以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.構成例
上述のように、医療・健康等の分野では常時装着等が可能な小型の分光センサー装置が求められており、分光センサー装置の小型化が必要であるという課題がある。本実施形態では、光バンドパスフィルターを用いて特定の波長帯域を測定することで、分光センサー装置の小型化を実現する。
図1(A)、図1(B)に、本実施形態の分光センサー装置の構成例を示す。本実施形態の分光センサー装置は、分光センサー100、光源110、遮光部材120、表示パネル130(表示装置)、操作入力部140を含む。なお以下では、簡単のために分光センサー装置の構成を模式的に図示し、図中の寸法や比率は実際のものとは異なる。
図1(A)は、観察対象に対向する対向面の平面視図である。図1(A)に示すように、光源110と分光センサー100は、それぞれ遮光部材120により周囲を囲まれている。この遮光部材120は、光源110から分光センサー100への直接光を遮光したり、太陽光や照明光等の外光を遮光する。遮光部材120は、例えばプラスチックや金属により実現され、分光センサー100の測定対象波長を透過しない不透明な素材により形成される。
光源110は、例えばLEDにより構成され、広波長帯域の光を観察対象に照射する。広波長帯域の光は、例えば白色光であり、分光センサー100の狭帯域(例えば数十nm)の測定波長を含む広帯域(例えば数百nm)の光である。なお、後述するように、光源110は複数の光源により構成されてもよく、その各光源が異なる測定波長の光を照射してもよい。
分光センサー100は、例えば1チップの半導体基板上に構成され、特定波長帯域の光を分光測定(検出)する。具体的には、分光センサー100は、半導体基板10、回路20、第1〜第4のフォトダイオード31〜34(広義には複数のフォトセンサー部)、第1〜第4の光バンドパスフィルター61〜64(第1〜第4の多層薄膜フィルター)を含む。
フォトダイオード31〜34は、半導体基板10上に形成され、入射光を光電変換する素子である。フォトダイオード31〜34は、それぞれ光バンドパスフィルター61〜64を透過した入射光を受光する。
光バンドパスフィルター61〜64は、例えばフォトダイオード31〜34上に形成された多層薄膜により実現され、特定波長帯域の光を透過する光学フィルターである。特定波長帯域は、測定対象の複数の帯域であり、各光バンドパスフィルターは、その測定対象の各帯域の光を透過する。例えば、測定対象の各帯域は、測定波長を含む数十nmの帯域である。
図1(B)は、図1(A)に示す分光センサー装置のAA断面図である。図1(B)に示すように、分光センサー装置の使用時において、遮光部材120の端面(対向面)が観察対象に接する。光源110と分光センサー100は、共に観察対象に対向するように設けられている。そして、光源110からの光が観察対象に照射され、観察対象からの反射光または散乱光が分光センサー100に入射する。
B1に示すように、遮光部材120は、光源110と分光センサー100の間に設けられる部材を含む。この部材は、例えば板状であり、光源と分光センサー100(フォトダイオードの受光面)を結ぶ直線に交差するように設けられる。そして、部材の一辺が使用時において観察対象に接することで、光源110から分光センサー100への直接光を遮光する。
なお、本実施形態の分光センサー装置は図1(A)、図1(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば表示パネル130、入力部140)を省略したり、他の構成要素(例えば入出力インターフェース)を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
さて上述のように、分光センサー装置では、装置の小型化が求められているという課題がある。例えば、連続スペクトルを取得する分光センサーでは、プリズム等の設置や光路長の確保により装置が大型化するという課題がある。
この点、本実施形態によれば、分光センサー装置は、検出対象となる複数の波長を含む波長帯域の光を照射する光源部110と、光源部110からの光を観察対象に照射することで得られる光が入射される分光センサー100を含む。分光センサー100は、透過波長が異なる複数の光バンドパスフィルター61〜64と、複数のフォトセンサー部31〜34を有する。例えば、第1の光バンドパスフィルター61は、第1の特定波長を透過する波長特性を有し、第1のフォトセンサー31は、第1の光バンドパスフィルター61を透過した第1の特定波長の光をセンシングする。第2の光バンドパスフィルター62は、第1の特定波長とは異なる第2の特定波長を透過する波長特性を有し、第2のフォトセンサー32は、第2の光バンドパスフィルター62を透過した第2の特定波長の光をセンシングする。
これにより、分光センサー装置の小型化等が可能になる。すなわち、光バンドパスフィルター61〜64を用いて特定波長だけを分光測定することで、プリズム等の設置や光路長の確保が不要になり、装置の小型化が可能になる。一般に、特定の用途に用いられる分光センサー装置では、測定対象の波長は既知のものであり、分析用途のような連続スペクトルの取得は必須ではない。そのため、上記手法により特定波長だけを測定し、装置を小型化することが可能になる。
ここで、観察対象とは、分光センサー装置による分光測定の対象物であり、例えば人体の皮膚や皮下組織や血液、海水等の液体、果実等の農産物、土壌等が想定される。
なお、光源部110からの光を観察対象に照射することで得られる光は、上述のように観察対象からの反射光や散乱光であってもよく、図5で後述するように、観察対象を透過した透過光であってもよい。
また、本実施形態では、光源部110からの光を観察対象に照射することで得られる反射光が分光センサー100に入射する場合に、光源部110から観察対象を介さずに分光センサー100に入射する光を遮光する遮光部材120を含む。
より具体的には、光源部110は、観察対象に対向する対向面を横切るように照明光を照射し、分光センサー100は、対向面を横切って入射する観察対象からの反射光または散乱光を受光する。そして、遮光部材120は、光源部110と分光センサー100との間に設けられる。
