JP5863492B2 - アルミ複合板の製造方法 - Google Patents
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Description
このように十分な接合強度が得られていないアルミ板材同士に対して、次のパスで圧下率が10%以上となるような強い加工を加えると、アルミ板材がそり返るなどして初期のパスでせっかく接合されたアルミ板材同士が剥離してしまう場合がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、複数行われるパスのうち初期のパスからアルミ板材同士の接合強度を高めることができ、1パスあたりの圧下量を大きくとって圧延効率(生産性)を向上することが可能なアルミ複合板の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明のアルミ複合板の製造方法は、複数のアルミ板材を重ね合わせ、重ね合わせた複数のアルミ板材を所定の温度に加熱して圧延し、前記複数のアルミ板材が互いに接合された複合板を製造するアルミ複合板の製造方法であって、互いに重ね合わせるアルミ板材の間に、複数の金属粒子を予め配設しておき、圧延を行うことを特徴とするものである。
接合し、複数行われるパスのうち初期のパスからアルミ板材同士の接合強度を飛躍的に高めることができる。その結果、1パスあたりの圧下量を大きくとることが可能となり、圧延効率(生産性)を向上させることも可能となる。
なお、前記複数の金属粒子は、前記アルミ板材の重ね合わせ面に対して位置固定状態となって、前記アルミ板材の間に配設されているのが好ましい。
というのも、アルミ板材の表面に金属粒子を載せただけで圧延接合しようとすると、実際の生産ラインで金属粒子が脱落したり飛び散ったりする虞があり、実生産に十分に対応できないからである。
また、例えば前記金属粒子をアルミ板材の表面に押し付けて当該表面に埋め込むことにより、当該金属粒子をアルミ板材の間に配設することもできるし、前記金属粒子を液状の金属粒子固定剤と共にアルミ板材の間に配設することもできる。
また、本発明に係るアルミ複合板の製造方法の最も好ましい形態は、複数のアルミ板材を重ね合わせ、重ね合わせた複数のアルミ板材を所定の温度に保持しつつ圧延し、前記複数のアルミ板材が互いに接合された複合板を製造するアルミ複合板の製造方法であって、互いに重ね合わせるアルミ板材の間に、複数の金属粒子を予め配設しておき、圧延を行うものであって、前記複数の金属粒子は、前記アルミ板材の重ね合わせ面に対して位置固定状態となって、前記アルミ板材の間に配設されていて、前記金属粒子を捕捉すると共に当該金属粒子の平均粒径よりも薄く形成されたシート部材を、アルミ板材の間に配設することを特徴とする。
図1(b)及び図1(c)に示すように、圧延接合工程5は、複数枚のアルミ板材2を互いに重ね合わせ、重ね合わせた状態のまま複数枚のアルミ板材2を所定の温度に保持し
、所定の温度に保持された複数枚のアルミ板材2を重ね合わせられたまま所定の圧延荷重を加えて圧延するものである。このとき、圧延荷重や圧延温度が後述するような所定の範囲になっていれば、互いのアルミ板材2の接合面6同士が接合され、1枚のアルミ複合板1(アルミクラッド材)として成形される。
アルミ複合板1を構成する複数枚のアルミ板材2は、少なくともいずれか一方の表面が接合面6とされていて、互いに接合面6同士を対面させるようにして重ね合わされる。このようにして重ね合わされたアルミ板材2の接合面6同士を圧延接合するためには、アルミ板材2同士を所定の保持温度に保持すると共に所定の圧延荷重で押圧する必要がある。
上述のようにして所定の保持温度及び所定の圧延荷重を加えることにより、複数枚のアルミ板材2を互いに圧延接合することが可能となる。
