以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<<第1実施形態>>
図1は本発明の第1実施形態における車輌用情報呈示装置の全体構成を示すブロック図である。
本実施形態における車輌用情報呈示装置10は、自動車1の障害物への接近を、視覚パターン20を介して運転者に伝達する装置であり、図1に示すように、左右の物体検出センサ11,12と、車速センサ13と、操舵角センサ14と、距離演算装置15と、パターン生成装置16と、表示ディスプレイ17と、効果音生成装置18と、を備えている。
第1の物体検出センサ11は、例えば、自動車1の左前端に設けられたレーザレンジファインダから構成されており、自動車1の左側方に存在する物体までの距離と方向を検出することが可能となっている。
同様に、第2の物体検出センサ12も、例えば、右前端に設けられたレーザレンジファインダから構成されており、自動車1の右側方に存在する物体までの距離と方向を検出することが可能となっている。
この第1及び第2の物体検出センサ11,12は、距離演算装置15に接続されており、検出結果を距離演算装置15にそれぞれ出力することが可能となっている。なお、第1及び第2の物体検出センサ11,12を、レーザレンジファインダに代えて、ミリ波レーダやステレオカメラ等で構成してもよい。
車速センサ13は、自動車1の速度を検出する。また、操舵角センサ14は、ステアリングホイール3の回転角度及び回転方向を示す符号付き数値である操舵角を検出する。車速センサ13及び操舵角センサ14も、距離演算装置15に接続されており、検出結果を距離演算装置15にそれぞれ出力することが可能となっている。
距離演算装置15は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、上記のセンサ11〜14による検出結果に基づいて、1秒後の自動車1と物体との距離を演算する。
具体的には、この距離演算装置15は、先ず、車速センサ13によって検出された自動車1の車速度と、操舵角センサ14によって検出された自動車1の操舵角と、から自動車1の1秒後の位置を演算する。
次いで、距離演算装置15は、この自動車1の1秒後の位置と、第1の物体検出センサ11によって検出された物体の位置及び方向とから、1秒後の自動車1とその物体との距離(以下単に、第1の距離と称する。)を演算し、その演算結果を現在の物体の位置及び方向と共にパターン生成装置16に出力する。なお、距離演算装置15が、第1の距離のみをパターン生成装置16に出力してもよい。
同様に、距離演算装置15は、自動車1の1秒後の位置と、第2の物体検出センサ12によって検出された物体の位置及び方向とから、1秒後の自動車1とその物体との距離(以下単に、第2の距離と称する。)を演算し、その演算結果を現在の物体の位置及び方向と共にパターン生成装置16に出力する。なお、距離演算装置が、第2の距離のみをパターン生成装置16に出力してもよい。
なお、距離演算装置15が演算する自動車1と物体との間の距離は、特に1秒後に限定されない。例えば、現在の距離であってもよいし、0.5秒後の距離や2秒後の距離であってもよい。
パターン生成装置16も、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、距離演算装置15によって演算された第1及び第2の距離に基づいて視覚パターン20を生成する。なお、上述の距離演算装置15とパターン生成装置16とが同一のコンピュータによって実現されてもよい。
この視覚パターン20は、第1の視覚パターン21と第2の視覚パターン22を有し、この第1の視覚パターン21と第2の視覚パターン22とは中央で相互に接続されている(後述の図3(a)〜図3(d)参照)。この視覚パターン20の中心は、常に振幅がゼロとなっており、自車輌位置に相当する。この視覚パターン20は、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されたパターンであり、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