例えば、図1(B)で上述のように、光源部110と分光センサー100が隣り合って設置され、その光源110から分光センサー100への直接光を遮るように遮光部材(B1に示す部分)が設けられる。あるいは、図2で後述するように、光源部110の周囲に分光センサー100が設置され、その光源110の周囲を囲むように遮光部材121が設けられてもよい。
このようにすれば、光源部110から観察対象を介さずに分光センサー100に入射する光を遮光し、観察対象からの反射光や散乱光のみを分光できる。これにより、直接光によるS/N劣化を抑止できる。
ここで、上記の対向面とは、分光センサー装置の使用時において観察対象に対向すると想定される面である。例えば、図1(B)に示すように、遮光部材120の端面が観察対象に接するように形成される場合、その端面が含まれる平面が対向面である。
また、本実施形態では、分光センサー100の複数のフォトセンサー部31〜34は、観察対象に対向する対向面に対する平面視において、光源部110の第1の方向側においてアレイ状に配置される。例えば図1(A)では、第1の方向はD1に示す方向であり、複数のフォトセンサー部31〜34が光源部110の周囲でなく、ある特定の方向D1側に配置される。
また、図2で後述するように、複数のフォトセンサー部31〜34が、観察対象に対向する対向面に対する平面視において、光源部110の周囲に配置されてもよい。
また、図3、図4で後述するように、光源部110が、観察対象に対向する対向面に対する平面視において、複数のフォトセンサー部31〜34の周囲に配置されてもよい。例えば、図3に示すように、光源部110が複数の光源111〜114を含み、複数の光源111〜114が複数のフォトセンサー部31〜34の周囲に配置されてもよい。あるいは、図4に示すように、光源部110が1つの光源により構成され、その1つの光源が複数のフォトセンサー部31〜34を囲むように配置されてもよい。
これらの実施形態によれば、光源部110と分光センサー100をコンパクトに配置でき、分光センサー装置の小型化を図ることができる。また、光源部110を複数のフォトセンサー部31〜34の周囲に配置した場合には、分光センサー100を外光からより遠ざけることができるため、外光によるS/N劣化を抑止できる。
2.変形例
上記でも触れたように、本実施形態の分光センサー装置は種々の変形構成が可能である。図2(A)〜図5を用いて、この分光センサー装置の種々の変形例について説明する。
図2(A)、図2(B)に、光源部の周囲にフォトダイオードが配置される分光センサー装置の第1の変形例を示す。この分光センサー装置は、分光センサー100、光源部110、遮光部材121、122を含む。
図2(A)は、観察対象に対向する対向面の平面視図である。図2(A)に示すように、光源部110の周囲を囲むように遮光部材121が設置され、その遮光部材121の外側に複数のフォトダイオード31〜34が配置される。例えば、フォトダイオード31〜34は、光源部110の第1〜第4の方向D1〜D4側に配置される。ここで、対向面に対する平面視において、D2はD1に直交する方向であり、D3はD1の反対方向であり、D4はD2の反対方向である。そして、フォトダイオード31〜34の周囲には、外光を遮光するための遮光部材122が設置される。
図2(B)は、図2(A)に示す分光センサー装置のCC断面図である。図2(B)に示すように、光源部110と遮光部材121は、フォトダイオード31〜34が形成される半導体基板10上に設置(スタック)される。光源部110が設置された半導体基板10上の領域には、例えば光源110用のドライバー回路やフォトダイオード31〜34用の検出回路が形成される。ここで、半導体基板10上とは、半導体基板10の平面に垂直な方向であり、フォトダイオード31〜34や光バンドパスフィルター61〜64等が形成される側の方向である。
図3に、分光センサー100の周囲に複数の光源が配置される分光センサー装置の第2の変形例を示す。この分光センサー装置は、分光センサー100、第1〜第4の光源111〜114(広義には複数の光源)、遮光部材120を含む。
図3に示すように、分光センサー100の周囲を囲むように遮光部材120が設置され、その遮光部材120の外側に光源111〜114が配置される。例えば、光源111〜114は、分光センサー100の第1〜第4の方向D1〜D4側に配置される。例えば、光バンドパスフィルター61〜64の各透過波長が可視光に含まれる場合、この光源111〜114は白色光を観察対象に対して照射する。あるいは、光源111〜114は、それぞれ光バンドパスフィルター61〜64の透過波長に対応する異なる波長帯域の光を照射してもよい。
図4に、分光センサー100の周囲を1つの光源が囲む分光センサー装置の第3の変形例を示す。この分光センサー装置は、分光センサー100、光源部110、遮光部材120を含む。
図4に示すように、分光センサー100の周囲を囲むように遮光部材120が設置され、その遮光部材120の外側を囲む四角形や円形等の1つながりの光源110が配置される。この光源110は、例えば白色光を照射するEL(Electro-Luminescence)等により実現され、EL用基板150上に形成される。分光センサー100は、例えばこのEL基板上にスタックして配置される。
図5に、観察対象の透過光を分光測定する分光センサー装置の第4の変形例を示す。この分光センサー装置は、分光センサー100、光源部110、遮光部材120、表示パネル130、操作入力部140を含む。
図5に示すように、光源部110と分光センサー100は、分光センサー装置の使用時において観察対象を挟んで対向して設置される。すなわち、光源部110が観察対象に対して照明光を照射し、観察対象を透過した照明光が分光センサー100に入射し、光バンドパスフィルター61、63が透過光を分光し、フォトダイオード(図示省略)が分光後の透過光をセンシングする。
3.分光センサーの第1の詳細な構成例
上述のように、連続スペクトルではなく、特定の測定波長のみを測定する分光センサーを用いることで、分光センサー装置の小型化を図ることができる。しかしながら、分光センサー自体の大きさにより分光センサー装置の大きさが制約されるという課題がある。
しかしながら、分光センサーの波長選択性の向上という課題がある。例えば、後述のように、本実施形態の分光センサーには、光バンドパスフィルターの透過波長帯域を制限するための角度制限フィルターが設けられる。このとき、その角度制限フィルターや光バンドパスフィルターを部材で構成すると、部材の接着面で光が拡散減衰するため、波長選択性が低下してしまう。