ただ、アルミ板材2はさまざまな材質や厚みを選択しうるため、合金や板厚によっては圧延条件が非常にシビアなものになってしまうことがある。例えば、アルミ板材2の保持温度や圧延荷重の範囲が非常に狭い範囲に設定されていると、実際にラインで生産する際に温度や荷重がばらついて設定した範囲から外れ、接合不良などの欠陥が発生する可能性がある。
そこで、本発明のアルミ複合板1の製造方法では、圧延条件の最適化だけでなく金属粒子3のアンカー効果を併用することで、圧延接合での接合性を更に高めているのである。具体的には、本発明のアルミ複合板1の製造方法では、上述した圧延接合のための工程とは別に、図1(a)に示されるようなアルミ板材2の間に複数の金属粒子3を予め配設する金属粒子配設工程4を設けている。
(1)鉄または鉄の酸化物の粒子
(2)アルミ合金またはアルミナ
を用いることができる。
このようにアルミ板材2のアルミとの間に金属間化合物を形成する鉄または鉄の酸化物を金属粒子3とすれば、金属粒子3がアルミ板材2に食い込んでアルミ板材2同士を物理的につなぎ止める物理的なアンカー効果だけでなく、アルミ板材2同士を金属間化合物で繋ぎ合わせる化学的なアンカー効果をも発揮させることができる。その結果、1回の圧延パスでもアルミ板材2同士が接合性良く接合し、複数行われるパスのうち初期のパスからアルミ板材2同士の接合強度を飛躍的に高めることができる。
特に、アルミ板材2の間に配設された鉄または鉄の酸化物の金属粒子3は、アルミ板材2の接合面6の強度を増加させアルミ板材2の変形を抑制するという作用も有する。このようにアルミ板材2の変形を抑制できれば、圧下率を大きくすることができない接合性の低いアルミ板材2の圧延接合においても圧下率を飛躍的に向上させることが可能となる。
一方、(2)の金属粒子3の内、アルミ合金に関しては、JIS−A1000系(純アルミ系)以外のアルミ合金、例えばJIS−A2000系(Al−Cu系)、A3000系(Al−Mn系)、A4000系(Al−Si系)、A5000系(Al−Mg系)、A6000系(Al−Mg−Si系)もしくはA7000系(Al−Zn系)から形成されている。
また、上述のようにして得られたアルミ複合板1の製品は、アルミ板材2が強い接合強度で接合されており、アルミ板材2の剥離を起こす心配がない。それゆえ、1パスあたり
の圧下量を大きくとることが可能となり、圧延効率(生産性)を向上させることも可能となる。
上述したようなアルミ板材2同士の確実な接合効果が期待できる金属粒子3の平均粒径としては、アルミの場合は20〜300μmが好ましいことを本発明者らは知見している。これは、JIS Z8801に規定されるメッシュで#50〜#640程度のふるいを用いて粒度を調整したものである。金属粒子3の平均粒径を20μm以上とすることで、金属粉子の爆発や舞い上がりなどを抑制しつつ圧延接合することが可能になる。また、金属粒子3の平均粒径を300μm以下に抑えることで、製品であるアルミ複合板1の機械特性に悪影響が出にくくなる。
図2に示すように、金属粒子3の平均粒径より薄く形成されたシート部材8を用いて金属粒子3を捕捉し、このシート部材8を捕捉した金属粒子3ごとアルミ板材2の間に配設することができる。
図2(b)に示すように、金属粒子3が上面に散布されたシート部材8を、互いに接合面6を対面させた上下一対のアルミ板材2の間に配備する。そして、図2(c)に示すように、上下一対のアルミ板材2の間にシート部材8を挟み込むようにして、重ね合わせる。
上述のようにシート部材8を用いて金属粒子3をアルミ板材2の重ね合わせ面(接合面
6)に対して位置固定すれば、シート部材8が金属粒子3の粒径より薄いため、小さい圧下量の場合でも金属粒子3をアルミ板材2の重ね合わせ面の双方に確実に接触させることが可能となり、金属粒子3による変形防止の効果を得ることが可能となる。
なお、上述した例はシート部材8にアルミ箔やアルミ合金箔を用いたものであったが、シート部材8に用いる材料はアルミ系の材料でなくても良いし、金属箔でなくても良い。例えば、加熱炉で焼失するのであれば、シート部材8に紙などを用いても良い。また、製造されたアルミ複合板1の材料特性や機械的特性が許容範囲内におさまるのであれば、アルミ以外の金属箔をシート部材8に用いることも可能である。
