詳細な説明
明細書は新規と見なされる1以上の実施形態の特徴を定義する請求項で終わるが、1以上の実施形態は、図面とともに説明を考慮してよりよく理解されるであろう。求められるように、1以上の詳細な実施形態がこの明細書で開示される。しかしながら、1以上の実施形態は、単に本発明の構成例であることが理解されるべきである。したがって、この明細書で開示される具体的な構造および機能の詳細は、限定として解釈されるべきでものではなく、単に請求項の根拠として、および、1以上の実施形態を、仮定上の任意の適切な詳細構造へとさまざまに適用することを当業者に教示するための代表的根拠として解釈されるべきである。さらに、この明細書内で用いられる用語および説明は、限定することを意図するものではなく、この明細書で開示される1以上の実施形態を理解可能にする説明を与えることを意図するものである。
この明細書内で開示される1以上の実施形態は、集積回路(IC)に関し、より特定的には、IC内での使用のためのインダクタ構造に関する。この明細書で開示される1以上の実施形態に従うと、中央タップインダクタ構造は、インダクタ構造内のリターン線を含むように実現可能である。インダクタ構造は、一回巻きのコイルで実現可能であり、コイルは、コイルを二分する中心線について対称に構成される。高周波差動回路内で実現される場合、インダクタ構造の中央タップは、高周波差動回路をバイアスするために用いられる電流を受けることができる。リターン線は、一回巻きコイルの中心線に沿って経路付けられるとともに、接地に向かうバイアス電流のためのリターン経路として用いられることができる。この方式では、回路内を流れるバイアス電流は、インダクタ構造の中心線に沿って接地へと戻される。
分離リングは、インダクタ構造の一回巻きコイルを囲むように構成することができる。分離リングは、開口部を有するように実現可能であり、開口部は、分離リングが中心線と交差するところに配置される。開口部は、分離リングに結合する一回巻きコイルによって分離リング内に誘起される電流が、分離リング内を循環して流れることを防ぐ。インダクタ構造の中心線に沿ってリターン線を経路付けること、および分離リング内で電流経路を断ち切ることにより、より大きな差動対称性を有するインダクタ構造が作成される。さらに、誘導結合および容量結合の効果を受けるときに、インダクタ構造のパラメータのばらつきがより小さくなる。
インダクタ構造は、パターニングされた接地シールドを含むように実現可能であり、その接地シールドは、複数の平行な導電性ストリップのグループで形成される。インダクタ構造の、パターニングされた接地シールドは、インダクタ構造を通じて流れる電流によって発生する電界を、インダクタ構造の下方にある基板から分離することができる。パターニングされた接地シールドは、インダクタ構造のコイルを囲む磁界を妨げないように構成することができる。
パターニングされた接地シールドのストリップは、パターニングされた接地シールドの外周において、ともに結合することができる。導電性材料のリングが、それらストリップをともに結合するために用いられることができる。1つの実施形態において、導電性材料のリングは、特定の導電率を有するように形成することができる。導電率は、複数の異なる導電率の範囲のうちの1つの中にあり得る。選択された導電率の範囲内の導電率で導電性材料のリングを形成することによって、インダクタ構造のクォリティファクタ、すなわち「Q」を、制御および/または最適化することができる。導電性材料のリングは、以下で説明される例示的実施形態に示されるように、分離リングまたは分離壁あるいはその両方を含むことができる。
図1は、この明細書で開示される実施形態に従う中央タップインダクタで実現される例示的回路100を示す回路図である。より特定的には、回路100は、一回巻き中央タップインダクタ構造を含む高周波(RF)差動回路とすることができる。図1は、物理的インダクタ構造の電気的特性を示すため、および、回路100のようなRF差動回路内で実現されるときには、IC中央タップインダクタ構造と典型的に関連付けられた非理想的なことを示すために提示される。しかしながら、図1は、回路図であって、たとえば示されるさまざまな構成要素のレイアウトといった物理的配置を伝えるあるいは示すことを意図するものではないということが理解されるべきである。この明細書内で用いられるように、「レイアウト」または「ICレイアウト」は、平面的幾何学形状に関するICの表現を指し、それは、ICの素子を形成する金属層、酸化領域、拡散領域または他の層をパターニングする設計マスクに対応する。
回路100は、IC内の電圧制御発振器(VCO)のための回路アーキテクチャを表わす。示されるように、回路100は、インダクタ構造105と、キャパシタ110と、P型金属酸化膜半導体(PMOS)電流源115と、N型金属酸化膜半導体素子(NMOS)120および125を含むことができる。回路100内において、インダクタ構造105とキャパシタ110とは、ノード145とノード150との間に並列に結合されてL−Cタンク回路を形成する。L−Cタンク回路は、回路100で実現されるVCOの発振周波数を決定する。回路100の発振周波数は、インダクタ構造105の値とL−Cタンクのキャパシタ110の値との積である。回路100内において、インダクタ構造105は、中央タップインダクタ構造として実現可能である。より特定的には、インダクタ構造105は、対称的な一回巻き中央タップインダクタ構造として実現可能である。この明細書内で用いられるように、「中央タップ」または「中央端子」は、インダクタの巻線またはコイルの長さの中点に作製された結合点のことを指す。さらに、インダクタ構造105は、対称中央タップインダクタ構造とすることができる。ここで、インダクタ構造105は、中央端子140を二分する中心線の両側において物理的に対称である。
巻線またはコイルの連続的な繋がりであるが、中央タップインダクタ構造は、直列に結合された等しい値の2つの別々のインダクタ構造としてモデル化することができる。たとえば、図1において、インダクタ構造105はインダクタ105aおよび105bとして示されるように、直列に結合された2つのインダクタ構造として表現される。インダクタ構造105を、インダクタの中点において結合される対称的な中央タップインダクタ構造として実現することによって、インダクタ105aとインダクタ105bとの間の整合が改善可能である。回路100は差動回路であるが、インダクタ105aとインダクタ105bとの間の整合を改善することによって、回路100の差動対称性と性能とを改善することができる。
中央端子140は、PMOS電流源115のドレインに結合される。PMOS電流源115のソースは、電位VDDを有する電圧源130に結合される。PMOS電流源115のゲートは、Vbiasで示されるバイアス電圧を受ける。Vbiasの電位は、PMOS電流源115から中央端子140へと供給される、Ibiasで示されるバイアス電流の量を決定することができる。中央端子140を通じて、電流Ibiasはインダクタ構造105へと流れることができる。
ノード145とノード150とは、回路100の差動出力を形成する。したがって、回路100の差動出力電圧は、信号Vout+と信号Vout−との間の電圧差に等しい。NMOS120のドレインとNMOS125のゲートとはノード145に結合される。NMOS125のドレインとNMOS125のゲートとはノード150に結合される。NMOS120とNMOS125との各々のソースはノード135に結合されるとともに、典型的には回路100の接地電位である電圧源130の負電位に結合される。NMOS120とNMOS125とは合わさって、ポジティブフィードバックループを含むクロス結合差動対を形成する。ポジティブフィードバックループは、NMOS120のゲートからNMOS125のゲートへとNMOS120のドレインを通り、NMOS125のドレインを通じてNMOS120のゲートへと戻る、閉経路を有する。
回路100内で発振を誘起するために、電流Ibiasは、中央端子140においてインダクタ構造105へと注入されることができる。電流Ibiasは、NMOS120および125の各々の内部における所定の動作点を確立する。一連の発振条件を満たすような適切な設計、たとえばNMOS120および125のポジティブフィードバックループにおけるゲインを1より大きくすること、により、NMOS120および125はインダクタ構造105およびキャパシタ110と合わさって、発振器を形成するように結合可能である。1以上の実施形態において、キャパシタ110は、バラクタ、すなわち電圧制御の可変容量として実現可能であり、それによって、所定の周波数範囲内で回路100の発振周波数を変化させる。
電流Ibiasはインダクタ構造105を流れるので、電流Ibiasはインダクタ105aおよびインダクタ105bの間で分割される。電流Ibiasがインダクタ105aおよび105bの間でどのように流れるかを単純に理解するために、電流Ibiasは、ICMと示されるコモンモード電流と、Idiffと示される差動電流という電流成分に分けることができる。電流ICMは、インダクタ105aおよび105bの各々の内に対称に流れる、共通のDC電流の量と見なすことができる。
図において、回路100の平衡条件、すなわち(Vout+)−(Vout−)=0ボルトにおいて、NMOS120および125の各々を通って供給される電流は、電流Ibiasの1/2にほぼ等しい。したがって、インダクタ105aおよび105bの各々を通じて流れる電流は、電流Ibiasの1/2に等しい。Ibiasの1/2という電流値は、NMOS120および125の各々を通じて供給されるコモンモード電流と見なすことができる。回路100が発振するので、NMOS125を通って流れる電流が減少するにつれて、NMOS120を通って流れる電流が増大する。したがって、引続いて、インダクタ105bを通って流れる電流が増大するにつれて、インダクタ105aを通って流れる電流が減少する。
