JP5846864B2 - バイアス励磁トランス及び電気回路 - Google Patents

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Description

本発明は、一次巻線に直流電流を流すトランスの磁気回路に永久磁石を直列に挿入し、これによりバイアス励磁を磁気回路に付勢し、トランスの磁気回路の磁束密度を負極性(又は正極性)に偏倚させ、トランスの一次巻線から発生する磁束により、トランスの磁気回路の磁束密度を正極性(又は負極性)に偏倚させることで磁束密度変動振幅を大きくする。 かつ、永久磁石をトランスの一次巻線から発生する磁束により消磁(磁力の弱化)させないトランス及びこれを利用した直流電源部の回路技術に関する。
一般に、コイルに直流電流を流すトランス等の磁気回路は、初期状態でB−H曲線(磁気ヒステリシス曲線)座標の原点を基点とし、コイルに電流を流したときの飽和磁束密度を最大値として、コイルの電流を断としたときの残留磁束密度まで磁束密度が減少し、逆極性の磁束を磁気回路に印加しない限り、残留磁束密度と飽和磁束密度との間の振幅で動作する。
これでは磁気回路の利用効率が悪い。
そこで、従来から、トランスの磁気回路に永久磁石を挿入し、バイアス励磁を付勢し磁束密度の振幅を大きく取る技術は開示されている。
特許文献1には、図1において、磁気回路とマグネットの構成が開示されている。また、明細書の段落0007において、「・・・B−H特性の逆バイアスを得るようにし、・・・」の記載がある。
特許文献1には、マグネットから発生する磁気回路内の磁束の方向、コイルの巻き方、コイルから発生する磁気回路内の磁束の方向など詳細な開示は無いが、コイルに電流を流したときのコイルから発生する磁束の方向は、マグネットから発生する磁束に抗すると考えるのが妥当である。
すなわち、マグネットにより磁束の逆バイアスを印加して、コイルによる順方向の磁束を発生させることで、「・・・1次コイルの通電初期の立ち上がりを速くした・・・」(段落0007)の記載がある。
これでは、1次コイルの磁束が常にマグネットの磁束と逆方向であり、マグネットの磁力を弱化し、最終的にマグネットの磁力を消磁し、製品の動作寿命が短い。
特開2008−166580号公報
以上の現状に鑑み本発明は、本発明に使用する磁気回路内の永久磁石の磁力を劣化させないトランスを実現した。
すなわち、B−H曲線の第3象限から第1象限を十分に利用できる効率の良いトランスを実現した。
さらに、本発明では、本発明のトランスの特性を利用した直流電源部の回路の応用を実現した。
上記の目的を実現するべく本発明は以下の構成とする。
(1)請求項1に係るバイアス励磁トランスは、
対向する一対のヨークと、両ヨークの中間部同士を連結するギャップを設けた中間脚と、該両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚の一方を構成する永久磁石が付装されコイル1が巻装されたコア1と、該一対の外側脚の他方を構成するコイル2が巻装されたコア2を備え、
前記コイル1と前記コイル2は疎結合され、
前記永久磁石の発生する磁束Pは、前記コア1、前記コア2及び前記両ヨークを閉磁気回路として通過し、
前記コイル2に、該磁束Pと抗する磁束2を発生させるべく電流を流し、該コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
前記磁束P、前記磁束1及び前記磁束2は、前記中間脚を同方向に通過し、
前記コア2内において前記磁束2の磁束密度は、該磁束P及び該磁束1の量の加算値における磁束密度より大きく、該磁束P及び該磁束1に抗すべく該コア2を通過し、
前記磁束2は前記コア1を通過できず、該磁束2のコア1の通過に起因する前記永久磁石の弱磁化、を防止することを特徴とする。
(2)請求項2に係るバイアス励磁トランスは、請求項1において、
前記閉磁気回路に前記磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあり、前記コイル2に前記コイル1より大きな電流が流れるとき、該コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、又は、
前記閉磁気回路に前記磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、前記コイル2に前記コイル1より大きな電流が流れるとき、該コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあることを特徴とする。
(3)請求項3に係るバイアス励磁トランスは、
対向する一対のヨークと、両ヨークの中間部同士を連結するコイル2が巻装された中間脚と、該両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚の一方を構成する永久磁石が付装されコイル1が巻装されたコア1と、該一対の外側脚の他方を構成するギャップを設けたコア2を備え、
前記コイル1と前記コイル2は疎結合され、
前記永久磁石の発生する磁束Pは、前記コア1、該コア1から前記中間脚までの両ヨーク及び前記中間脚を閉磁気回路として通過し、
前記コイル2に、該磁束Pと抗する磁束2を発生させるべく電圧を印加し、該コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束φ1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
前記磁束P及び前記磁束1は、前記両ヨーク、前記中間脚及び前記コア2を通過し、
前記磁束2は、前記コア2を前記磁束P及び前記磁束1と同方向に通過し、
前記中間脚内において前記磁束2の磁束密度は、該磁束P及び該磁束1の量の加算値における磁束密度より大きく、該磁束P及び該磁束1に抗すべく該中間脚を通過し、
前記磁束2は前記コア1を通過できず、該磁束2のコア1の通過に起因する前記永久磁石の弱磁化、を防止することを特徴とする
(4)請求項4に係るバイアス励磁トランスは、請求項3において、
前記閉磁気回路に磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあり、前記コイル2に電圧を印加したとき、該中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、又は、
前記閉磁気回路に磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、前記コイル2に電圧を印加したとき、該中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあることを特徴とする。
(5)請求項5に係るバイアス励磁トランスは、請求項1又は2において、
前記コア2にさらにコイル3を巻装したことを特徴とする。
(6)請求項6に係るバイアス励磁トランスは、請求項3又は4において、
前記中間脚にさらにコイル3を巻装したことを特徴とする。
(7)請求項7に係る電気回路は、
請求項1〜4のいずれかに記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子1及び整流素子2を逆方向並列接続し、該コイル1の他端と前記コイル2の他端を導通させ、該コイル1の一端と該コイル2の一端に電位差を印加したとき、
前記コイル1の一端に印加した電位1が前記整流素子1に対し順方向であるとき、該電位1による電流は前記整流素子1と前記コイル2に流れ、又は、
