JP5857574B2 - 血液フィルタ装置および血液フィルタ装置製造方法 - Google Patents

血液フィルタ装置および血液フィルタ装置製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、人工心肺回路内において異物や血栓等を濾過するために用いられる人工心肺回路内において用いられる血液フィルタ装置およびその製造方法に関し、特に、簡便に製造でき確実なプライミング操作を実現可能な血液フィルタ装置および血液フィルタ装置製造方法に関する。
近年、体外循環を伴う心臓手術に用いられる人工心肺回路において、安全性を考慮し血液フィルタ装置を組み込むケースが増加している。血液フィルタ装置は、人工心肺回路内の微小異物や術中に生じた血栓、あるいは当該回路内に混入あるいは離脱した空気を患者の体内に送らないようにする構造が強く求められる。
このため、フィルタとしては20〜40μm程度のポリエステル製シートが用いられる。血液フィルタ装置の中に組み込む際には、表面積を大きくするため、シートに多数のプリーツ(ひだ)が設けられる。代表的なものとして、山部を外側、谷部を内側とした円筒形ないし切頭円錐形としたものや(特許文献1)、略楕円形に切り取ったシートを短軸方向を稜線として蛇腹に折りたたんで円柱形としたものが装置内に組み込まれる(特許文献2)。
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
特許文献1に示されるような切頭円錐形のフィルタにあっては、血液は、円錐上部から流入して外周からフィルタを通過し、中央下部から流出する。プライミング時には、ハウジングを指ではじく等して外部から衝撃を与えて、フィルタに付着している気泡を、上部の排気ポートへと誘導する。
しかしながら、フィルタ外側に付着している気泡は上部から除去されるものの、フィルタ内側に付着している気泡は一時的にフィルタから離れるだけで、再度フィルタ内側上部に付着し、残留してしまう。特に、円錐軸上部はその構造上血液の流れが緩慢で、また、プリーツの間隔も狭くなるため、気泡の残留を一層促進してしまう。すなわち、切頭円錐形のフィルタは、プライミングをおこなっても、気泡が一部残留してしまう場合があり、速やかに回路外へ排出することは事実上困難であるという問題点があった。
一方、特許文献2に示されるような、蛇腹形のフィルタにあっては、プリーツの間隔が均等であり、また、血液の流れもほとんど場所に依存せず一様にフィルタを通過して下部へと向かうのでので、プライミングによって速やかに気泡が排出される。
しかしながら、フィルタを有底円筒形の外枠である環状保持具に嵌め込むため、予めフィルタを略楕円形状にカットする必要があるが、各稜線の長さが異なるプリーツを多数正確に折り込むことは製造上必ずしも容易ではない。加えて、それぞれのプリーツ間の各面積が異なるため、折り戻しの力が均等ではなく、両端を位置決めしてもプリーツが等間隔に整列せず(中央部分のプリーツ間隔が大きくなり)、環状保持具底面に設けたリブに規則正しく差し込むことが極めて困難であるという問題点があった。
また、リブが等間隔であっても、折り戻しの力がプリーツ間で異なる上、プリーツ間の各面の形状も台形に近いため、フィルタにたわみが生じる場合があった。たわみにより隣り合うフィルタが接触すると気泡残留の要因となるので、これを防止すべく、従来ではフィルタの周縁を樹脂により環状保持具内面に固定し、間隙を整える工程がさらに必要であり、組み立てが煩雑であるという問題点があった。すなわち、リブはプリーツ整列の補助用に過ぎず、実際には樹脂による最終固定が必要となっていた。また、さらに、環状保持具は、フィルタ装置に装着された後、別の樹脂により固定する必要があった。換言すれば、特許文献2に開示される技術では、生産性が高くないという問題点があった。
特開平6−312015号公報 特開2007−097818号公報