インダクタ105aおよび105bを通る電流における方向の変化は、インダクタ構造105を通って流れるAC差動電流Idiffと見なすことができる。インダクタ構造105が中央タップであるので、一回巻きインダクタ構造および、したがってインダクタ105aおよび105bは互いに物理的に対称であり、電流Idiffは、インダクタ105aおよび105bを通る電流の非対称な流れを表わす。たとえば、回路100のPMOS電流源115は、バイアスされてほぼ100mAに等しい電流Ibiasを生成することができる。この場合、インダクタ105aおよび105bの各々を通って流れる電流ICMは、ほぼ50mAに等しい。
続く時間T1において、回路100が発振するので、ほぼ75mAの電流がインダクタ105aからノード145へと流れることができるとともに、ほぼ25mAの電流がインダクタ105bからノード150へと流れることができる。この場合、ほぼ25mAの電流Idiffが、インダクタ構造105を通りノード150からノード145へと流れると見なすことができる。図1において電流Idiffが一方向の矢印で示されているが、電流Idiffは、インダクタ構造105のいずれの方向にも流れることができる。コモンモード電流と差動電流との区別は、インダクタ構造105の性能にとって重要であるが、その理由は電流Idiffがインダクタ構造105を、いずれかの方向に非対称に流れるのに対して、電流ICMが中央端子140のいずれかの側にインダクタ構造105を対称的に流れるためである。
NMOS120および125の各々を通って流れる電流は、ノード135で集められて電流源130へと戻される。回路100は電流源130の正電位と電流源130の負電位との間の閉じた経路であるが、中央端子140に流入する電流は、電流源130の負電位に戻される電流に等しい。したがって電流源130の負電位に戻される電流は、Ibiasに等しい。
図1の回路100内のリターン155は、NMOS120および125の各々のソースから、電流源130の負電位への、電流のリターン経路を表わす。IC内の物理的な回路として実現される場合には、リターン155は、配線材料の1以上の部分を表わし、その部分は、NMOS120および125の各々のソースを、ICの導電層内に実現される接地バスへと結合し、その導電層は、NMOS120および125の各々のソースからある有限の距離だけ離れて位置する。
NMOS120および125の各々のソース端子を電流源130に結合させる配線材料を経路付ける位置および方法に依存して、リターン155の配線材料はインダクタ構造105に結合することができる。この結合の方式は、誘導性結合および容量性結合の両方であり得る。インダクタ構造105に対して、リターン155の配線を経路付けて電流Ibiasを電流源130に戻すことにおける非対称性は、リターン155をインダクタ構造105に結合することにおける非対称性をもたらす。さらに、リターン155の配線材料の異なる部分内の電流の流れにおける非対称性は、リターン155をインダクタ構造105に非対称的に誘導的に結合することをもたらし得る。
IC内の回路100の物理的な実現例における、たとえば配線材料のような他の素子および物理フィーチャの結合は、インダクタ構造105の回路パラメータに影響を与え、したがって回路100に影響を与え得る。図において、インダクタ105に結合される他のIC素子および物理フィーチャは、インダクタ構造105のインダクタンス値を変更する可能性があり、それにより回路100の中心周波数を移動させる。リターン155へのインダクタ構造105の非対称な結合は、インダクタ105aおよび105bのうちの1つのインダクタンス値に対して、他よりもより重要な影響を与える可能性があり、それにより回路100の差動完全性を低下させる可能性がある。さらに、コモンモードノイズをインダクタ構造105に非対称的に結合させることは、インダクタ105aおよび105bのうちの1つに、他よりもコモンモードノイズの多くを結合させる可能性がある。コモンモードノイズ、すなわち差動回路によって本質的に減少されるノイズの非対称な結合は、差動ノイズへと変換されるコモンモードノイズをもたらし得る。
図2は、インダクタ構造105のトポグラフィ図を示す第2のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図2は、図1を参照して議論される一回巻きの中央タップインダクタ構造105の、IC内で実現されるような物理レイアウト表現を示す。したがって、この明細書を通じて同様の要素には同様の符号を用いる。インダクタ構造105は、コイル205と、中央端子140と、差動端子(端子)210および215と、リターン155と、分離リング220とを含むことができる。
この明細書内での説明の目的のために4つの別々の対象物として示されているが、コイル205と、中央端子140と、端子210および215とはともに結合されて、導電性材料の連続的領域を表わす。さらに、導電性材料の連続的な領域または部分として実現されているが、コイル205と、中央端子140と、端子210および215とはICの1以上の異なる導電層内で実現可能である。導電層は、1以上のビアと結合されて、1つの連続的導電経路を生成可能である。
コイル205は、インダクタ構造105の対称的な一回巻きのコイルとして実現可能である。中心線225は、コイル205を対称に二分するように決定可能である。中心線225の特定の側に存在するコイル205の各々の部分は、図1を参照して説明されるように、インダクタ105aおよび105bのうちの1つの物理レイアウトを表わすことができる。図2内において八角形のコイルとして実現されているが、コイル205は、中心線225についてコイル205の対称性が維持できる限りにおいて、利用可能なIC製造プロセスを用いて実現可能なあらゆるさまざまな形態または形状において実現可能である。したがって、インダクタ構造105内の八角形コイルとしてコイル205を実現することは、明確さおよび説明の目的のみのために与えられて、限定を意図するものではない。
RF差動回路、たとえば図1の回路100の内部で実現される場合、インダクタ構造105は、中央端子104においてバイアス電流Ibiasを受けることができる。この明細書内で先に示されたように、中央端子140は、コイル205の長さの中点に位置し、それによってコイル205の各々の側が、対称であるとともに等しいインダクタンス値を有することが確実となる。端子210および215の各々は、インダクタ構造105が実現されるRF差動回路の差動出力ノードに結合可能である。この明細書において先に説明されるように、RF差動回路がバランス条件にある場合、端子210および215の各々から発生されるコモンモード電流ICMは、Ibiasの1/2にほぼ等しい。
RF差動回路が状態を切換えるに従い、差動電流Idiffは、コイル205内でいずれかの方向に流れを交互に切換えることができる。Idiffが電流の方向を変えるにしたがい、Idiffと関連付けられる電流の量も変化する。この方式で説明される、コイル205内の電流により、コイル205を流れる電流は、任意の特定の時間における端子210および215を通って流れる電流ICMおよびIdiffの和として表わすことができる。
たとえば、中央端子140は、ほぼ100mAの電流Ibiasを受けることができる。その結果、端子210および215の各々を流れるコモンモード電流は、ほぼ50mAとなり得る。時間T1において、ほぼ75mAの電流が端子210から流れるとともに、ほぼ25mAの電流が、端子215から流れ出ることを可能にする。その場合、時間T1において、ほぼ25mAの差動電流が、端子215から端子210へとコイル205内で流れる。コモンモード電流と差動電流との区別は、インダクタ構造105の性能にとって重要であるが、その理由は、ICMが中心線225のいずれかの側に対称的に流れるが、その一方で、Idiffは、中心線225を横切るいずれかの方向に交互に流れるためである。
リターン155は、インダクタ構造105を実現するために用いられるIC製造プロセスの導電層内に配置された導電性材料の部分で実現可能である。1つの実施形態において、リターン155の長さは、コイル205の直径の長さにほぼ等しく、さらに中心線225が、コイル205内に実質的に配置可能である。リターン155が実現される導電層は、コイル205、中央端子140および/または端子210および215を実現するために用いられる導電層とは異なる導電層であり得る。この方式でリターン155を実現することにより、コイル205、中央端子140または差動端子210および215の1以上が、リターン155と結合することが防がれる。さらに、リターン155を通じて、コイル205のいずれかの側を流れる電流は、併せられて、電流源130に戻され、電流源130は、中央端子140に隣接する、または中央端子140に近いリターン155の端部において配置可能である。リターン155は、中心線225に配置可能であり、それによってインダクタ構造105、すなわちコイル205を二分する。中心線225上にリターン155を実現することは、インダクタ構造105内で用いられる電流が、インダクタ構造105に対称的に、最も低い電位へと戻されるように経路付けられることを確実する。さらに、中心線225上にリターン155を実現することは、インダクタ構造105内に用いられる電流を、最も低い電位へと戻すために用いられる導電性材料が、インダクタ構造105を通って対称的に経路付けられることを確実にする。
この方式でリターン155を実現することは、バイアス電流を最も低い電位に戻すことにより、あるいはバイアス電流を最も低い電位に戻すために用いられる配線材料によって誘起される任意の結合が中心線225によって二分されるようにコイル205のいずれかの側に対称的に適用されることを確実にする。この対称性を維持することによって、コイル205の各々の側の間の整合誘導特性の維持が可能となる。中心線225のいずれかの側に存在するコイル205の各々の部分が、別々のインダクタ、たとえば図1を参照して説明されるようなインダクタ105aおよび105bを実現するので、コイル205の各々の側のインダクタンス値の整合は、インダクタ構造105で実現される回路内で差動信号バランスを確保するように要求される。中心線225の一方の側に非対称的にコイル205に結合されるあらゆるコモンモードノイズは、差動の入力へと変換されて、そのノイズは、インダクタ構造105が実現される任意の差動回路の差動出力信号内に現われ得る。
