JP5858270B2 - フタロシアニンナノワイヤーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フタロシアニンナノワイヤーの製造方法に関する。
近年、誰もが如何なる場所においても使用できる「壊れにくく軽量で安価な情報端末」が求められている。この実現には、情報端末のキーデバイスたるトランジスタにおいて、コストメリットのあるソフトな材料の使用が望まれる。しかしながら、従来使用されているシリコン等の無機材料は、こういった要望に十分に応えることが出来ない。
このような状況により、トランジスタの半導体部に有機物を使った「有機トランジスタ(OFET)」が注目を集めている(非特許文献1参照)。このような有機物よりなる半導体(有機半導体)は、柔らかく低温処理が可能であり、また、一般的に溶媒との親和性が高い。このため、フレキシブルなプラスチック基板上に、塗布や印刷等のウェットプロセスを用いて低価格で生産できるというメリットがあり、「壊れにくく軽量で安価な情報端末」の実現には欠かせない電子素子用材料として期待されている。
無置換フタロシアニンあるいは置換基を有するフタロシアニンなどのフタロシアニン類は代表的な有機半導体の一つであり、高次構造、すなわち、分子の配列や集合状態を制御することで良好なトランジスタ特性を示すことが知られている(非特許文献2参照)。しかしながら、フタロシアニン類は、溶剤溶解性が低いため、ウェットプロセスによる素子作製が困難で、電子素子に供する際には、一般的に、真空蒸着やスパッタリングなどのドライプロセスが用いられている。このようなドライプロセスは煩雑であることから、有機半導体の特徴の一つである低価格電子素子の提供が困難となる。
この問題を解決するために、フタロシアニン類に可溶性置換基を導入し、溶剤溶解性を高めることで、ウェットプロセスによるトランジスタ作製を行う技術も開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、フタロシアニン類分子は充分配列せず、高次構造が制御できないため、ドライプロセスによるものと比較するとトランジスタ特性が劣る。良好な半導体特性を示すためには、フタロシアニン類分子が、一定の方向に配列した次元性のある構造、結晶構造を有することが重要であり、その中でも特に、一次元のワイヤー状結晶が有用である。また、電子素子への応用に供するためには、該ワイヤー状結晶は、ワイヤー径がμm以下、好ましくは100nm以下のナノワイヤーであることが好ましい。
フタロシアニン類の結晶は、印刷インキの塗料用着色剤として広く使用されており、その結晶サイズや形状を制御する技術も多く知られている。例えば、金属フタロシアニンに無機塩と有機溶剤を混ぜて磨砕装置により顔料を細かく砕いて微粒子化するソルベントソルトミリング法(例えば、特許文献2)や、該金属フタロシアニンを硫酸に溶解させた後に大量の水中に沈殿させる晶析(例えば、特許文献3)などの方法により、微細粒子化が行われているが、これらの方法を用いてフタロシアニン類のナノワイヤー状結晶を得ることはできなかった。
フタロシアニン類の高次構造の制御法として、既に本発明者らは、無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンからなり、短径が100nm以下、その短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるワイヤー状結晶の製造法を開示しているが、該製造法は、無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンの複合体を形成する工程、該複合体を微粒子化する工程、微粒子化複合体を溶媒分散する工程を経てナノワイヤー化させるという、4つの工程を有するものであり、工程が多く、操作が複雑で、ナノワイヤー製造に時間を有するという課題が残されていた(特許文献4)。
アドバンスドマテリアルズ(Advanced Materials)2002年、第14号、 P.99 アプライドフィジクスレター(Applied Physics Letters) 2005年、第86号、P.22103 特開2008−303383号広報 特開2002−121420号広報 特開2004−091560号公報 WO2010/122921号公報
本発明は上記に鑑み、工程数を減らし、より効率的に、代表的な有機半導体たる無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンからなるワイヤー状結晶、特にワイヤーの幅(短径)が100nm以下のナノサイズの細線状の構造を有し、そのワイヤーの短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーの製造法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを酸に溶解させた後に、貧溶媒に析出させて得られた複合体を、溶媒中、もしくは溶媒蒸気雰囲気下に置くことで、複合体の微粒子化工程、および分散工程を経ずに、ワイヤーの幅(短径)が100nm以下のナノサイズの細線状の構造を有し、そのワイヤーの短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーを得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンからなる半導体特性に優れる、ナノサイズのワイヤー状結晶であって、特にワイヤーの幅(短径)が100nm以下のナノサイズの細線状の構造を有し、そのワイヤーの短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーの、工程数を減らした、より効率的な製造法を提供するものである。
実施例1におけるフタロシアニンナノワイヤーの走査電子顕微鏡写真である。 実施例2におけるフタロシアニンナノワイヤーの走査電子顕微鏡写真である。
本発明は、無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンを含有し、短径が100nm以下でありその短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーの製造方法において、
(1)無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを酸に溶解させた後に、貧溶媒に析出させて複合体を得る工程(a)、
(2)前記複合体を、溶媒中、もしくは溶媒蒸気雰囲気下でナノワイヤー化する工程(b)、
からなることを特徴とするフタロシアニンナノワイヤーの製造方法を提供するものである。
