JP5870164B2 - ペンダント索用のシンブルおよびカラー - Google Patents

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Description

この発明は,ペンダント索(ロープおよびケーブルを含む)およびペンダント索用シンブルに関する。
移動式クレーンの起伏したブームを支持するためにペンダント索が用いられている。従来のペンダント索は,複数本のスチールワイヤを束ねて撚り合わせたストランドをさらに複数本束ねて撚り合わせたワイヤロープ製で,その両端に連結金具が固定されているものである。ブームの長さに合わせて,連結金具を用いて複数本のペンダント索同士が連結される。連結されたペンダント索の一端が移動式クレーンのブームの先端に固定され,他端が起伏ロープの一端に連結される(特許文献1参照)。
移動式クレーンのブームは分解可能である。たとえば3つに分解されたブームがトラックの荷台に積載されて工事現場まで運ばれ,工事現場において組立てられる。ペンダント索も分割された状態で工事現場まで運ばれる。工事現場において複数本のペンダント索同士の連結,ブームの先端への固定等が行われる。
近年の移動式クレーンは大型化が進み,これに応じてペンダント索の大型化および多数本化も進んでいる。ワイヤロープ製のペンダント索は重く,大型のペンダント索では特にペンダント索同士の連結,連結解除,ブームの先端への取付け,取外し等の作業のときの危険性が増している。また,ワイヤロープ製のペンダント索は腐食防止のためにその表面にグリースが塗布されているので,連結作業等のときに作業員の作業着が非常に汚れるという問題もある。
特開2004−35236号公報
この発明は,従来のワイヤロープ製のペンダント索と同等の強度を有しつつ,かつ軽量なペンダント索を提供することを目的とする。
この発明はまた,上記ペンダント索の両端に設けられる,新規な構造を持つシンブルを提供することを目的とする。
この発明によるペンダント索は,円筒状胴部および上記円筒状胴部の両端のそれぞれから径方向に延びる環状のフランジを備えるシンブル,所定間隔をあけて配置された2つのシンブルの円筒状胴部の外周面上にそれぞれ交互に掛け渡された炭素繊維ストランド,2つのシンブル間の少なくとも中央部分において,上記シンブル間に掛け渡された上記炭素繊維ストランドを束ねる結束部材,ならびに上記炭素繊維ストランドおよび上記結束部材の表面を被覆する被覆部材を備えている。
炭素繊維ストランドは熱硬化樹脂が含浸された多数本の炭素繊維(素線)を束ねたものである。熱硬化樹脂が含浸された多数本の炭素繊維の束を加熱することで熱硬化樹脂が硬化し,多数本の炭素繊維が1本の炭素繊維ストランドになる。炭素繊維ストランドはたとえばその断面が円形となるように形成される。この炭素繊維ストランドが所定間隔をあけて配置された2つのシンブルの円筒状胴部の外周面上にそれぞれ交互に掛け渡される。1本の炭素繊維ストランドが2つのシンブルの円筒状胴部に交互に掛けられることで,2つのシンブル間には複数の炭素繊維ストランドが張設される。
2つのシンブル間の少なくとも中央部分において,複数の炭素繊維ストランドは結束部材によって束ねられる。結束部材としては,たとえばポリエステル糸ないしテープが用いられる。複数の炭素繊維ストランドは好ましくはその断面が円形となるように,上記結束部材によって束ねられる。
炭素繊維ストランドおよび結束部材は被覆部材によってその表面が被覆される。これにより外部からの力が直接に炭素繊維ストランドおよび結束部材に加わることが防止され,ペンダント索の形状の安定も図られる。被覆部材としてはたとえばウレタン樹脂が用いられる。
炭素繊維および炭素繊維ストランドは,同一形状および同一寸法のスチールワイヤおよびこれを束ねて撚り合わせたストランドよりも軽量である。炭素繊維ストランドを用いたこの発明によるペンダント索は軽量であり,耐久性および強度にすぐれている。さらに,金属材料に特有の腐食の防止のためのグリースを表面に塗布する必要がないので,作業着にグリースが付着することによる汚れもない。
