JP5846631B2 - 導光板およびこれを備えた光学系 - Google Patents

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Description

本発明は、導光板およびこれを備えた光学系に係り、特に、面光源に適用するのに好適な導光板およびこれを備えた光学系に関する。
従来から、液晶表示装置のバックライト、内照式の看板または照明装置等の用途には、導光板を備えた面光源装置が用いられていた。
この種の面光源装置に適用される導光板としては、従前は、光源(レーザ光源等)からの光を、溝構造、円錐構造または円柱構造等の導光板の面形状による屈折や全反射現象を利用して導光板の表面側に取り出すものが一般的であった。
これに対して、近年では、新たなタイプの導光板として、回折格子を適用したものが提案されるようになった(例えば、特許文献1および2参照)。この種の導光板は、回折格子による回折によって発生した光を伝播させることで、従前よりも高輝度かつ均一な輝度の面光源を実現することができるといった利点を有している。
特開平9−325218号公報 特開平7−248496号公報
しかしながら、従来の回折格子を適用した導光板においては、回折格子に入射した光に対して、±1次光以外にも、±2次光等の回折格子に特有の多数の回折次数の光が発生していたため、いろいろな角度成分の光が生じて迷光になり易いといった問題があった。このような多数の回折次数の光が発生する回折格子を導光板に適用することは、面光源の輝度の均一化の観点からは有利であるが、その反面、次数に応じて異なる角度に光が散乱し、また、全反射される光などもあることによって、迷光となる成分が増える結果となっていた。したがって、多数の回折次数の光を発生させることは、光の利用効率の観点からは必ずしも有利とはいえなかった。
この点、モンテカルロ法による光線追跡と最適化アルゴリズムとを用いて回折格子の最適形状を求めることによって、光の利用効率の向上を図ることも可能であったが、この場合には、多数の光線を追跡する必要があるため計算容量的に極めて重い計算になることが多く、また、与えられた構造での輝度計算はできても、最適化計算は困難であることが多いといった問題があった。
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、迷光による光損失が少ない光の利用効率に優れた面光源を簡便に実現することができる導光板およびこれを備えた光学系を提供することを目的とするものである。
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る導光板の特徴は、所定の幅、奥行きおよび厚みを有する板状の透光性の導光板本体を備え、前記導光板本体は、コヒーレントな光が入射する第1の面と、この第1の面に幅方向において隣位するように配置され、前記第1の面に入射した前記光に基づく出射光の取り出しが行われる厚み方向に直交する第2の面と、この第2の面に前記厚み方向において対向する位置に、前記第2の面に対して平行に配置された第3の面とを有する導光板であって、前記第3の面上に、奥行き方向に長尺な前記導光板本体と一体の複数の凸部が、前記幅方向に沿って前記光の波長よりも小さい周期で整列配置されてなる微細周期構造体と、これを被覆する反射膜とによって構成された反射型サブ波長回折格子を有し、次の(1)〜(3)に示す各条件式、
sin−1(1/n)<θ (1)
λ/{n(sinθ+1)}≦Λ<min〔2λ/{n(sinθ+1)}、λ/{n(−sinθ+1)}〕 (2)
sin−1{sinθ−λ/(n・Λ)}<sin−1(1/n) (3)
但し、
λ:光の波長
n:導光板本体の屈折率
Λ:反射型サブ波長回折格子の周期
θ:反射型サブ波長回折格子に対する光の入射角
を満足することで、前記反射型サブ波長回折格子への前記光の入射により、0次光および−1次光のみが発生し、発生した前記0次光が、前記第2の面に前記臨界角よりも大きい入射角で入射して全反射された後に前記反射型サブ波長回折格子に入射し、一方、発生した前記−1次光が、前記第2の面に前記臨界角よりも小さい入射角で入射して前記第2の面から出射され、これ以後、前記反射型サブ波長回折格子への前記0次光の入射による新たな0次光および−1次光のみの発生と、発生した前記新たな0次光の前記第2の面による全反射後における前記反射型サブ波長回折格子への入射と、発生した前記新たな−1次光の前記第2の面からの出射とが複数回繰り返される点にある。
そして、この請求項1に係る発明によれば、(1)〜(3)の各条件式を満足することにより、反射型サブ波長回折格子への入射光に基づいて発生した−1次光を、面光源を形成するために第2の面から出射させることができ、また、反射型サブ波長回折格子への入射光に基づいて発生した0次光を、新たな−1次光を発生させるために、第2の面における全反射を利用して反射型サブ波長回折格子への次回の入射位置まで伝播させることができ、さらに、反射型サブ波長回折格子への入射光に基づいて0次光および−1次光以外の光が発生しないようにすることができる。この結果、迷光による光損失が少ない光の利用効率に優れた面光源を、光線追跡等の煩雑な設計を要することなく簡便に実現することができる。
また、請求項2に係る導光板の特徴は、請求項1において、更に、前記反射型サブ波長回折格子は、前記第2の面から出射される前記−1次光の強度が出射位置によらず均一になるように、前記凸部の高さおよびこれに応じた前記−1次光の回折効率が、前記幅方向における前記0次光の伝播方向の下流側に向かうにしたがって増加するように形成されている点にある。
そして、この請求項2に係る発明によれば、第2の面から出射される−1次光の強度を出射位置によらず均一化することができるので、面光源の輝度の均一性を向上させることができる。
さらに、請求項3に係る導光板の特徴は、請求項2において、更に、前記凸部の高さは、前記反射型サブ波長回折格子への前記0次光の最後の入射によって発生する最後の前記新たな0次光の強度が所定値以下となるように形成されている点にある。
そして、この請求項3に係る発明によれば、反射型サブ波長回折格子に入射した光の殆どを−1次光すなわち面光源に変換することができるので、光の利用効率を向上させることができる。
さらにまた、請求項4に係る導光板の特徴は、請求項2または3において、更に、前記凸部の高さは、θと、前記導光板本体の厚みと、前記反射型サブ波長回折格子の前記幅方向の寸法とに基づいて、前記反射型サブ波長回折格子における前記光に基づく回折の発生回数を算出し、この算出された前記発生回数と前記光の強度とに基づいて、前記反射型サブ波長回折格子における1回の回折あたりに得るべき−1次光の一定の強度を算出し、この算出された一定の強度が得られるような各回の回折ごとの−1次光の回折効率を、前記光の強度と、前記一定の強度と、前回までの回折による光強度の総減少量とに基づいて算出し、これらの算出された各回の回折ごとの−1次光の回折効率にそれぞれ対応する凸部の高さを、凸部の高さを変数とした−1次光の回折効率のシミュレーション結果に基づいて逆算することによって求められたものである点にある。
そして、この請求項4に係る発明によれば、−1次光の強度を均一化することができるような各凸部の高さを簡便に求めることができるので、面光源の輝度の均一性を確実に向上させることができる。
