JP5863937B1 - マグネシウム鋳物のhip処理方法、hip処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックス - Google Patents
マグネシウム鋳物のhip処理方法、hip処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックス Download PDFInfo
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Abstract
【課題】マグネシウム鋳物について、内部欠陥の除去率を向上させるHIP処理方法、または、当該HIP処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックスを提供する。【解決手段】マグネシウム鋳物のHIP処理方法は、マグネシウムを主原料とするマグネシウム鋳物100、200を準備する工程と、前記マグネシウム鋳物100、200を、圧力媒体を用いてHIP処理するHIP処理工程とを具備する。前記マグネシウム鋳物100、200は、Mgの含有量が70重量%以上96重量%以下であり、Gdの含有量が0重量%以上2重量%以下である。前記HIP処理工程は、共晶温度以上、かつ、融点未満の処理温度で実施される。【選択図】図1A
Description
本発明は、マグネシウム鋳物のHIP処理方法、HIP処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックスに関する。
鋳造品の内部欠陥を除去する方法として、HIP(Hot Isostatic Pressing)処理が知られている。
関連する技術として、特許文献1には、ガドリニウムを5〜20重量%含有するマグネシウム合金をHIP処理することが記載されている。また、引用文献2には、金属部品の亀裂修復方法が記載されている。引用文献2に記載の方法では、金属部品の表面に生じた亀裂をめっきによって封孔処理し、封孔処理された金属部品をHIP処理することによって、金属部品の亀裂の修復を行っている。
本発明の目的は、レアアースであるガドリニウムを多く含まないマグネシウム鋳物について、内部欠陥の除去率を向上させるHIP処理方法、または、当該HIP処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックスを提供することにある。
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
いくつかの実施形態のマグネシウム鋳物のHIP処理方法は、マグネシウムを主原料とする前記マグネシウム鋳物(100;200)を準備する工程と、前記マグネシウム鋳物(100;200)を、圧力媒体を用いてHIP処理するHIP処理工程とを具備する。前記マグネシウム鋳物(100;200)は、Mgの含有量が70重量%以上96重量%以下であり、Znの含有量が0.2重量%以上5重量%以下、または、ジジミウムの含有量が1.75重量%以上2.5重量%以下であり、Gdの含有量が0重量%以上2重量%以下である。前記HIP処理工程は、Mg−Zn合金の共晶点またはMg−ジジミウム合金の共晶点における共晶温度以上、かつ、前記Mg−Zn合金またはMg−ジジミウム合金の融点未満の処理温度で実施される。なお、Mg−Zn合金の融点は、Mg−Zn合金のZn成分量により変動する。また、Mg−ジジミウム合金の融点は、Mg−ジジミウム合金のジジミウム成分量により変動する。例えば、後述のZE41合金の場合には、融点は、450℃以上550℃未満である。
上記のHIP処理方法において、前記HIP処理工程は、Mg−Zn合金の共晶点における共晶温度である339℃以上の処理温度で実施されてもよい。
上記のHIP処理方法において、前記HIP処理工程は、380℃以上420℃未満の処理温度で実施されてもよい。
上記のHIP処理方法において、前記HIP処理工程は、前記Mg−Zn合金の共晶点における共晶温度である339℃以上400℃未満の処理温度で実施されてもよい。
上記のHIP処理方法において、前記HIP処理工程の前に、前記マグネシウム鋳物(200)の表面に達する表面連結空孔(210A)を塞ぐ工程を備えていてもよい。
上記のHIP処理方法において、前記HIP処理工程の後に、HIP処理後の前記マグネシウム鋳物(200’)の表面領域(240A;340A)の少なくとも一部を除去することにより表面連結空孔(210A)を除去する除去工程を備えていてもよい。
上記のHIP処理方法において、前記除去工程は、3mm以上20mm以下の除去深さ(D1)で、前記表面領域(240A;340A)を除去する工程であってもよい。
上記のHIP処理方法において、前記HIP処理工程の後に、HIP処理後の前記マグネシウム鋳物(200’)の表面にシール面(240C;340C)を形成するシール面形成工程を備えていてもよい。前記シール面形成工程は、3mm以上20mm以下の除去深さ(D1)で、HIP処理後の前記マグネシウム鋳物(200’)の表面領域(240A;340A)を除去する工程を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態のヘリコプターのギアボックスは、上記のいずれかの段落に記載された処理方法HIP処理方法を用いて形成されたギアボックスである。
本発明により、レアアースであるガドリニウムを多く含まないマグネシウム鋳物について、内部欠陥の除去率を向上させるHIP処理方法、または、当該HIP処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックスを提供が提供できる。
以下、マグネシウム鋳物のHIP処理方法、HIP処理方法を用いて形成されたヘリコプターのギアボックスに関して、添付図面を参照して説明する。
(HIP処理装置の概要)
図1Aを参照して、HIP処理装置の概要について説明する。図1Aは、HIP処理装置の概略側方断面図であり、HIP処理中の状態を示す図である。
