JP5855784B1 - 濡れ壁構造 - Google Patents

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【課題】なるべく少ない量の水で壁面を十分均一に濡らすのに有用な濡れ壁構造を提供する。【解決手段】本発明は、廃棄物ガス化溶融炉から排出される溶融物が壁面に付着することを抑制するための濡れ壁構造に関する。この濡れ壁構造は、水で濡らすべき壁面を有する壁と、壁の上部において壁に沿って横方向に延びるように設けられた貯水部と、貯水部に水を供給する給水路と、貯水部の内側から外側にかけて貫通するように形成されており、壁面に沿って分散配置された複数の放水孔とを備える。【選択図】図6

Description

本発明は、廃棄物ガス化溶融炉から排出される溶融物が壁面に付着することを抑制するための濡れ壁構造に関する。
一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する方法として、炭素系固形燃料(例えばコークス)を熱源に使用し、工業炉で廃棄物を溶融する方法が知られている。廃棄物の溶融処理は、廃棄物の減容化だけでなく、これまで埋め立てによって最終処分されていた焼却灰及び不燃性ゴミをスラグやメタルなどの資源として回収できる利点がある。
特許文献1の図1には廃棄物ガス化溶融炉に付設される水槽が図示されている。この図によれば、溶融炉2から排出された溶融スラグ4は、ノズル18から噴射される水によって冷却され、水槽1へと落下する。
特開2003−65529号公報
ところで、廃棄物ガス化溶融炉の操業形態として、溶融炉の底部から溶融物を間欠的に排出する形態(「間欠出湯」と称される。)と、連続的に排出する形態(「連続出湯」と称される。)が知られている。間欠出湯の場合、溶融物排出用の貫通孔を耐熱材料で塞いだ状態とし、所定時間の経過ごとに貫通孔を開放することによって溶融物を排出させ、その後、再び貫通孔を耐熱材料で塞ぐ。この作業は人手に頼らざるを得ないため、本発明者らは連続出湯による安定的な操業の実現に向けて検討を重ねた。その結果、連続出湯による安定的な操業には以下の課題があることが判明した。
すなわち、貫通孔及びその周辺における溶融物の温度低下を十分に抑制しないと、比較的短時間のうちに溶融物の固化物によって貫通孔が閉塞されてしまう。間欠出湯の場合、炉底に溜まった比較的多量の溶融物が短時間のうちに排出されるため、溶融物の温度の低下に伴う問題は顕在化していなかった。これに対し、連続出湯の場合、少量の溶融物が連続的(場合によっては間欠的)に貫通孔から排出されるため、貫通孔及びその周辺において溶融物の温度が低下しやすい。温度低下に伴う溶融物の高粘性化又は固化によって貫通孔の下部から徐々に塞がれていき、その状態が続くと最終的には貫通孔全体が閉塞されるおそれがある。
上記特許文献1に記載の発明のように、貫通孔からの溶融物に水を噴射すると、貫通孔及びその周辺の温度も低下する傾向にある。貫通孔及びその周辺の温度の低下を防ぐため、本発明者らは貫通孔からの溶融物を加熱するためのバーナを貫通孔の出口側に配置した。バーナによる加熱は溶融物の温度低下を抑制する反面、溶融物がバーナの火炎の勢いにあおられて周辺に飛散する場合があることが判明した。そこで、本発明者らは、貫通孔周辺の壁面のうち、溶融物の飛散によって溶融物が付着するおそれがある領域を濡れ壁構造とすることを検討した。ここでいう濡れ壁構造とは、水で濡らすべき壁面の上方から壁面に水を供給し、この水が当該壁面上に水の膜を形成しながら下方に流れる構造を意味する。本発明者らの検討によると、濡れ壁構造を貫通孔周辺に採用する場合、壁を伝わる水によって熱が奪われるのを抑制する観点から、なるべく少ない水量で壁面上に水の膜を形成することが望ましい。
本発明は、少ない量の水で壁面を十分均一に濡らすのに有用な濡れ壁構造を提供することを目的とする。
本発明に係る濡れ壁構造は、廃棄物ガス化溶融炉から排出される溶融物が壁面に付着することを抑制するためのものである。この濡れ壁構造は、水で濡らすべき壁面を有する壁と、壁の上部において壁に沿って横方向に延びるように設けられた貯水部と、貯水部に水を供給する給水路と、貯水部の内側から外側にかけて貫通するように形成されており、壁面に沿って分散配置された複数の放水孔とを備える。
上記濡れ壁構造は、壁面に沿って分散配置された複数の放水孔から同時に且つ各放水孔からほぼ均等の量の水を排出することで、放水孔よりも下方の壁面上に水の膜を形成することができる。複数の放水孔から同時に且つほぼ均等に放水するには、例えば、給水路から貯水部に供給する単位時間あたりの水量と、複数の放水孔から排出される単位時間あたりの水の合計量とをバランスさせればよい。給水量の調整により、貯水部の水位を放水孔の形成された位置よりも高いレベルに維持することで、給水路からの水が貯水部のどの位置に供給されるかに関わらず、複数の放水孔から同時に且つ各放水孔からほぼ均等の量の水を壁面に向けて放水することができる。この場合、放水孔からの放水量は、放水孔の数、放水孔のサイズなどを適宜設定することによって調節すればよい。
複数の放水孔から同時に且つほぼ均等に放水することで、十分に少ない量の水で壁面を十分均一に濡らすことができる。仮に、特定の放水孔(例えば給水路に近い放水孔)から多量の水が排出され、残りの放水孔からは水がほとんど排出されないという状況では、当該残りの放水孔からも十分な量の水が排出されるように、給水路から供給する水量を増やす必要がある。
なお、上述のとおり、本発明は廃棄物ガス化溶融炉の連続出湯に関する検討に基づいて着想されたものであるが、本発明を適用する廃棄物ガス化溶融炉の操業形態は連続出湯に限定されず、間欠出湯であってもよい。
貯水部は、壁に接して形成されていることが好ましく、水で濡らすべき壁面上に設けられていることがより好ましい。例えば、濡らすべき壁面(表面)に接するように貯水部を形成したり、壁面の一部で貯水部を構成したりすることで、壁における濡らすべき壁面と反対側の壁面(裏面)側に設ける場合と比較して濡れ壁構造全体を比較的シンプルな構造とすることができる。
貯水部は、給水路から水が供給される第1の領域と、複数の放水孔が形成されている第2の領域と、貯水部内の空間を第1の領域と第2の領域とに仕切っており、壁面に沿って横方向に延びるように設けられた仕切り板とを有し、第1の領域に供給された水が仕切り板を超えて第2の領域に流れ込むように構成されていてもよい。かかる構成を採用することで、上述のように貯水部の水位を放水孔の形成された位置よりも高いレベルに必ずしも維持しなくてもよく、放水孔から放出する水量を調整しやすいという利点がある。すなわち、給水路から第1の領域への給水を開始すると、第1の領域の水位が徐々に高まる。第1の領域の水位が仕切り板の高さを超えると、第1の領域内の水がオーバーフローして第2の領域へと流れ込む。第1の領域内の水を第2の領域に向けてオーバーフローさせることで、給水路からの水が第1の領域のどの位置に供給されるかに関わらず、第2の領域に形成された複数の放水孔に同時に且つほぼ均等に水を供給することができる。その結果、複数の放水孔から同時に且つほぼ均等に壁面に向けて放水することができる。第1の領域に対して単位時間あたりに供給する水の量にもよるが、仕切り板の上辺は略水平方向に延びていることが好ましい。
上述のように貯水部が仕切り板によって仕切られている場合、貯水部は第1の領域と第2の領域とを導通する導通部を有してもよい。導通部を設けることで、第1の領域にスラッジなどの異物が蓄積することを防止することができる。例えば、給水路から供給される水に異物が含まれていても、その異物は水の流れによって第1の領域から第2の領域へと導通部を通じて移動し、その後、第2の領域に形成された放水孔から排出される。なお、貯水部が導通部を有する場合、第1の領域の水位が仕切り板の高さを超える状態を維持できるように、給水路から第1の領域に単位時間あたりに供給する水の量を、導通部を通じて第1の領域から第2の領域に単位時間あたりに流れる水の量よりも多くすればよい。
