JP5863474B2 - メルトブローン不織布、その用途、及びその製造方法 - Google Patents

メルトブローン不織布、その用途、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軽量・薄肉で均一性とリサイクル性に優れ、且つ吸音性能に優れる吸音材に好適なメルトブローン不織布、その用途、及びその製造方法に関する。
住宅、オフィス等の住環境あるいは航空機、車両、自動車等の輸送手段には、外部からの騒音を遮断したり、内部からの音響を外部に漏らさないなどの目的で、空気層を含むポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡体、フェルト、不織布等の繊維状物からなる吸音材が広く用いられている。これらの吸音材はその要求性能によって使い分けがなされており、通気性や軽量性・経済性などの必要性から、不織布等の繊維状物が用いられている。
特に、自動車等の輸送手段は、より軽量で且つ吸音性能に優れる吸音材が求められることから、吸音性能を改良する方法として、吸音材に他の層を積層して用いること、例えば、メルトブローン不織布とニードルパンチ不織布を積層した積層体を音源側にメルトブローン不織布を設置する方法(特許文献1参照)、あるいは、メルトブローン極細繊維と難燃性短繊維を一体化して得られた難燃性メルトブローン不織布シートとシート材料とを接着する方法(特許文献2)などが提案されている。
しかしながら、いずれの方法も他の材料と積層して用いることから、軽量化や省スペース化に課題を残すこととなっている。
一方、ノズル孔Aの孔径とノズル孔Bの孔径に比R(Da/Db)が1.3〜2.0であるメルトブロー不織布用ノズルピースを用いて、細繊維と太繊維を混合してなるメルトブローン不織布を製造することが提案されている(特許文献3)が、かかるノズルピースを用いて得られるメルトブローン不織布も吸音性能に劣る。
特開2002−200687号公報 特開平6−212546号公報 特開平11−131353号公報
本発明は、更なる軽量化の要望に応えるために、吸音性能に優れ、且つ、軽量化を図れるメルトブローン不織布を開発することを目的とする。
本発明は、熱可塑性樹脂繊維からなるメルトブローン不織布であって、その繊維が、1μm以下の繊維径積算頻度が5%以上、10μm以上の繊維径積算頻度が0.1〜5%の範囲にあるメルトブローン不織布、当該メルトブローン不織布からなる吸音材、ノズル孔径が0.07〜0.3mmの範囲にあるノズル(小孔径ノズル)とノズル孔径が0.5〜1.2mmの範囲にあるノズル(大孔径ノズル)を有し、小孔径ノズルと大孔径ノズルの孔径の比(大孔径ノズル/小孔径ノズル)が2を超え、及び、小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)が3〜20の範囲にあるメルトブローン用紡糸ノズル、及び当該メルトブローン用紡糸を用いて溶融した熱可塑性樹脂を紡糸し、紡糸された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流として紡糸し、捕集装置で極細繊維ウエブとすることを特徴とするメルトブローン不織布の製造方法である。
本発明のメルトブローン不織布は、繊維径が1μm以下の繊維を多く含むので、1000〜6000Hzの領域の吸音率が高いことから、メルトブローン不織布のみを用いても吸音材として十分用い得えるので、吸音材として用いた場合の軽量化や薄肉化が図れる。
また、他の材料と積層した場合でも、従来のメルトブローン不織布を用いた場合に比べて吸音性能に優れることから、同一の厚みでも、吸音性能に優れる。
さらに、原料として単一の熱可塑性樹脂を使用できるので、他成分の混合を由来とする不都合、すなわち混合バラつき、粉塵、リサイクル上の不都合を生じることのない優れる特徴を有している。
本発明のメルトブローン不織布の製造方法は、特定の範囲にある小孔径ノズルと大孔径ノズルの有するメルトブローン用紡糸ノズルを用いるので、繊維径が異なる繊維を含むメルトブローン不織布を容易に製造することができる。
<熱可塑性樹脂>
本発明のメルトブローン不織布の原料となる熱可塑性樹脂は、不織布を形成し得る熱可塑性樹脂であれば、特に限定はされず、種々公知の熱可塑性樹脂、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテン等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体であるポリオレフィン〔高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1−ブテンランダム共重合体等のエチレンの単独重合体あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体等のエチレン系重合体;プロピレンの単独重合体(所謂ポリプロピレン)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(所謂ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等のプロピレン系重合体;1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体等の1−ブテン系重合体;ポリ4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体あるいは4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系重合体〕、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマーあるいはこれらの混合物等を例示することができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料、柔軟剤、親水剤、助剤、撥水剤、フィラー、抗菌剤等の種々公知の添加剤を加えておいてもよい。
これら熱可塑性樹脂の中でも、成形時の紡糸安定性や不織布の加工性及び通気性、柔軟性、軽量性、耐熱性の観点から、ポリオレフィンが好ましく、これらポリオレフィンの中でも、耐熱性、軽量性の面から、プロピレン系重合体および4-メチル-1−ペンテン系重合体が好ましく、さらには、プロピレン系重合体および4-メチル-1−ペンテンとプロピレンとからなる共重合体が好ましい。
<プロピレン系重合体>
本発明に係るプロピレン系重合体としては、通常、融点(Tm)が125℃以上、好ましくは130〜165℃の範囲にあるプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと極少量のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上(但し、プロピレンを除く)、好ましくは2〜8の1種または2種以上のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。
プロピレン系重合体は、溶融紡糸し得る限り、メルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、230℃、荷重2160g)は特に限定はされないが、通常、10〜4000g/10分、好ましくは、50〜3000g/10分、さらに好ましくは100〜2000g/10分の範囲にある。
<4−メチル−1−ペンテン系重合体>
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体としては、通常、融点(Tm)が150℃以上、好ましくは160〜250℃の範囲にある4−メチル−1−ペンテン単独重合体、若しくは4−メチル−1−ペンテンと炭素数2〜20のα−オレフィン(但し、4−メチル−1−ペンテンを除く)、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。
これらα−オレフィンの中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンが好ましく、特に、プロピレンが好ましい。
本発明の係る4−メチル−1−ペンテン系重合体は、溶融紡糸し得る限り、メルトフローレート(MFR:ASTMD−1238、260℃、荷重2160g)は特に限定はされないが、通常、10〜4000g/10分、好ましくは、50〜3000g/10分、さらに好ましくは100〜2000g/10分の範囲にある。
本発明の係る4−メチル−1−ペンテン系重合体は、従来公知の触媒、例えば、バナジウム系触媒、チタン系触媒、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報あるいは特開平02−41303号公報中に記載のメタロセン触媒などを用いて、4−メチル−1−ペンテンと、必要に応じて前記炭素数2〜20のオレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)や前記他の重合性化合物を重合することにより得ることができる。
<メルトブローン不織布>
本発明のメルトブローン不織布は、前記熱可塑性樹脂繊維からなり、1μm以下の繊維径積算頻度が5%以上、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上、10μm以上の繊維径積算頻度が0.1〜5%、好ましくは0.3〜4%、より好ましくは0.5〜3%の範囲にある。
本発明のメルトブローン不織布の目付は、用いる用途に応じて種々決め得る。例えば、本発明のメルトブローン不織布を単層で吸音材に用いる場合は、通常、目付を30〜500g/m、好ましくは50〜400g/m、より好ましくは60〜300g/m、もっとも好ましくは100〜200g/mの範囲にすればよい。
また、本発明のメルトブローン不織布を後述のスパンボンド不織布などの他の層と積層して用いる場合は、通常、メルトブローン不織布の目付を、25〜450g/m、好ましくは40〜350g/m、より好ましくは50〜250g/m、もっとも好ましくは80〜200g/mの範囲にすればよい。