また、例えば、上述の特許文献1には、光ファイバーにより入射光の入射角度を制限することでフィルターの透過波長帯域を制限する手法が開示されている。しかしながら、この手法では、帯域を狭くするために光ファイバーの開口数を小さくすると、入射光の透過率が低下、波長選択性が低下してしまう。
また、分光センサーの製造プロセスの簡素化という課題がある。例えば、特許文献2には、センサー毎に膜厚の異なる多層膜フィルターを用いる手法が開示されている。しかしながら、この手法では、膜厚毎に別個の多層膜形成工程が必要となるため、多層膜の形成工程が煩雑となってしまう。
そこで、本実施形態では、半導体プロセスにより角度制限フィルターや光バンドパスフィルターを形成することで、簡素な製造プロセスにより分光センサーの小型化を実現する。
図6、図7を用いて分光センサーの第1の詳細な構成例について説明する。なお以下では、簡単のために分光センサーの構成を模式的に図示し、図中の寸法や比率は実際のものとは異なる。
図6には、分光センサーが形成される半導体基板10に対する平面視図を示す。図6は、半導体基板10の平面に垂直な方向から見た平面視において、回路20や角度制限フィルター41等が形成される表面側から見た平面視図である。後述のように角度制限フィルター41、42の上には多層膜フィルターが形成されるが、図6では、簡単のために図示を省略する。
図6に示す分光センサーは、半導体基板10、回路20、第1のフォトダイオード31(広義には、第1のフォトセンサー、第1のフォトダイオード用の不純物領域)、第2のフォトダイオード32(広義には、第2のフォトセンサー、第2のフォトダイオード用の不純物領域)、第1の角度制限フィルター41、第2の角度制限フィルター42を含む。
半導体基板10は、例えばP型やN型のシリコン基板(シリコンウエハ)により構成される。この半導体基板10の上には、回路20、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42が半導体プロセスにより形成される。ここで、半導体基板10の上とは、半導体基板10の平面に垂直な方向のうち、回路20や角度制限フィルター41等が形成される側の方向を表す。
角度制限フィルター41、42は、例えば平面視において格子状に形成され、フォトダイオード31、32に対する入射光の入射角度を制限する。回路20は、例えばフォトダイオード31、32からの出力信号を処理するアンプ、A/D変換回路等により構成される。
なお、本実施形態の分光センサーは図6の構成に限定されず、その構成要素の一部(回路20)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば、フォトダイオードや角度制限フィルターは、上述のように2つであってもよく、1または複数個形成されてもよい。また、角度制限フィルター41、42は、上述のように平面視において格子状であってもよく、他の形状であってもよい。
図7に、分光センサーの断面図を示す。図7は、図6に示すDD断面における断面図である。図7に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50(角度構造体)、第1の光バンドパスフィルター61(第1の多層膜フィルター、第1の誘電体フィルター)、第2の光バンドパスフィルター62(第2の多層膜フィルター、第2の誘電体フィルター)、を含む。
図7に示すように、半導体基板10にフォトダイオード31、32が形成される。後述するように、このフォトダイオード31、32は、イオン注入等により不純物領域が形成されることで形成される。例えば、フォトダイオード31、32は、P基板上に形成されたN型不純物領域と、P基板との間のPN接合により実現される。あるいは、ディープNウェル(N型不純物領域)上に形成されたP型不純物領域と、ディープNウェルとの間のPN接合により実現される。
角度制限フィルター41、42は、フォトダイオード31、32により検出される波長に対して遮光性のある遮光物質(光吸収物質または光反射物質)により形成される。具体的には、角度制限フィルター41、42は、半導体プロセスの配線形成工程により形成され、例えばアルミ(光反射物質)配線層等の導電層とタングステン(光吸収物質)プラグ等の導電性プラグにより形成される。角度制限フィルター41、42の底辺の長さ(例えば底面の最長対角線や、長径)と高さのアスペクト比は、光バンドパスフィルター61、62の透過波長帯域(例えば図12(B)で後述するBW1、BW2)に応じて設定される。角度制限フィルター41、42の開口部(中空部)は、フォトダイオード31、32により検出される波長に対して透明な物質により形成され、例えば、SiO2(シリコン酸化膜)等の絶縁層により形成(充填)される。
傾斜構造体50は、角度制限フィルター41、42の上に形成され、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じて異なる傾斜角の傾斜面を有する。具体的には、フォトダイオード31の上には、半導体基板10の平面に対する傾斜角θ1の傾斜面が複数形成され、フォトダイオード32の上には、θ1とは異なる傾斜角θ2の傾斜面が複数形成される。後述するように、この傾斜構造体50は、例えばSiO2等の絶縁膜をエッチングまたはCMP、グレースケールリソグラフィー技術等により加工することで形成される。
光バンドパスフィルター61、62は、傾斜構造体50の上に積層された多層薄膜60により形成される。光バンドパスフィルター61、62の透過波長帯域は、傾斜構造体50の傾斜角θ1、θ2と、角度制限フィルター41、42の入射光制限角度(アスペクト比)により決まる。光バンドパスフィルター61、62は、傾斜角度に応じて透過波長が異なる構成のため、透過波長毎に別個の工程で積層するのではなく、同一の多層膜形成工程により積層される。
さて上述のように、分光センサー装置の小型化のために、分光センサーの小型化を図る必要があるという課題がある。また、分光センサーの波長選択性の向上や、製造プロセスの簡素化という課題がある。