図1Aを参照して、HIP処理装置の概要について説明する。図1Aは、HIP処理装置の概略側方断面図であり、HIP処理中の状態を示す図である。
HIP処理装置1は、圧力容器10と、圧力媒体導入路20と、支持部材30と、加熱装置40とを備える。圧力容器10には、被処理物であるマグネシウム鋳物100をHIP処理する内部空間50が設けられている。
圧力容器10は、例えば、容器部12と蓋部14とを含む。蓋部14の開放によって、圧力容器10内に、マグネシウム鋳物100を配置することが可能となる。圧力容器10の内部空間50には、圧力媒体が導入される。圧力媒体は、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスである。なお、圧力媒体の種類は、アルゴンガス、窒素ガスに限定されず、任意である。圧力媒体の内部空間50への導入は、圧力媒体導入路20を介して行われる。圧力媒体導入路20の途中には、バルブ22が設けられている。
圧力容器10の内部には、マグネシウム鋳物100を支持する支持部材30が設けられている。支持部材30は、例えば、支柱等の基台32と、支持プレート34とを含む。支持プレート34は、例えば、マグネシウム鋳物100の下面に対して圧力媒体の圧力を作用させることが可能な構造を有する。圧力媒体の圧力を作用させる構造は、例えば、多孔性のプレート、あるいは、金網等である。加熱装置40は、圧力媒体およびマグネシウム鋳物100を加熱する。加熱装置40は、例えば、ヒーターを含む。
(HIP処理方法の概要)
図1Aおよび図1Bを参照して、HIP処理方法の概要について説明する。図1Aは、HIP処理中の状態を示す図である。図1Bは、HIP処理装置の概略側方断面図であり、HIP処理後の状態を示す図である。
図1Aおよび図1Bを参照して、HIP処理方法の概要について説明する。図1Aは、HIP処理中の状態を示す図である。図1Bは、HIP処理装置の概略側方断面図であり、HIP処理後の状態を示す図である。
第1工程において、圧力容器10の内部空間50に内部欠陥110を有するマグネシウム鋳物100が配置される。内部欠陥110は、例えば、空孔(ボイド)、隙間等である。マグネシウム鋳物100は、圧力容器10の内部において、支持部材30によって支持される。
第2工程において、圧力媒体が、圧力媒体導入路20を介して圧力容器10の内部空間50に導入される。圧力容器10への圧力媒体の導入量または単位時間当たりの導入流量は、バルブ22によって調整される。圧力容器10への圧力媒体の導入によって、マグネシウム鋳物100の表面には、等方的に圧力Pが作用する。
第3工程において、加熱装置40によって、圧力媒体およびマグネシウム鋳物100が加熱される。マグネシウム鋳物100の表面は、例えば、等方的に加熱される。
第2工程の開始は、第3工程の開始よりも前であってもよいし、後であってもよい。また、第2工程の開始と第3工程の開始とは、同時であってもよい。
第4工程において、マグネシウム鋳物100は、HIP処理される。第4工程において、マグネシウム鋳物100は、表面に作用する熱と圧力Pとによって、収縮する。当該収縮に伴い、マグネシウム鋳物の内部欠陥110(例えば、空孔、隙間等)は、圧縮され除去される。すなわち、HIP処理後の状態を示す図1Bにおいては、内部欠陥110は、除去されている。HIP処理前のマグネシウム鋳物100と、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’とは、相似形状を有する。なお、相似には、概ね相似であることが包含される。
HIP処理後のマグネシウム鋳物100’は、内部欠陥110が除去されているため、HIP処理前のマグネシウム鋳物100と比較して、強度(引っ張り強度、圧縮強度等)が大きい。
第5工程において、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’の表面仕上げが行われる。表面仕上げは、切削加工等を含む。
(発明者によって認識された課題)
図2A乃至図3を参照して、発明者によって認識された課題について説明する。図2Aは、マグネシウム鋳物100の一部分の断面図であり、HIP処理前の状態を示す断面図である。図2B乃至図2Dは、マグネシウム鋳物100’の一部分の断面図であり、HIP処理後の状態を示す断面図である。図3は、マグネシウムとアルミニウムについて、温度と強度との関係を示すグラフである。
図2A乃至図3を参照して、発明者によって認識された課題について説明する。図2Aは、マグネシウム鋳物100の一部分の断面図であり、HIP処理前の状態を示す断面図である。図2B乃至図2Dは、マグネシウム鋳物100’の一部分の断面図であり、HIP処理後の状態を示す断面図である。図3は、マグネシウムとアルミニウムについて、温度と強度との関係を示すグラフである。
図2Aは、マグネシウム鋳物100の一部分の断面図であり、HIP処理前の状態を示す断面図である。マグネシウム鋳物100の内部には、内部欠陥である空孔110A、隙間110B等が存在する。
図2Bは、マグネシウム鋳物100に対して、好適な温度、好適な圧力で、好適な時間にわたってHIP処理した後のマグネシウム鋳物100’の状態を示す。HIP処理後のマグネシウム鋳物100’から空孔110Aおよび隙間110Bが除去されていることが把握される。隙間110Bの除去により、水分130等が、隙間内に進入することが抑制される。隙間への水分130の進入が抑制されることにより、マグネシウム鋳物100’の腐食等が抑制される。また、空孔110Aの除去により、マグネシウム鋳物100’の強度(引っ張り強度、圧縮強度等)は増加する。
