以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態のマルチホップ通信システムが構成する無線ネットワークの概略図である。この無線ネットワークは、複数の住戸Kで構成される住戸群で用いられ、住戸群内には、所定範囲毎(例えば、半径500m毎)に親となる通信端末1が設置され、各住戸Kには、子となる通信端末2が設置される。なお以降、親となる通信端末1は親端末1と称し、子となる通信端末2は子端末2と称す。さらに、親端末1を個別に識別する場合は、親端末1−1、1−2、1−3、1−4、...の符号を用い、子端末2を個別に識別する場合は、子端末2−1、2−2、2−3、...の符号を用いる。
そして、子端末2は、各住戸Kに関する所定情報を、1台の親端末1へ無線送信する機能を有する。親端末1は、各住戸Kに関する所定情報を複数の子端末2から無線で取得し、取得した所定情報を、図示しない上位の管理装置へ光ファイバ回線等を用いて送信する機能を有する。例えば、親端末1が、各住戸Kにおける電力使用量、ガス使用量、水道使用量等の検針情報を、子端末2から取得することによって、遠隔検針システムを構成できる。また、親端末1が、予め設定された所定の情報を子端末2との間で送受することによって、各住戸K内の機器の状態を監視する遠隔監視システム、各住戸K内の機器の状態を制御する遠隔制御システム等を構成することも可能である。
この無線ネットワークでは、親端末1および子端末2は、マルチホップ通信により無線信号を互いに送受している。すなわち、本無線ネットワークでは、親端末1と各子端末2との間で直接または間接に通信が行われ、親端末1と直接通信できない子端末2は、通信可能な距離にある他の子端末2が通信パケットを順次中継することで、親端末1との間で通信を行っている。
また、このマルチホップ通信システムでは、1台の親端末1と、この親端末1へ所定情報を直接または間接に送信する1台〜複数台の子端末2とによって、小規模な無線ネットワークである通信セルが構築されている。すなわち、本実施形態では、複数の通信セルC1、C2、C3、C4、...が併設されている。各通信セルにおける親端末1は、互いに周波数の異なる複数の無線チャンネルから、通信パケットの送受信に用いる通信チャンネルを択一的に選択する。また子端末2は、自端末が属する親端末1が選択した通信チャンネルを用いて、通信パケットの送受信を行う。すなわち、同一通信セルに属する親端末1及び子端末2は、同じ周波数の無線チャンネルを利用して無線パケットの送受信を行う。各通信セルにおいて親端末1及び子端末2が互いの通信に用いるこの1つの無線チャンネルを、セル内チャンネルと称す。本実施形態では、各通信端末Aが利用可能な無線チャンネルとして、互いに周波数の異なる無線チャンネルCh1、Ch2、・・・が設定されている。
図2は、通信端末Aのブロック図である。本実施形態では、親端末1と子端末2とに同一の通信端末Aを用いており、例えば、通信端末Aは、ジャンパースイッチや切替スイッチ等の設定手段を用いて「親」に設定されることで親端末1として機能し、また「子」に設定されることで子端末2として機能する。また以降では、親端末1と子端末2とを区別しない場合、通信端末Aと称す。
通信端末Aは、記憶部10と、制御部20と、無線通信インタフェース部30とを備えて構成される。
記憶部10は、ROMなどの不揮発性のメモリ、EEPROMなどの書換え可能な不揮発性のメモリ、RAMなどの揮発性のメモリからなる。そして記憶部10は、通信ルートや通信可能な隣接端末(直接通信可能な親端末1または子端末2)に関するリンク情報などを記憶するテーブル記憶部101を備える。さらに記憶部10は、通信端末Aを動作させるための制御プログラム等の各プログラムや、各プログラムの実行に必要な情報等も記憶している。
本実施形態では、親端末1、子端末2の各々に、ユニークな端末IDが割り付けられ、各通信端末Aの記憶部10には、自端末に割り付けられた端末IDも格納されている。本実施形態では、親端末1−1、1−2、1−3、....に、端末ID「M1」、「M2」、「M3」...が、予め割り付けられている。また、子端末2−1、2−2、2−3、....には、後述する通信ルートが構築された場合に、親端末1によって端末ID「T1」、「T2」、「T3」...が割り付けられる。
また、通信端末Aの各々には、シリアル番号(製造番号)やMACアドレス等の装置IDが予め割り付けられており、各通信端末Aの記憶部10には、この装置IDが予め格納されている。そして、通信端末Aが送受信する通信パケットは、この装置IDが付加されることによって通信制御がなされる。
また、各通信セルの各々には、ユニークな通信セルIDが割り付けられ、通信端末Aは、通信パケットに自端末が属する通信セルの通信セルIDを含めて送信する。本実施形態では、通信セルに属する親端末1の端末IDを通信セルIDとして用いており、通信セルC1、C2、C3、....の通信セルIDは、それぞれ「M1」、「M2」、「M3」、....が用いられる。なお、この通信IDが、本発明の通信セル情報に相当する。
親端末1および子端末2のテーブル記憶部101には、図3に示す隣接端末管理テーブルTB11が格納され、親端末1のテーブル記憶部101には、図5に示す検知情報管理テーブルTB12が格納される。また、親端末1のテーブル記憶部101には、図4(a)に示す通信ルートテーブルTB21が格納され、子端末2のテーブル記憶部101には、図4(b)に示す通信ルートテーブルTB22が格納される。
隣接端末管理テーブルTB11は、図3に示すように、他の通信端末Aによって中継されることなく、当該通信端末Aと直接通信することができる通信端末A(以降、隣接端末Aと称す)に関する情報(隣接端末情報)を、テーブル形式で記憶している。具体的に、隣接端末管理テーブルTB11は、隣接端末ID、端末種類、受信リンク通信品質、送信リンク通信品質、リンク通信品質の各フィールドが設けられている。
隣接端末管理テーブルTB11において、隣接端末IDは、自端末と直接通信が可能な通信端末Aに割り付けられた端末IDである。端末種類は、隣接端末Aの種類(親端末1「親」または子端末2「子」)を示す。受信リンク通信品質は、隣接端末Aから自端末への通信リンクの通信品質を示す。送信リンク通信品質は、自端末から隣接端末Aへの通信リンクの通信品質を示す。リンク通信品質は、隣接端末Aと自端末との間の通信リンクにおける通信品質を示す。
直接通信可能な2台の通信端末A−A間の通信リンクにおけるリンク通信品質は、例えば、通信品質値SQが用いられる。通信品質値SQは、直接通信可能な2台の通信端末A−A間の受信信号強度が大きいほど小さくなる10段階や20段階等の整数値で表される。すなわち、通信品質値SQは、その整数値が小さいほど、通信パケットの減衰が小さく、通信状態がよい。
