JP5860751B2 - 中間転写部材 - Google Patents

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Description

本開示は、画像形成装置および中間転写部材に関する。
トナーを静電的に転写する中間転写部材を用いることによって、カラー画像または白黒画像が作成される画像形成装置は、十分に知られている。このような中間転写部材を用い、カラー画像形成装置内で、紙シート上に画像を作成する場合、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のそれぞれの画像が、一般的には、まず、感光体のような像保持体から順次転写され、中間転写部材の上で重ねられる(一次転写)。次いで、このフルカラー画像を、1工程で紙シートに転写する(二次転写)。白黒の画像形成装置では、黒色画像を感光体から転写し、中間転写部材の上で重ね合わせ、次いで、紙シートに転写する。
高速機に用いるトナー画像転写のために設計された中間転写ベルト(ITB)は、必要な導電性を維持していなければならない。必要な導電性を維持するために、使用するポリマーマトリックスに導電性要素を加え、中間転写ベルトを作成する。ITBにさまざまな種類の導電性材料を用いることができるが、カーボンブラックが最も一般的な導電性要素である。ITBのフィラーとしてカーボンブラックを加えると、破壊強度や引裂強度が低くなり、亀裂が生じ、機械操作時にITBが破損することがある。多くの場合、ITB中のカーボンブラック含有量は、30重量%までが限度であろう。ITBにカーボンブラックをもっと多く組み込むと、ITBの引裂強度が下がり、それによってITBの寿命が短くなる。フローコーティングの場合、カーボンブラックおよびポリマー樹脂の選択は、多くのプロセス要求事項によって制限される。したがって、導電性フィラーの含有量を減らしつつ、必要な導電性を達成し、ITBのロバスト性および寿命を高めることが必要とされている。それに加えて、カーボンブラックは、ITBの透明度を下げてしまう。このため、電子写真式印刷機に反射型センサを用いる必要がある。透過型ITBであれば、透過型センサを使用することができるだろう。
本明細書に記載されているのは、グラフェン粒子が層の約0.1重量%〜約3.0重量%の組み込み量で分散したフェノキシ樹脂を含む層を有する中間転写部材である。
グラフェン粒子が層の約0.1重量%〜約3.0重量%の組み込み量で分散したフェノキシ樹脂を含む表面層を有する中間転写部材が開示されており、ここで、フェノキシ樹脂は、以下の構造を有し、
式中、nは約40〜約400であり、この層は、波長700nmでの透明度が約70%である。
本明細書に記載されているのは、中間転写部材である。中間転写部材は、グラフェン粒子が層の約0.1重量%〜約3.0重量%の組み込み量で分散したフェノキシ樹脂を含む層を有し、ここで、フェノキシ樹脂は、以下の構造を有し、
式中、mは約1〜約399であり、nは約399〜約1である。
図1は、画像装置の概略図である。 図2は、本明細書に開示した一実施形態の略図である。 図3は、本明細書に開示した一実施形態の略図である。 図4は、グラフェンの構造を示す。 図5は、中間転写ベルトの透明度の比較結果を示す。
図1を参照すると、画像形成装置は、以下に詳細に記載するような中間転写部材を備えている。この画像形成装置は、一次転写によって、像保持体で作成されたトナー画像を中間転写部材に転写するための第1転写ユニットと、二次転写によって、中間転写部材に転写されたトナー画像を転写材料に転写するための第2転写ユニットとを備える、中間転写システムである。また、この画像形成装置において、中間転写部材は、トナー画像を転写材料に転写するための転写領域内に、転写搬送体として与えられてもよい。高品質の画像を転写し、長期間にわたって安定なままである中間転写部材を有することが必要である。
本明細書に記載する画像形成装置は、中間転写方式の画像形成装置であれば、特に制限されず、例としては、現像デバイスに単色のみが格納されている通常の単色画像形成装置、像保持体上に保持されているトナー画像を、順次中間転写部材に繰り返し一次転写するためのカラー画像形成装置、中間転写部材に連続して配置されるそれぞれの色の現像ユニットとともに、複数の像保持体を備えているタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。さらに特定的には、画像形成装置は、適宜、像保持体と、像保持体表面を均一に帯電させる帯電ユニットと、中間転写部材表面を露光し、静電潜像を作成する露光ユニットと、現像溶液を用いて、像保持体表面に生成した潜像を現像し、トナー画像を作成する現像ユニットと、トナーユニットを転写材料に定着させる定着ユニットと、像保持体に付着したトナーおよび異物を除去するクリーニングユニットと、像保持体表面に残った静電潜像を除去する静電除去ユニットと、必要な場合には、既知の方法とを備えていてもよい。
