JP5865334B2 - インサート射出成形装置およびインサート射出成形方法 - Google Patents

インサート射出成形装置およびインサート射出成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形型を含む射出成形装置に関する。
インサート射出成形法は、予め異部材(所謂インサート材)を配置したキャビティに流体状の樹脂材料を射出して成形品を得る方法である。インサート射出成形用の成形装置においては、成形型に、インサート材をキャビティ内に保持するためのピンを設けるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。保持ピンは、一般に、バネ等の付勢手段によってインサート材に向けて押圧される。この押圧力によって、インサート材はキャビティ内において位置固定される。
ところで、この種の射出成形装置においては、インサート材に対する保持ピンの押圧力が過大であると、キャビティに樹脂材料が満たされた時点においても保持ピンがインサートに接触したままになる。このため、得られた成形品には、保持ピンの痕跡穴が残存し、成形品の意匠性が損なわれるおそれがある。
一方、保持ピンのインサート材に対する押圧力が過小であると、キャビティに樹脂材料が射出充填されている途中の段階で、樹脂材料の流体圧によって保持ピンがインサート材から離れる。この場合には、樹脂材料の流体圧によってインサート材が位置変化し、望み通りの位置にインサート材を配置した成形品を得るのが困難な場合がある。
特開平8−267504号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、保持ピンによる痕跡穴を低減しつつ、成形時におけるインサート材の位置変化を抑制し得るインサート射出成形装置、および、インサート射出成形方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のインサート射出成形装置は、射出成形用のキャビティを区画形成する成形型と、前記キャビティ内に流体状の樹脂材料を射出する射出成形機と、を備え、前記キャビティ内にインサート材を配置した状態で射出成形をおこなうインサート射出成形装置であって、
前記成形型は、前記キャビティの少なくとも一部を区画形成する一般型部と、前記キャビティ内に進退可能な保持ピンと前記保持ピンを前記キャビティ内に向けて付勢する付勢手段とからなり前記キャビティ内にて前記インサート材を保持可能なインサート保持部と、を備え、
前記保持ピンは、前記インサート材に当接する前進位置と、前記キャビティの外部に後退する後退位置と、の間を位置変化可能であり、
前記保持ピンは、前記前進位置において前記キャビティ内に露出するとともに前記保持ピンの前進−後退方向と交叉する受圧面を備え、
前記付勢手段は、前記保持ピンを前記前進位置に向けて付勢し、
前記付勢手段の付勢力は、前記射出成形機による射出圧で前記保持ピンが動かず、かつ、保圧時に前記保持ピンが動く大きさである装置である。
付勢手段の付勢力を上記の大きさにするために、本発明のインサート射出成形装置は、下記の(1)を備えるのが好ましい。
(1)前記付勢手段の付勢力は、
前記保圧時における前記キャビティの内圧に、前記保持ピンの前記受圧面の前記後退方向における投影面積を乗じた値未満であり、かつ、
前記射出時における前記キャビティの内圧に、前記保持ピンの前記受圧面の前記後退方向における投影面積を乗じた値以上である。
上記課題を解決する本発明のインサート射出成形方法は、上記した本発明のインサート射出成形装置を用いた射出成形方法であって、
流体状の樹脂材料を前記成形型の前記キャビティ内に射出する射出工程と、前記射出工程後に前記キャビティの内圧を前記射出工程における前記キャビティの内圧を超える大きさにする保圧工程と、を備え、
前記インサート保持部における前記付勢手段の付勢力を、前記射出工程において前記受圧面に作用する力以上であり、かつ、前記保圧工程において前記受圧面に作用する力未満にする方法である。
本発明のインサート射出成形装置によると、樹脂材料の射出時には付勢手段の付勢力によって保持ピンがインサート材を保持し、かつ、保圧時には保持ピンの少なくとも一部がキャビティ外部に後退しインサート材から離れる。このため、本発明のインサート射出成形装置によると、保持ピンの痕跡穴は形成され難い。つまり、本発明のインサート射出成形装置によると、痕跡穴を低減できる。