図2Cでは、HIP処理における処理温度、処理圧力、または、処理時間のいずれかが不足することにより、空孔110Aまたは隙間110Bが除去されていないことが把握される。隙間110Bの存在により、水分130等が、隙間内に進入する。隙間への水分130の進入により、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’が腐食する。また、空孔110Aの存在により、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’の強度は低下する。
図2Dでは、HIP処理における処理温度が過大である(高温すぎる)ことにより、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’の材料組織(すなわち、組織構造)が、HIP処理前のマグネシウム鋳物100の材料組織(すなわち、組織構造)から、大きく変性していることが把握される。材料組織の変性により、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’は、所望の特性(強度等)を発揮することができない。
図3は、マグネシウムとアルミニウムについて、温度と強度との関係を示すグラフである。図3を参照することにより、マグネシウム鋳物のHIP処理の難しさが把握される。図3の横軸は、温度(℃)であり、縦軸は、強度(例えば、圧縮強度)である。
ある処理圧力で、ある処理時間にわたってHIP処理をすることにより、空孔110Aまたは隙間110Bが効果的に除去されるためには、マグネシウム鋳物100の強度が所定の閾値TH1を下回っていることが必要である。マグネシウム鋳物100の強度が所定の閾値TH1を下回ることにより、マグネシウム鋳物100に作用する圧力によりマグネシウム鋳物100が効果的に圧潰される。その結果、HIP処理後のマグネシウム鋳物100’から空孔110Aまたは隙間110Bが効果的に除去される。マグネシウムの強度が閾値TH1以下となる温度(軟化温度)を、温度T1と定義する。温度T1は、例えば330℃である。また、マグネシウム鋳物は、主たる構成材料がマグネシウムであるマグネシウム合金である。マグネシウム合金の共晶点温度を温度T2と定義する。温度T2以上の温度では、マグネシウム鋳物100の材料組織が維持されないので、従来、温度T2以上の温度でHIP処理することは、現実的ではないと考えられていた。従って、マグネシウム鋳物100をHIP処理する場合の処理可能温度は、一般的には、温度T1以上温度T2未満であると考えられていた。なお、例えば、マグネシウム−Zn合金の共晶点温度(温度T2)は339℃である。したがって、マグネシウム鋳物のHIP処理可能温度の範囲は、かなり厳しく限定された範囲であると考えられていた。
同様に、アルミニウムの強度が閾値TH1’以下となる温度(軟化温度)を、温度T1’と定義する。アルミニウムの軟化温度は、例えば、500℃である。また、アルミニウム合金の共晶点温度を温度T2’と定義する。例えば、Al−Cu合金の共晶点温度T2’は、548℃である。この場合、アルミニウム鋳物のHIP処理可能温度の範囲は、温度T1’以上温度T2’未満である。
なお、閾値TH1及びTH1’は、HIP処理装置の圧力で、余裕をもって十分にHIP処理の効果が得られる強度値(典型的には、下限値)である。マグネシウムまたはアルミニウムの強度が閾値TH1またはTH1’以上(すなわち、軟化温度T1またはT1’未満)であっても、HIP処理の効果が得られる場合もある。しかし、軟化温度T1またはT1’未満でHIP処理すると、HIP処理の効果が限定的となる。効果が限定的となる例としては、大きな内部欠陥が除去(圧縮)できない例、内部欠陥の内側表面同士が接合しない例等が挙げられる。なお、HIP処理時間を長くする場合には、上記閾値TH1及びTH1’の値を、より大きな値とすること(換言すれば、温度T1及びT1’の値を、より小さな値とすること)が可能である。
図3を参照すると、マグネシウム鋳物のHIP処理可能温度の範囲(T1以上T2未満)は、アルミニウム鋳物のHIP処理可能温度の範囲(T1’以上T2’未満)よりも、より厳しく限定された範囲であることが把握される。このため、マグネシウム鋳物をHIP処理する際の条件設定は、アルミニウム鋳物をHIP処理する際の条件設定よりも難しい。なお、後述される実施形態のアイデアを用いる場合には、温度T2以上においてもHIP処理を行うことが可能である。しかし、マグネシウム鋳物の組成等の条件を考慮することなく、無条件にHIP処理温度を上げることはできない。このため、何れにしても、マグネシウム鋳物の場合には、HIP処理の条件設定が難しいと言える。
上記に加え、マグネシウム鋳物は、鋳造時に内部欠陥(例えば、空孔、隙間等)ができやすいとの課題がある。
なお、図2A乃至図3に記載された例は、発明者によって認識された課題を説明するために便宜的に使用された例である。よって、図2A乃至図3に記載された例は、本願出願前の公知の従来技術を示すものではない。
(マグネシウム鋳物の組成の一例)
いくつかの実施形態において、マグネシウム鋳物の材料として、ZE41を使用する。すなわち、マグネシウム鋳物の材料に関し、マグネシウム(Mg)の含有量は、91.59重量%以上95.35重量%以下であり、亜鉛(Zn)の含有量は、3.5重量%以上5重量%以下である。また、レアメタルであるガドリニウム(Gd)の含有量は、0重量%以上1.75重量%以下である。ここで、マグネシウムの含有量が、91.59重量%以上95.35重量%以下であり、亜鉛の含有量が、3.5重量%以上5重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上1.75重量%以下である材料を材料Aと定義する。材料Aのより詳細な成分の一例を、図4Aに示す。
いくつかの実施形態において、マグネシウム鋳物の材料として、ZE41を使用する。すなわち、マグネシウム鋳物の材料に関し、マグネシウム(Mg)の含有量は、91.59重量%以上95.35重量%以下であり、亜鉛(Zn)の含有量は、3.5重量%以上5重量%以下である。また、レアメタルであるガドリニウム(Gd)の含有量は、0重量%以上1.75重量%以下である。ここで、マグネシウムの含有量が、91.59重量%以上95.35重量%以下であり、亜鉛の含有量が、3.5重量%以上5重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上1.75重量%以下である材料を材料Aと定義する。材料Aのより詳細な成分の一例を、図4Aに示す。