上記濡れ壁構造は、例えば、溶融物に熱を加えるバーナを備える以下の構成の廃棄物ガス化溶融炉に適用できる。すなわち、上記濡れ壁構造を適用するのに好適な廃棄物ガス化溶融炉は、炉底側に位置する溶融炉部と、溶融炉部の内面から外面にかけて形成されており、溶融物が排出される貫通孔と、溶融炉部の外に配置されており、貫通孔と連通する内部空間とを有する保圧室と、保圧室内に配置されており、貫通孔から排出される溶融物に熱を加えるバーナとを備える。この廃棄物ガス化溶融炉において、水で濡らすべき壁面は保圧室の内面の一部である。保圧室の内面の一部を濡れ壁とすることで、溶融物がバーナの火炎の勢いにあおられて周辺に飛散しても、溶融物又はその固形物が壁面に付着することを抑制できる。
上記廃棄物ガス化溶融炉における保圧室は、溶融炉部内の圧力よりも保圧室内の圧力を高く維持できるように構成されたものであってもよい。保圧室内の圧力を溶融炉部内の圧力よりも高く維持することで、貫通孔から保圧室側に溶融物を排出する一方、この溶融物の流れと対向するように保圧室内のガスを貫通孔から炉内へと流入させることができる。これにより、連続出湯による安定的な操業を十分に実現できる。その理由は以下のとおりである。まず、貫通孔から排出される溶融物をバーナの火炎で加熱することができる。これにより溶融物の粘性上昇を抑制でき、貫通孔の閉塞を抑制できる。更に、バーナから発生する燃焼ガスによって保圧室内の圧力を溶融炉部内の圧力よりも高い状態にすることができる。保圧室内の圧力を溶融炉部内の圧力よりも高くすることで、高温の炉内ガスが貫通孔を通じて炉外に排出されるのを防止するとともに、十分に高い温度の燃焼ガスを保圧室から溶融炉部へと貫通孔を通じて流入させることができる。その結果、溶融炉部内の温度(炉内温度)の低下を抑えることができ、炉内に導入すべき燃料の増加を十分に抑制できる。なお、上記保圧室内の圧力は例えば水封によって維持されるようにすればよい。
本発明によれば、少ない量の水で壁面を十分均一に濡らすのに有用な濡れ壁構造が提供される。
図1は本発明に係る廃棄物ガス化溶融炉の一実施形態を模式的に示す縦断面図である。 図2は溶融炉部における四本の羽口と、溶融物排出用の貫通孔との位置関係を模式的に示す横断面図である。 図3(a)は貫通孔の形状の一例を示す断面図であり、図3(b)は貫通孔の下側に固形物が堆積した状態を示す断面図である。 図4は溶融炉部の貫通孔を含む部分を拡大して示す縦断面図である。 図5は図1に示された濡れ壁構造の正面図である。 図6は図5に示すVI−VI線における断面図である。 図7は図6に示すVII−VII線における断面図である。 図8(a)〜(c)は給水路から貯水部に供給された水が放水孔から排出されるまでの過程を模式的に示す断面図である。 図9は溶融炉部における六本の羽口と、貫通孔との位置関係を模式的に示す横断面図である。 図10(a)〜(c)は貫通孔からの溶融物の排出が停止した状態から、安定的に溶融物が流れ出る状況にまで、溶融物の流動性が改善する様子を示す画像である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
<廃棄物ガス化溶融炉>
図1に示す廃棄物ガス化溶融炉10は、主な構成として、シャフト部1と、連通部2と、炭化火格子部3と、溶融炉部4と、保圧室6と、バーナ7と、水槽8と、濡れ壁構造20とを備える。シャフト部1は還元雰囲気下で廃棄物を乾燥させるとともに熱分解する。連通部2は、シャフト部1と溶融炉部4とを連結している。炭化火格子部3はシャフト部1からの廃棄物を更に熱分解して、廃棄物を炭化させる。溶融炉部4は炭化された廃棄物を燃焼させるとともに融解する。溶融炉部4で生じた溶融物Mは貫通孔4aを通じて保圧室6側に排出される。保圧室6は貫通孔4aの外側の空間の圧力を維持するためのものである。バーナ7は保圧室6内に配置されており、貫通孔4aの方向に向けられている。水槽8は保圧室6の下部を水封するとともに貫通孔4aから排出される溶融物Mを冷却する水を収容する。濡れ壁構造20は、貫通孔4aから排出される溶融物Mが保圧室6の内面に付着することを抑制するためものである。以下、各構成について説明する。
シャフト部1は、還元雰囲気下で廃棄物を乾燥させるとともに熱分解するためのものである。シャフト部1の横断面形状は、例えば円筒形である。シャフト部1の上部には、廃棄物を炉内に装入するための廃棄物装入口11が形成されている。シャフト部1の上部側には、廃棄物が乾燥・燃焼・熱分解する際に発生するガスを排出する炉内ガス排出口12が形成されている。シャフト部1の下端には開口部13が形成されており、自重でシャフト部1内を降下した廃棄物が開口部13から連通部2へと排出される。シャフト部1の内径及び高さは、炉の処理能力等に応じて適宜決定することができる。例えば、シャフト部1の高さは、シャフト部1内の廃棄物の充填高さを少なくとも下端面から1m以上で管理することのできる高さであることが好ましい。充填高さを1m以上に確保することによって、シャフト部1内において炉内ガスの吹き抜け現象を抑制できる。
連通部2は、シャフト部1の底部側開口部13と溶融炉部4の上部側開口部46とを連結している。連通部2の縦断面形状は、例えば矩形であり、その底面に沿って炭化火格子部3が配置されている。炭化火格子部3は、シャフト部1で乾燥及び熱分解された廃棄物を更に熱分解する。
連通部2の底面は、炭化火格子部3によって構成されている。炭化火格子部3は、上記のとおり、廃棄物を熱分解(乾留)するための機能のみならず、炭化した廃棄物を溶融炉部4に供給する供給装置としての機能をも有する。炭化火格子部3は、可動炭化火格子と固定炭化火格子とを交互に階段状又は傾斜状に組み合せることによって形成されている。各可動炭化火格子は、流体圧シリンダ等の駆動装置31a,31bによって横方向に一定のピッチで往復動するように構成されている(図1の両矢印参照)。かかる可動炭化火格子と固定炭化火格子との組み合わせによって炭化火格子部3の上の廃棄物を撹拌しながら上流側から下流側へ向けて押し出すことができる。なお、炭化火格子部3を固定炭化火格子のみで構成し、供給装置を別に設けてもよい。供給装置の一例として、プッシャーが挙げられる。
連通部2の底面は、複数の炭化火格子で構成されており、全体が平坦面であるわけではないが、全体としてはシャフト部1側から溶融炉部4側に向けて低くなるように傾斜している。
炭化火格子部3は、上段側の供給炭化火格子3Aと、下段側の乾留炭化火格子3Bとによる二段構造になっている。供給炭化火格子3Aは、シャフト部1の真下に位置しており、シャフト部1内に充填された廃棄物の荷重を直接的に受ける。供給炭化火格子3Aは、シャフト部1で乾燥及び熱分解された廃棄物の炭化が進むように当該廃棄物を更に熱分解するとともに乾留炭化火格子3Bへと押し出して供給する。炭化火格子部3の幅、特に供給炭化火格子3Aの幅は、シャフト部1の内径と同程度であることが好ましい。シャフト部1から炭化火格子部3に切り替わる箇所において炭化火格子部3の幅とシャフト部1の内径を同程度とすることによって、廃棄物の荷下がりを安定化できる。
乾留炭化火格子3Bは、供給炭化火格子3Aに隣接して設けられている。乾留炭化火格子3Bは、供給炭化火格子3Aからの廃棄物を更に熱分解して炭化物を生成し、炭化された廃棄物を溶融炉部4へと押し出して供給する。乾留炭化火格子3Bは、供給炭化火格子3Aと同様の構成を有する。なお、乾留炭化火格子3Bは、供給炭化火格子3Aと同じ幅であってもよく、異なる幅であってもよい。乾燥及び熱分解の進行に伴って廃棄物は減容化するので、シャフト部1の内径や連通部2の幅に比べて溶融炉部4の炉底内径は小さくてもよい。乾留炭化火格子3Bの幅は、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に小さくなるように設定されていてもよい。