前記コイル1の一端に印加した電位2が前記整流素子2に対し順方向であるとき、該電位2による電流は前記整流素子2と前記コイル2に流れ、
前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
前記コイル2のリアクタンスにより突入電流を防止することを特徴とする。
(8)請求項8に係る電気回路は、
請求項1〜4のいずれかに記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子を並列接続し、前記コイル2の一端と該コイル2の他端に電位差を印加したとき、前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧が前記整流素子に対し順方向であるとき、該誘起電圧による電流は該コイル1に流れ、
前記コイル1への該誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
前記コイル2の両端に印加した電位差を消滅させたとき、該コイル2の自己誘導により、該コイル2の一端に印加した電位と同極性の電位を該コイル2の他端に発生することを特徴とする。
(9)請求項9に係る電気回路は、
請求項5又は6に記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子を並列接続し、前記コイル2の一端と該コイル2の他端に電位差を印加したとき、前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧が前記整流素子に対し順方向であるとき、該誘起電圧による電流は該コイル1に流れ、
前記コイル1への該誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
前記コイル2の両端に印加した電位差を消滅させたとき、該コイル2と該コイル3の相互誘導により該コイル3の両端に電位差3を発生することを特徴とする。
(10)請求項10に係る電気回路は、
請求項5又は6に記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子を並列接続し、前記コイル2の一端と該コイル2の他端に電位差を印加したとき、前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧が前記整流素子に対し順方向であるとき、該誘起電圧による電流は該コイル1に流れ、
前記コイル1への該誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
前記コイル3の両端に電位差4を発生することを特徴とする。
(A)同一磁気回路にコイル1及びコイル2を巻装し、コイル1と同方向の磁束を発生し、コイル2と逆方向の磁束を発生する永久磁石をコイル1が巻装されているコア1に付装し、この永久磁石の磁束により、コイル2に電位差を印加したときのコイル2が巻装されている磁気回路に発生する磁束密度とは逆の磁束密度とし、コイル2に電位差を印加したとき、コイル2が巻装されている磁気回路に発生する磁束密度をコイル2の発生する磁束密度とし、コイル2が巻装されている磁気回路の磁束密度の変化幅を大きくとることができる。すなわち、磁気回路の効率を高める。
(B)コイル2の発生する磁束が、永久磁石を永久磁石の磁束と逆方向に通過し、永久磁石の磁力を劣化させることのないように、コイル2に電位差が印加されたとき、コイル2からコイル1への相互誘導によりコイル1がコイル2の磁束に抗するよう永久磁石が付装されているコア1に磁束を発生する。
(A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態1の構成及び磁束を示す図である。(B)は、バイアス励磁トランスの説明用XYZ座標である。 (A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態1の構成及び磁束を示す図である。(B)は、バイアス励磁トランスの説明用XYZ座標である。 は、本発明によるバイアス励磁トランスを使用した電気回路の実施の形態1を示す回路図である。 (A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態2の構成及び磁束を示す図である。(B)は、バイアス励磁トランスの説明用XYZ座標である。 は、本発明によるバイアス励磁トランスを使用した電気回路の実施の形態2を示す回路図である。 (A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態3の構成及び磁束を示す図である。(B)は、バイアス励磁トランスの説明用XYZ座標である。 は、本発明によるバイアス励磁トランスを使用した電気回路の実施の形態3を示す回路図である。 は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態1〜3の磁気回路の磁場及び磁束密度の説明用B−H曲線である。
(1)バイアス励磁トランスの実施の形態1
(1−1)バイアス励磁トランスの構成
図1(A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態1の構成及び磁束を示す図である。
以下、図1の(A)と(B)を参照して、バイアス励磁トランスの実施の形態1である構成を説明する。
本発明のバイアス励磁トランスは、以下の構成である。
まず、トランスの構成を明確にするために、図1(B)のXYZ座標を使用して説明する。
図1(B)を正視して、左右水平方向にX軸(右方向が正)があり、上下垂直方向にY軸(上方向が正)があり、紙面の裏面から表面に向け、Z軸が正方向に延びている。
図1(A)において、符号TF1で示されるトランスTF1に存在する符号MC1で示される磁気回路には、(B)に示されるX軸方向に延在しY軸正負方向に対向する一対のヨークがY軸の正側と負側に存在し、両ヨークの中間部同士を連結するギャップ(符号AG1で示される。)を設けたY軸方向に延在する中間脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間に、Y軸方向にそれぞれ延在しX軸正負方向に対向する一対の両外側脚の一方を構成するコア1(X軸負側)と他方を構成するコア2(X軸正側)から成っている。コア1はX軸負側においてX軸正側に存在するコア2と対向している。
中間脚は、コア1とコア2の間(一般的には中央であるが、これに限定しない。)に存在する
両ヨーク、中間脚、コア1及びコア2はZ軸方向に厚みを有している。いわゆるEI型のトランスの磁気回路である。
両ヨーク、中間脚、コア1及びコア2には、上記の説明により図1(A)において符号を割愛している。
コア1には、符号PMで示される永久磁石が付装(挾持、挾装又は挾着されている。)され、さらに符号L1で示されるコイルL1が巻装され、コア2には符号L2で示されるコイル2が巻装されている。
コイルL1(コイル1とも称す。)はコア1を周回して巻装され、コイルL2はコア2を周回して巻装されている。
図示されていないが、コア1の左右に図示するコイルL1は同一巻線であり連続し、コイルL1のX軸負側とX軸正側(コア1を挟んで)のコイルL1による磁束の打ち消しはない。コイルL2(コイル2とも称す。)も同様である。他の実施の形態でも同様である。
永久磁石は、符号P1で示されるN極と符号P2で示されるS極を有し、永久磁石の発する磁束は、符号φPで示される破線矢印で、矢印の方向にコア1、コア2及び両ヨークを閉磁気回路として通過している。永久磁石の極性はこれに限定されない。後述するコイル1、コイル2への印加電位極性が逆であれば、永久磁石の極性は逆である。
