JP5850557B2 - イオン吸着剤及びその製造方法 - Google Patents
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(A)成分:Ca(OH)2、CaCO3、CaCl2、及びCa(NO3)2からなる群から選択される少なくとも一つ
(B)成分:Al(OH)3及びAl2(SO4)3の少なくとも一方
(A)成分:Ca(OH)2、CaCO3、CaCl2、及びCa(NO3)2からなる群から選択される少なくとも一つ
(B)成分:Al(OH)3及びAl2(SO4)3の少なくとも一方
Ca(OH)2/Al(OH)3モル比=5の混合物を10℃/minの昇温速度で100℃〜1000℃まで昇温し、熱重量分析装置(製品名TG 8101D、リガク社製)を用いて重量変化を測定した。その結果を図1に示す。図示のように、100〜250℃付近まではほぼ一定の重量を示し、その後、250〜270℃の間で急激に重量が減少した後、270〜390℃の間でほぼ一定の重量を示した。さらに、390〜440℃の間で急激に重量が減少した後、440〜660℃の間でゆるやかに重量が減少した。その後、660〜1000℃の間ではほぼ一定の重量を示した。
前記TG分析で重量がほぼ一定となった温度(350℃、500℃、800℃及び1000℃)でCa(OH)2/Al(OH)3混合物を焼成し、そのXRD分析により生成する結晶性化合物を同定した。その結果を図2に示す。図示のように、焼成温度350℃ではCa(OH)2に由来するシャープなピークが検出され、500℃ではCa(OH)2に由来するがブロードなピークが検出された。したがって、350℃では結晶性のCa(OH)2が存在し、加熱に伴い500℃では結晶性Ca(OH)2が非晶質化したことになる。さらに、焼成温度800℃では 非晶性Ca(OH)2の他に、わずかではあるがCaO由来のピークが検出された。さらに高い焼成温度1000℃ではCaO由来のピーク強度が大きくなると同時にCa12Al14O33に由来するピークが明瞭に検出された。
Ca/Alモル比を0.5〜15の間で変化させたCa(OH)2/Al(OH)3混合物を1000℃で焼成したものについてX線回折装置(製品名D8 ADVANCE TXS、BRUKER axs社製)を用いてXRD分析を行った。その結果を、図3に示す。図示のように、Ca/Alモル比=0.5および1.0では、結晶性化合物としてCaOの他に、Ca12Al14O33が検出され、さらに、低濃度ながらCaAl4O7およびCaAl2O4も検出された。Ca/Alモル比2以上では、CaOおよびCa12Al14O33に帰属されるピークが検出されたが、Ca/Alモル比の増加に伴いCaOのピーク強度は増加し、Ca12Al14O33のピーク強度は低下した。このことから、Ca/Alモル比の増加に伴いCaOの生成量が増加し、Ca12Al14O33の生成量は低下したと考えられる。
CaCO3/Al(OH)3モル比=5の混合物を10℃/minの昇温速度で100℃〜1000℃まで昇温し、前述と同じ装置で重量変化を測定した。その結果を図4に示す。図示のように、100〜250℃付近まではほぼ一定の重量を示し、その後、250〜270℃の間で急激に重量が減少した後、270〜600℃の間で徐々に重量が減少し、600〜770℃の間で急激に重量が減少し、それ以降(770〜1000℃)ではほぼ一定の重量を示した。
前述したTG分析結果をもとに、重量がほぼ一定となった温度でCaCO3/Al(OH)3混合物を焼成し、前述の装置を用い、XRD分析を行った。その結果を図5に示す。図示のように、焼成温度350℃では原料中に存在するCaCO3に由来するシャープなピークが検出され、800℃ではシャープなCaOのピークと、ピーク強度が低くブロードなCa(OH)2に由来するピークが検出された。このことから、少なくとも350〜800℃の間で、CaCO3の熱分解(CaCO3→CaO+CO2)が起きたことが推定される。Ca(OH)2はCaOが空気中の湿分を吸収して生成したと推定される(CaO+H2O→Ca(OH)2)。さらに、高い焼成温度1000℃ではCaOに由来するシャープなピークのほかにCa9Al6O18やCa5Al6O14に由来する強度の低いピークが観測された。この場合、結晶性化合物としてCaOが主成分で、Ca5Al6O14およびCa9Al6O18が低濃度で含まれることになる。なお、前記推定は、本発明を制限及び限定しない。
Ca/Alモル比を変化させたCaCO3/Al(OH)3混合物を1000℃で焼成したものについて、前述の装置を用いて、XRD分析した。その結果を図6に示す。図示のように、Ca/Alモル比=0.5では、結晶性化合物としてCaOに加え、微量の Ca5Al6O14,CaAl4O7およびCaAl2O4が検出された。Ca/Alモル比=1.0では、CaOに加え、微量の Ca5Al6O14およびCaAl2O4が検出された。Ca/Alモル比 1.5以上では、 CaOとCa9Al6O18に加え、微量のCa5Al6O14が検出された。Ca/Alモル比の増加に伴いCaOに由来するピークの強度は増加の傾向を示したが、Ca9Al6O18に由来するピークの強度はCa/Alモル比の増加により増加し、Ca/Alモル比=3で最も高くなり、さらにCa/Alモル比が増加するとピーク強度は低下し、Ca/Alモル比=10以上ではCa9Al6O18に由来するピークは観測されなかった。これらのことから、Ca/Alモル比の増加に伴いCaO生成量は増加し、Ca9Al6O18生成量はCa/Alモル比=3で最大となり、さらにCa/Alモル比を増加させるとCa9Al6O18生成量は低下し、Ca/Alモル比=10以上では消失したと推定される。ただし、本発明は前記推定により限定及び制限されない。
