従来、定電流を出力する電源として、定電流制御電源がある。この定電流制御電源は、例えば、発光ダイオードを点灯させるために用いられる。
定電流制御電源から出力される定電流を制御する方法として、リニア制御とPWM制御とを組み合わせる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
図9は、リニア制御とPWM制御との関係を示す図である。図9において、縦軸は、定電流制御電源の出力電流の平均を示し、横軸は、定電流制御電源の出力電流により点灯する発光ダイオードの調光率を示す。
調光率をX%以上にする場合(Xは、0<X<100を満たす値)には、リニア制御により、上述の出力電流を制御する。この場合、PWM制御を行うためのPWM信号のデューティを、100%で維持する。
一方、調光率をX%未満にする場合には、リニア制御およびPWM制御により、上述の出力電流を制御する。この場合、リニア制御において、例えば出力電流の最大値を一定に制御し、PWM制御において、PWM制御を行うためのPWM信号のデューティを制御する。
しかしながら、上述のPWM制御では、出力電流のオンオフが定期的に繰り返されるため、ノイズの増加や、急峻な電流変化による部品の音なりや、オフ期間に定電流制御電源が停止することによる光波高率の悪化が発生してしまう場合があった。なお、光波高率の悪化に対しては、定電流制御電源の出力に電解コンデンサといった大容量のキャパシタを設けることで、対策できる。
また、リニア制御において出力電流の最大値を一定に制御すると、入力電圧により出力電流が変化してしまう。また、出力電流の供給される負荷が発光ダイオードである場合には、発光ダイオードの順方向電圧によっても、出力電流が変化してしまう。そこで、出力電流の最大値を一定に制御する代わりに、図10の定電流制御電源100のように平均電流モードで動作させることが考えられる。
[定電流制御電源100の構成]
図10は、従来例に係る定電流制御電源100の回路図である。定電流制御電源100は、交流電源Vinから入力される交流電力を用いて、直列接続された複数の発光ダイオードLED1〜LEDn(nは、n≧3を満たす整数)に定電流を出力する。この定電流制御電源100は、整流部RFと、キャパシタC1、C2と、ダイオードDと、インダクタLと、NチャネルMOSFETで構成されるスイッチ素子Qと、抵抗Rと、制御部110と、制御回路120と、を備える。
整流部RFの2つの入力端子には、交流電源Vinの両端が接続される。整流部RFの第1の出力端子には、キャパシタC1の一方の電極と、ダイオードDのカソードと、キャパシタC2の一方の電極と、発光ダイオードLED1のアノードと、が接続される。発光ダイオードLEDnのカソードには、キャパシタC2の他方の電極と、インダクタLの一端と、が接続される。インダクタLの他端には、ダイオードDのアノードと、スイッチ素子Qのドレインと、が接続される。
スイッチ素子Qのソースには、抵抗Rを介して定電流制御電源100の基準電位点に相当する整流部RFの第2の出力端子が接続されるとともに、制御回路120が接続される。この制御回路120は、スイッチ素子Qのゲートと、整流部RFの第2の出力端子と、制御部110と、にも接続される。整流部RFの第2の出力端子には、キャパシタC1の他方の電極も接続される。
[定電流制御電源100の動作]
以上の構成を備える定電流制御電源100は、制御回路120によりスイッチ素子Qを制御して、定電流制御を行う。具体的には、制御部110から出力されるPWM信号と、スイッチ素子Qのドレイン電流の平均値と、に応じて制御回路120によりスイッチ素子Qを制御して、定電流を出力する。
制御部110は、指定された調光率に応じた周波数およびデューティのPWM信号を生成し、制御回路120に出力する。
制御回路120は、制御部110から出力されたPWM信号に応じて、スイッチ素子Qをスイッチングさせる。
具体的には、まず、制御回路120が、PWM信号の立ち上がりに応じてスイッチ素子QのゲートにHレベルのゲート信号を印加して、スイッチ素子Qをオン状態にしたとする。すると、交流電源Vinから入力された交流電力が整流部RFにより整流されて、第2の出力端子を基準とした直流電力が第1の出力端子から出力される。整流部RFの第1の出力端子から出力される直流電流は、発光ダイオードLED1〜LEDnと、インダクタLの一端から他端と、スイッチ素子Qと、抵抗Rと、を介して、整流部RFの第2の出力端子に流れる。これによれば、発光ダイオードLED1〜LEDnに電流が流れるので、これら発光ダイオードLED1〜LEDnが点灯する。また、インダクタLの一端から他端に電流が流れることで、インダクタLにエネルギーが蓄えられることとなる。
