JP5851700B2 - SiC系物質からの白金族元素の回収方法 - Google Patents

SiC系物質からの白金族元素の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、SiC系物質からの白金族元素の回収方法に関し、特に白金族元素を含有するSiC系物質を、スラグを用いて溶融させることにより、この白金族元素を回収する方法に関する。
従来、有用な銅資源である酸化銅(主としてCuO)から金属銅を回収する乾式プロセスという方法が知られている。この乾式プロセスは具体的に言うと、以下の通りである。
まず、酸化銅含有物質と、主として反応温度を低下させる役割のフラックスと、還元剤と、を溶融炉内で溶融してスラグを作る。そして、このスラグ中で起こる還元反応を利用して酸化銅から金属銅を生成させる。こうして生成した金属銅は、スラグの比重よりも重くなっており、スラグ中において沈むことになる。このように、生成させた金属銅とスラグとの比重差を利用して、スラグから金属銅を分離し回収する、という乾式プロセスが知られている。
この乾式プロセスの特徴は、還元されて生成した金属銅相がスラグ中を滴下していく過程で、スラグ中における、金属銅に対して溶融度が高い各種元素も、この銅相に引き摺られて滴下する、という点にある。実際に、スラグの下層に溜まった銅相を分析すると、この銅相の中にはスラグ中に存在していたはずの種々の元素が溶融している。
このことから、当該乾式プロセスは、スラグ中の種々の元素を高い回収率で銅相中に回収する方法として利用できる。この技術について一例を挙げると、使用済みのDPF(Diesel Particulate Filter)に使用されている自動車排ガス浄化触媒の担体を溶融銅に投入することにより、例えば白金族元素(PGM:Platinum Group Metals 以降、「PGM」とも言う。)をこの担体から回収する方法として利用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
なお、PGM以外にも金やその他の金属を回収する場合ももちろん存在するが、本明細書においては説明の便宜上、PGMを例にして説明する。
これらの乾式プロセスに適用されている自動車排ガス浄化触媒の担体としては、例えば、Al、SiO等の酸化物を主体としたものが挙げられる(例えば、特許文献5参照)。
このような酸化物担体を自動車排ガス浄化触媒として用いた場合、この酸化物担体にはPGMが含有されることになる。この酸化物担体からPGMを回収するために、乾式プロセスを利用する。ここで幸いなことに、PGMは、上記乾式プロセスにおける銅相との相溶性が比較的良好である。そのため、PGMを含有する酸化物担体を、上記乾式プロセスの金属銅及びスラグ中に溶融させることにより、白金族元素を銅相へ効率よく回収することが可能となる。
また、乾式プロセスに適用されている自動車排ガス浄化触媒の担体として、最近ではSiC系物質を用いた排ガス浄化システムの普及が進んでいる。このSiC系物質は、SiCを含む物質のことであり、上記の酸化物担体よりも、更に耐熱性に優れている。特に、ディーゼル排ガスのPM燃焼触媒に使用する場合、性能・耐久性向上が顕著になる。
その一方、SiC系物質は、酸化物系物質と比べた場合、上記乾式プロセスのスラグ中に溶融させにくい性質を有している。具体的に言うと、SiC系物質を上記乾式プロセスの溶融炉に投入したとしても、SiC系物質は固体のままスラグ面上に浮上してしまうおそれがある。また溶融したとしても、未反応のSiCがスラグ中に残存してしまうおそれもあり、そうなるとPGMの回収効率も著しく低下してしまうおそれがある。
この問題を解消すべく、SiC系物質を金属銅と共に溶融炉内で酸化処理し、Si酸化物と銅酸化物を含有する溶融酸化物層、金または白金族元素を含有する溶融金属銅層とに分離する技術が知られている(例えば、特許文献6参照)。また、仮にSiC系物質の一部が未反応であったとしても、未反応のSiC系物質が混入したスラグを還元剤として使用し、酸化銅から銅へと還元する技術も知られている(例えば、特許文献7参照)。
また、乾式プロセスのスラグ中に溶融させやすくすべく、SiC系物質をフラックスと混合した状態で、溶融したスラグ中に投入する技術が知られている(例えば、特許文献8参照)。
特開2004−68071号公報 特開2004−275866号公報 特開2004−277791号公報 特開2004−277792号公報 特開2009−24263号公報 特開2008−88450号公報 特開2008−88452号公報 特開2007−224336号公報
上述のように、SiC系物質に含有されるPGMを効率よく回収するために、未反応のSiC系物質を取り除いたり、スラグ中に溶融させやすくしたりする発明が種々提案されている。
その一方、そもそもSiCは融点が2700℃以上という非常に高温となっている。そのため、スラグ中において未反応のSiC系物質を発生させないためには、SiC系物質をスラグ中に溶融させるときの温度を、通常、1400℃〜1500℃という高温に設定しなければならなかった。仮に、上記範囲の溶融温度以下にてSiC系物質をスラグ中へ溶融すると、未反応のSiC系物質が発生するおそれが生じ、均質な溶融を行うことができなくなるおそれも否定できない。
