以下、本発明の集合住宅インターホン装置を適用した実施の形態例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例による集合住宅インターホン装置の全体構成を示すシステム説明図であって、マンション等の集合住宅に設置されるものである。この集合住宅インターホン装置は、集合住宅の集合玄関に設置される集合玄関機1と、集合住宅の複数の住戸、ここでは、101号室、102号室、・・・、201号室、202号室、・・・、301号室、302号室、・・・、401号室、402号室、・・・、・・・のような各住戸の住戸外、例えば、住戸玄関にそれぞれ設置され、後述する自住戸内の居室親機3を呼出して音声データを送受信することで通話を成立させるとともに映像データを生成する(複数の)玄関子機2と、前述のような各住戸の住戸内にそれぞれ設置され集合玄関機1又は自住戸の玄関子機2からの呼出しに応答して音声データを送受信することで通話を成立させるとともに集合玄関機1及び自住戸の玄関子機2のうち少なくとも集合玄関機1にて生成される映像データを出画する(複数の)居室親機3と、集合玄関機1及び居室親機3を制御して集合玄関機1から居室親機3への下り伝送信号の信号伝送路、居室親機3から集合玄関機1への上り伝送信号の信号伝送路をそれぞれ形成する制御機4と、住戸毎に設置され制御機4に接続される住戸幹線L2を分岐して居室親機3に接続される住戸別線L3へ引込む(複数の)分岐器5と、住戸幹線L2のライン上である各分岐器5間の所定の位置に設置される(複数の)幹線増幅器6とを備えている。また、集合玄関機1は、玄関機接続線L1を経由して制御機4に接続されている。さらに、居室親機3は、子機/親機接続線L4を経由して玄関子機2に接続されている。
ここで、下り伝送信号とは、図3の説明図に示すような例えば、10MHz〜14MHzの所定の周波数帯域で、1280ビットの1フレーム内の所定の位置に「プリアンブル(図面上では、「P」と表記)」、「ヘッダ(図面上では、「H」と表記)」、「CRC」、「ガードビット(図面上では、「G」と表記)」がそれぞれ挿入されたスロットを配置することにより、集合玄関機1から居室親機3への例えば、呼出しのための制御データ(呼出データ)、前述の映像データ、音声データ等の各種データを該当スロットに挿入して伝送する信号である。
一方、上り伝送信号とは、図3の説明図に示すような例えば、3MHz〜5MHzの所定の周波数帯域で、1280ビットの1フレーム毎にチャンネル毎に複数のサブフレーム(制御用サブフレーム、音声用サブフレーム)が設けられ、サブフレーム内の所定の位置に「プリアンブル(P)」、「CRC」、「ガードビット(G)」がそれぞれ挿入されたスロットを配置することにより、居室親機3から集合玄関機1への例えば、呼出応答があることを示す制御データ(呼出応答データ)、前述の音声データ等の各種データを該当スロットに挿入して伝送する信号である。
また、(複数の)幹線増幅器6は、前述のような上り伝送信号の信号レベルを分岐器5の出力レベルまで増幅するとともに下り伝送信号の信号レベルを制御機4の出力レベルまで増幅するためのものであって、少なくとも当該住戸幹線の減衰量に対応した所定の間隔、例えば、当該住戸幹線の減衰量のみならず分岐器5の減衰(通過減衰)量に対応した所定の間隔で設置されている。ここでは、2階のフロアを含めより上階(3階、4階、・・・)のフロア毎に設置されているものとする。
なお、分岐器5の減衰量、すなわち、当該分岐器1台当たりの通過損失量とは、例えば、−0.15dBであり、制御機4から、より下流側の分岐器5として例えば、25階のフロアに設置される分岐器5の通過損失量は、例えば、−3.75dBである。
さらに、住戸幹線L2及び住戸別線L3はそれぞれ、当該装置のリ・プレースが容易とされる2線で構成されており、例えば、日本電線工業会(JCS)規格のFCPEV線又はAE線が好適とされる。