供給炭化火格子3Aの可動炭化火格子は第1駆動装置31aによって駆動され、乾留炭化火格子3Bの可動炭化火格子は第2駆動装置31bによって駆動される。このように第1及び第2駆動装置31a、31bを互いに独立して設ければ、炭化火格子3A,3Bの駆動、停止及び駆動速度を独立して制御でき、その結果、炭化火格子3A,3Bによる廃棄物の供給速度も独立して制御できる。
炭化火格子部3は、炭化火格子間の隙間及び/又は炭化火格子に形成した送風孔(不図示)を通じて表面全体から空気を炉内に吹き込むことができる構成となっている。すなわち、炭化火格子部3は、廃棄物の乾燥及び熱分解用の空気を炉内に吹き込む機能も有する。
供給炭化火格子3A及び乾留炭化火格子3Bの裏面側には、炭化した廃棄物のうちの微細なものが炭化火格子間の隙間から落下した場合にそれを回収するための回収室32がそれぞれ配置されている。各回収室32には空気供給管L1を通じて送風装置33からそれぞれ所定量の空気を供給できるように構成されている。炭化火格子間の隙間及び/又は炭化火格子に形成した送風孔は、例えば400mmピッチ以下であることが好ましい。供給炭化火格子3A及び乾留炭化火格子3Bから供給する空気は、常温であってもよく、例えば200℃程度にまで予熱されていてもよい。空気の予熱は、例えば炉内ガス排出口12から排出される高温ガスとの熱交換によって行うことができる。
溶融炉部4は、炭化された廃棄物を燃焼させるとともに融解するためのものである。溶融炉部4は、上述のシャフト部1に対して横方向に炉芯をずらすように配置されている。シャフト部1及び溶融炉部4はそれぞれ鉛直方向に延びている。かかる構成を採用することにより、溶融炉部4に対してコークス(炭素系固形燃料)を直接導入することができる。溶融炉部4の横断面形状は、例えば円筒形である。溶融炉部4の上方には、コークス等を溶融炉部4内に装入するための副資材装入口41が設けられている。本実施形態において、副資材装入口41は連通部2の上面に形成されている(図1参照)。副資材装入口41から、コークスとともにコークス以外の炭素系可燃性物質を装入してもよく、塩基度調整剤としての石灰石やスラグを装入してもよい。なお、コークスは、廃棄物とともに廃棄物装入口11から装入してもよい。
図2に示すとおり、溶融炉部4の炉底側には、四本の羽口42a,42b,42c,42dが周方向に配置されている。羽口42a,42b,42c,42dから溶融炉部4内に燃焼用の酸素がそれぞれ供給される。なお、酸素は窒素等とともに空気又は酸素富化空気の状態で供給されてもよいし、高い純度の酸素が供給されてもよい。酸素富化空気とは、通常の空気よりも酸素濃度が高められた空気を意味する。溶融炉部4内に酸素を供給することで、廃棄物の熱分解残渣及びコークスCが燃焼する。溶融炉部4は羽口42a,42b,42c,42dよりも上側に複数の羽口(不図示)を更に備えてもよい。
溶融炉部4の炉底には、溶融物M(溶融スラグと溶融メタルとを含む混合物)を排出する貫通孔4aが形成されている。貫通孔4aは溶融炉部4の内面から外面にかけて形成されており、定常的に開放されている。これにより、貫通孔4aから溶融物Mを連続出湯させることができる。貫通孔4aから排出された溶融物Mは水槽8に収容された水に落下する。
貫通孔4aのサイズは、未燃焼(炉内に装入前)のコークスCが通過しないサイズに設定されていることが好ましい。かかる構成を採用することで、炉内に装入したコークスCが貫通孔4aから排出されるのを抑制できる(図2参照)。貫通孔4aの開口面積は使用するコークスCのサイズ、廃棄物ガス化溶融炉10の規模などに応じて設定すればよく、例えば50〜500cm程度であればよい。貫通孔4aの形状は特に制限はなく、円形、楕円形、矩形などであればよいが、図3(a)に示すように貫通孔4aの流路断面の形状は縦長であることが好ましい。これにより、図3(b)に示すように貫通孔4aの下側から溶融物Mの固形物Sが徐々に付着しても、貫通孔4aが閉塞されるまでの時間を十分長くすることができる。貫通孔4aの流路断面が縦長である場合、その横幅は未燃焼のコークスCが通過しない幅であればよい。貫通孔4aの下側に例えばV字状の溝4bを設け、溶融物Mが溝4bを流れるようにしてもよい(図3(a)参照)。
図4は、溶融炉部4の貫通孔4aを含む部分を拡大して示す縦断面図である。この図に示すように、貫通孔4aにおける溶融物Mが流れる下側面4cは溶融炉部4の内面から外面に向けて低くなるように傾斜していることが好ましい。これにより、貫通孔4aに溶融物Mが滞留することを抑制できる。また、貫通孔4aの内面側開口面積は外面側開口面積よりも大きいことが好ましい。例えば、貫通孔4aの上側は溶融炉部4の内面側に流路断面の拡張部4dを有してもよい。この場合、図4に示すように、貫通孔4aの途中までコークスCが配置されやすい。貫通孔4aのなるべく近くにおいて、高温のコークスCと溶融物Mとを固液接触させることで、高温に維持され且つ粘性が十分に低い溶融物Mを貫通孔4aから排出させることができる。
保圧室6は、貫通孔4aの外側の空間の圧力を維持するためのものである。図1に示すように保圧室6は溶融炉部4の外に配置されており、貫通孔4aと連通する内部空間6Sを有する。内部空間6Sは上下方向に延びる筒状部材6aと、筒状部材6aの上側開口を塞ぐ上板6bと、筒状部材6aの下側開口を水封する水面Wとによって形成されている。筒状部材6a及び上板6bは例えば鋼鉄製の板材からなる。筒状部材6aの縦断面形状は、例えば互いに離隔して配置された二つの半円と、これらの半円の端部同士を結ぶ二本の直線とによって画成される形状である。なお、本実施形態では水封によって保圧室6の圧力を維持する場合を例示したが、水封以外の圧力保持手段を採用してもよい。また、保圧室6内に酸素含有ガス(例えば空気)を供給する開口(不図示)を設けてもよい。この開口を通じて保圧室6内に酸素含有ガスを供給することで、保圧室6から溶融炉部4に流入させるガスの酸素濃度を調整してもよい。
内部空間6Sにはバーナ7が配置されている。具体的には、バーナ7は貫通孔4aに向けて配置されており、バーナ7の火炎によって貫通孔4a及びその周辺が加熱される。バーナ7の種類は特に制限はなく、プロパン、灯油などを燃料とするものを使用すればよい。保圧室6には内部空間6Sを保温するための断熱材6cが配置されている(水に浸る下部を除く)。保圧室6を構成する鋼板(鉄皮)の内面を断熱材6cで覆うことでバーナ7からの燃焼ガスの温度が低下することを抑制できる。これにより、保圧室6内の圧力が溶融炉部4内の圧力よりも高い場合には貫通孔4aを通じて高温の燃焼ガスを溶融炉部4内に流入させることができる。なお、貫通孔4aの出口周辺は、上述のとおり、バーナ7の火炎に曝される。このため、火炎に曝される部分を優れた耐熱性材料で構成しても比較的短い期間のうちに劣化するおそれがある。このため、当該部分を着脱自在の部材4eで構成し、定期的に交換できるようにしてもよい(図4参照)。また、溶融物Mが断熱材6cに付着するのを防止する観点から、断熱材6cの一部又は全部を覆うように鋼板6eを配置し、これによって保圧室6の内壁の一部又は全部を構成してもよい(図1参照)。
保圧室6は、内部空間6S内のガスを排出するための開口6dを有する。開口6dにはガス移送管L2が接続されている。開口6dから排出されたガスはガス移送管L2を介してガス燃焼炉9に導入される。ガス移送管L2の途中には弁Vが設けられている。弁Vの開度を調整することで、保圧室6内の圧力を調節することができる。例えば、通常時において、保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高く維持することにより、貫通孔4aを通じて保圧室6内のガスを溶融炉部4内に流入させることができる。これに対し、異常時において、保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも低くなるように、弁Vを操作してもよい。ここでいう異常時の具体例として、保圧室6内の圧力が何らかの原因で過度に高くなり、保圧室6の水封状態を維持できなくなったとき又はそのような事態になりそうなとき、溶融物Mの組成又は温度に起因して溶融物Mの粘性が上昇する傾向にあって溶融炉部4内からのガス流出とともに溶融物Mを強制的に排出させたいときなどが挙げられる。