上述のスイッチ素子Qに流れる電流、すなわちスイッチ素子Qのドレイン電流は、抵抗Rに流れることで電圧変換され、制御回路120に入力される。ここで、スイッチ素子Qをオン状態にしておくと、インダクタLの一端から他端に流れる電流は、時間が経過するに従って増加する。また、スイッチ素子Qがオン状態である期間では、スイッチ素子Qのドレイン電流は、インダクタLの一端から他端に流れる電流、すなわち定電流制御電源100の出力電流に等しい。そして、スイッチ素子Qのドレイン電流を抵抗Rで電圧変換したものは、スイッチ素子Qのドレイン電流が増加するに従って高くなる。以上より、スイッチ素子Qがオン状態である期間では、制御回路120に入力される上述の電圧は、時間が経過するに従って上昇する。
次に、制御回路120が、PWM信号の立ち下がりに応じてスイッチ素子QのゲートにLレベルのゲート信号を印加して、スイッチ素子Qをオフ状態にしたとする。すると、スイッチ素子Qがオン状態であった期間にインダクタLに蓄えられたエネルギーにより、インダクタLの一端から他端、ダイオードD、発光ダイオードLED1〜LEDnの順に電流が流れ、発光ダイオードLED1〜LEDnが点灯する。スイッチ素子Qがオン状態であった期間にインダクタLに蓄えられたエネルギーは、上述の順に電流が流れるに従って減少し、上述の順に流れる電流は、インダクタLに蓄えられているエネルギーが減少するに従って減少する。このため、スイッチ素子Qがオフ状態になると、時間が経過するに従って、インダクタLの一端から他端に流れる電流が減少する。
以上のように、PWM信号に応じて制御回路120がスイッチ素子Qをスイッチングさせることで、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる出力電流の平均がPWM信号に応じた値になり、その結果、指定された調光率が実現されることになる。
さらに、制御回路120は、スイッチ素子Qのドレイン電流の平均値が予め定められた閾値電流以上になると、スイッチ素子Qをオフ状態にする。
具体的には、制御回路120は、制御回路120に入力される上述の電圧、すなわちスイッチ素子Qのドレイン電流を抵抗Rで電圧変換したものを監視している。そして、この電圧の平均値が予め定められた閾値電圧まで上昇すると、すなわちスイッチ素子Qのドレイン電流の平均値が予め定められた閾値電流まで大きくなると、スイッチ素子QのゲートにLレベルのゲート信号を印加する。これによれば、スイッチ素子Qがオフ状態になる。
以上のように平均電流モードで動作させると、出力電流の最大値を一定に制御する場合に起こってしまう上述の2つの問題、すなわち、入力電圧により出力電流が変化してしまうという問題と、発光ダイオードの順方向電圧により出力電流が変化してしまうという問題と、を解決できる。
しかしながら、図9の調光率X%において、リニア制御から、リニア制御およびPWM制御に切り替える際には、PWM信号のデューティが100%から100%未満に変化する。また、図9の調光率X%において、リニア制御およびPWM制御から、リニア制御に切り替える際には、PWM信号のデューティが100%未満から100%に変化する。このため、PWM信号のデューティを100%から変化させる際や、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際に、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流が急変してしまう。
例えばPWM信号のデューティを変化させて100%にする際には、図11に示すように、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流ILEDにオーバーシュートが発生してしまう。
そこで、PWM信号のデューティを100%から変化させる際や、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際に、ソフトスタートをかけることが考えられる。これによれば、例えばPWM信号のデューティを変化させて100%にする際に、図12に示すように、電流ILEDにオーバーシュートが発生してしまうのを抑制できる。
しかしながら、上述のようにソフトスタートをかけると、ソフトスタートをかけている期間では、電流ILEDの平均値が小さくなってしまう。このため、図13や図14に示すように、PWM信号のデューティを変化させて100%にする場合、ソフトスタートが終わる際に、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流ILEDの平均電流AVE_ILEDが急増してしまう。また、PWM信号のデューティを100%から変化させる場合には、ソフトスタートが始まる際に、平均電流AVE_ILEDが急減してしまう。
上述の課題を鑑み、本発明は、PWM制御を行う定電流制御電源、定電流制御方法、および定電流制御装置において、出力電流の平均が急変してしまうのを抑制することを目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