一実施態様では,半円弧状のカラーをさらに備え,上記シンブルの円筒状胴部の外周面上に上記カラーを支持する環状の凸条部が周方向に形成されており,上記カラーはその湾曲内面を上記環状凸条部の頂部に接して設けられ,上記炭素繊維ストランドが,上記環状凸条部によって上記シンブルの円筒状胴部の外周面上に形成される環状溝内に掛けられ,かつ上記カラーの湾曲外面上にも掛けられている。好ましくは,上記カラーは上記円筒状胴部の両端間の間隔に相当する幅(一致する幅またはわずかに短い幅)を持つ。
シンブルの円筒状胴部の外周面上に周方向に環状凸条部が形成されているので,この環状凸条部の高さに相当する深さを持つ環状の溝が,円筒状胴部の外周面上に周方向に形付けられる。上記実施態様は,円筒状胴部の外周面上に周方向に環状の溝が形成されており,この環状の溝によって周方向に延びる環状の凸条部が円筒状胴部の外周面上に形成される,と表現することもできる。
ペンダント索に引張力が働くと,上記ペンダント索の両端のシンブルの円筒状胴部に掛けられている炭素繊維ストランドには押圧力が加わる。炭素繊維ストランドが円筒状胴部に積重ねられて掛けられている場合,上記シンブルの円筒状胴部に近い位置(内側)にある炭素繊維ストランドほど大きな押圧力が加わる。この発明によると,シンブルの円筒状胴部の外周面上に形成された環状凸条部によってカラーが支持されているので,このカラーによって外側からの押圧力を遮断して,カラーの内側にある炭素繊維ストランドに大きな押圧力が加わらないようにすることができる。ペンダント索の耐久性が向上する。
他の実施態様では,上記環状凸条部が多段に形成されており,複数のカラーが上記多段の環状凸条部のそれぞれの頂部に接して設けられ,上記炭素繊維ストランドが,下段の環状凸条部の頂部に接して設けられるカラーの湾曲外面上において上段の環状凸条部によって形成される環状溝内にも掛けられている。多段とは,円筒状胴部の径方向に高さの異なる複数の段差があることを意味する。多段の環状凸条部および多段の環状凸条部の頂部のそれぞれに接して設けられる複数のカラーによって,上述の押圧力を遮断することができる。
好ましくは,上記シンブルの上記円筒状胴部に掛けられている上記炭素繊維ストランドが2層または3層に積重ねられる。すなわち,炭素繊維ストランドを積重ねて円筒状胴部上(上記カラーの湾曲外面上も含む)に掛ける場合に,その積重ねの数を3(3層)までに制限する。炭素繊維ストランドに加わる押圧力を小さくとどめることができる。
この発明は,上述のペンダント索に用いられるシンブルも提供する。この発明によるペンダント索用シンブルは,円筒状胴部および上記円筒状胴部の両端のそれぞれから径方向に延びる環状のフランジを備え,上記円筒状胴部の外周面上に,環状の凸条部が周方向に形成されているものである。環状の凸条部によって,円筒状胴部の外周面上には環状の溝が形成される(形付けられる)。
この発明は次のように規定することもできる。すなわち,この発明によるペンダント索用シンブルは,円筒状胴部および上記円筒状胴部の両端のそれぞれから径方向に延びる環状のフランジを備え,上記円筒状胴部の外周面上に,環状の溝が周方向に形成されているものである。環状の溝によって,円筒状胴部の外周面上には環状凸条部が形成される(形付けられる)。
円筒状胴部の外周面上の環状凸条部によって上述したカラーを支持することができ,これによりカラーの内側に位置する炭素繊維ストランドに対して外側から加わる押圧力を遮断することができる。
上記環状凸条部は多段に形成されていてもよい。