分離リング220は、インダクタ構造105を実現するために用いられるIC製造プロセスの導電層内に存在する導電性材料の部分に結合される1以上の基板タップを含むことができる。別の実施形態において、IC製造プロセスの最も低いところに存在する導電層、したがって、基板タップに最も垂直方向に近くにある導電層は、基板タップに結合される導電性材料の部分を実現するために用いることができる。分離リング220の導電性材料は、1以上の配線を介して、インダクタ構造105が実現されるIC内の最も低い電位、たとえば接地に結合可能である。1つの局面において、分離リング220は、コイル205に電磁気的に結合されるということができる。
分離リング220は、コイル205の外周から一定かつ所定の距離230でコイル205を囲むことができる。たとえば、コイル205と分離リング220とは、互いに同心であり得る。コイル205と分離リング220とは、さらに、同じ形状を有し得る。ただし、分離リング220は、コイル205を囲むように寸法が取られるとともに、ICの異なる導電層内で実現される。
ICインダクタ構造は、IC全体に共通の導電性基板材料の上に存在するので、周囲の素子からのノイズがインダクタ構造の直下に位置する基板材料へと入射される可能性がある。インダクタ構造のコイルは、一般的に基板層から最も遠くにある導電層内に実現されて、基板層とは1以上の誘電層によって分離される。このような分離にも係わらず、従来のインダクタ構造のコイルとその下にある基板との間には誘導性結合および容量性結合の両方が存在し得る。このために、分離リングは、インダクタ構造の周囲に配置されるとともに、共通基板電位、たとえばICの接地電位へと結合可能である。インダクタ構造の下にある基板を接地に結合することによって、インダクタ構造を囲む素子によって入射される基板ノイズから下部の基板を分離することが改善される。
典型的には、従来のICインダクタ構造内で用いられる分離リングは、従来のICインダクタ構造のインダクタコイルを囲む連続的な基板リングを形成する。従来の分離リングが連続的であるので、そのリングは従来のICインダクタ構造のコイルを囲むコイルを形成する。その結果、従来のICインダクタ構造のコイルと従来の分離リングによって形成されるコイルとの間に相互インダクタンスが存在する。相互インダクタにより、従来のICインダクタ構造内では時間的に変化する差動電流が磁界を生成して、その磁界が従来の分離リング内に電流を誘起する。従来の分離リング内で発生する電流は、従来のICインダクタ構造内に流れる電流と反対の磁界を形成する。この反対の磁界は、回路内での動作時に従来のICインダクタ構造の絶対インダクタンス値を減少させる。
したがって、従来の分離リングと従来のICインダクタ構造との間の相互インダクタンスは、従来のICインダクタ構造のインダクタンス値を減少させる。さらに、従来の分離リングと従来のインダクタ構造のコイルとの間の距離が減少するにつれて、分離リングと従来のインダクタ構造のコイルとの間の相互インダクタンスが増加し、従来のICインダクタ構造の絶対インダクタンス値が減少する。従来の分離リングへの誘導性結合からの、従来のICインダクタ構造のインダクタンス値における減少は、従来の分離リングがない場合に対して、従来のICインダクタ構造のインダクタンス値の20%に達し得る。
インダクタンス値への従来の分離リングの効果を打消すために、分離リング220は、分離リング220内で不連続性を発生させる開口部を含む。従来の分離リングとは異なり、分離リング220はコイル205を囲む連続的コイルを形成しない。分離リング220の端部240および245は、中央端子140、たとえば、差動端子210および215からのインダクタ構造105の両側に近接し、開口部を定義する所定の距離235だけ離れている。別の実施形態において、開口部は、中心線225がその中心となるように配置される。その場合、分離リング220の端部240および245の各々は、中心線225から等距離にあり得る。示されるように、開口は中心線225上の中央端子140と位置合わせされ、たとえば同軸上に位置合わせされる。分離リングの一部分、たとえば開口部に対向する位置は、この明細書内でより詳細に示されるように、リターン155に結合可能である。
分離リング220における開口部は、分離リング220を通る電流経路を断ち切ることによって、分離リング220の周囲の電流の循環を妨げることができる。分離リング220内の電流の減少は、インダクタ構造105のインダクタンス値におけるコイル205と分離リング220との間の誘導性結合の影響を減少させることができる。たとえば、分離リング220内の端部240と端部245との間の距離235で定義される開口を含むことは、距離230における任意のばらつきがインダクタ構造105のインダクタンス値にもたらす影響を減少させることができる。
分離リング220によって、インダクタ構造105と相互作用を及ぼすコイルを形成するのと同様の方法により、IC内の回路ブロックを配線するために用いられる導電性材料の部分は、インダクタ構造105と相互作用するコイルを形成することができる。特に、IC内の電源線、たとえばVDDおよび接地は、典型的には、導電性材料の広い領域で実現されるが、よりインダクタ構造105と相互作用し得る。インダクタ構造105と相互作用するコイルを形成するために、電源線は、中心線225に交差する方式でインダクタ構造105のコイル205を二分しなければならない。電源線が中心線225の一方の側に存在する場合には、電源線上の差動端子210および215を通って流れる差動電流の影響が最小限となる。
電源線が中心線225を交差することを可能にすることで、コイル205を流れる差動電流は、中心線225を交差する電源線内に電流を誘起し得る。電源線内に誘起する電流は、インダクタ構造105のインダクタンス値に影響を与える磁界を発生し得る。このために、ICレイアウト内で実現される場合、インダクタ構造105を定義する周囲内、またはインダクタ構造105を定義する周囲から所定の距離内には、中心線225に交差する電源線は存在しない。1つの実施形態において、分離リング220、たとえば分離リング220の外側の端部は、インダクタ構造105を定義する周囲であり得る。
リターン155および分離リング220内の開口部を実現すること、および説明されるように電源線が中心線225を交差することを防ぐことにより、中央タップインダクタ構造は、より大きな差動対称性と、より安定的なインダクタンス値を示すように実現可能である。図2を参照して説明されるさまざまな構造素子を用いることにより、インダクタ構造105のインダクタンス値におけるばらつきを、設計インダクタンス値のほぼ2%の減少で実現することができる。
図3は、この明細書で開示される別の実施形態に従うインダクタ構造の図形表現を与える第2のブロック図である。より特定的には、図3は、インダクタ構造105のさらなる局面を示す。したがって、図3は、インダクタ構造105の電気的特性および電磁気的特性と、図1の回路100の動作におけるそれらの特性の影響をよりよく理解することを意図する。したがって、PMOS115、NMOS120および125、およびVDDのような要素の回路図での表現は、回路100内でインダクタ構造105が存在するとともに動作する動作上の説明を示すために含まれている。
図3を参照して、PMOS115のドレイン端子は、配線305を介して中央端子140に結合される。この明細書で既に説明されるように、PMOS115は、電流源130の正電位から回路100への電流Ibiasのための電流源として機能する。ICレイアウト内で実現される場合、配線305は、中心線225に沿ってインダクタ構造105へと経路付けられて、それによりインダクタ構造105内における構造的および電流での対称性を維持することができる。
差動端子210は、NMOS120のドレイン端子に結合される。NMOS120のゲート端子は、差動端子215に結合される。差動端子215は、NMOS125のドレイン端子に結合される。NMOS125のゲート端子は、差動端子215に結合される。この方式で実現されることにより、NMOS120および125はクロス結合差動対を形成する。NMOS120および125の各々のソース端子は、配線310に結合される。NMOS120および125の各々のソースを流れるコモンモード電流および差動電流は、配線305内で合わさった場合に、ほぼIbiasに等しい。配線310は、図面上ではNMOS120および125の各々のソース端子をリターン155に結合させるために必要な金属配線を表わす。インダクタ構造105内での構造的および電流の対称性を維持するために、配線310は、差動端子210および215に隣接するリターン155の第1の端部に対称的に結合可能である。
リターン155の第2の端部は、中央端子140に隣接しているが、ソース130の負電位に結合可能である。配線315は、リターン155をソース130の負電位に結合するために用いられる。配線315は、中心線225に沿って、インダクタ構造105からソース130へと経路付けられることができる。この方式で結合されることで、電流Ibiasは、リターン155および配線315を介して電流源130へと戻されることができる。たとえば、配線315は、異なる導電層に配置されて、中心線225に沿って経路付けられることを容易にすることができる。さらに、この方式で配線305,310および315を経路付けることは、電流Ibiasが中心線225に沿ってインダクタ構造105に対称的に入力または出力するように経路付けられることを確保する。この対称的な経路のアプローチは、インダクタ構造105内のループの形成を防ぎ、そのループはコイル205に結合する可能性があり、コイル205は、インダクタ構造の全体のインダクタンス値を変化させるか、あるいはインダクタ構造105に外部ノイズを入射する可能性がある。