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、簡便に製造でき確実なプライミング操作を実現可能な血液フィルタ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の血液フィルタ装置は、血液流入口と空気排出口を備えた上蓋体と、血液流出口を備え上蓋体と密に接合する下蓋体と、上蓋体と下蓋体とを接合して形成されるハウジング内に収容する枠体と、枠体に組み込むシート状濾材と、を有する血液フィルタ装置であって、シート状濾材は、短冊形のシートが短手方向を稜線として交互に折り返され、高さを揃え外形が直方体である蛇腹に形成され、枠体は、蛇腹の上下それぞれにあてがい、シート状濾材が互いに接触しないように稜線間それぞれに間挿される複数の爪体が形成された上面スペーサおよび下面スペーサと、一方のスペーサの両端に高さを蛇腹高さとして平行に立設し、コ字状の3面体を形成して他方のスペーサを支持する規制板であって、シート状濾材の両端の面を当接させることにより等間隔に稜線を整列させ爪体の間挿作業を容易とする規制板と、により構成され、枠体を、シート状濾材の蛇腹が上下に位置するようにハウジング内に配し、ハウジング側周内側に充填される固化材によって、血液流入口から流入した血液が総てシート状濾材を通過して血液流出口から流出するように固定したことを特徴とする。
すなわち、請求項1にかかる発明は、簡便に製造でき確実なプライミング操作を実現可能な血液フィルタ装置を提供できる。詳細には、弓形ないし楕円形に切り出すことを要さず、一方に長い帯状(長辺の長い長方形)の濾材を規則正しく折り返して外形が直方体の蛇腹を形成することより、外形が円柱状の蛇腹に比して、爪体の間挿が容易となるなど取扱性が著しく高まり簡便な装置製造を実現可能となる。また、蓋体側周内側から濾材の周縁までを固化材で充填固化して固定するだけで一様な流路を形成し、速やかなプライミング操作を実現可能となる。
特に、規制板がガイドとなり爪体の間挿作業が容易となる。詳細には、シート状濾材の外形が円柱状でなく直方体の蛇腹に形成されているので、プリーツが総て同一であり押し戻し力も総て同一となる。これにより、平行な規制板により両端面が位置決めされると、プリーツが等間隔に自然に整列するので、スペーサの簡便な挿入作業が実現する。また、規制板により他方のスペーサの沈み込みが防止され、フィルタ同士の接触が生じないため、製品信頼性も向上する。また、一方のスペーサがコ字状の3面体であり、他方のスペーサがあてがわれると、シート状濾材の外枠体が形成されることとなるので、柔軟な濾材に触ることなく以降の組み込み作業をおこなえ、この点でも、取扱性ひいては生産性が向上する。
上蓋体と下蓋体は、シート状濾材を内包できれば特にその外形は限定されないが、血液の停留を防ぐ観点から碗形、ドーム形、円柱形など、軸対称形であることが好ましい。また、ハウジングの高さは、蛇腹を押しつぶさない高さが確保されていることはいうまでもない。外形が直方体であるとは、蛇腹の包絡面が直方体であることを意味する。シート状濾材が互いに接触しないようにとは、爪体により、プリーツが互いに面接触、線接触しないように所定間隔があけられた状態であることを意味する。爪体は、ピンのような細棒体であってもよいが、蛇腹にあてがいながら爪体を稜線間にそれぞれ挿入するため、稜線方向に長さのある突条とすることが好ましい。なお、爪体は、プリーツ間に1つに限定されることなく、稜線前端と後端の2箇所に設けられていても良く、プリーツの接触を防止するために設けるのであれば特にその立設態様は限定されない。スペーサ自体は、爪体をプリーツ間に挿入し、また、装置厚みを大きくしないため、板体である(爪体はその片面に列設された態様とする)ことが好ましい。蛇腹が上下に位置するように配されるとは、稜線の存在する直方体の対向する両面が、血液流路を遮る位置関係であることをいう。換言すれば、上蓋体と下蓋体とで概念される上下の位置関係に従った位置関係に配されていることをいう。血液流入口から流入した血液が総てシート状濾材を通過して血液流出口から流出するように固定される例としては、直方体形状のシート状濾材の周縁部総てを固化することにより実現できる。
