しかし、特許文献1の構成は、ガス中に含まれる燃料を液化分離する構成である。従って、特許文献1の構成は、液体燃料を冷却するための冷却装置にそのまま採用することはできない。また、特許文献2の構成は、熱交換器の直管状の燃料通路にペルチエユニットを取り付けただけであるから、燃料通路を流れる燃料を十分に冷却できるとは言いがたい。また特許文献3の構成は、蒸発燃料処理装置内の吸着剤を冷却するものである。従って、特許文献3の構成は、エンジンに供給する液体燃料を冷却するための冷却装置にそのまま採用することはできない。
この点、特許文献4は、液体を搬送するパイプを冷却するためのパイプ冷却装置を開示している。特許文献4は、流体を搬送するパイプの途中を複数の細管に分岐させ、細管の周囲を包囲するパイプに冷媒を封入して、当該パイプをペルチエ素子で冷却する構成である。特許文献4は、これにより、ペルチエ素子を多数取り付けて冷却作用を大にし、またペルチエ素子の取り付けを容易にすることができるとしている。
しかし、特許文献4の冷却装置は、封入された冷媒を介して間接的に流体を冷却する構成であるから、冷却効率が悪いという問題がある。特に、特許文献4のように冷媒を封入した構成では、冷媒の自然対流によって熱が伝えられるため、冷媒を強制対流させる構成に比べると熱伝達率が小さい。このため、燃料の熱をペルチエ素子に対して効率良く伝えることができず、結果としてペルチエ素子による冷却効果が低下し、燃料を十分に冷却できない懸念がある。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、船用エンジンに供給する液体燃料を冷却する冷却装置において、騒音や振動が少なく、メンテナンスが容易でかつ効率的な冷却を実現できる構成を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の船用燃料供給システムが提供される。即ち、この船用燃料供給システムは、第1燃料タンクと、第2燃料タンクと、燃料ヒーターと、船用燃料冷却装置と、供給燃料切換部と、を備える。前記第1燃料タンクは、第1燃料を貯蓄する。前記第2燃料タンクは、前記第1燃料よりも粘度が低い第2燃料を貯蓄する。前記燃料ヒーターは、前記第1燃料を加熱してエンジンに供給する。前記船用燃料冷却装置は、前記第2燃料を冷却して前記エンジンに供給する。前記供給燃料切換部は、前記燃料ヒーターからの第1燃料と、前記船用燃料冷却装置からの第2燃料と、の何れか一方を前記エンジンに供給するように切り換える。この船用燃料冷却装置は、燃料通路と、空冷部と、ペルチエ素子と、伝熱部材と、を備える。前記燃料通路は、前記エンジンに供給される前記第1燃料又は前記第2燃料が流れる。前記空冷部は、周囲の空気に熱を放出する。前記ペルチエ素子は、前記燃料通路の外壁面に配置され、前記燃料通路の熱を前記空冷部に移動させる。前記伝熱部材は、前記燃料通路内に配置され、前記ペルチエ素子が配置されている壁面に接続される。また、前記の船用燃料供給システムにおいては、以下の構成とすることが更に好ましい。即ち、前記舶用燃料冷却装置は、船舶の機関室内に配置される。前記空冷部は、前記機関室の内部の空気に熱を放出する。
即ち、燃料通路内を流れる燃料の熱を、伝熱部材によって燃料通路の壁面まで移動させ、この壁面をペルチエ素子によって冷却するとともに、空冷部によって放熱する。この構成によれば、船舶のエンジンに供給される液体燃料を、冷媒を介すことなく効率良く冷却することができる。従って、HFCのような温室効果ガスを冷媒として利用する必要が無い。また、海水を冷媒として用いる場合のように、冷却効果が海水温度によって左右されることもなく、故障時の海水汚染の心配も無い。また冷媒を循環させるために必要となるコンプレッサやポンプなどが不要となり、構造の単純化、騒音の低減、装置の小型化を図ることができる。またペルチエ素子は機械的駆動部を持たないためメンテナンスフリーであり、電流制御により冷却効果を調整できるため制御も容易である。
上記の船用燃料供給システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記伝熱部材は、金属製の棒状部材であり、その長手方向の両側の端部が前記燃料通路の壁面に接続される。前記ペルチエ素子は、前記伝熱部材の端部が接続されている壁面の外側にそれぞれ配置されている。