基板ノイズの結合は、さらに位置205において分離リング220をリターン155に結合させることによって最小化することができる。位置250において分離リング220をリターン155に結合させることは、分離リング220を中心線225に対する2つの対称的な部分に電気的に分割する。位置250は、電気的ノードとしても表わされるが、コイル205内に流れる差動電流、すなわち分離リング220内の誘起電流のための回路100の仮想的なAC接地に対応する。この明細書内で用いられるように、「仮想AC接地」との用語は、基準電位に直接に物理的に結合されていない状態でのAC電流の入力または出力の場合における、定常電位で維持される電流のノードを呼ぶ。分離リング220を位置250において仮想AC接地に結合させることは、分離リング220の能力を最小化して、コイル205の任意の部分と相互作用するループを形成する。さらに、この方式で分離リング220を結合させることは、インダクタ構造105のインダクタンス値における分離リング220の影響を最小化する。
図3で開示される例は、この明細書で開示される1以上の実施形態を限定することを意図するものではない。たとえば、回路の概略的な形態で示されるさまざまな素子は、1以上の他のノードおよび/または受動素子で置き換えることができる。これに関し、たとえば、差動端子210および差動端子215は、1以上の能動素子、受動素子、またはそれらに示されているのとは別の能動素子および受動素子の組合せによって位置250およびリターン155に結合されることができる。一般的に、差動端子210をリターン155に結合させる素子は、差動端子215をリターン155に結合させる素子と同様であるが、必ずしもそうである必要はない。同じ方式で、中央端子140は、図3に示されたのとは異なる他の種類の回路素子によってリターン155に結合可能である。
図4は、この明細書で開示される別の実施形態に従うインダクタ構造の側面図を与える第3のブロック図である。図4は、矢印300の示す斜め方向から見た図3のインダクタ構造105の側面図を示す。なお、側面図である図4内において、図3では見ることができる1以上の対象物は、図4の中では見ることができない場合がある。同様に、図4内に現われる1以上の対象物は、図3内で見ることができない可能性がある。
図4を参照して、3つの別々の導電層が、インダクタ構造105の素子を実現するために用いられる。3つの導電層で実現されているが、インダクタ構造105は、1以上のさらなる導電層で実現することができる。したがって、この明細書内では、3つの導電層によるインダクタ構造105の実現は、明確性および説明の目的のみで与えられるものであり、限定することを意図していない。たとえば、インダクタ構造105は、4つの導電層を用いて実現可能である。この場合、コイル205は、ビアによってともに結合される2つの隣接する導電層を用いて実現可能である。この方式において、コイル205のクォリティファクタ、すなわちQは、コイル205と関連する直列抵抗を減少させることによって改善可能である。
図4を続けて、中央端子140と、コイル205と差動端子210とは、導電層内の導電材料の単一の連続部分で実現されて、その導電層は基板420として示されるような基板層から最も遠く離れた導電層である。なお、図4内において、差動端子215は差動端子210によって隠されている。
リターン155は、コイル205を実現するために用いられる導電層と、基板420との間に存在する導電層内で実現される。図4で示される例において、リターン155は、コイル205が実現される導電層と、分離リング220が実現される導電層との間の導電層内で実現される。一般的に、インダクタは、基板420に最も遠く離れた導電層を用いてIC内で実現される。典型的には、IC製造プロセスのこれらの上部導電層は、より下方に存在する導電層よりも厚く、その結果、より低い直列抵抗およびより高いQを有するインダクタを生成する。図4に示されるように、コイル205の下に実現されているが、リターン155はまた、コイル205を実現するために用いられる導電層の上に存在する1以上の導電層内に実現可能である。したがって、この明細書の図4内で示されるようなリターン155の実現は、明確さおよび説明の目的のみで与えられるものであり、限定することを意図するものではない。
配線305は、インダクタ構造105の中央端子140をPMOS115のドレイン端子に結合させる導電材料の領域を示す。配線310は、リターン155をNMOS120および125の各々のソース端子に結合させる導電性材料の領域を表わす。配線315は、リターン155をソース130の正電位に結合させる導電性材料の領域を表わす。導電性材料は単一の層として示されているが、配線305,310および315の各々は、1以上の導電層と、隣接する導電層を結合させる1以上のビアとを用いて実現可能であり、配線305,310および/または315のそれぞれを形成する。したがって、この明細書内の導電性材料の単一領域で配線305,310および315の各々を実現することは、明確さおよび説明の目的のみで与えられるものであり、限定することを意図するものではない。
分離リング120は、基板420に最も近くに存在する導電層内で実現される。各々のコンタクト415は、分離リング120の部分を基板420の下部領域に結合させる。基板420に最も近い導電層内で実現されているが、分離リング220は、IC製造プロセス内で利用可能な任意の導電層内で実現可能である。したがって、図4で示されるような、基板420に最も近い導電層内の分離リングおよび多数のコンタクト415の実現は、限定を意図するものではない。
配線410は、分離リング220を配線310に結合させる導電性材料の領域を示す。配線410は、位置250において配線310を1以上のビア425に結合させる。したがって、導電性材料の単一の層として示されているが、配線410は配線410を配線310に結合させる1以上の導電性の層として実現可能である。
1以上の実施形態において、位置250は、インダクタ構造105が実現される回路のための仮想AC接地に配置可能である。この場合、配線410は、位置250において分離リング220に物理的に接続可能であり、したがって分離リング220はインダクタ構造105の中心線に沿って分離リング220の長さの中点において対称的に二分される。この方式で分離リング220を配線310に結合させることは、コイル205の部分を結合させる可能性がある分離リング220によって形成される任意のループのサイズを最小化することができる。分離リング220によって形成されるループとコイル205との結合を最小化することは、分離リング220とコイル205とが近接することによって引起される可能性がある、インダクタ構造105のインダクタンス値におけるばらつきを減少させる。
図5は、二回巻き中央タップインダクタ構造500を示す第4のブロック図であり、例示の目的で与えられる。インダクタ構造500は、この明細書で説明されるように、2以上の巻線で実現されるような中央タップインダクタ構造に適用される、分離リングの特徴の使用を示す。インダクタ構造500は、図1のインダクタ構造105を参照して説明されるような、差動RF回路内で実現可能である。図5は、インダクタ構造500を囲む分離リング内の対称的な開口部を与えることでもたらされる、さらなる局面および性能の改善を示す。
インダクタ構造500は、コイル505と、中央端子510と、差動端子(端子)515および520と、分離リング525とを含むことができる。インダクタ構造500は、差動RF回路内での使用を意図しているので、一般的に、バイアス電流は中央端子510において入力される。中央端子510をコイル505に結合させる導電性材料の部分560は、中心線535に位置するインダクタ構造500のリターン、またはリターンの一部と見なすことができる。したがって、図5に示されるリターンは、構造的に図1から図4のリターン155と異なっており、たとえば、図1における素子115と素子140との間の配線に対応可能である。バイアス電流の一部は、端子520および515の各々において差動RF回路へと出力される。この明細書内では説明の目的のために4つの別々の対象物が参照されるが、中央端子510と、端子515および520とは、ともに結合されて、導電性材料の1つの連続的な領域または部分として表わされる。さらに、コイル505、中央端子510および/または端子515および520の各々は、ICの1以上の異なる導電層内で実現可能である。導電層は、1以上のビアによりともに結合されて、1つの連続的導電性経路を生成することができる。
コイル505は、インダクタ構造500の対称的な2回巻きのコイルとして実現される。中心線535は、コイル505を対称的に二分するように決定可能である。図5内で2回巻きの八角形コイルとして実現されているが、中心線535についてのコイル505の対称性が維持されている限りにおいて、コイル505は、IC製造プロセスによって可能な任意のさまざまな形状または形態で実現される2以上の巻線を含むことができる。したがって、インダクタ構造500内で2回巻きの八角形コイルとしてコイル505を実現することは、明確性および説明の目的のみで与えられるものであって、限定することを意図するものではない。別の実施形態において、たとえば、コイル505の巻線は、ICの異なる導電層内で実現されるコイルの各々の巻線で積層可能である。異なる導電層内で実現される各々の巻線は、隣接する導電層における巻線に、1以上のビアによって結合されて、連続的なコイルを形成することができる。
分離リング525は、インダクタ構造500を実現するために用いられる、IC製造プロセスの導電層内に存在する導電性材料の部分に結合される、1以上の基板タップを含むことができる。別の実施形態において、IC製造プロセスの最も低い導電層すなわち基板タップに垂直方向に最も近い導電層は、基板タップに結合される導電性材料の部分を実現するために用いられることができる。分離リング525の導電性材料は、IC内の配線材料を通して、インダクタ構造500が実現されるIC内の利用可能な最も低い電位、たとえば接地に結合可能である。分離リング525は、コイル505の外周から一定かつ所定の距離でコイル505を囲むことができる。別の実施形態において、分離リング525は、分離リング525の長さの中点において、インダクタ構造500が実現される回路内に配置される仮想的AC接地に結合可能である。