第1の視覚パターン21は、中央に向かって振幅が徐々に小さくなるサイン波で構成されており、第1の距離に対応して、振幅、色、及び波形の進行方向が変化するようになっている。
具体的には、この第1の視覚パターン21は、第1の距離が十分に大きい状態(例えば1m以上)では振幅がほとんどゼロであるが、第1の距離が短くなるにつれて振幅が大きくなる。また、この第1の視覚パターン21は、第1の距離が十分に大きい状態では白色であるが、第1の距離が短くなるにつれて黄色や赤色へと変化する。また、この色の変化に伴って、波形の進行方向が、左端から中央に向かう方向であったのが、中央から左端に向かう方向へと逆転する。なお、いずれの変化も、輝度エッジを生じないように連続的に変化する。
同様に、第2の視覚パターン22も、中央に向かって振幅が徐々に小さくなるサイン波で構成されており、第2の距離に対応して、振幅、色、及び波形の進行方向が変化する。なお、パターン生成装置16は、第1の視覚パターン21と第2の視覚パターン22とを相互に独立して変化させる。
具体的には、この第2の視覚パターン22は、第2の距離が十分に大きい状態(例えば1m以上)では振幅がほとんどゼロであるが、第2の距離が短くなるにつれて振幅が大きくなる。また、この第2の視覚パターン22は、第2の距離が十分に大きい状態では白色であるが、第2の距離が短くなるにつれて黄色や赤色へと変化する。また、この色の変化に伴って、波形の進行方向が、右端から中央に向かう方向であったのが、中央から右端に向かう方向へと逆転する。なお、いずれの変化も、輝度エッジを生じないように連続的に変化する。
図2及び図3を参照しながら、このパターン生成装置16が生成する視覚パターン20について具体的に説明する。
図2は自動車1が幅員の広い道路41から狭隘道路42に進入した例を示す俯瞰図、図3(a)〜図3(d)は図4の各シーンにおける表示例である。
図2の(a)シーンでは、自動車1は広い道路41を走行している。この道路41上では、自動車1と道路41の左側の壁43との間には十分に広い距離dL1が存在していると共に、自動車1と道路41の右側の壁44との間にも十分に広い距離dR1が存在している。このため、パターン生成装置16は、図3(a)に示すように、第1の視覚パターン21の振幅をゼロにすると共に第2の視覚パターン22の振幅もゼロにする。このため、視覚パターン20が全体としてフラットな形状となる。
これに対し、図2の(b)シーンでは、自動車1が広い道路41から狭隘道路42に進入して、その狭隘道路42のほぼ中央を走行している。この状態では、自動車1と狭隘道路42の左側の壁45との間の距離dL2が短くなる(dL2<dL1)と共に、自動車1と狭隘道路42の右側の壁46との間の距離dR2も短くなる(dR2<dR1)。そのため、パターン生成装置16は、図3(b)に示すように、第1及び第2の視覚パターン21,22をサイン波で位置変調させることで、当該第1及び第2の視覚パターン21,22の振幅を若干増加させる。
なお、図2の(b)シーンでは、第1の距離dL2と第2の距離dR2とはほぼ同一である(dL2=dR2)ので、図3(b)に示すように、第1の視覚パターン21の最大振幅AL1と第2の視覚パターン22の最大振幅AR1とは実質的に同一となっており(AL1=AR1)、第1の視覚パターン21と第2の視覚パターン22とが左右対称の形状を有している。
さらに、図2の(c)シーンでは、狭隘道路42のカーブに伴って、自動車1が左側の壁45に接近して第1の距離dL3がさらに短くなる(dL3<dL2)。このため、パターン生成装置16は、図3(c)に示すように、第1の視覚パターン21の最大振幅AL2を大きくする(AL2>AL1)と共に、第1の視覚パターン21の色を白色から黄色に変化させる。
一方、右側の壁46からは自動車1が離れるので、第2の距離dR3が広くなる(dR3>dR2)。このため、パターン生成装置16は、図3(c)に示すように、第2の視覚パターン22の最大振幅AR2を小さくする(AR2<AR1)。
図2(d)シーンでは、狭隘道路42のカーブに伴って、自動車1が左側の壁45にさらに接近して第1の距離dL4がさらに短くなる(dL4<dL3)。このため、パターン生成装置16は、図3(d)に示すように、第1の視覚パターン21の最大振幅AL3を大きくする(AL3>AL2)と共に、第1の視覚パターン21の色を黄色から赤色に変化させる。