先に述べたように、乾式プロセスには、スラグ中のPGMを回収するという役割もある。そして、SiC系物質をこのスラグ中に溶融させることにより、SiC系物質に含有されるPGMを回収するという役割がある。つまり、SiC系物質が均質にスラグ中に溶融するからこそ、SiC系物質に付着していたPGMが、スラグやSiC系物質と共に存在する銅相の滴下に引き摺られて、スラグの下層の銅相へと移動することになる。逆に言うと、SiC系物質が均質にスラグ中に溶融できなければ、PGMの回収効率に多大な影響を及ぼす。
そのため、SiC系物質を均質にスラグ中に溶融させるための溶融温度は、例え高温であっても設定・維持する必要がある。
ところが、このように高温が必要な状態だと、スラグに対する加熱を停止し、スラグを別の溶融炉に移送してスラグの温度が低下する際、スラグの温度変動が著しく急激になってしまう。この急激な温度変動により、溶融炉にダメージを与えてしまうおそれもあるし、PGMの回収条件を一定にすることができず、回収効率を著しく低下させることにもなりかねない。また、温度が低下したスラグに対し、再度、上述のような高温状態へと移行するためには装置に対して多くの電力が必要となり、装置の稼働コストが増大することになってしまう。
しかも、この溶融温度の高温化は、スラグがAl−CaO−SiO系となると、更に顕著になる。
この溶融温度の高温化に対する方策としては、SiC系物質をスラグ中に溶融する温度を下げるために、SiC系物質と共にNaOのようなフラックスを存在させるという選択肢も確かにある。しかしながら、乾式プロセス中に、NaOが溶融炉にダメージを与えるおそれも否定できない。更に、後々、PGMを回収するということを考えると、PGM以外の物質の種類はそもそも少ない方が良い。
とはいえ、NaOのようなフラックスを存在させないことには、上述のような溶融温度の高温化を抑制できないのが現状である。その結果、上述のような高温の溶融温度で溶融を行わざるを得ず、装置の稼働コストを著しく増大させることになっており、ひいてはPGMの回収コストの増大をもたらしている。
そこで本発明の目的は、SiC系物質からの白金族元素の回収方法であって、SiC系物質がスラグ中に均質に溶融する温度を低下させる方法を提供することである。
本発明者は、上述の目的を達成できる方法について検討した。その際、本発明者は基本に立ち返り、NaOのようなフラックスを存在させることの意義について検討した。そもそも、NaOのようなフラックスの存在意義の一つは、SiC系物質よりも融点が低い別物質を混合して溶融温度を下げることにある。つまり、SiC系物質のスラグに対する溶融温度は、上記別物質に依存することになる。即ち、SiC系物質単体では、上記の溶融温度をコントロールできないと考えられていた。
そこで本発明者は、上記の発想を逆転させ、溶融温度を上記別物質に依存することなく、SiC系物質単体で溶融温度をコントロールできないか検討した。その検討に際し、SiC系物質の配合比コントロールについて記載している特許文献6及び7に着目した。
特許文献6及び7に記載のように、従来だと、特許文献6及び7のように、金属銅に対して未反応のSiCの発生を抑制するという観点でしかSiC系物質の量を規定していなかった。
しかしながら、本発明者らは、金属銅に対してして未反応のSiCの発生を抑制するSiCの量という観点以外に、スラグの質量に対する、SiC系物質におけるSiCの質量が、SiC系物質のスラグに対する溶融温度にも著しく影響を与えているという知見を得た。つまり、SiC系物質単体によって、上記の溶融温度をコントロールできることを見出した。
その結果、フラックスを存在させるまでもなく、スラグの質量に対するSiCの質量に応じて、SiC系物質がスラグ中に均質に溶融する温度を今までよりも著しく低下させることができることを見出した(後述する実施例中の表1及び表2参照)。別の言い方をすると、従来の考えとは全く逆に、作業者自らが希望する溶融温度を一定の範囲内で設定し、その溶融温度に応じて、スラグの質量に対するSiCの質量及び溶融時間を随時選択することが可能となった。
本発明者は、以上の知見を元にして、上述の課題が解決可能となる手段に想到した。
この知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の形態は、
白金族元素を含有するSiC系物質を、ROSEプロセスにおける還元溶錬後のAl−CaO−SiO系スラグを用いて溶融させることにより前記白金族元素を回収する方法において、
前記SiC系物質が前記スラグの中に均質に溶融可能となる溶融温度及び溶融時間の範囲であって、前記スラグの質量に対する、前記SiC系物質におけるSiCの質量に応じて決定される溶融温度及び溶融時間の範囲から選択された溶融温度及び溶融時間にて、前記スラグを用いて前記SiC系物質を溶融させることを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法である。
ただし、SiC系物質とは、SiCを含有する物質のことである。
本発明の第2の形態は、第1の形態に記載の発明であって、
前記SiCの質量の比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))、前記溶融温度、及び前記溶融時間は、以下の関係を有していることを特徴とする。
≦0.01×[{−82.955Ln(t)−83.809}×{(10)/T}+58.858Ln(t)+61.904]
ただし、W=Wsic/(Wslag+Wsic):SiCの質量比
sic:SiCの質量