なお、住戸幹線L2を構成するFCPEV線の減衰量として、1mの線路長当たりでは、下り伝送信号が例えば、−0.1dB、上り伝送信号が例えば、−0.066dBそれぞれ減衰し、150mの線路長当たりでは、下り伝送信号が例えば、−15dB、上り伝送信号が例えば、−10dBそれぞれ減衰する特性を有している。
一方、住戸幹線L2を構成するAE線の減衰量として、1mの線路長当たりでは、下り伝送信号が例えば、−0.066dB、上り伝送信号が例えば、−0.033dBそれぞれ減衰し、150mの線路長当たりでは、下り伝送信号が例えば、−10dB、上り伝送信号が例えば、−5dBそれぞれ減衰する特性を有している。
次に、図1に示す当該装置の具体的な構成として、集合玄関機1には、玄関機操作部10、玄関機撮像部11及び玄関機通話部12が備えられている。ここで、玄関機操作部10は、集合玄関に居る来訪者が101号室、102号室、・・・、201号室、202号室、・・・、301号室、302号室、・・・、401号室、402号室、・・・、・・・のような各住戸のうち特定の住戸内に在室中の居住者を呼出す操作(呼出操作)を行うものであり、例えば、テンキーボタン10aや呼出ボタン10bで構成されている。
また、玄関機撮像部11は、玄関機操作部10(10a、10b)にて所定の呼出操作を行った来訪者の映像(集合玄関の周囲環境下の映像を含む)を撮像して映像データを生成するものであり、例えば、CCD、CMOS等の各種カメラで構成されている。
さらに、玄関機通話部12は、来訪者が呼出先である(特定の)居住者との間で通話を成立させる(送話音声、受話音声の)音声データを入出力するものであり、例えば、マイク12a及びスピーカ12bで構成されている。
次に、(複数の)玄関子機2は同様な構成であって、子機操作部20、子機撮像部21及び子機通話部22が備えられている。ここで、子機操作部20は、住戸玄関に居る来訪者が自住戸内に在室中の居住者を呼出す操作を行うものであり、例えば、呼出ボタン20aで構成されている。
また、子機撮像部21は、子機操作部20(20a)にて所定の呼出操作を行った来訪者の映像(住戸玄関の周囲環境下の映像を含む)を撮像して映像データを生成するものであり、例えば、CCD、CMOS等の各種カメラで構成されている。
さらに、子機通話部22は、来訪者が呼出先である居住者との間で通話を成立させる(送話音声、受話音声の)音声データを入出力するものであり、マイク22a及びスピーカ22bで構成されている。
次に、(複数の)居室親機3は同様な構成であって、親機表示部30、親機通話部31及び親機操作部32が備えられている。ここで、親機表示部30は、集合玄関機1又は(自住戸の)玄関子機2を使用した来訪者からの呼出しがあることを表示するとともに、集合玄関機1の玄関機撮像部11及び自住戸の玄関子機2の子機撮像部21にてそれぞれ生成される映像データのうち少なくとも集合玄関機1の映像撮像部11にて生成される映像データを出画するものであり、例えば、呼出表示・報知機能を有するLED30a及び映像出画機能を有するLCD、有機ELディスプレイ等のモニタ30bで構成されている。
また、親機通話部31は、居住者が呼出元である来訪者との間で通話を成立させる(送話音声、受話音声の)音声データを入出力するものであり、例えば、マイク31a及びスピーカ31bで構成され、このスピーカ31bは、前述の呼出報知機能も有している。なお、親機通話部31としては、ハンドセット(図示せず。)を備えることもできる。
さらに、親機操作部32は、居住者が来訪者からの呼出しに応答して通話を成立させる応答操作、成立中の通話を終了させる終話操作等を行うものであり、例えば、通話応答等の各種の操作ボタン32aやこれらの操作機能を有する(モニタ30bの画面上に設けられた)タッチパネル32bで構成されている。
次に、(複数の)幹線増幅器6の具体的な構成について、図2のブロック図を参照して説明する。同図に示す幹線増幅器6は同様な構成であって、上流側信号送受信部60、下流側信号送受信部61、上り伝送信号処理部62及び下り伝送信号処理部63を有している。