一方、右側の壁46からは自動車1はさらに離れるので、第2の距離dR4が十分に広くなる(dR4>dR3)。このため、パターン生成装置16は、図3(d)に示すように、第2の視覚パターン22の振幅をゼロにする。
また、パターン生成装置16は、第1の視覚パターン21の色の変更に合わせて、図3(b)に示す状態から図3(d)に示す状態までの間に、第1の視覚パターン21の波形の進行方向を逆転させる。すなわち、図3(b)に示す状態では、第1及び第2の視覚パターン21,22の波形は相互に中央に向かって進行しているが、図3(c)に示す状態では、第1の視覚パターン21の波形が一瞬停止しているように見え、図3(d)に示す状態では、第1の視覚パターン21の波形が中央から左端に向かって進行している。
なお、第1及び第2の視覚パターン21,22の振幅、色、波形の進行方向に代えて又はそれに加えて、第1及び第2の視覚パターン21,22の大きさ、形状、又は輝度等を変化させてもよい。
また、第1の距離が大きくなるほど、第1の視覚パターン21の振幅を大きくし、第1の距離が小さくなるほど、第1の視覚パターン21の振幅を小さくしてもよい。同様に、第2の距離が大きくなるほど、第2の視覚パターン22の振幅を大きくし、第2の距離が小さくなるほど、第2の視覚パターン22の振幅を小さくしてもよい。この場合に、第1の距離や第2の距離が小さくなるほど、第1の視覚パターン21や第2の視覚パターン22の色を、白色→黄色→赤色と変化させてもよい。
また、図4(a)〜図4(f)に示すように、第1の視覚パターンと第2の視覚パターンをサイン波以外で構成してもよい。なお、何れの視覚パターン21A〜21F,22A〜22Fも、上述した第1及び第2の視覚パターン21,22と同様に、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されており、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
図4(a)に示す第1及び第2の視覚パターン21A,22Aは、二次元のガウシアンフィルタに従って輝度変調させた染みパターンから構成されている。この第1及び第2の視覚パターン21A,22Aでは、第1及び第2の距離に応じて上下の位置が変化すると共に大きさが変化する。
また、図4(b)に示す第1及び第2の視覚パターン21B,22Bは、水平方向にはサイン波に従って輝度変調させ、垂直方向にはガウシアンフィルタに従って輝度変調させた縞パターンから構成されており、この縞パターンが左右方向に運動している。この第1及び第2の視覚パターン21B,22Bでは、第1及び第2の距離に応じて縞の長さが変化する。
また、図4(c)に示す第1及び第2の視覚パターン21C,22Cは、水平方向にはガボールフィルタ(=サイン波×ガウシアンフィルタ)に従って輝度変調させ、垂直方向にはガウシアンフィルタに従って輝度変調させた縞パターンであり、この縞パターンが左右方向に運動している。この第1及び第2の視覚パターン21C,22Cでは、第1及び第2の距離に応じて大きさが変化する。
また、図4(d)に示す第1及び第2の視覚パターン21D,22Dは、中心から全方向においてガウシアンフィルタに従って輝度変調させた螺旋パターンであり、この螺旋パターンは回転している。この第1及び第2の視覚パターン21D,22Dは、第1及び第2の距離に応じて大きさが変化する。
また、図4(e)に示す第1及び第2の視覚パターン21E,22Eも、中心から全方向においてガウシアンフィルタに従って輝度変調させた同心円パターンであり、この同心円パターンは、拡大/収縮運動している。この第1及び第2の視覚パターン21E,22Eは、第1及び第2の距離に応じて上下の位置が変化すると共に大きさが変化する。
また、図4(f)に示す第1及び第2の視覚パターン21F,22Fは、水平方向にはガウシアンフィルタに従って輝度変調させ、垂直方向にはガボールフィルタに従って輝度変調させ、且つ、水平方向にサイン波に従って位置変調させた縞パターンであり、この縞パターンは、左右方向に運動している。この第1及び第2の視覚パターン21F,22Fは、第1及び第2の距離に応じて位置変調の振幅が変化する。