また、請求項5に係る導光板の特徴は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記第1の面は、前記光が垂直入射するように前記第3の面に対して傾斜角θを有する傾斜面に形成され、更に、次の(4)に示す条件式、
t≦W/(2・sinθ) (4)
t:導光板本体の厚み
W:第1の面に垂直入射する光の奥行き方向に直交する方向の光束幅
を満足する点にある。
そして、この請求項5に係る発明によれば、(4)の条件式を満足することにより、簡易な構成によって、サブ波長反射回折格子への光の入射およびこれにともなう−1次光の発生を、幅方向において満遍無く行うことができ、これにともなって、第2の面における−1次光の出射を、幅方向において満遍無く行うことができるので、面光源の輝度の均一性を更に向上させることができる。
さらに、請求項6に係る導光板の特徴は、請求項1〜5のいずれか1項において、更に、前記第1の面は、前記第2の面の前記幅方向における前記0次光の伝播方向の上流側の端部に連設されたプリズムの傾斜面からなる点にある。
そして、この請求項6に係る発明によれば、第1の面を、反射型サブ波長回折格子によって発生した0次光および−1次光の光路上に位置しないように、第2の面から退避した位置に配置するとともに、第1の面に入射した光を、導光板本体内を直進させた後に即座に反射型サブ波長回折格子に入射させるようにすることができるので、面光源を確実に実現することができるとともに、導光板の幅方向のサイズの縮小化を図ることができる。
さらにまた、請求項7に係る導光板の特徴は、請求項1〜6のいずれか1項において、更に、前記第1の面は、前記奥行き方向に沿って長尺な矩形状に形成され、前記光は、前記第1の面上において前記第1の面に沿って長尺な矩形状を呈する点にある。
そして、この請求項7に係る発明によれば、面光源の輝度の奥行き方向における均一性を更に向上させることができる。
また、請求項8に係る導光板の特徴は、請求項1〜7のいずれか1項において、更に、前記第2の面に対向して配置され、前記第2の面から出射された前記−1次光を屈折させることによって、前記−1次光の進行方向を前記第2の面に直交する方向側に補正するプリズムシートを備えた点にある。
そして、この請求項8に係る発明によれば、プリズムシートによる−1次光の進行方向の補正によって、液晶表示装置のバックライト等の用途に適した導光板本体の直上に出射される面光源を実現することができる。
さらに、請求項9に係る導光板の特徴は、請求項8において、更に、前記プリズムシートは、前記奥行き方向に直交する任意の断面において前記第2の面側に向かって尖鋭な二等辺三角形状を呈する複数のプリズムを有し、各プリズムは、これらの頂角を前記断面上において二等分する二等分線が、前記第2の面に直交するように配置され、更に、次の(5)に示す条件式、
cos{σ/2+sin−1(n・sinθ−λ/Λ)}
=N・cos(3σ/2) (5)
但し、
σ:プリズムシートのプリズムの頂角
N:プリズムシートのプリズムの屈折率
を満足する点にある。
そして、この請求項9に係る発明によれば、(5)の条件式を満足することにより、プリズムシートにおける−1次光の進行方向の最適な補正を簡便に行うことができる。
さらにまた、請求項10に係る光学系の特徴は、請求項8または9に記載の導光板と、この導光板の前記第1の面に向けて前記コヒーレントな光を出射する発光装置とを備えた点にある。
そして、この請求項10に係る発明によれば、光の利用効率に優れた面光源を簡便に実現することができる。
また、請求項11に係る光学系の特徴は、請求項10において、更に、前記第1の面は、請求項7に記載の長尺な矩形状に形成され、前記発光装置は、前記コヒーレントな光を出射する光源と、この光源から出射された前記光を請求項7に記載の長尺な矩形状を呈する光に整形する光学素子とを備えた点にある。
そして、この請求項11に係る発明によれば、面光源の均一性の向上を図ることができる。
本発明によれば、迷光による光損失が少ない光の利用効率に優れた面光源を簡便に実現することができる。
本発明に係る導光板の第1実施形態を示す構成図 図1の斜視図 本発明に係る導光板の第2実施形態を示す構成図 本発明に係る導光板の第3実施形態を説明するための説明図 本発明に係る導光板の第4実施形態を示す構成図 第4実施形態の具体例を説明するための説明図 本発明に係る光学系の実施形態を示す構成図 本発明の実施例1において、回折効率を示すグラフ 本発明の実施例2において、回折効率を示すグラフ 本発明の実施例3において、回折効率を示すグラフ 本発明の比較例2において、回折効率を示すグラフ
(導光板の第1実施形態)
以下、本発明に係る導光板の第1実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態における導光板1は、所定の幅、奥行きおよび厚みを有する板状の透光性の導光板本体2を有している。この導光板本体2は、例えば、シクロオレフィンポリマー樹脂等の光学用の樹脂材料によって形成してもよい。
図1に示すように、導光板本体2は、コヒーレント光Lc(光束のうちの1本の光線のみを代表的に図示)が入射する第1の面S1と、この第1の面S1に幅方向(図1における横方向)において隣位するように配置され、第1の面S1に入射したコヒーレント光Lcに基づく出射光の取り出しが行われる厚み方向(図1における縦方向)に直交する第2の面S2(表面)と、この第2の面S2に厚み方向において対向する位置に、第2の面S2に対して平行に配置された第3の面S3(裏面)とを有している。
各面S1、S2、S3の具体的な構成について説明すると、図1に示すように、第1の面S1は、これに垂直入射したコヒーレント光Lcが、第3の面S3に臨界角よりも大きい入射角で入射するように、第3の面S3に対して導光板本体2の臨界角よりも大きい傾斜角を有するように形成されている。より具体的には、図1および図2に示すように、第1の面S1は、第2の面S2の一端(図1における左端)の連設された奥行き方向(図1における紙面垂直方向)に長尺な三角柱形状のプリズム21の傾斜面(図1における左斜面)からなる。
また、図1に示すように、第2の面S2は平面に形成されており、この面S2を平面視した場合には、矩形状を呈するようになっている。
さらに、図1に示すように、第3の面S3は、第2の面S2に平行な平面であるが、この第3の面S3には、反射型サブ波長回折格子3が形成されている。この反射型サブ波長回折格子3は、図1に示すように、第3の面S3に、奥行き方向に長尺とされた導光板本体2と一体(同材質)の複数の凸部22が、幅方向に沿ってコヒーレント光Lcの波長よりも小さい周期で整列配置されてなる微細周期構造体31を有している。また、図1に示すように、反射型サブ波長回折格子3は、微細周期構造体31を被覆する厚みが薄い反射膜32を有している。なお、図1において、反射膜32は、各凸部22間の第3の面S3および各凸部22の頂部に被覆されている。なお、図1における凸部22は、バイナリ型(レベル2)と称される通常の矩形状のものであるが、マルチレベル(多段階段型)のものであってもよい。また、反射膜32は、アルミニウムAl、銀Agまたは金Au等の光反射率が良好な金属薄膜をコーティングしたものであってもよい。さらに、反射膜32の膜厚としては、コンセプトに応じて好適な値(例えば、200nm等)を選択すればよい。