この点、本実施形態によれば、分光センサーは、フォトダイオードの受光領域(受光面)に対する入射光の入射角度を制限するための角度制限フィルター41、42を含む。そして、角度制限フィルター41、42は、フォトダイオード用の不純物領域31、32の上に半導体プロセスによって形成された遮光物質(例えば、光吸収物質または光反射物質)によって形成される。
これにより、分光センサーの各構成要素を半導体プロセスにより構成できるため、分光センサーの小型化等が可能になる。すなわち、フォトダイオード31、32や角度制限フィルター41、42を半導体プロセスにより形成することで、容易に微細加工を行い、小型化することができる。また、部材を貼り合わせて構成する場合と比べて、製造プロセスの簡素化を図ることができる。また、角度制限フィルターとして光ファイバーを用いた場合に比べて、制限角度(開口数)の減少による透過光の減少を抑制できる。また、部材の接着による透過光の減少も抑制できる。そのため、光量の確保が容易になり、制限角度を小さくして透過波長帯域をより小さくできる。
ここで、半導体プロセスとは、半導体基板にトランジスターや、抵抗素子、キャパシター、絶縁層、配線層等を形成するプロセスである。例えば、半導体プロセスは、不純物導入プロセスや、薄膜形成プロセス、フォトリソグラフィープロセス、エッチングプロセス、平坦化プロセス、熱処理プロセスを含むプロセスである。
また、フォトダイオードの受光領域とは、角度制限フィルター41、42を通過した入射光が入射される、フォトダイオード用の不純物領域31、32上の領域である。例えば図6において、格子状の角度制限フィルター41、42の各開口に対応する領域である。あるいは、図7において、角度制限フィルター41、42を形成する遮光物質(例えば、光吸収物質または光反射物質)に囲まれた領域(例えば、領域LRA)である。
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10上に形成される他の回路20の配線層形成工程により形成される。具体的には、角度制限フィルター41、42は、回路20の配線層形成と同時に形成され、その配線層形成工程の全部または一部により形成される。例えば、角度制限フィルター41、42は、アルミスパッタリングによるアルミ(広義には光反射物質)配線層形成や、SiO2デポジションによる絶縁膜形成、タングステン(広義には光吸収物質)デポジションによるコンタクト形成等により形成される。
このようにすれば、角度制限フィルター41、42を、フォトダイオード用の不純物領域31、32の上に半導体プロセスによって形成できる。これにより、角度制限フィルター形成のための別個のプロセスを設ける必要が無く、通常の半導体プロセスを利用して角度制限フィルターを形成できる。
なお、角度制限フィルター41、42は、アルミ(光反射物質)配線層、タングステン(光吸収物質)コンタクトに限らず、タングステン等の光吸収物質から成る配線層、アルミ等の光反射物質から成るコンタクトにより形成されてもよい。ただし、光吸収物質から成る程遮光性は高まる。
また、角度制限フィルター41、42は、アルミ(光反射物質)配線層、タングステン(光吸収物質)コンタクトに限らず、光吸収物質である窒化チタン(TiN)等の膜付きのアルミ(光反射物質)配線層、タングステン(光吸収物質)コンタクトにより形成されてもよい。アルミ(光反射物質)配線層が光吸収に変わり、タングステンより窒化チタン(TiN)の方が光吸収性が高いためコンタクトの光吸収性も上がるため、遮光性をより高めることができる。
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10の上に積層された絶縁膜に空けられたコンタクトホールの導電性プラグにより形成されてもよい。すなわち、アルミ(光反射物質)配線等の金属配線層を用いず、SiO2等の絶縁膜に形成されたタングステン(光吸収物質)プラグ等の導電性プラグのみにより形成されてもよい。なお、角度制限フィルター41、42は、タングステンプラグに限らず、アルミや、ポリシリコン等の他の導電性プラグにより形成されてもよい。
このようにすれば、角度制限フィルター41、42を導電性プラグにより形成することができる。
ここで、上記のコンタクトホールとは、配線層と半導体基板を導通するコンタクトのために空けられるコンタクトホール、または配線層と配線層を導通するビアコンタクトのために空けられるコンタクトホールである。
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体プロセスにより形成される導電層または導電性プラグにより形成され、フォトダイオード31、32用の不純物領域からの信号を取得する電極であってもよい。例えば、フォトダイオード31、32用の不純物領域がP型不純物領域である場合、そのP型不純物領域に導通する角度制限フィルター41、42が、フォトダイオード31、32のアノード電極を兼ねてもよい。
このようにすれば、導電層または導電性プラグにより形成される角度制限フィルター41、42を、フォトダイオード31、32の電極として用いることができる。これにより、角度制限フィルター41、42以外に電極を設ける必要が無くなり、電極による入射光量の低下を避けることができる。
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10に対する平面視において、フォトダイオード31、32の受光領域の外周に沿って形成される。具体的には、フォトダイオード31、32用の不純物領域がそれぞれ1つの受光領域であり、その不純物領域の外周を囲むそれぞれ1つの角度制限フィルターが形成される。あるいは、フォトダイオード31、32用の不純物領域に複数の受光領域が設定され、その複数の受光領域の外周に沿って複数の開口が形成されてもよい。例えば図6に示すように、平面視において正方形の遮光物質が各受光領域を囲み、その正方形が格子状に配列されることで角度制限フィルター41、42が形成される。
なお、角度制限フィルター41、42は、受光領域の外周に沿って閉じている場合に限らず、外周に沿って非連続的な部分があったり、外周に沿って断続的に配置されたりしてもよい。
このようにすれば、角度制限フィルター41、42が、フォトダイオード31、32の各受光領域の外周に沿って形成されることで、フォトダイオード31、32の各受光領域に対する入射光の入射角度を制限できる。