溶融物Mの粘性の上昇は、例えば保圧室6に配置されたカメラ(不図示)の映像で把握することができる。保圧室6の圧力は圧力計(不図示)を監視すればよい。溶融炉部4と保圧室6の差圧を監視することで貫通孔4aの閉塞度合いを把握できるようにしてもよい。なお、廃棄物ガス化溶融炉10内の複数箇所の圧力(差圧)及び温度のデータ、並びに、溶融物Mの温度及び粘性のデータに基づき、廃棄物ガス化溶融炉10の運転を緊急停止できるようにしてもよい。
弁Vは、保圧室6内の圧力が閾値以上となったとき自動的に開くように構成されていてもよい。あるいは、保圧室6と溶融炉部4との差圧を一定に維持するように、弁Vの開度をPID制御してもよい。
水槽8は、保圧室6の下部を水封するとともに貫通孔4aから排出される溶融物Mを冷却する水を収容する。図1に示すとおり、筒状部材6aの下側開口が水面下まで延びている。貫通孔4aから落下した溶融物Mは水槽8内の水で急冷される。これによりスラグ(「水砕スラグ」とも称される。)とメタルとが得られる。水槽8の底部にはスラグ及びメタルを水槽8の外に搬送するコンベア8aが設置されている。なお、スラグ(水砕スラグ)は、溶融物の冷却によって得られる混合物を磁選処理して得られる非磁性成分である。
図5は濡れ壁構造20の正面図であり、図6は図5に示すVI−VI線における断面図である。濡れ壁構造20は、保圧室6の内面であって貫通孔4aよりも下の壁面6F(鋼板6eの表面)に水の膜Aを形成するためのものである。濡れ壁構造20は溶融炉部4の下方に設けられている(図1参照)。図5に示すとおり、保圧室6の壁面6F上に水の膜Aを形成することで、保圧室6内を落下する溶融物Mがバーナ7の火炎の勢いにあおられて周辺に飛散しても、溶融物M又はその固形物Sが壁面6Fに付着することを抑制できる。なお、本実施形態における壁面6Fは鉛直方向に延びている面であるが、壁面6Fは傾斜面であってもよい。
図5,6に示すとおり、濡れ壁構造20は、水で濡らすべき壁面6Fと、給水管(給水路)21と、貯水部22と、複数の放水孔28とを備える。壁面6Fは保圧室6を構成する筒状部材6aの一部(壁)の表面である。給水管21は貯水部22に水を供給するためのものである。貯水部22は、給水管21から供給された水を一旦貯留するためのものである。複数の放水孔28は、貯水部22の底部の上側から下側にかけて貫通するように形成されており、貯水部22内の水を壁面6Fに向けて放水するためのものである。以下、濡れ壁構造の各構成について説明する。
壁面6Fは飛散した溶融物Mが付着するおそれがある領域である。図6に示すように壁面6Fの横断面形状は半円状である。溶融物Mはこの半円のほぼ中心を落下する。保圧室6のサイズにもよるが、平面視において溶融物Mが落下する位置(貫通孔4aの出口)から壁面6Fまでの距離は、例えば15〜50cm(より好ましくは20〜40cm)程度である。
本実施形態においては、壁面6Fの上部に二つの濡れ壁構造20が横方向に並ぶように配置されている(図6参照)。平面視において、一つの濡れ壁構造20が約90°の範囲にわたって水の膜Aを形成し、同一の構成の二つの濡れ壁構造20によって約180°の範囲にわたって水の膜Aを形成できるように構成されている。
給水管21は壁面6Fを濡らす水を貯水部22に供給するためのものである。図6に示すように、給水管21は筒状部材6a、断熱材6c及び鋼板6eを貫通するように形成されている。給水管21の途中には、例えば流量調整弁(不図示)が設けられており、貯水部22への単位時間あたりの給水量を調節できるように構成されている。給水管21の先端側の開口21aは貯水部22の内面22aの近くまで延びている。給水管21から供給する水としては、例えば工業用水を使用できる。また、使用済みの水に対してフィルターによるろ過処理などを施した後、再度利用してもよい。給水管21からの単位時間あたりの給水量は、濡らすべき壁面6Fの面積、壁面6Fに対する溶融物Mの飛散量などに応じて設定すればよい。
貯水部22は、給水管21から供給された水を一旦貯留するためのものである。図5に示すとおり、貯水部22は、壁面6Fの上部において壁面6Fに沿って水平方向に延びるように設けられている。貯水部22を壁面6F上に設けたことで、例えば、筒状部材6aの外側に貯水部22を設ける場合と比較して濡れ壁構造全体を比較的シンプルな構造とすることができる。保圧室6内のダストなどが内部に侵入しないように、貯水部22はカバー23で覆われている。
図6に示すように、貯水部22の内部には仕切り板24が設けられている。仕切り板24によって貯水部22の内部は第1の領域R1と第2の領域R2に仕切られている。仕切り板24は壁面6Fに沿って水平方向に延びるように設けられている。ただし、仕切り板24は貯水部22の側面22bまで至っておらず、仕切り板24の端部と側面22bとの間に切欠き(導通部)24aが形成されている。貯水部22の両端にそれぞれ形成された切欠き24aはスラッジなどの異物が第1の領域R1に蓄積するのを防止するためのものである。例えば、給水管21から供給される水に異物が含まれていても、その異物は水の流れによって第1の領域R1から第2の領域R2へと切欠き24aを通じて移動し、その後、第2の領域R2に形成された放水孔28から排出される。切欠き24aの幅は、例えば2〜8mm程度とすることができる。図7に示すように、仕切り板24は貯水部22の底面22cから上方に向けて延びており、切欠き24a以外の部分は導通していない。
第1の領域R1は、給水管21から供給される水を一旦貯留する領域である。第1の領域R1は、貯水部22の内面22aと仕切り板24と底面22cとによって構成されている。一方、第2の領域R2は、第1の領域R1から流れ込んでくる水を複数の放水孔28から壁面6Fに向けて排出するための領域である。第2の領域R2は、壁面6Fと仕切り板24と底面22cとによって構成されている。
図6に示すように、第2の領域R2における底面22cには壁面6Fに沿って複数の放水孔28が略等間隔に形成されている。本実施形態においては、一つの濡れ壁構造20に計8個の放水孔28が第2の領域R2の底部を上側から下側にかけて貫通するように形成されている。各放水孔28の開口形状は略半円形である。すなわち、平面視において、各放水孔28は半円状の円弧と、壁面6Fとによって構成されている。放水孔28の一部を壁面6Fで構成することで、つまり放水孔28が壁面6Fに接していることで、放水孔28から放水される水が壁面6Fを伝わって流れやすい。
放水孔28の数、放水孔28のサイズ、第2の領域R2における開口率(第2の領域R2の底面の面積に対する複数の放水孔28の合計開口面積の比)は水で濡らすべき壁面6Fの面積、壁面6F上を流れる水の勢い(水の膜Aの厚さ)などに応じて設定すればよい。図6に示す半円状の放水孔28の半径は、例えば3〜15mm程度(より好ましくは4〜10mm程度)とすることができる。第2の領域R2における開口率は例えば5〜20%程度(より好ましくは8〜16%程度)とすることができる。
図8は給水管21から貯水部22に供給された水が放水孔28から排出されるまでの過程を模式的に示す断面図である。なお、図8において給水管21と放水孔28との位置関係が正確に図示されていないが、これは貯水部22における水の流れを分かりやすく説明するためである。
図8(a)は給水管21から第1の領域R1への水の供給を開示した状態を示す。第1の領域R1に継続して水が供給されると、図8(b)に示すように水位が上昇する。なお、給水管21から供給された水の一部は切欠き24aを通じて第2の領域R2に流れる(図6参照)。第1の領域R1の水位を上昇させるには給水管21から第1の領域R1に単位時間あたりに供給する水の量を、切欠き24aを通じて第1の領域R1から第2の領域R2に単位時間あたりに流れる水の量よりも多くすればよい。