このように、棒状の伝熱部材の両端部を燃料通路の壁面に接続したことにより、燃料通路内を流れる燃料の熱を、燃料通路の壁面に効率良く移動させることができる。更に、伝熱部材が接続された両側の壁面にそれぞれペルチエ素子を設けたことにより、当該ペルチエ素子によって効率良く冷却することができる。
上記の船用燃料供給システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記燃料通路は、当該燃料通路内を前記燃料が流れる方向に直交する断面における断面形状が略長方形状である。前記伝熱部材は、その長手方向が、前記燃料通路の前記断面形状の短辺に沿うように配置されている。
伝熱部材を、断面長方形状の燃料通路の短辺に沿うように配置するので、伝熱部材が熱を伝達しなければならない距離が短くなる結果、燃料の熱を燃料通路の壁面まで効率良く移動させることができる。また、伝熱部材の両端部は、断面長方形状の燃料通路の長辺に接続されることになる。従って、ペルチエ素子と燃料通路との接触面積を広くとることができ、放熱効果を向上させることができる。
上記の船用燃料供給システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記燃料通路内を前記燃料が流れる方向に沿って配置された複数のフィンを、前記燃料通路内に備える。前記フィンは、前記伝熱部材に接続される。
このようにフィンを設けることにより、燃料通路内を流れる燃料の熱を、伝熱部材に効率良く移動させることができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る船用燃料供給システム1における燃料の流れを示すブロック図である。
この船用燃料供給システム1は、船舶のディーゼルエンジン2に対して燃料を供給することができるように構成されている。当該船舶は、ディーゼルエンジン2を収容する機関室を備えている。船用燃料供給システム1は、ディーゼルエンジン2と同じ機関室内に配置されている。
ディーゼルエンジン2は、船舶のスクリュープロペラ33等を駆動するための駆動源である。また、ディーゼルエンジン2は、発電機34を駆動するように構成されている。この発電機34によって、船舶に搭載されている各種電気機器に電力を供給することができる。また、ディーゼルエンジン2から排出される高温の排気ガスは、排ガスエコノマイザ(排熱回収装置)35に供給されるように構成されている。この排ガスエコノマイザ35は、前記ディーゼルエンジン2の排熱を回収して有効利用するためのものである。具体的には、排ガスエコノマイザ35は、前記排気ガスの熱によって、船内で利用される温水と水蒸気(スチーム)を発生させるように構成されている。
ディーゼルエンジン2は、燃料噴出ポンプ3を備えている。船用燃料供給システム1は、燃料噴出ポンプ3に対して第1燃料を供給する第1燃料供給路4と、前記燃料噴出ポンプ3に対して第2燃料を供給する第2燃料供給路5を備えている。また、第1燃料供給路4及び第2燃料供給路5と、燃料噴出ポンプ3との間には、供給燃料切換部6が配置されている。供給燃料切換部6は、燃料噴出ポンプ3に対して、第1燃料供給路4又は第2燃料供給路5の何れか一方を接続するように構成されている。これにより、ディーゼルエンジン2の燃料噴出ポンプ3に対して、第1燃料又は第2燃料の何れかを選択して供給することができる。
第1燃料は、不純物が多く粘度が高い燃料(本実施形態ではC重油)としている。また、第2燃料は、不純物が少なく粘度が低い燃料(本実施形態ではマリンガスオイル)としている。航行する海域の排出規制に応じて供給燃料切換部6を切り換えることにより、排出規制に応じた燃料をディーゼルエンジン2に供給することができる。即ち、硫黄酸化物の排出規制が厳しい海域では、低硫黄燃料である第2燃料(マリンガスオイル)を利用し、それ以外の海域では第1燃料(C重油)を利用して、ディーゼルエンジン2を駆動することができる。なお、供給燃料切換部6の切り換えは、オペレータの適宜の操作により行うことができる。
