JP5870613B2 - 製鋼スラグ水和硬化体およびその製造方法 - Google Patents

製鋼スラグ水和硬化体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、製鋼スラグを主成分とした水浸膨張率の低い製鋼スラグ水和硬化体、およびその製鋼スラグ水和硬化体を製造する方法に関するものである。
先ず、製鉄所で発生する鉄鋼スラグについて説明する。
鉄鋼を生産するプロセスでは、副生物としてスラグが発生する。このスラグは、鉄鋼の生産プロセスに合わせて、大きく高炉スラグと製鋼スラグに分類されている。
高炉スラグは、高炉から出滓された溶融状態のスラグを、大量の水で急冷した水砕スラグと、徐冷した徐冷スラグに分類される。このうち、水砕スラグは、セメント原料等として有効利用される。一方、スラグ特有の潜在水硬性によって強固な塊状に形成される徐冷スラグは、道路用路盤材等として有効利用されている。また、徐冷スラグは、天然石と同等の性質を持つことから、コンクリート用骨材等としても有効利用される。
一方、製鋼スラグには、高炉で製造された銑鉄やスクラップ等を精錬して鋼を製造する工程で生成された、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、ステンレススラグ等がある。これらは、発生した後排出して徐冷処理することで岩石状に形成したものを破砕し、粒度調整したものである。
このうち、製鋼スラグは、塩基度(CaO/SiO2で表す。)が高くて遊離CaOを多量に含有するため、水分を吸って膨張し易く、高炉スラグのように土木・建設資材としての用途には向かず、その処理は困難を極めている。
そこで、このような製鋼スラグを積極的に活用しようとする試みが幾つかなされている。
その代表的な用途が製鋼スラグを用いた水和硬化体である。特に、製鋼スラグを用いた水和硬化体は強度が高いため、路盤材やコンクリートブロック等付加価値の高い用途に適している。
ところが、製鋼スラグを用いた水和硬化体を製造する場合に、水浸膨張率が高い製鋼スラグを使用すると、雨水等によって硬化体からひび割れが発生する等の問題があった。
そこで、上記の問題を解決するべく、例えば特許文献1では、エージング処理した製鋼スラグを骨材とし、高炉スラグ微粉末をアルカリ刺激材として使用することで、製鋼スラグ粒子の周囲が緻密な水和生成物で取り囲まれた構造となる固化体を提案している。
しかしながら、特許文献1に記載された製鋼スラグのエージング処理は、その表3,4に示されるように、常圧の水蒸気に曝すエージング(以下、大気圧蒸気エージングという。)を数日間、自然エージングを数カ月に亘って行うものであり、処理に長時間を要する。また、大気圧蒸気エージングや自然エージングでは、製鋼スラグ固化体の水浸膨張率を長期に亘って満足しているかどうかは不明である。
また、特許文献2では、塩基度を調整した製鋼スラグを使用した製鋼スラグ固化体により水浸膨張率を抑える技術が提案されている。
しかしながら、特許文献2で提案された技術のように、エージング処理を行わずに塩基度の調整のみで製鋼スラグの水浸膨張率を満足するものとするには、製鋼スラグの成分管理の頻度を上げる必要がある。すなわち、製鋼スラグ中の成分のバラツキによって、製鋼スラグ固化体の一部が膨張して崩壊によるひび割れが生じる等するので、維持管理等に問題がある。
そこで、これまでにも製鋼スラグのエージングに関する発明が種々開示されている。例えば出願人は、粒径40mm以下のものが80%以上となるように破砕した常温の製鋼スラグを圧力容器内で0.2〜1.0MPaの圧力の飽和水蒸気雰囲気に1〜5時間曝すことによって製鋼スラグのエージングを促進する発明を特許文献3で提案している。
特許文献3では、圧力容器内を0.2〜1.0MPaの圧力の飽和水蒸気雰囲気に5時間以内で保持する際に、圧力容器の内部の圧力を一時的に低下させる操作を1回又は2回以上繰り返して行うことにより、水浸膨張率をさらに低下する発明も提案している。
特開2004−292295号公報 特開2008−280224号公報 特開2007−106631号公報
本発明が解決しようとする問題点は、大気圧蒸気エージング処理した製鋼スラグ粒子の周囲を緻密な水和生成物が取り囲む構造となる従来の固化体は、エージング処理に長い時間がかかり、水浸膨張率を長期に亘って満足しているかどうかが不明であるという点である。また、エージング処理を行わずに塩基度の調整のみで製造する技術は、製鋼スラグ中の成分のバラツキによって固化体の一部が膨張して崩壊によるひび割れが生じるので、製鋼スラグの成分管理の頻度が上がる等、維持管理に問題があるという点である。
本発明は、短時間でのエージング処理を可能とし、かつ、長期間使用しても膨張によるひび割れがない高品質な製鋼スラグ水和固化体、及びその製造方法の提供を目的とするものである。
本発明の製鋼スラグ水和硬化体は、