なお、規制板の立設高さが蛇腹高さとは、必ずしも同一でなく、使用の態様により、プリーツが互いに接触しない程度の浮きないし余裕が設けられていてもよいものとする。なお、規制板はスペーサ端部に存在するため、固化材により充填固化される。
請求項2に記載の血液フィルタ装置は、請求項1に記載の血液フィルタ装置において、上面スペーサおよび下面スペーサは共に中央が血液流路として円形に開口した有孔板体であって、下面スペーサの孔の径を上面スペーサの孔の径より大きくしたことを特徴とする
すなわち、請求項2にかかる発明は、血液流路が分岐、複雑化することなく一本の太く一様な流路を形成することができる。また、スペーサが板体であるため、装置高さを低く、すなわち、内部容積を小さくすることができ、血液の滞留時間を短くすることが可能となる。また、濾材とともに板体周縁部まで固化材を充填固化するだけで、血液が総てシート状濾材を通過することとなるので、簡便な装置製造が実現できる。
なお、スペーサの中央が開口しているので、爪体は、その周囲に設けられることとなる。
請求項に記載の血液フィルタ装置製造方法は、短冊形のシート状濾材を短手方向を稜線として交互に折り返して高さを揃え、外形が直方体である蛇腹に形成し、複数の爪体が等間隔に形成された二つのスペーサのうち、一方のスペーサの両端に高さを蛇腹高さとして平行に立設された規制板に対し、シート状濾材の両端の面を当接させてスライドし、等間隔に自然に整列する稜線を爪体に進入間挿させ、他方のスペーサをコ字状の3面体により保持される蛇腹にあてがいシート状濾材が互いに接触しないように稜線間それぞれに爪体を間挿して枠体を形成し、蛇腹が上下に位置するように配して、血液流入口と空気排出口とを備えた上蓋体と、血液流出口を備えた下蓋体とを密に接合して、内部に形成されるハウジング内に枠体を収容し、次いでハウジング側周内側に固化材を充填して、血液流入口から流入した血液が総てシート状濾材を通過して血液流出口から流出するように枠体を固定することを特徴とする。
すなわち、請求項にかかる発明は、簡便に製造でき確実なプライミング操作を実現可能な血液フィルタ装置を製造できる。詳細には、弓形ないし楕円形に切り出すことを要さず、一方に長い帯状(長辺の長い長方形)の濾材を規則正しく折り返して外形が直方体の蛇腹を形成することより、外形が円柱状の蛇腹に比して、爪体の間挿が容易となるなど取扱性を著しく高めて、装置を簡便に製造可能となる。また、蓋体側周内側から濾材の周縁までを固化材で充填固化して固定するだけで、速やかなプライミング操作を実現すべく一様な流路を形成可能となる。
特に、規制板をガイドとして爪体のプリーツ間への間挿操作が容易となる。詳細には、シート状濾材の外形が円柱状でなく直方体の蛇腹に形成されているので、プリーツが総て同一であり押し戻し力も総て同一となる。これにより、平行な規制板により両端面が位置決めされると、プリーツが等間隔に整列するので、スペーサの簡便な挿入作業が実現する。
なお、規制板の高さを蛇腹高さとすることにより他方のスペーサの沈み込みを防止でき、フィルタ同士の接触が生じないため好適である。一方のスペーサがコ字状の3面体であり、他方のスペーサがあてがわれると、シート状濾材の外枠体が形成されることとなるので、柔軟な濾材に触ることなく以降の組み込み作業をおこなえ、この点でも、取扱性ひいては生産性が向上する。
請求項に記載の血液フィルタ装置製造方法は、請求項に記載の血液フィルタ装置製造方法において、上下に位置するそれぞれのスペーサは、中央が血液流路として円形に開口した有孔板体であって、下面スペーサの孔の径を上面スペーサの孔の径より大きく設け、
上蓋体と下蓋体とを接合した後、上蓋体を下に下蓋体を上にして当該円の中心を軸として血液フィルタ装置を回転させ、固化材を枠体周縁部も含めて充填固化することを特徴とする。
すなわち、請求項にかかる発明は、充填固化を容易化すると共に、大きな流路を形成することができる。
本発明によれば、簡便に製造でき確実なプライミング操作を実現可能な血液フィルタ装置およびその製造方法を提供することが可能となる。