また、保圧時には既にキャビティには樹脂材料が充填されているため、この段階で保持ピンがインサート材から離れても、インサート材は位置変化しないか、あるいは、インサート材の位置変化量は小さい。つまり、本発明のインサート射出成形装置によると、成形時におけるインサート材の位置変化を抑制できる。
本発明のインサート射出成形方法によると、上記した本発明のインサート成形装置により、痕跡穴が低減しかつインサート材の位置変化が抑制された成形品を得ることができる。
実施例1のインサート射出成形装置を模式的に表す説明図である。 実施例1のインサート射出成形装置における成形型を図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。 射出工程における実施例1のインサート射出成形装置を模式的に表す説明図である。 保圧工程における実施例1のインサート射出成形装置を模式的に表す説明図である。 実施例1のインサート射出成形装置における成形型の保持ピンとインサート材との関係を模式的に表す説明図である。 実施例2のインサート射出成形装置における成形型の保持ピンとインサート材との関係を模式的に表す説明図である。 実施例2のインサート射出成形装置における成形型の保持ピンを模式的に表す斜視図である。 図7に示す保持ピンを図7中B位置から見た様子を模式的に表す側面図である。 図7に示す保持ピンの受圧面の後退方向における投影面積を模式的に表す説明図である。
以下、必要に応じて、本発明のインサート射出成形装置を本発明の成形装置と略し、本発明のインサート射出成形方法を本発明の成形方法と略する。
成形型は、キャビティの少なくとも一部を区画形成する部分(一般型部)と、インサート材をキャビティ内にて保持する部分(インサート保持部)とを持つ。一般型部は、キャビティの全部を区画形成しても良い。或いは、一般型部以外の部分によりキャビティの一部が区画形成されても良い。例えば、保持ピンの一部によってキャビティの一部を区画形成しても良い。
インサート保持部は、保持ピンと付勢手段とで構成される。保持ピンおよび付勢手段は少なくとも1つずつあれば良い。例えば、保持ピンは複数であっても良いし、1つのみであっても良い。インサート材を望み通りの位置に信頼性高く保持するためには、保持ピンは2以上であるのが好ましい。また、付勢手段は1つの保持ピンについて1つずつ設けるのが好ましいが、1つの付勢手段によって2以上の保持ピンを付勢しても良い。付勢手段は、保持ピンをインサート材に向けて付勢可能であれば良く、その駆動機構、材料および形状は特に問わないが、コイルバネや板バネ等のバネからなるのが好ましい。
インサート材の材料や形状は特に限定しないが、例えばインサート材が成形品の内部に完全に埋設される場合等に、本発明の成形装置および成形方法を特に好ましく適用できる。このような場合には、一般に、成形品における痕跡穴を低減すべく付勢手段の付勢力を小さく設定すると、インサート材を強固に保持し難くなる。しかし、本発明の成形装置および成形方法によると、上述したように痕跡穴を低減できる。
保持ピンは、インサート材に当接する位置(前進位置)と、キャビティの外部に後退する位置(後退位置)との間を位置変化可能である。前進位置において、保持ピンは単にインサート材に接触するだけでも良いが、インサート材に圧接するのが好ましい。インサート材を信頼性高く保持するためである。また、後退位置においては、保持ピンの全体がキャビティの外部に配置されても良いし、保持ピンの一部がキャビティの内部に残存しても良い。或いは、保持ピンの一部によって保圧工程におけるキャビティの一部を区画しても良い。
インサート保持部における保持ピンの前進−後退方向は、直線方向であっても良いし、曲線方向であっても良い。さらには、保持ピンは直線方向および曲線方向に前進−後退しても良い。つまり、保持ピンは、前進時および後退時において、直線的に移動しても良いし、曲線的に移動しても良いし、直線的かつ曲線的に移動しても良い。直線的な移動方法としては、例えばスライド移動を挙げることができる。曲線的な移動方法としては、スライド、揺動、回動等を挙げることができる。
保持ピンは、押圧部および受圧面を持つ。保持ピンが前進位置に配置されると、保持ピンの押圧部はインサート材に当接する。受圧面は、保持ピンが前進位置に配置されているときにキャビティ内に露出する面である。つまり、前進位置において、受圧面はインサート材に当接しない。押圧部は面状であっても良いし、線状或いは点状であっても良い。押圧部と受圧面とは連続していても良いし、分断されていても良い。また、押圧部が面状である場合、押圧部と受圧面とは異なる方向を向いていても良いし、同じ方向を向いていても良い。