図5は、コイル505および分離リング525内の電流への、コイル505と分離リング525との間の相互インダクタンスの影響を示す。コイル505内において、時間的に変化する差動電流であるIdiffは、端子515から端子520へと流れる。この明細書内で示されるように、中央端子510からいずれかの方向に対称的に流れるコモンモード電流とは異なり、Idiffは、インダクタ構造500を横切って流れる。したがって、Idiffは、中心線535に関して、インダクタコイル505を非対称的に流れる。インダクタ構造500にIdiffが流れることにより、分離リング525内に電流を誘起する磁界が発生する。この電流は、Iringと示され、Idiffとは逆方向に流れる。
電流Iringは、コイル505を通る電流Idiffとは反対の磁界を生成する。この明細書で既に説明されるように、従来のICインダクタ構造において、分離リング内の電流のスムーズな流れは、従来のICインダクタ構造のインダクタンス値に影響を与え得る。分離リング525内の開口部の長さ530は、分離リング525内に流れる電流Iringのための経路を断ち切る。図5内において、電流Iringを表わすために用いられる矢印の長さは、分離リング525内のさまざまな場所における電流Iringの電流密度を示す。図5を参照して、電流Iringの電流密度は、開口部に最も近い場所で最も低くなり、開口部から最も遠い場所で最も高くなる。
したがって、電流Iringによって分離リング525内で生成される磁界は、開口部に最も近い場所において最も弱くなるとともに、開口部から最も遠い場所において最も強くなる。その結果、コイル505と分離リング525との間の結合は、開口部に最も近い場所において最も弱くなるとともに、開口部から最も遠い場所において最も強くなる。分離リング525内の電流密度は、開口部に最も近い場所において減少する。しかし、電流密度における変化は、中心線535によって二分されるように、分離リング525内の開口部のいずれかの側における分離リング525内で対称的である。中心線535に沿って開口部の中心を配置することは、電流Iringの電流密度におけるばらつき、したがって、コイル505と分離リング525との間の結合のレベルが、中心線535に関してインダクタ構造500内で対称であることを確実にする。
中心線535によって対称的に二分される開口部の重要性を示すために、分離リングが時計回りに90°回転しているものとする。コイル505と分離リング525との間の結合が開口部近くで最も弱くなるので、コイル505と分離リング525との間の結合は、端子520を含むコイル505の側内で、端子515を含むコイル505の側よりも弱くなる。中心線535上に分離リング525内の開口部の中心を置かないことによって発生する、コイル505と分離リング525との間の結合の非対称性は、コモンモード信号から差動信号への変換をもたらし得る。
分離リング525が時計回りに90°回転している前の図示を続けると、分離リング525に結合される接地電位は、ある量のノイズを含み得る。ノイズ信号は、分離リング525によってコイル505と結合され得る。開口部の回転が、コイル505の各々の側と分離リング525との間の結合の非対称的なレベルをもたらすので、端子520を含む側よりも端子515を含むコイル505の側の方において、より多くの信号が結合される。コイル505の一方側とコイル505の他方側とでの、ノイズ信号の強度の違いは、インダクタ構造500が実現される回路内での差動ノイズ信号として現われる。
中心線535上に分離リング525の開口の中心を置くことは、ノイズ信号がコイル505の各々の側に対称的に結合するということを確実にする。この場合、ノイズ信号は典型的な差動回路によって、実質的には相殺される、あるレベルでのコモンモード信号として現われる。同様の結合非対称性は、インダクタ構造500において本質的な、2つのインダクタのインダクタンス値の整合に影響を与え得る。
図6は、IC内の使用のためのインダクタ構造600のトポグラフィ図を示す第5のブロック図であり、例示の目的で与えられる。インダクタ構造600は、IC内で、たとえばICインダクタ構造として実現可能である。示されるように、インダクタ構造600は、コイル605と、パターニングされた接地シールド(PGS)構造610とを含むことができる。PGS構造610は、基板生成ノイズからの分離を与える。さらに、PGS構造610は、インダクタ構造600の「Q」を改善する機能を果たすことができる。
コイル605は、端子615と、端子620と、ビア(図示せず)を用いてコイル605に結合される配線625とを含むことができる。コイル605は、高導電性材料を含むIC製造プロセスの1以上のさまざまなプロセス層において実現可能である。ある実施形態において、インダクタ構造600のコイル605は、IC製造プロセスでの最も導電性を有する材料を含むプロセス層内で実現可能である。たとえば、典型的には基板655から最も遠くにあるIC製造プロセスの金属層は、(最高でなくても)高い導電性のプロセス層と見なされて、コイル605を実現するために用いることができる。単一の金属層内に形成されるものとして示されているが、コイル605は、1以上のビアを用いて互いに結合される2以上の積層された金属層により形成可能であるということが理解されるべきである。
端子615と620とは、インダクタ構造600の遠位端に位置する。端子615および620は、インダクタ構造600を、インダクタ構造600が実現されるIC内の1以上の他の回路素子に結合するために用いることができる。端子620をコイル605の外周の外側で利用可能とするために、配線625は、コイル605の如何なる巻線を実現するためにも用いられていない金属層を用いて形成可能である。したがって、コイル605の内側の最も多い巻線は、示されるように1つ以上のビアを用いて配線625に結合可能である。
PGS構造610は、フィンガ640によって特徴付けられることができる。ある実施の形態において、コイル605は、分離リング645と、分離壁665とが同心となるようにすることができる。図示のために、この明細書内で分離リング645の符号は、他に示されていなければ、分離リング645の上に位置する金属構造に分離リング645を結合するために用いられる任意のコンタクトもまた指すことができる。図6内において、分離壁665は、介在する空間なく、分離リング645に直ちに隣接している。しかしながら、別の実施形態において、分離壁665は、示されるよりももっと大きくあり得て、実質的に一定の距離によって、分離リングの外側の端部と、分離壁665の内側の端部とが分離される。さらに別の実施の形態において、分離リング645は、分離壁665の直下に延在可能であるか、あるいは分離壁665の直下に配置可能であり、分離リング645は、図6に示される視野角からは見ることができない。
図示のため、フィンガ640はフィンガ640A、フィンガ640B、フィンガ640Cおよびフィンガ640Dとして示される、4つの異なる実質的に平行なフィンガのグループへとさらに分割される。フィンガ640A−640Dのうちの各々のフィンガは、各フィンガ640の一方端上にある1以上のコンタクト(図示せず)を介して分離リング645に結合可能であるとともに、コイル605の中心へと内側に延在することができる。フィンガ640Aは、分離リング645の上端から下方に向けて延在するとともに、分離リング645の上端に実質的に垂直である。フィンガ640Bは、分離リング645の右端から左側に延在するとともに、その右端に対して実質的に垂直である。フィンガ640Cは、分離リング645の下側の端部から上方に延在するとともに、その下側の端部に対して実質的に垂直である。フィンガ640Dは、分離リング645の左端から右側に延在するとともに、その左端に対して実質的に垂直である。
フィンガ640の各々は、コイル605を形成するために用いられるプロセス層と、基板655との間に位置するプロセス層を用いて金属ストリップとして形成可能である。コイル605の各々の直線部分の直下では、直下で交差するとともに同じグループ内にあるPGS構造610のフィンガ640が、互いに平行に並べられる。また、同じグループ内の隣接するフィンガの対は、同じ所定の距離で離されることができる。ある実施の形態において、所定の距離は、インダクタ構造600を実現するために用いられるIC製造プロセスによって可能な、最小の金属間隔とすることができる。
たとえば、フィンガ640Aは、実質的に互いに平行であるとともに、フィンガ640Aの各々が配置される直下のコイル605の線形部分に対して実質的に垂直であり得る。さらに、フィンガ640Aは、同じ所定の距離で互いに離されることができる。明らかなように、フィンガ640Aは、端子615に直接的に結合されるコイル605の部分には垂直ではない。フィンガ640Bは、実質的に互いに平行であるとともに、フィンガ640Bの各々が配置される直下のコイル605の線形部分に対して実質的に垂直である。フィンガ640Bは、同じ所定の距離で互いに離されることができる。フィンガ640Cは、実質的に互いに平行であるとともに、フィンガ640Cの各々が配置される直下のコイル605の線形部分に対して実質的に垂直である。フィンガ640Cは、同じ所定の距離で互いに離されることができる。明らかなように、フィンガ640Cは、端子620に直接的に結合されるコイル605の部分に対して垂直ではない。フィンガ640Dは、互いに実質的に平行であるとともに、フィンガ640Dの各々が配置される直下のコイル605の線形部分に対して実質的に垂直である。フィンガ640Dは、同じ所定の距離で互いに離されることができる。
インダクタ構造600内において、電流は、矢印660によって示される。したがって、フィンガ640の各々は、フィンガ640の各々が配置される下側にある、コイル605の部分内の電流の方向に対して実質的に垂直に向けられる。この方式でフィンガ640を配置することにより、コイル605を通じて流れる電流によって発生する磁界へのフィンガ640の影響が減少される。この方式でフィンガ640を配置することは、インダクタ構造600の効率を高めることができるが、その理由は、コイル605の巻線の周りの磁界内に蓄積されるエネルギが、PGS構造610によって妨げられたり、消費されたりすることがないためである。
