JP5860294B2 - 金型及び熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法 - Google Patents

金型及び熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金型及び熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法に関する。
マトリックス樹脂が強化繊維で強化された熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料等の成形材料の成形方法としては、所望の形状の金型による成形方法が挙げられる。特に、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の成形では、高温の金型で成形材料を溶融成形し、該金型を冷却して成形材料を固化した後に、金型から成形品を取り出す手法が用いられ、金型の加熱、冷却を繰り返す必要がある。このような成形品の製造のハイサイクル化には、金型の加熱及び冷却を急速で行うことが重要である。
加熱や冷却が効率的に行える金型としては、下記の金型が知られている。
(1)金型のキャビティ面に薄肉の金属殻が形成されており、該金属殻を高周波誘導加熱により直接加熱する金型(特許文献1)。
(2)金型のキャビティ面を加熱する加熱配管を加熱するために、発熱体及び該発熱体を高周波誘導加熱する誘導加熱コイルを設けた金型(特許文献2)。
(3)樹脂の転写性と流動性を高めるため、金型のキャビティ近傍に、高周波誘導加熱する誘導加熱コイルが設けられ、かつ金型内に冷水を流通して金型を冷却する冷却水路が形成された射出成形用金型(特許文献3)。
特許第4242644号公報 特許第3651163号公報 特開2008−110583号公報
(1)の金型は、成形材料と接触する薄肉の金属殻を、高周波誘導により直接加熱するため、成形時において急速な加熱が可能である。しかし、キャビティ面の金属殻を直接高周波誘導加熱した場合、昇温速度は速くなり、ハイサイクル化に有効であったが、金型のキャビティ表面の誘導発熱は、コイルの配置やキャビティ面の凹凸に大きく依存することから、表面温度のバラツキは大変大きかった。プリプレグの成形には、プリプレグの加熱温度を適正温度範囲内に制御しなければならないが、(1)の金型では表面の温度分布が広く、プリプレグの未溶融状態と熱分解や熱変色が共存し、良好な成形品を得ることは、大変困難であった。また押し型に絶縁性が必須であり、型締め時に絶縁破壊するトラブルが起こりやすく量産型として問題があった。また冷却手段が空冷であるため、金属殻の冷却に時間がかかった。
(2)の金型は、金型を温調配管により加熱するために、高周波誘導で温調配管を加熱するものである。熱媒体を高温に加熱するために、金型の加熱に適するが、成形後成形品を取り出す際に、金型を冷却するまで時間がかかり量産型としては要求に合わなかった。
(3)の金型は、高周波誘導により金型を直接加熱し、また金型内に冷水を流通することで金型を冷却するものである。しかし、該金型は、金型全体を加熱及び冷却するものであり、通常の金型の熱容量は高く、加熱、冷却に時間がかかる。また、発熱や冷却は、コイルや冷却管の配置に強く依存する。熱伝導率が低いため伝熱が均一化されず、温度分布を有し、温度に敏感なプリプレグの成形において良品を得るには問題があった。
以上のように、(1)〜(3)の金型では、加熱、冷却サイクルの効率化はなされたが、金型の場所による温度分布が広く、従って、成形される樹脂の温度分布も広く、樹脂の流動ムラや黄変やヤケムラが発生し、良品を得ることは困難であった。特に、成形に厳密な温度管理が必要な熱可塑性樹脂の圧縮成形に使用できるものでなかった。また適正成形温度幅の狭いプリプレグ成形用に温度分布が狭く、かつ短時間に加熱・冷却サイクルできる金型の強い開発要求があった。
また、板状に近い汎用的な中間成形材料を製作する場合、加工賃の究極的な低減が要求されることから、金型の製作コストが低価格で、かつ生産性の高い金型の開発要求があった。
本発明は、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料等の成形材料を成形する金型であって、成形材料を賦形する面盤の加熱及び冷却を急速に行って、かつ温度分布が均一であり、ハイサイクルに品質のよい成形品を経済的に製造できる金型の提供を目的とする。
また、本発明は、前記金型を用いたハイサイクルな熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
〔1〕20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kである非磁性金属材料により形成された面盤をそれぞれ有する一対の型を具備し、前記一対の型のそれぞれに、内部に冷媒を流通して前記面盤を冷却するための、該型内を貫通する冷却回路を有し、かつ前記一対の型の面盤の外面にそれぞれ20℃における固有抵抗値が4.0〜100μΩ・cmである高周波誘導により発熱する磁性体を密接し、かつ該磁性体の外面に誘導加熱コイルが設けられていることを特徴とする金型。
〔2〕前記一対の型のそれぞれの面盤がアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、前記〔1〕に記載の金型。
〔3〕前記一対の型のそれぞれの面盤表面が、窒化金属コート、炭化金属コート、金属メッキのいずれかで処理されたアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、前記〔1〕に記載の金型。
〔4〕前記一対の型の少なくとも片方の型の面盤に2次元的に閉合したスペーサーを配置した前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の圧縮成形用金型。
〔5〕前記一対の型の外部にストッパーを有し、一対の型をストッパーが当たるまで型を閉めた時に、上の面盤と下の面盤に隙間を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の圧縮成形用金型。
〔6〕前記一対の型を閉めた時に、接する上型の面盤の短手方向及び長手方向は、対応する下型の面盤のそれより小さく、かつ面盤間に供する成形材料の短手方向と長手方向それぞれ対応する長さより小さいことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の圧縮成形用金型。
〔7〕前記〔4〕に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前記金型の面盤間に、一対の金型を閉じた時に面盤とスペーサーで形成される空間の体積より、嵩体積の大きい熱可塑性樹脂層と強化繊維層、或いは熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導により面盤を熱可塑性複合材料の成形温度に調節した後、金型で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記磁性体の高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
〔8〕前記〔5〕に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前記金型の面盤間に、上の面盤と下の面盤の隙間よりも厚い熱可塑性樹脂層と強化繊維層、或いは熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導により面盤を熱可塑性複合材料の成形温度に調節した後、金型で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記磁性体の高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
〔9〕前記〔6〕に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前記一対の金型の面盤間に、一対の金型を閉じた時に面盤が密着する部分より長い枠に巻きとられた熱可塑性樹脂層と強化繊維層、或いは熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導により面盤を熱可塑性複合材料の成形温度に調節した後、一対の金型の面盤で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を挟み込み、圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記磁性体の高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