また、本実施形態では、光バンドパスフィルター61、62は、半導体基板10に対して、透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する多層薄膜により形成される。より具体的には、光バンドパスフィルター61、62は、透過波長が異なる複数組の多層薄膜により形成される。そして、その複数組の多層薄膜は、半導体基板10に対する傾斜角度θ1、θ2が透過波長に応じて異なり、同時の薄膜形成工程で形成される。例えば、図7に示すように、傾斜角θ1の複数の多層薄膜が連続して配列されることで1組の多層薄膜が形成される。あるいは、図10で後述するように、異なる傾斜角θ1〜θ3の多層薄膜が隣接して配置され、この傾斜角θ1〜θ3の多層薄膜が繰り返し配置される場合に、同じ傾斜角(例えばθ1)の複数の多層薄膜により1組の多層薄膜が形成されてもよい。
このようにすれば、透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する多層薄膜により光バンドパスフィルター61、62を形成できる。これにより、透過波長に応じた膜厚の多層薄膜を透過波長毎に別個の工程で積層する必要がなくなり、多層薄膜の形成工程を簡素化できる。
ここで、同時の薄膜形成工程とは、第1組の多層薄膜を形成した後に第2組の多層薄膜を形成するといった同一工程を順次繰り返す工程ではなく、複数組の多層薄膜を同じ(同時、1回の)薄膜形成工程で形成することをいう。
また、本実施形態では、分光センサーは、角度制限フィルター41、42の上に設けられた傾斜構造体50を含む。そして、傾斜構造体50は、半導体基板10に対して、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する傾斜面を有し、多層薄膜がその傾斜面の上に形成される。
このようにすれば、傾斜構造体50の傾斜面に多層薄膜を形成することで、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する多層薄膜を形成できる。
具体的には、本実施形態では、傾斜構造体50は、角度制限フィルター41、42の上に半導体プロセスにより形成される。例えば図14等で後述するように、傾斜構造体50は、半導体プロセスにより積層された透明膜(絶縁膜)に段差または粗密パターンが形成され、その段差または粗密パターンに対して研磨(例えばCMP)及びエッチングの少なくとも一方が行われることで形成される。
このようにすれば、傾斜構造体を半導体プロセスにより形成できる。これにより、傾斜構造体の形成工程を簡素化できる。また、傾斜構造体を別部材で構成する場合と比べてコストを削減できる。また、別部材の傾斜構造体との接着面での光量減少を避けることができる。
ここで、絶縁膜の段差とは、例えば、半導体基板の断面における半導体基板表面からの絶縁膜表面の高低差である。また、絶縁膜の粗密パターンとは、例えば、半導体基板の断面における半導体基板表面からの絶縁膜表面の高低のパターンであり、高い部分と低い部分の比率により絶縁膜の粗密が形成される。
なお、傾斜構造体50は、段差または粗密パターンの研磨またはエッチングによる形成に限らず、グレースケールリソグラフィー技術により形成されてもよい。グレースケールリソグラフィー技術では、濃淡を持ったグレースケールマスクを用いてレジストを露光、露光レジストを使ってエッチングし傾斜構造体を形成する。
4.分光センサーの変形例
上記実施形態では、傾斜構造体50を半導体プロセスにより形成する構成例について説明したが、本実施形態では、種々の変形実施が可能である。
図8には、傾斜構造体50を別部材で形成して貼り合わせる分光センサーの第1の変形例を示す。図8に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70、接着層80を含む。なお以下では、図7等で上述した構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
この第1の変形例では、角度制限フィルター41、42までを上述の構成例と同様に半導体プロセスにより形成する。角度制限フィルター41、42の上には、絶縁層70(またはパッシベーション層)を積層する。この絶縁層70は、必ずしも絶縁膜である必要はなく、センシングする波長を透過する透明膜であればよい。傾斜構造体50は、低融点ガラス等の別部材を金型により加熱プレスすることで形成され、傾斜面と多層薄膜が形成される。傾斜構造体50と絶縁層70は、センシングする波長を透過する透明な接着剤により貼り付けされる。
図9には、傾斜構造体50を用いず、半導体基板10に平行な多層薄膜を形成する分光センサーの第2の変形例を示す。図9に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70を含む。
この第2の変形例では、角度制限フィルター41、42までを上述の構成例と同様に半導体プロセスにより形成し、角度制限フィルター41、42の上に絶縁層70を積層する。そして、絶縁層70の上に光バンドパスフィルター61、62の多層薄膜を形成する。この多層薄膜は、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じて膜厚が異なり、別々の形成工程により積層される。すなわち、光バンドパスフィルター61、62の一方を形成する際には、他方をフォトレジスト等で覆って多層膜を積層することで、異なる膜厚の多層薄膜を形成する。
図10には、フォトダイオード用の不純物領域をトレンチにより区切る分光センサーの第3の変形例を示す。図10に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、光バンドパスフィルター61〜63、絶縁層70を含む。なお、フォトダイオード32はフォトダイオード31と同様のため図示及び説明を省略する。
この第3の変形例では、フォトダイオード31の不純物領域がトレンチ90により区切られ、フォトダイオード31−1〜31−3が形成される。トレンチ90は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)等の絶縁体トレンチ構造により形成される。傾斜構造体50には傾斜角度θ1〜θ3の傾斜面が形成され、各傾斜面はそれぞれフォトダイオード31−1〜31−3に対応する。そして、各フォトダイオード31−1〜31−3の上に、傾斜角度の異なる光バンドパスフィルター61〜63がそれぞれ形成される。