像保持体として、既知のものを使用してもよい。像保持体の感光層として、有機系のアモルファスシリコン、または他の既知の材料を使用してもよい。円筒形の像保持体の場合、像保持体は、アルミニウムまたはアルミニウムアロイを押出成形し、表面処理を行う既知の方法によって得られる。ベルト形態の像保持体を使用してもよい。
帯電ユニットは、特に制限されず、既知の充電器を用いてもよく、例えば、導電性ローラーまたは半導体ローラー、ブラシ、フィルム、ゴム製ブレード、コロナ放電を利用するスコロトロン充電器またはコロトロン充電器などを用いた接触型充電器を用いてもよい。中でも、優れた電荷補償能という観点から、接触型帯電ユニットが好ましい。帯電ユニットは、通常は、直流を電子写真用感光材料に印加するが、交流をさらに重ね合わせてもよい。
露光ユニットは、特に制限されず、例えば、半導体レーザービーム、LEDビーム、液晶シャッタービームなどの光源を用いることによって、または、このような光源から多面鏡を通すことによって、電子写真用感光材料の表面に所望の画像を露光する光学系デバイスを用いてもよい。
現像ユニットは、適切には、目的に応じて選択されてもよく、例えば、一液型現像溶液または二液型現像溶液を用いることによって現像するための既知の現像ユニットを、ブラシおよびローラーを用いて、接触させるか、または接触させずに使用してもよい。
第1転写ユニットは、既知の転写充電器、例えば、部材、ローラー、フィルム、ゴム製ブレード、コロナ放電を利用するスコロトロン転写充電器またはコロトロン転写充電器を用いる接触型転写充電器を備えている。中でも、接触型転写充電器は、優れた転写電荷補償能を与える。転写充電器以外に、剥離型の充電器を一緒に使用してもよい。
第2転写ユニットは、第1転写ユニットと同じであってもよく、例えば、転写ローラーなど、スコロトロン転写充電器およびコロトロン転写充電器を用いた接触転写充電器であってもよい。接触型転写充電器の転写ローラーによって強く押すことによって、画像転写段階を維持することができる。さらに、転写ローラーまたは接触型転写充電器を、中間転写部材を導くような位置にローラーを押すことによって、トナー画像を中間転写部材から転写材料へと移動させる操作を行ってもよい。
光静電除去ユニットとして、例えば、タングステンランプまたはLEDを用いてもよく、光静電除去プロセスで使用する光質としては、タングステンランプの白色、LEDの赤色を挙げることができる。光静電除去プロセスで、照射光の強度として、通常は、出力を、光質の約数倍〜約30倍が、電子写真用感光材料の露光感度の半分を示すように設定する。
定着ユニットは、特に制限されず、任意の既知の定着ユニットを使用してもよく、例えば、熱ローラー定着ユニットおよびオーブン定着ユニットを用いてもよい。
クリーニングユニットは、特に制限されず、任意の既知のクリーニングデバイスを用いてもよい。
一次転写を繰り返すためのカラー画像形成装置を、図1に模式的に示している。図1に示す画像形成装置は、像保持体として感光ドラム1と、中間転写部材2(転写ベルトとして示されている)と、転写電極としてバイアスローラー3と、転写材料として紙を供給するためのトレー4と、BK(ブラック)トナーによる現像デバイス5と、Y(イエロー)トナーによる現像デバイス6と、M(マゼンタ)トナーによる現像デバイス7と、C(シアン)トナーによる現像デバイス8と、部材クリーナー9と、剥離爪13と、ローラー21、23、24と、バックアップローラー22と、導電性ローラー25と、電極ローラー26と、クリーニングブレード31と、紙の束41と、ピックアップローラー42と、フィードローラー43とを備えている。
図1に示す画像形成装置において、感光ドラム1は、矢印Aの方向に回転し、帯電デバイス(図示せず)の表面を均一に帯電させる。帯電した感光ドラム1に、画像書き込みデバイス(例えば、レーザー書き込みデバイス)によって、第1色(例えば、BK)の静電潜像が作成される。この静電潜像は、現像デバイス5によって、トナーによって現像され、目に見えるトナー画像Tが作成される。トナー画像Tは、感光ドラム1が回転することによって、導電性ローラー25を備える一次転写ユニットに移動し、導電性ローラー25から、トナー画像Tに逆極性の電場がかけられる。トナー画像Tは、中間転写部材2に静電的に吸着し、矢印Bの方向に中間転写部材2が回転することによって、一次転写が行われる。