そして、本実施形態における導光板1は、次の(1)〜(3)に示す各条件式を満足するようになっている。
sin−1(1/n)<θ (1)
λ/{n(sinθ+1)}≦Λ<min〔2λ/{n(sinθ+1)}、λ/{n(−sinθ+1)}〕 (2)
sin−1{sinθ−λ/(n・Λ)}<sin−1(1/n) (3)
但し、(2)および(3)式におけるλは、コヒーレント光Lcの波長〔nm〕である(以下、同様)。また、(1)〜(3)式におけるnは、λに対応する導光板本体2の屈折率である(以下、同様)。さらに、(2)および(3)式におけるΛは、反射型サブ波長回折格子3の周期〔nm〕であり、これは、微細周期構造体31の周期と同一とみなすことができる(以下、同様)。さらにまた、(1)〜(3)式におけるθは、反射型サブ波長回折格子3に対するコヒーレント光Lcの入射角〔°〕である(以下、同様)。また、(2)式におけるminは、これに続く括弧内の複数(ここでは2つ)のパラメータのうちの値が最小のものを示す記号である(以下、同様)。
<<(1)式の意義>>
ここで、(1)式は、第1の面S1に入射したコヒーレント光Lcが反射型サブ波長回折格子3(換言すれば、第3の面S3もしくは反射膜32)に臨界角よりも大きな入射角θで入射するための条件を示している。
すなわち、(1)式の条件を逸脱する場合には、コヒーレント光Lcが反射型サブ波長回折格子3に臨界角よりも小さい入射角θで入射することになる。この場合には、反射型サブ波長回折格子3へのコヒーレント光Lcの入射によって−1次光とともに発生した0次光が、第2の面S2に臨界角よりも小さい入射角θで入射することになるため、この0次光が第2の面S2において全反射されずに導光板1の外部に抜け出てしまうことになる。この結果、0次光を、新たな−1次光を発生させるために反射型サブ波長回折格子3への入射位置(回折位置)まで伝播させることができなくなる。
したがって、(1)式を満足すれば、第2の面S2における0次光の全反射を確保して、0次光を、新たな−1次光およびその次の−1次光の発生に必要な新たな0次光を発生させるために反射型サブ波長回折格子3への次の入射位置まで伝播させることができるので、−1次光および0次光の発生領域を幅方向に広げていくことができる。このようなことから、(1)式は、0次光の継続的な発生条件でもある。
<<(2)式の意義>>
また、(2)式は、反射型サブ波長回折格子3へのコヒーレント光Lcまたは0次光の入射による回折現象により、図1に示すように、0次光L(0)以外の実質的な回折光として、−1次光L(−1)のみが発生する条件を示している。なお、0次光L(0)は、反射型サブ波長回折格子3への光の入射が行われる限り必然的に発生する。ここで、回折光の付番におけるiは、該当する回折光が反射型サブ波長回折格子3における何回目の回折現象によって生じたものであるかを示す自然数であり、反射型サブ波長回折格子3における回折現象の総発生回数を最大値としたものである。例えば、図1に示すように、第1回目の回折現象およびこれに基づく第1回目の0次光L(0)および−1次光(−1)は、反射型サブ波長回折格子3へのコヒーレント光Lcの入射によって発生する。また、第2回目の回折現象およびこれに基づく第2回目の0次光L(0)および−1次光(−1)は、反射型サブ波長回折格子3への第1回目の0次光L(0)の入射によって発生する。
そして、(2)式の条件を逸脱する場合には、回折光として、−1次光L(−1)だけでなく、+1次光および±2次以上の高次光が発生することになる。
このような(2)式は、以下のようにして導出することができる。
<−1次光が発生する条件>
まず、前述したλ、Λ、n、θ(ただし、0°<θ<90°と仮定、以下同様)に加えて、回折光の回折次数をm、回折光の回折角度〔°〕をθ(図1においては便宜上正の値であるが、負の値をとることもある)と仮定すると、一般的な回折格子方程式は、次式のようになる。
n・sinθ=n・sinθ+m(λ/Λ) (6)
そして、−1次光に特化した回折格子方程式は、(6)式のmに−1を代入することによって、次式のようになる。
n・sinθ=n・sinθ−λ/Λ (7)
この(7)式を変形すると、sinθ=sinθ−λ/(n・Λ)となる。さらに、|sinθ|≦1であるため、次式を得ることができる。
−1≦sinθ−λ/(n・Λ)≦1 (8)
この(8)式は、−1≦sinθ−λ/(n・Λ)と、sinθ−λ/(n・Λ)≦1との2つの式に分けられる。これら2つの式のうちの前者を式変形すると、Λ≧λ/{n(sinθ+1)}となる。一方、2つの式のうちの後者を式変形すると、まず、λ/(n・Λ)≧sinθ−1となり、次に、λ/n≧Λ(sinθ−1)となり、次に、右辺の(sinθ−1)の値が負であることを考慮して、Λ≧λ/{n(sinθ−1)}となる。しかし、この後者の式:Λ≧λ/{n(sinθ−1)}は、sinθ−1が常に負、Λが常に正であることからすれば、常に成立するいわば絶対不等式である。したがって、後者の式は、Λに対して実質的な制限を付与する式とはならない。このことから、−1次光が発生する実質的な条件は、前者の式すなわち改めて記載すると次式となる。
Λ≧λ/{n(sinθ+1)} (9)
<+1次光が発生しない条件>
次に、+1次光に特化した回折格子方程式は、(6)式のmに+1を代入することによって、次式のようになる。
n・sinθ=n・sinθ+λ/Λ (10)
この(10)式は、|sinθ|≦1であることを考慮すると、次式のように式変形することができる。
−1≦sinθ+λ/(n・Λ)≦1 (11)
この(11)式は、−1≦sinθ+λ/(n・Λ)と、sinθ+λ/(n・Λ)≦1との2つの式に分けられる。これら2つの式のうちの前者を式変形すると、まず、λ/n≧Λ(−sinθ−1)となり、次に、右辺の(−sinθ−1)の値が負であることを考慮して、Λ≧λ/{n(−sinθ−1)}となる。しかし、この不等式は、−sinθ−1が常に負、Λが常に正であることからすれば、常に成立するいわば絶対不等式である。したがって、前者の式は、Λに対して実質的な制限を付与する式とはならない。一方、2つの式のうちの後者を式変形すると、+1次光が発生する条件としての次式が求まる。
Λ≧λ/{n(−sinθ+1)} (12)
そして、+1次光が発生しない条件は、(12)式を逸脱する次式となる。
Λ<λ/{n(−sinθ+1)} (13)
<−2次以上の負の回折次数の回折光が発生しない条件>
次に、−2次以上(ここでは、負の値として大きい意味)の負の回折次数を−M(但し、Mは、2以上の正整数、以下同様)と仮定すると、−M次光が発生する条件は、−1次光が発生する条件である(9)式の右辺にMを乗じることによって、次式で表すことができる。
Λ≧Mλ/{n(sinθ+1)} (14)
そして、−2次以上の負の回折次数の回折光(すなわち、−M次光)が発生しない条件は、(14)式を逸脱する次式となる。
Λ<Mλ/{n(sinθ+1)} (15)
<+2次以上の正の回折次数の回折光が発生しない条件>
次に、+2次以上の正の回折次数を+Mと仮定すると、+M次光が発生しない条件は、+1次光が発生しない条件である(13)式の右辺にMを乗じることによって、次式で表すことができる。
Λ<Mλ/{n(−sinθ+1)} (16)
<0次光を除く実質的な回折光として−1次光のみが発生する条件>
