JP5854426B2 - 衝突判別装置 - Google Patents

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本発明は、車両の衝突時に、対象部位の経時変形量を推定する衝突判別装置に関する。
従来、車両には、衝突事故が発生した際に、乗員を保護するためのエアバッグ装置が搭載されているものがある。エアバッグ装置は、例えば、車両の衝突が起きた際に、車両の加速度(減速度)を加速度センサで検出し、その検出結果に基づいて所定のタイミングでエアバッグを展開させる。
また近年は、車両が衝突した場合に、上記のような加速度センサの検出結果に基づいて、車体の変形の程度や、損壊状況を推定し、その推定結果を外部のサービスセンタ等に知らせるシステム(装置)の開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
このような装置では、車両の損壊状況等の客観的な情報を外部のサービスセンタ等に迅速に送信することができるので、情報を受信したサービスセンタ等は、車両の損壊状況を正確に把握でき、損壊状況に応じた適切な対応をとることができるとされている。
特許第425490号公報
しかしながら、上述した従来の装置のように車両の変形の程度や損壊状況を推測するだけでは、乗員の損傷度合いまで把握することは難しく、迅速且つ適切な対応(例えば、救命救急)に支障をきたす虞がある。
乗員の損傷度合いには、例えば、車室を形成するトーボード等、車両の所定の対象部位の変形量や変形時間が大きく影響する。このため、車両の衝突時に、車体の対象部位における経時変形量を正確に推定することができれば、乗員の損傷度合いを正確に把握(推定)することができる。
しかしながら、例えば、トーボード等の車両の対象部位における経時変形量は正確に推定することは難しく、乗員の損傷度合いを正確に把握(推定)することができていないのが現状である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、対象部位の経時変形量を正確に推定できる衝突判別装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両の衝突時の速度を検出する速度検出手段と、前記車両の衝突形態を判別する衝突形態判別手段と、該衝突形態判別手段による判別結果と前記速度検出手段で検出された速度に基づいて、前記車両の対象部位の衝突に伴う変形が開始してから変形が終了するまでの期間における経時変形量を推定する変形量推定手段と、前記車両の衝突速度と前記車両の対象部位の変形に相関する変形物理量との関係が衝突形態毎に記憶された記憶手段と、を備え、前記変形量推定手段は、前記記憶手段に記憶された関係に基づいて前記経時変形量を推定し、前記変形物理量には、変形開始時間、最大変形時間、最大変形量及び最終変形量が少なくとも含まれることを特徴とする変形状態判別装置にある。
かかる第1の態様では、衝突形態と衝突速度とに基づいて推定することで、車両の対象部位における衝突に伴う経時変形量を正確に推定することができる。また、車両の対象部位の衝突に伴う経時変形量をより簡便且つ正確に推定することができる。なお、記憶手段に記憶される「関係」は、数式やマップ等で表すことができる。
なお、速度検出手段は、車両の衝突時の速度を直接検出する速度センサであってもよいし、車両の衝突時の加速度を検出し、検出した加速度を積分して車両の速度を得るものであってもよい。
本発明の第の態様は、第の態様の変形状態判別装置において、前記車両の対象部位がトーボードであることを特徴とする変形状態判別装置にある。
かかる第の態様では、トーボードの衝突に伴う経時変形量に基づいて乗員の損傷度合いを正確に推定することができる。
かかる本発明では、車両の対象部位の経時変形量を正確に推定することができ、その推定結果から乗員の損傷度合いを正確に推定することができる。したがって、これらの推定結果を含む所定情報を外部のサービスセンタ等に送信することで、情報を受信したサービスセンタ等は、車両の損壊状況等を極めて正確に把握することができる。特に、乗員の損傷度合いを正確に把握できることで、迅速且つ適切な対応(例えば、救命救急)を行うことができる。