slag:スラグの質量
T:溶融温度(K)
t:溶融時間(h)
である。
本発明によれば、SiC系物質からの白金族元素の回収方法であって、SiC系物質がスラグ中に均質に溶融する温度を低下させる方法を提供できる。
本実施例にて用いた溶融炉を示す断面概略図である。 本実施例にて用いたスラグそのものの溶融条件を示す写真である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20(即ち1/5)として作製した試料において、試料中の炭素濃度と溶融時間の関係を示す図である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20(即ち1/5)として作製した試料において、SiCの反応率と溶融時間の関係を示す図である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20(即ち1/5)として作製した試料において、溶融時間を6時間としたときの試料を示す写真である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20(即ち1/5)として作製した試料、又は、0.25(即ち1/4)として作製した試料において、溶融時間を6時間としたときの、溶融温度1250℃、1300℃、1350℃ごとの試料を示す写真である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.25(即ち1/4)として作製した試料において、試料中の炭素濃度と溶融時間の関係を示す図である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.25(即ち1/4)として作製した試料において、SiCの反応率と溶融時間の関係を示す図である。 本実施例にて、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.25(即ち1/4)として作製した試料において、溶融時間を6時間としたときの試料を示す写真である。
以下、本発明の実施の形態においては乾式プロセスを行うことを前提としつつ、次の順序で説明を行う。
1.SiC系物質からの白金族元素の回収方法
A)スラグの準備
B)SiC系物質の準備
C)溶融炉の準備
D)スラグの溶融
E)SiC系物質の投入
F)その他の工程
2.実施の形態による効果
3.変形例
<1.SiC系物質からの白金族元素の回収方法>
A)スラグの準備
本実施形態で用いるスラグの組成としては、従来からの操業で得られているスラグ組成、すなわち例えばコージェライト系の触媒担体廃棄物の処理によって生成されるスラグ組成と同様の酸化物配合比とすればよい。スラグの種類について具体的な例を挙げるとすれば、ROSEプロセス(後述)における還元溶錬後のAl−CaO−SiO系スラグが挙げられる。この組成のスラグだと、上述の通り、溶融温度が上昇してしまう。だからこそ、本実施形態の方法を用いることにより、著しく溶融温度を低下させることができ、より顕著な効果を期待できる。
なお、上記スラグの具体的な組成については特に限定されないが、一例を挙げるとすれば、乾式プロセス中の還元反応進行中において、概ねAl:20〜40mass%、SiO:25〜40mass%、CaO:20〜35mass%、FeO及び/又はMgO:0〜10mass%(ただし、4成分の総和を100mass%とした値)の範囲のものが挙げられる。
なお、このような酸化物の配合比は、それまでに行われた乾式プロセスで得られたスラグ原料やフラックスの配合量により調整することができる。
B)SiC系物質の準備
本実施形態で用いるSiC系物質としては、SiCを含むことは当然として、NaOのようなフラックス成分の元となるNaCoの他、酸化銅、スラグ系酸化物などの原料と共に混合して添加することができる。
ただし、実施例にて後述するように、NaOのようなフラックス成分を必要とせずとも(むしろ上記のフラックス成分が存在しない方が)、スラグ中にSiC系物質を溶融することができる。そのため、SiC系物質を上記スラグの中に溶融させる際に、上記SiC系物質と共にはフラックスを投入しないことが好ましい。
もちろん、NaOのようなフラックス成分が存在しても、後述する実施例が示すように、本実施形態の効果を得ることができる。その結果、NaOのようなフラックス成分を添加する場合も、本実施形態の技術思想に含まれることになる。
なお、SiC系物質の形状であるが、10mmの篩を通過する程度の粒度に調整された粒状物または粉状物として、十分に混合された状態であることが望ましい。一方、酸化処理反応を促進させるためには、溶融炉内に装入されるSiC系物質は5mm目の篩を通過する粒度であることが好ましい。上記SiC系物質(またはその微粒)を、5mm目の篩を通過する粒度の範囲内で造粒することによって、飛散を防止することができる。つまり、上記SiC系物質は破砕されて微粒が発生したとしても、この場合には酸素含有ガスの溶融炉内への吹き込み(酸化処理)によってその微粒が溶融炉外へ飛散するのを抑制することができる。
また、本実施形態における回収方法を行う前のSiC系物質はPGMを含有している。このPGMとは、元素の周期表第VIII族に属するルテニウムRu、ロジウムRh、パラジウムPd、オスミウムOs、イリジウムIr、白金Ptの6元素を示す。