ペンダント索の一部破断斜視図である。 図1のII−II線に沿う拡大断面図である。 (A)は2本のペンダント索の連結部分の正面図,(B)はその側面図である。 シンブルの斜視図である。 (A)はシンブルの側面図,(B)は(A)のVB−VB線に沿う断面図である。 カラーの斜視図である。 (A)はカラーの正面図,(B)は(A)のVIIB−VIIB線に沿う断面図である。 (A)は炭素繊維ストランドが掛けられ,かつカラーが設けられているシンブルの一部破断側面図,(B)は(A)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図である。 シンブルの変形例の断面図である。 シンブルの他の実施例の断面図である。 シンブルのさらに他の実施例の断面図である。 他の実施例のカラーを用いたシンブルの断面図である。 他の実施例のカラーを示す斜視図である。
図1はペンダント索1の斜視図を後述するウレタン樹脂4の一部を省略して示すものである。図2は図1のII−II線に沿う拡大断面図を示している。
ペンダント索1は,所定間隔をあけて配置された2つのシンブル10,上記2つのシンブル10間に掛け渡された炭素繊維ストランド2,上記炭素繊維ストランド2を束ねるポリエステル糸3,ならびに上記炭素繊維ストランド2およびポリエステル糸3の表面全体を被覆するウレタン樹脂4を備えている。ペンダント索1の長さ,すなわち2つのシンブル10間の間隔は3m〜9m程度である。
シンブル10は,円筒状胴部11(図1において見えない。図4参照)と,その両端から径方向に延びる2つの円環状のフランジ12を備える。シンブル10は金属製で,削り出しによって円筒状胴部11と2つのフランジ12とが一体に形成されている。2つのシンブル10の円筒状胴部11の外周面のそれぞれに上記炭素繊維ストランド2が複数回交互に掛け渡されている。円筒状胴部11に掛けられた上記炭素繊維ストランド2の脱落がフランジ12によって阻止される。シンブル10の孔10aはペンダント索1同士の連結等に用いられる(詳細は後述する)。
炭素繊維ストランド2は,熱硬化樹脂たとえばエポキシ樹脂を含浸させた10,000本〜15,000本程度の炭素繊維(素線)の束でありほぼ円形の断面を持つ。多数本の炭素繊維は撚られていてもよい。炭素繊維の直径は約7μm,炭素繊維ストランド2の直径は約6mmである。
2つのシンブル10の円筒状胴部11の外周面のそれぞれに上記炭素繊維ストランド2が複数回交互に掛け渡されているので,2つのシンブル10間には複数本の炭素繊維ストランド2が張設される。2つのシンブル10の近傍範囲を除いて,2つのシンブル10の間に張設されている複数本の炭素繊維ストランド2は,ポリエステル糸3が巻き回されることでまとめられて一つの束にされている。図2を参照して,炭素繊維ストランド2の束はほぼ円形の断面を持つ。
炭素繊維ストランド2およびポリエステル糸3の表面全体にウレタン樹脂4が被覆されている。ウレタン樹脂4によって被覆することでペンダント索1の形状が安定し,かつ2つのシンブル10の間に張設される炭素繊維ストランド2のそれぞれに均等に張力を分担させることができる。また,ウレタン樹脂4によって保護されるので,他物との接触や衝突による炭素繊維ストランド2のせん断破壊も防止される。
炭素繊維はスチールワイヤと比較してその重量が1/5程度と軽量であり,かつスチールワイヤと同程度の強度を持つ。炭素繊維ストランド2を用いたペンダント索1は,多数本のスチールワイヤを束ねた同一長さおよび同一直径のワイヤロープを用いた従来のペンダント索とほぼ同等の強度を有しつつ,従来のペンダント索よりも軽い。ペンダント索は移動式クレーンのブームを支持するために用いられるので,使用されるペンダント索が軽量なほどその移動式クレーンによって吊り上げることができる貨物の最大重量は大きくなる。従来のペンダント索よりも軽いペンダント索1を用いることによって,移動式クレーンが吊り上げることができる荷物の最大重量を大きくすることができる。また,炭素繊維は錆びないので錆防止のためのグリースをその表面に塗る必要もなく,グリースが付着することによる衣服の汚れが無い。さらに,炭素繊維ストランド2はワイヤロープのように撚られないので引っ張りや振動に起因する撚り戻りが無く,型くずれがしにくい。捩れも発生じないので素線摩擦による疲労劣化も抑制することができる。