(1) 本発明は、定電流を出力する定電流制御電源(例えば、図1の定電流制御電源1に相当)であって、スイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Qに相当)と、前記スイッチ素子を制御して前記定電流を制御する第1の制御手段(例えば、図1の制御回路120に相当)と、前記第1の制御手段にPWM信号を出力する第2の制御手段(例えば、図1の制御部10に相当)と、を備え、前記第1の制御手段は、前記PWM信号に応じて、当該スイッチ素子をPWM制御し、前記第2の制御手段は、前記PWM信号のデューティを所定の比率(例えば、後述の100%に相当)から変化させる際(例えば、図3のステップS14に相当)と、前記PWM信号のデューティを変化させて当該所定の比率にする際(例えば、図6のステップS36に相当)と、に当該PWM信号の周波数を低下させることを特徴とする定電流制御電源を提案している。
ここで、図13や図14を用いて上述したように、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際に、ソフトスタートをかけると、平均電流AVE_ILEDが急減してしまう。しかしながら、図5を用いて後述するように、PWM信号の周波数が低くなるに従って、ソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの減少が抑制される。
そこで、この発明によれば、定電流を出力する定電流制御電源に、スイッチ素子と、スイッチ素子を制御して定電流を制御する第1の制御手段と、第1の制御手段にPWM信号を出力する第2の制御手段と、を設けた。そして、第1の制御手段により、PWM信号に応じてスイッチ素子をPWM制御することとした。また、第2の制御手段により、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際と、にPWM信号の周波数を低下させることとした。
このため、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際における出力電流の平均の急激な減少と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際における出力電流の平均の急激な増加と、を抑制できる。
(2) 本発明は、(1)の定電流制御電源について、前記第2の制御手段は、前記PWM信号を基準信号に基づいて生成し、前記PWM信号のデューティを前記所定の比率から変化させる際と、前記PWM信号のデューティを変化させて前記所定の比率にする際と、に前記基準信号のn周期(ただし、nはn≧2を満たす整数)を1周期とする信号を前記PWM信号とすることを特徴とする定電流制御電源を提案している。
この発明によれば、(1)の定電流制御電源において、第2の制御手段により、PWM信号を基準信号に基づいて生成し、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際と、に基準信号のn周期を1周期とする信号をPWM信号とすることとした。
このため、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際と、にPWM信号の周波数を低下させることができ、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(3) 本発明は、(1)または(2)の定電流制御電源において、前記第2の制御手段は、前記PWM信号のデューティを前記所定の比率から変化させる際(例えば、図3のステップS14に相当)に、前記定電流が予め定められた閾値(例えば、図4のI2に相当)まで小さくなるまで、前記PWM信号の周波数を予め定められた値(例えば、図3の所定値に相当)に低下させるとともに、当該PWM信号のデューティを小さくしていく第1手順と、前記定電流を前記閾値に保ちつつ、前記PWM信号の周波数を元に戻すとともに、当該PWMのデューティを予め定められた値(例えば、図4のD2に相当)に大きくする第2手順と、を行うことを特徴とする定電流制御電源を提案している。
この発明によれば、(1)または(2)の定電流制御電源において、第2の制御手段により、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際に、第1手順および第2手順を行うこととした。
そして、第1手順では、定電流が予め定められた閾値に小さくなるまで、PWM信号の周波数を予め定められた値に低下させるとともに、PWM信号のデューティを小さくしていくこととした。このため、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際に、出力電流の平均の急激な減少を抑制しつつ、出力電流の平均を緩やかに減少させていくことができる。
