JP5846530B2 - Co−Cr−Mo基合金およびCo−Cr−Mo基合金の製造方法 - Google Patents

Co−Cr−Mo基合金およびCo−Cr−Mo基合金の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Co−Cr−Mo基合金およびCo−Cr−Mo基合金の製造方法に関する。
近年、高齢化の進行を背景に、身体の機能を代替する生体材料が大きな関心を集めており、精力的な研究開発がなされている。生体材料は、主に金属材料、高分子材料およびセラミックスに分けられるが、金属材料は、高分子やセラミックスに比べて強度・靭性のバランスに優れるため、体を支える骨格系の代替材料として使用されている。現在実用化されている主な金属系生体材料としては、純Ti・Ti合金、オーステナイト系ステンレス鋼およびCo−Cr−Mo合金が挙げられるが、中でもCo−Cr−Mo合金は、他の金属材料と比較して耐食性および耐摩耗性に優れるため、人工関節用材料として重要な役割を担っている。最近では、高弾性特性やX線透過性が低いこと、磁化率が低いためMRI(核磁気共鳴画像法)による診断画像にアーチファクトを生じにくいことから、ステント用材料としても注目されている。
これまで人工関節に使用されてきた生体用Co−Cr−Mo合金の多くは鋳造合金であり、ASTM F75として規格化されている。Co−Cr−Mo合金に限らず一般的に鋳造材料は、組織が粗大で鋳造欠陥を含む場合が多いため、強度・延性に乏しい。したがって、近年の人工股関節をはじめとした生体用デバイスの高耐久化の要望に応えるためには、塑性加工や熱処理を用いた組織制御により、Co−Cr−Mo合金の機械的特性の向上を図る必要がある。
ところが、ASTM規格の代表組成であるCo−29Cr−6Mo(質量%)合金は、溶体化熱処理後の急冷中に容易にマルテンサイト変態を起こすため、室温では面心立方構造(fcc)の準安定γ相と六方最密充填(hcp)構造のマルテンサイトε相との二相組織となり、室温における延性、塑性加工性が十分に得られない。Co−Cr−Mo合金が難加工性合金として分類されている理由は、このような組織形態に起因した塑性加工性の低さに拠っており、機械的特性の改善を目的とした加工熱処理を行う場合や、薄板、細径パイプ、あるいは線材への加工が必要なステント等へ応用する場合に問題となってきた。
この問題を解決するため、Co−Cr−Mo基合金を塑性加工に供する場合には、一般的に、Niを10〜40%程度添加してγ相を安定化させている(例えば、特許文献1参照)。実際に、ステント用Co−Cr基合金としては、Co−Ni−Cr−Mo(ASTM F562)合金やCo−Cr−Ni−W(ASTM F90)合金が使用されている。
特開2011−208210号公報
しかしながら、Niは発癌性や金属アレルギーの原因となることが指摘されており、特許文献1に記載のようなNiを含む従来の合金では、生体材料として使用したときに人体に悪影響を及ぼすおそれがあるという課題があった。特に、ステントは、一度体内に留置されると取り出すことが不可能であり、長期間体内に埋入されるため、生体への安全性が懸念されるNi添加は望ましくない。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、生体材料としての安全性が高く、高強度、高延性、高疲労強度を有するCo−Cr−Mo基合金およびCo−Cr−Mo基合金の製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、第1の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が〜100μmであり、転位密度および結晶子サイズがそれぞれ1×10154×10 15 −2 、10〜25nmであり、Σ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が10〜60%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを特徴とする。
また、第2の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が1〜100μmであり、転位密度および結晶子サイズがそれぞれ3.5×10 15 〜5×10 15 −2 、5〜15nmであり、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が30〜60%、かつΣ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜40%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを特徴とする。