図8(c)は第1の領域R1の水位が更に上昇した結果、水が仕切り板24を超えて第2の領域R2に流れ込んでいる状態を示す。第1の領域R1内の水を第2の領域R2に向けてオーバーフローさせることで、すなわち、仕切り板24の全体にわたって水が超えることで、給水管21からの水が第1の領域R1のどの位置に供給されるかに関わらず、第2の領域R2に形成された複数の放水孔28に同時に且つほぼ均等に水を供給することができる。その結果、複数の放水孔28から同時に且つほぼ均等に壁面6Fに向けて放水することができる。第1の領域R1に対して単位時間あたりに供給する水の量にもよるが、仕切り板24の上辺24bは略水平方向に延びていることが好ましい。上辺24bと水平方向とのなす角度は5°以下であることが好ましい。なお、第2の領域R2における貯水部22の底面22cは、略水平方向に延びているか、あるいは、壁面6Fに向けて傾斜していることが好ましい。
第1の領域R1から第2の領域R2に水がオーバーフローする状態を維持するには、給水管21から第1の領域R1に単位時間あたりに供給する水の量を、切欠き24aを通じて第1の領域R1から第2の領域R2に単位時間あたりに流れる水の量よりも多くした状態を維持すればよい。
上述のとおり、第1の領域R1は給水管21から供給される水を一旦貯留するためのものであり、換言すれば、給水管21からの供給される水の勢いを和らげるバッファの役割を果たすものである。仮に、給水管21からの水が給水管21近傍のみから第2の領域R2にオーバーフローしてしまったら、その位置に近い放水孔28から主に水が排出されてしまい、壁面6F全体を十分に濡らすことができない。このような状態になるのをより確実に避けるため、第1の領域R1は十分な容積を有していることが好ましく、例えば、第1の領域R1の容積は第2の領域R2の容積よりも大きいことが好ましい。具体的には、第1の領域R1の幅(図7における幅w1)は第2の領域R2の幅(図7における幅w2)よりも広いことが好ましい。第1の領域R1の幅は、例えば10〜30mm程度(より好ましくは12〜20mm程度)とすることができる。第2の領域R2の幅は例えば5〜20mm程度(より好ましくは7〜15mm程度)とすることができる。
上述のとおり、給水管21に近い放水孔28あるいは切欠き24aに近い放水孔28から多量の水が排出され、残りの放水孔28からは水がほとんど排出されないという状況では、当該残りの放水孔28からも十分な量の水が排出されるように、給水管21から供給する水量を増やす必要がある。本実施形態においては、給水管21からの単位時間あたりの給水量を調整し、これにより第1の領域R1内の水を第2の領域R2に向けてオーバーフローさせることで、壁面6Fに沿って分散配置された複数の放水孔28から同時に且つほぼ均等に壁面6Fに向けて放水することができる。各放水孔28から排出される水の量を十分に均一にできるため、十分に少ない量の水で壁面6Fを濡らすことができる。
本発明者らは、本実施形態と同様の構成を有する濡れ壁構造を実際に作製し、その評価試験を行った。その結果、濡らすべき壁面6Fの水平方向に沿った単位長さ(1m)あたり約10L/分の水が流れる量に相当する水量を給水管21から貯水部22に供給したところ、この水量で壁面6Fを十分均一に濡らせることができた。
なお、本実施形態においては、仕切り板24の端部と側面22bとの間に切欠き24aが形成された貯水部22を例示したが、仕切り板24が貯水部22の側面22bまで至った構成とし、切欠き24aは形成しなくてもよいし、切欠き24aの代わりに仕切り板24の下部(底面22c側)に第1の領域R1と第2の領域R2とを導通する導通孔(不図示)を形成してもよい。
本実施形態においては、仕切り板24によって第1の領域R1及び第2の領域R2に仕切られた貯水部22を例示したが、必ずしも貯水部22内に仕切り板24を設けなくてもよい。仕切り板24を採用しない場合、複数の放水孔28から同時に且つほぼ均等に放水するには、例えば、給水管21から貯水部22に供給する単位時間あたりの水量と、複数の放水孔28から排出される単位時間あたりの水の合計量とをバランスさせればよい。放水孔28が露出しないように貯水部22の水位を維持することで、給水管21からの水が貯水部22のどの位置に供給されるかに関わらず、複数の放水孔28から同時に且つほぼ均等に壁面6Fに向けて放水することができる。この場合、放水孔28からの放水量は、放水孔28の数、放水孔28のサイズなどを適宜設定することによって調節すればよい。
本実施形態においては、二つの濡れ壁構造20を水平方向に並べた構成を例示したが(図6参照)、一つの濡れ壁構造20を単独で配置してもよいし、三つ以上の濡れ壁構造20を並べて配置してもよい。また、本実施形態においては、横断面が半円状の壁面6Fに対して貯水部22を配置して濡れ壁構造20を構成する場合を例示したが、例えば、平坦な壁面に対して貯水部を配置してもよい。
<廃棄物処理方法>
次に、廃棄物ガス化溶融炉10を用いた廃棄物処理方法について説明する。処理すべき廃棄物を廃棄物装入口11からシャフト部1に装入する。廃棄物の種類は、特に限定されることはなく、一般廃棄物及び産業廃棄物のいずれであってもよい。シュレッダーダスト(ASR)、掘り起こしごみ、焼却灰などの単体又は混合物、あるいはこれらと可燃性ごみの混合物なども処理することが可能である。廃棄物によってシャフト部1内に廃棄物充填層100が形成される。廃棄物装入口11から乾留された廃棄物やチャーを廃棄物と共に投入してもよい。
シャフト部1内においては、炭化火格子部3及び溶融炉部4から吹き込まれた空気や炉内で発生したガスが廃棄物充填層100を通過するときの熱交換によって、廃棄物の乾燥及び熱分解が進行する。廃棄物の乾燥及び熱分解には廃棄物自身が発する熱も利用される。廃棄物は、シャフト部1内を徐々に降下し、供給炭化火格子3A上に到達し、供給炭化火格子3Aで更に熱分解され、その後、乾留炭化火格子3Bへと送られる。廃棄物は、乾留炭化火格子3Bで更に熱分解されて炭化が進行し、上部側開口部46から落下して溶融炉部4に供給される。
連通部2から炭化された廃棄物が溶融炉部4に供給される。炭化された廃棄物によって溶融炉部4内に充填層101が形成される。溶融炉部4内には副資材装入口41からコークスCと、必要に応じて塩基度調整剤(例えば石灰石)とを装入する。また、羽口42a,42b,42c,42dから酸素富化空気を吹き込むことによってコークスC及び廃棄物の固定炭素を燃焼させる。これにより炉底に高温のコークスベッドBcが形成され、その熱で廃棄物に含まれる灰分や不燃成分を溶融する。一方、炉内ガス排出口12から排出された高温ガスは、ボイラー等の装置で廃熱を回収した後、無害化処理をして放出する。なお、溶融炉部4内にコークスベッドBcを形成することで、溶融炉部4内を高温状態(例えば1700℃超)に安定的に維持できる。
操業時における溶融炉部4内の廃棄物の充填高さは、羽口42a,42b,42c,42dより上方向+0.5m〜炭化火格子部3の最下端部までの範囲内に維持することが好ましい。この範囲内に維持することによって、充填層101の層厚が薄くなることに起因する炉底からの酸素リークを抑制することができる。更に、充填し過ぎに起因する炭化火格子部3の熱分解効率低下や溶融炉部4内における物流停滞の発生を抑制できる。
溶融炉部4内の廃棄物の充填高さの制御は、炭化火格子部3が溶融炉部4に廃棄物を供給する速度を調節することによって行うことができる。例えば、溶融炉部4に充填層101の高さを検知するためのセンサー(不図示)を配置し、センサーが検知する充填層101の高さに基づいて炭化火格子部3の供給速度を制御してもよい。あるいは、例えばオペレーターが充填高さを監視し、監視結果に基づいて供給速度を制御してもよい。