また、図5(a)〜図5(c)に示すように、数字やアイコン等のコード情報や目盛等の高空間周波数成分から構成される第3の視覚パターン23A〜23Cを、視覚パターン20に付加してもよい。図5(a)〜図5(c)は本実施形態において第3の視覚パターン23A〜23Cを重畳的に表示した画面の例を示す図である。
第1の距離が所定値よりも短くなった場合に、図5(a)に示すように、視覚パターン20に、第1の視覚パターン21の振幅を第1の距離に対応付けた目盛を示す第3の視覚パターン23Aを含めてもよい。或いは、図5(b)に示すように、視覚パターン20に、第1の距離の数値を示す第3の視覚パターン23Bを含めてもよい。これにより、運転者は、第1及び第2の視覚パターン21,22だけでは得ることができない正確な距離を認識することができる。
或いは、図5(c)に示すように、視覚パターン20に、エクスクラメーションマークを示す第3の視覚パターン23Cを含めてもよい。これにより、自動車1が物体にかなり接近していることを運転者に対して積極的に警告することができる。さらに、この第3の視覚パターン23Cを点滅させてもよい。
なお、第3の視覚パターン23A〜23Cは、高空間周波数成分から構成されているので、運転者の視線誘導を最小限に抑制するために、車速が所定値(例えば5km/h)以下である場合にのみ表示することが好ましい。
また、図5(a)〜図5(c)に示す例では、第1の視覚パターン21の近傍に第3の視覚パターン23A〜23Cを表示しているが、特にこれに限定されず、例えば、第1の視覚パターン21に第3の視覚パターン23A〜23Cを重ねて表示してもよい。
図6は本発明の第1実施形態における車室内を運転席から前方に向かって見た図、図7は本発明の第1実施形態における運転席周りの側面図である。
以上のパターン生成装置16によって生成された視覚パターン20は、例えば、液晶モニタや有機ELモニタから構成され、車室内に設けられた表示ディスプレイ17に表示される。この表示ディスプレイ17は、図6に示すように、運転者側ドアの内側からセンタコンソール(自動車1の略中心C0)のまでの間に設けられており、本実施形態では、コンビネーションメータ4を覆うクラスタリッド5上に、運転者30の方を向くように設けられている。
この表示ディスプレイ17は、自動車1の前方を見ている標準姿勢の運転者30の視野において、中心となる視線L1から離心角10度以上の範囲に配置されている。本実施形態では、図7に示すように、表示ディスプレイ17は視線L1から上下方向に離心角10〜20度の範囲に設置されている。このように、本実施形態では、運転者の周辺視野に表示ディスプレイ17を配置するので、運転者30の前方視認に影響を与えることはない。
なお、本実施形態における標準姿勢とは、腰及び背中とシート2との間に隙間がないように深く座り、ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んだ状態で、膝が伸び切らずに少し余裕のある位置でシート2を合わせ、さらに、背中にシート2をつけたままの状態で、ステアリングホイール3の上部を握った両腕の肘に少し余裕がある角度で背もたれを合わせた姿勢である。
上述の視覚パターン20は、運転者30を中心として第1の視覚パターン21と第2の視覚パターン22とが左右に位置するように、この表示ディスプレイ17に表示される。このため、運転者は、自動車1の左右の距離変化のみならず、自動車1の左右のバランスを大局的に把握することができる。
パターン生成装置16は、表示ディスプレイ17に視覚パターン20を出力するのと同時に、第1及び第2の距離を示す信号を効果音生成装置18に出力する。
効果音生成装置18は、パターン生成装置16からの出力信号を受けて、第1の視覚パターン21や第2の視覚パターン22の変化に同期した効果音を、スピーカ181,182を介して出力する。