また、第2手順では、定電流を閾値に保ちつつ、PWM信号の周波数を元に戻すとともに、PWMのデューティを予め定められた値に大きくすることとした。このため、出力電流の平均を変化させることなく、PWM信号の周波数を元に戻すことができる。また、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際にPWM信号の周波数を低下させているのは、第1手順を行ってから第2手順を行うまでの間のみとなるため、光波高率の悪化やストロボ効果の発生を抑制できる。
(4) 本発明は、(1)〜(3)の定電流制御電源において、前記第2の制御手段は、前記PWM信号のデューティを変化させて前記所定の比率にする際(例えば、図6のステップS36に相当)に、前記定電流が予め定められた閾値(例えば、図7のI2に相当)まで大きくなると、当該定電流を当該閾値に保ちつつ、前記PWM信号の周波数を予め定められた値(例えば、図6の特別値に相当)に低下させるとともに、当該PWM信号のデューティを予め定められた値(例えば、図7のD1に相当)に小さくする第3手順と、前記PWM信号の周波数を前記予め定められた値に保ちつつ、当該PWM信号のデューティを大きくしていく第4手順と、前記PWM信号のデューティが前記所定の比率になると、当該PWM信号の周波数を元に戻す第5手順と、を行うことを特徴とする定電流制御電源を提案している。
この発明によれば、(1)〜(3)の定電流制御電源において、第2の制御手段により、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際に、第3手順、第4手順、および第5手順を行うこととした。
そして、第3手順では、定電流が予め定められた閾値まで大きくなると、定電流を閾値に保ちつつ、PWM信号の周波数を予め定められた値に低下させるとともに、PWM信号のデューティを予め定められた値に小さくすることとした。このため、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際に、出力電流の平均を変化させることなく、PWM信号の周波数を低下させることができる。
また、第4手順では、PWM信号の周波数を予め定められた値に保ちつつ、PWM信号のデューティを大きくしていくこととした。このため、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際に、出力電流の平均の急激な増加を抑制しつつ、出力電流の平均を緩やかに増加させていくことができる。
また、第5手順では、PWM信号のデューティが所定の比率になると、PWM信号の周波数を元に戻すこととした。このため、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際にPWM信号の周波数を低下させているのは、第3手順を行ってから第5手順を行うまでの間のみとなるため、光波高率の悪化やストロボ効果の発生を抑制できる。
(5) 本発明は、定電流を出力する定電流制御方法であって、スイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Qに相当)を制御して前記定電流を制御する第1のステップと、PWM信号を出力する第2のステップと、を備え、前記第1のステップでは、前記PWM信号に応じて、当該スイッチ素子をPWM制御し、前記第2のステップでは、前記PWM信号のデューティを所定の比率(例えば、後述の100%に相当)から変化させる際(例えば、図3のステップS14に相当)と、前記PWM信号のデューティを変化させて当該所定の比率にする際(例えば、図6のステップS36に相当)と、に当該PWM信号の周波数を低下させることを特徴とする定電流制御方法を提案している。
この発明によれば、定電流を出力する定電流制御方法において、スイッチ素子を制御して定電流を制御する第1のステップと、PWM信号を出力する第2のステップと、を行うこととした。そして、第1のステップでは、PWM信号に応じてスイッチ素子をPWM制御することとした。また、第2のステップでは、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際と、にPWM信号の周波数を低下させることとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
(6) 本発明は、定電流を出力する定電流制御電源にPWM信号を出力する定電流制御装置(例えば、図1の制御部10に相当)であって、前記PWM信号のデューティを所定の比率(例えば、後述の100%に相当)から変化させる際(例えば、図3のステップS14に相当)と、前記PWM信号のデューティを変化させて当該所定の比率にする際(例えば、図6のステップS36に相当)と、に当該PWM信号の周波数を低下させ、前記定電流制御電源は、スイッチ素子(例えば、図1のスイッチ素子Qに相当)と、前記スイッチ素子を制御して前記定電流を制御する第1の制御手段(例えば、図1の制御回路120に相当)と、を備え、前記第1の制御手段は、前記PWM信号に応じて、当該スイッチ素子をPWM制御することを特徴とする定電流制御装置を提案している。