ここで、上流側信号送受信部60は、(上流側の分岐器5から)上流側の住戸幹線L2を経由して伝送されてくる下り伝送信号を受信して下り伝送信号処理部63に送出するとともに、下流側信号送受信部61から上り伝送信号処理部62を経由して伝送されてくる上り伝送信号を受信して上流側の住戸幹線L2に送出するものであり、例えば、ハイブリッド・トランスで構成されている。
また、下流側信号送受信部61は、(下流側の分岐器5から)下流側の住戸幹線L2を経由して伝送されてくる上り伝送信号を受信して上り伝送信号処理部62に送出するとともに、上流側信号送受信部60から下り伝送信号処理部63を経由して伝送されてくる下り伝送信号を受信して下流側の住戸幹線L2に送出するものであり、例えば、ハイブリッド・トランスで構成されている。
次に、上り伝送信号処理部62には、第1、第2の上り伝送用増幅器620、621、第1、第2の上り伝送用波形整形回路622、623、上り伝送用AGC増幅器624、上り伝送用利得設定回路625及び電圧比較回路626が備えられている。
ここで、第1の上り伝送用増幅器620は、下流側信号送受信部61にて受信された上り伝送信号(の信号レベル)を固定レベルである所定の利得で増幅するものである。また、第1の上り伝送用波形整形回路622は、第1の上り伝送用増幅器620の出力である上り伝送信号のうち例えば、3MHz〜5MHzの所定の周波数帯域のみを通過させるものである。
上り伝送用AGC増幅器624は、第1の上り伝送用波形整形回路622の出力である上り伝送信号(の信号レベル)を所定の利得で増幅するものである。また、上り伝送用利得設定回路625は、上り伝送用AGC増幅器624の出力電圧を直流電圧に変換して当該上り伝送用AGC増幅器にフィードバックすることで前述の所定の利得を決定するものである。
第2の上り伝送用波形整形回路623は、上り伝送用AGC増幅器624の出力である上り伝送信号のうち例えば、3MHz〜5MHzの所定の周波数帯域のみを通過させるものである。また、第2の上り伝送用増幅器621は、第2の上り伝送用波形整形回路623の出力である上り伝送信号(の信号レベル)を固定レベルである所定の利得で増幅し、上流側信号送受信部60から上流側の住戸幹線L2への出力を低電流で、かつ当該住戸幹線から見てハイ・インピーダンスとするものである。
電圧比較回路626は、上り伝送用利得設定回路625の出力電圧と下流側の住戸幹線L2がデータ非伝送時の直流電圧に設定される基準電圧を比較することで、上り伝送用利得設定回路625の出力電圧が基準電圧よりも高いときに上り伝送用AGC増幅器624から第2の上り伝送用増幅器621、上流側信号送受信部60を経由して上流側の住戸幹線L2への出力を停止するものである。
次に、幹線増幅器6の下り伝送信号処理部63には、第1、第2の下り伝送用増幅器630、631、第1、第2の下り伝送用波形整形回路632、633、下り伝送用AGC増幅器634及び下り伝送用利得設定回路635が備えられている。
ここで、第1の下り伝送用増幅器630は、上流側信号送受信部60にて受信された下り伝送信号(の信号レベル)を固定レベルである所定の利得で増幅するものである。また、第1の下り伝送用波形整形回路632は、第1の下り伝送用増幅器630の出力である下り伝送信号のうち例えば、10MHz〜14MHzの所定の周波数帯域のみを通過させるものである。
下り伝送用AGC増幅器634は、第1の下り伝送用波形整形回路632の出力である下り伝送信号(の信号レベル)を所定の利得で増幅するものである。また、下り伝送用利得設定回路635は、下り伝送用AGC増幅器634の出力電圧を直流電圧に変換して当該下り伝送用AGC増幅器にフィードバックすることで前述の所定の利得を決定するものである。