以下に本発明の詳細について説明する。
(フタロシアニンナノワイヤーに含有される無置換フタロシアニン)
本発明の無置換フタロシアニンには、一般式(1)で表されるフタロシアニン、又は一般式(2)で表される無金属フタロシアニンを用いることができる。
Figure 0005858270
一般式(1)において、Xとしては、後述のナノワイヤー製造法によってフタロシアニンナノワイヤーを構成するものであれば制限はないが、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子等の金属原子、又は、チタニル(TiO)、バナジル(VO)、塩化アルミニウム(AlCl)等の金属酸化物や金属ハロゲン化物を挙げることができ、中でも銅原子、亜鉛原子、鉄原子が特に好ましい。
(フタロシアニンナノワイヤーに含有される置換基を有するフタロシアニン)
本発明のフタロシアニンナノワイヤーは、前記無置換フタロシアニンと、下記一般式(3)又は(4)で表される置換基を有するフタロシアニンを含有するフタロシアニンナノワイヤーである。
Figure 0005858270
(但し、式中、Xは、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、スズ原子、鉛原子、マグネシウム原子、ケイ素原子、鉄原子からなる群から選ばれる何れかであり、YからYは、フタロシアニン骨格とR〜Rを結合させる結合基を表し、
からYが結合基として存在しない場合には、R〜Rは、SOH、COH、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基、置換基を有してもよいフタルイミド基又は置換基を有してもよいフラーレン類であり、
からYが、−(CH−(nは1〜10の整数を表す)、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−で表される結合基である場合には、R〜Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基、置換基を有してもよいフタルイミド基又は置換基を有してもよいフラーレン類であり、a、b、c及びdは各々独立に0〜4の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは0ではない。)
本発明の置換基を有するフタロシアニンと錯体を形成する金属原子Xとしては、金属フタロシアニンの中心金属として公知慣用であれば特に限定はないが、好ましい金属原子として、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、マグネシウム、ケイ素、及び鉄から選ばれるいずれか一種の金属原子を挙げることができる。また、Xとして、チタニル(TiO)、バナジル(VO)、塩化アルミニウム(AlCl)が配位した金属フタロシアニンも用いることができる。ここで、一般式(4)で表される置換基を有するフタロシアニンのように、中心金属Xを含まない化合物も本発明の置換基を有するフタロシアニンとして用いることができる。
一般式(3)又は(4)において、YからYは、フタロシアニン環とR〜Rを結合させる結合基であれば、特に制限なく使用することが可能である。このような結合基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン結合、エチニレン、スルフィド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、ウレア基、ウレタン基、アミド基、アミノ基、イミノ基、ケトン基、エステル基等を挙げることができ、より具体的には、−(CH−(nは1〜10の整数を表す)、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−又は−S(O)−等である。また、フラーレン類も本発明の結合基として用いることができる。
〜Rは、上記結合基YからYを介してフタロシアニン環と結合しえる官能基である。このような官能基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、シリル基、シラノール基、ボロン酸基、ニトロ基、リン酸基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ニトリル基、イソニトリル基、アンモニウム塩またはフラーレン類、フタルイミド基等を挙げることができ、より具体的には、フェニル基やナフチル基などのアリール基や、インドイル基、ピリジニル基などのヘテロアリール基やメチル基などを挙げることができる。この中でも具体的に好ましい基としては、SOH、COH、アルキル基、エーテル基若しくはアミノ基を有するアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいフタルイミド基又は置換基を有してもよいフラーレン類等を挙げることができる。
上記置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基を挙げることができるが、特にメチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基が好ましい。また、エーテル基若しくはアミノ基を有するアルキル基も好ましく、例えば、下記式
Figure 0005858270
(mは1〜20の整数であり、R及びR’は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、又はアリール基である。)
で表される基も用いることができる。
上記置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基としては、好ましくは、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいオリゴフェニレン基、又は置換基を有してもよいオリゴナフチル基等を挙げることができる。置換基としては、アリール基に置換が可能な通常公知の置換基を挙げることができる。
上記置換基を有してもよい(オリゴ)ヘテロアリール基としては、好ましくは、置換基を有してもよいピロール基、置換基を有してもよいチオフェン基、置換基を有してもよいオリゴピロール基、置換基を有してもよいオリゴチオフェン基を挙げることができる。置換基としては、ヘテロアリール基に置換が可能な通常公知の置換基を挙げることができる。
また、置換基を有してもよいフラーレン類としては、フラーレン類に通常公知の置換基を有するフラーレン類を挙げることができ、例えば、C60フラーレン、C70フラーレンやフェニルC61−駱酸メチル[60]フラーレン(PCBM)等を挙げることできる。