なお図10では、1つの光バンドパスフィルターが、トレンチ構造で区切られた1つのフォトダイオード(1つの領域)の上に設けられるが、本実施形態では、1つの光バンドパスフィルターが、トレンチ構造で区切られた複数のフォトダイオード(複数の領域)の上に設けられてもよい。
図11には、マイクロレンズアレイ(MLA:Micro-Lens Array)により入射光量を増加させる分光センサーの第4の変形例を示す。図11に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70、マイクロレンズアレイ95を含む。なお、フォトダイオード32はフォトダイオード31と同様のため図示及び説明を省略する。
この第4の変形例では、角度制限フィルター41の各開口にマイクロレンズを形成し、これらの複数のマイクロレンズによりマイクロレンズアレイ95が構成される。このマイクロレンズアレイ95は、例えば角度制限フィルター41形成後にフォトリソグラフィーによりパターンを形成し、SiO2膜をエッチングし、SiO2よりも高屈折率の物質をデポジションすることで形成される。
5.光バンドパスフィルターの透過波長帯域
上述のように、光バンドパスフィルターの透過波長帯域は、多層薄膜の傾斜角度と角度制限フィルターの制限角度により設定される。この点について、図12(A)、図12(B)を用いて具体的に説明する。なお、説明を簡単にするために、以下では多層薄膜61、62の膜厚が同じ場合を例に説明するが、本実施形態では、多層薄膜61、62の膜厚が傾斜角θ1、θ2に応じて異なってもよい。例えば、薄膜のデポジションにおいて、半導体基板に対して垂直な方向に薄膜を成長させた場合、多層薄膜61、62の膜厚がcosθ1、cosθ2に比例してもよい。
図12(A)に示すように、多層薄膜61、62は、厚さd1〜d3(d2<d1、d3<d1)の薄膜により形成される。厚さd1の薄膜の上下に、厚さd2、d3の薄膜が交互に複数層積層される。厚さd2の薄膜は、厚さd1、d3の薄膜とは異なる屈折率の物質により形成される。なお、図12(A)では、簡単のために、厚さd2、d3の薄膜の層数を省略したが、実際には、厚さd1の薄膜の上下に数十層〜数百層の薄膜が積層される。また、図12(A)では、簡単のために厚さd1の薄膜を1層としたが、実際には複数層形成される場合が多い。
多層薄膜61は、フォトダイオード31の受光面に対して傾斜角θ1を有するため、受光面に対して垂直な光線は、多層薄膜61に対してθ1の角度で入射する。そして、角度制限フィルター41の制限角度をΔθとすると、多層薄膜61に対してθ1−Δθ〜θ1+Δθで入射する光線がフォトダイオード31の受光面に到達する。同様に、フォトダイオード32の受光面には、多層薄膜62に対してθ2−Δθ〜θ2+Δθで入射する光線が到達する。
図12(B)に示すように、多層薄膜61の透過波長帯域BW1は、λ1−Δλ〜λ1+Δλである。このとき、入射角度θ1の光線に対する透過波長λ1=2×n×d1×cosθ1である。ここで、nは厚さd1の薄膜の屈折率である。また、λ1−Δλ=2×n×d1×cos(θ1+Δθ)、λ1+Δλ=2×n×d1×cos(θ1−Δθ)である。入射角度θ1の光線に対する透過波長の半値幅HW(例えばHW<BW1)は、多層膜の積層数により決まる。フォトダイオード31の受光量は、受光面に垂直となる入射角θ1で最大であり、制限角度でゼロとなるため、入射光全体での受光量は点線でしめす曲線により表されることとなる。多層薄膜62の透過波長帯域BW2も同様に、λ2−Δλ〜λ2+Δλである。例えばθ2<θ1の場合、λ2=2×n×d1×cosθ2<λ1=2×n×d1×cosθ1である。
上記実施形態によれば、角度制限フィルター41、42は、入射光の入射角度をθ1−Δθ〜θ1+Δθ、θ2−Δθ〜θ2+Δθに制限して、透過波長の変化範囲をλ1−Δλ〜λ1+Δλ、λ2−Δλ〜λ2+Δλに制限する。光バンドパスフィルターは、角度制限フィルター41、42により制限された透過波長の変化範囲λ1−Δλ〜λ1+Δλ、λ2−Δλ〜λ2+Δλにより、透過する特定波長の帯域BW1、BW2が設定される。
このようにすれば、角度制限フィルター41、42により光バンドパスフィルターの透過波長帯域BW1、BW2を制限し、測定対象の波長帯域の光だけをセンシングすることができる。例えば、角度制限フィルター41、42の制限角度はΔθ≦30°に設定される。望ましくは、角度制限フィルター41、42の制限角度はΔθ≦20°である。
以上では、図1(A)、図1(B)に示すように、光源部110と分光センサー100との間に遮光部材120を設け、光源部110から分光センサー100に観察対象を介さずに入射する光を遮光する場合について述べた。しかしながら、観測対象物が動的な場合、観測対象と遮光部材120との間に間隙が生じ、光源部110からの観察対象を介さない光が僅かに分光センサー100へ入射する場合がある。この場合、観察対象を介さない光の入射角は比較的深い角度となる(例えば、入射角>30°)。
上述のように、角度制限フィルター41、42は分光フィルター100の入射角度を20°〜30°以下に制限するので、観測対象物が動的な場合に光源部110から分光フィルター100に観察対象を介さずに入射する光を排除できる。また、光源部110からの光だけでなく、観測対象物が動的な場合に、観測対象と遮光部材120との間に生じた間隙から入射する他の光(例えば、太陽、蛍光灯等。外光)についても同じ効果を有する。角度センサー41、42には、これらのような付加的効果もある。
6.分光センサーの第1の製造方法
図13〜図15を用いて、上記第1の詳細な構成例の分光センサーの製造方法例について説明する。
まず図13のS1に示すように、フォトリソグラフィー、イオン注入、フォトレジスト剥離の工程により、P型基板上にN型拡散層(フォトダイオードの不純物領域)を形成する。S2に示すように、フォトリソグラフィー、イオン注入、フォトレジスト剥離、熱処理の工程により、P型基板上にP型拡散層を形成する。このN型拡散層がフォトダイオードのカソードとなり、P型拡散層(P型基板)がアノードとなる。