第2の下り伝送用波形整形回路633は、下り伝送用AGC増幅器634の出力である下り伝送信号のうち例えば、10MHz〜14MHzの所定の周波数帯域のみを通過させるものである。また、第2の下り伝送用増幅器631は、第2の下り伝送用波形整形回路633の出力である下り伝送信号(の信号レベル)を固定レベルである所定の利得で増幅し、下流側信号送受信部61から下流側の住戸幹線L2への出力を低電流で、かつ当該住戸幹線から見てハイ・インピーダンスとするものである。
このように構成された本発明の実施例による集合住宅インターホン装置において、以下、具体的な動作について説明する。
集合住宅の集合玄関に居る来訪者が、複数の住戸のうち例えば、301号室内に在室中の居住者を呼出すにあたり、図1に示す集合玄関機1の玄関機操作部10(10a、10b)を使用して所定の呼出操作を行うと、図3に示すような下り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、1フレーム内の最前、最後の該当スロットに「プリアンブル(P)」、「ガードビット(G)」がそれぞれ挿入され、「プリアンブル(P)」の直後のスロットである「ヘッダ」の該当スロットには、301号室を指定するための住戸アドレスを構成する親機番号を、「制御データ」の該当スロットには、呼出元である集合玄関機1を示す玄関機番号及び呼出しがある旨の呼出データを、「映像データ」の該当スロットには、玄関機撮像部11にて生成された映像データを、「ガードビット(G)」の直前の該当スロットには「CRC」をそれぞれ挿入させた下り伝送信号が生成される。この下り伝送信号は、時分割多重方式の信号(変調信号)であり、集合玄関機1から玄関機接続線L1、制御機4を経由して住戸幹線L2にマルチキャストで伝送される。
ここで、住戸幹線L2のライン上に設置された(複数の)分岐器5は、上流側の住戸幹線L2を経由して伝送されてくる下り伝送信号を住戸別線L3に引込み、この住戸別線L3を経由して自住戸の居室親機3に送出するとともに、同様に受信した下り伝送信号を上流側の住戸幹線L2に送出する。
なお、2階のフロアを含めより上階(3階、4階、・・・)のフロア毎のように、下り伝送信号が伝送される上流側の住戸幹線L2のライン上に幹線増幅器6が設置されている場合、幹線増幅器6を構成する図2に示す下り伝送信号処理部63は、上流側の住戸幹線L2を伝送され上流側信号送受信部60にて受信された下り伝送信号について、第1の下り伝送用増幅器630、第1の下り伝送用波形整形回路632を経由して所定の信号処理を行った後、下り伝送用AGC増幅器634に送出する。この下り伝送用AGC増幅器634には、下り伝送用利得設定回路635が当該下り伝送用AGC増幅器の出力電圧を直流電圧に変換してフィードバック入力されるため、その作用で決定された所定の利得で下り伝送信号(の信号レベル)を増幅することができる。すなわち、下り伝送信号が伝送されてきた住戸幹線L2の線路長に起因した前述の減衰量及びその伝送経路上に設置された所定数の分岐器5の減衰量に対応して、その振幅が小さい場合には大きな利得で増幅する一方、その振幅が大きい場合には小さな利得で増幅する。
また、下り伝送用AGC増幅器634の出力である下り伝送信号は、第2の下り伝送用波形整形回路633、第2の下り伝送用増幅器631を経由して所定の信号処理がなされた後、下流側信号送受信部61から下流側の住戸幹線L2に送出される。
したがって、前述のように下り伝送信号が伝送される上流側の住戸幹線L2のライン上に幹線増幅器6が設置されている場合、この幹線増幅器6の下り伝送信号処理部663は、下り伝送信号の信号レベルを制御機4の出力レベルまで増幅することができ、幹線増幅器6から上流側の住戸幹線L2を経由して伝送されてきた下り伝送信号を、分岐器5を用いて住戸別線L3に引込み、この住戸別線L3を経由して全ての居室親機3に送出するにあたっても、当該下り伝送信号が伝送されてきた住戸幹線L2の線路長に起因した前述の減衰量及び伝送経路上に設置される所定数の分岐器5の減衰量に影響されず、安定かつ正常な信号レベルが確保されることになる。