本発明のメルトブローン不織布を構成する前記熱可塑性樹脂繊維の平均繊維径は、通常、0.3〜10μmの範囲にある。
メルトブローン不織布における1μm以下の繊維径積算頻度については、一般的にメルトブローン不織布の製造に用いる紡糸ノズルの最小ノズル孔から紡糸された繊維の影響が支配的で、その頻度の上限については特に制限されないが、一般的には、80%程度となる。
また、メルトブローン不織布における10μm以上の繊維径積算頻度については、繊維同士が融着した場合を除けば、一般的にメルトブローン不織布の製造に用いる紡糸ノズルの最大ノズル孔から紡糸された繊維の影響が支配的である。
1μm以下の繊維径積算頻度が5%未満のメルトブローン不織布は、メルトブローン不織布に含まれる極細繊維の量が少ないので吸音材に用いた場合には、吸音性能に劣る。
また、10μm以上の繊維径積算頻度が0.1%未満のメルトブローン不織布は、メルトブローン不織布に含まれる太繊維が少なく、メルトブロー不織布の嵩高性が失われるためか、吸音材に用いた場合には、吸音性能に劣る。
一方、10μm以上の繊維径積算頻度が5%を超えるメルトブローン不織布は、嵩高性は十分に発揮されるが、メルトブローン不織布に含まれる細繊維の割合が少なくなるので、吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣る。
本発明のメルトブローン不織布の厚さは、用いる用途に応じて種々決め得る。例えば、本発明のメルトブローン不織布を吸音材を用いる場合は、通常、2〜35mm、より好ましくは3.5〜25mmの範囲にある。厚さが前記範囲にある吸音材は、軽量で且つ十分な吸音性能を有する。
本発明のメルトブローン不織布は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層と積層して用いてもよい。 本発明のメルトブローン不織布と積層される他の層は、具体的には、例えば、編布、織布、不織布、フィルム、紙製品等を挙げることができる。本発明のメルトブローン不織布と他の層を積層する(貼り合せる)場合は、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤による方法、押出しラミネート等をはじめ、種々公知の方法を採り得る。
本発明のメルトブローン不織布は、本発明の目的を損なわない範囲で、ギア加工、印刷、塗布、ラミネート、熱処理、賦型加工などの二次加工を施して用いてもよい。
<吸音材>
本発明の吸音材は、前記メルトブローン不織布を含む層からなる。本発明のメルトブローン不織布を単層で用いた場合は、後述の測定方法で測定した周波数が1000Hzの吸音率が10%以上、2000Hzの吸音率が20%以上、4000Hzの吸音率が40%以上、6000Hzの吸音率が70%以上と高い吸音性能を示す。
本発明のメルトブローン不織布を吸音材に用いる際には、上記積層の状態に応じて、音源、即ち、騒音が発生する側に対して好ましい形態で配置できる。
<メルトブローン用紡糸ノズル>
本発明のメルトブローン不織布を製造する際に用いるメルトブローン用紡糸ノズルは、ノズル孔径が0.07〜0.3mmの範囲にあるノズル(小孔径ノズル)とノズル孔径が0.5〜1.2mmの範囲にあるノズル(大孔径ノズル)を有し、小孔径ノズルと大孔径ノズルの孔径の比(大孔径ノズル/小孔径ノズル)が2を超え、及び、小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)が3〜20の範囲にある。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルは、小孔径ノズルの孔径が、0.07〜0.3mm、好ましくは0.08〜0.25mm、より好ましくは0.1〜0.2mmの範囲にある。小孔径ノズルの孔径が上記範囲よりも小さいノズルを用いた場合は、極細繊維を得る上では良好であるが、ノズル孔の加工やメンテナンスが困難となり、メルトブローン不織布を安定的に得ることができないため好ましくない。また、小孔径ノズルの孔径が上記範囲よりも大きいノズルを用いた場合は、安定的にメルトブロー不織布を得ることは出来るが、極細繊維を含むメルトブローン不織布を得ることが困難となり、その結果、得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は吸音性能に劣る。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルは、大孔径ノズルの孔径が、0.5〜1.2mm、好ましくは0.6〜1.0mm、より好ましくは0.6〜0.8mmの範囲である。大孔径ノズルの孔径が上記範囲よりも小さいノズルを用いた場合は、嵩高なメルトブローン不織布を得るに必要十分な太繊維が得られなくなり、得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣る。