また、本実施形態において「PGMを含有するSiC系物質」とは、PGMを担持等の種々の形態で含有するSiCを主体とする物質の総称であって、好ましくはSiCが50質量%を超えて含有されているSiC主体の材料であり、他の添加物質やPM(ディーゼルエンジンからの排ガスの粒子状物質)などが含有されている場合がある。この「PGMを含有するSiC系物質」としては、例えば、上記のディーゼルエンジンの排ガス浄化用触媒の廃棄物、さらに電子部品廃棄物等が挙げられる。
C)溶融炉の準備
本実施形態においては、図1の断面概略図に示すような溶融炉を用いる場合について説明する。本実施形態における溶融炉1は、二珪化モリブデン(MoSi)の発熱体からなる電気炉2と、電気炉2に覆われた反応チューブ3と、反応チューブ3に覆われた酸化マグネシウム(MgO)からなるるつぼ4と、を有している。また、反応チューブ3は外側チューブ31と内側チューブ32の2重構造となっており、内側チューブ32の内部に、スラグとSiC物質6(以降、単にまとめてスラグ6とも言う)を投入するためのるつぼ4が設けられている。
なお、反応チューブ3の先端は開口となっており、外側チューブ31には、溶融炉1を冷却するためのガスを吸気・排気するためのガス導入部5がはめ込まれている。このガス導入部5には、反応チューブ3内にガスを吸気させる吸気部51と、このガスを排気する排気部52とが設けられている。吸気部51及び排気部52は管状となっており、反応チューブ3の外のガス貯留部(図示せず)又は外気と、内側チューブ32内とを連通させる構造となっている。そして、スラグを素早く冷却させるために、内側チューブ32内における吸気部51の先端の方が、同じく内側チューブ32内における排気部52の先端よりも、るつぼ4に近接している。
D)スラグの溶融
上記の溶融炉1を用いて、まずは、上記のスラグをるつぼ4内にて溶融する。後述する実施例(図2)で示すように、本実施形態における一例のスラグに対し2時間の加熱を行う場合、1300℃以上であるならば、スラグそのものを溶融させることができる。つまり、このスラグの場合、1300℃以上であるならば、SiC系物質をスラグ中へと均質に溶融させるための最低条件をクリアすることができる。
E)SiC系物質の投入
その後、上記SiC系物質を、溶融されたスラグへと添加する。そして、これらを加熱することにより、SiC系物質の酸化処理を行うことになる。
本工程においては、従来のように溶融温度をフラックスに依存させるのではなく、スラグの質量に対するSiCの質量を変化させることにより、溶融可能な温度及び時間を、作業者が決定するという大きな特徴がある。
具体的に言うと、本工程において、SiC系物質が上記スラグの中に均質に溶融可能となる溶融温度及び溶融時間の範囲を決定する。つまり、上記スラグの質量に対する、上記SiC系物質におけるSiCの質量に応じて溶融温度及び溶融時間の範囲を決定する。そして、その範囲から選択された溶融温度及び溶融時間にて、上記スラグを用いて上記SiC系物質を溶融させる。
この手法を用いることにより、後述する実施例が示すように、SiCの質量を変動させるだけで溶融可能な温度を1300〜1450℃程度にすることが可能となり、溶融温度を従来に比べて100℃以上も低下させることが可能となる。これが可能だからこそ、SiCの質量を、均質な溶融を行うための温度及び時間の決定要因として設定することができる。
なお、本実施形態における「均質」とは、スラグに対してSiC系物質を投入して加熱を行ってから冷却した際に、るつぼ4内において、未反応のSiC系物質が少なくとも目視では確認できない状況のことを指す。
均質な溶融を行うための温度及び時間の決定要因としてSiCの質量を設定する具体例については後述の実施例にて説明するが、溶融温度を1300℃としたとき、例えばSiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20以下とし、上記溶融時間を6時間以上とすると、SiC系物質をスラグ中に均質に溶融させることができる(表1、図5及び図6参照)。
また、例えば、溶融温度を1350℃としたとき、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.25以下とし、上記溶融時間を6時間以上とすると、SiC系物質をスラグ中に均質に溶融させることができる(図6参照)。
また、例えば、溶融温度を1450℃としたとき、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.33以下とし、上記溶融時間を6時間以上とすると、SiC系物質をスラグ中に均質に溶融させることができる(表2参照)。
本実施形態においては、予め、上記スラグを用いて上記SiC系物質を溶融する場合対応する所定のデータを取得しておくのが好ましい。即ち、上記スラグを用いて上記SiC系物質を溶融する際の、SiCの質量比、溶融可能な温度、及びその時間についての関係を調査しておくのが好ましい。そうすることにより、作業者が希望する溶融温度において、均質な溶融が可能になるSiCの質量比及び溶融時間の範囲を算出することができ、この範囲内から適宜、回収に最適なSiCの質量比及び溶融時間を選択することができる。
ここで、後述する実施例で得られた結果から、均質な溶融が可能になるSiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間の関係について、一般化した式(1)を以下に示す。