そして、通信パケットを受信する場所におけるノイズレベルや干渉レベルが異なる場合、通信リンクにおける双方向の通信品質は互いに異なり、通信リンクにおける双方向の通信品質は、受信リンク通信品質および送信リンク通信品質で構成される。受信リンク通信品質は、直接通信可能な2台の通信端末A−A間のリンクにおいて、自端末Aが他の通信端末Aから通信パケットを受信したときの受信信号強度である。送信リンク通信品質は、直接通信可能な2台の通信端末A−A間のリンクにおいて、自端末Aが他の通信端末Aへ通信パケットを送信し、他の通信端末Aが通信パケットを受信したときの受信信号強度である。
隣接端末管理テーブルTB11においても、通信端末Aにおける受信リンク通信品質および送信リンク通信品質の各フィールドが設けられている。そして、通信端末A−A間で通信を行った場合に通信の確実性(信頼性)を保証する観点から、受信リンク通信品質と送信通信品質とのうち、通信状態の悪い方(リンク通信品質の値が大きい方)が、2台の通信端末A−A間のリンク通信品質として採用される。
そして、親端末1と子端末2との間における通信ルートの通信品質の評価である後述のルート通信品質は、親端末1と子端末2との間の通信ルートを構成する各通信リンクのリンク通信品質の和が採用される。
なお、上述の通信品質値SQは、受信信号強度と関連付けられたが、受信信号強度に代えて、SN比、EVM(Error Vector Magnitude)、ビットエラーレート、パケットエラーレート等の他の要素と関連付けて算出してもよい。
次に、検知情報管理テーブルTB12には、親端末1と同じ通信セルに属する各子端末2により検知された、同一の通信チャンネルを利用する通信セル(干渉セル)を示す情報(検知情報)をテーブル形式で記憶している。具体的に、検知情報管理テーブルTB12は、干渉セルを検出した子端末の端末ID(子端末ID)、検知された干渉セルの通信セルID(干渉セルID)、検知時刻の各フィールドが設けられている。この干渉セルが、本発明の第2の通信セルに相当する。なお、検知情報管理テーブルTB12は、検知時刻から一定時間経過した検知情報については、定期的に削除されるよう設定されている。
次に、親端末1と子端末2との間における通信ルートは、1乃至複数の通信リンクによって形成されている。そして、親端末1が保持する通信ルートテーブルTB21(図4(a)参照)は、親端末1−この親端末1の配下にある子端末2間における通信ルートに関する情報(通信ルート情報)を、テーブル形式で記憶している。具体的に、通信ルートテーブルTB21は、端末ID、ルート通信品質、ホップ数、ホップ先の各フィールドが設けられている。
親端末1が保持する通信ルートテーブルTB21において、端末IDは、通信ルートが構築された配下の子端末2に割り付けられた端末IDである。ルート通信品質は、端末IDフィールドに登録された子端末2までの通信ルートにおける通信品質を示す。ホップ数は、端末IDフィールドに登録された子端末2までの通信ルートにおけるホップ数を示す。ホップ先は、端末IDフィールドに登録された子端末2までの通信ルートにおいて、各ホップにおける送信先の通信端末Aを示す。
次に、子端末2が保持する通信ルートテーブルTB22(図4(b)参照)は、子端末2−この子端末2と通信可能な親端末1間の通信ルートに関する情報(通信ルート情報)を、テーブル形式で記憶している。具体的に、通信ルートテーブルTB22は、端末ID、ルート通信品質、ホップ数、ホップ先の各フィールドが設けられている。
子端末2が保持する通信ルートテーブルTB22において、端末IDは、この子端末2と通信可能な親端末1に割り付けられた端末IDである。ルート通信品質は、端末IDフィールドに登録された親端末1までの通信ルートにおける通信品質を示す。ホップ数は、端末IDフィールドに登録された親端末1までの通信ルートにおけるホップ数を示す。ホップ先は、端末IDフィールドに登録された親端末1までの通信ルートにおいて、各ホップにおける送信先の通信端末Aを示す。
通信ルートテーブルTB21、TB22において、ホップ数は、自端末から通信先端末までの通信ルートにおける通信端末Aの台数である。例えば、子端末2−2が子端末2−1を介して親端末1と通信を行う通信ルートの場合は、ホップ数は「2」となる。ホップ先は、自端末から通信先端末に至るまでに経由する通信端末Aの端末IDが経由順に登録され、最後は、端末IDフィールドに登録された通信端末Aの端末IDが登録される。
次に、無線通信インタフェース部30は、無線信号を用いて他の通信端末Aとの間で通信を行うための通信インタフェース回路である。そして、無線通信インタフェース部30は、互いに周波数の異なる複数の無線チャンネルから択一的に選択された無線チャンネルをセル内チャンネルとして用いて、自端末が属する通信セル内における通信パケットの送受信に用いる。
制御部20は、通信端末Aの各部を制御することによって通信端末A全体の動作を制御する装置であり、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等で構成される。そして、制御部20は、テーブル管理部201と、通信処理部202と、送信タイマ部203とを備えて、直接または間接に子端末2と親端末1との間の通信ルートを構築するための処理である通信ルート構築処理を実行する。
また、制御部20は、チャンネル切替処理部204と、干渉検出部205と、変更タイマ部206とを備え、子端末2と親端末1との間で通信パケットの送受信に用いるセル内チャンネルを決定・変更するための処理であるセル内チャンネル決定処理を実行する。
テーブル管理部201は、記憶部10のテーブル記憶部101に記憶されている各テーブルの登録内容を管理する。通信処理部202は、無線通信インタフェース部30を用いて、他の通信端末Aとの間で通信パケットを送受信し、後述の動作を行うことによって、親端末1と子端末2との間の通信ルートを構築するための通信ルート構築処理を行う。送信タイマ部203は、所定の時間の経過を計る計時手段であり、所定の時間間隔で通信処理部202に各種通信パケットの送信タイミングの到来を通知する。
チャンネル切替処理部204は、干渉検出部205にて検出される通信セル間の通信の干渉状況などに基づいて、複数の無線チャンネルからセル内チャンネルを択一的に選択し、無線通信インタフェース部30に設定する。干渉検出部205は、通信処理部202で受信した他の通信端末Aから送信された通信パケットから、通信セル間の干渉状況を検出してチャンネル切替処理部204に出力する。変更タイマ部206は、所定の時刻になったことを検知する計時手段であり、チャンネル切替処理部204に通信チャンネルの変更タイミングの到来を通知する。
次に、本無線ネットワークにおける通信ルートの構築について説明する。