また、第3の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、等軸状の結晶粒組織を有する熱間鍛造材から成り、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が0.1〜5μmであり、転位密度および結晶子サイズがそれぞれ1×10 15 〜4×10 15 −2 、5〜20nmであり、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が20%以下、かつΣ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜40%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを特徴とする。
本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、さらに、C:0.01〜0.3質量%を含んでいることが好ましい。本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、Cr:29〜35質量%であることが好ましい。
第1の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法は、Cr:25〜35質量%と、Mo:3〜8質量%と、Si:1質量%以下と、Mn:1質量%以下と、N:0.08〜0.8質量%とを含み、残部がCoおよび不可避不純物から成る原料に対して、圧下率の合計が60%以上になるよう、1000℃以上の熱間加工をγ単相領域で、一度の圧下率が20%未満、1000℃以上で180秒間の加熱を繰り返すことにより行うことを特徴とする。第1の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法によれば、第1の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金を製造することができる。また、さらに結晶粒内の転位密度を高めた、第2の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金を製造することができる。
また、第2の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法は、Cr:25〜35質量%と、Mo:3〜8質量%と、Si:1質量%以下と、Mn:1質量%以下と、C:0.01〜0.3質量%と、N:0.08〜0.8質量%とを含み、残部がCoおよび不可避不純物から成る原料に対して、圧下率の合計が60%以上になるよう、一度の圧下率が20%以上で1000℃以上の熱間加工をγ単相領域で行うことを特徴とする。本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法で、前記原料は、さらにC:0.01〜0.3質量%を含んでいることが好ましい。第2の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法によれば、特に、熱間加工時に起こる動的再結晶現象を利用することにより、第3の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金を製造することができる。
本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法で、前記熱間加工は、圧下率が60〜92.8%であり、圧延加工、鍛造加工、スウェージ加工および溝ロール圧延加工のうちの少なくとも一つから成ることが好ましい。
本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法により、好適に製造される。本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、人体に悪影響を及ぼすとされるNiが、不純物として不可避的に含まれるレベルまで低減されているため、生体材料としての安全性が高い。
Co−Cr−Mo系合金は、高温領域(1000℃以上)では面心立方構造のγ相が安定に存在するが、冷却中に、非熱的マルテンサイト変態により六方最密充填構造のε相に変態する。構成相にマルテンサイト変態により形成されたε相が存在すると、γ/ε界面に応力集中が起き易いため破壊の起点となり、冷間加工性を含めた室温延性が低下する原因となる。本発明に係るCo−Cr−Mo基合金およびCo−Cr−Mo基合金の製造方法では、Nを0.08%以上含ませることにより、冷却中に生じる非熱的マルテンサイト変態を抑制することができ、室温でも準安定γ相の単相組織を得ることができる。γ相単相組織は、γ相とε相との二相組織を有する場合と比べて高い延性を示し、疲労強度を高めることができる。このように、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、面心立方構造のγ相が90%以上であることが好ましく、γ相が95%以上であることがより好ましい。なお、Nを0.8%以上添加すると、Nが多量の窒化物やブローホールとして存在するため、機械的特性に悪影響を及ぼす。