同様に、第2色のトナー画像、第3色のトナー画像、第4色のトナー画像が、次々と作成され、転写ベルト2に重ねて配置され、多層トナー画像が作成される。
転写体2が回転することによって、転写体2に転写された多層トナー画像が、バイアスローラー3を備える二次転写ユニットに移動する。二次転写ユニットは、転写ベルト2のトナー画像を保持している側の表面に配置されているバイアスローラー3と、転写ベルト2の裏側からバイアスローラー3と向かい合うように配置されているバックアップローラー22と、バックアップローラー22と密に接して回転する電極ローラー26とを備えている。
紙41は、ピックアップローラー42によって、紙トレー4に入っている紙束から1枚ずつ取り出され、特定のタイミングで、フィードローラー43によって、二次転写ユニットの転写ベルト2とバイアスローラー3との間の空間に供給される。供給された紙41は、バイアスローラー3とバックアップローラー22とに押されながら搬送され、転写ベルト2の上に保持されているトナー画像が、転写体2が回転することによって紙41に転写される。
トナー画像が転写された紙41は、最後のトナー画像の一次転写が終わるまで、剥離爪13を後退した位置に操作することによって転写体2から剥離され、定着デバイス(示されていない)に搬送される。トナー画像は、圧力や熱を加えることによって定着し、永久的な画像が作成される。多層トナー画像を紙41に転写した後、転写体2を、二次転写ユニットの下流に配置されているクリーナー9でクリーニングして残留トナーを除去し、次の転写に備える。バイアスローラー3は、ポリウレタンなどでできているクリーニングブレード31が常に接触していてもよく、転写によって付着したトナー粒子、紙粉、他の異物が除去されるように提供されていてもよい。
単色画像を転写する場合、一次転写の後、トナー画像Tは、すぐに二次転写プロセスに送られ、定着デバイスに運ばれる。しかし、複数の色を組み合わせた多色画像を転写する場合には、中間転写部材2と感光ドラム1との回転が、一次転写ユニットで複数色のトナー画像の位置が正確に合い、複数色のトナー画像がずれないように同期化される。二次転写ユニットでは、トナーの極性と同じ極性の電圧(転写電圧)を、バイアスローラー3および中間転写部材2とは反対側に配置されているバックアップローラー22と密に接触している電極ローラー26に加えることによって、静電反発力によって、トナー画像が紙41に転写される。これにより、画像が作成される。
中間転写部材2は、任意の適切な構成であってもよい。適切な構成の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のないメビウスの輪、円板、ドレルト(ドラムとベルトの中間)、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のない可とう性画像形成ベルト、パズルカットのつなぎ目がある、終端のないベルトなどが挙げられる。図1では、転写体2はベルトとして示されている。
画像転写の場合の画像では、カラートナー画像は、まず、光受容体に蓄積し、次いで、すべてのカラートナー画像が、同時に中間転写部材に転写される。タンデム型転写では、トナー画像は、所定の時間に、1つの色が、光受容体から中間転写部材の同じ領域に転写される。両実施形態が、本明細書に含まれる。
現像した画像を光導電性部材から中間転写部材に転写し、この画像を中間転写部材から基板に転写することは、電子写真で従来から使用されている任意の適切な技術(例えば、コロナ転写、圧力転写、バイアス転写、およびこれらの転写手段の組み合わせなど)によって行うことができる。
図1に示されるように、中間転写部材2は、この実施形態ではベルトであり、電子写真式装置の中でローラー(サスペンションローラー)21、22、23、24に掛けられており、長期間にわたって張った状態で駆動する。このため、中間転写ベルトは、十分な強度と耐久性をもつことが必要である。中間転写部材について特に関心が高い機械特性は、ヤング弾性率(E)、曲げ強度である。YM(E)は、引張弾性率を記述し、曲げ強度は、膜が曲げに耐える能力を記述する。中間転写部材のYM(E)が小さいとき、ベルトは、変形しやすく、ベルトの一体性に影響を与え、最終的には、ベルトの寿命にも影響を与えるだろう。また、ベルトの変形は、画像の位置合わせにも悪い影響を与える。一方、曲げ強度が小さいと、ベルトは、割れるか、または欠けてしまうことがある。トナー媒剤による亀裂を防ぐために、多くの中間転写ベルトは、結晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から作られた基材を含む多層構造を利用しており、表面には硬度の大きい層が形成されている。しかし、中間転写部材にこのような硬度の大きい層を形成する場合、この硬度の大きい層は、多層体の曲げ強度に悪影響を及ぼさないように、十分に薄い膜である必要がある。これらの追加されたパラメーターによる制限が加わり、薄膜を調製するために複雑度が上がり、時間がかかる。