全ての居室親機3は、集合玄関機1から伝送されてきた下り伝送信号を受信すると、図3に示すフレーム構成を参照し、そのフレーム構成のうち「ヘッダ」の該当スロットに挿入される住戸アドレスを構成する親機番号と自居室親機に予め割当てられている親機番号とを比較し、当該親機番号が一致した場合にのみ、「制御データ」の該当スロットに挿入されている玄関機番号及び呼出データをもとに(集合玄関機1を使用した)集合玄関に居る来訪者からの呼出しがあることを検出することができる。
このような呼出先である特定の居室親機3によれば、親機表示部30のLED30a及び/又はモニタ30bや親機通話部31のスピーカ31bを使用して呼出報知(呼出表示、呼出発報)するとともに、「映像データ」の該当スロットに挿入されている映像データ、すなわち、集合玄関機1の玄関機撮像部11にて撮像された映像データをモニタ30bに出画させることができる。ここでは、301号室内に設置された居室親機3のみ当該親機番号が一致し、前述のような呼出報知(呼出表示、呼出発報)及び映像出画の動作が行われることになる。
次に、前述のような呼出報知(呼出表示、呼出発報)及び映像信号の出画をもとに、集合玄関に居る来訪者からの呼出しがあり、この来訪者を映像データの出画とともに確認することができた301号室内に在室中の居住者が、図1に示す居室親機3の親機操作部32(32a、32b)を使用して所定の応答操作を行うと、親機通話部31のマイク31a及びスピーカ31bの使用による通話機能が能動となるとともに、図3に示すような上り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、1フレームを構成する2チャンネル分のサブフレーム(制御用サブフレーム、音声用サブフレーム)のうち、空き状態である例えば、1チャンネル目の制御用サブフレーム内の最前、最後の該当スロットに「プリアンブル(P)」、「ガードビット(G)」がそれぞれ挿入され、「プリアンブル(P)」の直後のスロットである「制御データ」の該当スロットには、呼出応答先ある301号室内に設置された居室親機3を示す親機番号及び呼出応答がある旨の呼出応答データを、「ガードビット(G)」の直前の該当スロットには「CRC」をそれぞれ挿入させ、さらに、1チャンネル目の音声用サブフレーム内の最前、最後の該当スロットに「プリアンブル(P)」、「ガードビット(G)」がそれぞれ挿入され、「プリアンブル(P)」の直後のスロットである「音声データ」の該当スロットには、居住者により親機通話部31のマイク31aに入力された送話音声の音声データを、「ガードビット(G)」の直前の該当スロットには「CRC」をそれぞれ挿入させた上り伝送信号が生成される。この上り伝送信号は、時分割多重方式の信号(変調信号)であり、301号室内に設置された居室親機3から住戸別線L3、分岐器5、住戸幹線L2を経由して2階のフロアに設置された幹線増幅器6に伝送される。
一方、301号室内に設置された居室親機3以外の、同一階(3階)他住戸及び4階以上の各住戸の住戸内に設置された居室親機3によれば、前述のような上り伝送信号を住戸別線L3に送出することはなく、所謂、データ非伝送状態であるものの、データ非伝送状態の居室親機3であっても、その居室親機3に接続される住戸別線L3には従来例と同様、暗ノイズが重畳されるため、暗ノイズが分岐器5、住戸幹線L2を経由して上流側で直近の幹線増幅器6に伝送されることになる。
すなわち、例えば、301号室内に設置された居室親機3以外で同一階(3階)他住戸の住戸内に設置されたデータ非伝送状態の居室親機3から住戸別線L3に重畳された暗ノイズは、住戸幹線L2のライン上に設置された所定数の分岐器5及びその住戸幹線L2を経由して2階のフロアに設置された幹線増幅器6に伝送される、また、4階以上の各住戸の住戸内に設置されたデータ非伝送状態の居室親機3から住戸別線L3に重畳された暗ノイズについても、住戸幹線L2のライン上に設置された所定数の分岐器5及びその住戸幹線L2を経由して3階のフロアに設置された幹線増幅器6に伝送されるように、より上階の各住戸の住戸内に設置されたデータ非伝送状態の居室親機3から住戸別線L3に重畳された暗ノイズは、直下階のフロアに設置された幹線増幅器6に伝送されることになる。
