JP5862234B2 - 平滑表面を有するセラミックス基複合部材およびその製造方法 - Google Patents
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しかしながら、従来、表面が平滑なセラミックス基複合部材を得ることができなかった。本来、セラミックス基複合部材はセラミックス繊維束からなるので、セラミックス繊維束に由来する1〜5mm程度の大きさの凹凸が表面に形成されるからである。
したがって、例えば特許文献1〜3に記載のセラミックス基複合材料をガス流路の部品として用いる場合、表面の凹凸に関しては改善の余地があった。
本発明は以下の(1)〜(8)である。
(1)表面に凹凸を有するセラミックス基複合部材に、原料粉末を含むスラリーを用いた湿式加振含浸法を適用し、前記原料粉末が充填された含浸後複合部材を得る含浸工程と、
前記含浸後複合部材の表面が平滑になるように成形して表面成形後複合部材を得る成形工程と、
前記表面成形後複合部材から前記スラリー中の溶媒を分離除去し、乾燥後複合部材を得る乾燥工程と、
前記乾燥後複合部材に気相法を適用して、前記乾燥後複合部材の表面に被膜を形成し、表面が平滑化されたセラミックス基複合部材を得る平滑化工程と
を備える、平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
(2)前記スラリー中の原料粉末の濃度が30〜70体積%である、上記(1)に記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
(3)焼成工程を備えない、上記(1)または(2)に記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
(4)前記原料粉末が、非酸化物無機材料、酸化物無機材料、金属化合物および金属からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
(5)前記原料粉末がガラス粉末を含み、そのガラス粉末の軟化点の温度と、使用環境温度との差が400℃以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法によって得られる平滑表面を有するセラミックス基複合部材。
(7)高温雰囲気下で用いる部品である、上記(6)に記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材。
(8)ガスタービンの動静翼、シュラウド、ロケットノズルまたはガス流路部品である、上記(7)に記載のセラミックス基複合部材。
本発明は、表面に凹凸を有するセラミックス基複合部材に、原料粉末を含むスラリーを用いた湿式加振含浸法を適用し、前記原料粉末が充填された含浸後複合部材を得る含浸工程と、前記含浸後複合部材の表面が平滑になるように成形して表面成形後複合部材を得る成形工程と、前記表面成形後複合部材から前記スラリー中の溶媒を分離除去し、乾燥後複合部材を得る乾燥工程と、前記乾燥後複合部材に気相法を適用して、前記乾燥後複合部材の表面に被膜を形成し、表面が平滑化されたセラミックス基複合部材を得る平滑化工程とを備える、平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法である。
このような平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の製造方法が備える含浸工程について説明する。
含浸工程では、初めに、表面に凹凸を有するセラミックス基複合部材を用意する。このセラミックス基複合部材を、以下では「未処理複合部材」ともいう。
未処理複合部材は、セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとからなり、一般的にCMC(Ceramic Matrix Composites)と称されるものである。通常、CMCは表面にセラミックス繊維に由来する微小な凹凸を有する。この凹凸の大きさは1〜5mm程度であり、これを高温ガスの流路を形成する部品または流路内に存する部品(例えばロケットのエンジン部品)として用いた場合、ガスの流れへ悪影響を及ぼす可能性がある。
また、例えばセラミックス繊維を複数束ねて繊維束とした後、この繊維束をマンドレル上にブレード織りして所望の立体形状とし、さらにCVI法によって処理して、未処理複合部材を得ることができる。さらに反応焼結法やPIP法によって処理しても、未処理複合部材を得ることができる。
ブレード織りとは、円柱形状等のマンドレルの周りに、マンドレルの長手方向に延在する複数の中央糸(繊維束)と、螺旋状に巻回される組糸(繊維束)とを編み込むことによって、中空織物を形成する方法である。
また、例えば、縦糸と横糸からなる通常の平織りを積層した繊維織物、一方向に並列した繊維束を0°/90°方向に繰り返し積層した繊維織物、3軸織物などを用意し、さらにCVI法によって処理して、平面形状の未処理複合部材を得ることができる。さらに反応焼結法やPIP法によって処理しても、未処理複合部材を得ることができる。