供給炭化火格子3Aの供給速度(V1)と乾留炭化火格子3Bの供給速度(V2)は、相対的に異なるように設定してもよく、あるいは同じに設定してもよい。供給速度を相対的に異なるように設定する場合、乾留炭化火格子3Bの供給速度(V2)が供給炭化火格子3Aの供給速度(V1)よりも大きくなるように設定することが好ましい。更に、乾留炭化火格子3Bの供給速度(V2)を一定にして、供給炭化火格子3Aの供給速度(V1)を可変制御することがより好ましい。供給速度V2を供給速度V1よりも大きくすることで、供給炭化火格子3Aから送られてきた廃棄物が乾留炭化火格子3B上において比較的薄い層をなすように広げることができる。これにより、廃棄物の層の全体に乾留炭化火格子3Bからの熱を加えることができ、廃棄物全体の炭化状態を十分に良好にできる。
廃棄物の装入は、廃棄物装入口11のみからではなく、例えば副資材装入口41から装入してもよい。例えば、水分量が多い廃棄物は廃棄物装入口11から装入して、シャフト部1及び炭化火格子部3における処理を経た後に溶融炉部4に供給することが好ましい。他方、灰分量が多くて水分が少ない廃棄物は、副資材装入口41から装入することで、シャフト部1及び炭化火格子部3における乾燥及び熱分解の負荷を軽減できる。水分量が多い廃棄物の一例として汚泥が挙げられ、灰分量が多い廃棄物の一例として焼却灰が挙げられる。なお、廃棄物の装入口は廃棄物装入口11及び副資材装入口41以外の場所にも設けてもよい。廃棄物の性状に基づいて廃棄物を炉内に装入する位置を適宜変えることで、結果として炉全体の負荷を軽減できる。
次に、貫通孔4aを定常的に開放した状態で廃棄物ガス化溶融炉10を運転する場合に関し、以下の四種類の運転方法について具体的に説明する。これらの運転方法によれば、連続出湯による安定的な操業を十分に実現できる。これらの運転方法の各工程及び条件は必要に応じて適宜組み合わせてもよい。
1.貫通孔4aにおけるガス流れ制御
2.バーナ7に供給する酸素量調整
3.羽口42a,42b,42c,42dから供給する酸素量の調整
4.副資材装入口41から必要に応じてスラグを装入
1.貫通孔4aにおけるガス流れ制御
この運転方法は以下の工程を含む。
貫通孔4aから保圧室6側に溶融物Mを排出すること。
燃料と、酸素とをバーナ7に供給すること。
酸素の存在下、バーナ7において燃料を燃焼させること。
保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高く維持することにより、貫通孔4aを通じて保圧室6内のガスを溶融炉部4内に流入させること。
この運転方法によれば、貫通孔4aから排出される溶融物Mをバーナ7の火炎で加熱することができる。これにより溶融物Mの粘性上昇を抑制でき、貫通孔4aの閉塞を抑制できる。更に、バーナ7から発生する燃焼ガスによって保圧室6内の圧力(例えば1.5〜2.5kPa(ゲージ圧))を溶融炉部4内の圧力(例えば1.0〜2.0kPa(ゲージ圧))よりも高い状態にすることができる。これにより貫通孔4aを通じて燃焼ガスが溶融炉部4に流入する。すなわち、保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高くすることで、高温の炉内ガスが貫通孔4aを通じて炉外に排出されるのを防止するとともに、十分に高い温度の燃焼ガスを保圧室6から溶融炉部4へと貫通孔4aを通じて流入させることができる。その結果、溶融炉部4内の温度(炉内温度)の低下を抑えることができ、炉内に導入すべき燃料の増加を十分に抑制できる。なお、貫通孔4aを通過する燃焼ガスの温度が1200℃以上(より好ましくは1300℃程度)であれば、貫通孔4a周辺で溶融物Mが固化することを十分に抑制できる。溶融物Mに含まれるスラグの融点はその組成に依存するが1175℃程度である。
貫通孔4aにおける溶融物Mと燃焼ガスの流れに着目すると、貫通孔4aにおいて溶融物Mとガスは対向流となっている。貫通孔4aから溶融物Mを安定的に排出するには、貫通孔4a内において溶融物Mの流れが燃焼ガスの流れと十分に分離していることが好ましい。つまり、貫通孔4a内の流体の流れを対向気液二相流とみなした場合、溶融物Mが分離流(層状流又は波状流)を形成していることが好ましい。かかる観点から、貫通孔4aの開口面積、コークスCのサイズ及び保圧室6から溶融炉部4に流入するガス流量などを設定すればよい。例えば、貫通孔4aを通過する燃焼ガスの流速は好ましくは0〜20Bm/sであり、より好ましくは3〜10Bm/sである。なお、流速の単位「Bm/s」はその場の温度及び圧力条件下での流速を意味する。
なお、本実施形態においては、溶融炉部4内にコークスベッドBcを形成する場合を例示したが、この運転方法は溶融炉部4にコークスベッドBcが形成されない条件で実施してもよい。
2.バーナに供給する酸素量調整
この運転方法は以下の工程を含む。
溶融炉部4にコークスベッドBcを形成すること。
貫通孔4aから保圧室6側に溶融物Mを排出すること。
燃料と、理論酸素量よりも多い酸素とをバーナ7に供給すること。
理論酸素量よりも酸素が多い条件下、バーナ7において燃料を燃焼させること。
保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高く維持することにより、貫通孔4aを通じて保圧室6内の酸素含有ガスを溶融炉部4内に流入させること。
この運転方法によれば、貫通孔4aから排出される溶融物Mをバーナ7の火炎で加熱することができる。これにより溶融物Mの粘性上昇を抑制でき、貫通孔4aの閉塞を抑制できる。更に、バーナ7から発生する燃焼ガスによって保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高い状態にすることができる。これにより貫通孔4aを通じて燃焼ガスが溶融炉部4に流入する。すなわち、保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高くすることで、高温の炉内ガスが貫通孔4aを通じて炉外に排出されるのを防止するとともに、十分に高い温度の燃焼ガスを保圧室6から溶融炉部4へと貫通孔4aを通じて流入させることができる。その結果、溶融炉部4内の温度(炉内温度)の低下を抑えることができ、炉内に導入すべき燃料の増加を十分に抑制できる。
更に、この運転方法においては、燃料と、理論酸素量よりも多い酸素とをバーナ7に供給する。このため、バーナ7の燃焼ガスには酸素が残存している。貫通孔4aを通じて溶融炉部4内に流入する燃焼ガス(酸素含有ガス)は貫通孔4aの近くに位置するコークスCの燃焼に寄与する。特に、貫通孔4a付近において、高温のコークスCと溶融物Mとを固液接触させることで、高温に維持されたままの溶融物Mを貫通孔4aから排出させることができる。
この運転方法は、燃料に対する酸素の量を一時的に増やすことを更に含んでもよい。これにより、燃焼ガスに残存する酸素量を一時的に増やすことができる。このような操作を実施することにより、貫通孔4aを通じて溶融炉部4内に流入するガスの酸素濃度が上昇する。これにより、溶融炉部4内の貫通孔4a付近のコークスCの燃焼が促進され、その結果、当該領域の温度を一時的に上昇させることができる。これは溶融物Mの組成又は温度低下に起因して溶融物の粘性が上昇する傾向にあり、貫通孔周りに固形分の付着が認められる場合などにおいて、その改善策として有効である。
本発明者らは、図1に示す廃棄物ガス化溶融炉10と同様の構成を有する廃棄物ガス化溶融炉において以下の評価試験を行った。すなわち、理論酸素量よりも多い酸素(バーナ酸素比1超)でバーナを運転している状態から、バーナに供給する酸素量を更に増やしてバーナを運転した。その結果、バーナ酸素比を増やすとほぼ同時に、貫通孔から見えるコークスが赤熱する様子が確認できた。これに伴って溶融物の粘性が低くなること、換言すれば流動性の改善効果が得られることが確認された。なお、ここでいうバーナ酸素比とは、バーナに供給される燃料が完全燃焼する必要な酸素量(理論酸素量)Otと、バーナに供給した酸素量Osとの比(Os/Ot)を意味する。
3.羽口42a,42b,42c,42dから供給する酸素量の調整
この運転方法は以下の工程を含む。
溶融炉部4にコークスベッドBcを形成すること。