本発明の一実施形態に係る衝突判別装置の構成を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る衝突判別装置の構成を示すブロック図である。 衝突判別装置が搭載される車両の構成を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る衝突形態の判別手順を示すフローチャートである。 加速度センサの検出結果から形成された衝突波形の一例を示す図である。 衝突形態毎の基準波形の一例を示す図である。 基準波形と衝突波形との相似度を求める手順を説明する図である。 基準波形の特徴点と衝突波形との残差を求める手順を説明する図である。 衝突速度と変形物理量との関係を表す関係式をグラフとして示す図である。 関係式から求めた変形物理量を基に推定した経時変形量を示す図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る衝突判別装置10は、車両の衝突状態を判別する装置であり、具体的には、車両1が衝突した際に、その衝突形態を判別すると共に、その判別結果に基づいて車両の対象部位の経時変形量を推定する。この衝突判別装置10は、車両1に搭載され速度検出手段を構成する加速度センサ20と、ECU(電子制御ユニット)30とで構成されている。ECU30は、車両1の衝突形態を判別する衝突形態判別手段40と、車両1の対象部位の衝突に伴う経時変形量を推定する変形量推定手段50と、後述する所定の関係式等が記憶された記憶部(記憶手段)60と、を備える。また車両1には、外部のサービスセンタ等に、衝突形態を含む所定情報を送信する通信装置70が備えられている。
加速度センサ20は、車両1に搭載されて車両1の衝突時の加速度(減速度)を検出する。本実施形態では、4つの加速度センサ20が車両1に設けられている。例えば、車両1の前端部に、右フロントセンサ20a及び左フロントセンサ20bが設けられ、車両1の前後方向中央部に、右サイドセンサ20c及び左サイドセンサ20dがそれぞれ設けられている。
車両1に搭載する加速度センサ20の数は特に限定されず、車両1に少なくとも一つ搭載されていればよい。また加速度センサ20を設ける位置も特に限定されないが、衝突時に車両の1の変形の影響を受けにくい位置であることが好ましい。
ECU30が備える衝突形態判別手段40は、車両1が衝突した際に、加速度センサ20の検出結果から得られる衝突波形に基づいて、予め類別した車両1の衝突形態を判別する。すなわち、車両1の衝突が何れの衝突形態(例えば、正面衝突、斜め衝突、オフセット衝突、ポール衝突等)に属するかを判別する。
衝突形態判別手段40は、本実施形態では、加速度センサ20の検出結果に基づいて車両1の衝突形態を判別する。具体的には、各衝突形態に対応する基準波形と、加速度センサ20の検出結果から得られた衝突波形との相似度に基づいて車両1の衝突形態を判別する。
なお本実施形態では、車両1に複数の加速度センサ20が設けられているが、衝突形態判別手段40は、このうちの何れか一つの加速度センサ20(20a〜20d)の検出結果に基づいて車両1の衝突形態を判別する。例えば、車両1の衝突時の出力が最大である加速度センサ20a〜20dの何れかの検出結果に基づいて車両1の衝突形態を判別する。勿論、衝突形態の判別は、特定の加速度センサ20の検出結果に基づくものであってもよいし、複数の加速度センサ20の検出結果に基づくものであってもよい。
変形量推定手段50は、衝突形態判別手段40による判別結果と、車両1の衝突速度とに基づいて、車両1の対象部位の衝突に伴う経時変形量を推定する。ここで、「車両の対象部位」とは、車両1の衝突した部分とは異なる所定の部位であり、任意に設定することができる。また「衝突に伴う経時変形量」とは、衝突による車両1の変形が開始してから変形が終了するまでの期間(衝突期間)における対象部位の変形量の経時変化をいう。また「衝突速度」とは、例えば、本実施形態では、車両1の衝突速度、例えば、車両1の衝突直後の速度(V0)であるが、必ずしも衝突直後の速度でなくてもよい。
本実施形態では、変形による乗員への影響が比較的大きい部位、例えば、車室の周囲の部位を対象部位として設定し、変形量推定手段50がその部位の衝突による経時変形量を推定する。
例えば、図3に示すように、車両1における人員が乗車する車室2と、エンジン3が収容されるエンジンルーム4との間は、トーボード(ダッシュパネル)5によって区切られている。車室2を構成するトーボード5の変形は、車室2内の乗員への影響が大きい。すなわちトーボード5が変形した場合、変形したトーボード5によって乗員が損傷する可能性が高いと考えられる。
そこで本実施形態では、変形量推定手段50が、衝突形態判別手段40による判別結果と車両1の衝突速度とに基づいて、トーボード5の衝突に伴う経時変形量を推定する。トーボード5等の車両1の対象部位の経時変形量は、加速度センサ20による検出結果に基づいて特定することは難しかったが、本発明によれば、比較的容易且つ正確に経時変形量を推定することができる。
