては振動が低減する傾向が確認できた。
特に床上測点においては、各連結部材の追加により振動が大きい箇所のL低減効果が顕著であった。
また、腰掛においては、床上よりもさらにL低減幅が大きく、着席した乗客に対する乗り心地の向上が期待できる。
第1実施形態と第2実施形態との比較では、第1実施形態のほうがL低減量はやや大きかった。
ただし、第1実施形態と第2実施形態との差は小さく、現状車体に対する後付け適用がより容易な第1実施形態であっても、十分な効果が確認された。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
車体を構成する各部材の形状、材質、製法、構造等は、上述した各実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。例えば、吊手棒及び吊手棒受の本数、配置等は適宜変更することができる。
また、各実施形態では各連結部材はいずれも丸パイプ状の部材を用いて形成しているが、これに限らず、他の材質や製法としてもよい。例えば、アルミニウム系合金の鋳物や押し出し材等を用いてもよい。また、複数の部材を組み立てて各連結部材を構成してもよい。さらに、各連結部材の本数や配置、その両端部の接続箇所、接続方法等も特に限定されない。
また、荷棚の構造、材質、製法や、連結部材との連結方法も特に限定されない。
1 鉄道車両用車体
10 屋根構
11 屋根外板 12 垂木
20 側構 20a 幕板受
21 外板 22 ドア開口
23 窓開口 24 戸袋内柱
24a 傾斜部 25 戸尻柱
25a 傾斜部 26 柱状部材
30 床構
40 灯具受け 50 前後吊手棒
60 吊手棒受け 71,72 横吊手棒
80 荷棚 81 ブラケット
81a フランジ部 82 パイプ
90 妻構
100 側構連結部材 101 吊手棒側端部
102 側構側端部 103 中間部
110 荷棚端部吊手棒間連結部材
120 荷棚基部吊手棒間連結部材 121 ジョイント
130 左右側構間連結部材 131 端部
132 中央部 133 中間部
134 支柱
D ダクト S 吊手
J T字ジョイント P 内装パネル

Claims (5)

  1. 屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、
    前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、
    前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、
    側構上部近傍から車幅方向内側へ突き出して設けられた荷棚と、
    前記荷棚の車幅方向内側の端部と前記吊手棒とを連結する荷棚端部吊手棒間連結部材と
    前記荷棚の基部と前記吊手棒とを連結する荷棚基部吊手棒間連結部材と、
    前記側構の上部と前記吊手棒受とを連結する側構連結部材と
    を備えることを特徴とする鉄道車両用車体。
  2. 屋根構、側構、及び、床構を有する鉄道車両用車体であって、
    前記屋根構から下方へ突き出して形成された吊手棒受と、
    前記吊手棒受の下端部に支持され車両の前後方向にほぼ沿って延びた吊手棒と、
    側構上部近傍から車幅方向内側へ突き出して設けられた荷棚と、
    前記荷棚の車幅方向内側の端部と前記吊手棒とを連結する荷棚端部吊手棒間連結部材と、
    前記荷棚の基部と前記吊手棒とを連結する荷棚基部吊手棒間連結部材と、
    前記側構の上部と前記吊手棒とを連結する側構連結部材と
    を備えることを特徴とする鉄道車両用車体。
  3. 前記荷棚は車幅方向にほぼ沿って伸びかつ車両前後方向に離間して配置された複数のブラケット、及び、複数の前記ブラケット間にわたして配置された荷物載置部材を有し、
    前記荷棚基部吊手棒間連結部材の車幅方向外側の端部は、前記ブラケットの前記側構側の端部に結合されること
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用車体。
  4. 前記荷棚端部吊手棒間連結部材と前記荷棚基部吊手棒間連結部材とを、車両の前後方向における位置を隣接又は一致させて配置したこと
    を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の鉄道車両用車体。
  5. 前記吊手棒は枕木方向に離間して複数設けられ、
    複数の前記吊手棒の間を連結するとともに枕木方向にほぼ沿って延びた吊手棒間連結部材を備えること
    を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の鉄道車両用車体。
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