それに加えて、電子写真式装置内の空間を節約するために、透過型ITBが望ましい。トナー濃度に基づく色および密度の補正は、ITBの上の小さなトナー片の反射率を測定することによって行われる。これらの測定結果を使用し、最終的な画像の望ましい色および密度を適切に再現するために、機械の設定を修正する。これらのトナー片の検出器は、検出器を一体化して画像形成装置を小型化してもよく、または、画像形成装置に優れた特徴を付与する他の機能的なデバイスを付け加えてもよいが、ITBの外側の周囲に配置され、場所を取ってしまう。透過型ITBによって、検出器をITBの裏側の空間に配置することができ、その状態で色および密度を補正した最終画像を得るために必要な測定を行うことができる。
図2に示される一実施形態では、中間転写部材54は、単層構造で、膜の形態である。中間転写部材54は、フェノキシ樹脂52の単層である。この単層は、そのほかにグラフェン粒子51を含む。単層は、他のポリマーおよびフィラーを含んでいてもよい。
図3に示される一実施形態では、中間転写部材64は、二層構造で、膜の形態である。中間転写部材64は、基材層60を含んでいる。外側層であるフェノキシ樹脂62は、基材層60の上に配置されている。外側層は、グラフェン粒子51を含んでいることが示されている。基材層にも、外側層にも、他のポリマーおよびフィラーが含まれていてもよい。数字が付されていない粒子が基材層に示されており、この粒子は、本明細書に記載されている任意の列挙した導電性粒子であってもよい。基材層60は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエチレン−コ−ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミド(ポリアミドイミドを含む)、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート、PVDFまたはアクリル樹脂、またはこのような材料のブレンドまたはアロイを含む多くの異なる材料から作られてもよい。
一般的に、中間転写ベルトは、フェノキシ樹脂とグラフェン粒子とで構成されている。機械を操作している間、ベルトはローラーに沿って回転する必要があるため、ITBベルトは、特定の弾性率および破壊強度をもつ必要がある。フィラーの組み込み量が多いITBを含むポリマーコンポジットでは、破壊強度が低下する。ITB中のフィラー含有量を下げるために、高導電性材料を選択しなければならない。グラフェン粒子は、高導電性材料である。
本明細書に開示されているのは、導電性要素としてグラフェン粒子材料を用いたITBである。グラフェン粒子は、フェノキシ樹脂のポリマーマトリックス中に分散している。グラフェンを含むITBは、可とう性、透明度、破壊強度がきわめて良好である。例えば、バインダーとしてフェノキシ樹脂を含む場合、常用対数で10Ω/□の表面抵抗率を達成するのに必要なグラフェン粒子は、わずか2.0重量%であり、一方、Evonik−Degussaから入手可能なカーボンブラックSpecial Black4だと、同じ表面抵抗率にするには15重量%必要である。グラフェン粒子を約2.0重量%含むITBは、可視光の波長範囲できわめて良好な透明度を示した。波長700nmで、グラフェンを含むITB膜の透明度は70%であり、これに対し、カーボンブラックSpecial Black4を含むITB膜では、透明度は0%であった。フェノキシ−グラフェン粒子ITBの透明度は、約400nmから約1000nmの波長で、透過率が約60%〜約80%である。ITBの透明度は、トナーの色を良好に位置合わせするためにも重要であることを注記しておくべきである。それに加え、透明なベルトだと、品質を良好に制御するために欠陥または亀裂を見つけるのも簡単である。以前、必要な導電性を達成するのに、カーボンブラックを多く組み込むことが必要であったため、ITBの透明度を達成することは困難であった。フェノキシ−グラフェン粒子ITBの破壊強度は、約50MPa〜約90MPa、または約52MPa〜約80MPa、または約55MPa〜約70MPaである。