上記置換基を有してもよいフタルイミド基としては、例えば、
Figure 0005858270
(ここで、qは1〜20の整数である。)
で表される基を挙げることができる。置換基としては、フタルイミド基に置換が可能な通常公知の置換基を挙げることができる。
また、a、b、c及びdは各々独立に0〜4の整数を表わし、フタロシアニン環に置換するY〜Yの置換基数を示す。なお、フタロシアニン環に置換する置換基の数aからdのうち、少なくとも一つは0ではない。
本発明の一般式(3)で表される置換基を有するフタロシアニンの具体例としては以下が挙げられるが、これらに限らない。なお、ここで、置換基を有するフタロシアニンの式の括弧の横の数字はフタロシアニン分子に対する官能基の平均導入数を表している。この数が小数である理由は、個々の分子についての置換基導入数は整数であるが、実際の使用に当たっては、置換基導入数の異なるものが混在しており、それらの平均値を表したものであるためである。
Figure 0005858270
Figure 0005858270
Figure 0005858270
Figure 0005858270
Figure 0005858270
Figure 0005858270
Figure 0005858270
(ここで、Xは、銅原子又は亜鉛原子、nは1〜20の整数、mは平均的な官能基の導入数を表わす1〜4の数値である。)
Figure 0005858270
(ここで、Xは銅原子又は亜鉛原子、nは1〜20の整数、mは平均的な官能基の導入数を表わす1〜4の数値であり、RからRは、各々独立に水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アルキルオキシ基又はアルキルチオ基を表す。)
Figure 0005858270
(ここで、Xは銅原子又は亜鉛原子、nは1〜20の整数、mは平均的な官能基の導入数を表わす1〜4の数値であり、RからRは、各々独立に水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アルキルオキシ基又はアルキルチオ基を表す。)
また、一般式(4)で表される具体的化合物としては、上記式(化5)〜(化13)において中心金属が存在しない置換基を有するフタロシアニンも用いることができる。
本発明の一般式(5)
Figure 0005858270
(但し、式中、Xは銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、スズ原子、鉛原子、マグネシウム原子、ケイ素原子、鉄原子からなる群から選ばれる何れかであり、Zは下記式(a)又は(b)で表される基であり、a、b、c及びdは各々独立に0〜4の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは0ではない。)
Figure 0005858270
(ここで、nは4〜100の整数であり、Qは各々独立に水素原子又はメチル基であり、Q’は炭素数1〜30の非環状炭化水素基である。)
Figure 0005858270
(ここで、mは1〜20の整数であり、R及びR’は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である。)
で表される置換基を有するフタロシアニンでは、フタロシアニン環が少なくとも1個以上のスルファモイル基で置換された化合物を挙げることができる。導入されるスルファモイル基は、フタロシアニン環1個あたり少なくとも1個であれば特に限定なく用いることができるが、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個である。置換される位置は、特に限定はない。
一般式(a)の分子量には特に制限は無く、アルキル基やエーテル基などの各種官能基でも、これらの官能基が数個の繰り返し単位を持つオリゴマーでも、さらに繰り返し単位の多いポリマーでもよい。ポリマーの場合は数平均分子量が10000以下であることが、ナノワイヤー化において、立体障害によるフタロシアニンの結晶成長が阻害されず、十分に長いナノワイヤーが得られるために好ましい。該ポリマーとしてアルキル基やビニル化合物の重合体からなるポリマーやウレタン結合やエステル結合、エーテル結合を有するポリマーなどを挙げることができる。
最も好ましい本発明の鎖状化合物Zとして、一般式(a)で表されるポリアルキレンオキシドコポリマーを挙げることができ、エチレンオキシドポリマー及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーなどのあらゆるポリアルキレンオキシドであり、ブロック重合したものでも、ランダム重合したものでも用いることができる。
ここで、Q’は、炭素数1〜30に非環状炭化水素基として、直鎖状炭化水素基でも分岐状炭化水素基でもどちらでもよく、炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基のどちらでもよい。このような非環状炭化水素基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基、n−ドデシル基、ステアリル基、n−テトラコシル基、n−トリアコンチル基等の直鎖状或いは分岐状飽和炭化水素基を挙げることができる。
また、直鎖状或いは分岐状不飽和炭化水素基としては、炭化水素基が二重結合又は三重結合を有してもよく、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、イソプレン基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ゲラニル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ペンテン−4−イニル基等の直鎖状或いは分岐状不飽和炭化水素基を挙げることができる。
ポリアルキレンオキシド部分の繰り返し数nには特に制限はないが、分散溶媒との親和性即ち、得られるナノワイヤーの分散安定性の観点からは、4以上100以下であることが好ましく、より好ましくは5以上80以下、更により好ましくは10以上50以下である。
本発明で用いる一般式(1)で表される置換基を有するフタロシアニンは、公知慣用の方法を組み合わせることにより、例えば、銅フタロシアニンスルホニルクロライドとポリエーテル主鎖の末端にアミンを持つポリエーテルアミン(以下、「ポリエーテルモノアミン」と略記)とを反応させて製造できる。