まず、通信端末Aが起動されると、各通信端末Aの制御部20における送信タイマ部203は、ハローパケット(Hello Packet、以下、「Hパケット」と称する)を送信すべく計時を開始する。送信タイマ部203は、タイムアップすると、Hパケットの送信タイミングである旨を通信処理部202に通知する。通信処理部202は、この通知を受けると、Hパケットを無線ネットワークに同報通信で送信する。
Hパケットは、各通信端末Aが、他の通信端末Aに対して自端末の生存を報知する通信パケットである。図6(a)は、Hパケットのフォーマットを示し、送信元端末ID部と、送信先端末ID部と、セルID部と、オペレーションコード部と、端末種類部と、通信ルート部とを備えて構成される。
Hパケットの送信元端末ID部は、Hパケットを送信した通信端末Aの端末IDが収容される。送信先端末ID部は、Hパケットの送信先となる通信端末Aの端末IDが収容され、Hパケットの場合は、ブロードキャスト等の同報通信のコード「BC」が収容される。セルID部は、Hパケットを送信した通信端末Aが属する通信セルに割り当てられた通信セルIDが収容される。本実施形態では、親端末1は、自端末の端末IDを収容し、子端末2は、自端末が属する通信セルの親端末1の端末IDを収容する。オペレーションコード部は、Hパケットのコードが収容される。端末種類部は、Hパケットを送信した通信端末Aが親端末1と子端末2とのいずれであるかを識別するための情報が収容される。
さらにHパケットの通信ルート部は、子端末2から親端末1までの通信ルートを表す通信ルート情報、およびこの通信ルートの通信品質を表すルート品質情報が収容される。通信ルート情報は、子端末2から親端末1までの通信ルートにおいて経由する通信端末Aの端末IDが順に並べられることによって表される。ルート品質情報は、通信ルート内のリンク通信品質の和で表され、このリンク通信品質の和をルート通信品質と称す。
例えば、子端末2−2が子端末2−1を介して親端末1との間で通信ルートを構築し、そのルート通信品質が17であるとする。この場合、子端末2−2が送信するHパケットの通信ルート部には、「T2→T1→M1;17」が収容される。この通信ルートのホップ数は「2」になる。また、親端末1が送信するHパケットの通信ルート部は、「null」(または空データ)となり、ホップ数「0」、ルート通信品質「0」に相当する。
なお、Hパケットは、無線ネットワークの通信トラフィックを抑制するために、通信端末Aが親端末1に設定されている場合、および通信端末Aが、親端末1までの通信ルートが構築されている子端末2である場合に、各通信端末Aから送信される。そして、このHパケットの送信処理は、起動後、一定時間間隔で行われる。
また親端末1までの通信ルートが構築されていない子端末2は、このHパケットを受信して、Hパケットのルート通信品質情報などに基づいて子端末2−親端末1間の通信コストを求め、通信コストが最も小さな親端末1及び親端末1までの通信ルートを構築する。なお、親端末1と子端末2間の通信ルートを構築する方法については、既知の技術であるので詳細な説明は省略する。
次に、本無線ネットワークにおける通信チャンネルの決定方法について、図7のシーケンスを用いて説明する。
まず、親端末1が起動されると、親端末1のチャンネル切替処理部204は、所定の無線チャンネルを仮のセル内チャンネルとして通信インタフェース部30に設定する(ステップS1)。ここで、仮のセル内チャンネルとしたのは、周囲の通信セルにおいてどの無線チャンネルがセル内チャンネルとして利用されているのかが不明であるので、以降の動作を行うことでセル内チャンネルが変更されることを想定したためである。なお、この仮のセル内チャンネルを決定する際には、例えば、利用可能な無線チャンネルごとに無線信号強度を測定し、この信号強度が最も低いものを選択するようにしてもよく、利用可能な無線チャンネルからランダムに選択するようにしてもよい。
ここで、この親端末1の周囲に配置された子端末2は、仮のセル内チャンネルを用いて送信されたHパケットを受信し、自端末が属する通信セルよりも通信品質が高い場合には、この親端末1との間で通信ルートを構築する。これにより、この親端末1の周囲に配置された子端末2は、親端末1と同じセル内チャンネルを用いて直接的・間接的に通信を行い、この親端末1と子端末2とを含む通信セルが形成される。なお、子端末2は、自端末が属する通信セルの親端末1に付与された端末IDを、通信セルIDとして記憶部10に記憶する。
本実施形態において、図1に示すように、通信セルC1には、親端末1−1、子端末2−1、2−2、2−3が含まれ、通信セルC2には、親端末1−2、子端末2−4、2−5が含まれ、通信セルC3には、親端末1−3、子端末2−6が含まれる。そして、子端末2−2は、子端末2−1を中継して親端末1−1と間接的に通信し、子端末2−1及び子端末2−3は、親端末1−1と直接的に通信する。また、子端末2−5は、子端末2−4を中継して親端末1−2と間接的に通信し、子端末2−4は、親端末1−2と直接的に通信する。また、子端末2−6は、親端末1−3と直接的に通信する。
ここで、親端末1−1、1−2、1−3は、何れも通信パケットの送受信に利用するセル内チャンネルとして、チャンネルCh1が設定されている。また、子端末2−2と直接通信可能な範囲には、子端末2−1、2−5が存在する。すなわち、子端末2−2と子端末2−5は、互いに異なる通信セルに含まれているが、同じセル内チャンネルを用いて無線パケットの通信を、各通信セル内で行っている。さらに、子端末2−3と直接通信可能な範囲には、親端末1−1と子端末2−6が存在する。すなわち、子端末2−3と子端末2−6は、互いに異なる通信セルに含まれているが、同じセル内チャンネルを用いて無線パケットの通信を、各通信セル内で行っている。
ここで、各子端末2は、上述のように定期的にHパケットを送信するとともに、周囲の通信端末Aから送信されたHパケットを受信している。なお、本実施形態では、自端末が属する通信セルのセル内チャンネルを用いて送信されるHパケットを受信している。
子端末2は、Hパケットを受信すると、Hパケットに含まれる通信セルIDと、自端末が属する通信セル(第1の通信セル)の通信セルIDとを比較する。本実施形態では、通信セルIDとして親端末1の端末IDを用いているので、実際には、Hパケットに含まれる通信セルIDと、自端末が属する通信セルの親端末1の端末IDとを比較する。この比較の結果、双方の通信セルIDが異なれば、自端末が属する通信セルと同じセル内チャンネルを使用する他の通信セルである干渉セル(第2の通信セル)を検知したことを示すチャンネル検知情報パケット(以降、Dパケットと称す)を、自端末が属する通信セルの親端末1に向けて直接または間接に送信する。なお、Dパケットが、本発明の検知情報に相当する。
図6(b)は、このDパケットのフォーマットを示している。Dパケットは、送信元端末ID部と、送信先端末ID部と、セルID部と、オペレーションコード部と、検知情報部とを備えて構成される。