血液フィルタ装置の側面図である。 血液フィルタ装置の上蓋体と下蓋体とを接合したハウジングのみの断面図である。点線にて固化材の充填域を概念的に示している。 血液フィルタ装置の平面図である。 スペーサを組み込んだ、外形が直方体である蛇腹に折りたたまれたシート状濾材の斜視図である。 上スペーサの外観斜視図である。 スペーサに保持されたフィルタの断面図である。 スペーサを取り付けたフィルタの底面図である。手前のプリーツのみ線描してある。 上蓋体にフィルタを組み込んだ断面図である。 フィルタおよびフィルタを保持するスペーサの他の構成例を示した斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、血液フィルタ装置の側面図である。図2は、血液フィルタ装置の上蓋体と下蓋体とを接合したハウジングのみの断面図である。図3は、血液フィルタ装置の平面図である。図4は、スペーサを組み込んだ、外形が直方体である蛇腹に折りたたまれたシート状濾材の斜視図である。
血液フィルタ装置100は、上蓋体101と、下蓋体102と、これらに内包されるフィルタ103と、フィルタ103のプリーツが互いに接触しないように離間するスペーサ104と、を主要な構成とする。
上蓋体101、下蓋体102、スペーサ104は、共に透明樹脂製である。樹脂の例としては、PP、PC、PETなどを挙げることができる。透明とすることにより、血液の視認性が向上する。
上蓋体101は、扁平な円筒、すなわち、径に対して高さの低い円筒の上にドームが形成された構成であり、ドーム頂部には、気泡を排出する空気排出口111が設けられている。また、上蓋体101には、血液を流入させる血液流入口112が、水平方向(円筒の径方向)かつドームの内壁に沿う方向に設けられている。この向きに血液が流入するので、ドーム内壁と後述の整流部(整流部218)で整流され、一様な血流としてフィルタ103へ血液が案内される。
また、上蓋体101の内側上部にはスペーサ104を位置決めする凸体113を4箇所に設けている。
下蓋体102も、上蓋体101と同様に扁平な有底円筒であり、底面中心には、血液流出口121が設けられている。また、下蓋体102には、固化材を注入する注入孔122が設けられている。上蓋体101と下蓋体102とは、密に接合し、フィルタ103を収容する円筒形のハウジングを形成する。
フィルタ103は、スペーサ104(上スペーサ201と下スペーサ202)に挟まれ、プリーツ131を上下に配向してハウジング内に収容および固定される。
図5は、上スペーサ201の外観斜視図である。図6は、スペーサ104に保持されたフィルタの断面図である。図7は、スペーサ104を取り付けたフィルタ103の底面図である。図8は、上蓋体101にフィルタ103を組み込んだ断面図である。
フィルタ103は、一方に長い帯状のシート状濾材を同一の折幅として、短手方向を稜線として交互に折り返して形成される。折幅が同一であるので、高さがそろい、外形が直方体である蛇腹となる。フィルタ103は、その姿勢を保持しつつ取扱性を向上し、かつ、稜線を形成するプリーツ131が互いに接触しないように、上スペーサ201および下スペーサ202により保持される。
フィルタ103としては、メッシュ状のもの、織布や不織布等、あるいはこれらの組合せ等を用いることができる。材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、フッ素繊維、あるいはステンレス等を用いることができる。
従来のフィルタは、長辺を弧に切断して(略楕円形に切断して)、蛇腹に折りたたんだときに外形が円柱形となるように形成する必要があったが、プリーツ間隔が不揃いとなり、また、蛇腹の両端部の稜線の短い面の保持性が極めて悪いため、切断作業、折りたたみ作業のみならず、スペーサへの組み込み作業が極めて悪く取扱性に劣るところ、外形が直方体である本発明は、上記3作業(切断作業、折りたたみ作業、組み込み作業)が極めて容易となるという利点を有する。
図5に示したように、上スペーサ201は、外形が略正方形である上面板211と、上面板211の対向する辺から同じ方向に立設した略長方形の横板212とから構成される。また、上面板211には、上蓋体101の凸体113と勘合しハウジング内への収容時に位置決めをおこなう切欠213が設けられている。