図3(A),(B)は2本のペンダント索1の連結部分を示すもので,図3(A)はその正面図,図3(B)はその側面図である。
シンブル10の孔10aとほぼ同じ径の2つの貫通孔51Aが間隔をあけてあけられた2つの連結プレート51,2つの円筒状連結ピン52,および2本の細い固定ピン53が用意される。連結ピン52の径はシンブル10の孔10aおよび貫通孔51Aの径とほぼ等しく,その末端には径方向に広がる円環状のフランジ52Aが形成されており,先端には上記固定ピン53が通る小孔52Bが径方向に貫通してあけられている。また,固定ピン53の長さは,円筒状連結ピン52の径よりも長い。一方のペンダント索1の一端のシンブル10と他方のペンダント索1の他端のシンブル10とを,上記連結プレート51の2つの貫通孔51Aの間隔と同じ間隔だけ離間させて配置し,2つのシンブル10(フランジ12)を2つの連結プレート51でその外側からそれぞれ挟み込む。連結ピン52を,その先端から連結プレート51の貫通孔51A,シンブル10の孔10a,反対側の連結プレート51の貫通孔51Aに挿入する。反対側の連結プレート51の貫通孔51Aからは連結ピン52の先端が露出する。露出した連結ピン52の先端にあけられた小孔52Bに細い固定ピン53が通される。このようにして,連結プレート51を介して一方のペンダント索1の一端のシンブル10と他方のペンダント索1の他端のシンブル10とが連結される。
図4はシンブル10の斜視図,図5(A)はシンブル10の側面図,図5(B)は図5(A)のVB−VB線に沿うシンブル10の断面図である。図6はシンブル10中に設けられる後述するカラー40の斜視図,図7(A)はカラー40の正面図,図7(B)は図7(A)のVIIB−VIIB線に沿うカラー40の断面図である。図8(A)は炭素繊維ストランドが掛けられ,かつカラー40が設けられているシンブル10の一部破断側面図,図8(B)は図8(A)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図である。図8(A),(B)においてウレタン樹脂4(図1参照)の図示は省略されている。
図4,図5(A)および図5(B)を参照して,シンブル10は,上述したように,円筒状胴部11と,円筒状胴部11の両端のそれぞれから径方向に延びる2つの環状フランジ12を備える。円筒状胴部11の外周面上に,円環状胴部11の周方向に連続して延びる3つの環状の凸条部21,22,23が互いに間隔をあけて形成されている。環状凸条部21が円筒状胴部11の幅方向(2つのフランジ12を結ぶ方向)のほぼ中央に位置しており,環状凸条部22,23のそれぞれは2つのフランジ12のそれぞれに接して(一体に)形成されている。3つの環状凸条部21,22,23の高さ(頂部の高さ位置)は等しい。これらの3つの環状凸条部21,22,23によって,環状凸条部21,22の間,および環状凸条部21,23の間には,同一幅の2つの環状の溝31,32が円筒状胴部11の周方向にそれぞれ形成されている。環状凸条部21,22,23,および環状溝31,32も,削り出しによって円筒状胴部11上につくられる。
図8(A),(B)を参照して,環状凸条部21,22の間,および環状凸条部21,23の間の2つの環状溝31,32内のそれぞれに炭素繊維ストランドが掛けられている。分かりやすくするために,環状溝31,32内に掛けられている炭素繊維ストランドを符号2Aで示す。環状溝31,32内において炭素繊維ストランド2Aは2層に積重ねられている。