ここでCVI法は、例えば立体形状の繊維織物を専用治具に固定して炉内に置き、密閉し、加熱し、減圧雰囲気にした後、原料ガス(例えばメチルトリクロロシラン)を流入させることで、繊維織物における繊維表面や繊維間にマトリックスを形成する処理である。
また、反応焼結法はCMCをSiCの原料になる固体粉末に浸した後熱処理して反応焼結する、もしくは原料粉末と溶融原料で反応焼結する含浸方法である。必要に応じて含浸・焼成サイクルを複数回繰り返して行う。
また、PIP法はCMCを原料ポリマーに浸した後、焼成する方法である。必要に応じて含浸・焼成サイクルを複数回繰り返して行う。
原料粉末は特に限定されないものの、非酸化物無機材料、酸化物無機材料、金属化合物および金属からなる群から選ばれる少なくとも1つをからなることが好ましい。
ここで、原料粉末におけるガラス粉末の割合は1〜90体積%であることが好ましく、20〜60体積%であることがより好ましく、30〜50体積%であることがさらに好ましい。
ガラスやムライトなどの酸化物セラミックスの粉末は、SiCと共に原料粉末に含まれることがより好ましい。
原料粉末におけるガラスやムライトなどの酸化物セラミックスの粉末の割合は5〜100体積%であることが好ましく、20〜100体積%であることがより好ましく、20〜60体積%であることがさらに好ましい。
炭化タングステン、ダイヤモンドまたは二ホウ化チタンの粉末は、SiCと共に原料粉末に含まれることがより好ましい。
原料粉末における炭化タングステン、ダイヤモンドまたは二ホウ化チタンの粉末の割合は5〜100体積%であることが好ましく、20〜100体積%であることがより好ましく、20〜60体積%であることがさらに好ましい。
ジルコニアまたはセリアの粉末は、SiCと共に原料粉末に含まれることがより好ましい。
原料粉末におけるジルコニアまたはセリアの粉末の割合は5〜100体積%であることが好ましく、20〜100体積%であることがより好ましく、20〜60体積%であることがさらに好ましい。この割合を調整することで熱伝導率を調整することができる。
ダイヤモンド、高結晶性黒鉛または窒化アルミニウムの粉末は、SiCと共に原料粉末に含まれることがより好ましい。
原料粉末におけるダイヤモンド、高結晶性黒鉛または窒化アルミニウムの粉末の割合は5〜100体積%であることが好ましく、20〜100体積%であることがより好ましく、20〜60体積%であることがさらに好ましい。この割合を調整することで熱伝導率を調整することができる。
溶媒は原料粉末を分散させることができるものであれば特に限定されない。例えばエタノール、メタノール、ブタノール、アセトン、キシレン、水を用いることができる。
なお、沈殿部分における原料粉末の濃度は厳密には測定できないものの、スラリー中の原料粉末濃度が30〜40体積%程度の場合、50体積%程度と考えられる。
次に、本発明の製造方法が備える成形工程について説明する。
成形工程は、前記含浸後複合部材の表面が平滑になるように成形して表面成形後複合部材を得る工程である。
含浸工程によって得られた含浸後複合部材は、スラリー中から取り出したときは、通常、表面に原料粉末が必要以上に付いた状態である。そこで、成形工程では含浸後複合部材の表面についている不要な原料粉末を除去する等して、含浸後複合部材の表面が平滑になるように成形する。
成形工程では、このようにして表面が平滑な表面成形後複合部材を得ることができる。
次に、本発明の製造方法が備える乾燥工程について説明する。
乾燥工程は、前記表面成形後複合部材から前記スラリー中の溶媒を分離除去し、乾燥後複合部材を得る工程である。
表面成形後複合部材は溶媒を含んでいるので、これを除去する。除去方法は特に限定されないが、溶媒の気化温度よりもやや高めの温度雰囲気内に表面成形後複合部材を保持することで、溶媒を気化させて分離除去することが好ましい。
例えば溶媒がエタノール、メタノール、アセトンなどであれば、100℃程度の雰囲気内(例えば乾燥機内)に30分程度保持することで、これを気化させて分離除去することができる。
このような方法によって表面成形後複合部材に残存している溶媒を分離除去して、乾燥後複合部材を得ることができる。
次に、本発明の製造方法が備える平滑化工程について説明する。
平滑化工程は、前記乾燥後複合部材に気相法を適用して、前記乾燥後複合部材の表面に被膜を形成し、表面が平滑化されたセラミックス基複合部材を得る工程である。
このようにして得られた平滑表面を有するセラミックス基複合部材を、以下では表面平滑化複合部材という。
例えば乾燥後複合部材を専用治具に固定して炉内に置き、密閉し、加熱し、減圧雰囲気にした後、メチルトリクロロシランを流入させることで、乾燥後複合部材の表面にSiCからなる被膜を形成して表面平滑化複合部材を得ることができる。