羽口42a,42b,42c,42dから溶融炉部4内にそれぞれ酸素を供給すること。
貫通孔4aから保圧室6側に溶融物Mを排出すること。
燃料と、酸素とをバーナ7に供給すること。
酸素の存在下、バーナ7において燃料を燃焼させること。
保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高く維持することにより、貫通孔4aを通じてバーナ7の燃焼ガスを溶融炉部4内に流入させること。
この運転方法においては、貫通孔4aの最も近くにある羽口42a,42dから溶融炉部4内に単位時間あたりに供給する酸素量Sを、羽口42a,42dよりも貫通孔4aからの距離が遠い羽口42b,42cから溶融炉部4内に単位時間あたりに供給する酸素量Sよりも少なくする。
この運転方法によれば、貫通孔4aから排出される溶融物Mをバーナ7の火炎で加熱することができる。これにより溶融物Mの粘性上昇を抑制でき、貫通孔4aの閉塞を抑制できる。更に、バーナ7から発生する燃焼ガスによって保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高い状態にすることができる。これにより貫通孔4aを通じて燃焼ガスが溶融炉部4に流入する。すなわち、保圧室6内の圧力を溶融炉部4内の圧力よりも高くすることで、高温の炉内ガスが貫通孔4aを通じて炉外に排出されるのを防止するとともに、十分に高い温度の燃焼ガスを保圧室6から溶融炉部4へと貫通孔4aを通じて流入させることができる。その結果、溶融炉部4内の温度(炉内温度)の低下を抑えることができ、炉内に導入すべき燃料の増加を十分に抑制できる。
更に、貫通孔4aの近くにある羽口42a,42dから溶融炉部4内に供給する酸素量Sを相対的に少なくすることで、貫通孔4aの近くのコークスCが過剰に消費されるのを抑制でき、これはコークスベッドBcの厚さを十分均一に維持するのに有用である。すなわち、貫通孔4aの近くのコークスCは、貫通孔4aから流入するバーナ7の燃焼ガスによって消費されるため、他の領域にあるコークスCと比較して消費されやすいからである。バーナ7の燃焼ガスに含まれ得るガス種と、コークスCを構成する炭素との反応式は以下のとおりである。
C+O→CO …(1)
2C+O→2CO …(2)
C+CO→2CO …(3)
C+HO→H+CO …(4)
羽口42a,42b,42c,42dから単位時間あたりに供給する酸素量は、コークスベッドBcを構成するコークスCがなるべく均一に消費されるように(コークスベッドBcの厚さが不均一にならないように)、それぞれ設定すればよい。図2を参照しながら説明すると、溶融炉部4の横断面において、貫通孔4aを含む側(図2の右側)と、貫通孔4aを含まない側(図2の左側)の二つの領域に溶融炉部4を分け、これら二つの領域における単位時間あたりのコークス消費量をバランスさせればよい。まず、コークス全体の単位時間あたりの消費量は溶融炉部4の炉底において必要とされる温度に基づいて設定される。コークスベッドBc全体の単位時間あたりのコークス消費量は溶融炉部4へのコークス装入量とバランスしている。コークスベッドBc全体の単位時間あたりのコークス消費量を100とすると、羽口42b,42cからそれぞれ供給される酸素によって単位時間あたり25のコークスが消費されるようにすればよい。次に、貫通孔4aから流れ込む燃焼ガス量及びその組成は、貫通孔4a周辺の加熱に必要な熱量に基づいて設定される。燃焼ガス量及びその組成が決まれば、上記反応式(1)〜(4)に基づいて燃焼ガスによって単位時間あたりに消費されるコークス消費量を求めることができる。仮にそのコークス消費量が20であったとすると、残りの二つの羽口42a,42dからの酸素によって単位時間あたりに消費すべきコークスの量は30である。すると、この場合、羽口42a,42dからの酸素によって単位時間あたりに消費すべきコークスの量はそれぞれ15である。
本発明者らは、溶融炉部の炉底付近に二本の羽口(貫通孔に近い羽口及び貫通孔から遠い羽口)を備えることの他は、図1に示す廃棄物ガス化溶融炉10と同様の構成を有する廃棄物ガス化溶融炉において以下の評価試験を行った。すなわち、貫通孔から流入する燃焼ガスによるコークスの消費を考慮し、貫通孔に近い羽口からの酸素供給量を貫通孔から遠い羽口からの酸素供給量よりも少なくして廃棄物ガス化溶融炉を500時間にわたって操業した。その結果、貫通孔4aから溶融物を安定的に連続的に排出させることができ、また、コークスベッドの厚さを十分均一に維持することができた(コークスベッドの厚さが不均一になっていることを示す兆候は認められなかった。)。バーナの燃料としてプロパンガスを使用し、理論酸素量よりも多い酸素(バーナ酸素比1超)でバーナを運転した。上記反応式(1)〜(4)の反応によるコークスの消費量を考慮し、貫通孔に近い羽口からの酸素供給量を貫通孔から遠い羽口からの酸素供給量よりも減らした。
なお、羽口の本数は四本に限定されず、二本以上であればよい。図9は六本の羽口42a〜42fが設けられた溶融炉部4を模式的に示す横断面図である。図9に示す溶融炉部4の水平方向の断面形状は楕円形である。溶融炉部4の形状を楕円形とすることで、円形の場合と比較して羽口42a〜42fからそれぞれ供給される酸素によって生じる熱が溶融炉部4の中央にまで届きやすいという利点がある。
この運転方法において、燃料と、理論酸素量よりも多い酸素とをバーナ7に供給した場合、バーナ7の燃焼ガスには酸素が残存している。貫通孔4aを通じて溶融炉部4内に流入する燃焼ガス(酸素含有ガス)は貫通孔4aの近くに位置するコークスCの燃焼に寄与する(上記反応式(1)及び(2))。特に、貫通孔4a付近において、高温のコークスCと溶融物Mとを固液接触させることで、高温に維持されたまま溶融物Mを貫通孔4aから排出させることができる。なお、この場合も上記反応式(3)及び(4)の反応によっても貫通孔4aの近くのコークスCが消費される。
この運転方法において、燃料と、理論酸素量よりも少ない酸素とをバーナ7に供給した場合、バーナ7の燃焼ガスには酸素がほとんど残存しない。この場合は主に上記反応式(3)及び(4)の反応により、貫通孔4aの近くのコークスCが消費される。貫通孔4aを通じて溶融炉部4内に流入する燃焼ガス(酸素をほとんど含まない燃焼ガス)は、コークスCの燃焼に寄与しないものの、当該燃焼ガスは十分に高温であるため、溶融炉部4内の温度(炉内温度)の維持に寄与する。
4.副資材装入口41から必要に応じてスラグを装入
この運転方法は以下の工程を含む。
貫通孔4aから炉外に溶融物Mを排出すること。
貫通孔4aから排出される溶融物Mの流れを監視すること。
廃棄物のガス化溶融処理によって得られたスラグを溶融物Mの流動性の低下に応じて副資材装入口41から溶融炉部4に装入すること。
この運転方法によれば、廃棄物のガス化溶融処理によって得られたスラグを副資材装入口41から溶融炉部4に装入することで、貫通孔4aから排出される溶融物Mの流動性の悪化を十分迅速に改善できる。その理由は以下のとおりである。第一に、溶融物Mから得られるスラグをサンプリングし、その塩基度を実際に測定する必要がないからである。第二に、廃棄物ガス化溶融炉10によれば、上記スラグを副資材装入口41から溶融炉部4に直接供給することができるからである。溶融物Mの流動性の悪化を十分迅速に改善することで、溶融物Mが貫通孔4aから安定的に排出される状態を十分に維持することができる。
溶融物Mの流れの監視は、例えば、貫通孔4aの外側(保圧室6側)にビデオカメラ(不図示)を設置し、その画像によって貫通孔4a及びその周辺の溶融物Mの流れを作業者が観察することによって実施できる。より具体的には、溶融物Mが貫通孔4a内を流れる様子(図6参照)や貫通孔4aの出口から部材4eの表面上を流れ落ちる様子を観察対象とすればよい。
溶融物Mの流れの監視により、通常時と比較して溶融物Mの流動性が低下したと判断されたとき、副資材装入口41から溶融炉部4にスラグを装入する。ここでいう「通常時」とは貫通孔4aから安定的に溶融物Mが排出されている状況を意味する。他方、「溶融物Mの流動性が低下した」と判断されるべき状況の具体例としては以下のものが挙げられる。