0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理が行われた粒径が5mm未満の製鋼スラグを単独で、
或いは、
前記製鋼スラグと粒径が5mm未満の高炉スラグを混合したものを細骨材として40〜60質量%、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理が行われた粒径が5mm以上、40mm未満の製鋼スラグを粗骨材として20〜40質量%、及び固化助材10〜30質量%の合計量に対して、凝結速度調整に使用する混和剤と必要に応じてアルカリ刺激材を添加したものを、
成型固化したことを最も主要な特徴としている。
上記本発明の製鋼スラグ水和硬化体は、
0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行った粒径が5mm未満の製鋼スラグ、
或いは、
前記製鋼スラグと粒径が5mm未満の高炉スラグを混合したものを細骨材として40〜60質量%、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行った粒径が5mm以上、40mm未満の製鋼スラグを粗骨材として20〜40質量%、及び固化助材10〜30質量%の合計量に対して、凝結速度調整に使用する混和剤と必要に応じてアルカリ刺激材を添加したものを、
所定の大きさのブロックに打込んで養生することによって製造する。これが本発明の製鋼スラグ水和硬化体の製造方法である。
本発明は、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行うので、エージング処理に要する時間を短縮することができるのと共に、水浸膨張率をJIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」で規定する1.5%以下に低下することができる。
本発明によれば、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行うので、短時間でのエージング処理が可能になるのと共に、長期間使用しても膨張によるひび割れがない高品質な製鋼スラグ水和固化体を得ることができる。
本発明の固化体を製造する際の加圧式蒸気エージング処理を説明する図である。 各種のエージング方法におけるエージング時間と水浸膨張率の変化の関係の一例を示した図である。 加圧式蒸気エージング処理後の製鋼スラグを、さらに自然エージング処理を行った場合の自然エージング経過日数と膨張率との関係を示した図である。
本発明は、短時間でのエージング処理を可能とし、かつ、長期間使用しても膨張によるひび割れがない高品質な製鋼スラグ水和固化体、及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
そして、前記目的を、例えば0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行った粒径が5mm未満の製鋼スラグを単独で所定の大きさのブロックに打込み、養生して成型固化することで実現した。
以下、本発明について説明する。
発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、製鋼スラグを加圧蒸気雰囲気下でエージング処理することで、短時間でエージング処理が可能であることを見出した。さらに、加圧蒸気雰囲気下でエージング処理した製鋼スラグを用いて水和硬化体を形成すれば、粒径に関係なく水浸膨張率が低く、長期間使用しても膨張によるひび割れを発生しにくい高品質な固化体となることを見出した。
本発明の固化体製造に使用する細骨材、および粗骨材は、天然砕石の代替として利用されている鉄鋼スラグを使用することが好ましい。特に、絶乾密度が天然砕石よりも高く、固化体の緻密性が上がり圧縮強度等の物性が向上する製鋼スラグを使用することが好ましい。この製鋼スラグを高炉スラグと混合しても同様の効果を発揮する。
細骨材、粗骨材で使用する製鋼スラグとは、高炉で製造された銑鉄やスクラップ等を精錬し、鋼を製造する工程で生成された溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、ステンレススラグ等のことで、これらを破砕整粒したものである。また、細骨材で使用する高炉スラグには、高炉徐冷スラグと高炉水砕スラグがあるが、これら破砕整粒したものを単独もしくは混合して使用する。
細骨材には、粒径が5mm未満の製鋼スラグを使用する。また、粗骨材には、粒径が5mm以上、40mm以下の製鋼スラグ、望ましくは、粒径が5mm以上、25mm以下の製鋼スラグを使用する。
細骨材として使用する製鋼スラグの粒径を5mm未満、粗骨材として使用する製鋼スラグの粒径を5mm以上、40mm以下としたのは、製造する固化体の隙間を少なく緻密な構造とするためである。特に粗骨材として使用する製鋼スラグの粒径が40mmを超えると、均一に混合処理する際の時間が長くなって、作業性が悪くなること、および比表面積が大きくなって潜在水硬性が発揮されない場合があるためである。