図1(A)において、ギャップAG1(a air gap1)が存在する中間脚には磁束φPは、ほとんど通過できない。磁束φPは、ギャップAG1の無いコア2をほとんど通過する。
これは、コイル1及びコイル2に電流が流れていない状態である。
図1(A)の符号φPは、永久磁石から発生する磁束のみである。
トランスTF1の磁気回路MC1は、コイルL1とコイルL2を疎結合とする構造である。相互インダクタンスが一般のトランスよりも小さい。
たとえば、磁気回路MC1がEI型の磁気回路であれば、磁気回路の左脚、右脚又は中間脚の一部にエアギャップ又は磁束を通しにくい材料を付装(挾持、挾装又は挾着されている。)することで実現可能である。
(1)バイアス励磁トランスの実施の形態1
(1−2)バイアス励磁トランスの動作
以下、バイアス励磁トランスの動作を説明をする。
図1の(A)は、永久磁石PMの磁束φP(磁束Pとも称す。)が磁気回路MC1を単に通過しているのみであった。このとき、磁束φPは、中間脚にギャップAG1が存在するため、ほとんど中間脚を通過しない。すなわち、コア1、上部(X軸正方向)のヨーク、コア2、下部(X軸負方向)のヨークを通過する。
次に、コイルL1に永久磁石と同方向の磁束を発生させ、コイルL2にはコイルL1と逆方向の磁束が発生するようにコイルL1とコイルL2を直列接続し、両コイルに電流を流す。
コイルL1及びコイルL2に電流を流した図2(A)について説明する。
図2(A)は、上記の様にコイルL1とコイルL2に電流を流した場合における磁気回路MC1に発生する磁束を示している。
コア1には、永久磁石PMから発生する磁束φPの量とコイルL1から発生する磁束φ1(磁束1とも称す。)の量の加算値が破線で示した矢印のように通過する。
この磁束φP+磁束φ1は、上部(Y軸正方向)ヨークと中間脚の接続領域で上部ヨーク内のX軸正側からコア2へ向かう(Y軸負方向)磁束Xと中間脚のY軸負方向へ向かう磁束Yに分かれる。磁束X及び磁束Yは磁束量である。
これを式で表すと、磁束X=(φP+φ1)α、磁束Y=(φP+φ1)β、となる。ただし、α+β=1である。αはギャップの無い磁気回路を磁束が通過する場合の係数であり、βはギャップのある磁気回路を磁束が通過する場合の係数である。これは、他の実施の形態でも同じ。α>βである。
αは、Y軸正方向に存在しX軸方向に延在するヨークと中間脚の接続領域において磁束φP+磁束φ1がヨークのX軸正方向に分岐してコア2通過する磁束量の割合の係数である。
βは、Y軸正方向に存在しX軸方向に延在するヨークと中間脚の接続領域において磁束φP+磁束φ1が中間脚方向に分岐して中間脚をY軸負方向に通過する磁束量の割合の係数である。α=磁束X/(φP+φ1)、β=磁束Y/(φP+φ1)である。
コイルL2に電流を流したとき発生する磁束をφ2(磁束2とも称す。)とすると、
コア2を通過する磁束X2は、X2=(φP+φ1)α−φ2、中間脚を通過する磁束Y2は、Y2=(φP+φ1)β+φ2、となる。
コア2の磁気回路において、永久磁石PMから発生する磁束φP、コイルL1から発生する磁束φ1を正とし、コイルL2から発生する磁束φ2を負としているが、図8のB−H曲線において、磁束φP及び磁束φ1による磁場H、磁束密度Bを第3象限に位置すると定義し、磁束φ2による磁場H、磁束密度Bを第1象限に位置すると定義する。
第1象限と第3象限は相対的なものであるから、図8のB−H曲線の象限に位置する磁場H、磁束密度Bの極性は、磁気回路内の実際の磁場H及び磁束密度Bの極性に依存しない。第1象限、第3象限は、入替えて考えても良い。
なお、磁束X2と磁束Y2は加算すると、磁束X2+磁束Y2=φP+φ1となる。
すなわち、コア2を通過する磁束X2と中間脚を通過する磁束Y2は磁束φ2を相殺し、コア1には、磁束φPと磁束φ1のみが流れ、磁束φ2が流れ込まない。
よって、永久磁石は磁束φ2により弱磁化、消磁又は逆励磁されない。
コイルL1及びコイルL2に電流を流さず、永久磁石PMのみによる磁束φPによるコア2内の磁束密度を磁束密度BφP、コイルL1及びコイルL2に電流を流し、コア2内の磁束φ2による磁束密度をBφ2、コア2内の磁束Xによる磁束密度を磁束密度Bxとする。ただし、磁束X=α・(φP+φ1)。
Bφ2>Bxであれば、コイルL1及びコイルL2に電流を流さない状態から、コイルL1及びコイルL2に電流を流すと、コア2内の磁場H、磁束密度BのB−H曲線における座標は、第3象限から第1象限に遷移する。
図2(A)において、コア2をY軸正方向に流れる磁束はφ2であり、コア2をY軸負方向に流れる磁束は、α・(φP+φ1)であるため、φ2>(φP+φ1)αであれば、コア2内の磁束密度は、第3象限から第1象限に遷移することになる。
(2)電気回路の実施の形態1
(2−1)回路構成
図3は、本発明であるバイアス励磁トランスの実施の形態1を使用した電気回路の実施の形態1を示す。図3を参照し本発明の電気回路の実施の形態1の回路構成の説明をする。
図3において、符号TF1、符号MC1、符号L1、符号L2は、図1及び図2(A)と同一のものであり、それぞれ、トランスTF1、磁気回路MC1、コイルL1、コイルL2である。
図3において、永久磁石PM、ギャップAG1は図示を省略している。
バイアス励磁トランスの実施の形態1と同様に、コイルL1(コイル1とも称す。)とコイルL2(コイル2とも称す。)は磁気回路MC1により疎結合されている。
コイル1の一端(黒丸印あり)には、符号D1で示される整流素子1(ダイオードD1)のアノード及び符号D2で示される整流素子2(ダイオードD2)のカソードが接続され、コイル1の他端(黒丸印なし)には、整流素子1のカソード及び整流素子2のアノードが接続されている。
コイル2一端(黒丸印あり)には、符号D7で示される整流素子7(ダイオードD7)のアノードが接続され、コイル2の他端(黒丸印なし)には整流素子7のカソードが接続されている。
コイル1の一端は端子T1に接続され、コイル2の一端は端子T3に接続され、コイル1とコイル2の他端は接続されている。
端子T1には、直流電位の一方の極性(正電位)の電位が印加され、端子T3は直流電位の一方の極性の電位を出力するものである。
端子T2と端子T4は接続され、直流電位の他方の極性(負電位)の電位を伝達するものである。
端子T1に、直流の負極性電位を印加し、端子T3は直流の負極性電位を出力し、端子T2に、直流の正極性電位を印加し端子T4に直流の正極性電位を出力しても良い。この場合、整流素子7の極性を逆とする。
(2)電気回路の実施の形態1
(2−2)回路動作
図3を参照し、本発明であるバイアス励磁トランスの実施の形態1を使用した電気回路の実施の形態1の動作を説明する。
端子T3と端子T4に外部の負荷を接続し、端子T1と端子T2に電位を印加しない場合、コイル1及びコイル2に電流が流れず、バイアス励磁トランスの実施の形態1で説明したとおり、コイル1が巻装されているコア1の永久磁石PMにより、コイル2が巻装されているコア2の磁気回路の磁束密度Bは、B−H曲線の第3象限の下部に位置している。
B−H曲線の第3象限の下部とは、図8に示すB−H曲線のB軸のBN1付近を意味する。すなわち、コア2は、充分な負極性磁束密度を有している。
端子T1に直流電位の一方の極性(正極性)の電位を印加し、端子T2に直流電位の他方の極性(負極性(ただし、この電位を基準電位とすると“0”電位である。))の電位を印加した直後は、以下の電流路が形成される。