Dパケットの送信元端末ID部は、Dパケットを送信した通信端末Aの端末IDが収容される。送信先端末ID部は、Dパケットの送信先となる通信端末Aの端末IDが収容され、Dパケットの場合は、通信端末Aが属する通信セルの親端末1の端末IDが収容される。セルID部は、Dパケットを送信する通信端末Aが属する通信セルに割り当てられた通信セルIDが収容される。本実施形態では、親端末1は、自端末の端末IDを収容し、子端末2は、自端末が属する通信セルの親端末1の端末IDを収容する。オペレーションコード部は、Dパケットのコードが収容される。検知情報部には、例えば受信したHパケットに含まれるセルID部と同じ値であり、検知した干渉セルの通信セルIDを示す干渉セルIDが収容される。
具体的に図7において、通信セルC2に属する子端末2−5が周囲の端末にHパケットを送信すると(ステップS2)、子端末2−2、2−4は、それぞれ子端末2−5からのHパケットを受信する。Hパケットを受信した子端末2−4は、子端末2−5と同一の通信セルC2に含まれているので、Dパケットの送信を行わない。
Hパケットを受信した子端末2−2は、通信セルC1に属しており、Hパケットに含まれる通信セルIDと、自端末が属する通信セルの通信セルIDとが異なるので、Dパケットを子端末2−1を中継して親端末1−1に間接的に送信する(ステップS3)。
次に、親端末1−1の通信処理部202は、通信セルC1に属する子端末2−2から送信されたDパケットを受信し(ステップS4)、チャンネル切替処理部204にDパケットを通知する。チャンネル切替処理部204は、Dパケットを送信した子端末2−2の端末IDと、Dパケットを受信した時刻と、Dパケットに含まれる干渉セルIDを検知情報管理テーブルTB12に記憶させる。
具体的に図7において、親端末1−1は、子端末2−2から送信されたDパケットを受信すると、現在の時刻を検知時刻として、子端末2−2の子端末ID、Dパケット内の干渉セルID、及び、検知時刻を検知情報管理テーブルTB12に記憶する(ステップS5)。
次に、親端末1−1のチャンネル切替処理部204は、検知情報管理テーブルTB12に含まれる各情報に基づいて、セル内チャンネルを他の無線チャンネルに切り替える必要があるかを判断し、必要が有ればセル内チャンネルを切り替える。なお、本実施形態では、Dパケットを受信したことをトリガとして、このセル内チャンネルの切り替え処理を開始しているが、所定の時間周期ごとにセル内チャンネルの切り替え処理を開始するようにしてもよい。
まず、親端末1−1の干渉検出部205は、検知情報管理テーブルTB12の各レコードを参照して、通信セルごとに、セル内チャンネルCh1における干渉度合を導出する。本実施形態において、干渉検出部205は、検知情報管理テーブルTB12に干渉セルIDが格納された通信セルの干渉度合を常に「1」とする。
そして、親端末1−1は、通信セルごとに導出した干渉度合の和(すなわち、親端末1−1のセル内チャンネルCh1を用いる干渉セルの数)と、所定の閾値とを比較し、干渉セルの数がこの閾値よりも大きければ、後述するセル内チャンネルの変更処理を行う。なお、本実施形態では、閾値として「1」が予め記憶部10に記憶されている。
具体的に図7において、親端末1−1は、子端末2−2から子端末2−1経由で送信されたDパケットに基づいて種々の情報を検知情報管理テーブルTB12に格納後、干渉検出部205が干渉セルの数を求める。ここで、検知情報管理テーブルTB12には、子端末2−2からの情報のみが格納されており、干渉セルの数は「1」となるので、セル内チャンネルの変更処理は行わない。
次に、通信セルC3に属する子端末2−6がHパケットを送信すると(ステップS6)、子端末2−3は、このHパケットを受信する。Hパケットを受信した子端末2−3は、通信セルC1に属しており、Hパケットに含まれる通信セルIDと、自端末が属する通信セルの通信セルIDとが異なるので、Dパケットを親端末1−1へ直接的に送信する(ステップS7)。この時、親端末1−1に送信されるDパケットの検知情報部には、子端末2−6が属する通信セル(干渉セル)の通信セルID(干渉セルID)を意味する「M3」が収容されている。
親端末1−1は、子端末2−3から送信されたDパケットを受信すると、子端末2−3の子端末ID、Dパケット内の干渉セルID、及び、検知時刻を検知情報管理テーブルTB12に記憶する(ステップS8)。その後、親端末1−1は、上述の干渉セルの数を求める。ここで、検知情報管理テーブルTB12には、子端末2−2と子端末2−3のそれぞれから送信された情報が格納されており、干渉セルの数は「2」となり閾値「1」よりも大きいので、セル内チャンネルの変更処理を開始する。
図8は、セル内チャンネルの変更処理を示すフローチャートである。
まず、セル内チャンネルの変更処理を行うにあたって、親端末1との通信ルートが構築されている子端末2は、全ての無線チャンネルを所定の時間間隔をあけて順次にスキャンする処理を、周期的に常に行っている。ここで、各無線チャンネルをスキャンする時間は、Hパケットの送信間隔よりも長い時間に設定されており、スキャン対象の無線チャンネルを使用している他の端末装置Aがあれば、確実にHパケットを受信できるようにしている。次に、子端末2は、スキャンした各無線チャンネルでHパケットを受信すると、無線チャンネルの利用状況を示すチャンネル利用状況通知パケットを、自端末が属する通信セルの親端末1に送信する。なお、チャンネル利用状況通知パケットが、本発明のチャンネル利用情報に相当する。
図9は、このチャンネル利用状況通知パケットのフォーマットを示している。チャンネル利用状況通知パケットは、送信元端末ID部と、送信先端末ID部と、セルID部と、オペレーションコード部と、チャンネル利用情報部とを備えて構成される。
チャンネル利用状況通知パケットの送信元端末ID部は、チャンネル利用状況通知パケットを送信した通信端末Aの端末IDが収容される。送信先端末ID部は、チャンネル利用状況通知パケットの送信先となる通信端末Aの端末IDが収容され、チャンネル利用状況通知パケットの場合は、通信端末Aが属する通信セルの親端末1の端末IDが収容される。セルID部は、チャンネル利用状況通知パケットを送信する通信端末Aが属する通信セルに割り当てられた通信セルIDが収容される。本実施形態では、親端末1は、自端末の端末IDを収容し、子端末2は、自端末が属する通信セルの親端末1の端末IDを収容する。オペレーションコード部は、チャンネル利用状況通知パケットのコードが収容される。チャンネル利用情報部は、Hパケットを受信した無線チャンネルを示すチャンネル情報と、このチャンネル情報が示す無線チャンネルを用いて受信したHパケットのセルID部に基づく通信セルID(通信セル情報)とを対にして収容している。すなわち、チャンネル利用状況通知パケットは、チャンネル利用状況通知パケットを受信した親端末1が属する通信セル(第1の通信セル)の周囲に存在する他の通信セルである隣接セル(第3の通信セル)の通信セルID、この隣接セルが用いるセル内チャンネルを通知している。なお、本実施形態においては、チャンネル情報として、無線チャンネルCh1の場合には「1」、無線チャンネルCh2の場合には「2」などのチャンネル番号が収容される。このチャンネル番号は、本発明の無線チャンネルの識別番号に相当する。