本発明は、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行った、粒径が5mm未満の製鋼スラグを単独で、或いは、前記製鋼スラグと粒径が5mm未満の高炉スラグを混合したものを細骨材として40〜60質量%、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理を行った、粒径が5mm以上、40mm未満の製鋼スラグを粗骨材として20〜40質量%、及び固化助材を10〜30質量%含む合計100質量%のものを、所定の大きさのブロックに打込み、養生して成型固化したものである。
細骨材、粗骨材、固化助材の前記配合割合の範囲は、製鋼スラグおよび高炉スラグの種類と粒度、固化助材の粒度から、水和硬化体の物性、製造時の作業性の確認試験を行い、その結果から見出したものである。
細骨材を40質量%以上、60質量%以下、粗骨材を20質量%以上、40質量%以下、固化助材を10質量%以上、30質量%以下としたのは、確認試験の結果、前記の範囲を外れた場合は、何れも固化体の圧縮強度が不足したからである。一方、前記の配合割合の範囲であれば路盤材、コンクリートブロック等の粒度規格を満足し、さらに強度を確保することが可能だからである。
次に、本発明の固化体を製造する際の加圧式蒸気エージング処理を、図1を用いて説明する。
搬入搬出装置1により、スラグ容器2に収納された破砕整粒後の製鋼スラグ3を、圧力容器4の内部に装入する(図1の白抜き矢印方向)。装入後は、開閉蓋4aを閉めて圧力容器4を密閉した後、加圧蒸気供給配管系5より加圧水蒸気を供給して圧力容器4内の製鋼スラグ3を加熱する。この加熱によって凝縮した熱水をドレン弁4bから排出しながら、圧力容器4の内部を昇温及び昇圧することで、製鋼スラグ3を所定の圧力に加圧しながら所定の時間エージングする。なお、図1中の4cは排気装置である。
前記圧力容器4を用いた製鋼スラグ3の加圧式蒸気エージング処理には、次の3つ方法がある。
(方法1):
圧力容器4の内部を0.2MPa以上、1.0MPa以下の圧力の飽和水蒸気雰囲気に5時間以上保持した後、圧力容器4の内部を大気圧まで減圧して排出する方法。
未滓化石灰と未滓化酸化マグネシウムが同時に内部に存在する製鋼スラグでは、水和反応が著しく遅くなる傾向があるので、エージング時間が5時間未満の場合には水浸膨張率を1.5%以下に低下することは不可能であった。
しかしながら、未滓化石灰と未滓化酸化マグネシウムが同時に内部に存在する製鋼スラグであっても、前記加圧状態を維持したエージングを5時間以上、好ましくは16時間程度確保すれば、水浸膨張率を1.5%以下に低下することが可能になることが判明した。
もちろん、膨張の主たる要因となる未滓化石灰、未滓化酸化マグネシウムの含有量の変化に対応するためにエージング後の水浸膨張率を測ることによってその必要時間を任意に調整することは可能である。
ちなみに、前記方法1によりエージングした場合の、加圧圧力毎のエージング時間と水浸膨張率の変化の関係を図2に示す。図2には、大気圧蒸気エージングと自然エージングを行った場合のエージング時間と水浸膨張率の変化の関係を、比較として示した。
図2より、前記方法1のように、5時間以上のエージング時間を確保することによってJIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」で規定する水浸膨張率を満足させることができることが分かる。
(方法2):
圧力容器4の内部を0.2MPa以上、1.0MPa以下の圧力の飽和水蒸気雰囲気に5時間以上保持する工程中に、圧力容器4の内部の圧力を一時的に低下させ再度復圧する操作を1回以上行った後、圧力容器4の内部を大気圧まで減圧して排出する方法。
製鋼スラグは内部に多くの気孔を有している。この気孔中に含まれた水分は減圧によって蒸発し、体積膨張して粒子の外部へ放出される際に、粒子間隙を広げたり破壊する作用を奏する。このように粒子間隙を広げられたり破壊された製鋼スラグは、中心部が蒸気に曝され易くなるのでエージング速度が高まることになる。特に5時間以上の長時間エージングを行う場合には、圧力容器の内部の圧力を一時的に低下前の圧力の50%以下に低下させる操作を、複数回繰り返すことで、前記作用を著しく発現させることができ、さらに製鋼スラグの水浸膨張率を低下させることが可能になる。
(方法3):
方法1、もしくは方法2で得られた加圧式蒸気エージング処理後の製鋼スラグを、さらに大気圧蒸気エージング処理、もしくは自然エージング処理を行う方法。この場合、図3より明らかなように、さらに膨張反応を促進させることが可能である。