2つの環状溝31,32内のそれぞれに炭素繊維ストランド2Aを掛けた後,炭素繊維ストランド2Aが掛けられている部分の環状溝31,32を覆うようにして,金属製のカラー40(図6参照)が被せられる。詳細は後述するが,カラー40は半円弧状に湾曲しており,その湾曲内面40aが円筒状胴部11に形成されている環状凸条部21,22,23の頂部に接して支持される。その後,カラー40の湾曲外面40bの上からさらに炭素繊維ストランドが掛けられる。分かりやすくするために,カラー40の湾曲外面40b上に掛けられている炭素繊維ストランドを符号2Bで示す。炭素繊維ストランド2Bも2層に積重ねられている。炭素繊維ストランド2A,2Bは1本の炭素繊維ストランドであってもよいし,別体(2本)の炭素繊維ストランドであってもよい。
図6,図7(A),(B)を参照して,上記カラー40は半円弧状に湾曲しており,その両端部分はそれぞれわずかに直線状に延びている。先端部分は先細に形成されており,先端部分を除いてカラー40の厚さ(湾曲内面40aと湾曲外面40bとの間の距離)は一定(9mm程度)である。カラー40の内径D2(図7(A)参照)は,上記円筒状胴部11に形成されている環状凸条部21,22,23の頂部における径D1(図8(B)参照)とほぼ等しい。またカラー40の幅W2(図7(B)参照)は円筒状胴部11の幅W1(図8(B)参照)とほぼ等しい(わずかに短くてもよい)。炭素繊維ストランド2Aが掛けられている範囲の環状凸条部21,22,23,および環状溝31,32がカラー40によってほぼ完全に覆われる。環状溝31,32内に掛けられた2層に積重ねられた炭素繊維ストランド2Aと環状凸条部21,22,23の頂部によって支持されるカラー40の湾曲内面40aとの間にはわずかに間隔があく(図8(B)参照)。
ペンダント索1の使用時にペンダント索1に引張力が加わると,上記シンブル10の円筒状胴部11に掛けられている部分の炭素繊維ストランドには円筒状胴部11に向かう向き(内側に向かう向き)に押圧力が加わる。ここで上記環状溝31,32内において円筒状胴部11に掛けられている部分の炭素繊維ストランド2Aは上記カラー40によって外側の炭素繊維ストランド2Bと分離されており,外側の炭素繊維ストランド2Bに加わる押圧力はカラー40によって遮断され,内側の炭素繊維ストランド2Aに伝わることはない。これにより内側の炭素繊維ストランド2Aに加わる押圧力を軽減することができる。ペンダント索1の耐久性が向上する。
図9はシンブルの変形例(シンブル10A)を,図8(B)に対応する断面図によって示している。図8(B)に示すシンブル10とは,3つの環状凸条部21,22,23のうちの中央の環状凸条部21が形成されていない点が異なる。カラー40は2つの環状凸条部22,23の頂部に接して支持される。この変形例のシンブル10Aを用いても,外側の炭素繊維ストランド2Bに加わる押圧力がカラー40によって遮断され,内側の炭素繊維ストランド2Aまで伝わることはない。
図10もシンブルの変形例(シンブル10B)の断面図である。図9に示すシンブル10とは,円筒状胴部11の外周面上に環状凸条部が一切形成されていない点が異なる。炭素繊維ストランド2は円筒状胴部11の外周面上に掛けられる。図10に示す例において,炭素繊維ストランド2は3層に積重ねられている。
炭素繊維ストランド2が積重ねられている場合,ペンダント索1の使用時に炭素繊維ストランド2に加わる押圧力は,外側(円筒状胴部11から遠い位置)にある炭素繊維ストランド2よりも,内側(円筒状胴部11に近い位置)にある炭素繊維ストランド2の方が大きい。炭素繊維ストランド2の積重ねの数(積層数,俵積み数)を多くすればするほど,内側にある炭素繊維ストランド2に大きな押圧力が加わる。炭素繊維ストランド2,特に内側にある炭素繊維ストランド2に加わる押圧力を過大にしないようにするために,炭素繊維ストランド2の積重ねの数は3(3層),好ましくは2(2層)とされる。
炭素繊維ストランド2の積重ねの数を3(3層)以下としつつ,シンブルへの炭素繊維ストランドの掛け数を多くするには,上述した環状凸条部を多段に形成し,かつ上述のカラー40を複数設ければよい。図11は,1段目の下段の環状凸条部21,22,23に加えて,2段目の上段の環状凸条部24,25がさらに形成されている,多段の環状凸状部を持つシンブル10Cの断面図である。2段目の環状凸条部24,25の頂部は1段目の環状凸条部21,22,23の頂部よりも高い位置にある。1段目の環状凸条部21,22,23の頂部の高さ位置は等しく,2段目の環状凸条部24,25の頂部の高さ位置も等しい。2段目の環状凸条部24,25の頂部は,フランジ12の外周縁の高さ位置よりも低い高さ位置にあるのは言うまでない。