そして、親端末1のテーブル記憶部101には、図10に示すチャンネル情報管理テーブルTB13が更に記憶される。チャンネル情報管理テーブルTB13には、親端末1が属する通信セルに属する各子端末2により検知された、隣接セルにおけるセル内チャンネルの利用状況を示す情報(チャンネル利用情報)をテーブル形式で記憶している。具体的に、チャンネル情報管理テーブルTB13は、子端末ID、隣接セルの通信ID(隣接セルID)、検知時刻、及び、隣接セルにおけるセル内チャンネル(使用チャンネル)の各フィールドが設けられている。
このように、親端末1は、自端末が属する通信セルに属する子端末2から送信されたチャンネル利用状況通知パケットを受信すると、このパケットに含まれる各情報をチャンネル情報管理テーブルTB13に記憶させる。
そして、上記のように構成された親端末1において、干渉検出部205は、チャンネル情報管理テーブルTB13の各レコードを参照して、切替先の無線チャンネルの干渉レベルを導出する。
例えば、親端末1−1の干渉検出部205は、チャンネル情報管理テーブルTB13の使用チャンネルフィールドを参照して、使用チャンネルを抽出する。図11は、全無線チャンネルCh1〜Ch10とした場合に、使用チャンネルの抽出例を示し、使用チャンネルCh1,Ch6,Ch7,Ch10とする(図11中の横線領域)。なお、使用チャンネルは、親端末1−1のセル内チャンネルCh1と、親端末1−1の隣接セルにおけるセル内チャンネルとで構成される。
次に、親端末1−1の干渉検出部205は、全ての無線チャンネルから、使用チャンネル以外の未使用チャンネルが存在するか否かを判断する(ステップS101)。図11では、未使用チャンネルCh2〜Ch5,Ch8,Ch9が存在する(図11中の白抜き領域)。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、未使用チャンネルのそれぞれの離隔指数に基づいて、未使用チャンネルからセル内チャンネルの候補を絞り込む(ステップS102)。
まず、親端末1−1の干渉検出部205は、未使用チャンネルCh2〜Ch5,Ch8,Ch9の干渉レベルを求める。この干渉レベルは、未使用チャネルと使用チャンネルとの間の周波数距離に基づいて導出される。具体的には図11に示すように、まず、未使用チャンネルの低周波側で最も近い使用チャンネルと未使用チャンネルとの周波数距離X1、未使用チャンネルの高周波側で最も近い使用チャンネルと未使用チャンネルとの周波数距離X2を、未使用チャンネル毎に求める。この低周波側の周波数距離X1,高周波側の周波数距離X2は、無線チャンネルのチャンネル番号の差で表される。
例えば、未使用チャンネルCh2、使用チャンネルCh1,Ch6の場合、低周波側の周波数距離X1=1、高周波側の周波数距離X2=4になる。未使用チャンネルCh3、使用チャンネルCh1,Ch6の場合、低周波側の周波数距離X1=2、高周波側の周波数距離X2=3になる。未使用チャンネルCh4、使用チャンネルCh1,Ch6の場合、低周波側の周波数距離X1=3、高周波側の周波数距離X2=2になる。未使用チャンネルCh5、使用チャンネルCh1,Ch6の場合、低周波側の周波数距離X1=4、高周波側の周波数距離X2=1になる。未使用チャンネルCh8、使用チャンネルCh7,Ch10の場合、低周波側の周波数距離X1=1、高周波側の周波数距離X2=2になる。未使用チャンネルCh9、使用チャンネルCh7,Ch10の場合、低周波側の周波数距離X1=2、高周波側の周波数距離X2=1になる。
次に、図12に示すように、周波数距離に対応した離隔指数が予め設定されており、周波数距離X1,X2を離隔指数に変換する。ここで、周波数距離「1」は、離隔指数「10」に対応し、周波数距離「2」は、離隔指数「3」に対応し、周波数距離「3以上」は、離隔指数「1」に対応しており、離隔指数は、周波数距離が長いほど小さくなる。例えば、低周波側の周波数距離X1=1、高周波側の周波数距離X2=4の場合、周波数距離X1,X2に対応する各離隔指数は、低周波側の離隔指数「10」,高周波側の離隔指数「1」になる。
次に、周波数距離X1,X2に対応する各離隔指数の和を、干渉レベルとして導出する。すなわち、干渉レベル=低周波側の離隔指数+高周波側の離隔指数となる。
例えば、高周波側の周波数距離X1,低周波側の周波数距離X2に対応する各離隔指数が「10」,「1」の場合、干渉レベル=10+1=11になる。この干渉レベルは、未使用チャンネルと使用チャンネルとの干渉レベルを示し、干渉レベルが低いほど、未使用チャンネルと使用チャンネルとが干渉しにくい傾向になる。
したがって、図11において、未使用チャンネルCh2の干渉レベル=11(=10+1)、未使用チャンネルCh3の干渉レベル=4(=3+1)、未使用チャンネルCh4の干渉レベル=4(=1+3)になる。さらに、未使用チャンネルCh5の干渉レベル=11(=1+10)、未使用チャンネルCh8の干渉レベル=13(=10+3)、未使用チャンネルCh9の干渉レベル=13(=3+10)になる。
すなわち、図11に示す未使用チャンネルCh2,Ch3,Ch4,Ch5,Ch8,Ch9の各干渉レベルは、「11」,「4」,「4」,「11」,「13」,「13」になる。この場合、最小の干渉レベル「4」である未使用チャンネルCh3,Ch4が、セル内チャンネルの候補になる。
次に、親端末1−1の干渉検出部205は、検知情報管理テーブルTB12の干渉セルIDを参照する。この干渉セルIDは、自端末と同一のセル内チャンネルを用いる干渉セルに属する親端末1の通信IDである。そして、自端末と、同一のセル内チャンネルを用いる干渉セルに属する親端末1とのそれぞれには、この通信IDの大小によって優先順位nが設定される。そこで、親端末1の干渉検出部205は、自端末の優先順位nを関数f(n)に適用して、関数f(n)の算出結果を得る(ステップS103)。そして、親端末1の干渉検出部205は、乱数生成手段を有しており、関数f(n)の算出結果と乱数の生成結果との大小関係によって、自端末においてセル内チャンネルの変更を実行するか否かを判定する(ステップS104)。例えば、定数aとした場合、関数f(n)=exp{−a(n−1)}で表され、親端末1の通信IDが小さいほど優先順位nを高く設定すれば、通信IDが小さい親端末1ほど、セル内チャンネルの変更確率が高くなる。