前記方法1〜3において、圧力容器の内部の飽和水蒸気雰囲気の圧力を0.2MPa以上、1.0MPa以下とするのは、0.2MPa未満の場合は、前記の加圧式蒸気エージングの効果が得られないからである。一方、1.0MPaを超える圧力でも反応速度を速めることは技術的にもちろん可能であるものの、設備的に大掛かりなものになることや設備の維持管理に厳しい対応をしなければならないこと等から、現実的ではないからである。
上記本発明の製鋼スラグ水和硬化体を製造する際に使用する固化助材としては、シリカ含有物質及びポゾラン反応性を有する材料、石膏、ポルトランドセメントを使用することが好ましい。なお、シリカ含有物質及びポゾラン反応性を有する材料としては、例えば石炭灰、各種セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント他)、高炉スラグ微粉末等がある。鉄鋼スラグの有効利用という点から高炉スラグ微粉末、高炉セメント、フライアッシュがより好ましい。これらは単独、あるいは2種以上混合してもちいても良い。
また、本発明の製鋼スラグ水和硬化体を製造する際に添加する混和剤としては、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、両性界面活性剤、高分子型分散剤等が含まれている分散材が列挙される。
このうち、カチオン型界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムブロマイドなどが例示される。
また、アニオン型界面活性剤としては、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどが例示される。
また、ノニオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが例示される。
また、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどが例示される。
また、高分子型水中分散剤としては、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体との共重合物の塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
これらの混和剤は、細骨材と粗骨材と固化助材の合計量(100質量%)に対して、外掛けで0.1〜5質量%添加することが好ましい。混和剤は凝結速度調整に使用するものであり、0.1質量%未満では凝結速度の効果が得られず、また5質量%を超えて使用すると圧縮強度が得られなくなるため好ましくないからである。
また、本発明の製鋼スラグ水和硬化体を製造する際には、必要に応じてアルカリ刺激材を添加しても良い。ここで、アルカリ刺激材としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸化物、硫酸塩、塩化物、またはトリエチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、p−ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等のアミン類、またはアンモニア、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラメチルアンモニウムフルオライド、テトラn−ブチルアンモニウムフルオライド、ベンジルトリメチルアンモニウムフルオライド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
アルカリ刺激材は、ポゾラン反応を促進させるために添加するものであり、添加する量は0.1〜5質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満ではポゾラン反応を促進させる効果が低く、また5質量%を超えると圧縮強度が低くなるため好ましくないからである。
以下に、本発明の効果を確認するために行った試験結果について説明するが、以下に示す発明例は、本発明の内容を限定するものではない。
下記表1,2に発明例の試験条件を、下記表3に発明例の試験結果を示す。本試験で使用した製鋼スラグは、加圧式蒸気エージング処理を施した後、粒度調整したもので、混練物を型枠に流し込んで硬化体を製造した。
製鋼スラグ水和硬化体の水浸膨張率は、JIS A 5015に準拠して測定した。すなわち、80℃の温水中に製鋼スラグを浸し、1日6時間その状態で保持してスラグ膨張量を歪ゲージで測定することを、10日間行った歪量である。製鋼スラグ水和硬化体の圧縮強度は、作製後28日が経過した時点で、JIS A 1108にしたがって測定した。
Figure 0005870613
Figure 0005870613
Figure 0005870613
また、比較試験の条件を下記表4,5に、その試験結果を下記表6に示す。エージング処理方法、および各原料の配合割合を変更した以外は発明例と同様の操作を行った。
Figure 0005870613