本発明の金型は、面盤の加熱及び冷却を急速に行うことができ、かつ温度分布が均一であり、これを用いると広い成形条件幅で成形品を製造できる。
また、本発明の製造方法によれば、ムラがなく高品質な熱可塑性樹脂系複合材料成形品をハイサイクルに製造できる。
本発明の金型の実施形態の一例として、スペーサーを使用した場合の金型1の縦断面図。(A)開いた状態、(B)閉じた状態。 本発明の金型の実施形態の一例として、2次元的に閉合したスペーサーの一例。(A)斜視図、(B)平面図、(C)立面図。 本発明の金型の実施形態の一例として、ストッパーを有する金型を使用した場合の金型2の縦断面図。(A)開いた状態、(B)閉じた状態。 本発明の金型の実施形態の一例として、上型の面盤の短手方向及び長手方向が下型の面盤のそれぞれの方向においてより小さい金型3を使用した場合の縦断面図。(A)開いた状態、(B)閉じた状態。 図1の金型1とスペーサーを用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した金型の縦断面図である。(A)材料をチャージした状態、(B)型を閉じ、成形した状態。 図3の金型2を用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した金型の縦断面図である。(A)材料をチャージした状態、(B)型を閉じ、成形した状態。 図4の金型3と枷に巻き取ったプリプレグテープを用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の工程を示した金型の縦断面図である。(A)枷に巻き取ったプリプレグテープをチャージした状態、(B)型を閉じ、成形した状態。 実施例1で使用した金型における上型の冷却回路を平面状に展開したときの構成を示した概略図である。 実施例1で使用した金型における上型における誘導加熱コイルの配置の様子を示した概略図である。 実施形態の説明に使用した成形材料。(A)熱可塑性樹脂系複合材料(プリプレグ)の積層、(B)熱可塑性樹脂シートと強化繊維の積層、(C)熱可塑性樹脂シートとプリプレグの積層。
<金型>
本発明の金型は、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kである非磁性金属材料により形成された面盤を有する一対の型を具備し、前記一対の型のそれぞれに、内部に冷媒を流通して前記金型の面盤を冷却するために、該型内を貫通する冷却回路を有し、かつ前記一対の面盤の外面にそれぞれ20℃における固有抵抗値が4.0〜100μΩ・cmである高周波誘導により発熱する磁性体を密接し、かつ該磁性体の外面に誘導加熱コイルが設けられている金型であり、この一対の金型に二次元的に閉合したスペーサーか、金型に付したストッパーにより、金型を閉じた状態で面盤間に一定の距離を有することが好ましい態様である金型か、上型の面盤の長さと幅のそれぞれが、下型の面盤より、かつ供する成形材料のそれより小さく局所圧縮がかけられることが好ましい態様である金型である。
以下、本発明の金型の実施形態の一例を示して詳細に説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の金型1は、図1に示すように、相対移動可能な、直方体形状の一対の上型と下型を具備している。
上型は、型の面盤11の短手方向(図面貫通方向)と長手方向(図面左右方向)の中央部に、賦形や転写する成形面16が形成されている。スペーサー30や成形材料を配置しないで型締めすると、上型の面盤11の成形面16と下型の面盤21の成形面26が接触する。また、上型は、上型の長手方向に沿って面盤11を貫通する複数本の冷却回路17が並べて設けられている。また、上型の面盤11の外側(成形面16の反対側)には、磁性体(加熱板)12を高周波誘導加熱する誘導加熱コイル18が設けられている。
下型は、上型と同様に、型の面盤21の短手方向と長手方向の中央部に、賦形や転写する成形面26が形成されている。また、下型は、下型の長手方向に沿って面盤21を貫通する複数本の冷却回路27が並べて設けられており、下型の面盤21の外側(成形面26の反対側)に、磁性体(加熱板)22を高周波誘導加熱する誘導加熱コイル28が設けられている。
上型の誘導加熱コイルケース13と下型の誘導加熱コイルケース23は、電気的に完全に絶縁されている本実施形態では、下型の面盤21と上型の面盤11が絶縁層となっている。
金型1では、図1(B)及び図5(B)に示すように、図2のような2次元的閉断面を有するスペーサーを、上型および/または下型に配置することで、上型と下型を閉じた場合、面盤11、21およびスペーサー30でキャビティが形成される。
型の取付板14、24や側板15、25を形成する材料としては、高周波誘導により加熱されない絶縁物とするか絶縁物を含む積層板を用いる。また熱伝導度も低い無機物が特に好ましい。
取り付け板や側板を形成する材料や積層材の具体例としては、例えば、セラミック、耐熱強化プラスチック、無機断熱材、コンクリートが挙げられる。
キャビティの形状は、目的の成形品の形状に応じて、スペーサー30や面盤の16や26面の形状を決定すればよく、本実施形態の例では、板状である。成形工程において、成形性がよく、かつ良好な成形品を得るには、キャビティを形成する面盤、特に成形面の温度分布はできるだけ均一であることが重要である。特に、急速加熱、急速冷却を意図した本発明に使用される金型においては、均一な温度分布は必須の要求項目である。
本発明者等が鋭意検討した結果、加熱源である加熱板をキャビティ面(面盤)から離して配置し、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/K、好ましくは150〜400W/m/K(より好ましくは200〜400W/m/K)である材料が面盤の材質として好ましいことが分かった。熱伝導率が100W/m/K未満では、伝熱に時間がかかり、急速加熱や急速冷却が達成されなく、また450W/m/Kを超えると、加熱板からの温度分布が解消できず、キャビティ面での温度分布が広くなり好ましくない。また本発明では、加熱源として、誘導加熱コイルによる誘導加熱を使用することから、温度制御の面から、面盤の材質は、誘導加熱しにくいことが必要であり、非磁性金属材料が好ましい。20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kの材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が挙げられる。特にアルミニウムやアルミニウム合金は熱伝導率が高く、キャビティの加工性がよく好ましい。アルミニウム合金としては、アルミニウムと亜鉛、銅、マグネシウム、ケイ素、マンガンなどからなる合金が挙げられる。キャビティの耐磨耗性の面から表面硬度が高い方が、型として耐用年数が長くなり好ましい。このため本発明には、アルミニウム単体より、銅とマグネシウムや、亜鉛とマグネシウムとなどとの合金が特に好ましい。
また、キャビティを形成する面盤は、成形する材料により磨耗や腐蝕や離型性の面から硬度や耐食性が要求される。本発明において、面盤で温度分布を均一化するから、面盤の成形面をメッキやコーティングすることが出来る。メッキとしては、クロムメッキや無電解ニッケルメッキなどが例示される。またコーティングとしては、TiN,TiAlN,CrN,AlCrN,TiCNなどの窒化金属コートや炭化金属コートが例示される。
加熱源となる磁性体12と22は、それぞれ面盤11と誘導加熱コイルのケース13、面盤21と誘導加熱コイルのケース23の間に配置されることが好ましい。磁性体12と22は、20℃における固有抵抗値(以下、単に「ρ」という。)が4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料からなる。すなわち、上型の磁性体12と下型の磁性体22は、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により形成されている。前記磁性金属材料のρが4.0μΩ・cm以上であれば、高周波誘導により加熱され、密着した面盤に急速に伝熱される。また、前記磁性金属材料のρが100μΩ・cm以下であれば、充分な電流が流れるため、急速に加熱できる。加熱板として作用する12と22を形成する磁性金属材料のρは、5.0〜90μΩ・cmが好ましく、6.0〜80μΩ・cmがより好ましい。