そこで、2階及びより上階(3階、4階、・・・)の各フロアに設置された幹線増幅器6のうち、最初に、3階以上の各フロアに設置された幹線増幅器6を構成する図2に示す上り伝送信号処理部62は、4階以上の各住戸の住戸内に設置されたデータ非伝送状態の居室親機3より住戸別線L3へ重畳され、住戸幹線L2のライン上に設置された所定数の分岐器5及びその住戸幹線L2を経由して伝送され、下流側信号送受信部61にて受信された暗ノイズについて、第1の上り伝送用増幅器620、第1の上り伝送用波形整形回路622を経由して所定の信号処理を行った後、上り伝送用AGC増幅器624に送出する。
この上り伝送用AGC増幅器624には、上り伝送用利得設定回路625が当該上り伝送用AGC増幅器の出力電圧を直流電圧に変換してフィードバック入力されるため、その作用で決定された所定の利得で暗ノイズを増幅するものの、電圧比較回路626の比較結果として、上り伝送用利得設定回路625の出力電圧、すなわち、上り伝送用AGC増幅器624にフィードバックされる出力電圧が、下流側の住戸幹線L2がデータ非伝送時の直流電圧として予め設定されている基準電圧よりも高いため、上り伝送用AGC増幅器624から第2の上り伝送用波形整形回路623、第2の上り伝送用増幅器621、上流側信号送受信部60を経由して下流側の住戸幹線L2への信号伝送路が遮断される。
したがって、上り伝送用AGC増幅器624からの出力である暗ノイズが下流側の住戸幹線L2に重畳されることはなく、ゆえに、上流側の幹線増幅器6である、2階のフロアに設置された幹線増幅器6に対して、増幅された暗ノイズが送出されることはない。
次に、2階のフロアに設置された幹線増幅器6を構成する図2に示す上り伝送信号処理部62は、下流側の住戸幹線L2を伝送され下流側信号送受信部61にて受信された上り伝送信号について、第1の上り伝送用増幅器620、第1の上り伝送用波形整形回路622を経由して所定の信号処理を行った後、上り伝送用AGC増幅器624に送出する。
この上り伝送用AGC増幅器624には、上り伝送用利得設定回路625が当該上り伝送用AGC増幅器の出力電圧を直流電圧に変換してフィードバック入力されるため、その作用で決定された所定の利得で上り伝送信号を増幅することができる。すなわち、上り伝送信号が伝送されてきた住戸幹線L2の線路長に起因した前述の減衰量及びその伝送経路上に設置された所定数の分岐器5の減衰量に対応して、その振幅が小さい場合には大きな利得で増幅する一方、その振幅が大きい場合には小さな利得で増幅する。
また、電圧比較回路626によれば、上り伝送用利得設定回路625の出力電圧、すなわち、上り伝送用AGC増幅器624にフィードバックされる出力電圧と、下流側の住戸幹線L2のデータ非伝送時の直流電圧として予め設定されている基準電圧とを比較する。ここでは、301号室の分岐器5を経由して居室親機3から伝送されてくる上り伝送信号によって、上り伝送用利得設定回路625にて設定される利得が低くなることで、出力電圧が基準電圧よりも低いため、上り伝送用AGC増幅器624から第2の上り伝送用波形整形回路623、第2の上り伝送用増幅器621、上流側信号送受信部60を経由して下流側の住戸幹線L2への信号伝送路が形成され、この伝送路を経由して所定の信号処理がなされた上り伝送信号が上流側の住戸幹線L2に送出されることになる。
次に、301号室内に設置された居室親機3以外の、同一階(3階)他住戸の住戸内に設置されたデータ非伝送状態の居室親機3により住戸別線L3へ重畳された暗ノイズは、前述の上り伝送信号と同様、2階のフロアに設置された幹線増幅器6を構成する図2に示す上り伝送信号処理部62に伝送される。また、上り伝送信号処理部62は、下流側信号送受信部61にて受信された暗ノイズについて、第1の上り伝送用増幅器620、第1の上り伝送用波形整形回路622を経由して所定の信号処理を行った後、上り伝送用AGC増幅器624に送出する。