さらに、変形量推定手段50の推定結果から乗員の損傷度合い推測することができる。したがって、推測した情報を、例えば、外部のサービスセンタ等に送信することで、サービスセンタ等では乗員の損傷度合いに応じた適切な対応(例えば、救命措置)をとることができる。
勿論、変形量推定手段50が経時変形量を推定する対象部位は、トーボード5に限定されず、車両1の衝突部分とは異なる部位であれば、何れの部分を対象部位としてもよい。
[衝突形態の判別]
以下、衝突形態判別手段40による衝突形態の判別手順について説明する。なお図4は、衝突形態の判別手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、衝突形態判別手段40は、車両1の衝突が起こると、その衝突が終了した時点で、加速度センサ20の検出結果に基づいて衝突波形を形成する(ステップS1)。本実施形態では、加速度センサ20の検出結果から算出された車両1の変位と、車両1の加速度とに基づいて衝突波形を形成する。すなわち加速度センサ20の検出結果である車両1の加速度(減速度)と、検出結果である加速度を2階積分して得られる車両1の変位とから、例えば、図5に示すような衝突波形を形成する。
なお加速度センサ20は、所定の間隔で車両1の加速度を検出(サンプリング)しており、各検出結果(加速度情報)は記憶部60に適宜記録される。この記憶部60は、いわゆるイベントデータレコーダ(EDR)としても機能するものであり、後述する所定の関係式の他、例えば、加速度情報や、乗員体格、エアバッグ点火有無等の車両情報も適宜記録される。そして衝突形態判別手段40は、この記憶部60から必要な加速度情報を読み出して衝突波形を形成する。
次に、衝突形態判別手段40は、得られた衝突波形を、各衝突形態に対応する基準波形と比較し、両者の相似度(相似の程度)を求める(ステップS2)。そして、衝突形態毎に求められた両波形の相似度から車両1の衝突形態を判別する(ステップS3)。すなわち、衝突形態判別手段40は、衝突波形と各基準波形との相似度が最も高い衝突形態を車両1の衝突形態であると判別する。
なお衝突波形と基準波形との相似度は、これら衝突波形及び基準波形を正規化した上で、例えば、最大値を100%としてそれぞれの波形を正規化した上で、求められることが好ましい。これにより、相似度を比較的容易且つ正確に求めることができる。
ここで基準波形は、衝突形態毎に予め規定したものであり、例えば、図6に示すように、正面衝突、オフセット衝突、ポール衝突等の各衝突形態で波形の特徴が異なる。このため、加速度センサ20の検出結果から得られた衝突波形と複数の各基準波形との相似度に基づいて衝突形態を判別することで、車両1の衝突形態を正確に判別することができる。特に、基準波形が、衝突時の車両1の変位と加速度との関係から規定されたものである場合、衝突形態毎の波形の特徴の違いが顕著であり、車両1の衝突形態を判別し易い。
このような各衝突形態に対応する複数の基準波形は、記憶部60に予め記憶されている。なお基準波形の形成方法は、特に限定されないが、例えば、該当車両の有限要素シミュレーションの結果に基づいて作成すればよい。
衝突波形と基準波形との相似度の求め方は、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る衝突形態判別手段40は、次のような手順で相似度を求めている。衝突形態判別手段40は、例えば、図7に示すように衝突形態に対応する基準波形と衝突波形とを比較し、基準波形の複数の特徴点と衝突波形との残差に基づいて相似度を求めている。なお図7は、正面衝突、オフセット衝突及びポール衝突の基準波形を正規化したものと衝突波形を正規化したものとを比較した例である。
ここで、基準波形の特徴点としては、例えば、波形の傾きが変化する点等が挙げられ、各衝突形態に対応する基準波形上に複数の特徴点をそれぞれ設定する。例えば、オフセット衝突の場合、基準波形には4つの特徴点C1〜C4を設定し、正面衝突及びポールの場合、基準波形にはそれぞれ3つの特徴点C1〜C3を設定している(図6参照)。このように特徴点の数は、衝突形態によって異なっていてもよいし同じであってもよい。
これら基準波形の各特徴点と衝突波形との残差の求め方も特に限定されないが、本実施形態に係る衝突形態判別手段40は、基準波形の各特徴点と衝突波形の複数のサンプリング点との最小差を、各特徴点と衝突波形との残差として求めている。例えば、図8に示すように、基準波形における特徴点C1と衝突波形との残差を求める場合、特徴点C1と衝突波形の複数のサンプリング点、例えば、サンプリング点P1〜P3との差d1〜d3を求め、そのうちの最小差d2を特徴点C1と衝突波形との残差とする。なお本実施形態では、サンプリング点P1〜P3との差を求めているが、対象とするサンプリング点の数は特に限定されず、必要に応じて適宜決定されればよい。例えば、サンプリング点の全てを対象としてもよい。