本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法は、60〜90%の比較的小さい圧下率で、製造されるCo−Cr−Mo基合金に、1×1015〜6×1015−2という巨大な転位密度を導入することができる。これは、Co−Cr−Mo系合金の積層欠陥エネルギーが、加工温度領域(1000〜1200℃付近)でもおよそ30mJm−2と著しく低いためである。一般に積層欠陥エネルギーは温度の上昇とともに増加するが、Co−Cr−Mo系合金の積層欠陥エネルギーは、従来積層欠陥エネルギーが低いとされてきた金属・合金(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼)の室温における値と同程度である。その結果、高温変形により導入される転位はほとんどが積層欠陥を伴うShocley部分転位に拡張しており、交差すべりが起こりにくい。また、粒界から生成する2次すべり系の転位が低ひずみ加工領域から形成されるため、粒内では一次すべり系転位と二次すべり系転位との反応による不動転位が形成されやすく、転位の堆積が粒界のみならず粒内においても容易に生じることも、転位を効果的に蓄積させることが可能な理由の一つである。したがって、熱間加工後の組織は、高密度の(部分)転位、積層欠陥、変形双晶を含んでいる。
本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が0.1〜100μmであり、転位密度が1×1015〜5×1015−2であり、Σ3粒界の理想的な方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜60%であることが好ましい。
第2の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法では、熱間加工において、熱間加工量の増加とともに結晶粒内に幾何学的に必要な転位(geometrically necessary dislocation、 GN転位)からなる転位境界(GN boundary、 GNB)を形成することで、元の結晶粒を分断する。これは、Co−Cr−Mo系合金の積層欠陥エネルギーは加工温度領域でも著しく低いため、転位が積層欠陥を伴うShockley部分転位に大きく拡張していることに起因しており、このGNBが変形過程で熱的な活性により高角度粒界に遷移するため、5μm以下のサイズの結晶粒組織となる。このように、第2の本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法では、高密度転位の導入の他に、結晶粒微細化を合金の強化機構として利用することができる。
この熱間加工により製造されるCo−Cr−Mo基合金の等軸結晶粒内部に、高密度の積層欠陥、変形双晶、非熱的マルテンサイトε相(Nの含有量が0.08%以下の場合)を含んだ、超高密度転位組織を導入することができる。また、Co−Cr−Mo基合金は、熱間加工により棒材または線材とした場合には、γ相が長さ方向が<111>と<001>とを含む繊維集合組織を有し、圧延板とした場合には、γ相がBrass方位{110}<112>とGoss方位{110}<001>とが混在した方位の集合組織を有することを特徴とする。これらは、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の積層欠陥エネルギーが、熱間加工温度領域でも著しく低いことに起因する。
また、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法は、前記熱間加工を行った後、900〜1200℃で熱処理を行ってもよい。この場合、熱処理は、著しい結晶粒成長が起こらない範囲で、短時間行うことが好ましい。これにより、等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が0.1〜10μmであり、転位密度が2×1015−2以下であり、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が20%以下、かつΣ3粒界の理想的な方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜30%であるCo−Cr−Mo基合金を製造することができる。熱処理により、0.2%耐力が低下するが、延性を著しく改善することができる。