グラフェンの構造を図4に示す。グラフェンは、炭素原子が2次元のハニカム格子に緻密に充填された平坦な単層である。グラフェンは、sp結合した炭素原子がハニカム結晶格子に緻密に充填された、厚みが1原子分の平らなシートである。グラファイトの結晶形態または「フレーク」形態は、積み重なった多くのグラフェンシートから構成されている。グラフェンは、グラファイト、石炭、カーボンナノチューブ、フラーレンを含むいくつかの炭素同素体の基本的な構造要素である。グラフェンは、無限に大きな芳香族分子であると考えることもでき、平坦な多環芳香族炭化水素群の限定的な状態である。伝達測定から得られる実験結果は、グラフェンが、室温で非常に高い電子移動性をもつことを示しており、15,000cm−1−1を超える値が報告されている。このグラフェンシートについて、対応する抵抗率は10−6Ω・cmであろう。この値は、銀の抵抗率よりも小さく、室温で知られている最も抵抗率の小さい基質である。
図2に示される電子写真式画像形成用途に用いる単層の中間転写部材は、フェノキシ樹脂を使用し、グラフェン粒子を含む。グラフェン粒子は、単層の約0.1重量%〜約3.0重量%、または約0.5重量%〜約2.5重量%、または約1.0重量%〜約2.0重量%の組み込み量で必要な導電性を達成する。
図3に示される多層中間転写部材は、最外層にグラフェンを含むフェノキシ樹脂を使用する。グラフェン粒子は、最外層の約0.1重量%〜約3.0重量%、または約0.5重量%〜約2.5重量%、または約1.0重量%〜約2.0重量%の組み込み量で必要な導電性を達成する。
フェノキシ樹脂は、高い凝集強度をもち、対衝撃性が良好で、強靱で延性のある熱可塑性材料である。この性質により、フェノキシ樹脂中間転写部材は、優れた機械特性をもつことができる。フェノキシ樹脂の単層または多層の中間転写部材は、約2,000MPa〜約8,000MPa、または約3,000MPa〜約6,000MPa、または約4,000MPa〜約5,000MPaのヤング弾性率を示す。適切な抵抗率にするために、中間転写部材の表面抵抗率を調節するのは簡単である。それに加え、フェノキシ樹脂のコストはきわめて低い。フェノキシ樹脂の単層中間転写部材は、低コストで高性能の中間転写部材を与える。単層中間転写部材の厚みは、約30μm〜約400μm、または約50μm〜約200μm、または約70μm〜約150μmである。
また、フェノキシ樹脂の多層中間転写部材も、低コストで高性能の中間転写部材を与える。外側層62の厚みは、約1μm〜約150μm、または約10μm〜約100μmである。
単層52または外側層62に分散したグラフェン粒子51は、抵抗率を、約10Ω/□〜約1013Ω/□、または約10Ω/□〜約1012Ω/□の望ましい範囲の表面抵抗率に下げる。体積抵抗率は、約10ohm−cm〜約1012ohm−cm、または約10ohm−cm〜約1011ohm−cmである。この抵抗率は、グラフェン粒子51の濃度を変えることによって与えることができる。グラフェン粒子51は、それぞれの層52または62の約0.1重量%〜約3.0重量%、または約0.5重量%〜約2.5重量%、または約1.0重量%〜約2.0重量%の組み込み量で存在していてもよい。
グラフェン粒子を含む典型的な中間転写部材は、水の接触角が約70°よりも大きく、または約80°よりも大きく、または約85°よりも大きい。
フェノキシ樹脂は、高い凝集強度をもち、対衝撃性が良好で、強靱で延性のある熱可塑性材料である。骨格のエーテル結合および側鎖のヒドロキシル基が、極性基材や、カーボンブラックのようなフィラーに対する濡れ性を促進し、これらに対する結合を促進する。構造的に、フェノキシ樹脂は、末端にα−グリコール基をもつポリヒドロキシエーテルである。
以下に示すのがフェノキシ樹脂の構造であり、
式中、nは、約40〜約400、または約70〜約400、または約100〜約350である。フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンのポリマー、ビスフェノールZおよびエピクロロヒドリンのポリマー、ビスフェノールAFおよびエピクロロヒドリンのポリマー、ビスフェノールCおよびエピクロロヒドリンのポリマー、ビスフェノールBPおよびエピクロロヒドリンのポリマーから製造される。
フェノキシ樹脂は、InChem Corp.(Rock Hill、SC)から市販されており、PKFE(M=16,000、M=60,000)、PKHB(M=9,500、M=32,000)、PKHC(M=11,000、M=43,000)、PKHH(M=13,000、M=52,000)、PKHJ(M=16,000、M=57,000)、PKHP(M=13,000、M=52,000)が挙げられる。