参考例として、材料Aに代えて、別の材料を用いることも可能である。例えば、マグネシウム鋳物の材料として、AZ91Cを用いることも可能である。すなわち、マグネシウム鋳物の材料に関し、マグネシウムの含有量が、88.59重量%以上91.37重量%以下であり、亜鉛の含有量が、0.4重量%以上1重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上0.1重量%以下である材料Bを用いることが可能である。材料Bのより詳細な成分の一例を、図4Bに示す。
代替的に、マグネシウム鋳物の材料として、EV31Aを用いることも可能である。すなわち、マグネシウム鋳物の材料に関し、マグネシウムの含有量が、93.218重量%以上95.8重量%以下であり、亜鉛の含有量が、0.2重量%以上0.5重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、1重量%以上1.7重量%以下である材料Cを用いることが可能である。材料Cのより詳細な成分の一例を、図4Cに示す。
代替的に、マグネシウム鋳物の材料として、QE22を用いることも可能である。すなわち、マグネシウム鋳物の材料に関し、マグネシウムの含有量が、93.09重量%以上95.85重量%以下であり、ジジミウム(Didymium)の含有量が、1.75重量%以上2.5重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0.3重量%以下である材料Dを用いることが可能である。材料Dのより詳細な成分の一例を、図4Dに示す。なお、ジジミウムは、プラセオジム(Pr)とネオジム(Nd)との混合物である。QE22においては、Znの代わりにジジミウムが、マグネシウムとの間で共晶組織を形成する。
材料A、材料B、材料C、材料Dについてまとめて考慮すると、マグネシウム鋳物として、(1)マグネシウムの含有量が、88.59重量%以上95.85重量%以下であり、(2)亜鉛の含有量が0.2重量%以上5重量%以下またはジジミウムの含有量が1.75重量%以上2.5重量%以下であり、(3)レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上1.75重量%以下である材料を使用してもよい。なお、本実施形態で使用するMg合金鋳物として、マグネシウムの含有量がより少ない材料(または、マグネシウムの含有量がより多い材料)を使用してもよい。例えば、マグネシウムの含有量が、(1)70重量%以上96重量%以下であり、(2)亜鉛の含有量が0.2重量%以上5重量%以下またはジジミウムの含有量が1.75重量%以上2.5重量%以下であり、(3)レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上2重量%以下である材料を使用してもよい。
材料A、材料B、材料Cについてまとめて考慮すると、Mg−Zn合金鋳物として、マグネシウムの含有量が、88.59重量%以上95.8重量%以下であり、亜鉛の含有量が、0.2重量%以上5重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上1.75重量%以下である材料を使用してもよい。なお、本実施形態で使用するMg−Zn合金鋳物として、マグネシウムの含有量がより少ない材料を使用してもよい。例えば、マグネシウムの含有量が、70重量%以上96重量%以下であり、亜鉛の含有量が0.2重量%以上5重量%以下であり、レアメタルであるガドリニウムの含有量が、0重量%以上2重量%以下である材料を使用してもよい。
ガドリニウムの含有量を2重量%以下とする理由は、例えば、高価なガドリニウムの使用を抑制するためである。なお、実施形態のマグネシウム鋳物は、ガドリニウムを含有しないものであってもよい。すなわち、マグネシウム鋳物におけるガドリニウムの含有量は、0重量%であってもよい。
材料A、材料B、または、材料C等によって構成されるマグネシウム鋳物、すなわち、Mg−Zn合金鋳物を、共晶温度(図5から、Mg−Zn合金の共晶温度は、340±1℃であることが把握される。)を超えて加熱する場合、Mg−Zn合金鋳物の粒界面におけるMgリッチな領域から共晶溶融が進行する。共晶溶融が開始する温度は共晶点D(eutectic point)における共晶温度(340±1℃、すなわち、339℃、または、340℃、あるいは、341℃)である。
Mg−Zn合金の融点は、Mg−Zn合金のZn成分量により変動する。同様に、Mg−ジジミウム合金の融点は、Mg−ジジミウム合金のジジミウム成分量により変動する。
例えば、Znの含有量が3.5重量%以上5重量%以下であるZE41の場合、ZE41の融点は、450℃以上550℃未満である。なお、融点は、材料を加熱する際に、液相が生じ始める温度である。Znの含有量が3.5重量%である場合、ZE41の融点は、図5に記載の状態図に基づいて(より具体的には、Znの含有量が3.5重量%に対応する縦軸に平行な直線と、境界曲線f(すなわち、Mg固溶相と、液相(L)およびMg固溶相の混合相との境界曲線f)との交点に基づいて)、550℃であることが把握される。Znの含有量が5重量%である場合、ZE41の融点は、図5に記載の状態図に基づいて(より具体的には、Znの含有量が5重量%に対応する縦軸に平行な直線と、境界曲線fとの交点に基づいて)、450℃であることが把握される。
(HIP処理温度)