端子T1→整流素子1→コイル2→端子T3→外部の負荷→端子T4→端子T2。
コイル1は、整流素子1によりバイパスされ(コイル1の両端には略0.6Vしか印加されない。)、コイル1には、ほとんど電流が流れないが、コイル2には、端子T3、端子T4間に接続した外部の負荷電流がすべて流れる。
図2(A)のバイアス励磁トランスの実施の形態1で説明したコイル2に発生する磁束φ2が発生し、コア2の磁気回路の磁束密度は、図8のB−H曲線の第3象限の下部であるBN1付近から、B−H曲線の第1象限の上部であるB軸のBP1付近に遷移する。
すなわち、コア2の磁気回路が許容するの磁束密度の最大限、図8のB−H曲線において磁束密度の変化幅を最大限にとれる。
本発明のバイアス励磁トランスの実施の形態1と本発明の電気回路の実施の形態1を使用しない場合、トランスTF1の磁気回路MC1は、初期状態において、図8のB−H曲線において、H軸、B軸の原点であるNEから、B軸のBP1に遷移できるのみである。
また、磁気回路MC1に残留磁気(B軸のRP)がある場合、図8のB−H曲線において、B軸のRPからBP1へ遷移するのみである。
それと共に、コイル2への電流を断としても、B軸のBP1の磁束密度は、B軸のRPの残留磁束密度として残る。
本発明を実施することで磁気回路MC1の効率が高くなり、トランスTF1の効率が高くなり、最終目的である電気回路の効率が高くなる。
端子T3と端子T4間に負荷を接続し、端子T1と端子T2間に電位が印加されたとき、コイル2に電圧が印加され、コイル2が発するコア2の磁束φ2は、コア1の永久磁石の磁束φPに抗してコア1を通過しようとするが、コイル2からの相互誘導により、コイル1の他端に正極電位が発生し、コイル1の他端とコイル1の一端の電位差が整流素子2を導通(整流素子2によりコイル1を準短絡)させてコイル1の一端からコイル1の他端に向かう電流(電源としての原理)が流れ、磁束φ2のコア1への進入を阻止する。
すなわち、コイル2の他端に正極電位が印加され、コイル1に電流が流れるとき、コイル1の磁束φ1とコイル2の磁束φ2相互の磁束が抗し、磁束φ2のコア1への進入を阻止する。
このとき、コイル1には、端子T1からの外部の電源による電流が整流素子1によりバイパスされるのでほとんど電流が流れず、外部のから電流によるコイル1の磁束φ1は、ほとんど発生しなが、上記により、磁束φ2は永久磁石の磁力を劣化させない。
また、整流素子2は、コイル1の電流が遮断されたときの自己誘導電圧を吸収する。
整流素子7も、コイル2の電流が遮断されたときの自己誘導電圧を吸収する。
その後、コイル1及びコイル2のリアクタンスは消滅し、定常電流としてコイル1にも端子T1からの電源による電流が流れる。このとき、整流素子1には電流が流れない。
このときのコイル1に流れる電流方向(負荷としての原理)は、前述したコイル1の他端に正極電位が発生し、整流素子2を介してコイル1に流れる電流方向と同一である。
したがって、磁束φ1(磁束1とも称す。)は、磁束φ2(磁束2とも称す。)に抗す。
よって、磁束1は、コア1の永久磁石の磁束φP(磁束Pとも称す。)と同方向である。
したがって、コイル1の巻数とコイル2の巻数が同一であれば、コイル1及びコイル2に流れる電流は同一であるから、磁束1と磁束2は相殺し、コイル1及びコイル2に電流が流れていない初期状態と同一であり、負荷に電流を供給している定常電流時、コア2の磁束密度は、図8のB−H曲線において、第3象限の下部であるB軸のBN1付近に復帰している。
コイル1及びコイル2に流れる電流は同一であるから、コイル1の巻数>コイル2の巻数であれば、磁束φ1>磁束φ2となり、永久磁石の磁力は増強される。
本発明の電気回路の用途は、突入電流防止回路に最適である。
端子T1と端子T3に電位差が発生したとき、コイル2の大きなリアクタンスにより突入電流を防止する。
コイル2に大きなリアクタンスが発生する理由は、上記で説明したとおり、コア2の磁束密度が、B−H曲線の第3象限から第1象限に大きく遷移できるからである。
突入電流を防止し、外部の負荷に電力を供給する定常電流となったときでも、永久磁石が磁束φ2により、弱磁化、消磁又は逆励磁されることはない。突入電流が流れる前の状態を維持している。
端子T1に負極電位を印加し、端子T2に正極電位を印加した場合、整流素子1と整流素子2の機能は交換されるのみで、電流路は、端子T2→端子T4→外部の負荷→端子T3→コイル2→整流素子2→端子T1となる。
なおこの場合、磁束方向が逆になるので、コイル1及びコイル2の一端と他端を交換するか、永久磁石PMの磁極P1とP2を交換する。コイル2に並列接続されている整流素子7も逆方向接続する。
(3)バイアス励磁トランスの実施の形態2
(3−1)バイアス励磁トランスの構成
図4(A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態2の構成及び磁束を示す図である。
以下、図4の(A)と(B)を参照して、バイアス励磁トランスの実施の形態2である構成を説明する。
本発明のバイアス励磁トランスは、以下の構成である。
まず、トランスの構成を明確にするために、図4(B)のXYZ座標を使用して説明する。
図4(B)を正視して、左右水平方向にX軸(右方向が正)があり、上下垂直方向にY軸(上方向が正)があり、紙面の裏面から表面に向け、Z軸が正方向に延びている。
図4(A)において、符号TF2で示されるトランスTF2に存在する符号MC2で示される磁気回路には、(B)に示されるX軸方向に延在しY軸方向において対向する一対のヨークがY軸の正側と負側に存在し、両ヨークの中間部同士を連結しY軸方向に延在する中間脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間に、Y軸方向にそれぞれ延在しX軸方向において対向する一対の両外側脚の一方を構成するコア1(X軸負側)と他方を構成するギャップ(符号AG2)を有するコア2(X軸正側)から成っている。コア1はX軸負側においてX軸正側に存在するコア2と対向している。
中間脚は、コア1とコア2の間(一般的には中央であるが、これに限定しない。)に存在する
両ヨーク、中間脚、コア1及びコア2はZ軸方向に厚みを有している。いわゆるEI型のトランスの磁気回路である。
両ヨーク、中間脚、コア1及びコア2には、上記の説明により図4(A)において符号を割愛している。
コア1には、符号PMで示される永久磁石が付装(挾持、挾装又は挾着されている。)され、さらに符号L1で示されるコイルL1が巻装され、中間脚には符号L2で示されるコイル2が巻装されている。
コイルL1(コイル1とも称す。)はコア1を周回して巻装され、コイルL2は中間脚を周回して巻装されている。
図示されていないが、コア1の左右に図示するコイルL1は同一巻線であり連続している。コイルL2(コイル2とも称す。)も同様である。
コイル1及びコイル2に電流が流れていない状態、すなわち、図1(A)の様な磁束は図示していないが、コイル1及びコイル2に電流が流れていない状態では、磁束は以下のとおりである。
永久磁石は、符号P1で示されるN極と符号P2で示されるS極を有し、永久磁石PMの発する磁束は、符号φPで示される破線矢印で、矢印の方向にコア1(矢印はY軸正方向)、中間脚(矢印はY軸負方向)及び両ヨークの中間脚を境にX軸負側(上部、矢印はX軸正方向。下部、矢印はX軸負方向。)を閉磁気回路として通過している。
ギャップAG2(a air gap2)が存在するコア2には、磁束φPはほとんど通過できない。磁束φPは、ギャップAGの無い中間脚をほとんど通過する。