この発明によれば、定電流を出力する定電流制御電源にPWM信号を出力する定電流制御装置により、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際と、にPWM信号の周波数を低下させることとした。また、定電流制御電源に、スイッチ素子と、スイッチ素子を制御して定電流を制御する第1の制御手段と、を設け、第1の制御手段により、PWM信号に応じてスイッチ素子をPWM制御することとした。このため、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
本発明によれば、PWM信号のデューティを所定の比率から変化させる際における出力電流の平均の急激な減少と、PWM信号のデューティを変化させて所定の比率にする際における出力電流の平均の急激な増加と、を抑制できる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
[定電流制御電源1の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る定電流制御電源1の回路図である。定電流制御電源1は、図10に示した従来例に係る定電流制御電源100とは、制御部110の代わりに制御部10を備える点が異なる。なお、定電流制御電源1において、定電流制御電源100と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[定電流制御電源1の動作]
定電流制御電源1は、定電流制御電源100と同様に、制御部10から出力されるPWM信号と、スイッチ素子Qのドレイン電流と、に応じて制御回路120によりスイッチ素子Qを制御して、定電流を出力する。
制御部10は、調光率が指定されると、図2に示す調光処理を行って、指定された調光率に応じた周波数およびデューティのPWM信号を生成し、制御回路120に出力する。
図2は、制御部10が行う調光処理のフローチャートである。
ステップS1において、制御部10は、指定された調光率に基づいて、平均電流AVE_ILEDの目標値を設定し、ステップS2に処理を移す。なお、調光率の指定は、例えば調光率を変化させる操作をユーザがリモコンに対して行った際に、このリモコンから制御部10に対して送信される信号により、行われる。
ステップS2において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが大きいか否かを判別する。そして、大きくないと判別した場合には、ステップS4に処理を移し、大きいと判別した場合には、ステップS3に処理を移す。
ステップS3において、制御部10は、図3を用いて後述する減光処理を行って、図2に示した調光処理を終了する。
ステップS4において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが小さいか否かを判別する。そして、小さくないと判別した場合には、図2に示した調光処理を終了し、小さいと判別した場合には、ステップS5に処理を移す。
ステップS5において、制御部10は、図6を用いて後述する増光処理を行って、図2に示した調光処理を終了する。
図3は、制御部10が行う減光処理のフローチャートである。また、図4は、減光処理において、PWM信号のデューティを100%から変化させる際の制御部10の動作について説明するための図である。図4において、縦軸は、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流ILEDの平均電流AVE_ILEDを示し、横軸は、PWM信号のデューティを示す。
ステップS11において、制御部10は、平均電流AVE_ILEDがI1(図4参照)より大きいか否かを判別する。そして、大きいと判別した場合には、ステップS12に処理を移し、大きくないと判別した場合には、ステップS14に処理を移す。
なお、I1は、図9で示した調光率がX%であるときに平均電流AVE_ILEDが取る値のこと、すなわち、リニア制御のみを行う場合と、リニア制御およびPWM制御を行う場合と、を切り替えるときに平均電流AVE_ILEDが取る値のことであり、制御部10に予め記憶されている数値である。
ステップS12において、制御部10は、リニア制御処理を行って、ステップS11に処理を戻す。
ステップS13において、制御部10は、平均電流AVE_ILEDがI2(図4参照)より小さいか否かを判別する。そして、小さいと判別した場合には、ステップS20に処理を移し、小さくないと判別した場合には、ステップS14に処理を移す。なお、I2は、制御部10に予め記憶されている数値である。このI2については、後述する。
ステップS14において、制御部10は、PWM信号の周波数を、予め定められた所定値に低下させて、ステップS15に処理を移す。この所定値は、制御部10に予め記憶されている数値である。この所定値について、図5を用いて以下に説明する。