上述のとおり、HIP処理において、マグネシウム鋳物100が溶融すると、材料組織の維持が困難となる。このため、HIP処理は、融点未満で実行することが技術常識である。共晶溶融も、溶融の一形態であるため、HIP処理は、共晶温度未満で実行することが一般的である。これに対し、発明者は、実験により、Mg−Zn合金鋳物においては、共晶温度以上の温度でHIP処理しても、概ね材料組織が維持されるとの知見を得た。材料におけるZn含有率の低さと、材料組織の均質性が寄与しているとも考えられる。Znの含有率が、6.2重量%以下であることが、何らかの好影響を与えている可能性も考えられる(図5において、Mgの含有率が6.2重量%であり、温度が共晶温度である点Eを参照。)。あるいは、仮に、共晶溶融が発生したとしても、当該共晶溶融が、Mg−Zn合金鋳物の粒界面のごく一部にとどまっている可能性も考えられる。
上述のとおり、HIP処理において、マグネシウム鋳物100が溶融すると、材料組織の維持が困難となる。このため、HIP処理は、融点未満で実行することが技術常識である。共晶溶融も、溶融の一形態であるため、HIP処理は、共晶温度未満で実行することが一般的である。これに対し、発明者は、実験により、Mg−Zn合金鋳物においては、共晶温度以上の温度でHIP処理しても、概ね材料組織が維持されるとの知見を得た。材料におけるZn含有率の低さと、材料組織の均質性が寄与しているとも考えられる。Znの含有率が、6.2重量%以下であることが、何らかの好影響を与えている可能性も考えられる(図5において、Mgの含有率が6.2重量%であり、温度が共晶温度である点Eを参照。)。あるいは、仮に、共晶溶融が発生したとしても、当該共晶溶融が、Mg−Zn合金鋳物の粒界面のごく一部にとどまっている可能性も考えられる。
他方、融点以上(例えば、Znの含有量が5.0重量%のZE41合金の場合は、450℃以上)の温度では、Mg−Zn合金鋳物の溶融が大きく進行し、材料組織の維持が困難である。
以上のとおり、HIP処理温度として、Mg合金の共晶温度以上、かつ、融点未満の温度を用いることにより、Mg合金鋳物の強度(例えば、圧縮強度)を効果的に低下させるとともに、Mg合金鋳物の材料組織の変性を抑制することが可能である。その結果、HIP処理温度として、Mg合金の共晶温度以上融点未満の温度を用いることにより、Mg合金鋳物の材料組織の変性を抑制するとともに、Mg合金鋳物の内部欠陥(空孔、隙間等)を除去することが可能である。
Mg合金鋳物(例えば、Mg−Zn合金鋳物)のHIP処理温度を380℃以上とすると、380℃未満で処理する場合と比較して、Mg合金鋳物の強度(例えば、圧縮強度)を効果的に低下させられるとの知見が得られた。
Mg合金鋳物(例えば、Mg−Zn合金鋳物)のHIP処理温度を420℃未満とすると、420℃以上で処理する場合と比較して、Mg合金鋳物の材料組織の変性を効果的に抑制させられるとの知見が得られた。
(HIP処理圧力)
HIP処理圧力、すなわち、圧力媒体の圧力は、例えば、80Mpa以上198MPa(より具体的には、80Mpa以上160MPa以下)である。すなわち、HIP処理圧力としては、一般的に採用されているHIP処理圧力を採用することが可能である。
HIP処理圧力、すなわち、圧力媒体の圧力は、例えば、80Mpa以上198MPa(より具体的には、80Mpa以上160MPa以下)である。すなわち、HIP処理圧力としては、一般的に採用されているHIP処理圧力を採用することが可能である。
(封孔処理)
図6A乃至図6Cを参照して、マグネシウム鋳物の封孔処理について説明する。上述の実施形態のマグネシウム鋳物のHIP処理方法は、封孔処理を施したマグネシウム鋳物に対しても適用可能である。なお、封孔処理自体は、公知の技術である。図6Aは、HIP処理装置1の概略側方断面図であり、封孔処理が施されていないマグネシウム鋳物のHIP処理中の状態を示す図である。図6Bは、HIP処理装置1の概略側方断面図であり、HIP処理後の状態を示す図である。図6Cは、HIP処理装置1の概略側方断面図であり、封孔処理が施されているマグネシウム鋳物のHIP処理中の状態を示す図である。なお、図6A乃至図6Cにおいて、図1Aおよび図1Bに記載の構成要素と同じ機能を有する構成要素については、図1Aおよび図1Bにおける符号と同一の符号を用いている。
図6A乃至図6Cを参照して、マグネシウム鋳物の封孔処理について説明する。上述の実施形態のマグネシウム鋳物のHIP処理方法は、封孔処理を施したマグネシウム鋳物に対しても適用可能である。なお、封孔処理自体は、公知の技術である。図6Aは、HIP処理装置1の概略側方断面図であり、封孔処理が施されていないマグネシウム鋳物のHIP処理中の状態を示す図である。図6Bは、HIP処理装置1の概略側方断面図であり、HIP処理後の状態を示す図である。図6Cは、HIP処理装置1の概略側方断面図であり、封孔処理が施されているマグネシウム鋳物のHIP処理中の状態を示す図である。なお、図6A乃至図6Cにおいて、図1Aおよび図1Bに記載の構成要素と同じ機能を有する構成要素については、図1Aおよび図1Bにおける符号と同一の符号を用いている。
(封孔処理を行う理由)
マグネシウム鋳物200は、成型時に、微細な隙間210Bが形成されやすい。当該微細な隙間210Bの一部は、マグネシウム鋳物200の表面220に達するとともに、空孔に連通している。空孔のうち、隙間210Bを介して、表面220に繋がっている空孔を、表面連結空孔210Aと定義する。表面連結空孔210A以外の空孔を、表面非連結空孔210Cと定義する。なお、表面220から近い位置(換言すれば、浅い位置)にある内部欠陥ほど、表面連結空孔210Aとなる可能性が高い。反対に、表面220から遠い位置(換言すれば、深い位置)にある内部欠陥ほど、表面非連結空孔210Cとなる可能性が高い。
マグネシウム鋳物200は、成型時に、微細な隙間210Bが形成されやすい。当該微細な隙間210Bの一部は、マグネシウム鋳物200の表面220に達するとともに、空孔に連通している。空孔のうち、隙間210Bを介して、表面220に繋がっている空孔を、表面連結空孔210Aと定義する。表面連結空孔210A以外の空孔を、表面非連結空孔210Cと定義する。なお、表面220から近い位置(換言すれば、浅い位置)にある内部欠陥ほど、表面連結空孔210Aとなる可能性が高い。反対に、表面220から遠い位置(換言すれば、深い位置)にある内部欠陥ほど、表面非連結空孔210Cとなる可能性が高い。