例えば、第1(又は第2)の視覚パターン21の振幅が大きくなるにつれて、スピーカ181(又は182)から出力される音の音量を大きくしたり、スピーカ181(又は182)から出力される音のオン/オフの周期を、第1(又は第2)の視覚パターン21の振幅が大きくなるにつれて速める。なお、第1又は第2の距離が所定値よりも小さくなった場合にのみ効果音を出力してもよい。
これにより、運転者に伝える情報の冗長性が高まるので、情報の伝達精度を高めることができる。なお、運転者が、第1及び第2の距離にそれぞれ対応した左右の音を独立して認識できるように、図6に示すように、少なくとも2つのスピーカ181,182が、運転者を中心として左右に配置されている。
以上のように、本実施形態では、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなる第1及び第2の視覚パターン21,22を、第1及び第2の距離に応じてそれぞれ変化させて運転者の周辺視野に呈示する。このため、運転者の周辺視野に、時間的及び空間的に輝度エッジを含まない第1及び第2の視覚パターンが呈示され、運転者は、視線を誘導されることなく、その第1及び第2の視覚パターン21,22の変化によって自動車1の周囲の物体との距離感を把握することができる。
従って、本実施形態では、運転者は、周辺視野を介して第1及び第2の視覚パターン21,22を常時監視しつつ、フロントウィンドウ6を介して実際の障害物を直接目視しながら運転することができ、より適切な運転操作が可能となる。
ここで、図8を参照しながら本実施形態の具体的な効果について説明する。図8は本実施形態における車輌用情報呈示装置による効果を説明するためのグラフであり、ドライビングシミュレータ上で狭隘道路走行場面を設定し、(1)ドライバに対して何ら情報を呈示しない場合(図中にて「表示なし」)、(2)ドライバに対して距離を数値で呈示した場合(図中にて「Numeral」)、及び(3)本実施形態の視覚パターン30をドライバに呈示した場合(「Ambient」)において、自動車が障害物と接触する回数をそれぞれカウントして作成したヒストグラムである。なお、上記の(1)〜(3)のそれぞれについて、遠方視界がある状態(図中の「no fog」)と、遠方視界がない状態(図中の「fog」)と、の2つの条件下で接触回数をカウントしている。
ドライバに対して何ら情報を呈示しない場合(上記の(1))には、特に遠方視界がない状態(「fog」)では、ドライバは自動車の周囲に存在する障害物等の物体に関する情報をほとんど入手することができない。そのため、図8に示すように、上記の(1)と比較して、本実施形態の視覚パターンをドライバに呈示することで(上記の(3))、特に遠方視界がない状態(「fog」)で接触回数が大幅に減少する。
また、ドライブに対して距離を数値で呈示する場合(上記の(2))には、ドライバに対して中心視での数値の読み取りを要求する。そのため、同図に示すように、上記の(2)と比較して、本実施形態の視覚パターンを表示することで(上記の(3))、遠方視界の有無にかかわらず接触回数が大幅に減少する。
なお、図8において、本実施形態の視覚パターンをドライバに呈示した場合(上記の(3))に、接触回数がゼロとなっていないのは、第1及び第2の物体検出センサが車輌の前方に配置されているために内輪差によって接触が発生したことに起因する。
さらに、本実施形態では、第1の視覚パターン21と第2の視覚パターン22とが、運転者30を中心として左右に位置するように表示ディスプレイ17に表示されるので、運転者は、自動車1の左右の距離変化のみならず、自動車1の左右のバランスを大局的に把握することができ、低速走行時でも左右の障害物の中央や車線の中央を走行し易くなる。
また、本実施形態では、第1及び第2の距離に応じて、第1及び第2の視覚パターン21,22の大きさ、形状、色、輝度、波形の振幅、又は波形の進行方向の少なくとも一つを、相互に独立して且つ連続的に変化させる。これにより、運転者は、周辺視によって第1及び第2の視覚パターン21,22を視認し易くなる。
特に、第1の視覚パターン21,22の色を第1及び第2の距離に応じて変化させることで、障害物にぎりぎりまで接近させることができ、狭隘道路の通り抜けのための操舵判断を適切に行うことができる。