そして、0次光を除く実質的な回折光として−1次光のみが発生する条件(換言すれば、−1次光が発生し、なおかつ、+1次光および±2以上の高次光が発生しない条件)は、(9)式、(13)式、(15)式および(16)式の複合条件となる。この複合条件は、まずは次式として求めることができる。
λ/{n(sinθ+1)}≦Λ<min〔Mλ/{n(sinθ+1)}、Mλ/{n(−sinθ+1)}、λ/{n(−sinθ+1)}〕 (2)’
この(2)’式において、0°<θ<90°であることを考慮すれば、Mλ/{n(sinθ+1)}とMλ/{n(−sinθ+1)}との大小関係は明らかであり、前者の方が小さい。また、(2)’式において、Mλ/{n(−sinθ+1)}とλ/{n(−sinθ+1)}との大小関係も明らかであり、後者の方が小さい。したがって、(2)’式の右辺において、Mλ/{n(−sinθ+1)}が最小値(min)として選択されることはない。そして、このことから、(2)’式は、次式のように整理することができる。
λ/{n(sinθ+1)}≦Λ<min〔Mλ/{n(sinθ+1)}、λ/{n(−sinθ+1)}〕 (2)”
さて、(2)”式において、Mλ/{n(sinθ+1)}の最小値は、明らかにM=2とした値である。したがって、(2)”式は、次式のように整理することができる。
λ/{n(sinθ+1)}≦Λ<min〔2λ/{n(sinθ+1)}、λ/{n(−sinθ+1)}〕 (2)
このようにして、(2)式を導出することができる。
<<(3)式の意義>>
さらに、(3)式は、反射型サブ波長回折格子3における回折現象によって発生した−1次光が、第2の面S2から外部に出射されるための条件である。
この(3)式は、以下のようにして導出することができる。
すなわち、まず、−1次光の回折角度θは、(7)式を式変形することによって、次式の値となる。
θ=sin−1{sinθ−λ/(n・Λ)} (17)
そして、−1次光が第2の面S2から出射されるためには、第2の面S2において−1次光が全反射されないこと、すなわち、第2の面S2に対する−1次光の入射角が臨界角よりも小さくなることが必要となる。このことは、第2の面S2に対する−1次光の入射角をθinと仮定すると、次式で表すことができる。
θin<sin−1(1/n) (3)’
ところで、第2の面S2と第3の面S3とが互いに平行であることに起因して、−1次光の回折角度θの基準線(0°の線)と−1次光の入射角θinの基準線(0°の線)とが互いに平行であることを考慮すれば、これらθとθinとは、2つの平行線(角度の基準線)に交わる傾斜直線(−1次光の光線に相当)がなす錯角の関係にあるため、互いに等角となる。
したがって、(3)’のθinにθを代入することによって、次式を得ることができる。
sin−1{sinθ−λ/(n・Λ)}<sin−1(1/n) (3)
このようにして、(3)式を導出することができる。
(第1実施形態の作用)
本実施形態において、第1の面S1に垂直入射したコヒーレント光Lcは、導光板本体2の内部を直進した後に、反射型サブ波長回折格子3に入射角θで入射する。これにより、反射型サブ波長回折格子3における第1回目の回折現象が生じる。このとき、(2)式を満足することによって、第1回目の0次光L(0)以外の実質的な回折光としては、第1回目の−1次光L(−1)のみが発生する。なお、第1回目の0次光L(0)は、反射型サブ波長回折格子3に入射したコヒーレント光Lcを、光強度を減じた状態で反射角−θで反射させたものであり、実質的な回折によって発生したものではない。そして、第1回目の0次光L(0)は、導光板本体2の内部を反射角−θの方向を以て第2の面S2側に向かって進行し、第1回目の−1次光L(−1)は、導光板本体2の内部を回折角度θすなわちsin−1{sinθ−λ/(n・Λ)}の方向を以て第2の面S2側に向かって進行する。
次いで、第1回目の0次光L(0)は、第2の面S2に入射角θで入射する。このことは、第2の面S2と第3の面S3(もしくは反射膜32)とが互いに平行であることに起因して、反射型サブ波長回折格子3において定義される入射角の基準線(0°の線)と第2の面S2において定義される入射角の基準線(0°の線)とが互いに平行であることからすれば当然である。このとき、(1)式を満足することによって、第1回目の0次光L(0)は、第2の面S2において全反射される。そして、全反射された第1回目の0次光L(0)は、導光板本体2の内部を全反射角−θの方向を以て反射型サブ波長回折格子3側に向かって進行する。一方、第1回目の−1次光L(−1)は、第2の面S2に入射角θで入射する。このとき、(3)式を満足することによって、第1回目の−1次光L(−1)は、第2の面S2からスネルの法則にしたがった屈折角sin−1(n・sinθ−λ/Λ)の方向を以て外部(図1における上方)に出射される。
次いで、第2の面S2において全反射された第1回目の0次光L(0)は、反射型サブ波長回折格子3に入射角θで入射する。これにより、反射型サブ波長回折格子3における第2回目の回折現象が生じる。このとき、(2)式を満足することによって、第2回目の0次光L(0)以外の実質的な回折光としては、第2回目の−1次光L(−1)のみが発生する。なお、第2回目の0次光L(0)は、反射型サブ波長回折格子3に入射した第1回目の0次光L(0)を、光強度を減じた状態で反射角−θで反射させたものであり、実質的な回折によって発生したものではない。そして、第2回目の0次光L(0)は、導光板本体2の内部を反射角−θの方向を以て第2の面S2側に向かって進行し、第2回目の−1次光L(−1)は、導光板本体2の内部を回折角度θの方向を以て第2の面S2側に向かって進行する。
次いで、第2回目の0次光L(0)は、第2の面S2に入射角θで入射する。このとき、(1)式を満足することによって、第2回目の0次光L(0)は、第2の面S2において全反射される。そして、全反射された第2回目の0次光L(0)は、導光板本体2の内部を全反射角−θの方向を以て反射型サブ波長回折格子3側に向かって進行する。一方、第2回目の−1次光L(−1)は、第2の面S2に入射角θで入射する。このとき、(3)式を満足することによって、第2回目の−1次光L(−1)は、第2の面S2からスネルの法則にしたがった屈折角sin−1(n・sinθ−λ/Λ)の方向を以て外部に出射される。
このようにして、反射型サブ波長回折格子3への0次光L(0)の入射による新たな0次光L(0)k+1および−1次光L(−1)k+1の発生と、新たな0次光L(0)k+1の第2の面S2による全反射後における反射型サブ波長回折格子3への入射と、新たな−1次光L(−1)k+1の第2の面S2からの出射とが繰り返される。この繰り返しの回数は、入射角θと、導光板本体2の厚みと、反射型サブ波長回折格子3の幅方向の寸法とに依存するが、これについての詳細は、後述の第2実施形態および実施例4に説明を譲る。
このような本実施形態の導光板1によれば、迷光による光損失が少ない光の利用効率に優れた面光源を、光線追跡や最適化アルゴリズム等の煩雑な設計を要することなく簡便に実現することができる。
より好ましくは、第1の面S1に入射させるコヒーレント光Lcを、奥行き方向に沿って長尺な矩形状の第1の面S1に沿うように、第1の面S1上において奥行き方向に長尺な矩形状を呈するような矩形光にする。
このように構成すれば、面光源の輝度の奥行き方向における均一性を更に向上させることができる。
(導光板の第2実施形態)