マグネシウム鋳物200をHIP処理する際に、表面連結空孔210Aには、圧力媒体が流入する。このため、表面連結空孔210Aは、表面210に作用する圧力媒体の圧力によって、潰されない。その結果、図6Bに示されるように、表面連結空孔210Aは、HIP処理によって除去されず、HIP処理後も残存する。残存する表面連結空孔210Aは、HIP処理後のマグネシウム鋳物200’の強度を低下させる要因となる。また、残存する表面連結空孔210Aは、水分等の進入により、HIP処理後のマグネシウム鋳物200’の腐食を進行させる要因となる。
(封孔処理を利用した表面連結空孔の除去)
図6Cに、表面連結空孔210Aを除去する方法の一例を示す。図6Cの例では、マグネシウム鋳物200が、例えば金属製の膜状部材、すなわち、カプセル230によって封入されている。カプセル230の存在により、表面連結空孔210Aには、圧力媒体が進入しない。このため、表面連結空孔210Aは、カプセル230を介して作用する圧力媒体によって、潰される。その結果、表面連結空孔210Aは、HIP処理によって除去される。なお、カプセル封入は、主として、焼結材料等のHIP処理で使用される技術である。本実施形態は、公知のカプセル封入の技術を上述の実施形態のマグネシウム鋳物200のHIP処理に転用したものである。ただし、カプセル封入を複雑な形状の鋳物に適用する場合、カプセルの製造コストが高コストとなる可能性がある。
図6Cに、表面連結空孔210Aを除去する方法の一例を示す。図6Cの例では、マグネシウム鋳物200が、例えば金属製の膜状部材、すなわち、カプセル230によって封入されている。カプセル230の存在により、表面連結空孔210Aには、圧力媒体が進入しない。このため、表面連結空孔210Aは、カプセル230を介して作用する圧力媒体によって、潰される。その結果、表面連結空孔210Aは、HIP処理によって除去される。なお、カプセル封入は、主として、焼結材料等のHIP処理で使用される技術である。本実施形態は、公知のカプセル封入の技術を上述の実施形態のマグネシウム鋳物200のHIP処理に転用したものである。ただし、カプセル封入を複雑な形状の鋳物に適用する場合、カプセルの製造コストが高コストとなる可能性がある。
マグネシウム鋳物200をカプセル230に封入するのに代えて、マグネシウム鋳物200の表面の一部に皮膜を形成してもよい。皮膜形成方法の一例として、例えば、めっき処理、ガラス蒸着、PVD、CVD、スパッタリング、溶射、溶接、含浸(含浸封孔)がある。めっきが施された領域においては、表面連結空孔210Aに、圧力媒体が進入しない。このため、表面連結空孔210Aは、圧力媒体によって潰される。その結果、表面連結空孔210Aは、HIP処理によって除去される。
マグネシウム鋳物200をカプセル230に封入するのに代えて、マグネシウム鋳物200の表面を機械加工することによって、表面連結空孔210Aを塞いでもよい。機械加工としては、例えば、ピーニング加工、または、バニシング加工が挙げられる。ピーニング加工は、被加工物の表面を工具、投射材等により叩いて被加工物の表面処理を行う加工である。バニシング加工は、被加工物の表面をローラ等により押圧することにより、被加工物の表面を平滑化させる加工である。機械加工によって塞がれた表面連結空孔210Aには、圧力媒体が進入しない。このため、表面連結空孔210Aは、圧力媒体によって潰される。その結果、表面連結空孔210Aは、HIP処理によって除去される。
(封孔処理を利用しない表面連結空孔の除去)
図6Dに、表面連結空孔210Aを除去する方法の一例を示す。図6Dには、図6Aに示されるHIP処理装置1によってHIP処理された後のマグネシウム鋳物200’が記載されている。図6Dを参照すると、表面連結空孔210Aは、マグネシウム鋳物200’の表面近傍の領域に偏って存在することが把握される。他方、マグネシウム鋳物200’の表面から遠い領域、すなわち、中央領域に存在する空孔は、隙間210Bを介して表面220’に達している確率が低い。このため、中央領域に存在する空孔は、HIP処理によって除去されている可能性が高い。以上を考慮すると、HIP処理後のマグネシウム鋳物200’の表面領域(すなわち、表面近傍の領域)を切削加工等により除去すれば、表面連結空孔210Aは、概ね除去されるといえる。
図6Dに、表面連結空孔210Aを除去する方法の一例を示す。図6Dには、図6Aに示されるHIP処理装置1によってHIP処理された後のマグネシウム鋳物200’が記載されている。図6Dを参照すると、表面連結空孔210Aは、マグネシウム鋳物200’の表面近傍の領域に偏って存在することが把握される。他方、マグネシウム鋳物200’の表面から遠い領域、すなわち、中央領域に存在する空孔は、隙間210Bを介して表面220’に達している確率が低い。このため、中央領域に存在する空孔は、HIP処理によって除去されている可能性が高い。以上を考慮すると、HIP処理後のマグネシウム鋳物200’の表面領域(すなわち、表面近傍の領域)を切削加工等により除去すれば、表面連結空孔210Aは、概ね除去されるといえる。
図6Dの例では、鎖線240で示される境界面の一方側の領域、すなわち表面領域240Aが、切削加工等によって除去されている。表面領域240Aの除去により、他方側の領域240Bにおける除去後表面240Cには、欠陥(例えば、空孔、隙間等)が残存する可能性が低い。なお、後述の実験例により、表面領域の除去深さD1(換言すれば、除去前の表面220’と除去後表面240Cとの間の距離であって、除去前の表面210’に垂直な方向における距離)は、3mm以上であることが好ましいことが把握される。除去後表面240Cに、欠陥が残存する確率をより減少させるためには、例えば、除去深さD1は、4mm以上、5mm以上、または、6mm以上とすればよい。なお、除去深さD1は、例えば、20mm以下である。除去深さが20mmを超えると、表面領域を除去する切削工程等に時間を要する。