このように、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法は、1000℃以上の高温で鍛造・圧延等の熱間加工を行うことにより、1×1015−2以上の高密度転位を導入することができ、優れた室温強度を有する本発明に係るCo−Cr−Mo基合金を製造することができる。また、等軸結晶粒組織とし、γ相の割合を90%以上とすることにより、高強度化に伴う延性低下を抑制することが可能である。さらに、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金の製造方法は、合金固有の変形特性と変形組織形成の特徴を有効に利用して組織制御を行うことができる。以上の組織制御を行うことで、強化機構として粒界強化および転位強化を利用することにより、高強度、高疲労強度を有する本発明に係るCo−Cr−Mo基合金を得ることができる。また、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金は、その製造方法により多量の転位を導入し、高強度化しても十分な延性を確保することができるため、強度と延性とを高度に両立することが可能である。
なお、転位密度および結晶子サイズの代表的な測定方法としては、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて直接的に転位やドメイン構造を観察することで算出する方法と、X線回折(XRD)により得られるラインプロファイルを解析する方法に大別される。しかしながら、TEMを利用した場合、転位観察に使用する薄膜試料を作製する際の影響や定量性に課題がある。このため、組織の代表値を得るためには、統計精度を得るためにサンプリング数を増やす必要があり、試料調整を含めて煩雑な方法となる。そこで、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金では、XRDラインプロファイル解析により得られる転位密度・結晶子サイズを用いて組織状態を規定している。XRDラインプロファイル解析は、実験室系XRD装置でも解析可能なデータを取得することができる。
XRDラインプロファイル解析としては、Williamson−Hall法、Warren−Averbach法、Garrod法、modified Williamson−Hall法、modified Warren−Averbach法、Convolutional multiple whole−profile(CMWP) fitting法等、種々の方法が提案されているが、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金では、特定の解析方法に限らず、いかなる解析方法であってもよい。
また、本発明に係るCo−Cr−Mo基合金で、小角粒界およびΣ3粒界の出現頻度は、電子線後方散乱回折(EBSD)法を用いて求めることができる。集合組織は、EBSD法またはXRD測定により求めることができる。
本発明によれば、生体材料としての安全性が高く、高強度、高延性、高疲労強度を有するCo−Cr−Mo基合金およびCo−Cr−Mo基合金の製造方法を提供することができる。
本発明の第1の実施例のCo−Cr−Mo基合金の(a)熱間圧延前、(b)60%熱間圧延後、(c)92.8%熱間圧延後の組織を示す光学顕微鏡写真である。 図1に示すCo−Cr−Mo基合金の(a)熱間圧延前、(b)60%熱間圧延後、(c)92.8%熱間圧延後のX線回折パターンである。 図1に示すCo−Cr−Mo基合金の、引張試験により得られた公称応力−公称ひずみ曲線のグラフである。 図1に示すCo−Cr−Mo基合金の、EBSD測定により得られた(a)熱間圧延前、(b)60%熱間圧延後、(c)92.8%熱間圧延後のγ相の(111)、(110)および(100)極点図である。 図1に示すCo−Cr−Mo基合金の、EBSD測定により得られた結晶方位差の分布を示すグラフである。 図1に示すCo−Cr−Mo基合金の、EBSD測定により得られたΣ3双晶界面の理想方位差からのずれを示すグラフ、および、(挿入図)圧下率に対するΣ3双晶界面の割合の変化を示すグラフである。 図1に示すCo−Cr−Mo基合金の(a)熱間圧延前、(b)92.8%熱間圧延後のγ相の331、420および422回折のXRDラインプロファイルの解析結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施例のCo−Cr−Mo基合金の、熱間鍛造前の(a)CCM合金、(b)CCMN合金の組織を示す光学顕微鏡写真である。 図8に示すCo−Cr−Mo基合金の(a)CCM合金、(b)CCMN合金の熱間鍛造前後のX線回折パターンである。 