また、上面板211は中央に大きく円形の孔214が開口しており、横板212と同じ側であって孔214の縁から所定径離れた位置に、爪215が多数列設されている。爪215は、シート状濾材の折幅(蛇腹高さ)の約1/4の高さであり、各爪215は、横板212と上面板211との接続辺と平行に所定長さ延伸した奥行きを有している。また、爪215は、先端に向けて細くなり、最先端には丸みを持たせている。
各爪215は、円形に周設されているためそれぞれの立設位置は異なるが、延伸方向に垂直な方向には等間隔に列設している。また、爪215は孔214の縁近傍に周設されている結果、上述の接続辺に近い位置の爪を除き、延伸方向の同一直線上に2個存在する。爪215と孔214の間は、円環平板状であり、整流部218が形成されている。ドーム内壁と整流部218により、上蓋体101へ流入した血液が整流される。
下スペーサ202は、図7に示したように、円環状の板体であり、プリーツ131にあてがう面には、上スペーサ201と同様の爪221が多数列設されている(図7は爪221のない面が表れている)。すなわち、爪221は先細りに形成され、高さも爪215と同じ高さにて同一方向に延伸した突条であり、円環片側に周設されている。また、延伸方向に垂直な方向には等間隔であり、その間隔も爪215と同間隔としている。
下スペーサ202の開口部である孔222は上スペーサ201の孔214と同様に円形である。孔222の径を孔214の径より大きくすることによりスペーサ間の乱流発生が抑制され、整流効果が得られる。下スペーサ202の外周は、上スペーサ201の横板212の下辺216により支えられ、内包するフィルタ103側へ沈み込まないようにしている。また、下辺216には、下スペーサ202の板状円環の厚み分の切欠217を設け、嵌合性および位置決め性を高めている。フィルタ103を収容した後、ここを接着してもよい。なお、横板212の高さは、フィルタ103の折幅と略同一としている(使用の態様により横板212の高さは折幅長さより所定長さ高くしても良い)。
下スペーサ202は、爪221の延伸方向を上スペーサ201の爪215の延伸方向と揃えて組となり、フィルタ103を保持する枠体を形成する。ここで、爪221と爪215とは、爪の列設間隔を半分ずらした位置関係となるように形成されている。すなわち、爪を高さ方向に伸ばしたときに、爪の先端は、対向する爪と爪との中央に位置する関係にある。
フィルタ103の上下各プリーツ131は、爪215間および爪221間にそれぞれ挿入される。爪の列設間隔が上述のように上下で半分ずれているので、蛇腹の各山および谷は歪みなく整然とスペーサ104に間挿される。また、横板212の高さが折幅と同一であるので、各稜線間(プリーツ131間)の各面はたわむことなく、かつ、互いに接触することなくスペーサ104に収容される。なお、爪215および爪221は、フィルタ103の各折面がたわむことなくかつ接触することのないようにそれぞれ先細りの角度ないし形状および高さとしている。
フィルタ103を組み込んだスペーサ104は、上蓋体101と下蓋体102により形成されるハウジングに収容される。このとき、上スペーサ201の切欠213と上蓋体101の凸体113とを勘合させる。なお、上蓋体101の円筒、下蓋体102の円筒、スペーサ104の孔214および孔222は、それぞれ中心が同一直線上となるように配置される。
フィルタ103およびスペーサ104の最終的なハウジング内への固定は、下蓋体102の注入孔122を介してハウジング外周内側から孔214および孔222近くまで固化材を充填することによりおこなう。このとき、遠心力を用いることにより、血液フィルタ装置100内部に、大きな円柱状の管、すなわち、血液の流路が形成されるように固化をおこなう。固化材の例としては、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂を挙げることができる。