原料となる銅フタロシアニンスルホニルクロライドは、銅フタロシアニンとクロロスルホン酸又は塩化チオニルとの反応により得ることができる。他方の原料であるポリエーテルモノアミンは、公知慣用の方法で得ることができる。例えば、ポリエーテル骨格の末端にある水酸基をニッケル/銅/クロム触媒を用いて還元的にアミノ化することにより得ることができるし、ポリエーテル骨格の末端にある水酸基を光延反応(参考文献:Synthesis,1−28(1981))によりイミド化したのち、ヒドラジン還元によりアミノ化(参考文献:Chem.Commun.,2062−2063(2003))することにより得ることができる。
ポリエーテルモノアミンは市販品としても提供されており、例えばアメリカHuntsman Corporationから「JEFFAMINE(商品名)Mシリーズ」がある。
本発明で用いられる一般式(5)で表される置換基を有するフタロシアニンとしては、例えば(化17)式の化合物が挙げられるが、これに限定されるわけではない。
Figure 0005858270
(但し、式中、Q及びRは水素原子又はメチル基を表す。nは4〜100の整数である。またスルファモイル結合を介してフタロシアニンに結合するポリアルキレンオキシド鎖の導入数はフタロシアニンが有する4つのベンゼン環に対して、0.2から3.0である。)
本発明で用いることができる置換基を有するフタロシアニンには前記の置換基を有するフタロシアニンのほか、一般式(b)で表される基を有していてもよい。
本誘導体は、上記の一般式(a)で表される基の導入に用いたポリエーテルアミンの替わりに
下記式で表されるアミンと反応させればよい。
Figure 0005858270
(ここで、mは1〜20の整数であり、R及びR’は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である。)
好ましいR及びR’として、低級アルキル基、特にメチル基を挙げることができ、mとしては、1〜6の整数であるものが好ましい。具体的に好ましい置換基を有するフタロシアニンとして以下が挙げられる。
Figure 0005858270
また、一般式(3)で表される置換基を有するフタロシアニンのうち、R〜Rで表される基がSOH又はCOHである基を有するものであってもよく、SOH又はCOHである基の個数に制限はないが、1〜4個、より好ましくは1〜2個を挙げることができる。これらの基は、一種類の基を有していても2種類の基を有していてもどちらでもよい。SOH又はCOHの導入は公知慣用の方法で行うことができる。
一般式(5)で表される置換基を有するフタロシアニンのスルファモイル基の個数に制限はないが、1〜4個、より好ましくは1〜2個を挙げることができる。これらの基は、一種類の基を有していても2種類の基を有していてもどちらでもよい。これらの置換基を有するフタロシアニンは、公知慣用の方法で合成することができる。
上記の置換基を有するフタロシアニンの式の括弧の横の数字はフタロシアニン分子に対する平均的な官能基の導入数を表し、好ましい官能基の導入数は後述するナノワイヤー化機構の観点から、0.2から3.0、さらに好ましくは0.5から2.0の範囲にある。
前記の各種置換基を有するフタロシアニンは、フタロシアニン環に側鎖もしくは官能基を導入することにより、合成することができる。例えば(化17)記載の銅フタロシアニンスルファモイル化合物は前記の方法で合成することができ、(化5)、(化6)、(化7)記載のスルホン酸化銅フタロシアニンは銅フタロシアニンを発煙硫酸(三酸化硫黄濃度:20%)中で加熱することにより得ることができ、(化10)の化合物の合成は、例えば特許文献(米国特許2761868号)に開示の方法で合成することができる。
該置換基を有するフタロシアニンは、例えば、特開2005−145896号広報、特開2007−39561号公報に記載のある公知公用のフタロシアニン類合成方法によっても得られ、例えば4−フェノキシ−フタロニトリルや4−フェニルチオ−フタロニトリル、4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−フタロニトリルなどの各種フタロニトリル化合物を、置換基を有しないオルトフタロニトリルに対して任意の比率で混合し、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデック−7−エンなどの有機塩基存在下で硫酸銅(II)や塩化亜鉛(II)などの金属塩とともにエチレングリコール中で加熱することにより、前記の各種官能基を任意の比率で有する置換基を有するフタロシアニンを合成できる。ここで該フタロニトリル化合物を原料の一つとして合成できる置換基を有するフタロシアニン有する前記の官能基の数は、該フタロニトリル化合物とオルトフタロニトリルとの混合比を変化させることにより任意に変えることができ、例えば平均してフタロシアニン分子あたり、1つの官能基を有する置換基を有するフタロシアニンを合成したい場合は、該フタロニトリル誘導体とオルトフタロニトリルとの混合を1:3にすればよく、平均して1.5導入したい場合は3:5の比率で、特許文献に記載の方法などを用いて合成することができる。また二種類以上のフタロニトリル化合物とオルトフタロニトリルから、複数種の官能基を有する置換基を有するフタロシアニンを合成することもできる。
さらに置換基を有するフタロニトリル誘導体には前記以外に公知慣用の各種フタロニトリル誘導体が含まれるが、一例として、特開2007−519636号公報の0001段落の化2、特開2007−526881号公報の0006段落記載の化2を挙げることができ、さらには特開2006−143680号公報の0014段落の化2で記載されるオリゴチオフェン類が連結したフタロニトリル誘導体、特開2009−135237号公報の0021段落の化9記載のフラーレン類を連結したフタロニトリル誘導体なども、本発明で用いることができる置換基を有するフタロシアニンを合成するための原料に含まれる。
本発明のナノワイヤーは、上記無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンを適宜配合量で配合することにより、長さと短径が異なる種々のフタロシアニンナノワイヤーを得ることができる特徴を有する。
(フタロシアニンナノワイヤーの製造方法)
次に、本発明のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法について説明する。
<製造方法>
本製造方法は、
(1)無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを酸に溶解させた後に、貧溶媒に析出させて複合体を得る工程(a)と、