実際には、PGS構造610のフィンガ640は、コイル605のすべての部分の直下に位置する連続的なシールドを与える。たとえば、PGS構造610は、コイル605の外側の端部によって定義される外周に少なくとも延在するように実現可能である。ある実施の形態において、PGS構造610の各々のフィンガ640は、コイル605の外周部を越えて所定の距離だけ延在することができる。たとえば、フィンガ640の各々は、コイル605の外周を越えて同じ距離または長さまで延在することができる。
分離壁665は、コイル605およびフィンガ640を包囲するように構成することができる。分離壁665は、インダクタ構造600を実現するために用いられるIC製造プロセスの2以上の導電性プロセス層を用いて実現可能である。分離壁665は、たとえば、コイル605またはフィンガ640を実現するために用いられるようなプロセス層を用いて実現可能である。ある実施の形態において、インダクタ構造600を実現するために用いられるIC製造プロセスの各々の金属層は、垂直方向に積層されて、分離壁665を形成することができる。その場合、分離壁665を実現するために用いられる垂直方向に隣接する金属層の各々の対は、1以上のビアを用いて互いに結合されて、連続的な導電性構造、たとえば、フィンガ640の周りの壁を形成することができる。
図6において示されるように、フィンガ640の各々は、1つ以上のコンタクトを介して分離リング645に結合可能である。この場合、分離壁665は、もし望ましいのであれば取除くことができる。別の実施の形態において、分離壁665は、コイル605の外周を越えて延在するフィンガ640の各々の端部に結合可能である。この場合、分離壁665は、複数のコンタクトを介して分離リング645に結合可能であり、それによって分離壁665およびフィンガ640を基板655に結合させる。
PGS構造610は、インダクタ構造600が実現されるIC内の既知の電位に結合可能である。典型的なP型基板ICプロセスにおいて、PGS構造610は、同じ接地電位または最も負の電位に結合可能であり、基板655もそこに結合される。この方式で実現することにより、PGS構造610は、インダクタ構造600内を流れる電流によって発生する電界から基板655を遮蔽する接地平面を形成することができる。さらに、PGS構造610は、インダクタ構造600を、PGS構造610が実現されるIC内で動作する他の回路ブロックによって基板655内で発生するノイズから分離することができる。
図7−1および7−2は、インダクタ構造700の側面図を各々示す第6および第7のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図7−1および7−2は、インダクタ構造700の側面図を示し、それは図6のインダクタ構造600を参照して説明されるように、実現可能である。図7−1および7−2は、例示的な図として与えられる。したがって、図7−1および7−2は、図6とは同じ寸法で描かれていない。さらに、図7−1および7−2は、図6で提示されるトポグラフィ図からは見ることができないインダクタ構造700のさまざまな局面を示す。
図7−1は、分離壁、たとえば図1の分離壁665が示されていないインダクタ構造700の側面図を示す。図示されるように、インダクタ構造700のコイル705は、上部の金属層、たとえばインダクタ構造700を実現するために用いられるIC製造プロセスの基板755からより遠くにあるいは最も遠くにある金属層内に配置される。図7−1では単一の金属層を用いて実現されるように描かれているが、コイル705は、2以上の垂直方向に積層された金属層を用いて実現可能である。この場合、コイル705の隣接する金属層は、1以上のビアにより結合可能である。
コイル705は、基板755により近い、あるいは最も近い1以上の金属層内で実現可能であるということが理解されるべきである。典型的には、IC製造プロセス内において、基板755からより遠くに位置する金属層は、基板755により近くに配置される金属層よりもより厚くあり得る。したがって、基板755からより遠くにある金属層は、利用可能なプロセス層の、より高いあるいは最も高いレベルの導電率を有する傾向にある。したがって、基板755から最も遠くにある金属層にコイル705を実現することは、典型的には優れたインダクタ特性、たとえば、より低い直列抵抗をインダクタ構造700に与える。しかしながら、この明細書で説明されるような、基板755から最も遠くに位置する単一の導電層でコイル705を実現することは、図示の目的のみで与えられるものであり、この明細書で開示される1以上の実施の形態の限定を意図するものではない。
配線725は、1以上のビア730によりコイル705に結合される。配線725は、コイル705を実現するために用いられる金属層とは異なる金属層で実現可能である。配線725のために異なる金属層を用いることは、コイル705の端部、すなわちコイル705の最も内側の巻線の端部が、さらなるIC回路素子への結合のためにコイル705の外部へと経路付けることを可能にする。図7−1においては、単一の金属層で実現されるように示されているが、配線725は、2以上の垂直方向に積層された金属の層で実現可能である。この場合、配線725を形成する金属積層体における各々の隣接する層は、1以上のビアにより結合可能である。
配線725は、コイル705の上に位置する1以上の金属層、すなわち、コイル705よりも基板755から遠くにある金属層内で実現可能ということが理解されるべきである。したがって、図7−1で示されるような、コイル705の直下に位置する単一の導電層で配線725を実現することは、図示の目的のみで与えられるものであり、この明細書で開示される1以上の実施の形態を限定するものを意図するものではない。
フィンガ740は、概して、フィンガ640の各々が配置される下部のコイル705の部分における電流の方向と垂直に向けられている。図7−1において、フィンガ740の1つのグループのみが示される。示されるように、フィンガ640の各々は、基板755に最も近い金属層を用いて実現可能である。典型的には、できるだけ基板755の近くにPGS構造を実現することによって、コイル705と基板755との間の優れた分離が与えられる。基板755に最も近い金属層内で実現されるように示されているが、フィンガ740は、基板755とコイル705との間に存在する、任意の導電プロセス層内で実現可能である。したがって、この明細書内で、基板755に最も近い金属層内で形成されるようにフィンガ640を記載することは、図示のためのみであって、開示される1以上の実施の形態を限定することを意図するものではない。
ある実施の形態において、フィンガ640の各々は、分離リング745の一方端に結合可能である。分離リング745は、コイル705の外周の全体を包囲するように寸法付けることができる。図7−1において示されるように、フィンガ740の各々は、コンタクタ760の1つによって分離リング745に結合可能である。分離リング745は、たとえば、ICの接地電位に結合されて、フィンガ740の各々が結合される既知の定電位を生成し、分離リング745内に位置する基板755の部分に結合される。他に示されるのでなければ、あるいは文脈で示されるのでなければ、図6に関して説明したように、この明細書内での分離リング745の参照は、コンタクト760(すなわち図7−2のコンタクト705)を含む。分離リング745は、たとえば、P型またはP+型の拡散注入領域のような、低導電性材料で実現可能である。この方式では、フィンガ740の各々は、低導電性材料でともに結合可能である。
図7−2は、分離壁765が示される、インダクタ構造700の側面図を示す。分離壁765は、図6の分離壁665を参照して実質的に説明されるように実現可能である。示されるように、PGS構造は、分離リング745に結合されるフィンガ740で実現可能であり、その結果、基板755(図7−2には示さず)に結合可能である。しかしながら、PGS構造は、さまざまな他の構成で実現可能である。
たとえば、図7−2において、分離壁765は、コンタクタ705を用いて分離リング745に結合されるように示される。したがって、分離壁765は、基板755に結合される。ある実施の形態において、PGS構造のフィンガ740は、分離リング745と反対側の、分離壁765に直接的に結合可能である。このアプローチを用いることにより、各々のフィンガ740の端部は、分離壁765の高導電性材料、たとえば金属を用いて、ともに結合可能である。
図7−2において示されるように、分離壁765は、垂直方向に積層された2以上の金属層720を含むことができる。垂直方向に隣接する金属層720の各々の対は、1以上のビア775を用いてともに結合可能である。複数の金属層720を相互に結合することによって、PGS構造内でフィンガ740をともに結合するために用いることができる、高導電率の層を生成することができる。
ある実施の形態において、分離壁765を形成するために用いられる、最も高い、導電性層、たとえば図7−2に示される上部金属層720が、コイル705を形成するために用いられる導電層と同じくらい、少なくとも基板755から遠くに配置可能である。たとえば、最も高い金属層720は、コイル705を形成するために用いられるのと同じプロセス層を用いて形成可能であるが、より高く形成することができ、分離壁765の最も高いプロセス層は、コイル705を形成するために用いられるプロセス層よりも基板755から遠くにある。さらに、最も低い導電層、たとえば図7−2に示される最も低い金属層720は、分離壁765を形成するために用いられるが、フィンガ740を形成するために用いられるプロセス層と少なくとも同じくらいに基板755近くに配置可能である。たとえば、分離壁765の最も低い金属層720は、フィンガ740を形成するために用いられるのと同じプロセス層を用いて実現可能であるが、フィンガ740を形成するために用いられるプロセス層よりも、低く、たとえば基板755により近くに位置するプロセス層を用いて形成可能である。