具体的には、図3(a)に示すように、まず接合しようとする2枚のアルミ板材2のうち、一方のアルミ板材2を接合面6を上方に向けて水平に寝かした状態にし、接合面6の上方から金属粒子3を振りかけるようにして散布する。
図3(c)に示すように、接合面6に金属粒子3が埋め込まれたアルミ板材2の上方から別のアルミ板材2を重ね合わせ、上下のアルミ板材2の間に金属粒子3が配設されるようにして圧延接合する。そうすると、図3(d)に示すようなアルミ複合板1を得ることができる。
なお、上述した例では、ローラを用いて金属粒子3をアルミ板材2に埋め込むやり方を例示したが、例えばプレスなどを用いて金属粒子3をアルミ板材2に埋め込むこともできる。また、接合しようとするアルミ板材2のうち、一方のアルミ板材2が硬質、他方が軟質である場合は、アルミ板材2が柔らかすぎると金属粒子3が埋没して変形防止の効果が低下してしまう可能性があるため、金属粒子3を硬質なアルミ板材2に押し付けるのが好ましい。
具体的には、図4(a)に示すように、予め混練装置などを用いて金属粒子3が分散された液状の金属粒子固定剤9を用意する。この金属粒子固定剤9は、熱可塑性を備えた接着剤または粘着剤(疑似接着剤)であり、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂などを用いた合成接着剤、膠やデンプン糊のような天然接着剤などの有機系接着剤を用いることができる。また、この金属粒子固定剤9には、熱可塑性以外の接着剤を用いても良い。この金属粒子固定剤9は、内部に金属粒子3を分散させた状態でアルミ板材2の表面に塗布され、接合面6の上に金属粒子3を均等に配備可能となっている。
図4(c)に示すように、金属粒子3が液状の金属粒子固定剤9と一緒に塗布されたアルミ板材2の上方から別のアルミ板材2を近づけ、互いの接合面6を上下に対面させた状態でアルミ板材2同士を圧延接合する。そうすると、図4(d)に示すようなアルミ複合板1を得ることができる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
2 アルミ板材
3 金属粒子
4 金属粒子配設工程
5 圧延接合工程
6 接合面
7 固定手段
8 シート部材
9 金属粒子固定剤
Claims (5)
- 複数のアルミ板材を重ね合わせ、重ね合わせた複数のアルミ板材を所定の温度に保持しつつ圧延し、前記複数のアルミ板材が互いに接合された複合板を製造するアルミ複合板の製造方法であって、
互いに重ね合わせるアルミ板材の間に、複数の金属粒子を予め配設しておき、圧延を行うものであって、
前記複数の金属粒子は、前記アルミ板材の重ね合わせ面に対して位置固定状態となって、前記アルミ板材の間に配設されていて、
前記金属粒子を捕捉すると共に当該金属粒子の平均粒径よりも薄く形成されたシート部材を、アルミ板材の間に配設することを特徴とするアルミ複合板の製造方法。 - 前記シート部材が、アルミまたはアルミ合金の箔であることを特徴とする請求項1に記載のアルミ複合板の製造方法。
- 前記金属粒子をアルミ板材の表面に押し付けて当該表面に埋め込むことにより、当該金属粒子をアルミ板材の間に配設することを特徴とする請求項1に記載のアルミ複合板の製造方法。
- 前記金属粒子を、液状の金属粒子固定剤と共に、互いに重ね合わせるアルミ板材の間に配設することを特徴とする請求項1に記載のアルミ複合板の製造方法。
- 前記金属粒子が、鉄、アルミ、アルミ合金またはアルミナの粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミ複合板の製造方法。
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