本発明の成形方法は射出工程と保圧工程とを備える。射出工程は、キャビティ内に樹脂材料を射出する工程である。保圧工程は、射出工程後に、キャビティ内圧を更に高める工程である。保圧工程により、例えば樹脂材料の流動性が低い場合等にも、樹脂材料をキャビティ全体に行き渡らせることができる。または、樹脂材料をキャビティ内に密度高く充填することが可能である。なお、保圧工程におけるキャビティ内圧は、射出工程におけるキャビティ内圧を超える。換言すると、保圧工程は、キャビティに充填された樹脂材料を、射出圧を超える圧力で加圧して保持できれば良い。
受圧面は、保持ピンの前進−後退方向と交叉する。換言すると、受圧面は保持ピンの前進−後退方向と平行でない。このため、受圧面はキャビティ内部において樹脂材料に曝され、樹脂材料の流体圧を受ける。そして受圧面が受けた流体圧(つまり、キャビティ内圧)の大きさに応じて、保持ピンが前進または後退する。したがって、保持ピンの移動には、キャビティ内圧を受け得る受圧面の大きさが関係する。具体的には、保持ピンの後退方向における受圧面の投影面積である。なお、保持ピンの後退に伴い受圧面自身も後退する。したがって、当該投影面積は、受圧面自身の後退方向における受圧面の投影面積と言い換えることもできる。
押圧部は面状をなし、後退位置において、保持ピンに隣接する一般型部の型面(一般型面と呼ぶ)と面一であるのが好ましい。例えば、後退位置において、保持ピンの全体がキャビティの外部に配置される場合には、押圧部が一般型面よりもキャビティ外部側に配置される。この場合には、成形品の表面に押圧部と一般型面との段差分だけ、凸形状(いわゆる駄肉形状)が生じる。場合によっては、この凸形状の部分を切削除去する必要が生じ、成形に要する工数が増大するとともに成形コストが増大する一因になる。一方、押圧部が面状をなし、後退位置においてキャビティの一部を区画し、かつ、押圧部と一般型面とが後退位置において面一であれば、当該凸形状の発生を抑制できる。なお、押圧部と受圧面とが滑らかに連続している場合、押圧部および受圧面がともに一般型面と面一であるのが好ましい。
以下、具体例を挙げて本発明のインサート射出成形装置およびインサート射出成形方法を説明する。
(実施例1)
実施例1の成形装置を模式的に表す説明図を図1に示す。実施例1の成形装置における成形型を図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図2に示す。射出工程における実施例1の成形装置を模式的に表す説明図を図3に示す。保圧工程における実施例1の成形装置の成形型を模式的に表す説明図を図4に示す。実施例1の成形装置における成形型の保持ピンとインサート材との関係を模式的に表す説明図を図5に示す。
図1に示すように、実施例の成形装置100は、成形型1と射出成形機2とを備える。射出成形機2は、成形機本体20、フィーダ25、モータ26および制御手段27を備える。
成形型1は、図2に示すように、固定型11と可動型15に型割りされている。固定型11と可動型15とは略同形状である。固定型11は、内型11aと外型11bに型割りされた入れ子構造になっている。可動型15も同様に、内型15aと外型15bに型割りされた入れ子構造になっている。
固定型11の外型11bは略箱状をなし、内型11aは外型11bに収容されている。内型11aは、一般型部40とインサート保持部41とで構成されている。インサート保持部41は保持ピン42と付勢手段43とを有し、このうち保持ピン42は一般型部40および外型11bに対して相対移動可能である。具体的には、一般型部40にはピン保持部11cが形成されている。ピン保持部11cは、インサート保持部41の外形に対応する凹状をなす。より具体的には、ピン保持部11cは、後述するインサート保持部41におけるピン体44の一部およびバネ座部45の外形に略相補的な貫通穴状をなす。可動型15に関しても同様に、外型15bは略箱状をなし、内型15aは外型15bに収容されている。内型15aは一般型部50およびインサート保持部51で構成されている。一般型部50およびインサート保持部51は一般型部40およびインサート保持部41と略同形状である。