フェノキシ樹脂の多分散性は非常に狭く、典型的には、4.0未満である。平均的な分子は、熱硬化用途で架橋するのに適した、40個以上の規則的に間のあいたヒドロキシル基を含んでいる。これらの側鎖のヒドロキシルは、高温で、時には周囲条件でさえも、熱硬化用途で架橋するのに優れた部位である。
フェノキシは、防湿性に優れており(水蒸気、酸素、二酸化炭素)、直接的および間接的な食物/飲料用容器コーティングの21CFR175.300を満たしており、容器のための多層包装およびプラスチック要素で使用する接着剤に関する他の章も満たしており、フェノキシ樹脂は、環境に非常に優しい材料であることがわかる。一実施形態では、フェノキシ樹脂は、フェノキシ樹脂にグラフト結合した疎水性イソシアネート化学部分を含む。その構造は、以下によってあらわされ、
式中、mは約1〜約399であり、nは約399〜約1である。ジラウリン酸ジブチルスズは触媒である。フェノキシ樹脂にグラフト結合したイソシアン酸フェニルに加え、ポリイソシアネートを用い、フェノキシ樹脂にグラフト結合させることによって、架橋したフェノキシ樹脂を得てもよい。
フェノキシ樹脂と反応させるために使用可能なイソシアネートの例としては、イソシアン酸フェニル、1,1,3,3−テトラメチルブチルイソシアネート、1−アダマンチルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、2,2−ジフェニルエチルイソシアネート、2,3,4−トリフルオロフェニルイソシアネート、2,4,5−トリメチルフェニルイソシアネート、2−ベンジルフェニルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)などが挙げられる。また、Bayer Corp.から市販されているポリイソシアネートとしては、DESMODUR(登録商標)N3200、N3300A、N75BA、CB72N、CB60N、CB601N、CB55N、BL4265SN、BL3475BA/SN、BL3370MPA、BL3272MPAおよびBL3175A、MONDUR(登録商標)M、CD、582、448、501が挙げられる。
図2および図3において、フェノキシ層52および外側フェノキシ層62は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエチレン−コ−ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミド(ポリアミドイミドを含む)、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート、PVDFまたはアクリル樹脂、またはこのような材料のブレンドまたはアロイを含む、多くの異なるポリマー材料を含んでいてもよい。
図2および図3において、フェノキシ層52および外側フェノキシ層62は、多くの異なる導電性粒子を含んでいてもよい。さらなる導電性粒子は、カーボンブラック、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラック、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニルスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
中間転写部材を製造する方法は、グラフェン粒子、フェノキシ樹脂および溶媒を混合して混合物を作成することを含む。混合物を基材にコーティングし、乾燥させる。単層中間転写部材の場合、乾燥したコーティングを基材から剥がしてもよい。
フェノキシ樹脂およびグラフェン粒子の溶液を作成するのに有用な溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、エチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、フェノキシプロパノール、酢酸エチル、二塩基性エステル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジアセトンアルコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、塩化メチレンなどが挙げられる。
一実施形態では、中間転写部材を製造する方法は、グラフェン粒子、フェノキシ樹脂および溶媒を混合して混合物を作成することを含む。混合物をフェノキシ樹脂および溶媒と混合し、コーティング分散物を作成する。混合物を基材にコーティングし、乾燥させる。乾燥したコーティングを基材から剥がす。この2工程プロセスは、最終的な中間転写部材に適切な抵抗率を単純化された様式で与えることができるプロセスである。