(3)バイアス励磁トランスの実施の形態2
(3−2)バイアス励磁トランスの動作
以下、バイアス励磁トランスの動作を説明をする。
図4(A)において、図5に示す様にコイルL1の一端(黒丸印あり)に符号D3で示される整流素子3(ダイオードD3)のアノードを接続し、コイルL2の他端(黒丸印なし)に符号D3で示される整流素子3(ダイオードD3)のカソードを接続する。
さらに、図4(A)において、図5に示す様にコイルL2の一端(黒丸印あり)に直流正電位を印加し、符号Q1で示される半導体素子(FETQ1)を導通状態とする。
図4(A)に示される各磁束は、FETQ1を導通させたときの磁束である。
図4(A)の磁束φ1(磁束1とも称す。)、磁束φ2(磁束2とも称す。)の磁束方向と、図2(A))の磁束φ1、磁束φ2の磁束方向は便宜上同一方向としている。
図5のコイル1に流れる電流方向と図3のコイル1に流れる電流方向は逆であり、図5のコイル2に流れる電流方向と図3のコイル2に流れる電流方向は逆であり、よって、コイル1、コイル2から発生する磁束自体は逆となるが、コイル1はコア1、コイル2はコア2又は中間脚への巻装方法により、発生する磁束の方向は、Y軸正方向でもY軸負方向でも如何様にできる。
コア1及び両ヨークのX軸負方向側(中間脚を境として)には、永久磁石PMの磁束φP及びコイル1の磁束φ1が通過し、中間脚には、磁束(φP+φ1)αと磁束φ2が(磁束(φP+φ1)αとは逆方向)通過し、コア2には磁束(φP+φ1)βと磁束φ2が(磁束(φP+φ1)βとは同方向)通過する。
α及びβは、バイアス励磁トランスの実施の形態1で説明したとおりであり、係数βは、ギャップAG2(バイアス励磁トランスの実施の形態1では、ギャップAG1)を通過する磁束に乗ずる係数である。
バイアス励磁トランスの実施の形態2では、コイル2が中間脚に巻装され、バイアス励磁トランスの実施の形態1では、コイル2がコア2に巻装され、いずれのコイル2の磁束φ2も、コイル2を巻装している中間脚、コア2をY軸正方向に発生している。
磁束の計算は、バイアス励磁トランスの実施の形態1と同様である。コイル2の巻装部がコア2か中間脚かの相違である。
図4(A)のコイル1には、図5に示すように、整流素子3が並列接続されているため、コイル2の一端に正極電位を印加すると、コイル2からの相互誘導によりコイル1の一端に正極電位が発生し、整流素子3は導通し、コイル1は準短絡され電流が流れ磁束φ1を発生し(磁束φ1を発生すべくコイル1に電流が流れるという表現がより正確)、コイル2が発生する磁束φ2のコア1への通過を阻止する。
したがって、永久磁石PMの発する磁束φPに抗する磁束φ2は、永久磁石PMを通過できない。
コイル2の一端に電位を印加しないときの中間脚の磁束φP(Y軸負方向に通過)による磁束密度BφPを、図8に示すB−H曲線の第3象限と定義し、磁束密度をBφPの位置をB軸のBN1とする。
コイル2の一端に正電位を印加したときのコイル2の磁束φ2が、
φ2>α(φP+φ1)で(いずれも磁束量)あれば、中間脚の磁束はφ2が支配的となり、中間脚の磁束密度は第1象限に遷移し、図8のB−H曲線のB軸のBP1付近に達する。
したがって、本発明のバイアス励磁トランスは、B−H曲線の第3象限から第1象限までの広範囲のB軸を移動できる。したがって、磁気回路MC2の効率が良く、トランスTF2の効率も良くなる。
コイルL2への電圧の印加を停止(フライバック動作)すると、中間脚の磁束密度は再び、B−H曲線の第3象限のB軸の値BN1の初期状態に復帰する。
すなわち、従来技術のバイアス励磁を施した磁気回路のように永久磁石の磁力の低下、消磁や逆励磁がない。
コイルL2への印加を停止(フライバック動作)すると、コイルL2の他端に効率良く自己誘導電圧が誘起される。
(4)電気回路の実施の形態2
(4−1)回路構成
図5は、本発明であるバイアス励磁トランスの実施の形態2を使用した電気回路の実施の形態2を示す。図5を参照し本発明の電気回路の実施の形態2の回路構成の説明をする。
図5において、符号TF2、符号MC2、符号L1、符号L2は、図4(A)と同一のものであり、それぞれ、トランスTF2、磁気回路MC2、コイルL1、コイルL2である。
図5において、永久磁石PM、ギャップAG2は図示を省略している。
バイアス励磁トランスの実施の形態2と同様に、コイルL1(コイル1とも称す。)とコイルL2(コイル2とも称す。)は磁気回路MC2により疎結合されている。
図5において、コイルL1の一端(黒丸印あり)に符号D3で示される整流素子3(ダイオードD3)のアノードが接続され、コイルL2の他端(黒丸印なし)に符号D3で示される整流素子3(ダイオードD3)のカソードが接続されている。
端子T1には、コイル2の一端(黒丸印あり)が接続され、コイル2の他端(黒丸印なし)には、符号Q1で示される半導体素子(Nチャネル型FETQ1)の一端(ドレインD)及び整流素子4(ダイオードD4)のアノードが接続され、整流素子4のカソードには、符号Cで示される容量素子(コンデンサC)の一端及び端子T3が接続されている。
端子T2には、半導体素子(Nチャネル型FETQ1)の他端(ソースS)、容量素子の他端及び端子T4が接続されている。
半導体素子の制御端(ゲートG)は端子Tgに接続されている。
端子T1、端子T2間は、直流電位を入力する端子であり、端子T3、端子T4間は、直流電位を出力する端子である。
(4)電気回路の実施の形態2
(4−2)回路動作
図5を参照し、本発明であるバイアス励磁トランスの実施の形態2を使用した電気回路の実施の形態2の動作を説明する。
以下の説明に出現する磁束φP、φ1、φ2は、バイアス励磁トランスの実施の形態2で説明したものであり、本説明において割愛する。
本発明は、高効率な直流電圧変換回路(DC/DCコンバータ)に最適であり、端子T1、端子T2間に直流電位を印加し、端子T3、端子T4間から電圧変換された電位を得る。
端子T2の電位を基準電位として、端子T1に正極電位を印加する。この状態で、端子Tg(FETQ1のゲートG)にFETQ1が導通する電位(Nチャネルエンハンス型FETにおいては、正極電位でも低電位でないFETQ1が導通する正極電位)を印加すると、以下の電流路が構成され、電流が流れる。
端子T1→コイル2の一端→コイル2の他端→FETQ1のドレインD→FETQ1のソースS→端子T2。
コイル2に正極電位が印加されたとき、コイル2からの相互誘導によりコイル1の一端に正極電位が発生し、コイル2が発生する磁束φ2がコア1を通過することに抗する磁束φ1をコイル1から発生すべくコイル1にダオードD3を介して電流が流れる。
コイル2に正極電位が印加された直後、FETQ1が非導通となる電位を端子Tgに印加し、コイル2への電位の印加を遮断する。
すなわち、端子Tgに正極性パルス(PWM)を印加する。
このとき、コイル2の自己誘導により、コイル2の他端に正極電位が発生し、ダイオードD4を介して、端子T4に基準電位に対して端子T3に正極電位を発生し、外部の負荷に電力を供給する。すなわち、フライバックDC/DCコンバータを構成する。
コイル1の他端にも正極電位が発生するが、ダイオードD3により阻止され、コイル1には電流が流れなく、コイル2の磁束φ2の消滅を迅速にする。
したがって、フライバック型直流電圧変換回路のフライバック時の動作としては、コイル1が存在しないものと同様であり、フライバック動作効率の低下はない。
バイアス励磁トランスの実施の形態2で説明したとおり、コイル1を巻装しているコア1には永久磁石PMが付装されているので、本発明の電気回路の初期状態において、トランスTF2の磁気回路MC2のコア2の磁束密度は、図8のB−H曲線の第3象限にある。