可動型15には図略の駆動手段が取り付けられている。このため可動型15は、固定型11に対して、進退可能である。実施例1の成形装置100において、可動型15は、型割方向(図2中開閉方向)に平行な方向に進退可能である。固定型11は固定されているため位置変化しないが、可動型15が位置変化するため、可動型15と固定型11とは相対的に位置変化(離接)する。なお、固定型11を構成する内型11aは固定型11の外型11bに対して固定され、可動型15を構成する内型15aもまた可動型15の外型15bに対して固定されている。したがって、可動型15における外型15bおよび内型15aは一体的に進退する。さらに、固定型11の外型11bに収容されているインサート保持部41の保持ピン42は、外型11bおよび一般型部40に対して位置変化可能である。同様に、可動型15の外型15bに収容されているインサート保持部51の保持ピン52もまた、外型15bおよび一般型部50に対して位置変化可能である。
インサート保持部41は、保持ピン42および付勢手段43を備える。インサート保持部51もまた、保持ピン52および付勢手段53を備える。付勢手段43、53は、各々、コイルバネからなる。保持ピン42は、ピン体44およびバネ座部45を備える。保持ピン52もまた、ピン体54およびバネ座部55を備える。ピン体44、54は、各々略四角柱状をなす。バネ座部45、55は各々ピン体44、54よりも一回り大きい略箱状をなし、各々対応するピン体44、54の長手方向の一端部に一体化されている。バネ座部45、55は略円柱形の凹みを備える。各バネ座部45、55の凹みはピン体44または54の逆側に開口する。また、各バネ座部45、55の凹みには付勢手段43または53が収容されている。したがって保持ピン42は、全体として、2段の略四角柱状をなす。保持ピン52に関しても同様である。参考までに、保持ピン42、52の形状はこれに限定されず、例えば円柱状等であっても良い。さらに、保持ピン42、52は互いに同形状であっても良いし、異形状であっても良い。インサート保持部41、51は各々、保持ピン42、52の長手方向を進退方向(図2中開閉方向)に向けつつ、ピン保持部11cまたは15cに付勢手段43、53を伴って挿入されている。なお、このとき付勢手段43は保持ピン42と外型11bとの間に介在する。付勢手段53は保持ピン52と外型15bとの間に介在する。
ピン体44、54における長手方向の他端部(バネ座部45、55と逆側の端部)は、曲面状をなす曲面46、56を構成している。曲面46は、後述する保圧工程において、保持ピン42のピン体44が後退位置に配置されると、一般型部40の内面(すなわち、一般型面40a)と面一となる。保持ピン52についても同様に、ピン体54が後退位置に配置されると、曲面56が一般型面50aと面一となる。ここで、実施例1におけるインサート材90は略円柱状であり、インサート成形すべき射出成形品の形状もまた略円柱状である。なお、ピン体44、54における曲面46、56の曲率は、インサート材90の表面(断面)の曲率と異なる。したがって、当該曲面46、56とインサート材90の表面形状とは一致せず、両者は線接触または点接触するだけである。つまり、実施例1の成形装置100においては、保持ピン42、52の押圧部(つまり、インサート材90に当接する部分)は点または線状をなすに留まる。そして、当該曲面46、56の略全面が受圧面を構成する。
コイルバネからなる付勢手段43、53は圧縮して付勢力を蓄積する。保持ピン42、52は、各々、対応する付勢手段43、53によって、成形型1の内側(つまり、キャビティ10cの内部)に向けて付勢されている。なお、実施例1の成形装置100において、成形型1のインサート保持部41、51は、固定型11と可動型15とのそれぞれ対向する位置に1つずつ配置されている。
成形型1は、射出成形機2の成形機本体20に取り付けられている。成形機本体20は、シリンダ21を備えるとともに、内部にプランジャ22およびヒータ(図略)を有している。プランジャ22はスクリュー状をなし、シリンダ21の内部に配置されている。プランジャ22とシリンダ21との間には内部空間20aが形成されている。シリンダ21の後端部にはフィーダ25が配置されている。フィーダ25に投入された樹脂材料は、シリンダ21内の内部空間20aに供給され、図略のヒータにより加熱されて溶融または軟化し、流体状になる。プランジャ22にはモータ26が接続されている。プランジャ22は、モータ26の駆動力によって、シリンダ21に対して回転しつつ進退する。プランジャ22が前進すると流体状の樹脂材料が成形型1のキャビティ10cに射出される。プランジャ22が進退する大きさ(距離および速度)は、制御手段27により適宜制御されている。