固化材により、フィルタ103の周縁部およびスペーサ104も固定される。これにより、プリーツ131が稜線方向の両側から位置決めおよび固定されることとなり、血液が接触および通過する場合においても、プリーツ131の形状が維持される。また、血液流入口112から流入した血液は総てフィルタ103を通過し、血液流出口121から流出する。フィルタ103のプリーツ131が等間隔に整列しているので、血流は上から下へ、太い流路をくだり略一様な流れが形成される。
以上の構成として血液フィルタ装置100を人工心肺回路に介在させることにより、微小異物や気泡をフィルタで除去することができる。
なお、フィルタ103は、爪215および爪221により離間されているので、プライミング時に、打腱器もしくは拳などで叩いて、フィルタ103の上面に付着している気泡を空気排出口111に誘導する。一方、フィルタ103下面の下面に付着している気泡はプライミング液の一様かつ円滑な流れにより下方へ押し流される。これにより、血液フィルタ装置100から気泡を速やかに除去可能となる。
血液フィルタ装置100の大きさは特に限定はされないが、例えば、爪の間隔は1.9mm、太さは1.3mm、高さは5mmとすることができる。また上面板211は、50mm四方、孔214の直径は31mm、孔222の直径は43mm、とすることができる。フィルタ103の折幅は20mmとすることができる。
次に、血液フィルタ装置100の製造方法について説明する。
まず、帯状の濾材を短辺方向に切断し一方に長い長方形(短冊)を切り出す。次に、同一の折幅として互い違いに折り返し、外形が直方体のフィルタ103を形成する。
次に、フィルタ103の両端の面を横板212で挟み込むように当接させ、上スペーサ201を斜め上からスライドさせ、各爪215がプリーツ131間にそれぞれに進入するようにしてあてがい、被せる。
ここで、フィルタ103は、プリーツ131間の各面が同一形状であるため、押し広がろうとする力、すなわち、押し戻し力がどの面でも同一となる結果、両端面が横板212により位置決めされるとプリーツ131が爪215と同間隔に自然に整列する。従って、従来は困難であったフィルタの枠体(ここでは上スペーサ201)への間挿操作を極めて容易におこなうことが可能となる。
次いで、下スペーサ202を、斜めからスライドさせ、各爪221を反対側のプリーツ131間にそれぞれに進入するようにしてあてがい、被せる。そして、下スペーサ202を、上スペーサ201の切欠217に埋め込み、フィルタ103を保持する枠体を形成する。
上蓋体101をドームが下になるようにして受け皿とし、上スペーサ201を下にして4つの切欠213を上蓋体101の凸体113に合致させ枠体を嵌め込む。
次に、下蓋体102を上から被せ、上蓋体101と合体させる。これを所定の保持具に取り付け、上蓋体101と下蓋体102の円筒軸を中心として回転させつつ、固化材を注入孔122から注入し、遠心力によりハウジング内面外周側から充填していく。孔222の近傍まで充填し、太い円柱状の血液流路を形成し、固化材が固化したら回転を止め、保持具から取り外し、血液フィルタ装置100が完成する。
以上説明したように、本発明の血液フィルタ装置100は、外形が直方体の蛇腹状のフィルタを扱うことができるため、取扱性が著しく向上し、簡便に製造できる。また、プリーツが血液流路の流れに対向する向き(上下に)に配されるので、確実なプライミング操作が実現可能となる。
なお、本発明の血液フィルタ装置100は、本実施の形態で説明した態様に限定されない。例えば、図9に示したように、一方のスペーサを箱状として、直方体形状の蛇腹の四隅を切り取って外形が略八角柱のようにフィルタを形成し、収容するようにしても良い。この場合もフィルタの両端面はある程度広いので爪の間挿作業は容易となる。図ではさらに他方のスペーサ(円環形スペーサ)が上にあてられて枠体を形成した様子を示している。なお、箱の側面を開口させているのは固化材の注入を円滑におこなうためである。
このように面取りをしたフィルタの場合は、血液フィルタ装置を小型化でき、また、使用する固化材の量を少なくすることができる。