≦0.01×[{−82.955Ln(t)−83.809}×{(10)/T}+58.858Ln(t)+61.904]・・・式(1)
ただし、W=Wsic/(Wslag+Wsic):SiCの質量比
sic:SiCの質量
slag:スラグの質量
T:溶融温度(K)
t:溶融時間(h)
である。
なお、上記の式(1)は、後述する実施例の表1及び表2の結果を基に、均質な試料を作製できた場合とそうでない場合の境を示す式を、「SiCの質量比」、「溶融温度」、及び「溶融時間」の関係に基づいて経験式的に導き出した近似式である。
具体的に言うと、例えば溶融温度1300℃におけるSiCの質量比及び溶融時間のグラフを作製し、均質な試料を作製できたSiCの質量比及び溶融時間、並びに、そうでなかったSiCの質量比及び溶融時間をプロットする。そして、均質な試料を作製できた場合とそうでなかった場合との境界を近似式として導き出す。同様のことを溶融温度1450℃でも行う。その後、溶融時間ごとに、SiCの質量比及び溶融温度のグラフを作製し、SiCの質量比及び溶融温度における式を導き出す。そして最後に、SiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間の関係を示す一般式を導き出す。
つまり、上記の式(1)の関係を満たす限り、任意の「SiCの質量比」、「溶融温度」、及び「溶融時間」であっても、SiC系物質をスラグ中に均質に溶融させることが可能となる。
なお、具体的な溶融の方法についてであるが、公知の方法を用いて良い。いくつか例を挙げるとすれば、以下の方法が挙げられる。
(1)SiC系物質を既に溶融しているスラグ中に投入する場合は、少なくともフラックス成分と混合した状態で投入する。こうすることでスラグ中に没入して滞留している機会を十分に付与でき、SiCの溶融が進行する。
(2)粉砕されたSiC系物質を、同じく粉砕された他のスラグ原料(フラックス成分を含む)とともに混合した状態で昇温させ、メルトダウンさせる。こうすることでSiC系物質の溶融が促進される。
詳しくは、<3.変形例>にて説明する。
また、SiC系物質をスラグに対して溶融させる際に、ガス導入部5の吸気部51から、酸素を含有するガスを反応チューブ3内に導き入れ、スラグ6の表面にそのガスを吹き付けながら、SiC系物質の溶融処理を行っても良い。なお、吹き付けられた後のガスは、ガス導入部5の排気部52から溶融炉1の外へと排出される。
また、冷却の方法については、C)溶融炉の準備でも述べたが、例えばアルゴンガスのような不活性ガスを溶融炉1内に導入し、るつぼ4内におけるスラグを冷却しても良い。
F)その他の工程
本実施形態によって得られる、PGMを含有する溶融金属銅層からは、種々の溶融法または電解法などの公知の方法によって金または白金族元素をさらに分別回収することができる。
<2.実施の形態による効果>
本実施形態においては、以下の効果を奏する。
そもそもSiCは融点が2700℃以上という非常に高温となっている。そのため、スラグ中において未反応のSiC系物質を発生させないためには、SiC系物質をスラグ中に溶融させるときの温度を、通常、1400℃〜1500℃という高温に設定しなければならなかった。
しかしながら、本実施形態のように、スラグの質量に対するSiCの質量を変化させることにより、均質に溶融可能な温度を大きく低下させることができる。つまり、SiC系物質単体によって、上記の溶融温度をコントロールできる。
その結果、フラックスを投入するまでもなく、スラグの質量に対するSiCの質量に応じて、SiC系物質がスラグ中に均質に溶融する温度を今までよりも著しく低下させることができる。別の言い方をすると、作業者自らが希望する溶融温度を一定の範囲内で設定し、その溶融温度に応じて、スラグの質量に対するSiCの質量及び溶融時間を随時選択することが可能となる。
その結果、上述のように、比較的低い溶融温度で溶融を行うことができる。その結果、装置の稼働コストを著しく低減させることができ、ひいてはSiC系物質からのPGMの回収コストの低減を図ることができる。
<3.変形例>
本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
以下、上記の内容以外の変形例について列挙する。
本実施形態においては溶融炉1を単なる炉として記載したが、転炉または回転炉を用いても良い。必要に応じて傾動または回転させることによってSiC系物質と溶融金属銅の接触・混合を促進させることができる。更には、酸化処理後に傾動させることによって最初に溶融酸化物層を抜き出し、その後、溶融金属銅の層を抜き出すことができ、両層を容易に分離することができる。
また、溶融炉1内のスラグ及びSiC系物質の表面に大気ではなく酸素ガスまたは酸素含有ガスを直接に吹き込むことによって、溶体の撹拌を促し、SiCの酸化速度を速めることもできる。
また、ここでいう酸素含有ガスの濃度には特に制限はないが、酸化処理速度向上の点から酸素濃度40%以上の酸素含有ガスが好ましい。
なお、本実施形態における回収方法を行うための装置は、公知となっているPGM回収装置(例えば、特許文献5(特開2009−24263号公報)に記載の装置)を用いても構わない。なお、特許文献5に記載されたPGMの回収方法は「ROSEプロセス」と呼ばれる方法である。このROSEプロセスは掻い摘んで言うと、以下の通りである。