このような混合物または分散物を基材層にコーティングする典型的な技術としては、フローコーティング、液体噴霧コーティング、ワイヤ巻き付けロッドによるコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、音波噴霧、ブレードコーティング、成形、積層などが挙げられる。
添加剤およびさらなるフィラーが上述のいずれかの層に存在してもよい。
ITB #91Dの調製:120mLのガラス瓶に、DMF溶媒中、VorbeckMaterials製のグラフェン分散物Vor−ink 1.05g(固体含有量が11.8%)を、20%フェノキシ樹脂PKHH 30gと混合した。次いで、この瓶に界面活性剤Stepfac8171 0.03gおよびフルオロポリマーFC−4432 0.005gを加えた。全ての材料をローリングミルで30分間混合した後、この瓶に1/8インチのステンレス鋼ビーズ(400g)を加えた。この瓶をローリングミルで24時間回転させた。ミルにかけた溶液を濾過によって集めた。この溶液を、10milのバードバーによってステンレス鋼シートでコーティングし、85℃で30分間乾燥し、135℃で30分間、185℃で45分間乾燥した。コーティングされた膜は、コーティング基材から簡単に剥離し、表面は非常に平滑であった。表面抵抗率は7.04E+10Ω/□であった。
ITB #91Eの調製:ITB #91Dと同じように、但し、グラフェン分散物Vor−inkの代わりにカーボンブラックSpecial Black 4分散物5.5g(固体含有量が18.2%、実験室で調製)を用いて調製した。ITB #91Eサンプルは、配合および調製の手順は同じであった。このサンプルの表面抵抗率は、1.79E+10Ω/□であった。ITBの機械特性を以下にまとめている。
上の2サンプルは、弾性率が同じであった。グラフェンを含むサンプル#91Dは、カーボンブラックを含むサンプル#91Eよりも破壊強度が約40%高かった。
可視光範囲でのサンプルの透明度は、以下のとおりである。グラフェンを含むITBサンプル#91Dは、波長700nmでの透明度が70%であり、これに対し、カーボンブラックを含むサンプル#91Eは、0%であった(図5)。
ITBコーティングは、金属性基材から自己剥離することができる。それ以外の剥離層は必要ではない。グラフェンで改質されたITBベルトは、導電性フィラーとしてカーボンブラックを含む現時点で使用されているITBと比べ、可とう性、破壊強度、可視光波長範囲での透明度が改良されていることが示された。光学的に透明なITBは、画像のデジタルによる位置合わせ、ITB寿命品質のモニタリング、ITBコーティングの品質制御を付与するといった多くの利点をもつ。

Claims (5)

  1. 層の重量に対して約0.1重量%〜約3.0重量%の量でグラフェン粒子が分散したフェノキシ樹脂を含む層を有する中間転写部材であって、
    前記フェノキシ樹脂が以下の構造を有し、
    式中、mが約1〜約399、nが約399〜約1である、中間転写部材。
  2. 前記層が、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート、PVDF、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種のポリマーをさらに含む、請求項1に記載の中間転写部材。
  3. 前記層は、波長700nmでの透明度が約70%である、請求項1又は2に記載の中間転写部材。
  4. 前記層は、破壊強度が約50MPa〜約90MPaである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中間転写部材。
  5. 前記層は、カーボンブラック、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラック、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニルスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、及びポリナフタレンから選択される少なくとも1種の導電性粒子をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の中間転写部材。
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