図8に示すCo−Cr−Mo基合金の、EBSD測定により得られた熱間鍛造後のImage quality(IQ) mapsである。 図8に示すCo−Cr−Mo基合金の、EBSD測定により得られた熱間鍛造前後の結晶方位差の分布を示すグラフである。 図8に示すCo−Cr−Mo基合金の、圧下率83%の熱間鍛造を施したCCMN合金の、EBSDデータ解析により得られた(111)、(110)および(100)極点図である。 図8に示すCo−Cr−Mo基合金の、熱間鍛造前後の(a)CCM合金、(b)CCMN合金の引張試験により得られた公称応力−公称ひずみ曲線のグラフである。 本発明の第3の実施例のCo−Cr−Mo基合金の、EBSD測定により得られた熱間鍛造後のImage quality(IQ) mapsである。 図14に示すCo−Cr−Mo基合金の、引張試験により得られた公称応力−公称ひずみ曲線のグラフである。
高周波誘導溶解炉を用いて、Co−29.05Cr−6.01Mo−0.58Mn−0.39Si−0.14N(質量%)合金の鋳塊5kgを溶製した。溶解は、Ar雰囲気中で行い、N添加はCrNの粉末原料を用いて行った。作製された鋳塊は、1000℃以上に加熱して、一度の圧下率が20%未満として熱間鍛造を行った。以下、この熱間鍛造材の組織を、「初期組織」と呼称する。この熱間鍛造材(初期組織)からワイヤー放電加工機を用いて、板厚12.5mm、幅80mm、長さ60mmのサイズに切り出し、熱間圧延用試料とした。熱間圧延は、加熱温度を1200℃とし、1パスあたり0.2〜0.7mmの圧下率(圧下率20%未満)で、板厚5.0mm(圧延率60.0%)および0.9mm(圧延率92.8%)となるまで行った。試料の熱間圧延中の温度低下を考慮し、1パスごとに1200℃で180秒間の加熱を繰り返し行った。
得られた熱間圧延板に対し、組織観察、EBSD測定、X線回折、引張試験を行った。組織観察は、試験片の圧延面にて、光学顕微鏡および電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM:Philips社製「XL30S−FEG」)を用いた後方散乱電子回折(EBSD)法で行った。組織観察用サンプルは、SiC研磨紙、アルミナおよびコロイダルシリカを用いて鏡面に仕上げた後、硫酸メチル混合液(硫酸:メタノール=1:9)を用いて電解研磨を行った。EBSD測定は、加速電圧15kVで行った。平均結晶粒径は、結晶粒内に含まれる焼鈍双晶およびそれらに起因した粒界を除いて、切片法により算出した。また、X線回折法(XRD:Philips社製「X’Pert MPD」)により構成相の同定を行った。
また、引張試験により、室温における熱間圧延板の機械的特性の評価を行った。引張試験片は、評点間長さ11.5mm、幅1.6mm、厚さ1mmとし、インストロン型引張試験機を用いて、初期ひずみ速度1.45×10−4−1で行った。引張荷重軸は、圧延方向と平行(以下、RD)および圧延方向と垂直(以下、TD)となるように、試験片から採取した。
[実験結果]
図1に、熱間圧延前後の光学顕微鏡組織をそれぞれ示す。図1(a)に示すように、熱間鍛造材(初期組織)では、結晶粒内に多くの焼鈍双晶を含んでいることが確認された。また、図1(b)および(c)に示すように、同様のコントラストが、熱間圧延後の組織においても確認された。熱間圧延前後の試験片の平均結晶粒径を、表1に示す。表1に示すように、熱間鍛造材(初期組織)における平均結晶粒径は80.6μmであるが、92.8%熱間圧延後には50.7μmに結晶粒が微細化している。熱間圧延前後の組織はいずれも、等軸組織であった。
図2に、熱間鍛造材(初期組織)および熱間圧延材のXRD測定結果を示す。図2(a)に示すように、熱間鍛造材(初期組織)の回折パターンではわずかにε相が認められるものの、窒素添加により室温においてもγ相が安定化されていることが確認された。図2(b)および(c)に示すように、熱間圧延による構成相の変化はほとんどなく、60.0%および92.8%熱間圧延後の組織もほぼγ単相(γ相が95%以上)であることが確認された。また、本組成では、σ相やCrN等の析出が予想されるが、これらに由来する回折ピークは確認されていない。したがって、熱間圧延はγ単相領域で行われ、空冷中にはσ相の析出が起こらなかったと判断される。
図3に、熱間鍛造材(初期組織)および熱間圧延材の、引張試験により得られた公称応力−公称ひずみ曲線を示す。また、各試験片の引張特性を、表2に示す。図3および表2に示すように、いずれの試験片においても生体材料として十分な引張特性が得られているが、熱間圧延率の増加とともに強度は著しく増加し、92.8%の熱間圧延後には、0.2%耐力が圧延前(509MPa)の2倍以上(1089MPa)に高強度化された。一方、伸びは熱間圧延率の増加とともにやや低下するものの、いずれも20%程度であり、熱間圧延を行うことで優れた強度−延性バランスが得られることが確認された。また、RD、TDともに引張特性に大きな違いは確認されていない。