自端末が属する通信セルと干渉セルとの全てが、セル内チャンネルを等しく変更した場合、変更後に再干渉する可能性が高くなる。しかしながら、上述のように、自端末と、干渉セルに属する親端末1との各優先順位に基づいて、セル内チャンネルの変更確率が設定されるので、セル内チャンネルの変更後に再干渉する可能性を抑制できる。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、セル内チャンネルの変更を実行すると判定した場合、セル内チャンネルの候補である未使用チャンネルCh3,Ch4のそれぞれに対して、チャンネル番号jをパラメータとする確率密度関数p(j)を算出する(ステップS105)。例えば、定数b,c、無線チャンネルChjの干渉レベルRjとした場合、確率密度関数p(j)=b/(Rj+cj)で表され、無線チャンネルのチャンネル番号jが小さいほど、確率密度関数p(j)は高くなる。なお、定数bは、Σp(j)=1になるように設定される。一方、ステップS104においてセル内チャンネルの変更を実行しないと判定した場合は、本処理を終了する。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、未使用チャンネルCh3,Ch4のうち確率密度関数p(j)が高い未使用チャンネルCh3を、切替先のセル内チャンネルに選択する。親端末1−1のチャンネル切替処理部204は、通信セルC1の新たなセル内チャンネルに未使用チャンネルCh3を設定する(ステップS106)。
例えば、セル内チャンネルの候補である未使用チャンネルCh3,Ch4からランダムに選択した場合、システムにおけるセル内チャンネルの再設定処理が収束した後には、システム全体で用いるセル内チャンネルの数が多くなる。しかし、上述のように、無線チャンネルのチャンネル番号jが小さいほど、新たなセル内チャンネルに選択され易くすることによって、少ない無線チャンネル数でシステムを運用可能になる。
また、確率密度関数p(j,n)=b/(Rj+c|j−n|)を用いてもよい。この場合、優先順位nの親端末1に対しては、チャンネル番号jの未使用チャンネルが、新たなセル内チャンネルに選択される確率が高くなる。したがって、複数の通信セルに対して、同一のセル内チャンネルを設定する確率が低下し、セル内チャンネル変更後の再干渉を抑制できる。
さらに、親端末1−1の干渉検出部205は、過去において、セル内無線チャンネルとしてチャンネル番号j1の無線チャンネルを用いていた場合に、干渉セルとの干渉によって、他の無線チャンネルに変更した履歴を有するとする。この場合、セル内チャンネルの候補である未使用チャンネルに、チャンネル番号j1の無線チャンネルがある場合、チャンネル番号j1の確率密度関数が低下する方向に、確率密度関数p(j)または確率密度関数p(j,n)を変更して、チャンネル番号j1の選択確率を低下させてもよい。この場合、過去に干渉履歴のある無線チャンネルをセル内チャンネルに設定した後に、セル内チャンネルを元の無線チャンネルに戻すという繰り返しの発生を抑制できる。
また、親端末1−1の干渉検出部205は、ステップS101において未使用チャンネルがない場合、全ての無線チャンネルのなかで干渉セルの数が最小である無線チャンネルが、現在のセル内チャンネルCh1であるか否かを判定する(ステップS107)。具体的に、親端末1−1の干渉検出部205は、テーブル記憶部101に記憶しているチャンネル情報管理テーブルTB13を参照して、同一の無線チャンネルを用いる隣接セルの数を導出する。そして、親端末1−1の干渉検出部205は、現在のセル内チャンネルCh1における干渉セルの数を、他の無線チャンネルにおける干渉セルの数と比較する。
そして、全ての無線チャンネルのうち、現在のセル内チャンネルCh1の干渉セルの数が最小である場合、本処理を終了して、通信セルC1はセル内チャンネルCh1を維持する。一方、現在のセル内チャンネルCh1の干渉セルの数が最小でない場合、干渉セルの数が最小である1乃至複数の他の無線チャンネルを、セル内チャンネルの候補とする(ステップS108)。そして、この干渉セルの数が最小であるセル内チャンネルの候補に対して、上記ステップS103〜S106の処理を行って、いずれか1つの候補を切替先のセル内チャンネルに選択し、通信セルC1の新たなセル内チャンネルに設定する。
次に、親端末1−1は、セル内チャンネルを変更する変更時刻を現在の時刻から求め、この変更時刻と新たなセル内チャンネルとを含むチャンネル変更通知パケットを、自端末と同じ通信セルC1に属する全ての子端末2に向けて同報通信により送信する。ここで、この変更時刻は、例えば、現在の時刻から5分後の時刻であり、自端末と同じ通信セルC1に属する全ての子端末2が、このチャンネル変更通知パケットを正常に受信可能な時刻に設定されていればよい。
チャンネル変更通知パケットのフォーマットを図6(c)に示す。チャンネル変更通知パケットは、送信元端末ID部と、送信先端末ID部と、セルID部と、オペレーションコード部と、変更時刻部と、通信チャンネル部とを備えて構成される。
チャンネル変更通知パケットの送信元端末ID部は、チャンネル変更通知パケットを送信した通信端末Aの端末IDが収容される。送信先端末ID部は、チャンネル変更通知パケットの送信先となる通信端末Aの端末IDが収容され、チャンネル変更通知パケットの場合は、ブロードキャスト等の同報通信のコード「BC」が収容される。セルID部は、チャンネル変更通知パケットを送信した通信端末Aが属する通信セルに割り当てられた通信セルIDが収容される。本実施形態では、親端末1は、自端末の端末IDを収容し、子端末2は、自端末が属する通信セルの親端末1の端末IDを収容する。オペレーションコード部は、チャンネル変更通知パケットのコードが収容される。変更時刻部には、通信チャンネルの変更を開始する変更時刻が収容され、通信チャンネル部には、変更時刻において変更する通信チャンネルを識別可能な値が収容されている。
具体的に図7において、親端末1−1は、新たな通信チャンネルをチャンネルCh3とし、通信チャンネルの変更時刻を現在時刻から5分後に設定して(ステップS9)、チャンネル変更通知パケットを同報通信により送信する(ステップS10)。
チャンネル変更通知パケットを受信した通信セルC1内の子端末2は、チャンネル変更通知パケットの変更時刻部に格納された時刻に通信チャンネルを変更するため、自端末が備える変更タイマ部206を起動する(ステップS12)。この時、子端末2−2は、子端末2−1がチャンネル変更通知パケットを中継することで(ステップS11)、親端末1−1からのチャンネル変更通知パケットを受信する。また、自端末が属する通信セルとは異なる通信セルのチャンネル変更通知パケットを受信した場合は、これらの処理を行わない。