また、大孔径ノズルの孔径が上記範囲よりも大きいノズルを用いた場合は、嵩高なメルトブローン不織布となるが、前記小孔径ノズルの孔径との差異が極端に拡大化して、紡糸が不安定になったり、極細繊維と太繊維とのバランスが崩れて結果的に、得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣ることとなるので好ましくない。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルにおける小孔径ノズルと大孔径ノズルの孔径の比(大孔径ノズル/小孔径ノズル)は、2を超え、好ましくは3以上の範囲である。上限は特に制限されないが、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下、最も好ましくは7以下である。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルにおける小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)は、3〜20、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜12、さらに好ましくは5〜10の範囲にある。
小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)が、上記範囲より小さい場合は、メルトブローン不織布に含まれる1μm以下の繊維径積算頻度が5%未満、あるいは、10μm以上の繊維径積算頻度が5%を超えるので、得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣る。一方、小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)が、上記範囲を超える場合は、メルトブローン不織布に含まれる10μm以上の繊維径積算頻度が0.1%未満となるので、得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣る。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルを構成する小孔径ノズルと大孔径ノズルの孔径及び小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)を満たす紡糸ノズルは、通常、紡糸の安定性や極細繊維と太繊維とのバランスを勘案すれば、各ノズル孔径の間に次の関係(式1)が成り立つことが好ましい。
10≦(Dz*Nz)/(Da*Na)≦250(*)・・・式1
ここで、Dzは大孔径ノズルの孔径、Nzは大孔径ノズルの個数、Daは小孔径ノズルの孔径,及びNaは小孔径ノズルの個数とする。上限250(*)については、より好ましくは130以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下の範囲である。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルの小孔径ノズルと大孔径ノズルの配列については特に限定されるものではないが、メルトブローン用紡糸ノズルはノズル孔が一列に配列されることが多く、その場合、大孔径ノズルを均等に配列させ、その大孔径ノズルの間隙に小孔径ノズルを挿入させていく構成が好ましい。この構成をとることで、ノズル部位のどの場所をとっても比較的均一なメルトブローン不織布が得られることとなる。この場合の大孔径ノズルを1つ含み、小孔径ノズルを任意個数含むノズル孔配列の繰返し単位を「1単位」とする。
上記のノズル孔の孔数については特に限定されるものではないが、1単位について例示すると、小孔径ノズルの個数は、通常、3〜20個/単位、好ましくは4〜15個/単位、より好ましくは4〜12個/単位、最も好ましくは5〜10個/単位の範囲である。この範囲よりも小さいと、極細繊維の比率が相対的に極端に低くなり、紡糸不良を起こしたり、得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣るため好ましくない。この範囲よりも大きいと太繊維の比率が極端に低くなり嵩高なメルトブローン不織布が得られなくなり得られるメルトブローン不織布を吸音材に用いた場合は、吸音性能に劣る。
上記ノズル孔のピッチ間隔については、特に限定されないが、ノズル孔の中心間距離で示すと、一般的には小孔径ノズルについては0.5〜3mm程度、大孔径ノズルについては2〜20mm程度である。より好ましくは、小孔径ノズルについては0.8〜2mm程度、大孔径ノズルについては4〜15mm程度である。また、それぞれの孔のピッチ間隔は均等であることが好ましいが、マクロ的には上記ノズル孔配列の繰返し単位が形成されていることにより紡糸ノズル全体の均一性が担保されているため、特に限定されない。ノズル孔ピッチがこの範囲よりも小さい場合は、紡糸ノズル作成時の加工が困難となったり紡糸ノズルの機械強度が劣ったり、近接するノズル孔から紡糸された繊維同士が融着したりして紡糸不良を起こすので好ましくない。ノズル孔ピッチがこの範囲よりも大きい場合は、紡糸は安定するがメルトブローン不織布の生産性が低下したり、不織布形態を保持することが困難となるので好ましくない。