本発明でいう磁性体とは、磁石に吸い付くような強い磁性を示す強磁性体をさし、磁界Hと磁化の強さIとの関係を示す磁化曲線は、直線的ではなく、強いHでIは一定の値Isに飽和し、この飽和磁界強さが、0.1(Wb/m2)以上、特に0.5(Wb/m2)以上の強磁性材料が好ましい。例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどから選ばれた1種以上の原子を質量にして50%以上を含む金属や合金が上げられる。磁性体(加熱板)12と22を形成する磁性金属材料は、具体的には鋼鉄、炭素鋼、軟鋼、珪素鋼、MK鋼、ステンレス鋼、ニッケル、四三酸化鉄などが上げられる。特に、強磁性体である鋼やニッケルが好ましい。
高周波誘導加熱された磁性金属材料から、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/K、好ましくは150〜400W/m/Kである非磁性金属材料により形成された面盤11と21に伝熱される。磁性金属材料は、誘導加熱コイル13と23の配置による磁界の強弱により、発熱度合いが異なり、位置に依存して磁界の強さが異なり、大きな温度分布を有する。しかし、上型と下型の面盤金型を通して伝熱された面盤における温度分布は大変小さくなる。熱伝導率が100W/m/K未満では、磁性金属材料をより高温にする必要があり、省エネルギーの面から好ましくない。また450W/m/Kを超えると熱効率はよくなるが、本発明では面盤11や21と加熱板12や22を密着させているので、面盤の熱伝導率が極端に高いと、面盤の表面温度は、加熱板の温度分布をそのまま拾って、成形面での温度分布の均一化が不十分となり好ましくない。
本発明に使用される成形面への伝熱距離となる面盤の厚さは、特に限定されないが、5〜150mm、好ましくは、10〜120mmである。5mm未満では、面盤の温度分布の均一化が不十分で好ましくなく、また150mmを超えると、面盤の加熱に時間がかかり好ましくない。面盤の厚さは、成形する際の温度分布と加熱速度の要求度により選択される。
なお、本発明における熱伝導率は、JIS A1412−2付属書Aの平板比較法に準拠して測定される。
面盤11と21に配置された冷却回路17と27は、その内部に冷媒を流通させ、熱伝導により成形面16および26を冷却するものであり、面盤11と21を長手方向に貫通するように配管されている。また、冷却回路17と27は、それぞれが面盤に貫通するように穴加工され、型の外表面で連結されている。冷媒が熱伝導率の高い面盤内を直接流れるから、急速に冷却される。
本実施形態の冷却回路17と27は、面盤に貫通孔を開け、図8に示したように金型表面で隣接する貫通孔を配管でつなぐことで敷設される。面盤内は、貫通孔とすることが冷却時の熱交換性から好ましいが、この貫通孔中にも配管することができる。この配管は、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により形成されることが好ましい。前記ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路17と27が形成されていることにより、冷却回路17と27は、加熱板12と22より誘導加熱コイルからの遠距離であることと合わせて、材質的にも加熱板12と22に比べて高周波誘導による加熱効率が著しく低くなる。そのため、高周波誘導により、加熱板12と22を加熱し、それからの伝熱で加熱される面盤11と21の加熱時に、その高周波誘導により冷却回路17と27が同時に加熱されることを防止することができ、冷却回路17と27の温度が低いまま保たれるので、その後の成形面16や26の冷却を速やかに高効率で行える。
冷却回路17と27を形成する非磁性金属材料のρは、4.0μΩ・cm以下がより好ましい。
また、冷却回路17と27は、面盤11と21の冷却効率の点から、熱伝導度の高い非磁性金属材料から形成されていることが好ましい。
冷却回路17と27を形成する非磁性金属材料としては、特に制限はないが、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられる。なかでも、銅が好ましい。
冷却回路17と27の断面形状及び断面積は、適宜設定できる。
冷却回路17と27の本数は、面盤11と21を急速に冷却するのに充分な本数であればよく、上型10の強度を考慮しつつ適宜設定できる。冷却回路17と27は、面盤11と21全体を均一に冷却できるように、複数本を平行にかつ等間隔に設けることが好ましい。
コイルケース13と23中に敷設された誘導加熱コイル18と28は、電流を通じることで発生する磁界により、加熱板12と22を高周波誘導加熱するものである。
誘導加熱コイル18と28は、加熱板12と22を高周波誘導加熱して伝熱により面盤11と21を加熱できるものであればよく、一般には外側が絶縁された集束された銅線が用いられる。
誘導加熱コイル18と28の形状、大きさ、位置及び数は、加熱板12と22を高周波誘導加熱して伝熱により面盤11と21を急速に加熱できる範囲であれば特に限定されない。誘導加熱コイル18と28は、本実施形態では、型本体の内部で加熱板12と22の外側(面盤11と21の反対側のコイルケース13と23内)に設けられている。誘導加熱コイル18と28を敷設するコイルケース13と23は、誘導加熱しくい材質であることが好ましく、樹脂製、セラミック製、石綿製、木網セメント板製、非磁性金属製などが挙げられる。これらの中では、断熱性が高い樹脂製や石綿製、木網セメント板が好ましい。
下型20は、上型10と基本的に同じ仕様の型や材質が使用できる。成形する製品により、上型の面盤11と下型の面盤21の厚さは異なることもある。その熱容量バランスを考慮して、面盤11と22の温度が等しく昇温するように加熱板12と22や加熱コイル18と28の容量が選択されることが好ましい。また冷却工程で面盤11と面盤21の温度が等しくなるように、冷却管(冷却孔)17と27を敷設することが好ましい。
本発明の成形用型では、積層型の層間に絶縁層は特に必要がない。ただ加熱コイル18と28のそれぞれのコイル間の絶縁性は保たれなければならない。またコイルケース13と23は、熱的のみならず電気的にも絶縁性を有する材質が好ましい。材質としては、樹脂製、セラミック製、石綿製、木網セメント板などが挙げられる。
金型1は、誘導加熱コイル18,28に電流を通じることにより、高周波誘導により加熱板12,22を加熱して、伝熱により面盤11,21を急速に加熱できる。また、誘導加熱コイル18,28の電流を停止して加熱板12,22の高周波誘導加熱を停止した後、冷却回路17,27に冷媒を流通させることで、面盤11,21を急速に冷却できる。そのため、面盤11,21の急速な加熱と冷却を繰り返しながら成形材料を成形することで、ハイサイクルに成形品を製造できる。
なお、本実施形態の金型1における誘導加熱コイル18,28を設ける位置は、加熱板12,22を高周波誘導加熱できる位置であればよく、型本体の内部に設ける積層位置の態様には限定されない。例えば、加熱板12,22とコイルケース13,23の間に断熱板や空間を設けることができる。この場合においても、面盤の加熱速度を向上させるために、加熱板12,22を面盤11,21に密着するように設置する。
面盤11,21の冷却速度を向上させるために、冷却回路17,27は、面盤11,21内の成形面近傍に設置することが好ましい。また、冷却回路は、金型本体の長手方向に沿って設ける態様には限定されず、金型の短手方向に沿って設けてもよい。ただし、冷却回路は、成形面の冷却効率の点から、成形面が形成されている向きに沿って設けることが好ましい。
[第2実施形態]
次に、本発明の金型の他の実施形態例を示して詳細に説明する。
本実施形態の金型2は、図3(A)と(B)に示すように、金型を閉じた時に、上型のストッパー19と下型のストッパー29が接触し、上型の面盤と下型の面盤が接触せず、間隔40が設定でき、開放空間が形成される相対移動可能な一対の上型と下型を具備する。すなわち、金型2は、金型1のスペーサーを使用せず、面盤周囲に配置したストッパーで面盤間距離を形成するもので、金型1と同様に金型2により、立体状の成形品を製造できる。金型の基本的な加熱―冷却システムは、金型1と同じである。金型1と同じ記号を用いて説明する。