その後、所定の時間が経過して変更時刻になると、親端末1−1及び各子端末2のチャンネル切替処理部204は、変更タイマ部206からの通知を受けて、通信チャンネルをチャンネルCh3に変更する(ステップS13)。このようにして、親端末1−1及び各子端末2を含む通信セルC1で利用する通信チャンネルは、新たな通信チャンネルであるチャンネルCh3に変更される。
これにより、子端末2−2及び子端末2−5と、子端末2−3及び子端末2−6は、それぞれ別の通信チャンネルを用いて、各通信セル内で通信パケットの送受信を行うので、通信パケットの干渉を低減することができる。
このように、本システムでは、親端末1同士による通信や、サーバ等の集中的な管理が不要で、通信セル間における無線パケットの干渉を低減することができる。さらに、未使用チャンネルの中でも、使用チャンネルからの漏れ電力による干渉が少ない無線チャンネルを選択できるので、他の通信セルからの漏れ電力による無線パケットの干渉を抑制して、周波数軸からみた干渉を抑制できる。
(実施形態2)
本実施形態のマルチホップ通信システムは、実施形態1と同様の構成を備えて、未使用チャンネルの設定が実施形態1とは異なるものであり、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
図13は、全無線チャンネルCh1〜Ch10とした場合に、親端末1−1における未使用チャンネルの抽出例を示す。
まず、使用チャンネルCh1,Ch6,Ch10とする(図13中の横線領域)。なお、使用チャンネルには、チャンネル情報管理テーブルTB13に格納されている無線チャンネル(隣接セルが用いるセル内チャンネル)以外に、親端末1−1のセル内チャンネルCh1も含まれる。
次に、親端末1−1の干渉検出部205は、使用チャンネルCh1,Ch6,Ch10の高周波側および低周波側に隣り合う無線チャンネル(隣接チャンネル)を抽出する。図13の場合、隣接チャンネルCh2,Ch5,Ch7,Ch9になる(図13中のドット領域)。
次に、親端末1−1の干渉検出部205は、全無線チャンネルCh1〜Ch10から、使用チャンネルおよび隣接チャンネルを除いた無線チャンネルを未使用チャンネルとして抽出する。図13の場合、未使用チャンネルCh3,Ch4,Ch8になる(図13中の白抜き領域)。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、この未使用チャンネルCh3,Ch4,Ch8を用いて、実施形態1と同様にセル内チャンネルの変更処理を行う。
したがって、使用チャンネルに隣り合う隣接チャンネルを、新たなセル内チャンネルに設定しないことによって、隣接チャンネルのスプリアスなどによる干渉を抑制できる。
(実施形態3)
本実施形態のマルチホップ通信システムは、図8のステップS102において、干渉レベルを求める際に、使用チャンネルのそれぞれを用いている通信セルの数に応じて、干渉レベルに重み付けをする点が実施形態1とは異なるものである。なお、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
図11において、未使用チャンネル毎の低周波側の離隔指数および高周波側の離隔指数は、実施形態1と同様に求められる。そして、本実施形態の干渉検出部205は、チャンネル情報管理テーブルTB13を参照して、使用チャンネルを用いる通信セル(隣接セルまたは自端末)の数を導出する。ここでは、使用チャンネルCh1を用いる通信セルの数「2」、使用チャンネルCh6を用いる通信セルの数「4」、使用チャンネルCh7を用いる通信セルの数「1」、使用チャンネルCh10を用いる通信セルの数「1」である。
そして、干渉検出部205は、未使用チャンネルCh2〜Ch5,Ch8,Ch9のそれぞれの干渉レベルを求める際、低周波側の離隔指数に、低周波側の使用チャンネルを用いる通信セルの数を乗じる。さらに、高周波側の離隔指数に、高周波側の使用チャンネルを用いる通信セルの数を乗じる。そして、高周波側の乗算結果と低周波側の乗算結果との和を、干渉レベルとして用いる。
したがって、図11において、未使用チャンネルCh2の干渉レベル=24(=10×2+1×4)、未使用チャンネルCh3の干渉レベル=10(=3×2+1×4)、未使用チャンネルCh4の干渉レベル=14(=1×2+3×4)になる。さらに、未使用チャンネルCh5の干渉レベル=42(=1×2+10×4)、未使用チャンネルCh8の干渉レベル=13(=10×1+3×1)、未使用チャンネルCh9の干渉レベル=13(=3×1+10×1)になる。
すなわち、図11に示す未使用チャンネルCh2,Ch3,Ch4,Ch5,Ch8,Ch9の各干渉レベルは、「24」,「10」,「14」,「42」,「13」,「13」になる。この場合、最小の干渉レベル「10」である未使用チャンネルCh3が、セル内チャンネルの候補になる。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、この未使用チャンネルCh3をセル内チャンネルの候補として、実施形態1と同様にセル内チャンネルの変更処理を行う。
複数の通信セルが重複して用いている無線チャンネルは、トラフィックが大きくなり、時間的にも干渉の確率が高くなる。しかし、使用チャンネルのそれぞれを用いている通信セルの数に応じて、干渉レベルに重み付けを行うことによって、周波数軸、時間軸の両面から干渉を抑制できる。
(実施形態4)
本実施形態のマルチホップ通信システムの通信端末Aは、自端末が属する通信セルのセル内チャンネルを用いて、自端末が属する通信セルの親端末1が作成したチャンネル情報管理テーブルTB13を含むHパケットを、周期的に送信する。ここで、子端末2は、自端末が属する通信セルの親端末1が作成したチャンネル情報管理テーブルTB13を、親端末1から定期的に取得することによって、チャンネル情報管理テーブルTB13を含むHパケットの送信が可能になる。
そして、例えば通信セルC1(第1の通信セル)に属する子端末2は、全ての無線チャンネルを順次切り替えて、通信セルC1の周囲に存在する他の通信セルである隣接セル(第3の通信セル)から、Hパケットを受信する。そして、通信セルC1に属する子端末2は、受信したHパケットからチャンネル情報管理テーブルTB13を抽出し、このチャンネル情報管理テーブルTB13を含むパケットを、通信セルC1の親端末1−1へ送信する。
ここで、隣接セルの周囲に存在する通信セルを準隣接セル(第4の通信セル)とすると、隣接セルからのHパケットに含まれるチャンネル情報管理テーブルTB13は、準隣接セルにおけるセル内チャンネルの利用状況を示す情報である。