コイル2に電位を印加したとき、バイアス励磁トランスの実施の形態2で説明したとおり、コイル2を巻装しているコア2の磁束密度は、図8のB−H曲線の第1象限に遷移し、大きな磁束密度の変化幅を得ることができる。
したがって、非常に効率の良いフライバック型DC/DCコンバータを実現できる。磁束1が磁束2を阻止するのでコア1に付装されている永久磁石PMへの逆励磁も発生しないので、永久磁石PMの劣化もない。常に、効率の良いDC/DCコンバータを維持できる。
FETQ1をPチャネル型FETに交換した場合、端子T2の電位を基準として端子T1及び端子Tgに負極電位を印加する。したがって、整流素子3及び整流素子4の極性を逆とする。端子Tgには負極性パルス(PWM)を印加する。
これにより、端子T4を基準として端子T3に負極電位を出力する。
(5)バイアス励磁トランスの実施の形態3
(5−1)バイアス励磁トランスの構成
図6(A)は、本発明によるバイアス励磁トランスの実施の形態3の構成及び磁束を示す図である。
以下、図6の(A)と(B)を参照して、バイアス励磁トランスの実施の形態3である構成を説明する。
本発明のバイアス励磁トランスは、以下の構成である。
まず、トランスの構成を明確にするために、図6(B)のXYZ座標を使用して説明する。
図6(B)を正視して、左右水平方向にX軸(右方向が正)があり、上下垂直方向にY軸(上方向が正)があり、紙面の裏面から表面に向け、Z軸が正方向に延びている。
図6(A)において、符号TF3で示されるトランスTF3に存在する符号MC1で示される磁気回路MC1には、(B)に示されるX軸方向に延在しY軸正負方向に対向する一対のヨークがY軸の正側と負側に存在し、両ヨークの中間部同士を連結するギャップ(符号AG1で示される。)を設けたY軸方向に延在する中間脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間に、Y軸方向にそれぞれ延在しX軸正負方向に対向する一対の両外側脚の一方を構成するコア1(X軸負側)と他方を構成するコア2(X軸正側)から成っている。コア1はX軸負側においてX軸正側に存在するコア2と対向している。
中間脚は、コア1とコア2の間(一般的には中央であるが、これに限定しない。)に存在する
両ヨーク、中間脚、コア1及びコア2はZ軸方向に厚みを有している。いわゆるEI型のトランスの磁気回路である。
両ヨーク、中間脚、コア1及びコア2には、上記の説明により図6(A)において符号を割愛している。
コア1には、符号PMで示される永久磁石が付装(挾持、挾装又は挾着されている。)され、さらに符号L1で示されるコイルL1が巻装され、コア2には、符号L2で示されるコイルL2、符号L3で示されるコイルL3が巻装されている。
コイルL1(コイル1とも称す。)はコア1を周回して巻装され、コイルL2及びコイルL3はコア2を周回して巻装されている。
コイル2とコイル3が巻装されているコア2にはギャップが存在しないので、コイル3はコイル2に密結合されている。
コイル3は図6(A)のように巻装されても良いが、重ね巻きでも良い。
図示されていないが、コア1の左右に図示するコイルL1は同一巻線であり連続している。コイルL2(コイル2とも称す。)、コイルL3(コイル3とも称す。)も同様である。
永久磁石は、符号P1で示されるN極と符号P2で示されるS極を有し、永久磁石の発する磁束は、符号φPで示される破線矢印で、矢印の方向にコア1、コア2及び両ヨークを閉磁気回路として通過している。
図6(A)において、磁束は、コイル1及びコイル2に電流が流れていない状態では、バイアス励磁トランスの実施の形態1の図1(A)の磁束と同様となる。
この場合、ギャップAG1(a air gap1)が存在する中間脚には磁束φPは、ほとんど通過できない。磁束φPは、ギャップAG1の無いコア2をほとんど通過する。符号φPは、永久磁石から発生する磁束のみである。
トランスTF3の磁気回路MC1は、コイルL1とコイルL2を疎結合とする構造である。相互インダクタンスが一般のトランスよりも小さい。
たとえば、磁気回路MC1がEI型の磁気回路であれば、磁気回路の左脚、右脚又は中間脚の一部にエアギャップ又は磁束を通しにくい材料を付装(挾持、挾装又は挾着されている。)することで実現可能である。
バイアス励磁トランスの実施の形態3である図6(A)は、バイアス励磁トランスの実施の形態1である図1(A)のコア2に符号L3で示されるコイルL3(コイル3とも称す。)を追加して巻装したものである。
バイアス励磁トランスの実施の形態1、バイアス励磁トランスの実施の形態2及びバイアス励磁トランスの実施の形態3のコイル1及びコイル2は一次巻線であるが、バイアス励磁トランスの実施の形態3のコイル3は、トランスTF3の二次巻線である。
(5)バイアス励磁トランスの実施の形態3
(5−2)バイアス励磁トランスの動作
以下、バイアス励磁トランスの動作を説明をする。
図6(A)において、図7に示す様にコイルL1の一端(黒丸印あり)に符号D5で示される整流素子5(ダイオードD5)のアノードを接続し、コイルL2の他端(黒丸印なし)に符号D5で示される整流素子5(ダイオードD5)のカソードを接続する。
さらに、図6(A)において、図7に示す様にコイルL2の一端(黒丸印あり)に直流正電位を印加し、符号Q1で示される半導体素子(FETQ1)を導通状態とする。
図6(A)に示される各磁束は、図7のFETQ1を導通させたときの磁束である。
図6(A)の磁束φ1(磁束1とも称す。)、磁束φ2(磁束2とも称す。)の磁束方向と、図2(A)の磁束φ1、磁束φ2の磁束方向は便宜上同一方向としている。
図7のコイル1に流れる電流方向と図3のコイル1に流れる電流方向は逆であり、図7のコイル2に流れる電流方向と図3のコイル2に流れる電流方向は逆であり、よって、コイル1、コイル2から発生する磁束自体は逆となるが、コイル1はコア1、コイル2はコア2への巻装方法により、発生する磁束の方向は、Y軸正方向でもY軸負方向でも如何様にできる。
コア1及び両ヨークのX軸負方向側(中間脚を境として)には、永久磁石PMの磁束φP及びコイル1の磁束φ1が通過し、中間脚には、磁束(φP+φ1)βと磁束φ2が(磁束(φP+φ1)βとは同方向)通過し、コア2には磁束(φP+φ1)αと磁束φ2が(磁束(φP+φ1)αとは逆方向)通過する。
α及びβは、バイアス励磁トランスの実施の形態1で説明したとおりである。係数βは、ギャップAG1を通過する磁束に乗ずる係数である。
バイアス励磁トランスの実施の形態2では、コイル2が中間脚に巻装され、バイアス励磁トランスの実施の形態1では、コイル2がコア2に巻装され、いずれのコイル2の磁束φ2も、コイル2を巻装している中間脚又はコア2をY軸正方向に発生している。
バイアス励磁トランスの実施の形態3でも、コイル2が巻装されいるコア2には、磁束φ2がY軸正方向に発生している。
磁束量の計算は、バイアス励磁トランスの実施の形態1、2と同様である。
図6(A)のコイル1には、図7に示すように、整流素子5が並列接続されている。コイル2の一端に正極電位を印加され、コイル2からの相互誘導によりコイル1の一端に正極電位が発生したとき、整流素子3は導通し、コイル1は準短絡され、コイル2の磁束φ2のコア1への通過を阻止する。
したがって、永久磁石PMの発する磁束φPに抗する磁束φ2は、永久磁石PMを通過できない。
コイル2の一端に電位を印加しないときのコア2の磁束φP(X軸負方向に通過)による磁束密度BφPを、図8に示すB−H曲線の第3象限と定義し、磁束密度をBφPの位置をB軸のBN1とする。