次にS3に示すように、コンタクトを形成する。この形成工程では、まずSiO2のデポジション、CMPによる平坦化の工程により、絶縁膜を形成する。次にフォトリソグラフィー、SiO2の異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、コンタクトホールを形成する。そして、TiNのスパッタリング、W(タングステン)のデポジション、Wのエッチバックの工程により、コンタクトホールの埋め込みを行う。次に、S4に示すように、AL(アルミ)のスパッタリング、TiNのスパッタリング、フォトリソグラフィー、ALとTiNの異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、第1AL配線を形成する。
次にS5に示すように、上記S3、S4と同様の工程によりビアコンタクトと第2AL配線を形成する。そして、このS5の工程を必要回数繰り返す。図13には、第3AL配線まで形成した場合を図示する。次にS6に示すように、SiO2のデポジション(点線により図示)、CMPによる平坦化の工程により、絶縁膜を形成する。以上の配線形成工程により、角度制限フィルターを構成するAL配線とタングステンプラグが積層される。
次に図14のS7に示すように、SiO2のデポジション、フォトリソグラフィー、SiO2の異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、絶縁膜(点線により図示)の段差S7’または粗密パターンS7”を形成する。
次にS8に示すように、CMPによる研磨の工程により、傾斜構造体の傾斜面を形成する。このとき、傾斜構造体の傾斜面は、絶縁膜の段差や粗密パターンの形状に応じた傾斜角度に加工される。
次に図15のS9に示すように、TiO2(チタン酸化膜)のスパッタリングとSiO2のスパッタリングを交互に行い、傾斜面に多層薄膜を形成する。TiO2膜は高屈折率の薄膜であり、SiO2膜はTiO2膜よりも低屈折率の薄膜である。
7.分光センサーの第2の詳細な構成例
上記実施形態では、配線層により角度制限フィルターを形成する場合について説明したが、本実施形態では、シリコントレンチにより半導体基板の裏面に角度制限フィルターを形成してもよい。
図16(A)〜図17を用いて、この分光センサーの第2の詳細な構成例について説明する。なお以下では、簡単のために本実施形態の分光センサーの構成を模式的に図示し、図中の寸法や比率は実際のものとは異なる。
図16(A)、図16(B)には、分光センサーが形成される半導体基板10に対する平面視図を示す。図16(A)、図16(B)に示す分光センサーは、半導体基板10、回路20、第1、第2のフォトダイオード31、32、第1、第2の角度制限フィルター41、42を含む。なお後述のように、角度制限フィルター41、42の上には多層膜フィルターが形成されるが、図16(A)、図16(B)では、簡単のために図示を省略する。
図16(A)は、半導体基板10の平面に垂直な方向から見た平面視において、不純物領域や配線層等が形成される表面側から見た平面視図である。半導体基板10の表面側には、フォトダイオード31、32や回路20が半導体プロセスにより形成される。
図16(B)は、半導体基板10の平面に垂直な方向から見た平面視において、裏面側から見た平面視図である。半導体基板10の裏面には、表面側に形成されたフォトダイオード31、32に向かって、シリコントレンチにより角度制限フィルター41、42が形成される。この角度制限フィルター41、42は、例えば平面視において格子状に形成され、フォトダイオード31、32に対して半導体基板10の裏面側から入射する入射光の入射角度を制限する。
ここで、シリコントレンチとは、半導体プロセスまたはMEMS(Micro-Electro-Mechanical System)技術により半導体基板10を掘削する手法である。例えば、シリコン基板に対するドライエッチングにより穴や溝、段差等を形成する手法である。
なお、本実施形態の分光センサーは図16(A)、図16(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部(回路20)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
図17に、図16(B)に示すEE断面における分光センサーの断面図を示す。図17に示す分光センサーは、半導体基板10、配線層15、遮光物質25、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、第1、第2の光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70(広義には透明膜)を含む。
ここで、本実施形態で言う「上」とは、半導体基板10の平面に垂直な方向であり、半導体基板10から離れていく方向である。すなわち、裏面側においても、半導体基板10から離れていく方向を上とする。
図17に示すように、半導体基板10の表面側にはフォトダイオード31、32が形成される。このフォトダイオード31、32は、イオン注入等によりP型とN型の不純物領域が形成されることで形成され、その不純物領域のPN接合により実現される。
フォトダイオード31、32の上には、配線層15が形成される。この配線層15は、上述の回路20等の形成工程により積層されたものである。フォトダイオード31、32からの出力信号は、この配線層15内の配線によって上述の回路20等に入力され、検出処理される。
半導体基板10の裏面側には、角度制限フィルター41、42が形成される。この角度制限フィルター41、42は、シリコントレンチにより残った半導体基板10により形成される。シリコントレンチにより掘られた穴の側面(壁面)と、半導体基板10の裏面には、遮光物質(光吸収物質または光反射物質)が配される(形成される、積層される)。一方、フォトダイオードの受光面である穴の底面には、遮光物質が配されない。そして、シリコントレンチにより掘られた穴の壁面が角度制限フィルター41、42の壁面となり、制限角度以上の入射光がフォトダイオード31、32に入射しないように遮光する。角度制限フィルター41、42のアスペクト比は、透過波長帯域(例えば図12(B)で上述のBW1、BW2)に応じて設定される。
角度制限フィルター41、42の上には、角度制限フィルター41、42の開口部(中空部)を充填する絶縁膜70が形成される。例えば、絶縁膜70は、SiO2(シリコン酸化膜)等の絶縁膜により形成される。なお、絶縁膜70は、必ずしも絶縁性を有する必要はなく、フォトダイオード31、32により検出される波長に対して透明な物質であればよい。