次に、導光板の第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に図3を参照して説明する。なお、便宜上、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
本実施形態における導光板1は、第1実施形態の構成に加えて、更に、反射型サブ波長回折格子3(微細周期構造体31)における各凸部22が、図3に示すように、幅方向における0次光L(0)の伝播方向の下流側に向かうにしたがって高さが増加するように形成されている。これは、第2の面S2から出射される−1次光L(−1)の強度が出射位置(換言すれば、i)によらず均一になるように、凸部22の高さに応じた−1次光L(−1)の回折効率が下流側に向かうにしたがって増加することを狙ったものである。なお、本発明における光の強度は、例えば、〔W/cm〕を単位とするものであってもよいし、光量〔lm・s〕であってもよい。
ここで、反射型サブ波長回折格子3における−1次光L(−1)の回折効率は、RCWA法(Journal of Optical Society America 71,811-818,1981、Journal of Optical Society America 73,451-455,1983、Journal of Optical Society America 73,1105-1112,1983参照)、モーダル法、T−Matrix法等のベクトル回折理論を適用したシミュレーションによって求めることができるが、この回折効率は、後述のように、所定の凸部22の高さの範囲内において、凸部22の高さの増加にともなって増加する傾向を示す。
このような−1次光L(−1)の強度の均一化を狙った凸部22の高さは、例えば、次のような方法によって設定することができる。
すなわち、まず、反射型サブ波長回折格子3に対するコヒーレント光Lcの入射角θと、導光板本体2の厚みと、反射型サブ波長回折格子3の幅方向の寸法とを決定した上で、これらの値に基づいて、反射型サブ波長回折格子3における回折の回数すなわち前述した回折現象の総発生回数を算出する(ステップ1)。
次いで、ステップ1において算出された回折現象の総発生回数と、第1の面S1に入射するコヒーレント光Lcの強度とに基づいて、反射型サブ波長回折格子3における1回の回折あたりに得るべき−1次光L(−1)の一定の強度を算出する(ステップ2)。例えば、コヒーレント光Lcの強度を100(一定の強度に対する相対値であってもよい)とし、回折現象の総発生回数を21とした場合には、一定の強度は、100/21≒4.76とすればよい。
次いで、ステップ2において算出された一定の強度が得られるような各回の回折ごとの−1次光L(−1)の回折効率を、前述した第1の面S1に入射するコヒーレント光Lcの強度と、ステップ2において算出された一定の強度と、前回までの回折による光強度の総減少量とに基づいて算出する(ステップ3)。ここで、反射型サブ波長回折格子3や導光板本体2内における光の吸収が極めて少ないと仮定すれば、前回までの回折による光強度の総減少量は、前回までの回折による−1次光の発生回数に、前述した−1次光の一定の強度を乗じることによって求めることができる。例えば、前述のように、第1の面S1に入射するコヒーレント光Lcの強度を100、一定の強度を4.76とした場合には、第1回目の回折における−1次光L(−1)の回折効率は、前回までの回折が無いので、4.76/100=0.0476として算出することができる。これに対して、第2回目の回折における−1次光L(−1)の回折効率は、前回までの回折が1回存在するため、この1回の回折による光強度の減少量を考慮して算出する。具体的には、4.76/(100−4.76)≒0.049979として算出することができる。また、第3回目の回折における−1次光L(−1)の回折効率は、前回までの回折が2回存在するため、これら2回の回折による光強度の総減少量を考慮して算出する。具体的には、4.76/(100−2・4.76)≒0.052608として算出することができる。同様に、第21回目(最後)の回折における−1次光L(−1)21の回折効率は、前回までの回折が20回存在するため、これら20回の回折による光強度の総減少量を考慮して、4.76/(100−20・4.76)≒0.991667として算出することができる。因みにこの場合には、コヒーレント光Lcの強度100のうち、殆ど(約99.96)の強度を−1次光に変換することができるので、光の利用効率は99.96%と極めて高い数値になる。
次いで、ステップ3において算出された各回の回折ごとの−1次光の回折効率にそれぞれ対応する凸部の高さを、前述したベクトル回折理論を適用したシミュレーションによる凸部の高さを変数とした−1次光の回折効率のシミュレーション結果に基づいて逆算する(ステップ4)。
このような本実施形態の導光板1によれば、第2の面S2の各出射位置から出射される−1次光L(−1)の強度を均一化することができるので、面光源の輝度の均一性を向上させることができる。また、−1次光の強度を均一化することができるような各凸部22の高さを簡便に求めることができるので、面光源の輝度の均一性を確実に向上させることができる。
なお、各凸部22の高さは、反射型サブ波長回折格子3への0次光の最後の入射によって発生する最後の新たな0次光の強度が所定値以下となるように形成することが望ましい。例えば、第1の面S1に入射するコヒーレント光Lcの強度を100とした場合に、最後の新たな0次光の強度が0.1以下となるように形成してもよい。因みに、前述した約99.96の強度を−1次光に変換する場合には、最後の新たな0次光の強度を0.04に抑えることができる。
(導光板の第3実施形態)
次に、導光板の第3実施形態について、第1実施形態との差異を中心に図4を参照して説明する。なお、便宜上、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
図4に示すように、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、第1面S1が、コヒーレント光Lc(光束)が垂直入射するように、第3の面S3に対してθ〔°〕の傾斜角を有する傾斜面(プリズム21斜面)に形成されている。
その上で、本実施形態においては、更に、次の(4)に示す条件式を満足するようになっている。
t≦W/(2・sinθ (4)
ただし、(4)式におけるtは、図4にも示すように、導光板本体2の厚み〔mm〕である。また、(4)式におけるWは、図4にも示すように、第1の面S1に垂直入射するコヒーレント光Lcの奥行き方向に直交する方向の光束幅〔mm〕である。なお、第1の面S1に入射するコヒーレント光Lcの光束外周形を、コヒーレント光Lcの進行方向に垂直な断面の強度分布における最大強度(例えば、中心部)から所定の値(例えば、1/e)(約13.5%)に低下した位置を結ぶ枠で定義し、この枠の奥行き方向に直交する方向の寸法を光束幅Wと扱ってもよい。
この(4)式は、以下のようにして導出することができる。
すなわち、まず、第1の面S1に光束幅Wで入射したコヒーレント光Lcは、反射型サブ波長回折格子3に入射するが、このとき、コヒーレント光Lcの反射型サブ波長回折格子3(換言すれば、第3の面S3)上における奥行き方向に直交する方向の幅〔mm〕をAとする。次に、図4中に、3点P、P、Pを頂点とした直角三角形を定義すると、この直角三角形は、W、A、θを含んだ次式を満足する。