本発明のメルトブローン用紡糸ノズルの上記小孔径ノズルと大孔径ノズル以外のノズル孔については、本発明の目的を損なわない限り含んでいても構わない。
<メルトブローン不織布の製造方法>
本発明のメルトブローン不織布は、溶融した前記熱可塑性樹脂を、前記メルトブローン用紡糸ノズルを用いて紡糸し、紡糸された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流として紡糸し、捕集装置で極細繊維ウエブとし、メルトブローン不織布とすることにより、製造し得る。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
(1)目付(g/m
メルトブローン不織布から、機械方向(MD) 100mm×横方向(CD)100mmで10点採取し、平均値を算出した。
(2)厚さ(mm)
上記目付測定用試料の中央、四隅5点を測定する。50点の平均値を算出した。荷重は2g/cm(荷重面積 4cm)の厚み計を使用した。
(3)吸音性能<吸音率>
メルトブローン不織布から29mmφの円形の試験片を採取し、垂直入射吸音率測定装置〔ブリュエル&ケアー社製TYPE4206〕を用い、ASTM E 1050に準拠し、周波数1000〜6400Hzにおける試験片に平面音波が垂直に入射するときの垂直入射吸音率を測定した。得られた1000〜6400Hzの吸音率カーブから、1000Hz及び2000、4000、6000Hzの吸音率を求めた。
(4)繊維径積算頻度
メルトブローン不織布を(株)日立製作所製電子顕微鏡「S−3500N」を用いて、倍率1000倍の写真を撮影し、任意に繊維100本を選び、その繊維の幅(直径)を測定し、1μm以下の繊維径積算頻度と、10μm以上の繊維径積算頻度を百分率にて算出した。
<実施例1>
熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体〔MFR=1550g/10分(ASTM D1238に準拠し温度230℃、荷重2.16kgで測定)、PPと表記する〕を用い、小孔径ノズルとしてノズル孔径0.15mmφを5個と大孔径ノズルとしてノズル孔径0.6mmφを1個とする最小繰返し単位を持つメルトブローン用紡糸ノズルを装着したメルトブローン不織布製造装置を用い、300℃で押出し、紡糸ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(300℃、350Nm3/m/時)で細化・固化した後、この繊維を紡糸ノズルからの距離40cmで捕集して、目付:200g/mのメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。
<実施例2>
目付を変更したこと以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法で、目付が400g/mのメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1で用いたメルトブローン用紡糸ノズルに替えて、ノズル孔径0.15mmφの小孔径ノズル:10個とノズル孔径0.6mmφの大孔径ノズル:1個とする最小繰返し単位を持つメルトブローン用紡糸ノズルを用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1で用いたメルトブローン用紡糸ノズルに替えて、ノズル孔径0.2mmφの小孔径ノズル:5個とノズル孔径0.8mmφの大孔径ノズル:1個とする最小繰返し単位を持つメルトブローン用紡糸ノズルを用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例1で用いたプロピレン単独重合体に替えて4−メチル−1−ペンテン単独重合体〔MFR=3000g/10分(ASTM D1238に準拠し温度260℃、荷重2.16kgで測定)、PO1と表記する〕を用いる以外は実施例1と同様に行い、メルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。
<実施例6>
実施例1で用いたプロピレン単独重合体に替えて プロピレンと4-メチル−1−ペンテンとの共重合体〔MFR=2000g/10分(ASTM D1238に準拠し温度260℃、荷重2.16kgで測定)、PO2と表記する〕を用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1で用いたメルトブローン用紡糸ノズルに替えて、ノズル孔径が0.15mmφの小孔径ノズルのみからなるメルトブローン用紡糸ノズルを用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。得られたメルトブローン不織布は、繊維径が細かったものの厚みが薄く嵩高性に劣り、吸音性能が良好でなかった。
<比較例2>