コイル2に正電位を印加したとき、コイル2の磁束φ2が、
φ2>α(φP+φ1)で(いずれも磁束量)あれば、コア2の磁束はφ2が支配的となり、コア2の磁束密度は第1象限に遷移し、図8のB−H曲線のB軸のBP1付近に達する。
したがって、本発明のバイアス励磁トランスは、B−H曲線の第3象限から第1象限までの広範囲のB軸を移動できる。したがって、磁気回路MC2の効率が良く、トランスTF2の効率も良くなる。
コイルL2への電圧の印加を停止すると、コア2の磁束密度は再び、B−H曲線の第3象限のB軸の値BN1の初期状態に復帰する。
すなわち、従来技術のバイアス励磁を施した磁気回路のように永久磁石の磁力の低下、消磁や逆励磁がない。
バイアス励磁トランスの実施の形態3では、二次巻線であるコイル3を備え、コイル2の電流が流れた時(フォワード動作)及び遮断(フライバック動作)されたとき、コイル3にコイル2からの相互誘導(密結合)電圧が効率良く誘起される。
(6)電気回路の実施の形態3
(6−1)回路構成
図7は、本発明であるバイアス励磁トランスの実施の形態3を使用した電気回路の実施の形態3を示す。図7を参照し、本発明である電気回路の実施の形態3を説明する。
図7において、符号TF3、符号MC1、符号L1、符号L2は、符号L3は、図6(A)と同一のものであり、それぞれ、トランスTF3、磁気回路MC1、コイルL1、コイルL2、コイルL3である。
図7において、図6(A)における永久磁石PM、ギャップAG1は図示を省略している。
バイアス励磁トランスの実施の形態3と同様に、コイルL1(コイル1とも称す。)とコイルL2(コイル2とも称す。)は磁気回路MC1により疎結合され、コイルL2(コイル2とも称す。)とコイルL3(コイル3とも称す。)は、磁気回路MC2のコア2により密結合されていている。
図7において、コイルL1の一端(黒丸印あり)に符号D5で示される整流素子5(ダイオードD5)のアノードを接続し、コイルL1の他端(黒丸印なし)に符号D5で示される整流素子5(ダイオードD5)のカソードを接続している。
端子T1には、コイル2の一端(黒丸印あり)が接続され、コイル2の他端(黒丸印なし)には、符号Q1で示される半導体素子(Nチャネル型FETQ1)の一端(ドレインD)が接続されている。
端子T2には、半導体素子(Nチャネル型FETQ1)の他端(ソースS)が接続されている。コイル3の一端(黒丸印なし)には、符号D6で示される整流素子6(ダイオードD6)のアノードが接続され、整流素子6のカソードには、符号Cで示される容量素子(コンデンサC)の一端及び端子T3が接続されている。
コイル3の他端(黒丸印あり)には、容量素子の他端及び端子T4が接続されている。
半導体素子の制御端(ゲートG)は端子Tgに接続されている。
端子T1、端子T2間は、直流電位を入力する端子であり、端子T3、端子T4間は、直流電位を出力する端子である。
(6)電気回路の実施の形態3
(6−2)回路動作
図7を参照し、本発明であるバイアス励磁トランスの実施の形態3を使用した電気回路の実施の形態3の動作を説明する。
以下の説明に出現する磁束φP、φ1、φ2は、バイアス励磁トランスの実施の形態3で説明したものであり、本説明において割愛する。
本発明は、高効率な電圧変換回路(DC/DCコンバータ)に最適であり、端子T1、端子T2間に直流電位を印加し、端子T3、端子T4間から電圧変換された電位を得る。
端子T2の電位を基準電位として、端子T1に正極電位を印加する。この状態で、端子Tg(FETQ1のゲートG)にFETQ1が導通する電位(Nチャネルエンハンス型FETにおいては、正極電位でも低電位でないFETQ1が導通する正極電位)を印加すると、以下の電流路が構成され、電流が流れる。
端子T1→コイル2の一端→コイル2の他端→FETQ1のドレインD→FETQ1のソースS→端子T2。
コイル2の一端に正極電位が印加されたとき、コイル2からの相互誘導によりコイル1の一端に正極電位が発生し、コイル2が発生する磁束φ2がコア1を通過することに抗する磁束φ1をコイル1から発生すべくコイル1にダオードD5を介して電流が流れる。
コイル2の一端に正極電位が印加された直後、FETQ1が非導通となる電位を端子Tgに印加し、コイル2への電圧の印加を遮断するとコイル2の自己誘導により、コイル2の他端に正極電位、コイル2の一端に負極電位を発生し、コイル2とコイル3の相互誘導により、コイル3の一端(黒丸印あり)に負極電位、コイル3の他端(黒丸印なし)に正極電位を発生する。コイル3の他端の正極電位は整流素子6を介して端子T3に出力し、コイル3の一端の負極電位は端子T4に出力され(コイル3の両端に電位差3の出力)、端子T3、端子T4に接続された外部の負荷に電力を供給する。
すなわち、端子Tgに正極性パルス列(PWM)を印加することにより、高い効率のフライバック型DC/DCコンバータを構成する。
コイル1の他端にも正極電位が発生するが、ダイオードD5により阻止され、コイル1には電流が流れなく、コイル2の磁束φ2の消滅を迅速にする。これはフライバック動作に資する。
したがって、フライバック型電圧変換回路のフライバック時の動作としては、コイル1が存在しないものと同様であり、フライバック動作効率の低下はない。
バイアス励磁トランスの実施の形態3で説明したとおり、コイル1を巻装しているコア1には永久磁石PMが付装されているので、本発明の電気回路の初期状態において、トランスTF3の磁気回路MC1のコア2の磁束密度は、図8のB−H曲線の第3象限にある。
コイル2の一端に正極電位が印加され、FETQ1のゲートに正極パルスが印加されたとき、バイアス励磁トランスの実施の形態3で説明したとおり、コイル2を巻装しているコア2の磁束密度は、図8のB−H曲線の第3象限から第1象限に遷移し、大きな磁束密度の変化幅を得ることができる。
したがって、非常に効率の良いフライバック型DC/DCコンバータを実現できる。磁束1が磁束2を阻止するのでコア1に付装されている永久磁石PMへの逆励磁も発生しないので、永久磁石PMの劣化もない。常に、効率の良いDC/DCコンバータを維持できる。
図示しないが、図7におけるコイル3の一端と他端を入替えれば、コイル2に正極電位を印加したときの相互誘導によりコイル3の一端(黒丸印あり)に発生する正極電位、コイル3の他端(黒丸印なし)に発生する負極電位(コイル3の両端に電位差4の出力)により負荷に電力を供給できる。
フォワード型DC/DCコンバータを構成する。
フライバック、フォワードのいずれにおいてもトランスの磁気回路の効率が良く、トランスの効率が良いので、効率の良いDC/DCコンバータを実現できる。
FETQ1をPチャネル型FETに交換した場合、端子T2の電位を基準として端子T1及び端子Tgに負極電位を印加する。したがって、整流素子5の極性を逆とする。端子Tgには負極性パルス(PWM)を印加する。
これにより、端子T4を基準として端子T3に正極電位を出力するフォワード型DC/DCコンバータとなる。
上記において、コイル3の一端と他端を入替えるか、整流素子6の極性を逆にすることで、フライバック型DC/DCコンバータとなる。
Q1 半導体素子
TF1〜TF3 トランス
L1〜L3 コイル
PM 永久磁石
P1、P2 永久磁石の極
MC1、MC2 磁気回路
AG1、AG2 ギャップ
D1〜D7 整流素子
T1〜T4、Tg 端子
X、Y、Z XYZ座標の各軸
φP、φ1、φ2 磁束
α、β 係数

Claims (10)