W/A=sin(90°−θ) (18)
この(18)式を、三角関数の加法定理を用いて式変形すると、次式が得られる。
A=W/cosθ (19)
この(19)式は、0次光についても成立する。すなわち、0次光が反射型サブ波長回折格子3に入射する場合にも、0次光の反射型サブ波長回折格子3上における奥行き方向に直交する方向の幅は、A=W/cosθとなる。
一方、第k回目の回折から第k+1回目の回折までの空間的な周期〔mm〕は、第k回目の0次光L(0)が、これの発生位置(第k回目の回折の発生位置)から反射型サブ波長回折格子3への入射位置(第k+1回目の回折の発生位置)に到達するまでに進行する幅方向の距離(水平距離)である。この水平距離をBとすると、図4より、Bは次式を満足する。
B=2t・tanθ (20)
ここで、反射型サブ波長回折格子3上におけるAで捕捉される領域は、この領域への入射光束が回折されることによって−1次光が幅方向において満遍無く(隙間少なく)発生する領域と考えることができる。そして、このAで捕捉される複数の領域を、幅方向において隙間無く連なるように、若しくは、幅方向においてある程度重なるように配置することができれば、反射型サブ波長回折格子3上において、−1次光を幅方向において満遍無く発生させることができる。このことは、Aで捕捉される領域内の各回折位置からの−1次光が互いに平行であることを考慮すれば、反射的に、第2の面S2においても、−1次光を幅方向において満遍なく出射させることができることを意味する。
そこで、反射型サブ波長回折格子3上をAで捕捉される領域で敷き詰めたいわけであるが、そのためには、幅方向において互いに隣位するAとAとの間に、幅方向の間隔が存在しないことが必要となる。この条件は、次式で表すことができる。
A≧B (21)
そして、(21)式に(19)式および(20)式を代入すると、次式を得ることができる。
t≦W/(2・sinθ (4)
このようにして、(4)式を導出することができる。
このような本実施形態の導光板1によれば、(4)式を満足することにより、簡易な構成によって、サブ波長反射回折格子3への光Lc、L(0)の入射およびこれにともなう−1次光L(−1)の発生を、幅方向において満遍無く行うことができ、これにともなって、第2の面S2における−1次光の出射を、幅方向において満遍無く行うことができるので、面光源の輝度の均一性を更に向上させることができる。
(導光板の第4実施形態)
次に、導光板の第4実施形態について、第1実施形態との差異を中心に図5および図6を参照して説明する。なお、便宜上、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
図5に示すように、本実施形態においては、導光板本体2における第2の面S2に対向する位置に、空気層を隔てて透光性材料からなるプリズムシート5が配置されており、このプリズムシート5には、第2の面S2から出射された各回の回折ごとの−1次光L(−1)が入射するようになっている。
そして、プリズムシート5は、入射した各−1次光L(−1)を屈折させることによって、これらの進行方向を第2の面S2に直交する方向側に補正するようになっている。この補正には、屈折に加えて全反射を利用してもよい。
このような構成によれば、プリズムシート5による−1次光の進行方向の補正によって、液晶表示装置のバックライト等の用途に適した導光板本体2の直上に出射される面光源を実現することができる。
(具体例)
本実施形態の具体例としては、図6に示すような構成を挙げることができる。この図6に示すプリズムシート5は、奥行き方向に直交する任意の断面において、第2の面側に向かって尖鋭な二等辺三角形状を呈する複数のプリズム51を有している。各プリズム51は、これらの頂角を断面上において二等分する二等分線biが、第2の面S2に直交するように配置されている。
その上で、更に、本具体例における構成は、次の(5)の条件を満足するようになっている。
cos{σ/2+sin−1(n・sinθ−λ/Λ)}
=N・cos(3σ/2) (5)
但し、(5)式におけるσは、プリズムシート5のプリズム51の頂角〔°〕である。また、(5)式におけるNは、λに対応するプリズム51の屈折率である。
この(5)式は、以下のようにして導出することができる。
すなわち、まず、図6に示すように、第2の面S2から出射角θemで出射される任意の1本の−1次光L(−1)と、この−1次光L(−1)が入射する1つのプリズム51に着目する。
このとき、−1次光L(−1)がプリズム51の傾斜面に入射する際の入射角をθ、屈折角をθ’とすると、スネルの法則によって次式が成立する。
sinθ=N・sinθ’ (22)
ここで、図6から分かるように、(22)式におけるθは、θemとσとの間で、次式の関係を満足する。
θ=90°−(θem+σ/2) (23)
次に、図6に示すように、プリズム51への入射後の−1次光L(−1)が、プリズム51の入射側と反対側の傾斜面に内部入射する際の入射角(ただし、臨界角よりも大きな入射角)をθ”とすると、図6中の3点Pを頂点とした三角形の内角の和{(90°−θ”)+σ+(90°+θ’)}が180°であることにより、θ”、θ’、σの間で、次式が成立する。
θ”=θ’+σ (24)
次に、図6に示すように、プリズム51に入射角θ”で内部入射した−1次光L(−1)は、反射角θ”で全反射されることになるが、この全反射後における−1次光L(−1)とプリズム51の全反射側の傾斜面とのなす角度をθ’’’とおく。
ここで、プリズムシート5における−1次光の進行方向の補正を最も良好に行うためには、プリズム51での全反射後における−1次光L(−1)の進行方向を、第2の面S2の面法線方向に平行にすることが必要となる。このことは、次式と等価である。
θ’’’=σ/2 (25)
次に、図6から分かるように、θ’’’は、θ”との間で次式を満足する。
θ’’’=90°−θ” (26)
次に、この(26)式を(25)式に代入してθ’’’を消去することによって、次式を得ることができる。
θ”=90°−σ/2 (27)
次に、この(27)式を(24)式に代入してθ”を消去することによって、次式を得ることができる。
θ’=90°−3σ/2 (28)
次に、この(28)式を(22)式に代入してθ’を消去することによって、次式を得ることができる。
sinθ=N・sin{90°−(3σ/2)} (29)
次に、この(29)式に(23)式を代入してθを消去することによって、次式を得ることができる。
sin{90°−(θem+σ/2)}
=N・sin{90°−(3σ/2)} (30)
次に、この(30)式の両辺に、それぞれ三角関数の加法定理を適用することによって、次式を得ることができる。
cos(θem+σ/2)=N・cos(3σ/2) (31)
次に、この(31)式におけるθemは、第2の面S2に対する−1次光L(−1)の入射角θとの間で、スネルの法則による次式の関係を満たす。
sinθem=n・sinθ (32)
次に、この(32)式および前述した(7)式(−1次光の回折格子方程式)により、次式を得ることができる。
θem=sin−1(n・sinθ−λ/Λ) (33)
最後に、この(33)式を(31)式に代入してθemを消去することによって、次式を得ることができる。
cos{σ/2+sin−1(n・sinθ−λ/Λ)}