図5は、PWM信号の周波数と、ソフトスタートによる影響と、の関係を示す図である。図5において、縦軸は、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流ILEDの平均電流AVE_ILEDを示し、横軸は、PWM信号のデューティを示す。
図13や図14を用いて上述したように、PWM信号のデューティを100%から変化させる際に、ソフトスタートをかけると、平均電流AVE_ILEDが急減してしまう。しかしながら、図5に示すように、PWM信号の周波数が低くなるに従って、ソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの減少が抑制される。そこで、PWM信号の周波数をいくつまで低下させると、ソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの急激な減少を許容できる範囲に抑えることができるのかを予め調べておき、調べた周波数を、上述の所定値とする。
このため、ステップS14においてPWM信号の周波数を所定値に低下させることによって、PWM信号のデューティを100%から変化させる際に発生してしまうソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの急激な減少を、許容できる範囲に抑えることができる。
ステップS15において、制御部10は、平均電流AVE_ILEDがI2(図4参照)より大きいか否かを判別する。そして、大きくないと判別した場合には、ステップS18に処理を移し、大きいと判別した場合には、ステップS16に処理を移す。なお、I2は、制御部10に予め記憶されている数値である。このI2について、図4を用いて以下に説明する。
I2を制御部10に記憶させる際に、予め、ステップS14においてPWM信号の周波数を所定値に低下させなかった場合に平均電流AVE_ILEDがいくつまで急激に減少してしまうのかを調べておく。そして、このときの値(図4では、I0)よりも小さい値に、I2を設定し、制御部10に記憶させる。
このため、平均電流AVE_ILEDがI2まで低下した状態では、ステップS14において所定値に低下させるより前のPWM信号の周波数、すなわち元の周波数にPWM信号の周波数を戻しても、上述のソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの急激な減少は、発生しないことになる。
ステップS16において、制御部10は、PWM信号のデューティを予め定められた特定値だけ小さくし、ステップS17に処理を移す。この特定値は、制御部10に予め記憶されている数値である。これによれば、平均電流AVE_ILEDが小さくなる。
ステップS17において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが大きいか否かを判別する。そして、大きくないと判別した場合には、図3の減光処理を終了する。一方、大きいと判別した場合には、ステップS15に処理を戻す。
ステップS18において、制御部10は、PWM信号の周波数を元に戻し、ステップS19に処理を移す。
ステップS19において、制御部10は、PWM信号のデューティをD2(図4参照)まで大きくし、ステップS20に処理を移す。ここで、D2は、PWM信号の周波数が元の周波数で、かつ、平均電流AVE_ILEDがI2である際に、PWM信号のデューティが取る数値であり、制御部10に予め記憶されている数値である。
このため、ステップS18においてPWM信号の周波数を元に戻しても、平均電流AVE_ILEDが変化してしまうのを防止できる。
ステップS20において、制御部10は、PWM信号のデューティを予め定められた特定値だけ小さくし、ステップS21に処理を移す。これによれば、平均電流AVE_ILEDが小さくなる。
ステップS21において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが大きいか否かを判別する。そして、大きくないと判別した場合には、図3の減光処理を終了する。一方、大きいと判別した場合には、ステップS20に処理を戻す。
図6は、制御部10が行う増光処理のフローチャートである。また、図7は、増光処理において、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際の制御部10の動作について説明するための図である。図7において、縦軸は、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流ILEDの平均電流AVE_ILEDを示し、横軸は、PWM信号のデューティを示す。
ステップS31において、制御部10は、平均電流AVE_ILEDがI1(図7参照)より大きいか否かを判別する。そして、大きくないと判別した場合には、ステップS33に処理を移し、大きいと判別した場合には、ステップS32に処理を移す。