以下、実施例1の成形方法を説明する。
(射出工程)
図3に示すように、射出工程においては、可動型15を固定型11に向けて前進させ、2つのインサート保持部41、51によってインサート材90を挟持し保持する。インサート保持部41の保持ピン42、52は、それぞれ、付勢手段43、53によって、インサート材90に当接する(実施例1においては圧接する)前進位置に付勢されている。このため、インサート材90を固定型11に仮止め(図示せず)した後、可動型15を固定型11に向けて前進させ、成形型1を型締めすることで、インサート材90は自ずと2つのインサート保持部41、51によって挟持される。このとき成形型1内部にキャビティ10cが区画形成される。具体的には、可動型15における一般型面50の内面、固定型11における一般型面40の内面、可動型15における保持ピン52の受圧面(つまり曲面56、以下、受圧面56と呼ぶ)、当該受圧面56に連続する保持ピン52の側面57、固定型11における保持ピン42の受圧面46、当該受圧面46に連続する保持ピン42の側面47によって、キャビティ10cを区画形成する。
そして、成形機本体20のプランジャ22を前進させ、キャビティ10c内に流体状の樹脂材料80を射出する。付勢手段43、53の付勢力は、このときの射出圧で保持ピン42、52が動かない程度である。具体的には、付勢手段43、53の付勢力は、射出工程においてキャビティ10cの内圧によって保持ピン42、52の受圧面46、56に作用する力以上に大きく設定されている。
射出工程において保持ピン42の受圧面46に作用する力は、(射出時におけるキャビティ10cの内圧)×(保持ピン42の後退方向における受圧面46の投影面積)で算出できる。保持ピン52に関しても同様である。当該受圧面46、56の投影面積が大きい程、保持ピン42、52に作用する力は大きくなる。なお、実施例1の成形装置100において、保持ピン42、52の進退方向は固定型11および可動型15の開閉方向と同方向である。したがって、実施例1の成形装置100においては、後退方向における受圧面46、56の投影面積は、図2中開閉方向の先側または後側から見た受圧面46、56の投影面積である。ところで、実施例1の成形装置100においては、図5に示すように、保持ピン42、52はインサート材90の表面に線接触または点接触する。そのため、保持ピン42、52の曲面46、56のほぼ全体が射出圧(つまり、キャビティ10cに作用する内圧)を受ける受圧面46、56を構成している。このため、実施例1の成形装置100においては、保持ピン42、52の進退方向に直交する断面積が、後退方向における受圧面46、56の投影面積といえる。ここで、実施例1における受圧面46、56の投影面積は各々35mm2であり、付勢手段43、53の付勢力を5Nとした場合には保持ピン42、52の後退が認められた。しかし、当該付勢力を50Nとした場合には保持ピン42、52の後退は認められなかった。このように付勢手段43、53の付勢力を適宜選定することで、保持ピン35の後退移動を防ぎ、インサート材90を保持ピン42、52によって挟持しつつ、キャビティ10cの内部に樹脂材料を充填できる。
なお、付勢手段の43、53の付勢力が上述した受圧面46、56に作用する力以上であれば、保持ピン42、52は後退し難い。また、付勢手段43、53の付勢力を上述した受圧面46、56に作用する力を超えて大きく設定する場合には、このときの保持ピン42、52の後退をさらに抑制できる。
(保圧工程)
保圧工程においては、上記の射出工程後に、プランジャ22をさらに前進させる。そして、キャビティ10cの内圧を、射出工程時におけるキャビティ10cの内圧を超える大きさにする。保圧工程において保持ピン42の受圧面46に作用する力は、(保圧時におけるキャビティ10c内圧)×(保持ピン42の後退方向における受圧面46の投影面積)で算出できる。保持ピン52の受圧面56に関しても同様である。