また、同様にして、CやBNの被膜を乾燥後複合部材の表面に形成して表面平滑化複合部材を得ることができる。
ここで焼成工程は含浸後複合部材、表面成形後複合部材、乾燥後複合部材または表面平滑化複合部材に含浸されている前記原料粉末を焼結または熱分解する工程を意味する。したがって、CVI法は焼成工程に該当しないが、PIP法は含浸物の熱分解を伴うので焼成工程に該当する。
本発明の製造方法が焼成工程を備えないと、本発明の製造方法によって得られる表面平滑化複合部材の表面がより平滑になるので好ましい。
SiC繊維(宇部興産株式会社製、チラノZMI繊維)を複数束ねてSiC繊維束を形成した。そして、SiC繊維束をマンドレル上にブレード織りし、ガスタービン静翼の立体形状を備える繊維織物を得た。
次に、繊維織物を専用治具に固定して炉内に置き、密閉し、加熱し、減圧雰囲気にした後、メチルトリクロロシランを流入させた。そして、繊維織物にSiCを含浸させて、セラミックス基複合部材(未処理複合部材)を得た。
得られた未処理複合部材の表面を肉眼で観察したところ、セラミックス繊維に由来する凹凸が存在することを確認した。
そして、脱泡した後、しばらく放置したところ、沈殿が生じた。沈殿部分における原料(SiC粉末)の濃度は厳密には測定できないものの50体積%程度と考えられる。
次に、未処理複合部材を別のエタノール中において脱泡した。そして、エタノール中から脱泡後の未処理複合部材を取り出し、スラリー中へ沈め、スラリー中の沈殿部分によって未処理複合部材の全体が覆われるようにした。そして超音波振動機を用いて振動を加えて、未処理複合部材へSiC粉末を含浸させた。
その後、スラリー中から未処理複合部材を取り出した。このようにして得られたSiC粉末が含浸された未処理複合部材を、以下では含浸後複合部材という。
実施例1では、原料粉末として平均粒子径が4μmのSiC粉末を用いたが、実施例2では、実施例1と同じSiC粉末とガラス粉末(200メッシュより細かい粒径、軟化点:約800℃)とを1:1(体積比)で含む原料粉末を用いた。
そして、それ以外は全て同じ操作を行って未処理複合部材を製造し、同様に肉眼で表面を観察した。そして、表面が平滑化されており、未処理複合部材には存在していた凹凸が存在しないことを確認できた。
実施例2では、SiC粉末とガラス粉末とを1:1(体積比)で含む原料粉末を用いたが、実施例3では、この比を0.6:1.4(体積比)とした。
そして、それ以外は全て同じ操作を行って未処理複合部材を製造し、同様に肉眼で表面を観察した。そして、表面が平滑化されており、未処理複合部材には存在していた凹凸が存在しないことを確認できた。
実施例1で用いた未処理複合部材にPIP処理を施した。具体的には、キシレンの中にポリカルボシランが溶解したポリカルボシラン溶液に、平均粒子径が4μmのSiC粉末を40体積%となるように添加してなる有機ケイ素ポリマーを用意し、ここへ未処理複合部材を沈め、減圧雰囲気内で1分程度真空引きした。そして、未処理複合部材を取り出し、800〜1000℃程度で焼成し、表面にPIPマトリックスが付いた処理後複合部材を得た。
得られた表面平滑化複合部材の表面を肉眼で観察した。図2に表面の写真を示す。この観察の結果、表面には凹凸が形成されており、孔や亀裂も存在することを確認した。これは焼成によってPIPマトリックスが収縮したためと推定される。また、焼成時にPIPマトリックス中から熱分解ガスを放出されることが原因と推定される。
Claims (4)
- 表面に凹凸を有するセラミックス基複合部材に、原料粉末を含むスラリーを用いた湿式加振含浸法を適用し、前記原料粉末が充填された含浸後複合部材を得る含浸工程と、
前記含浸後複合部材の表面が平滑になるように成形して表面成形後複合部材を得る成形工程と、
前記表面成形後複合部材から前記スラリー中の溶媒を分離除去し、乾燥後複合部材を得る乾燥工程と、
前記乾燥後複合部材に気相法を適用して、前記乾燥後複合部材の表面に被膜を形成し、表面が平滑化されたセラミックス基複合部材を得る平滑化工程と
を備え、焼成工程を備えない、平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。 - 前記スラリー中の原料粉末の濃度が30〜70体積%である、請求項1に記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
- 前記原料粉末が、非酸化物無機材料、酸化物無機材料、金属化合物および金属からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
- 前記原料粉末がガラス粉末を含み、そのガラス粉末の軟化点の温度と、使用環境温度との差が400℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の平滑表面を有するセラミックス基複合部材の製造方法。
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