ステップS32において、制御部10は、リニア制御処理を行って、ステップS31に処理を戻す。
ステップS33において、制御部10は、平均電流AVE_ILEDがI2(図7参照)より小さいか否かを判別する。そして、小さくないと判別した場合には、ステップS36に処理を移し、小さいと判別した場合には、ステップS34に処理を移す。
ステップS34において、制御部10は、PWM信号のデューティを予め定められた特定値だけ大きくし、ステップS35に処理を移す。これによれば、平均電流AVE_ILEDが大きくなる。
ステップS35において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが小さいか否かを判別する。そして、小さくないと判別した場合には、図6の減光処理を終了する。一方、小さいと判別した場合には、ステップS33に処理を戻す。
ステップS36において、制御部10は、PWM信号の周波数を、予め定められた特別値に低下させて、ステップS37に処理を移す。この特別値は、制御部10に予め記憶されている数値である。この特別値について、図7を用いて以下に説明する。
図7は、PWM信号の周波数と、ソフトスタートによる影響と、の関係を示す図である。図7において、縦軸は、発光ダイオードLED1〜LEDnに流れる電流ILEDの平均電流AVE_ILEDを示し、横軸は、PWM信号のデューティを示す。
図13や図14を用いて上述したように、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際に、ソフトスタートをかけると、平均電流AVE_ILEDが急増してしまう。しかしながら、図5に示したように、PWM信号の周波数が低くなるに従って、ソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの急激な増加が抑制される。そこで、PWM信号の周波数をいくつまで低下させると、ソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの急激な増加を許容できる範囲に抑えることができるのかを予め調べておき、このときのPWM信号の周波数を、上述の特別値として制御部10に予め記憶させておく。
このため、ステップS36においてPWM信号の周波数を特別値に低下させることによって、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際に発生してしまうソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの急激な増加を、許容できる範囲に抑えることができる。
ステップS37において、制御部10は、PWM信号のデューティをD1(図7参照)まで小さくし、ステップS38に処理を移す。ここで、D1は、PWM信号の周波数が特別値で、かつ、平均電流AVE_ILEDがI2である際に、PWM信号のデューティが取る数値であり、制御部10に予め記憶されている数値である。
このため、ステップS36においてPWM信号の周波数を特別値に低下させても、平均電流AVE_ILEDが変化してしまうのを防止できる。
ステップS38において、制御部10は、PWM信号のデューティを予め定められた特定値だけ大きくし、ステップS39に処理を移す。これによれば、平均電流AVE_ILEDが大きくなる。
ステップS39において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが小さいか否かを判別する。そして、小さくないと判別した場合には、図6の減光処理を終了する。一方、小さいと判別した場合には、ステップS40に処理を移す。
ステップS40において、制御部10は、PWM信号のデューティが100%であるか否かを判別する。そして、100%ではないと判別した場合には、ステップS38に処理を戻し、100%であると判別した場合には、ステップS41に処理を移す。
ステップS41において、制御部10は、PWM信号の周波数を元に戻し、ステップS42に処理を移す。
ステップS42において、制御部10は、リニア制御処理を行って、ステップS43に処理を戻す。
ステップS43において、制御部10は、ステップS1において設定した目標値より平均電流AVE_ILEDが小さいか否かを判別する。そして、小さくないと判別した場合には、図6の減光処理を終了する。一方、小さいと判別した場合には、ステップS42に処理を戻す。
ここで、上述の従来例に係る定電流制御電源におけるPWM信号と電流ILEDと平均電流AVE_ILEDとを、図15に示す。図15では、時刻t11において、PWM信号のデューティを100%から変化させている。このため、時刻t11における平均電流AVE_ILEDと、時刻t11からPWM信号の1周期が経過した時刻t12における平均電流AVE_ILEDと、の差が大きくなっている。