前記金型1と同様に、上型と下型の面盤の長手方向に沿って面盤を貫通する複数本の冷却回路が、面盤内に密着するように並べて設けられている。また、面盤の内側(金型裏面側)には、高周波誘導加熱による加熱板と、高周波誘導源となる誘導加熱コイルが、コイルケース中に設けられている。更に成形機への取り付け板と面盤の周囲にストッパー19,29が取り付けられている。ストッパーは円筒状、角柱状で、上型と下型にバランスよくそれぞれ4個以上配置されている。金型を閉じた時に当たる各ストッパーの面は、平面で面一となるように、ストッパーの高さは精密に調整されている。誘導加熱コイルや、加熱板は、電気的に完全に絶縁されている必要があり、コイルケースに電気絶縁が施されている。
ストッパーと面盤の高さの差により形成される空間距離40は、目的の成形品の形状に応じて決定すればよく、本実施形態ではその断面形状は矩形である。
型本体の材質としては、第1実施形態の型本体で挙げた材質と同じ材質が挙げられ、好ましい態様も同じである。
加熱板は、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料からなり、第1実施形態の加熱板と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
冷却回路は、その内部に冷媒を流通させ、熱伝導により面盤を冷却して、成形材料に接する成形面を冷却するものであり、第1実施形態の冷却回路と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
誘導加熱コイルは、電流を通じることで加熱板を高周波誘導加熱して、伝熱により密着した面盤を成形温度まで急速に加熱するものであり、第1実施形態の誘導加熱コイルと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
取り付け板やストッパーに用いることができる材料としては、無機物等の絶縁物、20℃における固有抵抗値が5.0μΩ・cm以下の非磁性体である誘導加熱されにくい金属材料等が挙げられる。
金型2は、誘導加熱コイルに電流を通じることで、高周波誘導により加熱板を加熱して、伝熱により面盤を急速に加熱できる。また、誘導加熱コイルの電流を停止して加熱板の高周波誘導加熱を停止した後、冷却回路内に冷媒を流通させることで、面盤を冷却して成形品接触面を急速に冷却できる。そのため、面盤の急速な加熱と冷却を繰り返しながら成形材料を成形することで、ハイサイクルに成形品を製造できる。
なお、本実施形態の金型2においては、誘導加熱コイルを設ける位置は、加熱板を高周波誘導加熱できる位置であればよく、型本体の外部に設ける積層位置の態様には限定されない。例えば、加熱板とコイルケースの間に断熱板や空間を設けることができる。この場合においても、面盤の加熱速度を向上させるために、加熱板を面盤に密着するように設置する。コイルケースは、加熱板や取り付け板と電気絶縁性を有することが必要であり、樹脂製やセラミック製が好ましい。
[第3実施形態]
次に、本発明の金型の他の実施形態例を示して詳細に説明する。
本実施形態の金型3は、図4(A)と(B)に示すように、金型を閉じた時に接する上型の面盤の長さ50が、下型の面盤の対応する部分より短く、相対移動可能な一対の上型と下型を具備する。すなわち、金型3により、成形材料を部分圧縮して成形品を製造できる。金型の基本的な加熱―冷却システムは、金型1と同じである。
前記金型1と同様に、上型と下型の面盤の長手方向に沿って面盤を貫通する複数本の冷却回路が、面盤内に密着するように並べて設けられている。また、面盤の内側(金型裏面側)には、高周波誘導加熱による加熱板と、高周波誘導源となる誘導加熱コイルが、コイルケース中に設けられている。更に成形機への取り付け板と側板面が取り付けられている。対応する上型の面盤の長さと下型の面盤の長さ差は、成形材料を固定している枠より大きければよく、30mm以上、好ましくは50mm以上である。上型の面盤より大きい配置を固定した成形材料を部分圧縮成形して成形品が得られる。
誘導加熱コイルや、加熱板は、電気的に完全に絶縁されている必要があり、コイルケースに電気絶縁が施されている。
下型の面盤より小さい上型の面盤の形状や凹凸は、目的の成形品の形状に応じて決定すればよい。本実施形態例ではその断面形状は矩形である。
型本体の材質としては、第1実施形態の型本体で挙げた材質と同じ材質が挙げられ、好ましい態様も同じである。
加熱板は、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料からなり、第1実施形態の加熱板と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
冷却回路は、その内部に冷媒を流通させ、熱伝導により面盤を冷却して、成形材料に接する成形面を冷却するものであり、面盤の大きさに相当する配置が好ましい。基本的には、第1実施形態の冷却回路と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
誘導加熱コイルは、電流を通じることで加熱板を高周波誘導加熱して、伝熱により密着した面盤を成形温度まで急速に加熱するものであり、第1実施形態の誘導加熱コイルと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
取付板や側板に用いることができる材料としては、無機物等の絶縁物、20℃における固有抵抗値が5.0μΩ・cm以下の非磁性体である誘導加熱されにくい金属材料等が挙げられる。
金型3は、誘導加熱コイルに電流を通じることで、高周波誘導により加熱板を加熱して、伝熱により面盤を急速に加熱できる。また、誘導加熱コイルの電流を停止して加熱板の高周波誘導加熱を停止した後、冷却回路内に冷媒を流通させることで、面盤を冷却して成形品接触面を急速に冷却できる。そのため、面盤の急速な加熱と冷却を繰り返しながら成形材料を成形することで、ハイサイクルに成形品を製造できる。
なお、本実施形態の金型3においては、誘導加熱コイルを設ける位置は、加熱板を高周波誘導加熱できる位置であればよく、型本体の外部に設ける積層位置の態様には限定されない。例えば、加熱板とコイルケースの間に断熱板や空間を設けることができる。この場合においても、面盤の加熱速度を向上させるために、加熱板を面盤に密着するように設置する。コイルケースは、加熱板や取り付け板と電気絶縁性を有することが必要であり、樹脂製やセラミック製が好ましい。
<熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]>
本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、本発明の金型を用いた製造方法であって、下記工程を有する。
配置工程:図5(A)に示したように、下型の面盤と二次元的に閉合したスペーサーが形成する体積より大きい、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料または熱可塑性樹脂層と強化繊維層を図10(A)〜(C)に示したように組み合わせ、スペーサー内に配置し、金型を閉じる。
成形工程:誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、加熱板から伝熱で面盤を均一に加熱する。面盤からの伝熱により、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を加熱し、必要に応じて溶融させ、更に圧力をかけることによって圧縮成形する。なお、「必要に応じて溶融させ」るのは、配置工程で、溶融していない熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置した場合のことである。この態様は、後述する第2実施形態、第3実施形態においても同様である。
冷却工程:前記成形工程の後に、前記加熱板の高周波誘導加熱を停止し、面盤内の冷却回路に冷媒を流通させて面盤の成形面を冷却し、伝熱により熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を冷却固化する。
取り出し工程:前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す。
以下、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の実施形態の一例として、前述の金型1を用いた製造方法について説明する。