第1燃料供給路4は、第1燃料タンク7と、燃料ヒーター8と、を備えている。第1燃料タンク7には、ディーゼルエンジン2に供給するための第1燃料(C重油)が貯蓄されている。燃料ヒーター8は、第1燃料タンク7と供給燃料切換部6との間に配置されており、ディーゼルエンジン2に供給される第1燃料を加熱するように構成されている。即ち、第1燃料(C重油)は、機関室の室内温度(約45℃)では粘度が高過ぎるので、そのままではディーゼルエンジン2の燃料噴出ポンプ3に供給することができない。そこで、燃料ヒーター8によって第1燃料を適切な温度(例えば130℃以上)まで加熱することにより、第1燃料の粘度が燃料噴出ポンプ3の許容範囲に収まるように調整したうえで、当該燃料噴出ポンプ3に供給するように構成されている。なお、本実施形態において、燃料ヒーター8は、排ガスエコノマイザ35から供給される水蒸気の熱を利用して、第1燃料を加熱するように構成されている。もっとも、燃料ヒーター8の構成はこれに限らず、例えば電気ヒーターなど、公知の適宜の構成を採用することもできる。
第2燃料供給路5は、第2燃料タンク9と、燃料クーラー(船用燃料冷却装置)10を備えている。第2燃料タンク9には、ディーゼルエンジン2に供給するための第2燃料(マリンガスオイル)が貯蓄されている。燃料クーラー10は、第2燃料タンク9と供給燃料切換部6との間に配置されており、ディーゼルエンジン2に供給される第2燃料を冷却するように構成されている。即ち、ディーゼルエンジン2に供給される燃料は、一部が使われずに燃料タンクに戻る。このとき、燃料は、ディーゼルエンジン2の熱によって温度が上昇している。従って、第2燃料(マリンガスオイル)をこの環境で使用すると、温度の上昇により粘度が下がるため、当該第2燃料をそのままディーゼルエンジン2の燃料噴出ポンプ3に供給すると不具合の原因になり得る。そこで、燃料クーラー10によって第2燃料を適切な温度(例えば40℃以下)まで冷却することにより、第2燃料の粘度が燃料噴出ポンプ3の許容範囲に収まるように調整したうえで、当該燃料噴出ポンプ3に供給するように構成されている。なお、燃料クーラー10の構成については後述する。
燃料噴出ポンプ3への燃料の入口近傍には、当該燃料の温度を測定する温度センサ11が配置されている。本実施形態の船用燃料供給システム1は、温度センサ11が測定した燃料の温度に基づいて、当該燃料の加熱、又は冷却を行うように構成されている。このように、ディーゼルエンジン2へ供給される直前の燃料の温度に基づいて当該燃料の加熱又は冷却を行うので、ディーゼルエンジン2へ供給される燃料の粘度を、適切に制御することができる。
ディーゼルエンジン2で余った燃料は、第1燃料タンク7又は第2燃料タンク9に戻される。船用燃料供給システム1は、第1燃料タンク7と第2燃料タンク9の何れに燃料を戻すかを切り換える戻しタンク切換部12を備えている。即ち、ディーゼルエンジン2で第1燃料を利用している場合は、当該燃料を第1燃料タンク7に戻し、第2燃料を利用している場合は、当該燃料を第2燃料タンク9に戻す。なお、戻しタンク切換部12の切り換えは、オペレータの操作によって行っても良いし、供給燃料切換部6の切り換えと連動して自動的に行われても良い。
続いて、図2及び図3を参照して、本実施形態の燃料クーラー10について説明する。この燃料クーラー10は、燃料通路20と、伝熱部材21と、ペルチエ素子22と、空冷部23と、を備えている。
燃料通路20は、その内部に燃料を流すことができるように構成されている。燃料通路20は、第2燃料タンク9に連通する燃料入口24と、供給燃料切換部6に連通する燃料出口25を備えている。本実施形態において、燃料通路20は、燃料入口24と燃料出口25を直線状に接続するように構成されている。第2燃料タンク9の第2燃料は、燃料入口24から燃料通路20に導入され、当該燃料通路20内を流れた後、燃料出口25から出て燃料噴出ポンプ3に供給される。
本実施形態において、燃料通路20は、扁平状に構成されている。具体的には図3に示すように、燃料通路20は、燃料が流れる方向に直交する平面で切断したときの流路形状が、略長方形状になるように構成されている。本実施形態の燃料クーラー10では、流路の四方を金属板によって囲むことにより、断面長方形状の燃料通路20を形成している。図3に示すように、長方形状の燃料通路20の長辺に該当する壁面を構成している金属板を、天井板26及び底板27とする。また、長方形状の燃料通路20の短辺に該当する壁面を構成する金属板を、側板28,29とする。天井板26、底板27、側板28,29はそれぞれ平板状の金属板とされており、当該金属板で囲まれた空間の内部を燃料が流れるように構成されている。なお、天井板、底板等というのは説明の便宜のための名称であり、燃料通路20の上下の向きを限定するものではない。