(2)前記複合体を溶媒中、もしくは溶媒蒸気雰囲気下、ナノワイヤー化する工程(b)とからなるものである。
・工程(a)
一般にフタロシアニン類は硫酸などの酸溶媒に可溶であることが知られており、本発明のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法においても、まず前記無置換フタロシアニンと前記置換基を有するフタロシアニンとを硫酸、クロロ硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の酸溶媒に溶解させる。その後に水などの貧溶媒に投入して該無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンの複合体を析出させる。
ここで、該置換基を有するフタロシアニンの該無置換フタロシアニンに対する混合比は5質量%から200質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは30質量%から120質量%である。混合比が5質量%以上の場合は、該置換基を有するフタロシアニンが有する官能基あるいはポリマー側鎖の作用により、後述する工程を経て一方向に結晶成長して良好にナノワイヤー化する傾向を有しており、一方、200質量%以下の範囲にあれば該官能基やポリマー側鎖が結晶成長を阻害するほど多くないため、良好に一方向結晶成長を経てナノワイヤー化し、アモルファス状態もしくは粒子状となることはない。
該無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンの酸溶媒に対する添加量は未溶解分が無く、完全に溶解できる濃度であれば特に制限はないが、該溶液が十分な流動性を有している程度の粘性を保つ範囲として、20質量%以下が好ましい。
該無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを溶解させた溶液を水などの貧溶媒に投入して該無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンの複合体を析出させる際、該溶液は、貧溶媒に対して、0.01質量%から50質量%の範囲が好ましい。0.01質量%以上であれば、析出する該複合体の濃度も十分高いので、固形分回収が容易であり、50質量%以下であれば、すべての該無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンが析出して固体状の複合体となり、溶解成分がなく、回収が容易となる。
前記の貧溶媒に関して無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンが不溶もしくは難溶性の液体であれば特に制限はないが、析出する複合体の均質性を高く保てることができ、かつ、環境負荷の少ない水もしくは水を主成分とする水溶液を最も好ましい貧溶媒として挙げることができる。
前記工程(a)で得られた無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンの複合体は透過型電子顕微鏡による観察結果から、アモルファス状態で均一に存在することを確認した。
該複合体は濾紙及び、ブフナーロートを用いて濾過し、酸性水を除去するとともに、濾液が中性になるまで水洗して、含水した該複合体を回収することができる。
ここで、前記複合体は、脱水・乾燥して水分を除去するか、又は、含水状態のままであっても、後述する工程により、ナノワイヤー化させることができる。
・工程(b)
工程(a)で得られた複合体を、有機溶媒中(液相中)もしくは溶媒蒸気雰囲気中(気相中)で、(加熱)静置することにより、フタロシアニンのナノワイヤーが製造できる。この際、ナノワイヤー化を阻害しない程度に溶媒を攪拌するか、もしくは溶媒蒸気を循環させても良い。この中で、後述するナノワイヤーの溶媒分散化を考慮した場合、工程を簡略化することが出来ることから、液相中でナノワイヤー化する方法が好ましい。
有機溶媒中(液相中)でナノワイヤー化させる場合、予め有機溶媒を加えた容器中に、前記複合体を加えても良いし、複合体を設置した容器に、後から有機溶媒を加えても良い。また、溶媒蒸気中(気相中)でナノワイヤー化する場合、溶媒蒸気で満たした容器中に、複合体を後から加えても良いし、複合体を加えた容器中に、直接接触しない状態で、後から有機溶媒を加えて蒸気発生させても良く、複合体と有機溶媒をY字管等の、分かれた二つの先端部に別々に用意して、蒸気発生させる方法も用いることができる。
ナノワイヤー化の温度は、5℃から250℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは20℃から200℃である。温度が5℃以上であれば、十分にフタロシアニン類の結晶成長を誘発することができ、目的とする一方向結晶成長により、ナノワイヤーへ成長可能であり、また250℃以下であればナノワイヤーの凝集、融着がほとんど見られず、幅方向に結晶成長して粗大化することもない。またナノワイヤー化に要する(加熱)静置時間には特に限定は無いが、フタロシアニンナノワイヤーの長さが100nm以上に成長するまでに、少なくとも10分以上(加熱)静置することが好ましい。
前記有機溶媒に関しては、フタロシアニン類との親和性が低いものでなければ特に制限はないが、例えば、フタロシアニン類との親和性が高いアミド系溶媒及び芳香族有機溶媒が好ましく、具体的には、フタロシアニンと特に親和性が高いN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンやトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンを最も好適な有機溶媒として挙げることができる。上記アミド系有機溶媒及び芳香族有機溶媒は単独で用いることもできるが、該アミド系有機溶媒と該芳香族有機溶媒とを任意の比率で混合して使用することもでき、さらには他の有機溶媒と併用して用いることもできる。
アミド系有機溶媒及び芳香族有機溶媒と併用できる有機溶媒としては、加熱工程においてナノワイヤー化を促進させることができる点からエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類を挙げることができる。これらの有機溶媒は複合体をアミド系有機溶媒及び芳香族有機溶媒に浸漬した後に添加してもよいし、予め上記有機溶媒と混合してから複合体を投入してもよい。