具体的には、このときキャビティ10cの内圧は50MPaである。したがって、図4に示すように、このとき受圧面46、56に各々作用するキャビティ10cの内圧により、保持ピン42、52が各々後退位置に向けて動く。なお、上記した射出工程において、キャビティ10c内部には、実質的に樹脂材料80が充填されている。したがって、保圧工程においては、インサート材90は既に樹脂材料80によって囲まれ、樹脂材料80によって保持された状態にある。したがって、保圧工程においてキャビティ10c内圧による保圧力が作用しても、インサート材90の位置は変化し難い。このため、保圧工程においては、インサート材90がほぼ固定された状態で保持ピン42、52のみが後退位置に移動する。したがって、実施例1の成形装置100および成形方法によると、インサート材90を望み通りの位置に配置したままで、インサート材90が埋設された射出成形品を得ることができる。
また、保圧工程においては保持ピン42、52が後退位置に向けて動き、インサート材90の表面から離れ、これに伴って樹脂材料80が保持ピン42、52の存在していた領域に充填されるため、成形品の表面には保持ピン42、52の痕跡穴が残らない。
後退位置において、受圧面46、56(押圧面)は一般型部40、50の内面40a、50aの内面とそれぞれ面一に配置されている。このため、得られた成形品の表面は滑らかであり、切削工程等の後工程を要しない。
なお、実施例1においては、可動型15と固定型11とにそれぞれ1つずつのインサート保持部41、51を設けるとともに、各インサート保持部41、51を型割方向と略同方向に進退させたが、インサート保持部41、51の数や配置、進退方向はこれに限定されない。インサート保持部41、51の数や配置、進退方向は、インサート材90を望み通りの位置で保持できるよう、成形型1の形状やゲートの位置、樹脂の流動方向等に応じて適宜設定すれば良い。また、付勢手段の個数もインサート保持部41、51の仕様に応じて適宜設定できる。
(実施例2)
実施例2の成形装置における成形型の保持ピンとインサート材との関係を模式的に表す説明図を図6に示す。実施例2の成形装置における成形型の保持ピンを模式的に表す斜視図を図7に示し、当該保持ピンを図7中矢印B方向から見た様子を模式的に表す側面図を図8に示す。さらに、実施例2の成形装置において、保持ピンの受圧面の後退方向における投影面積を模式的に表す説明図を図9に示す。
実施例2の成形装置は、保持ピン42、52(より具体的にはピン体44、54)の形状以外は実施例1の成形装置100と略同じものである。また、実施例2の成形方法は、実施例1の成形方法と略同じである。
図7および図8に示すように、実施例2においては、保持ピン42のピン体44は、面状の押圧部(すなわち押圧面46)と、複数の受圧面(44a、44bおよび44c)を持つ。図略の保持ピン52のピン体54に関しても同様であるため、本実施例2においては保持ピン42を中心に説明する。
押圧面46は、インサート材90の表面形状に対応する長尺の湾曲面状をなす。図9に示すように、押圧面46は、自身の長手方向をインサート材90の長手方向に向けている。このようにすることで、押圧面46によってインサート材90を安定して保持できる。受圧面44a〜44cは、各々平面状をなす。受圧面44aは押圧面46の長手方向の先側に設けられているテーパ面である。受圧面44bは押圧面46の短手方向の先側両方にそれぞれ設けられている平面である。受圧面44cは押圧面46に対して保持ピン42の後退方向の先側に配置されている平面である。受圧面44cと、受圧面44a、44bおよび押圧面46と、は段差状に配置されている。なお、受圧面44cおよび44bは、後退方向に対して略直交する。実施例2の成形装置において、受圧面の後退方向における投影面積とは、受圧面44a、44bおよび44c各々の当該投影面積の和を指す。なお、図6に示すように、押圧面46は、保持ピン42が前進位置に配置されると、インサート材90の表面に面接触する。
実施例2の成形装置によると、押圧面46がインサート材90の表面に面接触するため、インサート保持部41によりインサート材90をより信頼性高く保持でき、インサート材90をより望み通りの位置に配置できる。
また、テーパ面状をなし比較的広い面積の受圧面44aを押圧面46の近傍に設けたことで、保持ピン42の後退時に、インサート材90と押圧面46との間に比較的大きな力を作用させることができる。つまり、このような受圧面44aを設けることで、インサート材90と押圧面46とが密着していても、受圧面44aにより両者をこじ開けることができ、保持ピン42の後退動作性を高めることが可能である。