燃料通路20の内部には、複数の伝熱部材21が配置されている。本実施形態において、伝熱部材21は丸棒状の部材として構成されている。各伝熱部材21は、伝熱部材21同士の間を燃料が流れることができるように、互いに適宜の間隔を空けて配置されている。
各伝熱部材21は、その長手方向が、燃料通路20内を第2燃料が流れる方向(燃料入口24から燃料出口25へと向かう方向)に対して略直交するように配置されている。また本実施形態において、各伝熱部材21は、その長手方向が、天井板26及び底板27に対して略直交するように配置されている。そして、各伝熱部材21の一端は天井板26に接続され、他端は底板27に接続されている。この構成により、燃料通路20内を流れる燃料の熱を、伝熱部材21によって、燃料通路20の壁面(具体的には天井板26及び底板27)まで伝えることができる。また、本実施形態の燃料クーラー10では伝熱部材21の両端を燃料通路20の壁面に接続しているので、伝熱部材21の一端のみを燃料通路20の壁面に接続する場合と比べて、燃料通路20内を流れる燃料の熱を燃料通路20の壁面(天井板26及び底板27)まで効率的に伝えることができる。
伝熱部材21の素材は特に限定されないが、銅のように熱伝導率が高い素材で構成することが好適である。ただし、燃料通路20内を流れる第2燃料に腐食性がある場合など、伝熱部材21に銅を利用することができない場合がある。本実施形態の燃料クーラー10においては、伝熱部材21は、第2燃料に対して耐食性を有する鉄合金製としている。
なお、本実施形態の燃料クーラー10では、伝熱部材21を鉄合金製としているので、当該伝熱部材21によって熱を伝える効率が必ずしも良好であるとは言えない。そこで本実施形態の燃料クーラー10では、伝熱部材21によって熱を伝える距離が短くなるように構成している。具体的には以下のとおりである。即ち、前述のように本実施形態では、燃料通路20を扁平状に(流路断面を長方形状に)形成している。そして、各伝熱部材21の長手方向を、長方形状の流路断面の短辺に沿わせるように配置されている。これにより、伝熱部材21の長さを短くすることができるので、当該伝熱部材21の長手方向での温度勾配が急峻になる。この結果、鉄合金のように熱伝導率が低い素材で伝熱部材21を構成した場合であっても、燃料通路20内を流れる燃料の熱を、天井板26又は底板27まで効率良く伝えることができる。
前記ペルチエ素子22は、平板状に形成されている。なお、このように平板状に形成されたペルチエ素子は一般的なものなので、市販のペルチエ素子を利用することができる。このペルチエ素子22は、通電することにより、一側の面の熱を奪って冷却するとともに、当該奪った熱を他側の面に移動させる公知の構成である。図2等に示すように、ペルチエ素子22は、燃料通路20の壁面の外側に貼り付けられている。具体的には、ペルチエ素子22は、天井板26の外側の面と、底板27の外側の面と、にそれぞれ貼り付けられている。
天井板26と底板27は平板状に形成されているので、例えば燃料通路20の壁面が湾曲している場合に比べて、燃料通路20の壁面(天井板26及び底板27)とペルチエ素子22との接触面積を大きくとることができる。また、天井板26及び底板27は断面長方形状の燃料通路20の長辺を構成しているので、燃料通路20の短辺を構成している側板28,29に比べて面積が大きい。従って、ペルチエ素子22を側板28,29に貼り付ける場合に比べて、燃料通路20の壁面(天井板26及び底板27)とペルチエ素子22との接触面積を大きくとることができる。
ペルチエ素子22は、燃料通路20側を向く面(内側の面)が冷却面、他側の面(外側の面)が放熱面となっており、当該ペルチエ素子22に通電することにより、燃料通路20の壁面(天井板26及び底板27)を冷却するように構成されている。前述のように、天井板26及び底板27には伝熱部材21の端部が接続されている。従って、ペルチエ素子22によって天井板26及び底板27を冷却することにより、伝熱部材21を冷却することができる。以上の構成により、燃料通路20内を流れる燃料を冷却することができる。