即ち、PGMを含有する被処理部材と、酸化銅を含有する銅源材料とを、フラックス成分および還元剤と共に密閉型電気炉に装填する。そして、装填されたこれらの物質を還元溶錬する。
そして、酸化物主体の溶融スラグ層の下方に金属銅主体の溶融メタルを沈降させる。溶融炉1内の酸化処理後の溶融酸化物と溶融金属銅との混合溶融体(液相)を炉内で静置する。その結果、酸化処理後の溶融酸化物は溶融金属銅より比重が小さいので、溶融酸化物は上層、溶融金属銅は下層となって容易に相互に分離される。こうして、下方に沈降した溶融メタル中にPGMを濃縮させる。
その後、PGMが濃縮した溶融メタルを、溶融スラグから分別して別の炉に溶融状態のまま移し替える。そして、別の炉において、当該溶融メタルを酸化溶錬することにより酸化物主体のスラグ層とPGMがさらに濃縮した溶融メタル層に層分離させる。以降、これを繰り返すことにより、溶融メタル層にPGMを濃縮して含有させることによりPGMを回収する方法である。
このROSEプロセスを利用して、SiC系物質が含有するPGMを回収しても良い。
本実施形態のスラグはSiC系物質の酸化により生じたSi酸化物と金属銅の一部の酸化により生じた銅酸化物によって形成されるが、必要に応じてCa酸化物、Al酸化物、Fe酸化物、Na酸化物などのフラックスを少量添加して、スラグ流動性を向上させ、または操業スラグ温度を低下させて、より良好なスラグを形成することもできる。
なお、本実施形態においてはスラグのみが存在する状態においてSiC系物質を投入する例について説明しているが、溶融銅に酸化処理を加えることにより現在進行形で発生しているスラグを用いても良い。つまり、溶融銅を予め、るつぼ4内に配置しておき、溶融銅の表面に対して酸素含有ガスを吹き付けて酸素処理を行うことにより発生する溶融スラグに対し、SiC系物質を投入しても良い。
先に述べたように、SiC系物質が均質にスラグ中に溶融するからこそ、SiC系物質に付着していたPGMが、スラグやSiC系物質と共に存在する銅相の滴下に引き摺られて、スラグの下層の銅相へと移動することになる。
そのため、本実施形態で説明したようなスラグとSiC系物質とを混合した場合に加え、本来のPGM回収態様として、溶融銅を加えた上で、SiC系物質が含有するPGMを回収しても良い。
なお、この溶融銅と共にSiC系物質を予め、るつぼ4内に配置しても良い。そして、これらを同時に溶融させても良い。なお、後述の本実施例においてはこの形式を用いた場合について説明する。
なお、本実施形態で説明したような形式、即ちSiC系物質をスラグに直接に溶融させる場合に加え、上記の場合も含めて、「白金族元素を含有するSiC系物質を、スラグを用いて溶融させる」と言う。
上記において用いられる溶融銅の元になる金属銅は、純度において制限はなく、白金族元素は勿論、金が含有されていても良く、上記のPGMの回収方法を金にも応用することができる。更には、鉄、クロム等の不純物元素が含有されていても不都合なく使用することができる。
(実施例1)
本実施例においては、説明の便宜上、「比較例」に相当するSiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間で作製された試料についても実施例の欄において説明するが、本発明が適用されるのはあくまで「SiC系物質がスラグの中に均質に溶融された試料」である。その点を踏まえ、以下、説明する。
A)スラグの準備
本実施例におけるスラグとして、Al(35mass%)−CaO(32.5mass%)−SiO(32.5mass%)の組成を有するROSEプロセスの還元炉スラグを用いた。
このスラグに対し、「スラグ自体の溶融温度」を調査すべく、以下の試験を行った。
まず、図1の溶融炉1のるつぼ4内にて上記スラグ5gを1250℃〜1450℃で2時間加熱した。このとき、雰囲気は大気雰囲気とした。そして、導入部5の吸気部51からアルゴンガスを導入し、上記スラグを冷却し、スラグの調査用試料を作製した。その結果を図2に示す。図2(a)は溶融温度を1250℃とした試料であり、同様に(b)は1300℃、(c)は1350℃、(d)は1400℃、(e)は1450℃とした試料である。
これを見ると1300℃の場合から温度を上昇させた場合(図2(b)〜(e))においてはスラグが溶融した状態で凝固していることがわかる。そのため、SiC系物質を投入する前の、本実施例のスラグ単体においては、1300℃以上にて溶融可能であると判断した。即ち、SiC系物質をスラグに対して溶融させる温度は、低くとも1300℃以上が必要であると判断した。
B)SiC系物質の準備
本実施例におけるSiC系物質として、500mesh(40μm目)の篩を通過したSiC製のDPF(Diesel Particulate Filter)の粉末をるつぼ4内に配置した。なお、SiCの質量比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20又は0.25とした。
C)溶融炉の準備〜D)スラグの溶融
配置完了後、スラグ及びSiC製のDPF粉末を1300℃に維持して溶融させつつ、酸素含有ガスとして大気ガスを反応チューブ3内に導入し、スラグ及びSiC製のDPF粉末の表面上から流量200ml/分で吹きつけた。なお、溶融時間は4〜24時間の範囲で行い、各溶融時間に分けて試料を作製した。
その後、電気炉2を停止し、ガス導入部5の吸気部51からアルゴンガスをスラグ及びSiC製のDPF粉末の表面上から吹きつけ、試料を急冷し、溶融処理を終了した。
(実施例2)