この上り伝送用AGC増幅器624には、上り伝送用利得設定回路625が当該上り伝送用AGC増幅器の出力電圧を直流電圧に変換してフィードバック入力されるため、その作用で決定された所定の利得で暗ノイズを増幅するものの、電圧比較回路626の比較結果として、上り伝送用利得設定回路625の出力電圧、すなわち、上り伝送用AGC増幅器624にフィードバックされる出力電圧が、下流側の住戸幹線L2がデータ非伝送時の直流電圧として予め設定されている基準電圧よりも高いため、上り伝送用AGC増幅器624から第2の上り伝送用波形整形回路623、第2の上り伝送用増幅器621、上流側信号送受信部60を経由して下流側の住戸幹線L2への信号伝送路が遮断される。
したがって、上り伝送用AGC増幅器624からの出力である暗ノイズが下流側の住戸幹線L2に重畳されることはなく、ゆえに、制御機4に対して、増幅された暗ノイズが送出されることはない。
なお、前述のように、2階のフロアに設置された幹線増幅器6から下流側の住戸幹線L2に送出された、増幅された暗ノイズの重畳がない上り伝送信号は、2階、1階の住戸数に対応して住戸幹線L2のライン上に設置された所定数の分岐器5及びその住戸幹線L2を経由して制御機4に伝送されるものの、2階のフロアに設置された幹線増幅器6と制御機4との間には幹線増幅器6が設置されていないため、1階、2階の各住戸の住戸内に設置されたデータ非伝送状態の居室親機3より住戸別線L3へ暗ノイズが重畳された場合であっても、この暗ノイズが増幅されることはなく、301号室内に設置された居室親機3からの上り伝送信号に影響を与えない安定かつ正常な信号レベルが保持され、制御機4から玄関機接続線L1を経由して集合玄関機1に伝送させることができる。
集合玄関機1は、301号室内に設置された居室親機3から伝送されてきた上り伝送信号を受信すると、図3に示すフレーム構成を参照し、そのフレーム構成のうち「制御データ」の該当スロットに挿入されている親機番号及び呼出応答データをもとに301号室内に在室中の居住者からの呼出応答があることを検出し、玄関機通話部12のマイク12a及びスピーカ12bの使用による通話機能を能動とするとともに、「音声データ」の該当スロットに挿入されている音声データ、すなわち、親機通話部31のマイク31aに入力された居住者の送話音声を、スピーカ12bから受話音声として出力することができる。
次に、集合住宅の集合玄関に居る来訪者が、呼出先である301号室内に在室中の居住者との間で通話を成立させるにあたり、集合玄関機1を構成する玄関機通話部12のマイク12aに送話音声を入力すると、図3に示すような下り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、1フレーム内の最前、最後の該当スロットに「プリアンブル(P)」、「ガードビット(G)」がそれぞれ挿入され、「プリアンブル(P)」の直後のスロットである「ヘッダ」の該当スロットには、301号室を指定するための住戸アドレスを構成する親機番号を、「制御データ」の該当スロットには、呼出元/音声送信元である集合玄関機1を示す玄関機番号を、「音声データ」の該当スロットには、玄関機通話部12のマイク12aに入力された送話音声の音声データを、「映像データ」の該当スロットには、前述のような呼出時より継続して玄関機撮像部11にて生成されている映像データを、「ガードビット(G)」の直前の該当スロットには「CRC」をそれぞれ挿入させた下り伝送信号を生成する。この下り伝送信号は、前述の呼出時における当該下り伝送信号と同様な伝送経路で、かつ同様な信号処理がなされた後、全ての居室親機3に伝送される。