溶媒中でナノワイヤー化を行う場合、上述の複合体に対する有機溶媒の添加量に関しては、適当な流動性を有し、かつ、凝集防止の観点から、該複合体の該有機溶媒に対する固形分濃度が0.1%から20%の範囲にあり、さらに好ましくは1%から10%である。
前記の工程(a)から工程(b)まで処理することにより、幅(短径)が100nm以下であり、ワイヤーの長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーを製造することができる。無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンが工程(a)の晶析で複合化され、工程(b)でナノワイヤー化する機構に関しては必ずしも明確ではないが、有機溶媒と複合体の界面よりナノワイヤー化が進行し、生成したナノワイヤーが溶媒中に移行、新たに生じた界面が生じるというサイクルにより、ナノワイヤー化が進行するものと推定できる。この際、工程(b)の有機溶媒はフタロシアニンナノワイヤーの良分散媒として機能しており、前記サイクルをより促進しているものと考えられる。
本発明の製造法で得られる前記フタロシアニンナノワイヤーは、ワイヤー化後に有機溶媒に分散させることが可能であり、該分散体は、ウエットプロセス(印刷又は塗布)に適したインキ組成物、特に光電変換素子用材料として好適に使用することができる。
該ナノワイヤーを分散させる有機溶媒の種類は、フタロシアニンナノワイヤーを安定分散させるものであれば特に限定されるものではなく、単独の有機溶媒であっても、二種以上を混合した有機溶媒を用いても良いが、フタロシアニンナノワイヤーを良好且つ安定に分散させることができる点からは、アミド系溶媒が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジエチルホルムアミド等を挙げることができ、中でもN−メチルピロリドンが特に好ましい。
又、フタロシアニンナノワイヤーに含有される置換基を有するフタロシアニンの種類によって、インキ組成物を構成する該溶媒を適宜選択することができ、例えば、(化10)の誘導体を含有するフタロシアニンナノワイヤーを良好且つ安定に分散させることができる好ましい有機溶媒として、アミド系溶媒の他に、例えば、芳香族系溶媒として、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ハロゲン化芳香族系有機溶媒として、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができる。
又、ハロゲン系有機溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の有機溶媒を挙げることができる。この中で、特に好ましいものはジクロロベンゼンである。
本発明で得られる前記フタロシアニンナノワイヤーは、前記分散用の溶媒中に、組成物中のナノワイヤーの含有率が、0.05から20質量%の割合で好適に分散させることができるが、ウエットプロセス(印刷又は塗布)適性及び造膜性(印刷又は塗布後の膜質性)付与のためには、0.1から10質量%の割合で分散させることが好ましい。
前記フタロシアニンナノワイヤーの分散方法としては特に限定されるものではないが、所望の比率でナノワイヤーを溶媒に添加した後、攪拌処理など公知慣用の方法の方法を用いて溶媒中に分散させることができる。
本発明で得られるフタロシアニンナノワイヤーを前記溶媒中に分散させたインキ組成物は、フタロシアニンナノワイヤー以外に、例えば、π共役系ポリマー、半導体的性質を示す非π共役系ポリマー、低分子系有機半導体化合物等を含有していても良い。ここで、π共役系ポリマーとしては、ポリチオフェン類、ポリ−p−フェニレンビニレン類、ポリ−p−フェニレン類、ポリフルオレン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリチエニレンビニレン類等が、半導体的性質を示す非π共役系ポリマーとしてはポリビニルカルバゾールが、低分子系有機半導体化合物としては、可溶性又は溶媒分散性の置換基を有するフタロシアニン、可溶性又は溶媒分散性のポルフィリン誘導体等が挙げられる。これらのうち、ポリマー系材料には、インキ組成物にウエットプロセス(印刷又は塗布)適性及び造膜性(印刷又は塗布後の膜質性)を付与する効果もある。
また、本発明で得られるフタロシアニンナノワイヤーを分散させたインキ組成物には、フラーレン類に代表される電子受容性材料を含んでも良い。これにより一回の製膜で光電変換層の形成が可能となる。本発明で用いることができる電子受容性材料としては、例えばナフタレン類、ペリレン類、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ(CNT)類、修飾グラフェン類、ポリ−p−フェニレンビニレンにシアノ基を導入した誘導体(CN−PPV)、Boramer(商品名、TDA Research製)、CF3基又はF基を導入した公知慣用の低分子又は高分子有機半導体材料等が挙げられる。
ここで、ナフタレン類としては、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミド(NTCDI)、N,N'−ジアルキル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミド(NTCDI−R)(Rは炭素数1から20のアルキル基)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(NTCDA)等、ペリレン類としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンズイミダゾール(PTCBI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジイミド(PTCDI)、N,N'−ジアルキル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジイミド(PTCDI−R)(Rは炭素数1から20のアルキル基)等、オキサゾール誘導体としては、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、2,5−ジ(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)等、トリアゾール誘導体としては、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)等、フェナントロリン誘導体としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bphen)等、フラーレン類としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94等の無置換のものと、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)、[5,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル([5,6]−PCBM)、[6,6]−フェニルC61酪酸ヘキシルエステル([6,6]−PCBH)、[6,6]−フェニルC61酪酸ドデシルエステル([6,6]−PCBD)、フェニルC71酪酸メチルエステル(PC70BM)、フェニルC85酪酸メチルエステル(PC84BM)等が挙げられる。