配置工程では、図5(A)に示したように、下型の面盤と二次元的に閉合したスペーサーが形成する体積より大きい、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料および/または熱可塑性樹脂層と強化繊維層の組み合わせ、スペーサー内に配置し、金型1を閉じる。
熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31は、マトリックス樹脂が強化繊維で強化された繊維強化複合材料からなる公知の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を用いることができる。
また、熱可塑性樹脂層と強化繊維層を積層した複合材料も用いることができる。また、熱可塑性樹脂層と熱可塑性樹脂系複合材料層の組み合わせ、異なる熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を組み合わせ積層した材料も用いることができる。さらに、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を溶融させた状態で面盤の上に載置しても構わない。
強化繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、高強度ポリエステル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維等の各種の無機繊維または有機繊維等が挙げられる。強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、一方向に引き揃えた状態、織物、編み物、不織布、チョップされた短繊維形状等いずれの状態であっても使用できる。
マトリックス樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂(ポリアミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル等)等が挙げられる。
成形に供される成形材料の容積は、金型1の下型の面盤とスペーサーから形成される容積より大きく、好ましくは1〜20容量%、さらに好ましくは2〜10容量%大きく、また成形材料の高さは、スペーサーより高い、好ましくは、0.2〜10mm、さらに好ましくは0.5〜5mm高い。成形後の体積が空間体積より大きく、かつ成形後の高さがスペーサーの高さより高いことが好ましい。成形材料の容積がより小さい場合や高さがスペーサーの高さより低い場合、型閉めにより成形材料に樹脂圧がかからず、良好な成形品が得られない。容積が20容量%を超えるか、高さの差が10mmを超えると、面盤とスペーサーが形成する空間から大量のバリが発生し、材料ロスが出ることやバリを除去する作業が難しくなるから好ましくない。
成形工程では、誘導加熱コイル18,28に電流を通じて加熱板12,22を高周波誘導加熱し、伝熱することで面盤11,21を加熱し、成形面16,26を成形温度調節し、熱可塑性樹脂層と強化繊維層、または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31を成形面16,26に密着させる。これにより、熱可塑性樹脂層と強化繊維層、または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31が未溶融の場合でも、高温の成形面16,26により溶融され、面盤の圧力がかかって、熱可塑性樹脂層が強化繊維層に溶融含浸すると共に、2次元的に閉合したスペーサーにより形成される板状に溶融成形される。成形品の厚さは、面盤とスペーサーにより囲まれた容積と熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の容積の関係による。通常、面盤とスペーサーにより囲まれた容積より、熱可塑性樹脂系複合材料の容積が大きくチャージされ、一部スペーサーよりあふれ流出を伴うが、スペーサーの高さより、成形品の厚さが高くなる。
成形面16,26の加熱温度は、熱可塑性樹脂層や熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31が充分に流動する温度であればよく、用いる熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31の種類によっても異なるが、80〜400℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。加熱板の温度は、伝熱する型の面盤厚さによるが、成形面より5〜50℃高いことが好ましく、より好ましくは10〜30℃、特に10〜20℃高いことが好ましい。
成形工程の後、冷却工程において、誘導加熱コイル18,28の電流を停止し、加熱板12,22の高周波誘導加熱を停止する。そして、配管された冷却回路17,27の内部に冷媒を流通させ、熱伝導により成形面16,26を冷却し、板状に成形された状態で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31を固化する。
冷却工程では、成形面16,26の温度を、熱可塑性樹脂層や熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31が固化するのに充分な温度まで冷却すればよい。冷却工程では、用いる熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31の種類によっても異なるが、ハイサイクルな成形品の製造が容易な点から、成形面16,26を30〜200℃まで冷却することが好ましく、70〜160℃まで冷却することがより好ましい。
冷却回路17,27の内部に流通させる冷媒としては、水、オイル(例えば、松村石油(株)製バーレルサーム#400、綜研テクニックス(株)製NeoSK−OIL1400等)等が挙げられる。
冷媒の温度は、10〜100℃が好ましい。
冷却工程において熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料31を固化した後、面盤の加圧を停止し、型を開き、金型1から成形品を取り出す。
以上の工程により、板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られる。
金型1では、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により加熱板12,22が形成されているため、加熱板12,22を高周波誘導加熱により短時間で急速に加熱できる。一方、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路17,27が形成されているので、加熱板12,22を高周波誘導加熱する際に冷却回路17,27が同時に加熱されることが防止されている。そのため、冷却回路17,27は温度が低いまま保たれているので、冷却工程における成形面16,26の冷却が効率的に行える。
加熱板12,22の温度は、加熱コイル18,28に誘導される磁界の強さに時間に依存する。その磁界の強さは、コイルの配置と電流に依存する。コイル配置による加熱板面上の磁界の強さの分布は避けられず、それに伴い加熱板に温度分布として現れる。加熱板上の温度分布を樹脂成形に要求される10℃以内に抑制することは困難であった。しかし、この加熱板に密着した、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/K、好ましくは150〜400W/m/Kである非磁性金属材料に伝熱通過する本発明により、伝熱過程で平均化され、成形面16,26において温度分布は10℃以下に制御できる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、前述の金型1を用いる方法には限定されず、用いる金型は、前述した冷却回路及び誘導加熱コイル、面盤を有するものであれば、成形面の形状は限定されない。
<熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第2実施形態]>
以下、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の他の製造方法について説明する。該方法は、本発明の金型を用いた製造方法であって、下記工程を有する。
配置工程:金型の面盤間に、図10(A)〜(C)に示したように、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料及び/または熱可塑性樹脂層と強化繊維層を配置し、金型を閉じる。