除去後表面240Cには、欠陥(例えば、空孔、隙間等)の残存する可能性が低い。このため、除去後表面240Cを、シール部材を配置するシール面としてもよい。すなわち、除去後表面240C上にシール部材(図示されず)を配置するシール部材配置工程を備えていてもよい。除去後表面240Cを、シール面として用いる場合、シール面を介して流体が漏れるリスクが低減される。
代替的に、図6Eに記載の例では、マグネシウム鋳物200’の表面領域全体が除去されている。表面領域340Aの除去により、中央側の領域340Bの内部、および、中央側の領域340Bにおける除去後表面340Cには、欠陥(例えば、空孔、隙間等)が残存する可能性は低い。除去後表面340Cに、欠陥が残存する確率をより減少させるためには、例えば、除去深さD1は、3mm以上、4mm以上、5mm以上、または、6mm以上とすればよい。なお、除去深さD1は、例えば、20mm以下である。
図6Dおよび図6Eに記載の例では、HIP処理工程では除去されなかった材料表層近傍(すなわち、マグネシウム鋳物200’の表層近傍)の表面連結空孔210Aが、効果的に除去される。
(実験例1)
表面から深さ3mmの位置に複数の空孔を有するマグネシウム鋳物を準備した。当該マグネシウム鋳物を192Mpaの圧力、400℃の温度で、4時間にわたってHIP処理したところ、空孔の除去率は、88%であった。なお、マグネシウム鋳物中には、多くの微細な隙間が存在する。全体のうちの12%の空孔は、隙間を介して表面とつながっていたため、HIP処理によって除去されなかったと考えられる。他方、全体のうちの88%の空孔は、表面とつながっていなかったため、HIP処理によって除去されたと考えられる。このことから、除去深さD1を3mm以上とすれば、残存する表面連結空孔は、相当程度減少することが把握される。
表面から深さ3mmの位置に複数の空孔を有するマグネシウム鋳物を準備した。当該マグネシウム鋳物を192Mpaの圧力、400℃の温度で、4時間にわたってHIP処理したところ、空孔の除去率は、88%であった。なお、マグネシウム鋳物中には、多くの微細な隙間が存在する。全体のうちの12%の空孔は、隙間を介して表面とつながっていたため、HIP処理によって除去されなかったと考えられる。他方、全体のうちの88%の空孔は、表面とつながっていなかったため、HIP処理によって除去されたと考えられる。このことから、除去深さD1を3mm以上とすれば、残存する表面連結空孔は、相当程度減少することが把握される。
(実験例2)
表面から深さ6mmの位置に複数の空孔を有するマグネシウム鋳物を準備した。当該マグネシウム鋳物を192Mpaの圧力、400℃の温度で、4時間にわたってHIP処理したところ、空孔の除去率は、100%であった。表面から深さ6mmの位置に位置する複数の空孔は、表面とつながっていなかったため、HIP処理によって除去されたと考えられる。このことから、除去深さD1を6mm以上とすれば、残存する表面連結空孔は、より一層減少することが把握される。
表面から深さ6mmの位置に複数の空孔を有するマグネシウム鋳物を準備した。当該マグネシウム鋳物を192Mpaの圧力、400℃の温度で、4時間にわたってHIP処理したところ、空孔の除去率は、100%であった。表面から深さ6mmの位置に位置する複数の空孔は、表面とつながっていなかったため、HIP処理によって除去されたと考えられる。このことから、除去深さD1を6mm以上とすれば、残存する表面連結空孔は、より一層減少することが把握される。
(マグネシウム鋳物の適用例)
図7に、マグネシウム鋳物の適用例を示す。図7は、ヘリコプターの概略側方断面図である。ヘリコプター1000は、ヘリコプター本体1100と、ギアボックス1200と、ローター1300と、ブレード1400とを含む。ギアボックス1200は、駆動源からの動力をローター1300に伝達し、ブレード1400を回転させる。ヘリコプター本体1100は、ギアボックス1200を介して、ローター1300に連結されている。ヘリコプター1000の飛行時には、ブレード1400によって発生する揚力は、ローター1300を介してギアボックス1200に作用する。他方、ヘリコプター本体にかかる重力は、ギアボックス1200によって支えられることとなる。すなわち、ギアボックス1200には、大きな荷重が作用する。
図7に、マグネシウム鋳物の適用例を示す。図7は、ヘリコプターの概略側方断面図である。ヘリコプター1000は、ヘリコプター本体1100と、ギアボックス1200と、ローター1300と、ブレード1400とを含む。ギアボックス1200は、駆動源からの動力をローター1300に伝達し、ブレード1400を回転させる。ヘリコプター本体1100は、ギアボックス1200を介して、ローター1300に連結されている。ヘリコプター1000の飛行時には、ブレード1400によって発生する揚力は、ローター1300を介してギアボックス1200に作用する。他方、ヘリコプター本体にかかる重力は、ギアボックス1200によって支えられることとなる。すなわち、ギアボックス1200には、大きな荷重が作用する。
上述の実施形態における、HIP処理後のマグネシウム鋳物(100’、200’)は、軽量である。また、上述の実施形態における、HIP処理後のマグネシウム鋳物(100’、200’)は、内部欠陥が少ないために高強度である。ヘリコプター1000のギアボックス1200のハウジングに、上述の実施形態におけるHIP処理後のマグネシウム鋳物(100’、200’)を採用した場合、ヘリコプター全体の重量が低減される。また、ギアボックス1200のハウジングが高強度であるために、ヘリコプターの信頼性が向上する。
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。