また、色に合わせて第1の視覚パターン21,22の波形の進行方向も第1及び第2の距離に応じて変化させることで、色彩を判別し難い運転者も自動車1の左右の距離感覚やバランスを把握することができる。
また、本実施形態では、運転者の視界において、中心となる視線から10度以上の範囲に第1及び第2の視覚パターン21,22を呈示するので、運転者は周辺視によって第1及び第2の視覚パターン21,22を把握することができる。
なお、本実施形態における物体検出センサ11,12及び距離演算装置15が本発明における第1及び第2の物体検出手段の一例に相当し、本実施形態におけるパターン生成装置16が本発明におけるパターン生成手段の一例に相当し、本実施形態における表示ディスプレイ17が本発明における呈示手段の一例に相当し、本実施形態における効果音発生装置18が本発明における効果音発生手段の一例に相当する。
<<第2実施形態>>
図9に示すように、自動車1の左右後端にも物体検出センサを設けて、自動車1の左右前端と物体との距離に加えて、自動車1の左右後端と物体との距離を演算することで、第1及び第2の視覚パターンを変化させてもよい。なお、本実施形態における車速センサ13、操舵角センサ14、表示ディスプレイ17、及び効果音生成装置18は、第1実施形態と同様の構成であるので、その説明を省略する。
図9は本発明の第2実施形態における車輌用情報呈示装置の全体構成を示すブロック図、図10は自動車が右側の壁に接近している例を示す俯瞰図、図11は図10に示すシーンの表示例である。
本発明の第2実施形態では、自動車1の左右前端に設けられた第1及び第2の前方物体検出センサ11F,12Fに加えて、当該自動車1の左右後端に第1及び第2の後方物体検出センサ11R,12Rが設けられている。
第1の後方物体検出センサ11Rは、第1の前方物体検出センサ11Fと同様に、例えばレーザレンジファインダ等で構成されており、自動車1の左側方に存在する物体までの距離と方向を検出することが可能となっている。
第2の後方物体検出センサ12Rも、第2の前方物体検出センサ12Fと同様に、例えばレーザレンジファインダ等で構成されており、自動車1の右側方に存在する物体までの距離と方向を検出することが可能となっている。
距離演算装置15Bは、自動車1の1秒後の位置と、第1の前方物体検出センサ11Fによって検出された物体の位置及び方向から、1秒後の自動車1とその物体との距離(以下単に、第1の前方距離と称する。)を演算し、その演算結果をパターン生成装置16Bに出力する。
また、距離演算装置15Bは、自動車1の1秒後の位置と、第1の後方物体検出センサ11Rによって検出された物体の位置及び方向から、1秒後の自動車1とその物体との距離(以下単に、第1の後方距離と称する。)を演算し、その演算結果をパターン生成装置16Bに出力する。
同様に、距離演算装置15Bは、自動車1の1秒後の位置と、第2の前方物体検出センサ12Fによって検出された物体の位置及び方向から、1秒後の自動車1とその物体との距離(以下単に、第2の前方距離と称する。)を演算し、その演算結果をパターン生成装置16Bに出力する。
また、距離演算装置15Bは、自動車1の1秒後の位置と、第2の後方物体検出センサ12Rによって検出された物体の位置及び方向から、1秒後の自動車1とその物体との距離(以下単に、第2の後方距離と称する。)を演算し、その演算結果をパターン生成装置16Bに出力する。
そして、パターン生成装置16Bは、距離演算装置15Bから出力された第1の前方距離、第1の後方距離、第2の前方距離、及び第2の後方距離に基づいて、第1及び第2の視覚パターン21G,22Gを有する視覚パターンを生成する。この視覚パターンは、第1実施形態と同様に、輝度エッジを含まない時間周波数成分及び空間周波数成分から構成されたパターンであり、具体的には、1〜7[Hz]の中時間周波数、及び1[cpd]以下の低空間周波数で構成されている。
具体的には、第1の視覚パターン21Gは、第1実施形態と同様に、中央に向かって振幅が徐々に小さくなるサイン波で構成されており、第1の前方距離や第1の後方距離に対応して、振幅、色、及び波形の進行方向が変化するようになっている。なお、本実施形態では、第1の視覚パターン21Gは、例えば、第1の前方距離及び第1の後方距離のうちの小さい値や、第1の前方距離と第1の後方距離との平均値等に対応して変化する。