本発明で得られるフタロシアニンナノワイヤーを分散して得られるインキ組成物には、ウエットプロセス(印刷又は塗布)適性及び造膜性(印刷又は塗布後の膜質性)を付与するために、樹脂成分を、レオロジー調整やバインダー成分として添加しても良い。樹脂としては、公知慣用のものであれば特に限定されるものではなく、単独の樹脂であっても、二種以上の樹脂を併用してもかまわないが、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート等が好ましい。
本発明で得られるフタロシアニンナノワイヤーを分散させたインキ組成物には、ウエットプロセス(印刷又は塗布)適性及び造膜性(印刷又は塗布後の膜質性)の向上を主な目的として、体質成分や各種界面活性剤等を必要に応じて添加しても良い。
体質成分としては、公知慣用の、微粒子粉末単体、これら微粒子粉末単体を予め分散剤又は有機溶媒に分散させた分散液を用いることができ、これらを単独又は二種以上を併用して用いてもかまわない。具体的には、アエロジルシリーズ(商品名、エボニック製)、サイリシア、サイロホービック、サイロピュート、サイロページ、サイロピュア、サイロスフェア、サイロマスク、シルウェル、フジバルーン(商品名、富士シリシア製)、PMA−ST、IPA−ST(商品名、日産化学製)、NANOBIC3600シリーズ、NANOBIC3800シリーズ(商品名、ビックケミー製)等があるが、特に限定するものではない。又、これらは単独又は二種以上を併用しても良い。
界面活性剤としては、炭化水素系、シリコン系、フッ素系が挙げられ、これらを単独又は二種以上を混合して使用することが出来る。なかでも好ましいフッ素系界面活性剤は、直鎖状のパーフルオロアルキル基を有し、鎖長がC6以上、さらに好ましくはC8以上のノニオン系のフッ素系界面活性剤である。具体的なものとしては例えば、メガファックF−482、メガファックF−470(R−08)、メガファックF−472SF、メガファックR−30、メガファックF−484、メガファックF−486、メガファックF−172D、メガファックF178RM(以上、商品名、DIC製)等があるが、特に限定するものではない。又、これらは単独又は二種以上を併用しても良い。これら界面活性剤はインキ組成物中、有効成分で5.0質量%以下、好ましくは有効成分で1.0質量%以下含有される。
本発明で得られるフタロシアニンナノワイヤーに、前記記載の材料を混合して用いてインキ組成物を構成する場合、混合方法としては特に限定されるものではないが、所望の比率で前記記載の材料を溶媒に添加した後、公知慣用の方法で混合すれば良い。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
・工程(a)(晶析工程)
銅フタロシアニン(DIC(株)製、Fastogen Blue 5380E)1.67gと(化10)で表される銅フタロシアニン誘導体0.83gを濃硫酸(関東化学(株)製)81gに完全に溶解させ、濃硫酸溶液を調製した。続いて該濃硫酸溶液を、氷冷した蒸留水730g中に投入し、銅フタロシアニンと(化10)で表される銅フタロシアニン誘導体からなる複合体を析出させた。
得られた該複合体をろ別し、蒸留水を用いて十分に洗浄して、含水した該複合体を回収した。この含水複合体を、真空乾燥して水分を除去し、2.23gの複合体粉末を得た。
・工程(b)(ナノワイヤー化工程)
前記で得られた複合体粉末2gをオルトジクロロベンゼン98g中に浸漬し90分かけて145℃まで昇温した後、145℃で30分間保持した。
オルトジクロロベンゼン中の固体を取り出し、走査型電子顕微鏡(機種名:日立製作所(株)製、S−800)を用いて観察したところ、短径が25nm程度で長径が短径の20倍以上にまで成長したナノワイヤー形状を有することが確認された。さらに、X線回折(理学電機(株)製 RINT−ULTIMA+使用)により、得られたナノワイヤーはフタロシアニン化合物特有のピークを示し、高い結晶性を有することが確認できた。
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた、銅フタロシアニン(DIC(株)製、Fastogen Blue 5380E)と(化10)で表される銅フタロシアニン誘導体の複合体粉末2.61gを、23.49gのオルトジクロロベンゼンとともに、容量50mLのポリプロピレン製容器に投入し、次いでφ0.5mmのジルコニアビーズ60gを加えて、ペイントシェイカーを用いて2時間、微粒子化工程を行った。続いて微粒子化した複合体をジルコニアビーズから分離回収し、さらにオルトジクロロベンゼンを加えて、分散化工程を行い、固形物濃度2%の微粒子化複合体分散液を得た。さらに、該微粒子化複合体分散液を、実施例1と同様にして加熱処理することにより、4工程を経て、フタロシアニンナノワイヤーを得た。
このようにして得られた該フタロシアニンナノワイヤーを回収し、透過型電子顕微鏡による形状観察とX線回折による分析を行ったところ、2工程でナノワイヤーを製造する実施例1と同様の、フタロシアニンナノワイヤーが得られた。
(比較例2)
実施例1と同様に硫酸晶析して得た含水複合体を、ペイントシェイカーにより微細化した後、ろ過して得られた微粒子化複合体を、オルトジクロロベンゼン60gに投入し、撹拌することで分散し、さらに60gのN−メチルピロリドンを加えて、固形物濃度2%の微粒子化複合体分散液を得た。さらに、該微粒子化複合体分散液を、実施例1と同様にして加熱することで、4工程を経て、フタロシアニンナノワイヤーを得た。ここで得られたフタロシアニンナノワイヤーを回収し、透過型電子顕微鏡による形状観察とX線回折による分析を行ったところ、2工程でナノワイヤーを製造する実施例1と同様の、フタロシアニンナノワイヤーが得られた。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた複合体粉末を、ガラス板上に置き、このガラス板をジクロロベンゼン蒸気で満たされたシャーレ内に設置し、室温において、1時間暴露した。このガラス板上の粉末を走査型電子顕微鏡(機種名:キーエンス(株)製、VE−9800)を用いて観察したところ、短径が約20nm程度で長径が短径の20倍以上にまで成長したナノワイヤー形状を有することが確認された。