成形工程:誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、伝熱により面盤を成形温度まで加熱する。面盤間の熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を加熱して、必要に応じて溶融させ、次いで加圧して、金型の面盤間で圧縮成形する。
冷却工程:前記成形工程の後に、前記加熱板の高周波誘導加熱を停止し、面盤内の冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する。
取り出し工程:前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す。
以下、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の実施形態の一例として、前述の金型2を用いた製造方法について説明する。
配置工程では、図6(A)に示すように、熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41を金型2の下型の面盤表面に配置し、上型を閉じる。次いで成形工程において、誘導加熱コイル18,28に電流を通じて加熱板12,22を高周波誘導加熱して、伝熱により面盤11,21を加熱するとともに金型を加圧し、図6(B)に示すように、面盤11と面盤21により、熱可塑性樹脂層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41を、必要に応じて溶融させ、圧縮成形する。
本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法では、誘導加熱コイル18,28に電流を通じて加熱板12,22を高周波誘導加熱して、伝熱により面盤11,21を加熱した後に、熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41を配置して圧縮成形を行ってもよい。
成形面16,26の加熱温度は、用いる熱可塑性樹脂層や熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41の種類によっても異なるが、80〜400℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。なお伝熱元の加熱板32,42は、キャビティ面より10〜30℃高く加熱される。
熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41は、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]で使用したものと同じ、マトリックス樹脂が強化繊維で強化された繊維強化複合材料からなる公知の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を用いることができる。
成形工程の後、冷却工程において、誘導加熱コイル18,28の電流を停止し、加熱板12,22の高周波誘導加熱を停止する。そして、面盤11,21に配管された冷却回路17,27の内部に冷媒を流通させ、熱伝導により成形面16,26を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41を固化する。
冷却回路17,27の内部に流通させる冷媒としては、冷却水、冷却オイル等が挙げられる。冷媒の温度は、10〜100℃が好ましい。
冷却工程の後、取り出し工程において、金型2を開き、金型2から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品42を取り出す。これにより、平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られる。
金型2では、金型1と同様に、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により加熱板12,22が形成され、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路17,27が形成されているため、冷却回路17,27を加熱せずに、加熱板から伝熱により面盤11,21を急速に加熱できる。また、前述の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]と同様に、高周波誘導により加熱されない絶縁物で取り付け板14,24や側板15,25を形成すれば、ハイサイクルな熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造がさらに容易になる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、前述の金型2を用いる方法には限定されない。例えば、用いる金型は、前述した加熱板、熱伝導性の高い面盤、冷却回路及び誘導加熱コイルを有するものであれば、所望の成形面形状を有する金型が使用できる。
以上説明したように、本発明の金型は、特定の金属材料により形成した加熱板、面盤及び冷却回路を用い、成形面を急速加熱と急速冷却することができ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品等の成形品がハイサイクルで製造できる。
<熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第3実施形態]>
以下、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の他の製造方法について説明する。該方法は、本発明の金型を用いた製造方法であって、下記工程を有する。
配置工程:金型の面盤間に、図10(A)〜(C)に示したように、予め枠に固定した熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料及びまたは熱可塑性樹脂層と強化繊維層を配置し、金型を閉じる。特に、繊維軸が一方向からならプリプレグテープの成形に適する。
成形工程:誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、伝熱により面盤を成形温度まで加熱する。大きさの異なる面盤間の熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の一部を加熱し、必要に応じて溶融させ、加圧して、金型の面盤間で部分的に圧縮成形する。本発明の局部的に圧縮加熱成形する実施方法によると、強化繊維や熱可塑性樹脂系複合材料に張力をかけた状態で成形ができる。従って、繊維の方向を制御して成形することができる。
冷却工程:前記成形工程の後に、前記加熱板の高周波誘導加熱を停止し、面盤内の冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する。
取り出し工程:前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す。
以下、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の実施形態の一例として、前述の金型3を用いた製造方法について説明する。
配置工程では、図7(A)に示すように、予め枠50に固定した熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料51を金型3の下型の面盤表面に配置し、上型を閉じる。次いで成形工程において、誘導加熱コイル18,28に電流を通じて加熱板12,22を高周波誘導加熱して、伝熱により面盤11,21を加熱するとともに金型を加圧し、図7(B)に示すように、面盤11と面盤21により、熱可塑性樹脂層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料51を、必要に応じて溶融させ、圧縮成形する。
本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法では、誘導加熱コイル18,28に電流を通じて加熱板12,22を高周波誘導加熱して、伝熱により面盤11,21を加熱した後に、熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料51を配置して圧縮成形を行ってもよい。