なお、本実施形態において、ペルチエ素子22を駆動するための電力は、ディーゼルエンジン2の発電機34から供給されている。従って、燃料クーラー10を駆動するための専用の電源などを設ける必要はない。
ペルチエ素子22の放熱面には、空冷部23が配置されている。空冷部23は、ヒートシンク30と送風ファン31とを備えている。ヒートシンク30は、ペルチエ素子22の放熱面に貼り付けられる。これにより、ペルチエ素子22の放熱面の熱を、ヒートシンク30によって周囲の空気に放出することができる。このとき、送風ファン31によってヒートシンク30に対して送風することにより、当該ヒートシンク30からの放熱を効率的に行うことができる。なお、空冷部23は、天井板26側のペルチエ素子22と、底板27側のペルチエ素子22にそれぞれ対応して設けられている。即ち、空冷部23は、断面長方形状の燃料通路20を、短辺方向から挟み込むように配置されている。これにより、燃料通路20の熱を効率的に放熱することができる。
以上の構成により、燃料通路20を流れる燃料の熱は、伝熱部材21を介して天井板26及び底板27に伝えられる。天井板26及び底板27の熱は、ペルチエ素子22によってヒートシンク30へと移動させられ、当該ヒートシンク30から周囲の空気へと放出される。このように構成された燃料クーラー10により、第2燃料を効率良く冷却して、ディーゼルエンジン2に供給することができる。
以上のように、本実施形態の船用燃料供給システム1においては、燃料クーラー10にペルチエ素子22を採用している。これにより、冷媒ガスや海水などの冷媒を用いることなく、燃料を冷却することができる。従って、コンプレッサ等の機械的駆動部が無いため、騒音や振動が発生しないとともにメンテナンスフリーである。また、海水のような機関室の外部の冷媒を取り込む必要がないため、機関室内で独立したシステムとすることが可能であり、万が一燃料クーラーが破損した場合であっても燃料が海水に漏れ出す心配はない。しかも、冷媒を循環させるための機構が不要になるので、燃料クーラー10をコンパクトかつシンプルに構成することができる。
なお、エンジンに供給する第2燃料(マリンガスオイル)の適正温度は、例えば40℃以下である。従って、この船用燃料供給システム1において、ディーゼルエンジン2に第2燃料を供給する場合は、例えば以下のような制御を行えばよい。即ち、ディーゼルエンジン2に第2燃料を供給しているときに、当該第2燃料の温度が40℃以上になったことが温度センサ11によって検出されると、図略の制御装置がペルチエ素子22への通電を開始して燃料クーラー10を駆動し、第2燃料の冷却を開始する。そして、第2燃料の温度が所定の設定温度(40℃未満)になったことが温度センサ11によって検出されると、図略の制御装置がペルチエ素子22への通電を遮断して、燃料クーラー10による第2燃料の冷却を停止する。このように、温度センサ11の検出結果に基づいてペルチエ素子22への電流を制御することにより、ディーゼルエンジン2に供給する第2燃料の温度を、簡単かつ正確に調整することができる。従って、ディーゼルエンジン2に供給される第2燃料の粘度を、適切に制御することができる。
ところで、本実施形態の燃料クーラー10は、空冷部23によって熱を逃がす構成であるから、当該空冷部23の周囲の空気の温度はなるべく低い方が望ましい。しかし、燃料クーラー10等が配置される機関室の室内温度(約45℃)は、マリンガスオイル(第2燃料)の適正温度(40℃以下)よりも高温である。空冷部23に対して、機関室の外の冷たい空気を当てるように構成することも考えられるが、この場合、機関室外に通じる送風ダクト等を配設する必要があり、装置が大掛りになってしまうという問題がある。以上の点を鑑みれば、船舶用の燃料クーラーの熱を空冷式で放熱することは難しいと考えるのが当業者の判断と言える。
しかし本願発明者は、機関室内のように比較的高温(45℃前後)の環境下であっても、本実施形態の構成の燃料クーラー10であればマリンガスオイル(第2燃料)を適正温度(40℃以下)まで十分に冷却可能であることを見出した。そこで本実施形態の燃料クーラー10は、機関室の室内の空気に対して放熱するように構成されている。即ち、本実施形態の燃料クーラー10は、第2燃料の熱を、伝熱部材21及びペルチエ素子22によって空冷部23へと効率よく移動させることができるので、前記空冷部23から効率よく放熱することができる。従って、本実施形態の燃料クーラー10は、比較的高温な機関室内においても、十分な冷却性能を発揮することができるのである。このように、燃料クーラー10が機関室内で完結している(機関室の外の空気を当てたりする必要がない)ので、当該燃料クーラー10をコンパクトかつ簡単に構成することができる。