=N・cos(3σ/2) (5)
このようにして、(5)式を導出することができる。
このような構成によれば、(5)の条件式を満足することにより、プリズムシート5における−1次光の進行方向の最適な補正を簡便に行うことができる。
(光学系の実施形態)
次に、本発明に係る光学系の実施形態について、図7を参照して説明する。
図7に示すように、本実施形態における光学系7は、図5に示した導光板1における第1の面S1に対向する位置に、第1の面S1に向けてコヒーレント光Lcを垂直に出射する発光装置8を配置することによって構成されている。なお、図7(b)の斜視図には、便宜上、プリズムシート5が含まれていないが、図7(a)の光学系7と同一の構成を示したものである。
ただし、導光板1は、(1)〜(3)の各条件式を満足するものであれば、図5に示した構成には限定されない。
また、発光装置8は、コヒーレント光Lcを出射する光源81と、この光源81から出射されたコヒーレント光Lcを奥行き方向に長尺な矩形状のコヒーレント光Lcに整形する光学素子82とを備えたものであってもよい。このような光学素子82としては、コヒーレント光Lcとしてのレーザ光の光束形を整形するレーザーラインジェネレータ(例えば、Lasiris SNF Laser/コヒーレント社)等を用いてもよい。
このような構成によれば、面光源の輝度の均一性を確実に向上させることができる。
(実施例1)
本実施例においては、導光板本体2を、シクロオレフィンポリマー樹脂としてのZeonex-480R(日本ゼオン社製)によって形成した。この材質の屈折率nは、λ650nmに対して1.5224である。また、反射膜32は、膜厚200nmのアルミニウムを微細周期構造31の表面にコーティングすることによって形成した。さらに、反射型サブ波長回折格子3の周期Λを400nmとした。
そして、このような導光板1の第1の面S1に、波長λ=650nmのコヒーレント光Lcを、第1の面S1に対して垂直かつ反射型サブ波長回折格子3に対して50°の入射角θを以て入射させた。このような構成は、(1)〜(3)式を満足するものである。
この場合に、反射型サブ波長回折格子3における回折によって得られる光は、RCWA法によって計算すると、図8の回折効率のグラフに示すように、0次光および−1次光のみとなった。なお、図8における横軸は、凸部22の高さ〔nm〕であり、縦軸は、回折効率である。
このとき、−1次光の回折角度は、(7)式より、−17.5°となった。この回折角度は、臨界角よりも小さいため、−1次光は、第2の面S2から適正に出射されて面光源に利用することができる。
一方、0次光は、反射型サブ波長回折格子3(反射膜32)において、反射型サブ波長回折格子3に対するコヒーレント光Lcの入射角50°に相当する反射角−50°で反射された後に、第2の面S2に入射角50°で内部入射する。この入射角50°は、臨界角よりも大きいので、0次光は、第2の面S2において全反射されて、次回の−1次光の発生のために、反射型サブ波長回折格子3における次回の回折位置まで伝播することができる。
(実施例2)
次に、実施例2においては、実施例1に対して、反射型サブ波長回折格子3の周期の条件のみを変更して、Λ=450nmとした。
本実施例においても、(1)〜(3)式を満足しており、反射型サブ波長回折格子3における回折によって得られる光は、図9の回折効率のグラフに示すように、0次光および−1次光のみとなった。
このとき、−1次光の回折角度は、(7)式により、−10.5°となり、−1次光が第2の面S2に臨界角よりも小さい角度で入射することができる角度となった。一方、0次光の反射角は、実施例1と同様に−50°となった。
本実施例においても、第1実施例と同様に、−1次光を第2の面S2において適正に出射させることができるとともに、0次光を次回の−1次光の発生のために導光板本体2内を適正に伝播させることができる。
(実施例3)
次に、実施例3においては、実施例1に対して、反射膜32の材料のみを変更し、反射膜32を、銀によって構成した。
本実施例においても、(1)〜(3)式を満足しており、反射型サブ波長回折格子3における回折によって得られる光は、図10の回折効率のグラフに示すように、0次光および−1次光のみとなった。
このとき、−1次光の回折角度および0次光の反射角は、実施例1と同じとなった。
図10に示すように、本実施例の構成は、−1次光の回折効率を最大で87.8%程度にすることができ、実施例1に比べて輝度の向上に適していることが分かる。これは、反射膜32として、アルミニウムよりも反射率に優れた銀を採用したことによるものである。
(実施例4)
次に、実施例4においては、(1)〜(3)式を満足した上で、更に、−1次光の強度の均一化のために、反射型サブ波長回折格子3の各凸部22に最適な高さを設定した。
ただし、本実施例においては、前提として、導光板本体2のサイズを、幅50mm×奥行き50mm、厚み1mmとした。また、コリメート光Lcを、波長λ=650nm、反射型サブ波長回折格子3への入射角θ=50°とした。
そして、このような前提で、まず、ステップ1において、反射型サブ波長回折格子3における回折現象の総発生回数を計算すると、50/2tan50°≒21となった。
次いで、ステップ2において、コリメート光Lcの強度としての入射光量(相対値)を100と仮定した上で、ステップ1における計算結果に基づいて−1次光の一定の光量(相対値)を計算すると、100/21≒4.76となった。
次いで、ステップ3において、ステップ2の計算結果に示される強度(ここでは光量の相対値)の−1次光を発生させ得る各回の回折ごとの−1次光の回折効率を、第1の面S1に入射する光の光量100と、一定の光量4.76と、前回までの回折による光量の総減少量とに基づいて計算すると、以下の表1の中欄に示すようになった。
Figure 0005846631
次いで、ステップ4において、ステップ3において算出された各回の回折ごとの−1次光の回折効率にそれぞれ対応する凸部22の高さを、凸部22の高さを変数とした−1次光の回折効率のシミュレーション結果に基づいて逆算した。この逆算には、回折効率のグラフとして、図10を用いた。このときの高さの計算結果は、表1の右欄に示すようになった。
本実施例によれば、各回の回折ごとの−1次光の強度(光量の相対値)を4.76に統一することができるため、面光源の輝度の均一性を確実に向上させることができる。また、第21回目の回折による最後の新たな0次光の強度を殆ど0にすることができるので、光の利用効率の向上を実現することができる。
(比較例1)
一方、比較例1においては、実施例1に対して、反射型サブ波長回折格子3の周期の条件のみを変更して、Λ=600nmとした。
本比較例においては、Λの値が大き過ぎることによって(2)式を逸脱しているため、反射型サブ波長回折格子3における回折によって得られる光は、0次光および−1次光に加えて、−2次光を含むものとなった。例えば、凸部22の高さが200nmの場合においては、−1次光の回折効率は28.9%となり、−2次光の回折効率は22.4%となった。
このような本比較例の構成では、−2次光が迷光になり、良好な光学特性を発揮することができない。
(比較例2)
次に、比較例2においては、実施例2に対して、反射型サブ波長回折格子3に対するコリメート光Lcの入射角θの条件のみを変更して、入射角を80°とした。