而して、親端末1−1の干渉検出部205は、このチャンネル情報管理テーブルTB13に基づいて、準隣接セルが用いるセル内チャンネル(隣接セルからみた使用チャンネル)を検知できる。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、準隣接セルが用いるセル内チャンネルを未使用チャンネルから除き、この未使用チャンネルを用いて、実施形態1乃至3いずれかと同様にセル内チャンネルの変更処理を行う。
例えば、通信セルC1においてセル内チャンネルの変更処理を行った場合、通信セルC1の変更後のセル内チャンネルを用いている隣接セルでは、干渉レベルが増大してしまう。これによって、隣接セルにおいてもセル内チャンネルの変更処理を行う可能性があり、システム全体での収束に長時間を要する虞がある。
しかしながら、本実施形態では、隣接セルが用いる無線チャンネル(使用チャンネル)だけでなく、準隣接セルが用いる無線チャンネルも、セル内チャンネルの候補からは除外している。したがって、1つの通信セルにおいてセル内チャンネルの変更を行った場合でも、その隣接セルにおいてセル内チャンネルを変更する可能性は低減され、システム全体での収束時間を短縮できる。
次に、隣接セル、準隣接セルを考慮した場合に、親端末1−1の干渉検出部205は、図8のステップS102において、以下のように、未使用チャンネルからセル内チャンネルの候補を絞り込む。
図14は、全無線チャンネルCh1〜Ch10とした場合に、親端末1−1における未使用チャンネルの抽出例を示す。
まず、親端末1−1において使用チャンネルCh1,Ch6,Ch7とする(図14中の縦線領域)。なお、使用チャンネルは、親端末1−1のセル内チャンネルCh1と、親端末1−1の隣接セルにおけるセル内チャンネルとで構成される。
さらに、準隣接セルが用いる無線チャンネルを、準使用チャンネルCh4,Ch10とする(図14中の波線)。
この場合、図14では、未使用チャンネルCh2,Ch3,Ch5,Ch8,Ch9が存在する(図14中の白抜き領域)。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、図8のステップS102において、未使用チャンネルのそれぞれの離隔指数に基づいて、未使用チャンネルからセル内チャンネルの候補を絞り込む。
まず、干渉検出部205は、未使用チャンネルCh2,Ch3,Ch5,Ch8,Ch9の干渉レベルを求める。この干渉レベルは、未使用チャネルと使用チャンネルおよび準使用チャンネルとの間の周波数距離に基づいて導出される。具体的には図14に示すように、未使用チャンネルCh2、使用チャンネルCh1,準使用チャンネルCh4の場合、低周波側の周波数距離X1=1、高周波側の周波数距離X2=2になる。未使用チャンネルCh3、使用チャンネルCh1,準使用チャンネルCh4の場合、低周波側の周波数距離X1=2、高周波側の周波数距離X2=1になる。未使用チャンネルCh5、準使用チャンネルCh4,使用チャンネルCh6の場合、低周波側の周波数距離X1=1、高周波側の周波数距離X2=1になる。未使用チャンネルCh8、使用チャンネルCh7,準使用チャンネルCh10の場合、低周波側の周波数距離X1=1、高周波側の周波数距離X2=2になる。未使用チャンネルCh9、使用チャンネルCh7,準使用チャンネルCh10の場合、低周波側の周波数距離X1=2、高周波側の周波数距離X2=1になる。
次に、実施形態1と同様に周波数距離X1,X2を離隔指数に変換する(図12参照)。
次に、周波数距離X1,X2に対応する各離隔指数の和を、干渉レベルとして導出するのであるが、このときに、隣接セル、準隣接セルを考慮した重み付けを行う。
具体的には、干渉レベル=α×低周波側の離隔指数+β×高周波側の離隔指数とする。そして、αは、低周波側の無線チャンネルが使用チャンネルの場合、「α=1」、低周波側の無線チャンネルが準使用チャンネルの場合、「α=0.3」に設定する。また、βは、高周波側の無線チャンネルが使用チャンネルの場合、「β=1」、高周波側の無線チャンネルが準使用チャンネルの場合、「β=0.3」に設定する。すなわち、自端末が属する通信セルへの干渉レベルを求める際に、隣接セルとの干渉レベルより準隣接セルとの干渉レベルのほうが軽くなるように重み付けを行っている。したがって、準隣接セルによる自端末への干渉の影響を、隣接セルによる自端末への干渉の影響よりも抑えた干渉レベルを導出できる。
したがって、図14において、未使用チャンネルCh2の干渉レベル=10.9(=10×1+3×0.3)、未使用チャンネルCh3の干渉レベル=6(=3×1+10×0.3)となる。さらに、未使用チャンネルCh5の干渉レベル=13(=10×0.3+10×1)、未使用チャンネルCh8の干渉レベル=10.9(=10×1+3×0.3)、未使用チャンネルCh9の干渉レベル=6(=3×1+10×0.3)となる。
すなわち、図11に示す未使用チャンネルCh2,Ch3,Ch5,Ch8,Ch9の各干渉レベルは、「10.9」,「6」,「13」,「10.9」,「6」になる。この場合、最小の干渉レベル「6」である未使用チャンネルCh3,Ch9が、セル内チャンネルの候補になる。
そして、親端末1−1の干渉検出部205は、この未使用チャンネルCh3,Ch9をセル内チャンネルの候補として、実施形態1と同様にセル内チャンネルの変更処理を行う。
さらに、実施形態3と同様に、低周波側の離隔指数に、低周波側の使用チャンネルを用いる通信セルの数を乗じ、高周波側の離隔指数に、高周波側の使用チャンネルを用いる通信セルの数を乗じてもよい。このように、使用チャンネルのそれぞれを用いている通信セルの数に応じて、干渉レベルに重み付けを行うことによって、周波数軸、時間軸の両面から干渉を抑制できる。
また、本実施形態において、親端末1−1の干渉検出部205は、図8のステップS101において未使用チャンネルがない場合、以下の動作を行う。
まず、各無線チャンネルを用いている隣接セルの台数をN、各無線チャンネルを用いている準隣接セルの台数をM、0≦重み係数β≦1とする。そして、親端末1−1の干渉検出部205は、未使用チャンネルがない場合、無線チャンネル毎の評価関数=N+βMで導出する。すなわち、親端末1−1が属する通信セルC1からみた場合、隣接セルとの干渉に比べて、準隣接セルとの干渉は比較的小さいため、準隣接セルとの干渉に対する重み付けは軽くしてもよい。そして、この評価関数が最小になる1乃至複数の無線チャンネルを、通信セルC1のセル内チャンネルの候補とする。なお、β=1とすれば、隣接セルとの干渉に対する重み付けと準隣接セルとの干渉に対する重み付けを互いに等しくできる。
このように、未使用チャンネルがない場合にも、自端末が属する通信セルへの干渉を求める際に、隣接セルとの干渉に対して準隣接セルとの干渉が軽くなるように重み付けを行うことができる。したがって、未使用チャンネルがない場合に1つの通信セルにおいてセル内チャンネルの変更を行った場合には、自端末への干渉を抑えつつ、隣接セルにおいてセル内チャンネルを変更する可能性も低減できる。