さらに、本実施形態では、第1の前方距離と、第1の後方距離とに基づいて、この第1の視覚パターン21Gの角度が変化するようになっている。
同様に、第2の視覚パターン22Gも、第1実施形態と同様に、中央に向かって振幅が徐々に小さくなるサイン波で構成されており、第2の前方距離や第2の後方距離に対応して、振幅、色、及び波形の進行方向が変化する。なお、本実施形態では、第2の視覚パターン22Gは、例えば、第2の前方距離及び第2の後方距離のうちの小さい値や、第2の前方距離と第2の後方距離との平均値等に対応して変化する。
さらに、本実施形態では、第2の前方距離と第2の後方距離とに基づいて、この第2の視覚パターン22Gの角度が変化するようになっている。
図10及び図11を参照しながら、本発明の第2の実施形態における視覚パターンについて具体的に説明する。
図10は自動車が右側の壁に接近している例を示す俯瞰図、図11は本実施形態において表示ディスプレイに表示された画面の一例を示す図であり、図10に示すシーンにおける例である。
図10に示す例では、自動車1は、左側の壁47に沿って平行に走行している。そのため、自動車1の左前端は、左側の壁47から第1の前方距離dLFだけ離れているのに対し、自動車1の左後端も、左側の壁47から第1の後方距離dLRだけ離れており、これらの距離dLF,dLRは実質的に同一となっている(dLF=dLR)。
一方、自動車1は、右側の壁48に対しては傾斜して走行している。そのため、自動車1の右前端は、右側の壁48から第2の前方距離dRFだけ離れているのに対し、自動車1の右後端は、右側の壁48から第2の後方距離dRRだけ離れており、これらの距離dRF,dRRは相違している(dRF<dRR)。
そこで、本例では、第2の物体検出センサ12F,12Rによって検出された距離dRF,dRRに基づいて、距離演算装置15が、右側の壁48に対する自動車1の角度θを算出し、パターン生成装置16が、第2の視覚パターン22Gを垂直方向に対して角度θ分傾斜させる。具体的には、例えば、第1の前方距離dRFと第2の後方距離dRRの差分と、第2の物体検出センサ12F,12R間の距離と、から角度θを算出することができる。これにより、運転者は、道路がカーブや折れ曲がっている場合に、内輪差を加味することができる。なお、本実施形態における視覚パターンに上述の第3の視覚パターン23A〜23Cを付加してもよい。
図12(a)及び図12(b)は本発明の第2実施形態における第1及び第2の視覚パターンの他の例を示す図である。
また、図12(a)に示す第1及び第2の視覚パターン21H,22Hは、図4(c)と同様に、水平方向にはガボールフィルタに従って輝度変調させ、垂直方向にはガウシアンフィルタに従って輝度変調させた縞パターンであり、自動車1の左右前端の距離に応じて縞パターンの長さを変化させると共に、自動車1の左右後端の距離に応じて縞パターンの傾きを変化させている。
また、図12(b)に示す第1及び第2の視覚パターン21I,22Iも、図4(c)と同様に、水平方向にはガボールフィルタに従って輝度変調させ、垂直方向にはガウシアンフィルタに従って輝度変調させた縞パターンである。この第1及び第2の視覚パターン21I,22Iは、自動車1の左右前後端からの距離に応じて、縞を構成する個々の楕円の扁平率を変化させると共に、図11と同様の要領で、自動車1の障害物に対する角度に応じて当該楕円の傾きを変化させている。
さらに、図13に示すように、第1の視覚パターン21Jと第2の視覚パターン22Jを相互に独立させてもよい。図13は本発明の第2実施形態における第1及び第2の視覚パターンのさらに他の例を示す図である。
同図に示すように、第1の視覚パターン21Jが、自動車1の左前端から物体までの第1の前方距離を示す第1の前方視覚パターン211と、自動車1の左後端から物体までの第1の後方距離を示す第2の前方視覚パターン212と、を有すると共に、第2の視覚パターン22Jが、自動車1の右前端から物体までの第2の前方距離を示す第2の前方視覚パターン221と、自動車1の右後端から物体までの第2の後方距離を示す第2の後方視覚パターン222と、を有してもよい。