なお、外形が直方体のフィルタ103の四隅を切り取らずとも、スペーサ104でフィルタ103を保持後、上蓋体101に嵌め込む際に、ねじるように挿入すれば四隅が同方向に曲がるので、これにより外径の比較的小さな上蓋体101であっても、孔214および孔222間にあるプリーツ131は、等間隔に整列したまま歪みなく固化材により固化可能である。
本発明の血液フィルタ装置は、プリーツ131により表面積を大きくして濾過効率が高まり、かつ、血液通過の抵抗率が小さくなる。これにより、迅速かつ効率的なプライミングを実現でき、人工心肺回路に好適である。
100 血液フィルタ装置
101 上蓋体
102 下蓋体
103 フィルタ(シート状濾材)
104 スペーサ
111 空気排出口
112 血液流入口
113 凸体
121 血液流出口
122 注入孔
131 プリーツ
201 上スペーサ(上面スペーサ)
202 下スペーサ(下面スペーサ)
211 上面板
212 横板(規制板)
213 切欠(上蓋体用)
214 孔(上スペーサの孔)
215 爪(上スペーサの爪)
216 下辺
217 切欠(下スペーサ用)
218 整流部
221 爪(下スペーサの爪)
222 孔(下スペーサの孔)

Claims (4)

  1. 血液流入口と空気排出口を備えた上蓋体と、
    血液流出口を備え上蓋体と密に接合する下蓋体と、
    上蓋体と下蓋体とを接合して形成されるハウジング内に収容する枠体と、
    枠体に組み込むシート状濾材と、
    を有する血液フィルタ装置であって、
    シート状濾材は、短冊形のシートが短手方向を稜線として交互に折り返され、高さを揃え外形が直方体である蛇腹に形成され、
    枠体は、蛇腹の上下それぞれにあてがい、シート状濾材が互いに接触しないように稜線間それぞれに間挿される複数の爪体が形成された上面スペーサおよび下面スペーサと、一方のスペーサの両端に高さを蛇腹高さとして平行に立設し、コ字状の3面体を形成して他方のスペーサを支持する規制板であって、シート状濾材の両端の面を当接させることにより等間隔に稜線を整列させ爪体の間挿作業を容易とする規制板と、により構成され、
    枠体を、シート状濾材の蛇腹が上下に位置するようにハウジング内に配し、ハウジング側周内側に充填される固化材によって、血液流入口から流入した血液が総てシート状濾材を通過して血液流出口から流出するように固定したことを特徴とする血液フィルタ装置。
  2. 上面スペーサおよび下面スペーサは共に中央が血液流路として円形に開口した有孔板体であって、下面スペーサの孔の径を上面スペーサの孔の径より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の血液フィルタ装置。
  3. 短冊形のシート状濾材を短手方向を稜線として交互に折り返して高さを揃え、外形が直方体である蛇腹に形成し、
    複数の爪体が等間隔に形成された二つのスペーサのうち、一方のスペーサの両端に高さを蛇腹高さとして平行に立設された規制板に対し、シート状濾材の両端の面を当接させてスライドし、等間隔に自然に整列する稜線を爪体に進入間挿させ、
    他方のスペーサをコ字状の3面体により保持される蛇腹にあてがいシート状濾材が互いに接触しないように稜線間それぞれに爪体を間挿して枠体を形成し、
    蛇腹が上下に位置するように配して、血液流入口と空気排出口とを備えた上蓋体と、血液流出口を備えた下蓋体とを密に接合して、内部に形成されるハウジング内に枠体を収容し、
    次いでハウジング側周内側に固化材を充填して、血液流入口から流入した血液が総てシート状濾材を通過して血液流出口から流出するように枠体を固定することを特徴とする血液フィルタ装置製造方法。
  4. 上下に位置するそれぞれのスペーサは、中央が血液流路として円形に開口した有孔板体であって、下面スペーサの孔の径を上面スペーサの孔の径より大きく設け、
    上蓋体と下蓋体とを接合した後、上蓋体を下に下蓋体を上にして当該円の中心を軸として血液フィルタ装置を回転させ、固化材を枠体周縁部も含めて充填固化することを特徴とする請求項に記載の血液フィルタ装置製造方法。
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