成形面16,26の加熱温度は、用いる熱可塑性樹脂層や熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料41の種類によっても異なるが、80〜400℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。なお伝熱元の加熱板12,22は、キャビティ面より10〜30℃高く加熱される。
熱可塑性樹脂層と強化繊維層、および/または熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料51は、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]で使用したものと同じ、マトリックス樹脂が強化繊維で強化された繊維強化複合材料からなる公知の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を用いることができる。
成形工程の後、冷却工程において、誘導加熱コイル18,28の電流を停止し、加熱板12,22の高周波誘導加熱を停止する。そして、面盤11,21に配管された冷却回路17,27の内部に冷媒を流通させ、熱伝導により成形面16,26を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料51を固化する。
冷却回路17,27の内部に流通させる冷媒としては、冷却水、冷却オイル等が挙げられる。冷媒の温度は、10〜100℃が好ましい。
冷却工程の後、取り出し工程において、金型3を開き、金型3から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品52を取り出す。これにより、平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られる。
金型3では、金型1と同様に、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により加熱板12,22が形成され、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路17,27が形成されているため、冷却回路17,27を加熱せずに、加熱板から伝熱により面盤11,21を急速に加熱できる。また、前述の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]と同様に、高周波誘導により加熱されない絶縁物で取り付け板14,24や側板15,25を形成すれば、ハイサイクルな熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造がさらに容易になる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、前述の金型3を用いる方法には限定されない。例えば、用いる金型は、前述した加熱板、熱伝導性の高い面盤、冷却回路及び誘導加熱コイルを有するものであれば、所望の成形面形状を有する金型が使用できる。
以上説明したように、本発明の金型は、特定の金属材料により形成した加熱板、面盤及び冷却回路を用い、面盤の成形面を急速加熱と急速冷却することができ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品等の成形品がハイサイクルで製造できる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
図1に例示した構造の金型を製作した。上型、下型とも全く同じ仕様とした。上型と下型を向き合わせて閉じたときに、上型と下型の間に配置した二次元的に併合したスペーサーにより、面盤とスペーサーによりキャビティが形成されるような成形面を有し、面盤は、アルミニウム1000製(20℃における熱伝導率240W/m/K)のものを使用した。
冷却回路は、面盤に成形面から外側に約15mmの位置に、直径6.0mmの貫通孔を開け、金型外は直径6.0mmの市販の銅管(非磁性体、ρ=1.69μΩ・cm、株式会社コベルコマテリアル製)を使用し、図8に示すように連通し、片側につき6本、合計12本をスネーク状に配置した。上型、下型それぞれまとめて冷却水を流せるようにした。
誘導加熱コイルは、直径10mmの市販の銅管(株式会社コベルコマテリアル製)の表面を絶縁コーティングしたものを用い、コイルケース内に、図9に示すように、銅管の間隔が10mmとなるよう渦状に配置した。コイルケースは、厚さ8mm幅50mmの石綿スレート板製により枠組した。加熱板は、鉄鋼(磁性体、ρ=10.0μΩ・cm、厚さ5mm)を使用した。
上型及び下型の誘導加熱コイルに、それぞれ2kWの出力でジェネレーターから通電した。熱電対を面盤表面に設置し、成形面の温度変化を測定したところ、成形面は約50秒で室温から300℃まで加熱されることが確認できた。また幅300mm、長さ300mmの成形面内の最高と最低の温度差は7℃以内であった。ここで誘導加熱を中止し、冷却回路に冷却水を通水したところ、20秒で成形面の最高温度が80℃まで下がった。
この金型を使用して成形確認を実施した。熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料としては、東洋紡績株式会社製の、ガラス繊維(連続繊維)にポリプロピレンを含浸させたテープ(Quick Form(登録商標)、巾15mm、厚み150μm、Vf=50%)を、平織して幅1m、厚さ185μmのプリプレグ織物を得た。このプリプレグ織物から290×290mmの大きさに12枚切り出し重ねた。これを下型面盤に配置した、内側300×300mmのスペーサー内に配置した。金型を閉じ、面盤でプリプレグテープを押し付けると共に、高周波誘導加熱を開始した。熱電対により、面盤の成形表面温度が40秒で200℃に達したことを確認した後、3分経ってから誘導加熱を止め、冷却回路に冷却水を流した。面盤表面温度が100℃以下になったことを確認した後、冷却を止め、金型を開けて、成形品を金型から取り出した。300mm×300mmで厚みが約2.1mmの状態の良い平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られた。該成形品は、内部にもボイドは少なく充分にコンソリデーションされていることが観察された。
[実施例2]
面盤として、アルミニウム板の代わりに同じ寸法のジュラルミンA2017(アルミニウム銅合金、20℃における熱伝導率230W/m/K)を使用した以外は、実施例1と全く同じ仕様、構成で金型を作成し、実施例1と同じ条件で誘導加熱を行った。その結果、約55秒で面盤金型の温度が300℃に達した。誘導加熱を中止し、冷却回路に冷却水を通水したところ、成形面温度が20秒で80℃まで下がった。
[比較例1]
面盤として、アルミニウム板の代わりに同じ寸法の炭素鋼(20℃熱伝導率53W/m/K)を使用した以外は、実施例1と全く同じ仕様、構成で金型を作成し、実施例1と同じ条件で誘導加熱を行った。その結果、成形面の温度が平均250℃に達するのに340秒かかった。成形面の最高温度と最低温度の差は72℃であった。誘導加熱を中止し、冷却回路に冷却水を通水したところ、45秒で面盤温度が80℃まで下がった。
以上のように、本発明の金型は、面盤の加熱及び冷却が急速に行え、また成形面の温度分布が均一であるため、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品をハイサイクルで表面外観ムラのない成形が行える。
[実施例3]
実施例1と同様にして得たプリプレグ織物から290mm×290mmの大きさに12枚切り出し重ねた。上型と下型にストッパーを有し、共に350mm×350mmの面盤を有し、金型を閉めたとき面盤間が1.8mmとなる金型の下型面盤に配置した。金型を閉じ、面盤でプリプレグテープを押し付けると共に、高周波誘導加熱を開始した。熱電対により、面盤の成形表面温度が38秒で200℃に達したことを確認した後、3分経ってから誘導加熱を止め、冷却回路に冷却水を流した。面盤表面温度が100℃以下になったことを確認した後、冷却を止め、金型を開けて、成形品を金型から取り出した。310mm×305mmで厚みが約2.0mmの状態の良い平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られた。該成形品は、内部にもボイドは少なく充分にコンソリデーションされていることが観察された。
[実施例4]