・貫通孔4aから溶融物Mが一定の時間以上(例えば300秒以上)にわたって排出されないとき。
・貫通孔4aから溶融物Mが排出されているものの、通常時と比較して貫通孔4a付近の壁面上を流れ落ちる溶融物Mの速度が遅いとき。
・溶融炉部4内の圧力と保圧室6内の圧力との差圧が拡大する傾向にあるとき(貫通孔4aが閉塞される傾向にあるとき)。
なお、スラグを実際に装入するか否かは、上記画像を観察している作業者が判断してもよいし、画像処理データや操業データ(例えば差圧データ)に基づいて自動的に判断してもよい。
副資材装入口41から装入するスラグは、廃棄物のガス化溶融処理によって得られたものであればよく、廃棄物ガス化溶融炉10の水槽8から回収された水砕スラグであってもよいし、他の廃棄物ガス化溶融炉で得られたスラグであってもよい。溶融炉部4において溶融物Mの流動性改善効果を十分に迅速に奏する観点から、スラグは粉状又は粒状であることが好ましい。溶融炉部4において、溶融物Mの流動性悪化の原因を十分に希釈化する観点から、副資材装入口41から装入するスラグの塩基度は0.8〜1.0であることが好ましい。ここでいう「塩基度」とはスラグに含まれるCaOとSiOとの質量比(CaO/SiO)であり、蛍光X線分析計による元素分析によって求めることができる。
この運転方法においては、溶融物Mの流動性の悪化が認められたとき、上記スラグを副資材装入口41から溶融炉部4に即座に装入すればよい。溶融炉部4内の温度において適した流動性を有する溶融スラグとなるスラグを装入することで、溶融炉部4における溶融スラグの塩基度を流動に適した範囲に戻すことができる。すなわち、溶融炉部4内の溶融スラグの塩基度が設定範囲の下限値(例えば0.8)よりも低ければこれを高めることができ、一方、溶融炉部内の溶融スラグの塩基度が設定範囲の上限値(例えば1.0)よりも高ければこれを低くすることができる。なお、この運転方法においては、溶融炉部4内の溶融スラグの塩基度を所定の範囲とすることが目的ではなく、溶融炉部4内の溶融スラグの流動性が悪化したときに、これを迅速に改善することである。これに対し、溶融スラグの塩基度の季節的変動については、スラグの塩基度を定期的に測定し、測定結果に基づいて塩基度調整剤(例えば石灰石)の装入量を調整することによって対処すればよい。
副資材装入口41から溶融炉部4に装入する上記スラグの量は特に制限はない。貫通孔4aから排出される溶融物Mが流れる状態の監視を続け、流動性の改善効果が不十分であれば、再度、上記スラグを装入すればよい。上述のとおり、副資材装入口41から上記スラグを溶融炉部4に直接供給でき、これにより流動性の改善効果が短時間(例えば3分程度)のうちに奏される。従って、上記スラグの供給後、流動性の改善効果が十分であるか否かを十分短時間のうちに判断でき、スラグを再度供給すべきか否かを判断することができる。なお、溶融炉部4に供給するスラグは適正な塩基度を有するため、これを溶融炉部4に過剰に供給したとしても、廃棄物ガス化溶融炉10の安定的な操業に影響しない。具体的には、温度が低いスラグが過剰に供給されることに伴って溶融炉部4におけるコークスCの消費量が一時的に増加する程度の影響にとどめることができる。従って、実際には溶融物Mの流動性が低下していなくても、そのような兆候が認められたときに副資材装入口41から溶融炉部4に上記スラグを供給してもよい。
本発明者らは、図1に示す廃棄物ガス化溶融炉10と同様の廃棄物ガス化溶融炉において、スラグによる溶融物流動性改善について評価試験を行った。この評価試験によると、一回につき10kgのスラグ(塩基度0.8〜1.0)を1〜3回にわたって副資材装入口から溶融炉部に装入したところ、溶融物の流動性改善効果が得られた。なお、当該廃棄物ガス化溶融炉の副資材装入口からは、15分おきに10kg程度のコークスと、15分おきに10kgの石灰石(塩基度調整剤)とを装入しながら運転を行った。
図10は保圧室側から貫通孔を撮影した画像である。図10(a)は貫通孔からの溶融物の排出が停止した状態である。この画像を撮影した時点で副資材装入口から溶融炉部へのスラグの供給を開始した。図10(b)はスラグ供給開始から約1分後の画像であり、図10(c)はスラグ供給開始から約3分後の画像である。これらの画像から分かるとおり、スラグ供給開始から約3分後には溶融物の流動性改善効果が得られた。
本実施形態においては、連続出湯の操業形態において上記スラグを溶融炉部4に供給する場合を例示したが、間欠出湯の操業形態において溶融物の流動性が不十分であると認められたときに上記スラグを溶融炉部4に供給してもよい。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、上記実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
例えば、上記実施形態においては、シャフト部1と、溶融炉部4と、これらを連結する連通部2とを備えた廃棄物ガス化溶融炉10(「低炭素型シャフト炉」とも称される。)を例示したが、本発明は、連通部2を具備せず、溶融炉部4の真上にシャフト部1が配置された廃棄物ガス化溶融炉(「シャフト炉式ガス化溶融炉」とも称される。)に適用してもよい。なお、低炭素型シャフト炉はシャフト炉式ガス化溶融炉と比較して使用するコークスの量を削減できるとともに、溶融炉部4の圧力変動が小さいという利点がある。
1…シャフト部、2…連通部、3…炭化火格子部、4…溶融炉部、4a…貫通孔、6…保圧室、6a…筒状部材(壁)、6F…壁面、6S…内部空間、7…バーナ、10…廃棄物ガス化溶融炉、20…濡れ壁構造、21…給水管(給水路)、22…貯水部、24…仕切り板、24a…切欠き(導通部)、28…放水孔、M…溶融物、R1…第1の領域、R2…第2の領域。

Claims (6)

  1. 廃棄物ガス化溶融炉から排出される溶融物が壁面に付着することを抑制するための濡れ壁構造であって、
    水で濡らすべき壁面を有する壁と、
    前記壁の上部において前記壁に沿って横方向に延びるように設けられた貯水部と、
    前記貯水部に水を供給する給水路と、
    前記貯水部の内側から外側にかけて貫通するように形成されており、前記壁面に沿って分散配置された複数の放水孔と、
    を備える濡れ壁構造。
  2. 前記貯水部は前記壁面上に設けられている、請求項1に記載の濡れ壁構造。
  3. 前記貯水部は、
    前記給水路から水が供給される第1の領域と、
    前記複数の放水孔が形成されている第2の領域と、
    前記貯水部内の空間を前記第1の領域と前記第2の領域とに仕切っており、前記壁面に沿って横方向に延びるように設けられた仕切り板と、
    を有し、
    前記第1の領域に供給された水が前記仕切り板を超えて前記第2の領域に流れ込むように構成されている、請求項1又は2に記載の濡れ壁構造。
  4. 前記貯水部は、前記第1の領域と前記第2の領域とを導通する導通部を有する、請求項3に記載の濡れ壁構造。
  5. 前記廃棄物ガス化溶融炉は、
    炉底側に位置する溶融炉部と、
    前記溶融炉部の内面から外面にかけて形成されており、前記溶融物が排出される貫通孔と、
    前記溶融炉部の外に配置されており、前記貫通孔と連通する内部空間とを有する保圧室と、
    前記保圧室内に配置されており、前記貫通孔から排出される前記溶融物に熱を加えるバーナと、
    を備え、
    前記壁面は、前記保圧室の内面の一部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の濡れ壁構造。
  6. 前記保圧室は、前記溶融炉部内の圧力よりも前記保圧室内の圧力を高く維持できるように構成されている、請求項5に記載の濡れ壁構造。
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