基準波形の各特徴点C1〜C4について衝突波形との残差が求まると、次いで、基準波形の各特徴点と衝突波形の複数のサンプリング点との残差の和の最小値に基づいて、相似度を求める。例えば、本実施形態では、各特徴点の残差(最小差)の和の平均値を算出し、この平均値に基づいて基準波形と衝突波形との相似度を求める。相似度は、残差の和の平均値が小さいほど高くなる。そして、この相似度が最も高い基準波形に対応する衝突形態が、車両1の衝突形態であると判断される。例えば、図6に示す例では、基準波形と衝突波形との相似度はオフセット衝突の場合が最も小さくなるため、車両1の衝突形態はオフセット衝突であると判断される。
このように各衝突形態に対応する基準波形と衝突波形との相似度に基づいて衝突形態を判別することで、車両1の衝突形態を正確に判別することができる。また上述のように基準波形の特徴点と衝突波形との残差の和の平均値に基づいて相似度を求めることで、各衝突形態に対応する基準波形の特徴点の数が異なる場合でも、相似度を正確に比較することができる。勿論、各衝突形態で基準波形の特徴点の数が一致している場合には、残差の和から相似度を求めるようにしてもよい。
また本実施形態では、基準波形の各特徴点と衝突波形の複数のサンプリング点との最小差を、各特徴点と衝突波形との残差としているが、各特徴点と衝突波形との残差の求め方はこれに限定されるものではない。さらに本実施形態では、衝突波形と基準波形との相似度を、基準波形の特徴点と衝突波形の残差に基づいて判断するようにしたが、相似度の判断方法は、必ずしも残差に基づくものでなくてもよい。
[経時変形量の推定]
このように衝突形態判別手段40が車両1の衝突形態を判別した後は、変形量推定手段50がトーボード5の衝突に伴う経時変形量を推定する。
記憶部60には、車両1の衝突速度(V0)と車両1のトーボード5の変形に相関する各種の変形物理量との関係を表す関係式が衝突形態毎に記憶されている。変形量推定手段50は、この記憶部60に記憶されている関係式に基づいてトーボード5の衝突に伴う経時変形量を推定する。なおここでいう関係式には、関係式に基づいて設定されたマップも含まれるものとする。
例えば、本実施形態では、図9にグラフとして示すように、記憶部60には、車両1の衝突速度(V0)と、トーボード5の変形開始時間(Ti)、最大変形時間(Tm)、最大変形量(Dm)及び最終変形量(De)との関係を表す4つの関係式が記憶されている。この図9に示すグラフは、衝突形態がオフセット衝突の場合の一例である。記憶部60には、衝突速度と上記4つの変形物理量との関係を表す関係式が、例えば、正面衝突、ポール衝突等の各衝突形態に対応してそれぞれ記憶されている。
トーボード5は、車両1の内部に設けられている部材であるため、車両1の衝突が発生した時間(時刻)とトーボード5が実際に変形し始める時間(時刻)とにはズレが生じる。トーボード5の変形開始時間(Ti)とは、トーボード5が実際に変形し始める時間である。最大変形時間(Tm)とは、衝突期間中にトーボード5の変形量が最大変形量(Dm)となる時間である。最終変形量(De)とは、衝突期間が終了し衝突に伴う変形が収まった時点でのトーボード5の変形量である。
なお各関係式の求め方は、特に限定されないが、例えば、当該車両の有限要素シミュレーションの結果に基づいて求めることができる。また衝突に伴う経時変形量の推定に用いる変形物理量には、上述した変形開始時間、最大変形時間、最大変形量及び最終変形量が少なくとも含まれていることが好ましいが、特に限定されるものではない。
変形量推定手段50は、衝突形態判別手段40によって衝突形態が判別されると、その判別結果(衝突形態)に対応する上記4つの関係式を記憶部60から読み出す。また加速度センサ20の検出結果である車両1の加速度を一階積分して衝突速度(V0)を算出する(速度検出手段)。そして算出した衝突速度(V0)と上記4つの関係式とから、トーボード5の変形開始時間(Ti)、最大変形時間(Tm)、最大変形量(Dm)及び最終変形量(De)を算出する。これらの物理変形量を算出することができれば、例えば、図10に示すように、これらの算出結果に基づいてトーボード5の経時変形量を精度良く推定することができる。
このように変形量推定手段50によってトーボード5の経時変形量が推定された後は、この推定結果、さらには衝突形態判別手段40によって判別された衝突形態等を含む所定情報が、通信装置70によって、外部のサービスセンタ等に適宜送信される。外部のサービスセンタ等では、通信装置70から送信された情報に基づいて、車両1の損壊状況等を正確に把握でき、その状況に応じた適切な対応をとることができる。特に、トーボード5等の車両1の対象部位の経時変形量が分かることで、乗員の損傷度合いを予測して、より適切な対応(例えば、救命措置)をとることができる。