これに対して、定電流制御電源1におけるPWM信号と電流ILEDと平均電流AVE_ILEDとを、図8に示す。図8では、時刻t1において、PWM信号のデューティを100%から変化させるとともに、時刻t1〜t3の期間において、PWM信号の周波数を所定値に低下させている。このため、時刻t1における平均電流AVE_ILEDと、時刻t1からPWM信号の1周期が経過した時刻t2における平均電流AVE_ILEDと、の差が小さくなっている。これはすなわち、PWM信号のデューティを100%から変化させる際における平均電流AVE_ILEDの減少が抑制されているということである。
以上の定電流制御電源1によれば、以下の効果を奏することができる。
定電流制御電源1は、PWM信号のデューティを100%から変化させる際に、図3にステップS14において、PWM信号の周波数を制御部10により低下させる。このため、PWM信号のデューティを100%から変化させる際における平均電流AVE_ILEDの急激な減少を抑制できる。したがって、図9の調光率X%において、リニア制御から、リニア制御およびPWM制御に切り替える際に、光のちらつきを抑制でき、スムーズな連続減光を実現できる。
また、定電流制御電源1において、PWM信号のデューティを100%から変化させる際にPWM信号の周波数を低下させるのは、平均電流AVE_ILEDが図4のI1からI2に変化する間でのみである。このため、光波高率の悪化やストロボ効果の発生を抑制できる。
また、定電流制御電源1は、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際に、図6にステップS36において、PWM信号の周波数を制御部10により低下させる。このため、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際における平均電流AVE_ILEDの急激な増加を抑制できる。したがって、図9の調光率X%において、リニア制御およびPWM制御から、リニア制御に切り替える際に、光のちらつきを抑制でき、スムーズな連続増光を実現できる。
また、定電流制御電源1において、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際にPWM信号の周波数を低下させるのは、平均電流AVE_ILEDが図7のI2からI1に変化する間でのみである。このため、光波高率の悪化やストロボ効果の発生を抑制できる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、PWM信号のデューティを100%から変化させる際と、PWM信号のデューティを変化させて100%にする際と、について説明した。しかしながら、上述の比率は、100%に限らず、予め定められた所定の比率であればよい。
また、上述の実施形態では、図3のステップS14において、PWM信号の周波数をいくつまで低下させると、ソフトスタートによる平均電流AVE_ILEDの減少を許容できる範囲に抑えることができるのかを予め調べておき、調べた周波数まで、PWM信号の周波数を制御部10が低下させるものとした。しかしながら、これに限らず、例えば、ステップS14において周波数を所定値に低下させる前のPWM信号のn周期(ただし、nは、n≧2を満たす整数)を1周期とする信号を生成し、PWM信号として制御部10が出力するものとしてもよい。ただし、この場合には、生成した信号の周波数が、上述の調べた周波数よりも低くなければならない。
また、上述の実施形態では、図3のステップS16およびステップS20においてPWM信号のデューティを小さくする値と、図6のステップS34およびステップS38においてPWM信号のデューティを大きくする値と、を全て同じ特定値としたが、これに限らず、例えば互いに異なる値としてもよい。
また、上述の実施形態において、指定された調光率に応じた目標値がI0(図4参照)以上である場合に、平均電流AVE_ILEDの絶対値を上げながらPWM信号のパルス幅を調整するものとしてもよい。
また、上述の実施形態では、定電流制御電源1は、交流電源Vinから入力される交流電力を用いて、発光ダイオードLED1〜LEDnに定電流を出力するものとしたが、これに限らない。例えば、交流電源Vinの代わりに直流電源が定電流制御電源1に接続されており、この直流電源から入力される直流電力を用いて、発光ダイオードLED1〜LEDnに定電流を出力するものとしてもよい。この場合には、整流部RFは不要となる。
また、上述の実施形態では、制御部10は、定電流制御電源1に設けられるものとしたが、これに限らず、例えば定電流制御電源1とは別個に設けられるものであってもよい。
また、上述の実施形態では、負荷として、発光ダイオードLED1〜LEDnを適用したが、これに限らず、有機EL(Electro Luminescence)といった定電流制御する負荷を適用できる。