この場合には、第1の前方視覚パターン211の振幅が第1の前方距離dLFに応じて変化し、第1の後方視覚パターン212の振幅が第1の後方距離dLRに応じて変化し、第2の前方視覚パターン221の振幅が第2の前方距離dRFに応じて変化し、第2の後方視覚パターン222の振幅が第2の後方距離dRRに応じて変化する。これにより、運転者は、道路がカーブや折れ曲がっている場合に、内輪差を加味することができる。
因みに、図13に示す例では、自動車1の左側方には比較的離れた距離に自動車1に平行して物体が存在しているのに対し、自動車1の右側方には、比較的近い距離に自動車1にほぼ平行して物体が存在している。
以上のように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、中時間周波数成分及び低空間周波数成分からなる第1及び第2の視覚パターン21G,22Gを、第1及び第2の距離に応じてそれぞれ変化させて運転者の周辺視野に呈示する。このため、運転者の周辺視野に、時間的及び空間的に輝度エッジを含まない第1及び第2の視覚パターンが呈示され、運転者は、視線を誘導されることなく、その第1及び第2の視覚パターン21G,22Gの変化によって自動車1の周囲の物体との距離感を把握することができる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、第1の視覚パターン21Gと第2の視覚パターン22Gとが、運転者30を中心として左右に位置するように表示ディスプレイ17に表示されるので、運転者は、自動車1の左右の距離変化のみならず、自動車1の左右のバランスを大局的に把握することができ、低速走行時でも左右の障害物の中央や車線の中央を走行し易くなる。
さらに、本実施形態では、第1の前方距離、第1の後方距離、第2の前方距離、及び第2の後方距離に応じて、第1及び第2の視覚パターン21G,22Gを変化させる。これにより、運転者は、道路がカーブや折れ曲がっている場合に、内輪差を加味することができる。
また、本実施形態では、第1の前方距離、第1の後方距離、第2の前方距離、及び第2の後方距離に応じて、第1及び第2の視覚パターン21G,22Gの大きさ、形状、色、輝度、波形の振幅、又は波形の進行方向の少なくとも一つを、相互に独立して且つ連続的に変化させる。これにより、運転者は、周辺視によって第1及び第2の視覚パターン21G,22Gを視認し易くなる。
特に、第1の視覚パターン21G,22Gの色を第1及び第2の距離に応じて変化させることで、障害物にぎりぎりまで接近させることができ、狭隘道路の通り抜けのための操舵判断を適切に行うことができる。
また、色に合わせて第1の視覚パターン21G,22Gの波形の進行方向も第1及び第2の距離に応じて変化させることで、色彩を判別し難い運転者も自動車1の左右の距離感覚やバランスを把握することができる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、運転者の視界において、中心となる視線から10度以上の範囲に第1及び第2の視覚パターン21G,22Gを呈示するので、運転者は周辺視によって第1及び第2の視覚パターン21G,22Gを把握することができる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、効果音生成装置18が、第1の視覚パターン21や第2の視覚パターン22の変化に同期した効果音を、スピーカ181,182を介して出力するので、運転者に伝える情報の冗長性が高まるので、情報の伝達精度を高めることができる。
なお、本実施形態における物体検出センサ11F,11R,12F,12R及び距離演算装置15Bが本発明における第1及び第2の物体検出手段の一例に相当し、本実施形態におけるパターン生成装置16Bが本発明におけるパターン生成手段の一例に相当し、本実施形態における表示ディスプレイ17が本発明における呈示手段の一例に相当し、本実施形態における効果音発生装置18が本発明における効果音発生手段の一例に相当する。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。