本発明の製造方法により、ナノサイズの細線状の結晶構造を有する分子集合体であって、短径が100nm以下であってその短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーを、より効率的に製造することができる。

Claims (9)

  1. 無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンを含有し、短径が100nm以下でありその短径に対する長さの比率(長さ/短径)が10以上であるフタロシアニンナノワイヤーの製造方法において、
    (1)無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを酸に溶解させた後に、貧溶媒に析出させて複合体を得る工程(a)、
    (2)前記複合体を、有機溶媒中、もしくは有機溶媒蒸気雰囲気下でナノワイヤー化する工程(b)、
    からなることを特徴とするフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
  2. 無置換フタロシアニンが、一般式(1)又は(2)で表される請求項1に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
    Figure 0005858270
    (但し、式中、Xは、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子、TiO、VO及びAlClからなる群から選ばれる何れかである。)
  3. 置換基を有するフタロシアニンが、一般式(3)又は(4)で表される請求項1又は2に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
    Figure 0005858270
    (但し、式中、Xは、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子、TiO、VO、及びAlClからなる群から選ばれる何れかであり、YからYは、フタロシアニン骨格とR〜Rを結合させる結合基を表し、
    からYが結合基として存在しない場合には、R〜Rは、−SOH、−COH、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基、置換基を有してもよいフタルイミド基又は置換基を有してもよいフラーレン類であり、
    からYが、−(CH−(nは1〜10の整数を表す)、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−で表される結合基である場合には、R〜Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基、置換基を有してもよいフタルイミド基又は置換基を有してもよいフラーレン類であり、a、b、c及びdは各々独立に0〜4の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは0ではない。)
  4. 置換基を有してもよいアルキル基が、メチル基、エチル基又はプロピル基であり、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基が、置換基を有してもよい(オリゴ)フェニレン基又は置換基を有してもよい(オリゴ)ナフチレン基であり、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基が、置換基を有してもよい(オリゴ)ピロール基、置換基を有してもよい(オリゴ)チオフェン基、置換基を有してもよい(オリゴ)ベンゾピロール基又は置換基を有してもよい(オリゴ)ベンゾチオフェン基である請求項3に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
  5. 置換基を有するフタロシアニンが、一般式(5)で表される請求項1に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
    Figure 0005858270
    (但し、式中、Xは銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子、TiO、VO、及びAlClからなる群から選ばれる何れかであり、Zは下記式(a)又は(b)で表される基であり、a、b、c及びdは各々独立に0〜4の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは0ではない。)
    Figure 0005858270
    (ここで、nは4〜100の整数であり、Qは各々独立に水素原子又はメチル基であり、Q’は炭素数1〜30の非環状炭化水素基である。)
    Figure 0005858270
    (ここで、mは1〜20の整数であり、R及びR’は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である。)
  6. 工程(a)における酸が、硫酸、クロロ硫酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸である請求項1に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
  7. 工程(b)における有機溶媒がアミド系有機溶媒又は芳香族系有機溶媒である請求項1に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
  8. 前記アミド系有機溶媒がN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドである請求項7に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
  9. 前記芳香族系有機溶媒が、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンである請求項7に記載のフタロシアニンナノワイヤーの製造方法。
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