実施例2においては、DPF粉末と共に、フラックスであるNaOが5mass%になるように、NaCOを投入した。この点を除いて、実施例1と同様に試料を作製した。
(実施例3)
実施例3においては、溶融温度を1300℃ではなく1350℃にして、溶融時間を6時間に固定した点以外は、実施例1と同様に試料を作製した。
(実施例4)
実施例4においては、溶融温度を1300℃ではなく1450℃にして、SiCの質量比を0.067〜0.534の範囲とした点以外は、実施例1と同様に試料を作製した。
(評価)
まず、実施例1の試料についての評価を行った。その評価結果については、表1に示す(表1及び後述の表2においては、SiCの質量比は百分率で記載。例えば表1における20mass%は、本明細書におけるSiCの質量比でいうと0.20に相当する)。なお、今回の評価において、スラグに対してSiC系物質を投入して加熱を行ってから冷却した際に、るつぼ4内において、未反応のSiC系物質が少なくとも目視では確認できない状況の場合、均質性が良好(◎)であるとした。逆に、未反応のSiC系物質が目視で確認できた状況の場合、均質性が良好でない(×)とした。
この表1から、均質に溶融している場合としていない場合との境界を示す式を近似式で導くと、以下の式が得られた。
=0.01×(6.1211Ln(t)+8.6253)・・・式(2)
ただし、W=Wsic/(Wslag+Wsic):SiCの質量比
t:溶融時間(h)
また、実施例1において、SiCの質量比を0.20とした場合の試料中における炭素濃度と溶融時間との関係を調べた。それと同時に、実施例2(NaOが存在)の場合についても同様に炭素濃度と溶融時間との関係を調べた。その結果を図3に示す。なお、本実施例では、先に述べた目視確認に加え、この結果についても均質性の判断材料の候補としている。
なお、試料中における炭素濃度は、装置名HORIBA EMIにて測定した。
図3を見ると、実施例1(NaOなし)の試料の方が、未反応の炭素が極めて少なくなっていることがわかる。しかも、溶融時間が極めて短い時間(6時間)においてでさえ、未反応の炭素が極めて少なくなっており、残存SiCがほとんど存在しないことがわかる。
ただ、実施例2(NaOが存在)においても、溶融時間が短い時間(8時間)には未反応の炭素が極めて少なくなっており(0.01mass%以下)、残存SiCがほとんど存在しないことがわかる。
また、SiCの反応率と溶融時間との関係についても同様に調べた。その結果を図4に示す。図4で示すSiCの反応率は、以下のように定義している。
(SiCの反応率)={(溶融処理前の炭素濃度)−(溶融処理後の炭素濃度)}/(溶融処理前の炭素濃度)
図4においても、図3と同様の傾向が伺える。即ち、実施例1(NaOなし)の試料だと、溶融時間が極めて短い時間(6時間)においてでさえ、SiCの大半が反応していることがわかる。ただ、実施例2(NaOが存在)においても、溶融時間が短い時間(8時間)だと、SiCの大半が反応していることがわかる。
なお、実施例2において未反応のSiCが残存していた理由としては、NaO源として加えたNaCOが分解してNaOと共にCOを発生させ、CO分圧が高くなってしまい、本来必要な化学反応(SiC+O→SiO+CO)を抑制したためと推測される。
また、実施例1において、SiCの質量比を0.20とし、溶融時間を6時間とした場合についての試料の写真を図5及び図6に示す。図5及び図6に示すように、未反応のSiCは写真からは確認できず、SiCは極めて均質にスラグに溶融していることがわかる。
次に、実施例1において、SiCの質量比を0.20そして0.25とした場合の違いを示す評価結果について述べる。
図3と同様に、SiCの質量比を0.25とした場合の試料中における炭素濃度と溶融時間との関係を調べ、その結果を図7に示す。なお、SiCの質量比を0.25とした場合と共に、先に述べた質量比0.20の場合についても併記した。
図7を見ると、質量比0.20の試料の方が、溶融時間が極めて短い時間(6時間)においてでさえ、未反応の炭素が極めて少なくなっていることがわかる。
ただ、質量比0.25の試料においても、溶融時間が短い時間(8時間)には未反応の炭素が極めて少なくなっており、残存SiCがほとんど存在しないことがわかる。
また、図4と同様に、SiCの反応率と溶融時間との関係についても同様に調べた。その結果を図8に示す。図8においても、図7と同様の傾向が伺える。即ち、質量比0.20の試料だと、溶融時間が極めて短い時間(6時間)においてでさえ、SiCの大半が反応していることがわかる。ただ、質量比0.25においても、溶融時間が短い時間(8時間)だと、SiCの大半が反応していることがわかる。
また、実施例1において、SiCの質量比を0.25とし、溶融時間を6時間又は9時間とした場合についての試料の写真を図9に示す。図9(a)に示すように、SiCの質量比を0.25とし、溶融時間を9時間とした場合、未反応のSiCは写真からは確認できず、SiCは極めて均質にスラグに溶融していることがわかる。なお、この場合におけるSiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間は、本実施形態で述べた式(1)の範囲に属している。