  1. 対向する一対のヨークと、両ヨークの中間部同士を連結するギャップを設けた中間脚と、該両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚の一方を構成する永久磁石が付装されコイル1が巻装されたコア1と、該一対の外側脚の他方を構成するコイル2が巻装されたコア2を備え、
    前記コイル1と前記コイル2は疎結合され、
    前記永久磁石の発生する磁束Pは、前記コア1、前記コア2及び前記両ヨークを閉磁気回路として通過し、
    前記コイル2に、該磁束Pと抗する磁束2を発生させるべく電流を流し、該コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
    前記磁束P、前記磁束1及び前記磁束2は、前記中間脚を同方向に通過し、
    前記コア2内において前記磁束2の磁束密度は、該磁束P及び該磁束1の量の加算値における磁束密度より大きく、該磁束P及び該磁束1に抗すべく該コア2を通過し、
    前記磁束2は前記コア1を通過できず、該磁束2のコア1の通過に起因する前記永久磁石の弱磁化、を防止することを特徴とするバイアス励磁トランス。
  2. 前記閉磁気回路に前記磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあり、前記コイル2に前記コイル1より大きな電流が流れるとき、該コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、又は、
    前記閉磁気回路に前記磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、前記コイル2に前記コイル1より大きな電流が流れるとき、該コア2の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあることを特徴とする請求項1に記載のバイアス励磁トランス。
  3. 対向する一対のヨークと、両ヨークの中間部同士を連結するコイル2が巻装された中間脚と、該両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚の一方を構成する永久磁石が付装されコイル1が巻装されたコア1と、該一対の外側脚の他方を構成するギャップを設けたコア2を備え、
    前記コイル1と前記コイル2は疎結合され、
    前記永久磁石の発生する磁束Pは、前記コア1、該コア1から前記中間脚までの両ヨーク及び前記中間脚を閉磁気回路として通過し、
    前記コイル2に、該磁束Pと抗する磁束2を発生させるべく電圧を印加し、該コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束φ1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
    前記磁束P及び前記磁束1は、前記両ヨーク、前記中間脚及び前記コア2を通過し、
    前記磁束2は、前記コア2を前記磁束P及び前記磁束1と同方向に通過し、
    前記中間脚内において前記磁束2の磁束密度は、該磁束P及び該磁束1の量の加算値における磁束密度より大きく、該磁束P及び該磁束1に抗すべく該中間脚を通過し、
    前記磁束2は前記コア1を通過できず、該磁束2のコア1の通過に起因する前記永久磁石の弱磁化、を防止することを特徴とするバイアス励磁トランス。
  4. 前記閉磁気回路に磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあり、前記コイル2に電圧を印加したとき、該中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、又は、
    前記閉磁気回路に磁束Pのみが通過しているとき、B−H曲線において、前記中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第1象限にあり、前記コイル2に電圧を印加したとき、該中間脚の磁気回路の磁場Hの値及び磁束密度Bの値は第3象限にあることを特徴とする請求項3に記載のバイアス励磁トランス。
  5. 前記コア2にさらにコイル3を巻装したことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイアス励磁トランス。
  6. 前記中間脚にさらにコイル3を巻装したことを特徴とする請求項3又は4に記載のバイアス励磁トランス。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子1及び整流素子2を逆方向並列接続し、該コイル1の他端と前記コイル2の他端を導通させ、該コイル1の一端と該コイル2の一端に電位差を印加したとき、
    前記コイル1の一端に印加した電位1が前記整流素子1に対し順方向であるとき、該電位1による電流は前記整流素子1と前記コイル2に流れ、又は、
    前記コイル1の一端に印加した電位2が前記整流素子2に対し順方向であるとき、該電位2による電流は前記整流素子2と前記コイル2に流れ、
    前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
    前記コイル2のリアクタンスにより突入電流を防止することを特徴とする電気回路。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子を並列接続し、前記コイル2の一端と該コイル2の他端に電位差を印加したとき、前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧が前記整流素子に対し順方向であるとき、該誘起電圧による電流は該コイル1に流れ、
    前記コイル1への該誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
    前記コイル2の両端に印加した電位差を消滅させたとき、該コイル2の自己誘導により、該コイル2の一端に印加した電位と同極性の電位を該コイル2の他端に発生することを特徴とする電気回路。
  9. 請求項5又は6に記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子を並列接続し、前記コイル2の一端と該コイル2の他端に電位差を印加したとき、前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧が前記整流素子に対し順方向であるとき、該誘起電圧による電流は該コイル1に流れ、
    前記コイル1への該誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
    前記コイル2の両端に印加した電位差を消滅させたとき、該コイル2と該コイル3の相互誘導により該コイル3の両端に電位差3を発生することを特徴とする電気回路。
  10. 請求項5又は6に記載のバイアス励磁トランスを用いた電気回路において、前記コイル1の両端に整流素子を並列接続し、前記コイル2の一端と該コイル2の他端に電位差を印加したとき、前記コイル2からの相互誘導によるコイル1への誘起電圧が前記整流素子に対し順方向であるとき、該誘起電圧による電流は該コイル1に流れ、
    前記コイル1への該誘起電圧によりコイル1に電流が流れたとき発生すべく磁束1は、該磁束2に抗すべく磁束の方向であり、
    前記コイル3の両端に電位差4を発生することを特徴とする電気回路。
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