1 :HIP処理装置
10 :圧力容器
12 :容器部
14 :蓋部
20 :圧力媒体導入路
22 :バルブ
30 :支持部材
32 :基台
34 :支持プレート
40 :加熱装置
50 :内部空間
100 :マグネシウム鋳物
100’ :マグネシウム鋳物
110 :内部欠陥
110A :空孔
110B :隙間
130 :水分
200 :マグネシウム鋳物
200’ :マグネシウム鋳物
210 :表面
210’ :表面
210A :表面連結空孔
210B :隙間
210C :表面非連結空孔
220 :表面
220’ :表面
230 :カプセル
240 :鎖線
240A :表面領域
240C :除去後表面
340A :表面領域
340C :除去後表面
1000 :ヘリコプター
1100 :ヘリコプター本体
1200 :ギアボックス
1300 :ローター
1400 :ブレード
10 :圧力容器
12 :容器部
14 :蓋部
20 :圧力媒体導入路
22 :バルブ
30 :支持部材
32 :基台
34 :支持プレート
40 :加熱装置
50 :内部空間
100 :マグネシウム鋳物
100’ :マグネシウム鋳物
110 :内部欠陥
110A :空孔
110B :隙間
130 :水分
200 :マグネシウム鋳物
200’ :マグネシウム鋳物
210 :表面
210’ :表面
210A :表面連結空孔
210B :隙間
210C :表面非連結空孔
220 :表面
220’ :表面
230 :カプセル
240 :鎖線
240A :表面領域
240C :除去後表面
340A :表面領域
340C :除去後表面
1000 :ヘリコプター
1100 :ヘリコプター本体
1200 :ギアボックス
1300 :ローター
1400 :ブレード
Claims (10)
- マグネシウム鋳物のHIP処理方法であって、
マグネシウムを主原料とする前記マグネシウム鋳物を準備する工程と、
前記マグネシウム鋳物を、圧力媒体を用いてHIP処理するHIP処理工程と
を具備し、
前記マグネシウム鋳物は、
Mgの含有量が70重量%以上96重量%以下であり、
Znの含有量が0.2重量%以上5重量%以下、または、ジジミウムの含有量が1.75重量%以上2.5重量%以下であり、
Gdの含有量が0重量%以上2重量%以下であり、
前記HIP処理工程は、Mg−Zn合金の共晶点またはMg−ジジミウム合金の共晶点における共晶温度を超え、かつ、前記Mg−Zn合金またはMg−ジジミウム合金の融点未満の処理温度で実施され、
前記マグネシウム鋳物の材料は、ZE41、EV31A、または、QE22を含む
HIP処理方法。 - 前記HIP処理工程は、Mg−Zn合金の共晶点における共晶温度である339℃を超える処理温度で実施される
請求項1に記載のHIP処理方法。 - 前記HIP処理工程は、380℃以上420℃未満の処理温度で実施される
請求項1又は2に記載のHIP処理方法。 - 前記HIP処理工程は、前記Mg−Zn合金の共晶点における共晶温度である339℃を超え、かつ、400℃未満の処理温度で実施される
請求項1又は2に記載のHIP処理方法。 - 前記HIP処理工程の前に、前記マグネシウム鋳物の表面に達する表面連結空孔を塞ぐ工程を備える
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のHIP処理方法。 - マグネシウム鋳物のHIP処理方法であって、
マグネシウムを主原料とする前記マグネシウム鋳物を準備する工程と、
前記マグネシウム鋳物を、圧力媒体を用いてHIP処理するHIP処理工程と
を具備し、
前記マグネシウム鋳物は、
Mgの含有量が70重量%以上96重量%以下であり、
Znの含有量が0.2重量%以上5重量%以下、または、ジジミウムの含有量が1.75重量%以上2.5重量%以下であり、
Gdの含有量が0重量%以上2重量%以下であり、
前記HIP処理工程は、Mg−Zn合金の共晶点またはMg−ジジミウム合金の共晶点における共晶温度以上、かつ、前記Mg−Zn合金またはMg−ジジミウム合金の融点未満の処理温度で実施され、
前記HIP処理工程の後に、HIP処理後の前記マグネシウム鋳物の表面領域の少なくとも一部を除去することにより表面連結空孔を除去する除去工程を備える
HIP処理方法。 - 前記除去工程は、3mm以上20mm以下の除去深さで、前記表面領域を除去する
請求項6に記載のHIP処理方法。 - マグネシウム鋳物のHIP処理方法であって、
マグネシウムを主原料とする前記マグネシウム鋳物を準備する工程と、
前記マグネシウム鋳物を、圧力媒体を用いてHIP処理するHIP処理工程と
を具備し、
前記マグネシウム鋳物は、
Mgの含有量が70重量%以上96重量%以下であり、
Znの含有量が0.2重量%以上5重量%以下、または、ジジミウムの含有量が1.75重量%以上2.5重量%以下であり、
Gdの含有量が0重量%以上2重量%以下であり、
前記HIP処理工程は、Mg−Zn合金の共晶点またはMg−ジジミウム合金の共晶点における共晶温度以上、かつ、前記Mg−Zn合金またはMg−ジジミウム合金の融点未満の処理温度で実施され、
前記HIP処理工程の後に、HIP処理後の前記マグネシウム鋳物の表面にシール面を形成するシール面形成工程を備え、
前記シール面形成工程は、3mm以上20mm以下の除去深さで、HIP処理後の前記マグネシウム鋳物の表面領域を除去する工程を含む
HIP処理方法。 - ヘリコプターのギアボックスの製造方法であって、
前記ギアボックスは、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のHIP処理方法を用いて形成される
ヘリコプターのギアボックスの製造方法。 - 前記マグネシウム鋳物は、Gdを含まない
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のHIP処理方法。
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