また本実施形態では、トーボード5の経時変形量を推定しているが、例えば、推定したトーボード5の経時変形量に基づいて、乗員の傷害発生確率を算出することもできる。上述した車両1の衝突形態等と共に算出した傷害発生確率を外部のサービスセンタ等に送信することで、サービスセンタ等では、より迅速に、車両1の衝突状況に適した対応をとることができる。
乗員の傷害発生確率は、例えば、変形量推定手段50によって推定された車両1の対象部位の経時変形量、対象部位の変形量、変形時間の情報の他、記憶部60に記録されている車両および乗員情報等から予測することができる。さらに、衝突形態、衝突エネルギー、衝突角度、オフセット率等の他の条件を考慮することで、乗員の傷害発生確率をより正確に予測することができる。
すなわち、傷害発生確率Pは、衝突形態別に下記式(1)(2)から算出することができる。
P=1/(1+exp(−Z)) (1)
Z=β+(β+・・・+βn1)+(βn1+1n1+1+・・・+βn2n2)+(βn2+1n2+1・・・+βnnnn) (2)
上記式(2)をより詳しく説明すると、以下の通りである。係数βと傷害因子xの積の和Zは、各傷害因子の傷害発生への影響度の総和を意味する。この値Zが増大すると傷害発生確率Pが増大する。β+・・・+βn1は、各傷害因子xを記憶部60に記録された乗員体格やエアバッグ展開有無などとしたとき、それらの傷害発生への影響度の総和を意味する。βn1+1n1+1+・・・+βn2n2は、各傷害因子xを記憶部60に記録された衝突波形の特徴点としたとき、衝突波形の傷害発生への影響度の総和を意味する。βn2+1n2+1・・・+βnnnnは、対象部位の変形量および変形時間としたとき、車体変形の傷害発生への影響度の総和を意味する。xn1+1〜xn2は衝突形態毎に異なる。このように、衝突形態毎に傷害因子は異なり、各係数βの値も異なる。傷害発生確率Pの算出式が衝突形態毎であることによって、予測精度は単一の算出式よりも向上すると考えられる。
このように予測された傷害発生確率を含む情報を、上述した衝突形態の情報と共に、外部のサービスセンタ等に送信することで、サービスセンタ等では、その後の対応をさらに適切なものとすることができる。
なお傷害発生確率の予測に用いる情報は、必要に応じて適宜決定されればよく、特に限定されるものではない。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
例えば、上述の実施形態では、衝突形態判別手段40が、車両の変位と加速度とに基づいて衝突波形を形成し、この衝突波形と基準波形とから衝突形態を判別するようにしたが、衝突波形及び基準波形は、例えば、時間と車両の加速度とから形成されたものであってもよい。この場合には、衝突波形及び基準波形を正規化して比較することが好ましい。なお、時間に関しては、衝突期間を考慮して最大時間を設定し、設定した最大時間を100%として正規化すればよい。
また衝突形態の判別方法は、あくまで一例であり、衝突波形と基準波形とに基づいて判別する上述の実施形態に限定されるものではない。
1 車両
2 車室
3 エンジン
4 エンジンルーム
5 トーボード(ダッシュパネル)
10 衝突判別装置
20 加速度センサ(加速度検出手段)
30 ECU
40 衝突形態判別手段
50 変形量推定手段
60 記憶部(記憶手段)
70 通信装置

Claims (2)

  1. 車両の衝突時の速度を検出する速度検出手段と、
    前記車両の衝突形態を判別する衝突形態判別手段と、
    該衝突形態判別手段による判別結果と前記速度検出手段で検出された速度に基づいて、前記車両の対象部位の衝突に伴う変形が開始してから変形が終了するまでの期間における経時変形量を推定する変形量推定手段と、
    前記車両の衝突速度と前記車両の対象部位の変形に相関する変形物理量との関係が衝突形態毎に記憶された記憶手段と、を備え、
    前記変形量推定手段は、前記記憶手段に記憶された関係に基づいて前記経時変形量を推定し、
    前記変形物理量には、変形開始時間、最大変形時間、最大変形量及び最終変形量が少なくとも含まれることを特徴とする変形状態判別装置。
  2. 請求項に記載の変形状態判別装置において、
    前記車両の対象部位がトーボードであることを特徴とする変形状態判別装置。
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