1段目(下段)の環状凸条部21,22,23の頂部に,2段目(上段)の環状凸条部24,25の内側側面の間の間隔にほぼ等しい幅を持つカラー40Aの湾曲内面が接して支持され,かつ2段目の環状凸条部24,25の頂部に,円筒状胴部11の幅にほぼ等しい幅を持つカラー40Bの湾曲内面が接して支持されている。1段目の環状凸条部21,22,23によって形成される環状溝31,32内に炭素繊維ストランド2Aが掛けられ,カラー40Aの湾曲外面上であって2段目の環状凸条部24,25によって形成される環状溝33内に炭素繊維ストランド2Bが掛けられ,さらにカラー40B上に炭素繊維ストランド2Cが掛けられている。炭素繊維ストランド2A,2B,2Cはいずれもその積重ねの数が2とされている。炭素繊維ストランド2Cに加わる押圧力はカラー40Bによって遮断され,炭素繊維ストランド2Bおよび炭素繊維ストランド2Aに伝わることはない。炭素繊維ストランド2Bに加わる押圧力はカラー40Aによって遮断され,炭素繊維ストランド2Aに伝わることはない。
カラー40Aに代えて,湾曲外面上に環状凸条部が形成されたカラーを用いてもよい。図12は湾曲外面上に環状凸条部41が形成されたカラー40Cを用いた場合の図11に相当する断面図である。図13はカラー40Cの斜視図である。
カラー40Cの湾曲外面上には,カラー40Cの幅方向のほぼ中央に環状凸条部41が形成されている。カラー40Cはシンブル10Cの環状溝31,32上に被せられると,シンブル10Cの1段目の環状凸条部21,22,23のうちの中央の凸条部21の真上に環状凸条部41が位置し,その頂部が上段のカラー40Bの底面に接する。カラー40Cの環状凸条部41によって上段のカラー40Bの幅方向の中央部分がその底面(下面)側から支持されるので,上段のカラー40Bにかけられた炭素繊維ストランド2Cに加わる押圧力による上段のカラー40Bの下方へのたわみが,軽減ないし防止される。
上述した実施例において,環状凸条部21,22,23,24および25はシンブル10,10Aおよび10Cの円筒状胴部11の周方向に連続して形成されているが,もちろん周方向に間欠的に(周期的に)形成してもよい。また,円筒状胴部11の周方向全体ではなく,炭素繊維ストランド2が掛けられる範囲(おおよそ半円の範囲)のみに環状凸条部21,22,23,24,25を形成するようにしてもよい。
1 ペンダント索
2,2A,2B,2C 炭素繊維ストランド
3 ポリエステル糸
4 ウレタン樹脂
10,10A,10B,10C シンブル
11 円筒状胴部
12 フランジ
21,22,23,24,25 環状凸条部
31,32,33 環状溝
40,40A,40B,40C カラー

Claims (2)

  1. 円筒状胴部と,上記円筒状胴部の両端のそれぞれから径方向に延びる上記円筒状胴部と一体の環状のフランジとを備え,上記円筒状胴部の外周面上に,環状の凸条部が,上記円筒状胴部と一体に周方向に形成されているペンダント索用シンブルと,
    上記円筒状胴部の幅よりも狭い幅を有しており,上記両端の環状フランジの間に挟まれ,かつ上記環状の凸条部の頂点に湾曲内面が接するようにして用いられる半円弧状のカラーと,
    を備えている,ペンダント索用のシンブルおよびカラー
  2. 上記環状凸条部が多段に形成されており上記多段の環状凸条部のそれぞれの頂部に接するようにして設けられる複数の上記カラーを備えている,
    請求項1に記載のペンダント索用のシンブルおよびカラー
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