その一方、溶融時間を6時間とした場合、図9(b)に示すように、未反応のSiCは写真から確認することができてしまう。このように、SiCの質量比を0.25とし、溶融時間を6時間とした場合、未反応のSiCが存在する様子は、図6にも示されている。なお、この場合におけるSiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間は、上記式(1)の範囲に属していない。
次に、実施例3(溶融温度1350℃)の試料についての評価を行った。実施例3で作製した試料の写真を図6に示す。この場合も、未反応のSiCは写真からは確認できず、SiCは極めて均質にスラグに溶融していることがわかる。なお、実施例3におけるSiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間は、上記式(1)の範囲に属している。
最後に、実施例4(溶融温度1450℃ SiCの質量比が0.067〜0.534の範囲)の試料についての評価を行った。その評価結果については、表2に示す。
この表2から、均質に溶融している場合としていない場合との境界を示す式を近似式で導くと、以下の式が得られた。
=0.01×(10.712Ln(t)+13.264)・・・式(3)
ただし、W=Wsic/(Wslag+Wsic):SiCの質量比
t:溶融時間(h)
なお、以上の式(2)及び式(3)から、溶融温度の逆数とSiCの質量比の関係を導き出し、各々の傾きと切片をそれぞれ対数近似させることにより、本実施形態における式(1)を導いている。そして、本実施例において、良好な均質性を有する試料におけるSiCの質量比、溶融温度、及び溶融時間は、式(1)の範囲に含まれている。逆に、均質性が良好でなかった場合は全て、式(1)の範囲から外れている。
以下、本実施形態において好ましい形態を付記する。
[付記1]
白金族元素を含有するSiC系物質を、スラグを用いて溶融させることにより前記白金族元素を回収する方法において、
前記スラグの量に対し、前記SiC系物質の量を変化させることにより、前記SiC系物質が前記スラグの中に均質に溶融可能となる温度及び時間の範囲を変動させた上で、前記範囲内における温度及び時間にて、前記スラグを用いて前記SiC系物質を溶融させることを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法。
ただし、SiC系物質とは、SiCを含有する物質のことである。
[付記2]
前記SiC系物質を前記スラグの中に溶融させる際に、前記SiC系物質と共にはフラックスを投入しないことを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法。
[付記3]
前記溶融温度を1300℃としたとき、前記SiCの質量の比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.20以下とし、前記溶融時間を6時間以上とすることを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法。
[付記4]
前記溶融温度を1350℃としたとき、前記SiCの質量の比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.25以下とし、前記溶融時間を6時間以上とすることを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法。
[付記5]
前記溶融温度を1450℃としたとき、前記SiCの質量の比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))を0.33以下とし、前記溶融時間を6時間以上とすることを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法。
1 溶融炉
2 電気炉
3 反応チューブ
31 外側チューブ
32 内側チューブ
4 るつぼ
5 ガス導入部
51 吸気部
52 排気部
6 スラグ(スラグとSiC物質)

Claims (1)

  1. 白金族元素を含有する被処理部材と酸化銅を含む銅源材料とを還元溶錬することにより生じたAl−CaO−SiO系のスラグを用いて白金族元素を含有するSiC系物質を溶融させることにより前記白金族元素を回収する方法において、
    前記SiC系物質が前記スラグの中に均質に溶融可能となる溶融温度及び溶融時間の範囲であって、前記スラグの質量に対する、前記SiC系物質におけるSiCの質量に応じて決定される溶融温度及び溶融時間の範囲から選択された溶融温度及び溶融時間にて、前記スラグを用いて前記SiC系物質を溶融させる際、
    前記SiCの質量の比(SiCの質量/(スラグの質量+SiCの質量))、前記溶融温度、及び前記溶融時間は、以下の関係を有していることを特徴とするSiC系物質からの白金族元素の回収方法。
    ≦0.01×[{−82.955Ln(t)−83.809}×{(10)/T}+58.858Ln(t)+61.904]
    0.05≦W≦0.467
    溶融温度は1300℃以上1450℃以下
    ただし、SiC系物質とは、SiCを含有する物質のことであり、
    =Wsic/(Wslag+Wsic):SiCの質量比
    sic:SiCの質量
    slag:スラグの質量
    T:溶融温度(K)
    t:溶融時間(h)
    である。
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