全ての居室親機3は、集合玄関機1から伝送されてきた下り伝送信号を受信すると、図3に示すフレーム構成を参照し、そのフレーム構成のうち「ヘッダ」の該当スロットに挿入される住戸アドレスを構成する親機番号と自居室親機に予め割当てられている親機番号とを比較し、当該親機番号が一致した場合にのみ、「音声データ」の該当スロットに挿入されている音声データ、すなわち、玄関機通話部12のマイク12aに入力された来訪者の送話音声を、親機通話部31のスピーカ31bから受話音声として出力することができるばかりでなく、「映像データ」の該当スロットに挿入されている映像データ、すなわち、前述のような呼出時より継続して玄関機撮像部11にて生成されている映像データを親機表示部30のモニタ30bに出画させることができる。ここでは、301号室内に設置された居室親機3のみ当該親機番号が一致し、前述のような音声出力及び映像出画の動作が行われることになる。
前述までの説明から明らかなように、本発明の集合住宅インターホン装置によれば、住戸毎の分岐器5を経由して制御機4に接続される住戸幹線L2のライン上に、居室親機3から集合玄関機1への上り伝送信号の信号レベルを当該分岐器の出力レベルまで増幅する上り伝送信号処理部62と集合玄関機1から居室親機3への下り伝送信号の信号レベルを制御機4の出力レベルまで増幅する下り伝送信号処理部63とを有する幹線増幅器6を少なくとも当該住戸幹線の減衰量に対応した所定の間隔で設置し、この上り伝送信号処理部60が有する上り伝送用AGC増幅器624にて下流側の住戸幹線L2がデータ非伝送時の暗ノイズを増幅した場合であっても、その増幅された暗ノイズを上流側の住戸幹線に送出することはない。
したがって、上り伝送用AGC増幅器624の動作を停止させることなく、増幅された暗ノイズの上流側の住戸幹線L2への送出を停止できるため、上り伝送信号のフレームを構成するガードビットを減らすことができ当該上り伝送用AGC増幅器の応答速度が高められるとともに、例えば、音声データのサンプリングレートが高められることで音質が向上するように、当該上り伝送信号が有する所定の周波数帯域の有効利用が図られ、さらには、住戸幹線L2の線路長及び居室親機3の設置台数の自由度を高めることができる。
なお、本発明の集合住宅インターホン装置においては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成の当該装置であっても採用できるということはいうまでもないことである。
具体的に、本発明の実施例によれば、上り伝送信号の信号レベルを分岐器5の出力レベルまで増幅するとともに下り伝送信号の信号レベルを制御機4の出力レベルまで増幅する幹線増幅器6の設置場所として、2階のフロアを含めより上階(3階、4階、・・・)のフロア毎に設置させたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、少なくとも住戸幹線L2の減衰量に対応した所定の間隔であれば、例えば、より大規模な集合住宅に適用するにあたり、複数の棟毎に設置してもよい。
また、本発明の実施例によれば、集合玄関機1から特定の居室親機3への呼出時に伝送される下り伝送信号のフレーム構成として、玄関機通話部12のマイク12aに入力される送話音声の音声データを挿入せずに伝送させたが、この態様に限定されるものではない。例えば、その音声データを呼出時の下り伝送信号に挿入することで、呼出先である特定の居室親機3によれば、所定の呼出報知(呼出表示、呼出発報)及び映像出画の動作のみならず、親機通話部31のスピーカ31bから受話音声の出力も可能となる。
また、本発明の実施例によれば、集合玄関機1又は自住戸の玄関子機2からの呼出しに応答して音声データを送受信することで通話を成立させるとともに集合玄関機1及び(自住戸の)玄関子機2のうち少なくとも集合玄関機1にて生成される映像データを出画するために住戸内に設けられる機器として、居室親機3を適用したが、この態様に限定されるものではない。例えば、居室親機3と同様な機能を有する増設親機を設置し、所定の伝送路を経由して当該居室親機に接続することもできる。
さらに、本発明の実施例によれば、玄関子機2の態様として、子機撮像部21を有する当該玄関子機を適用したが、この態様に限定されるものではなく、子機撮像部21を不備とすることもできる。