実施例1と同様にして得たテープを長さ300mm、幅300、高さ5mmのステンレス鋼製枠に12層となるように均一に巻き取った。220mm×220mmの面盤を持つ上型と、350mm×350mmの面盤を持つ下型を組み合わせ、型を閉じたとき220mm×220mmの面盤が接するように組み合わせた金型を開き、テープを巻き取った枠を金型中央部に配置した。金型を閉じ、面盤で巻き取ったプリプレグテープを部分的に押し付けると共に、高周波誘導加熱を開始した。熱電対により、面盤の成形表面温度が41秒で200℃に達したことを確認した後、3分経ってから誘導加熱を止め、冷却回路に冷却水を流した。面盤表面温度が100℃以下になったことを確認した後、冷却を止め、金型を開けて、成形品を金型から取り出した。220mm×220mmで厚みが約1.9mmの状態の良い平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られた。該成形品は、内部にもボイドは少なく充分にコンソリデーションされていることが観察された。
[実施例5]
実施例1と全く同様の金型とスペーサーを使用し、これに目付け30g/m2のガラスフィラメントマット3層+厚さ0.1mmのポリプロピレンシート1層を交互に20回積層し、290mm×290mmに切り出した。これを下型面盤に配置した、内側300×300mmのスペーサー内に配置した。金型を閉じ、面盤でプリプレグテープを押し付けると共に、高周波誘導加熱を開始した。熱電対により、面盤の成形表面温度が40秒で200℃に達したことを確認した後、3分経ってから誘導加熱を止め、冷却回路に冷却水を流した。面盤表面温度が100℃以下になったことを確認した後、冷却を止め、金型を開けて、成形品を金型から取り出した。300mm×300mmで厚みが約2.0mmの状態の良い平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られた。該成形品は、内部にもボイドは少なく充分にコンソリデーションされていることが観察された。
本発明の金型は、金型の急速な加熱、冷却が可能であるため、成形用中間材料であるプリプレグ成形板や自動車部品等の用途の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品をハイサイクルに製造できる。
<金型1、金型2、金型3>
11:上型面盤、21:下型面盤、12:上型発熱磁性体、22:下型発熱磁性体、13:上型誘導加熱コイルケース、23:下型誘導加熱コイルケース、14:上型取り付け板、24:下型取り付け板、15:上型側板、25:下型側板、16:上型成形面、26下型成形面、17:上型冷却管、27:下型冷却管、18:上型加熱コイル、28:下型加熱コイル
<金型1>
30:スペーサー、31:熱可塑性樹脂層と強化繊維層、及び/または成形前熱可塑性樹脂系複合材料、32:成形後熱可塑性樹脂系成形材料
<金型2>
40:ストッパー(19,29)で形成される空間距離、41:熱可塑性樹脂層と強化繊維層、及び/または成形前熱可塑性樹脂系複合材料、42:成形後熱可塑性樹脂系成形材料
<金型3>
50:上型の面盤の長さ(巻き枠)、51:熱可塑性樹脂層と強化繊維層、及び/または成形前熱可塑性樹脂系複合材料、52:成形後熱可塑性樹脂系成形材料

Claims (9)

  1. 20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kである非磁性金属材料により形成された面盤をそれぞれ有する一対の型を具備し、前記一対の型のそれぞれに、内部に冷媒を流通して前記面盤を冷却するための、該型内を貫通する冷却回路を有し、かつ前記一対の型の面盤の外面にそれぞれ20℃における固有抵抗値が4.0〜100μΩ・cmである高周波誘導により発熱する磁性体を密接し、かつ該磁性体の外面に誘導加熱コイルが設けられていることを特徴とする金型。
  2. 前記一対の型のそれぞれの面盤がアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、請求項1に記載の金型。
  3. 前記一対の型のそれぞれの面盤表面が、窒化金属コート、炭化金属コート、金属メッキのいずれかで処理されたアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、請求項1に記載の金型。
  4. 前記一対の型の少なくとも片方の型の面盤に2次元的に閉合したスペーサーを配置した請求項1〜3のいずれか記載の金型。
  5. 前記一対の型の外部にストッパーを有し、一対の型をストッパーが当たるまで型を閉めた時に、上の面盤と下の面盤に隙間を有する請求項1〜3のいずれか記載の金型。
  6. 前記一対の型を閉めた時に、接する上型の面盤の短手方向及び長手方向は、対応する下型の面盤のそれより小さく、かつ面盤間に供する成形材料の短手方向と長手方向にそれぞれ対応する長さより小さい請求項1〜3のいずれか記の金型。
  7. 請求項4に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
    前記金型の面盤間に、一対の金型を閉じた時に面盤とスペーサーで形成される空間の体積より、嵩体積の大きい熱可塑性樹脂層と強化繊維層、或いは熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
    前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導により面盤を熱可塑性複合材料の成形温度に調節した後、金型で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、
    前記成形工程の後に、前記磁性体の高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
    前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
    を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
  8. 請求項5に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
    前記金型の面盤間に、上の面盤と下の面盤の隙間よりも厚い熱可塑性樹脂層と強化繊維層、或いは熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
    前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導により面盤を熱可塑性複合材料の成形温度に調節した後、金型で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、
    前記成形工程の後に、前記磁性体の高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、 前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
    を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
  9. 請求項6に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
    前記一対の金型の面盤間に、一対の金型を閉じた時に面盤が密着する部分より長い枠に巻きとられた熱可塑性樹脂層と強化繊維層、或いは熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
    前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導により面盤を可塑性複合材料の成形温度に調節した後、一対の金型の面盤で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を挟み込み、圧縮成形する成形工程と、
    前記成形工程の後に、前記磁性体の高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させて面盤を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
    前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
    を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
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