Figure 0005870613
Figure 0005870613
表3,6に示した評価方法としては、圧縮強度は20℃×28日後で20N/mm2以下の場合を×、20N/mm2を超え、30N/mm2以下の場合を△、30N/mm2を超える場合を○とし、さらに水浸膨張率が1.0%未満を満足していなければ前記圧縮強度が達成されていても×とした。
上記表3より明らかなように、得られた発明例の硬化体の20℃×28日後の圧縮強度は、目標強度である20N/mm2を大きく上回る効果を得た。また、本発明で得られた硬化体の水浸膨張率は、道路用鉄鋼スラグ路盤材の基準値である1.5%を大きく下回っていた。
一方、比較例の硬化体の20℃×28日後の圧縮強度は、表6より明らかなように、目標強度である20N/mm2以下であるか(比較例9〜17)、20N/mm2を上回る場合も水浸膨張率が1.0%を超えていた(比較例1〜8,18〜20)。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
例えば、本発明の製鋼スラグ水和硬化体は、所定の大きさのブロックに打込み、養生した後に破砕、製粒して製造しても良い。
3 製鋼スラグ
4 圧力容器
5 加圧蒸気供給配管系

Claims (9)

  1. 0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下で蒸気エージング処理が行われた粒径が5mm未満の製鋼スラグを単独で、
    或いは、
    前記製鋼スラグと粒径が5mm未満の高炉スラグを混合したものを細骨材として40〜60質量%、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下でエージング処理が行われた粒径が5mm以上、40mm未満の製鋼スラグを粗骨材として20〜40質量%、及び固化助材10〜30質量%の合計量に対して、凝結速度調整に使用する混和剤と必要に応じてアルカリ刺激材を添加したものを、
    成型固化したことを特徴とする製鋼スラグ水和硬化体。
  2. 前記加圧式蒸気エージング処理を行った後に、大気圧蒸気エージング処理又は自然エージング処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の製鋼スラグ水和硬化体。
  3. 前記製鋼スラグは、溶鋼を溶製するための精錬容器で形成されたものを破砕整粒したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製鋼スラグ水和硬化体。
  4. 前記高炉スラグは、高炉徐冷スラグ又は高炉水砕スラグの何れか1種、或いは2種を混合したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の製鋼スラグ水和硬化体。
  5. 前記固化助材は、シリカ含有物質及びポゾラン反応性を有する材料、或いは、石膏又は、ポルトランドセメントであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の製鋼スラグ水和硬化体。
  6. 前記混和剤は、界面活性剤を含むものであり、前記細骨材と前記粗骨材と前記固化助材の合計100質量%に対して0.1〜5質量%添加することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の製鋼スラグ水和硬化体。
  7. 前記アルカリ刺激材は、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸化物、硫酸塩、塩化物、またはアミン類、4級アンモニウム塩等の1種又は2種以上含まれたもので、前記細骨材と前記粗骨材と前記固化助材の合計100質量%に対して0.1〜5質量%添加することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の製鋼スラグ水和硬化体。
  8. 0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下で蒸気エージング処理を行った粒径が5mm未満の製鋼スラグ、
    或いは、
    前記製鋼スラグと粒径が5mm未満の高炉スラグを混合したものを細骨材として40〜60質量%、0.2〜1.0MPaの圧力の蒸気雰囲気下で蒸気エージング処理を行った粒径が5mm以上、40mm未満の製鋼スラグを粗骨材として20〜40質量%、及び固化助材10〜30質量%の合計量に対して、凝結速度調整に使用する混和剤と必要に応じてアルカリ刺激材を添加したものを、
    所定の大きさのブロックに打込み、養生することを特徴とする製鋼スラグ水和硬化体の製造方法。
  9. 前記養生後に破砕、製粒することを特徴とする請求項に記載の製鋼スラグ水和硬化体の製造方法。
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