図8は、この明細書で開示される別の実施の形態に従うICインダクタ構造の誘導特性および損失特性における、PGS構造のフィンガを結合するために用いられる材料の導電率の影響を示すグラフである。図8は、PGS構造が取込まれるインダクタ構造のインダクタンス値における、PGS構造のフィンガの個々の1つを結合するために用いられる材料の導電率の効果および、インダクタ構造のQを示す。図8のグラフは、インダクタンスのプロット805と、Qのプロット810とを示す。縦軸は、ナノヘンリーで区切られる。横軸は、導電率を表わし、銅の導電率で正規化された単位で区切られる。図8のグラフによって示される値は、三次元電磁シミュレーションから導かれる。
金属PGS構造を用いる従来のICインダクタ構造において、PGS構造の全体は、単一の連続した金属層、たとえば金属シートからなる。連続したPGS構造は、従来のインダクタ構造の下にある基板を、従来のインダクタ構造のコイル内に流れるAC電流によって発生する電磁場から効果的に分離する。さらに、連続したPGS構造は、従来のインダクタ構造を、従来のインダクタ構造の隣の他の回路ブロックから伝達可能なノイズから分離する。しかしながら従来のインダクタ構造において、その中に流れるAC電流によって発生する磁界は、連続したPGS構造内で電流を発生させる。従来のインダクタ構造の連続したPGS構造内に誘起される電流は、従来のインダクタ構造のQを低下させる可能性のあるエネルギの損失をもたらし得る。
図8を再び参照して、QおよびPGS構造のフィンガを配線するために用いられる材料の関連する導電率が示される。ウインドウ815は、Qプロット810が低下する、図8の領域を示す。PGS構造に関連するQの低下は、高周波(RF)IC回路にとって不適切なインダクタ構造をもたらす。Qプロット810は、PGS構造のフィンガを接続するために用いられる金属の導電率の2つの範囲が、インダクタ構造においてQの改善をもたらし得るということを表わしている。
ウインドウ820は、PGS構造のフィンガを接続するために用いられる材料の減少した導電率が、インダクタ構造のQおよびインダクタンスの増加に対応することを示している。Qプロット810によって表わされるQの増加、およびウインドウ820内で起こる、インダクタンスプロット805によって表わされる、インダクタンスにおける増加は、PGS構造のフィンガを接続するために用いられる材料のコンダクタンスの低下をもたらし、電流がフィンガの間を流れることを防ぐ。PGS構造のフィンガの間を流れることが禁止される、あるいは妨げられる電流は、インダクタ構造内のAC電流によって発生する電界によって誘起される。フィンガ間の電流を阻止することは、インダクタ構造のQを増加させる傾向にあるPGS構造内の抵抗性損失を減少させることができる。
ウインドウ825は、PGS構造のフィンガを接続するために用いられる材料のコンダクタンスの増加が、Qにおける増加および、インダクタ構造のインダクタンスにおける減少に対応することを示す。Qプロット810によって表わされるQの増加、および、ウインドウ825内で起こるインダクタンスプロット805によって表わされるインダクタンスの減少は、フィンガの間の抵抗を大幅に減少させる、PGS構造のフィンガを接続するために用いられる材料の高い導電率により生じる。フィンガ間抵抗、たとえばフィンガの間の抵抗を減少させることによって、インダクタ構造のQを増加させる傾向にある、PGS構造内で起こる抵抗性損失を減少させることができる。
図9は、インダクタ構造900のトポグラフィ図を示す第8のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図9は、IC内のインダクタ構造900の物理的レイアウトを示す。示されるように、インダクタ構造900は、2回巻きの中央タップインダクタ構造として示される。インダクタ構造900は、図8のウインドウ820に示される特性、たとえば、PGS構造のフィンガを接続するために用いられる材料における低い導電率を利用して実現可能である。
インダクタ構造900は、コイル905と、中央端子910と、差動端子(端子)915および920と、回路ブロック925と、分離リング945とを含むことができる。示されるように、回路ブロック925は、分離リング945を過ぎて外側に延在する、コイル905の直線部分、たとえば「レッグ」に結合可能である。回路ブロック925は、コイルのレッグ、たとえば端子915および920に、1以上の接続または端子を介して、示されるように結合可能である。ある実施の形態において、グラウンド金属が、回路ブロック925の下に配置可能であるとともに実現可能であり、低い損失の材料で形成可能である。導電性材料のリターン線960が、図5に示されたとの同様の方式でコイル905に結合可能である。リターン線は、中心線935上に配置可能である。
この明細書内では、図示の目的のために、4つの別々の対象物として示されているが、コイル905と、中央端子910と、端子915および920とは、ともに結合可能であり、導電性材料の1つの連続的領域を表わすことができる。さらに、導電性材料の1つの連続的な領域または部分として実現可能であるが、コイル905と、中央端子910と、端子915および920とは、1以上の異なる導電性、たとえば金属のICプロセス層内で実現可能である。導電層は、1以上のビアを用いてともに結合されて、1つの連続的な導電経路を形成可能である。
コイル905は、インダクタ構造900の対称的な2回巻きのコイルとして実現可能である。中心線935は、コイル905を対称的に二分、または実質的に対称的に二分するように決定可能である。図9内において八角形のコイルとして実現されているが、コイル905は、中心線935についてのコイル905の対称性が維持される限りにおいて、利用可能なIC製造プロセスを用いて実現可能な任意のさまざまな形態または形状で実現可能である。したがって、インダクタ構造900内で八角形コイルとしてコイル905を実現することは、図示の目的で与えられるものであり、この明細書で開示される1以上の実施の形態を限定することを意図するものではない。
PGS構造は、コイル905を実現するために用いられる導電プロセス層と、基板955との間に実現可能である。PGS構造は、コイル905の外側の端部によって定義される外周の直下に、およびその外周を越えて配置可能である。PGS構造は、複数のフィンガ935と分離リング945とを含み、したがって、それにより特徴付けることができる。フィンガ935の各々は、フィンガ935が延在する直下の、コイル905の部分に実質的に垂直に配置することができる。したがって、各々のフィンガ935は、コイル905の部分を通る電流の流れに実質的に垂直である。図9において示されるように、PGS構造の各々のフィンガ935は、分離リング945に、一方端において結合される。コイル905は、分離リング945と同心であり得て、コイル905の外側の端部から一定の距離だけ実質的に離れることによってコイル905を包囲するように配置される。
分離リング945は、コイル905の外側の周囲を越えて外側に延在する、インダクタ構造900のPGS構造内の各々のフィンガ935の遠位端に沿って配置可能である。各々のフィンガ935は、一方端、たとえば「遠位」端で、1以上のコンタクタ(図示せず)で分離リング945に結合可能である。分離リング945は、図8のウインドウ820によって定義される範囲内の導電率を有する低い導電性材料によって形成可能である。ある実施の形態において、分離リング945を実現するために用いられる材料は、低い導電率の、基板955に注入されるP型拡散領域である。インダクタ構造900のフィンガ935をP型拡散領域の高い抵抗性材料で結合することで、フィンガ935の間の電流を減少させることができる。フィンガ935の間の電流を減少させることは、インダクタ構造900内の損失をもたらし得る。このような抵抗性損失を減少させることは、インダクタ構造900のQを改善し得る。
図10は、図9のインダクタ構造900のトポグラフィ図を示す第9のブロック図であり、例示の目的で与えられる。より特定的には、図10は、インダクタ構造900のQを改善可能な、物理的改善を有するインダクタ構造を示す。
図10を参照して、平行フィンガ1035が、コイル905の部分の直下に配置され、そのコイル905の部分は、インダクタ構造900のコイルの巻線およびPGS構造の分離リング945を越えて延在して差動端子915および920を形成する。フィンガ1035は、フィンガ935と実質的に同様の金属ストリップによって実現可能であるが、直線部分1045に結合可能である。ある実施の形態において、直線部分1045は、分離リング945に結合可能である。直線部分1045は、分離リング945を形成するために用いられる、同様の低い導電性材料から形成可能である。フィンガ1035の各々は、1以上のコンタクト(図示せず)を介して直線部分1045に結合可能である。図10に示される例において、フィンガ1035は、2列に配置され、各々の列は、コイル905の1つのレッグの直下に配置される。フィンガ1035の各々は、コイル905のレッグに実質的に垂直である。
コイル905のレッグの直下にフィンガ1035および線形部分1045を追加することによって、インダクタ構造900を通って流れる電流に関連付けられる電磁場から、基板955内の渦電流の発生が防がれる。直線部分1045を用いてコイル905のレッグの直下でフィンガ1035をともに結合することにより、電流がフィンガ1035の間で流れることを防ぐ。基板955内で渦電流の発生が可能なこと、およびコイル105のレッグの直下でフィンガ1035内の抵抗性損失を防ぐことは、さらに、インダクタ構造900内で被る可能性がある損失を減少させることができる。この損失の減少は、さらにインダクタ構造900のQを改善可能である。
図11は、図9のインダクタ構造900のトポグラフィ図を示す第10のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図11は、インダクタ構造900にさらなるQの改善を与えることが可能な、インダクタ構造900の物理的改善を示す。図11は、高い導電性材料を使用するインダクタ構造を示す。図11で用いられる導電性材料は、たとえば、図8のウインドウ825によって定義される範囲内の導電率を有することができる。導電性材料は、インダクタ構造900のPGS構造内でフィンガ935および1035を結合するために用いられることができる。インダクタ構造900は、さらに分離壁1150を含むことができる。