また、押圧面46はインサート材90の表面に対応する曲面状をなす。つまり、実施例2の成形装置においては、押圧面46の曲率と一般型面(図略、図2における40)の曲率とが異なる。このため押圧面46は、後退位置において一般型面40と完全には面一にならない。しかし、後退位置において、押圧面46の端部が一般型面40に近接するように保持ピン42を配置すれば、押圧面46は一般型面40と滑らかに連続するため、成形品の表面には押圧面46の痕跡として微細な凸形状が残るだけである。また、受圧面44aおよび44bに関しては、押圧面46の近傍に位置しているため、同様に、後退位置において受圧面44aおよび44bの端部が一般型面40に近接するようにすれば、成形品の表面に残存する受圧面44aおよび44bの痕跡は小さなものに留まる。受圧面44cに関しては、押圧面46よりも後退方向の先側に配置されているが、押圧面46と受圧面44cとの段差を小さくすることで、受圧面44cが成形品の外観に与える影響を小さくすることができる。したがって、実施例2の成形装置においても、保持ピン42の痕跡は成形品の意匠性にさほど影響しない。
なお、図9に示すように、実施例2においては、受圧面44a〜44cは保持ピン42の後退方向に重なっていないが、場合によっては、各受圧面の一部が保持ピン42の後退方向に重なっても良い。受圧面が前進位置においてキャビティ内に露出し、かつ、保持ピンの前進−後退方向と交叉すれば、この場合にもキャビティ内圧による力が受圧面に作用する。なお、この場合の受圧面の投影面積は、当該交叉する各受圧面の投影面積の和を指す。
また、実施例2においては、押圧面46の長手方向に関する受圧面44aおよび44bの配置は非対称であるが、対称となるように配置しても良い。例えば、受圧面が押圧面46の周囲全周を均等に取り囲むようにしても良い。
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
100:インサート射出成形装置 1:成形型
40、50:一般型部 10c:キャビティ
2:射出成形機 41、51:インサート保持部
42、52:保持ピン 46、56、44a〜44c:受圧面
46:押圧面 43、53:付勢手段
80:樹脂材料 90:インサート材

Claims (3)

  1. 射出成形用のキャビティを区画形成する成形型と、前記キャビティ内に流体状の樹脂材料を射出する射出成形機と、を備え、前記キャビティ内にインサート材を配置した状態で射出成形をおこなうインサート射出成形装置であって、
    前記成形型は、前記キャビティの少なくとも一部を区画形成する一般型部と、前記キャビティ内に進退可能な保持ピンと前記保持ピンを前記キャビティ内に向けて付勢する付勢手段とからなり前記キャビティ内にて前記インサート材を保持可能なインサート保持部と、を備え、
    前記保持ピンは、前記インサート材に当接する前進位置と、前記キャビティの外部に後退する後退位置と、の間を位置変化可能であり、
    前記保持ピンは、前記前進位置において前記インサート材に当接する押圧面と、前記前進位置において前記キャビティ内に露出するとともに前記保持ピンの前進−後退方向と交叉する受圧面と、を備え、前記付勢手段は、前記保持ピンを前記前進位置に向けて付勢し、
    前記付勢手段の付勢力は、前記射出成形機による射出圧で前記保持ピンが動かず、かつ、保圧時に前記保持ピンが動く大きさであり、
    前記受圧面には、前記押圧面の近傍にテーパ面を有するインサート射出成形装置。
  2. 前記付勢手段の付勢力は、
    前記保圧時における前記キャビティの内圧に、前記保持ピンの前記受圧面の前記後退方向における投影面積を乗じた値未満であり、かつ、
    前記射出時における前記キャビティの内圧に、前記保持ピンの前記受圧面の前記後退方向における投影面積を乗じた値以上である請求項1に記載のインサート射出成形装置。
  3. 流体状の樹脂材料を前記成形型の前記キャビティ内に射出する射出工程と、前記射出工程後に前記キャビティの内圧を前記射出工程における前記キャビティの内圧を超える大きさにする保圧工程と、を備え、
    前記インサート保持部における前記付勢手段の付勢力を、前記射出工程において前記受圧面に作用する力以上であり、かつ、前記保圧工程において前記受圧面に作用する力未満にする、請求項1または請求項2に記載のインサート射出成形装置を用いたインサート射出成形方法。
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