ホウ酸(H3BO3)水溶液(B濃度=11mg/L) 50mLに各種焼成物0.5gを添加し、よく混合したのち、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するホウ素濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期ホウ素濃度(=11mg/L)と各種焼成物添加後の残存ホウ素濃度の差を各種焼成物のホウ素吸着量(mg/g-焼成物)とした。
酸化クロム(CrO3)を溶解した水溶液(Cr濃度=51mg/L)50mLに各種焼成物0.5gを添加し、よく混合したのち、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期Cr濃度(=51mg/L)と各種焼成物添加後の残存Cr濃度の差を、各種焼成物のCr6+吸着量(mg/g-焼成物)とした。
塩化クロム(CrCl3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mLに各種焼成物0.5gを添加し、よく混合したのち、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期Cr濃度(=52mg/L)と各種焼成物添加後の残存Cr濃度の差を、各種焼成物のCr3+吸着量(mg/g-焼成物)とした。各種焼成物作成時の原料中のCa/Alモル比がCr3+吸着量に及ぼす影響を図11に示す。
表1に示すように、所定量の1mmol/Lの各種化合物(吸着対象イオンの発生源)の水溶液にCa(OH)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物(焼成温度:1000℃)を所定量添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存する各種化合物由来の各種イオンの濃度をICPプラズマ発光法により測定した。各種イオンの初期濃度とCa(OH)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物添加後に残存した各種イオンの濃度の差を、Ca(OH)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物の各種イオン吸着量(mg/g-焼成物)とした。表1に示すとおり、Ca(OH)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物は、ホウ素及びクロム以外のイオンも吸着することがわかった。なお、表1において、最大吸着量は、溶液中の各種イオンが全て吸着したと仮定した場合の理論計算値である。
表2に示すように、所定量の1mmol/Lの各種化合物(吸着対象イオンの発生源)の水溶液にCaCO3/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物(焼成温度:1000℃)を所定量添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存する各種化合物由来の各種イオンの濃度をICPプラズマ発光法により測定した。各種イオンの初期濃度とCaCO3/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物添加後に残存した各種イオンの濃度の差を、CaCO3/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物の各種イオン吸着量(mg/g-焼成物)とした。表2に示すとおり、CaCO3/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物は、ホウ素及びクロム以外のイオンも吸着することがわかった。なお、表2において、最大吸着量は、溶液中の各種イオンが全て吸着したと仮定した場合の理論計算値である。
1mmol/Lの塩化クロム(CrCl3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mLにCa(OH)2/Al2(SO4)3混合物(Ca/Al=1〜3)の焼成物(焼成温度:1000℃)を0.1g添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期Cr濃度(=52mg/L)とCa(OH)2/Al2(SO4)3混合物(Ca/Al=1〜3)の焼成物添加後の残存Cr濃度の差を、Ca(OH)2/Al2(SO4)3混合物(Ca/Al=1〜3)の焼成物のCr3+吸着量(mg/g-焼成物)とした。
表4に示すように、1mmol/Lの塩化クロム(CrCl3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mLにCaCl2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物(焼成温度:1000℃)を0.5g添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期Cr濃度(=52mg/L)とCaCl2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物添加後の残存Cr濃度の差を、CaCl2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物のCr3+吸着量(mg/g-焼成物)とした。表4に示すとおり、CaCl2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物は、Cr3+を吸着した。なお、表4において、最大吸着量は、溶液中のCr3+が全て吸着したと仮定した場合の理論計算値である。