以上で説明したように、本実施形態の燃料クーラー10は、燃料通路20と、空冷部23と、ペルチエ素子22と、伝熱部材21と、を備えている。燃料通路20には、ディーゼルエンジン2に供給される液体の第2燃料が流れる。空冷部23は、燃料通路20の外側に配置され、周囲の空気に熱を放出する。ペルチエ素子22は、燃料通路20の外壁面に配置され、燃料通路20の熱を空冷部23に移動させる。伝熱部材21は、燃料通路20内に配置され、ペルチエ素子22が配置されている壁面に接続される。
即ち、燃料通路20内を流れる燃料の熱を、伝熱部材21によって燃料通路20の壁面まで移動させ、この壁面をペルチエ素子22によって冷却するとともに、空冷部23によって放熱する。この構成によれば、船舶のディーゼルエンジン2に供給される第2燃料を、冷媒を介すことなく効率良く冷却することができる。従って、HFCのような温室効果ガスを冷媒として利用する必要が無い。また、海水を冷媒として用いる場合のように、冷却効果が海水温度によって左右されることもなく、故障時の海水汚染の心配も無い。また冷媒を循環させるために必要となるコンプレッサやポンプなどが不要となり、構造の単純化、騒音の低減、装置の小型化を図ることができる。またペルチエ素子22は機械的駆動部を持たないためメンテナンスフリーであり、電流制御により冷却効果を調整できるため制御も容易である。
また、本実施形態の燃料クーラー10は、以下のように構成されている。即ち、伝熱部材21は、金属製の棒状部材であり、その長手方向の両側の端部が燃料通路20の壁面(天井板26及び底板27)に接続される。ペルチエ素子22は、伝熱部材21の端部が接続されている壁面(天井板26及び底板27)の外側にそれぞれ配置されている。
このように、棒状の伝熱部材21の両端部を燃料通路20の壁面に接続したことにより、燃料通路20内を流れる燃料の熱を、燃料通路20の壁面に効率良く移動させることができる。更に、伝熱部材21が接続された両側の壁面にそれぞれペルチエ素子22を設けたことにより、当該ペルチエ素子22によって効率良く冷却することができる。
また、本実施形態の燃料クーラー10は、以下のように構成されている。即ち、燃料通路20は、当該燃料通路20内を燃料が流れる方向に直交する断面における断面形状が略長方形状となっている。伝熱部材21は、その長手方向が、燃料通路20の断面形状の短辺に沿うように配置されている。
伝熱部材21を、断面長方形状の燃料通路20の短辺に沿うように配置するので、伝熱部材21が熱を伝達しなければならない距離が短くなる結果、第2燃料の熱を燃料通路20の壁面まで効率良く移動させることができる。また、伝熱部材21の両端部は、断面長方形状の燃料通路の長辺に接続されることになる。従って、ペルチエ素子22と燃料通路20との接触面積を広くとることができ、放熱効果を向上させることができる。
次に、上記実施形態の変形例について、図4及び図5を参照して説明する。なお、上記実施形態と共通又は類似する構成については、上記実施形態と同一の符号を図面に付して説明を省略する。
この変形例の燃料クーラー110は、燃料通路20内に複数のフィン40を備えた構成である。各フィン40は薄板状の金属板として構成されており、燃料通路20内の燃料が流れる方向に沿って配置されている。従って、燃料通路20内の燃料の流れが、フィン40によって遮られることはない。また、各フィン40は、伝熱部材21の長手方向に直交するように配置され、かつ、伝熱部材21の長手方向で適宜の間隔を空けて積層して配置されている。各伝熱部材21は、各フィンを貫通するように配置されている。そして、伝熱部材21とフィンは、溶接などの適宜の方法により接続されている。
以上のように、燃料通路20内にフィン40を設けることで、燃料通路20内を流れる第2燃料の熱を、より効率的に伝熱部材21へと伝えることができる。
次に、本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と共通又は類似する構成については、上記実施形態と同一の符号を図面に付して説明を省略する。