図11を参照して、インダクタ構造900のPGS構造の外周は、分離壁1150によって囲まれる。これまでに説明したように、分離壁1150のような分離壁が、垂直方向に積層された2以上の金属層を含むことができる。垂直方向に隣接する金属層の各々の対は、1以上のビアを用いてともに結合可能である。複数の金属層内の結合は、PGS構造のフィンガ935とフィンガ1035とを結合するために用いられることができる。この方式において、隣接しているフィンガの各々の対は、高い導電率の材料で結合可能である。
ある実施の形態において、分離壁1150を実現するために用いられる金属層は、インダクタ構造900が実現されるIC製造プロセスの1以上またはすべての金属層を含むことができる。別の実施の形態において、分離壁1150は、少なくとも、コイル905を実現するために用いられる金属層と、インダクタ構造900のPGS構造を実現するために用いられる金属層、たとえば、フィンガ935および/または1035を実現するために用いられる金属層を含むことができる。いずれかの場合において、垂直方向に隣接する金属層の各々の対は、1以上のビアまたはビアの積層体によって結合可能である。
説明されるように、図8のウインドウ825内の導電率を有する材料を用いてPGS構造のフィンガ935および1035を結合することは、PGS構造の金属ストリップを接続する材料の抵抗を減少させる。この抵抗の減少は、インダクタ構造900のPGS構造における抵抗性損失を減少させ、したがって、インダクタ構造900のQを増大させる。ウインドウ825と関連する、Qの増大は、PGS構造のフィンガ935および1035を接続する材料の高い導電率から起こり、それは、PGS構造内でフィンガ935と1035との間の抵抗を大きく減少させる。
ある実施の形態において、コイル905の各々のレッグが交差する、分離壁1150の部分は、少なくとも部分的に不連続であり得る。より特定的には、分離壁1150を形成するために用いられる1以上の導電層は、コイル905の各々のレッグが分離壁1150と交差することを可能にするために、不連続あるいは中断され得る。分離壁1150を形成する1以上の導電層は、それぞれのレッグを通すために不連続であり得るが、分離壁1150のすべての層が不連続またはギャップを有する必要がないということが理解されるべきである。
分離リング945は、分離壁1150の直下に配置可能である。分離リング945は、1以上のコンタクタを用いて、分離壁1150を形成するために用いられる最も低い金属層に結合可能である。示されるように、分離リング945は、図示されるように寸法可能であり、分離壁1150の直下に延在可能であり、または示される例において見ることができないように、分離壁1150の完全な直下に配置可能である。
ある実施の形態において、フィンガ935および1035は、分離壁1150を形成するために用いられる最も低い金属層を用いて形成可能である。この点において、フィンガ935および1035は、分離壁の一部分として形成可能である。
図12は、図9のインダクタ構造900のトポグラフィ図を示す第11のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図12は、インダクタ構造900のQを増大可能な、インダクタ構造900のさらなる物理的改善が示されるインダクタ構造を示す。
典型的には、インダクタ構造は、IC内のRF回路部品として用いられる。たとえば、インダクタ構造900のような中央タップインダクタは、しばしば、差動RF電圧制御発振器(VCO)を実現する場合に用いられる。その場合、回路ブロック925は、RF VCOのコアを形成するクロス結合gmセルであり得る。gmセルのソース接続の物理的配置は、また、電気的ノードを表わしているが、コイル905内に流れる差動電流のためのRF VCO回路の仮想AC接地に対応し得る。
この明細書内で用いられるように、「仮想AC接地」との用語は、基準電位に直接的に物理的に結合されることなくAC電流を入出力するときに定常電位に維持される回路のノードを示す。ある実施の形態において、回路ブロック925は、コイル905の線形部分に沿って再配置することができる。仮想AC接地は、回路ブロック925内で、たとえば、gmセルの差動トランジスタ対の2つのソースが結合されるノードにおいて配置可能である。回路ブロック925内の仮想AC接地は、分離壁1150と同じまたは同様の方式で実際のICの接地に結合であり、たとえば、複数の導電層がビアを通じて垂直に結合されて低い損失の経路を形成し、それによってインダクタ構造900のQのさらなる改善をもたらす。
さらに、回路ブロック925の位置を、コイル905のレッグが延在する、分離壁1150の部分に実質的に隣接する位置へと移動させることによって、インダクタ構造900においてさらなるQの改善をもたらし得る。図12を参照して、回路ブロック925と端子915および920との位置は、コイル905のレッグの終端あるいはその周囲から変更される。たとえば、図1に示されるようにコイル905から遠く離れて、図2に示されるような位置に変更される。
図13は、図9のインダクタ構造のトポグラフィ図を示す第12のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図13は、分離壁1150が、インダクタ構造900のコイル905のみを囲むインダクタ構造を示す。したがって、フィンガ935は、図11および図12を参照して説明されるように、分離壁1150と結合可能であるが、フィンガ1035は、複数のコンタクタを介して線形部分1045に結合可能である。直線部分1045は、分離壁1150の直下に配置される分離リング945と結合可能である。図13に示された例において、回路925は、コイル905のレッグの端部近くに配置される。この点において、コンタクタ915および920は、また、レッグの端部近く、たとえばコイル905から離れたレッグにおける最も遠い位置にほぼ配置される。
図14は、図9のインダクタ構造のトポグラフィ図の第13のブロック図であり、例示の目的で与えられる。図13と同様に、図14は、分離壁1150がインダクタ構造900のコイル905のみを囲むインダクタ構造を示す。フィンガ935は、図11および図12を参照して説明されるように、分離壁1150に結合可能である。フィンガ1035は、複数のコンタクタを介して直線部分1045に結合可能である。図14に示された例において、回路925は、コイル905に最も近いコイル905のレッグの端部近くに配置される。この点において、コンタクタ915および920は、また、レッグの端部あるいはその周囲、たとえばコイル905のレッグにおけるほぼ最も近い位置に配置される。
この明細書で開示される1以上の実施形態は、従来のインダクタ構造よりも改善された整合特性および改善された結合効果への耐性を実現する中央タップICインダクタ構造を与える。ICインダクタ構造は、ICインダクタ構造の中央タップを二分する中心線に関して対称的に構築可能である。
いくつかの実施形態において、分離リングは、中央タップICインダクタ構造のコイルの外周を囲むように構築可能である。分離リングは、中心線で中心に配置された開口を含む分離リングにおいて不連続とすることができる。分離リングにおける不連続性は、分離リング内に流れる誘起電流を妨げる。1回巻の中央タップインダクタ構造の場合、コイルとは異なる導電層内のリターン線を、インダクタ構造に追加することができる。複数巻きの中央タップインダクタ構造の場合、リターン線は、コイルと同じ導電層内にあり得る。リターン線は、中心線について対称的に中央に配置されるとともに、リターン電流は、ICインダクタ構造の1回巻コイルを対称に二分する経路においてICインダクタ構造から生じ得る。
いくつかの実施形態において、中央タップインダクタ構造は、中央タップICインダクタ構造のコイルとICの基板との間に位置するICプロセス層内で実現される複数のフィンガを含むパターニングされた接地シールドを含むことができる。分離リングは、各々のフィンガの一方端に結合可能である。
いくつかの実施の形態において、高い導電性材料を有する分離壁が、コイルおよびパターニングされた接地シールドを囲むために形成可能である。分離壁は、各々のフィンガの一方端、および/またはICの基板に結合可能である。分離壁は、垂直方向に積層された複数の導電層を含むことができ、隣接し垂直方向に積層された導電層の各々の対は、ビアによって結合される。分離壁を形成するために用いられる最も高い導電層は、コイルを形成するために用いられるプロセス層と少なくとも同じくICの基板から遠くにあるプロセス層を用いて実現可能である。分離壁を形成するために用いられる最も低い導電層は、複数のフィンガを形成するために用いられるプロセス層と、ICの基板に少なくとも同じように近いプロセス層とを用いて実現可能である。
本明細書で用いられる「1つの」(“a”および“an”)は、1以上と定義される。本明細書で用いられるように「複数」との用語は、2以上と定義される。本明細書で用いられるように、「別の」との用語は、少なくとも2番目あるいはそれより大きいものとして定義される。本明細書で用いられるように、「含む」および/または「有する」との用語は、備える、すなわち開放的表現として定義される。本明細書で用いられるように「結合される」との用語は、介在する要素なく直接的に接続される、あるいは1以上の能動素子および/または受動素子のような回路部品といった、1以上の介在する素子で間接的に接続されるように定義される。2つの素子は、また、機械的、電気的または通信チャネル、経路、ネットワークまたはシステムを通じて通信可能に結合可能である。
この明細書で開示される1以上の実施の形態は、その精神および本質的な属性から逸脱することなく他の形態で実現可能である。したがって、1以上の実施形態の範囲を示すために、以上の明細書よりもむしろ続く請求項を参照すべきである。