表5に示すように、1mmol/Lのホウ酸(H3BO4)水溶液(B濃度=11mg/L)50mL、1mmol/Lの酸化クロム(CrO3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mL又は1mmol/Lの塩化クロム(CrCl3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mLにCa(NO3)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物(焼成温度:1000℃)を0.5g添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するホウ素濃度又はCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期ホウ素濃度(=11mg/L)又は初期Cr濃度(=52mg/L)とCa(NO3)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物添加後の残存ホウ素濃度又は残存Cr濃度の差を、Ca(NO3)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物のホウ素吸着量(mg/g-焼成物)、Cr6+吸着量(mg/g-焼成物)又はCr3+吸着量(mg/g-焼成物)とした。表5に示すとおり、Ca(NO3)2/Al(OH)3混合物(Ca/Al=5)の焼成物は、ホウ素、Cr6+及びCr3+を吸着した。なお、表5において、最大吸着量は、溶液中のホウ素、Cr6+又はCr3+が全て吸着したと仮定した場合の理論計算値である。
表6に示すように、1mmol/Lの酸化クロム(CrO3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mL又は10mmol/Lの塩化クロム(CrCl3)を溶解した水溶液(Cr濃度=520mg/L)50mLにCa(OH)2の焼成物(焼成温度:1000℃)を所定量添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期Cr濃度とCa(OH)2の焼成物添加後の残存Cr濃度の差を、Ca(OH)2の焼成物のCr6+吸着量(mg/g-焼成物)又はCr3+吸着量(mg/g-焼成物)とした。表6に示すとおり、Ca(OH)2の焼成物は、Cr6+及びCr3+を吸着した。なお、表6において、最大吸着量は、溶液中のCr6+又はCr3+が全て吸着したと仮定した場合の理論計算値である。
表7に示すように、1mmol/Lの酸化クロム(CrO3)を溶解した水溶液(Cr濃度=52mg/L)50mLにAl(OH)3の焼成物(焼成温度:1000℃)を0.5g添加し、よく混合した後、1日間、室温で放置した。その後、溶液中の沈殿物をろ過し、ろ液中に残存するCr濃度をICPプラズマ発光法により測定した。初期Cr濃度(=52mg/L)とAl(OH)3の焼成物添加後の残存Cr濃度の差を、Al(OH)3の焼成物のCr6+吸着量(mg/g-焼成物)とした。表7に示すとおり、Al(OH)3の焼成物は、Cr6+を吸着した。なお、表7において、最大吸着量は、溶液中のCr6+が全て吸着したと仮定した場合の理論計算値である。
Claims (6)
- 下記(A)成分、下記(B)成分、及び前記(A)成分と前記(B)成分との混合物の少なくとも一つを600〜1000℃の焼成温度で焼成することを特徴とする、B(OH) 4 - の吸着に用いられるイオン吸着剤の製造方法。
(A)成分:Ca(OH)2、CaCO3、CaCl2、及びCa(NO3)2からなる群から選択される少なくとも一つ
(B)成分:Al(OH)3及びAl2(SO4)3の少なくとも一方
- 前記イオン吸着剤は、さらに、陽イオン及び陰イオンの両方の吸着に用いられ、前記陽イオンが、クロムイオン(Cr 3+ )、カドミウムイオン(Cd 2+ )、鉄イオン(Fe 3+ )、銅イオン(Cu 2+ )、及び鉛イオン(Pb 2+ )から成る群から選択された少なくとも一つであり、前記陰イオンが、クロム酸イオン(CrO 4 2− )、亜ヒ酸イオン(AsO 2 − )、セレン酸イオン(SeO 4 2- )、タングステン酸イオン(WO 4 2- )、及びモリブデン酸イオン(MoO 4 2- )から成る群から選択された少なくとも一つである、請求項1記載の製造方法。
- 前記イオン吸着剤が、前記(A)成分と前記(B)成分との混合物の焼成物であり、前記(A)成分が、Ca(OH) 2 及びCaCO 3 の少なくとも一方であり、前記(B)成分が、Al(OH) 3 である請求項1又は2記載の製造方法。
- 前記焼成が、前記(A)成分と前記(B)成分との混合物の焼成であり、前記(A)成分がCa(OH)2であり、かつ、前記(B)成分が、Al(OH)3であるか、又は、前記(A)成分がCaCO3であり、かつ、前記(B)成分が、Al(OH)3である請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記(A)成分と前記(B)成分との混合物の焼成物において、CaとAlのモル比(Ca/Al)が、5〜15の範囲である請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 排水中に排水処理剤を添加してイオンを除去する排水処理方法であって、前記排水処理剤が、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたイオン吸着剤を含むことを特徴とする排水処理方法。
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