絶縁膜70の上には、傾斜構造体50が形成される。この傾斜構造体50は、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じて傾斜角θ1、θ2の傾斜面を有する。傾斜構造体50の上には、光バンドパスフィルター61、62を形成する多層薄膜60が積層される。この光バンドパスフィルター61、62の透過波長帯域は、傾斜構造体50の傾斜角θ1、θ2と、角度制限フィルター41、42の制限角度により決まる。
なお、この第2の詳細な構成例にも上述の第1〜第4の変形例を適用可能である。すなわち、傾斜構造体50を低融点ガラス等で形成して角度制限フィルター41、42の上に貼り付けてもよい。また、半導体基板10に平行な多層薄膜を透過波長毎に形成してもよい。また、フォトダイオード31、32をSTIにより複数のフォトダイオードに区切ってもよい。また、受光量を増加するためのMLAを角度制限フィルター41、42の開口に設けてもよい。
上記第2の詳細な構成例によれば、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10の裏面側からフォトダイオード31、32用の不純物領域に対して、裏面側面及び壁面に遮光物質(光吸収膜または光反射膜または光吸収膜+光反射膜)を配する受光用の穴を形成することにより形成される。
これにより、分光センサーを半導体プロセスやMEMS技術を利用して構成できるため、分光センサーの小型化等が可能になる。すなわち、フォトダイオード31、32を半導体プロセスにより形成し、角度制限フィルター41、42を半導体基板10の裏面掘削により形成することで、容易に微細加工を行い、小型化することができる。
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10に対する平面視において、フォトダイオード31、32の受光領域(例えば図17に示す領域LRA)の外周に沿って形成される。具体的には、フォトダイオード31、32用の不純物領域に複数の受光領域が設定され、その複数の受光領域の外周に沿って複数の開口が形成される。例えば図16に示すように、平面視において正方形の遮光物質が各受光領域を囲み、その正方形が格子状に配列されることで角度制限フィルター41、42が形成される。
このようにすれば、角度制限フィルター41、42がフォトダイオード31、32の各受光領域の外周に沿って形成されることで、フォトダイオード31、32の各受光領域に対する入射光の入射角度を制限できる。
8.分光センサーの第2の製造方法
図18〜図20を用いて、第2の詳細な構成例の分光センサーの製造方法例について説明する。
まず図18のS101に示すように、図13のS1〜S6で上述の工程により、基板の表面側にフォトダイオードと配線層を形成する。そして、S102に示すように、ポリイミド塗布、キュアの工程により、絶縁膜の上に保護膜(パシベーション)を形成する。
次にS103に示すように、P型シリコン基板の裏面を研削してP型シリコン基板の厚さを調整する。そして、S104に示すように、フォトリソグラフィー、P型シリコン基板の異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、シリコントレンチを形成する。
次に、S105に示すように、TiN膜のデポジション、TiN膜の異方性ドライエッチングの工程により、シリコントレンチの側面(内壁)と半導体基板の裏面にTiNの光吸収膜(反射防止膜)を形成する。そして、S106に示すように、SiO2膜のデポジション(点線により図示)、CMPによるSiO2膜の平坦化の工程により、シリコントレンチの埋め込みを行う。このように上記S103〜S106の工程により角度制限フィルターが形成される。
次に図19のS107に示すように、SiO2膜のデポジション、フォトリソグラフィー、SiO2膜の異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、絶縁膜の段差または粗密パターンを形成する。そして、S108に示すように、CMPによるSiO2膜の研磨の工程により、傾斜構造体の傾斜面を形成する。このとき、傾斜構造体の傾斜面は、絶縁膜の段差や粗密パターンの形状に応じた傾斜角度に加工される。
次に図20のS109に示すように、TiO2(チタン酸化膜)のスパッタリングとSiO2のスパッタリングを交互に行い、傾斜面に多層薄膜を形成する。TiO2膜は高屈折率の薄膜であり、SiO2膜はTiO2膜よりも低屈折率の薄膜である。
9.電子機器
図21に、本実施形態の分光センサー装置を含む電子機器の構成例を示す。例えば、電子機器として、脈拍計、パルスオキシメーター、血糖値測定器、果実糖度計などが想定される。
図21に示す電子機器は、分光センサー装置900、マイクロコンピューター970(CPU)、記憶装置980、表示装置990を含む。分光センサー装置900は、LED950(光源)、LEDドライバー960、分光センサー910を含む。分光センサー910は、例えば1チップのICに集積され、フォトダイオード920、検出回路930、A/D変換回路940を含む。
LED950は、例えば白色光を観察対象に照射する。分光センサー装置900は、観察対象からの反射光や透過光を分光し、各波長の信号を取得する。マイクロコンピューター970は、LEDドライバー960の制御や、分光センサー910からの信号の取得を行う。マイクロコンピューター970は、取得した信号に基づく表示を表示装置990(例えば液晶表示装置)に表示したり、取得した信号に基づくデータを記憶装置980(例えばメモリーや、磁気ディスク)に記憶する。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(フォトセンサー、薄膜フィルター、半導体基板等)と共に記載された用語(フォトダイオード、光バンドパスフィルター、シリコン基板等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、分光センサー、分光センサー装置、電子機器等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。