前述のように、第1燃料は、ディーゼルエンジン2に供給される際に、燃料ヒーター8によって所定の温度(例えば130℃前後)まで加熱されている。従って、エンジンから戻される第1燃料は、機関室の室温(45℃前後)に対して十分に高温である。
この点に着目し、第2実施形態の船用燃料供給システム101では、ディーゼルエンジン2で第1燃料を利用しているときには、高温の第1燃料を第1燃料タンク7に戻す際に、燃料クーラー10を通過させて発電するように構成している。即ち、室温に対して十分に高温の第1燃料を燃料クーラー10に流すことにより、ペルチエ素子22の冷却面と放熱面の間に温度差を発生させる。このようにペルチエ素子22の両側に温度差を発生させることで、当該ペルチエ素子22で発電することができる。なお、ディーゼルエンジン2で第1燃料を利用しているときには、燃料クーラー10は第2燃料を冷却するためには利用されておらず、当該燃料クーラー10には第2燃料が流れていない状態であるから、上記のように燃料クーラー10に第1燃料を流して発電に利用できる。
なお、一般的な船舶では、排ガスエコノマイザ35で生成される水蒸気は船内に豊富にあるので、当該水蒸気を利用して第1燃料を加熱する燃料ヒーター8においては熱エネルギーが余っている状態である。本実施形態は、一旦加熱した第1燃料の熱量をペルチエ素子22で奪って発電する構成であるため、第1燃料の加熱という観点では必ずしも効率の良いものではないが、上記のように燃料ヒーター8では熱エネルギーが余っているので、第1燃料の加熱効率が多少低下したとしても問題にはならない。むしろ、上記のような構成とすることにより、従来は利用しにくかった余剰の水蒸気の熱エネルギーを、ペルチエ素子22によって電気エネルギーとして回収できるので、船用燃料供給システム101の全体としてはエネルギー効率を向上させることができるのである。
以上のように、第2実施形態の船用燃料供給システム101は、余った第1燃料の熱を、電力として回収するように構成されている。これにより、船用燃料供給システム101の効率を向上させることができる。しかも、本実施形態の構成においては、第1燃料の熱から電力を得る機能と、第2燃料を冷却する機能と、を燃料クーラー10が兼ねているので、第1実施形態と比べても追加の投資はほとんど必要ない。従って、低コストで高効率な船用燃料供給システム101を実現することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
スクリュープロペラ33はディーゼルエンジン2によって駆動されるものとしたが、これに限らず、スクリュープロペラ33を電動モーターによって駆動するように構成してもよい。この場合、ディーゼルエンジン2は発電機34の駆動源としてのみ機能し、当該発電機34が発電した電力を前記電動モーターに供給して、スクリュープロペラ33を駆動する。
上記実施形態では、第1燃料供給路4と第2燃料供給路5を切り換えることができる構成としたが、第1燃料供給路4、供給燃料切換部6、及び戻しタンク切換部12は省略しても良い。即ち、1種類の燃料のみをエンジンに供給する船用燃料供給システムにも、本願発明の燃料クーラーを採用することができる。もっとも、船用燃料供給システムは、3種類以上の燃料をエンジンに供給できるように構成されていても良い。
上記実施形態では、伝熱部材21は棒状の部材であるとしたが、これに限らず適宜の形状とすることができる。
上記実施形態では、燃料通路20は断面長方形状としたが、これに限らず、燃料通路20の形状は適宜変更することができる。その他、燃料クーラー10の形状等は図示したものに限定されず、適宜変更することができる。
ヒートシンク30と送風ファン31は、燃料クーラー10の冷却能力に応じて設ければ良く、必須ではない。例えば、ヒートシンク30だけで十分な冷却効果が得られるならば、送風ファン31は省略しても良い。また、ヒートシンク30と送風ファン31の両方を省略しても良い。この場合は、ペルチエ素子22の放熱面から直接的に周囲の空気へ熱が放出されるので、ペルチエ素子22の放熱面自体を空冷部であるとみなすことができる。
天井板26及び底板27に貼り付けるペルチエ素子22の大きさや枚数は、図面に示したものに限定されない。また、天井板26及び底板27に加えて側板28,29の外側の面にペルチエ素子を貼り付けても良い。