実施例1で用いたメルトブローン用紡糸ノズルに替えて、ノズル孔径が0.6mmφの大孔径ノズルのみからなるメルトブローン用紡糸ノズルを用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。得られたメルトブローン不織布は、嵩高性には優れていた(厚みが大きい)が、繊維径が十分に細くならなかったために、吸音性能が良好でなかった。
<比較例3>
実施例1で用いたメルトブローン用紡糸ノズルに替えて、ノズル孔径0.4mmφの小孔径ノズル:2個とノズル孔径0.6mmφの大孔径ノズル:1個とする最小繰返し単位を持つメルトブローン用紡糸ノズルを用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。得られたメルトブローン不織布は、細い繊維と太い繊維の構成バランスが悪いため、吸音性能が良好でなかった。
<比較例4>
実施例1で用いたメルトブローン用紡糸ノズルに替えて、ノズル孔径0.4mmφの小孔径ノズル:2個とノズル孔径0.8mmφの大孔径ノズル:1個とする最小繰返し単位を持つメルトブローン用紡糸ノズルを用いる以外は実施例1と同様に行いメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の測定結果を表1に示す。得られたメルトブローン不織布は、嵩高性には優れていた(厚みが大きい)が、繊維径が十分に細くならなかったために、吸音性能が良好でなかった。
Figure 0005863474
本発明のメルトブローン不織布は軽量且つ吸音性能に優れるので、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機;掃除機、洗濯機、冷蔵庫、冷凍庫、乾燥機、ミキサー、エアコン、空気清浄機等の電化製品;複写機、ファクシミリ、パソコン、印刷機等のOA機器;壁材、天井材、床材等の家屋等を始め、吸音材を必要とする用途に用い得る。中でも、燃費向上を目的の一つとして、軽量化が図られている自動車の吸音材として、特に好適であり、床材、天井材、ドアパネル等に貼り合わせることにより車内の騒音を低減できる。
また、本発明のメルトブローン不織布は、上記吸音材に限らず、その軽量性を活かして従来のメルトブローン不織布が用いられている種々の用途に用い得る。例えば、エアフィルターや液体フィルターとして用いた場合は、濾過性能が高く圧力損失の低いフィルターが得られる。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂繊維からなるメルトブローン不織布であって、その繊維が、1μm以下の繊維径積算頻度が5%以上、10μm以上の繊維径積算頻度が0.5%の範囲にあるメルトブローン不織布を含んでなる吸音材
  2. 熱可塑性樹脂繊維が、プロピレン系重合体繊維である請求項1記載のメルトブローン不織布を含んでなる吸音材
  3. 熱可塑性樹脂繊維が、4−メチル−1−ペンテンと炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種との共重合体からなる繊維である請求項1記載のメルトブローン不織布を含んでなる吸音材
  4. 熱可塑性樹脂繊維が、4−メチル−1−ペンテンとプロピレンとの共重合体からなる繊維である請求項1記載のメルトブローン不織布を含んでなる吸音材
  5. ノズル孔径が0.07〜0.mmの範囲にあるノズル(小孔径ノズル)とノズル孔径が0.5〜1.2mmの範囲にあるノズル(大孔径ノズル)を有し、小孔径ノズルと大孔径ノズルの孔径の比(大孔径ノズル/小孔径ノズル)が2を超え、及び、小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)が3〜20の範囲にあり、且つ小孔径ノズルと大孔径ノズルとが、式1を満たすメルトブローン用紡糸ノズル。
    10≦(Dz 4 *Nz)/(Da 4 *Na)≦250(*)・・・式1
    ここで、Dzは大孔径ノズルの孔径、Nzは大孔径ノズルの個数、Daは小孔径ノズルの孔径,及びNaは小孔径ノズルの個数とする。
  6. 溶融した熱可塑性樹脂を、ノズル孔径が0.07〜0.mmの範囲にあるノズル(小孔径ノズル)とノズル孔径が0.5〜1.2mmの範囲にあるノズル(大孔径ノズル)を有し、小孔径ノズルと大孔径ノズルの孔径の比(大孔径ノズル/小孔径ノズル)が2を超え、及び、小孔径ノズルと大孔径ノズルの個数の比(小孔径ノズル/大孔径ノズル)が3〜20の範囲にあり、且つ小孔径ノズルと大孔径ノズルとが、式1を満たすメルトブローン用紡糸ノズルを用いて紡糸し、紡糸された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流として紡糸し、捕集装置で極細繊維ウエブとすることを特徴とするメルトブローン不織布を含んでなる吸音材の製造方法。
    10≦(Dz 4 *Nz)/(Da 4 *Na)≦250(*)・・・式1
    ここで、Dzは大孔径ノズルの孔径、Nzは大孔径ノズルの個数、Daは小孔径ノズルの孔径,及びNaは小孔径ノズルの個数とする。
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