本比較例においては、θの値が大き過ぎることによって(2)式を逸脱しているため、反射型サブ波長回折格子3における回折によって得られる光は、図11の回折効率のグラフに示すように、0次光、−1次光および−2次光となった。
本比較例の構成においても、迷光(−2次光)の存在によって、光学特性が悪化することになる。
(比較例3)
次に、比較例3においては、実施例1に対して、反射型サブ波長回折格子3の周期の条件のみを変更して、Λ=290nmとした。
本比較例においては、Λの値が大き過ぎることによって(3)式を逸脱しているため、−1次光の回折角度が(7)式により44.9°となり、臨界角よりも大きな角度で第2の面S2に入射するものとなった。
本比較例の構成においては、−1次光が第2の面S2において出射されずに全反射されてしまうため、面光源を実現することができない。
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
1 導光板
2 導光板本体
3 反射型サブ波長回折格子
22 凸部
31 微細周期構造体
32 反射膜

Claims (11)

  1. 所定の幅、奥行きおよび厚みを有する板状の透光性の導光板本体を備え、
    前記導光板本体は、
    コヒーレントな光が入射する第1の面と、
    この第1の面に幅方向において隣位するように配置され、前記第1の面に入射した前記光に基づく出射光の取り出しが行われる厚み方向に直交する第2の面と、
    この第2の面に前記厚み方向において対向する位置に、前記第2の面に対して平行に配置された第3の面と
    を有する導光板であって、
    前記第3の面上に、奥行き方向に長尺な前記導光板本体と一体の複数の凸部が、前記幅方向に沿って前記光の波長よりも小さい周期で整列配置されてなる微細周期構造体と、これを被覆する反射膜とによって構成された反射型サブ波長回折格子を有し、
    次の(1)〜(3)に示す各条件式、
    sin−1(1/n)<θ (1)
    λ/{n(sinθ+1)}≦Λ<min〔2λ/{n(sinθ+1)}、λ/{n(−sinθ+1)}〕 (2)
    sin−1{sinθ−λ/(n・Λ)}<sin−1(1/n) (3)
    但し、
    λ:光の波長
    n:導光板本体の屈折率
    Λ:反射型サブ波長回折格子の周期
    θ:反射型サブ波長回折格子に対する光の入射角
    を満足することで、前記反射型サブ波長回折格子への前記光の入射により、0次光および−1次光のみが発生し、発生した前記0次光が、前記第2の面に前記臨界角よりも大きい入射角で入射して全反射された後に前記反射型サブ波長回折格子に入射し、一方、発生した前記−1次光が、前記第2の面に前記臨界角よりも小さい入射角で入射して前記第2の面から出射され、これ以後、前記反射型サブ波長回折格子への前記0次光の入射による新たな0次光および−1次光のみの発生と、発生した前記新たな0次光の前記第2の面による全反射後における前記反射型サブ波長回折格子への入射と、発生した前記新たな−1次光の前記第2の面からの出射とが複数回繰り返されること
    を特徴とする導光板。
  2. 前記反射型サブ波長回折格子は、前記第2の面から出射される前記−1次光の強度が出射位置によらず均一になるように、前記凸部の高さおよびこれに応じた前記−1次光の回折効率が、前記幅方向における前記0次光の伝播方向の下流側に向かうにしたがって増加するように形成されていること
    を特徴とする請求項1に記載の導光板。
  3. 前記凸部の高さは、前記反射型サブ波長回折格子への前記0次光の最後の入射によって発生する最後の前記新たな0次光の強度が所定値以下となるように形成されていること
    を特徴とする請求項2に記載の導光板。
  4. 前記凸部の高さは、
    θと、前記導光板本体の厚みと、前記反射型サブ波長回折格子の前記幅方向の寸法とに基づいて、前記反射型サブ波長回折格子における前記光に基づく回折の発生回数を算出し、
    この算出された前記発生回数と前記光の強度とに基づいて、前記反射型サブ波長回折格子における1回の回折あたりに得るべき−1次光の一定の強度を算出し、
    この算出された一定の強度が得られるような各回の回折ごとの−1次光の回折効率を、前記光の強度と、前記一定の強度と、前回までの回折による光強度の総減少量とに基づいて算出し、
    これらの算出された各回の回折ごとの−1次光の回折効率にそれぞれ対応する凸部の高さを、凸部の高さを変数とした−1次光の回折効率のシミュレーション結果に基づいて逆算すること
    によって求められたものであること
    を特徴とする請求項2または3に記載の導光板。
  5. 前記第1の面は、前記光が垂直入射するように前記第3の面に対して傾斜角θを有する傾斜面に形成され、
    更に、次の(4)に示す条件式、
    t≦W/(2・sinθ) (4)
    t:導光板本体の厚み
    W:第1の面に垂直入射する光の奥行き方向に直交する方向の光束幅
    を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導光板。
  6. 前記第1の面は、前記第2の面の前記幅方向における前記0次光の伝播方向の上流側の端部に連設されたプリズムの傾斜面からなること
    を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導光板。
  7. 前記第1の面は、前記奥行き方向に沿って長尺な矩形状に形成され、
    前記光は、前記第1の面上において前記第1の面に沿って長尺な矩形状を呈すること
    を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導光板。
  8. 前記第2の面に対向して配置され、前記第2の面から出射された前記−1次光を屈折させることによって、前記−1次光の進行方向を前記第2の面に直交する方向側に補正するプリズムシートを備えたこと
    を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導光板。
  9. 前記プリズムシートは、前記奥行き方向に直交する任意の断面において前記第2の面側に向かって尖鋭な二等辺三角形状を呈する複数のプリズムを有し、各プリズムは、これらの頂角を前記断面上において二等分する二等分線が、前記第2の面に直交するように配置され、
    更に、次の(5)に示す条件式、
    cos{σ/2+sin−1(n・sinθ−λ/Λ)}
    =N・cos(3σ/2) (5)
    但し、
    σ:プリズムシートのプリズムの頂角
    N:プリズムシートのプリズムの屈折率
    を満足することを特徴とする請求項8に記載の導光板。
  10. 請求項8または9に記載の導光板と、
    この導光板の前記第1の面に向けて前記コヒーレントな光を出射する発光装置と
    を備えたことを特徴とする光学系。
  11. 前記第1の面は、請求項7に記載の長尺な矩形状に形成され、
    前記発光装置は、
    前記コヒーレントな光を出射する光源と、
    この光源から出射された前記光を請求項7に記載の長尺な矩形状を呈する光に整形する光学素子と
    を備えたことを特徴とする請求項10に記載の光学系。
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