図4に、EBSD測定により決定した(a)熱間鍛造材(初期組織)、(b)60.0%熱間圧延後、および(c)92.8%熱間圧延後の、各試験片のγ相の(111)、(110)および(100)極点図をそれぞれ示す。EBSD測定結果は局所的な情報であるが、XRD測定による不完全極点図においても同様の集合組織を示すことを確認している。図4(a)に示すように、熱間圧延に供した熱間鍛造材(初期組織)は比較的ランダムな結晶方位分布を有するのに対し、図4(b)に示すように、60.0%熱間圧延材では、Brass type {110}<112>とGoss type {110}<001>の混在した集合組織が確認された。このような集合組織は、積層欠陥エネルギーの低い代表的な合金である304系オーステナイト系ステンレス鋼の冷間圧延集合組織と同一であり、1200℃で熱間圧延を行っているにも関わらず、このような集合組織が形成される点は極めて特徴的であると言える。図4(c)に示すように、92.8%圧延後には、TD軸まわりにわずかに結晶回転が見られるものの、60.0%熱間圧延後と同様の集合組織が確認された。
図5に、EBSD測定により得られた各試験片の結晶方位差(misorientation angle)の分布を示す。図5に示すように、熱間圧延に供した熱間鍛造材(初期組織)では、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が低く、Σ3対応粒界、すなわち焼鈍双晶の存在を示す60°付近の分布が最も多いことが確認された。また、熱間圧延率の増加に伴い、Σ3双晶界面の割合が大きく減少し、その代わりに小角粒界が著しく増加することが確認された。
そこで、図6に、Σ3双晶界面に注目し、EBSDによる解析を行った結果を示す。図6に示すように、熱間圧延に供した熱間鍛造材(初期組織)は多くの焼鈍双晶を含み、全粒界のうちおよそ60%を占めるが、これらの焼鈍双晶は熱間圧延後には理想的な双晶関係(misorientation angle=60°)から最大9°のずれが生じていることが確認された。また、Σ3双晶界面の割合は、92.8%熱間圧延後にはおよそ20%に低下することが確認された。これらの結果は、熱間圧延時に焼鈍双晶が転位運動の障害となるため、その周囲に転位境界、すなわち、小角粒界を形成し、双晶界面の理想方位差からのずれが生じているためであると理解できる。なお、小角粒界の割合は、30〜60%まで増加している。したがって、初期組織として多くの焼鈍組織を有する実質的にγ単相組織を利用することで、効率的に転位を導入することができる。
そこで、この熱間圧延材に対して、Garrodらによる方法(R.I.Garrod, J.H. Auld: Acta Metall. 3 (1955) 190-198)を用いて、XRDラインプロファイル解析により転位密度を測定した。XRDラインプロファイルは、主に転位密度を反映した微視ひずみと回折に対しコヒーレントな単結晶ドメイン、すなわち結晶子のサイズによる影響の他に、光学系に起因したピークの広がりが生じる。したがって、測定プロファイルから、Stokesにより提案された方法(A.R. Stokes: Proc. Phys. Soc. 61 (1948) 382-391)を用いて光学系の影響を補正し、試料由来の物理プロファイルを抽出した。
以下に、Garrodらによるラインプロファイルの解析方法について簡単にまとめる。逆格子空間位置s=2sinθ/λ(θ:回折角、λ:入射X線の波長)で表した測定プロファイル、測定光学系の影響のみを反映した格子欠陥密度の十分に低い基準試料を用いて測定した装置プロファイル、および微視ひずみと結晶子サイズの影響を反映する物理プロファイルをそれぞれ、h(s)、g(s)およびf(s)とおくと、h(s)はg(s)およびf(s)の畳み込み(convolution)により得られる。したがって、フーリエ級数を用いて解くとき、h(s)、g(s)およびf(s)の規格化フーリエ係数の余弦係数部(実部)をH(n)、G(n)およびF(n)と表すと、次式の関係が得られる。
ここで、nは整数であり、測定プロファイルをX等分し、ピークトップの位置をj=0、j=±X/2を、回折ピークの強度がバックグラウンドと等しくなる’tail’の位置、h(j)、g(j)をj番目の位置の回折強度とすると、(2)式および(3)式となる。
したがって、回折面に対する垂直方向の長さをL=ndとすると、Lが小さい範囲では、(4)式が成り立つ。
ここで、Dは平均結晶子サイズ、<ε>はひずみの自乗平均、aは格子定数、h =h+k+l(h、k、l:解析に使用した回折ピークの面指数)である。したがって、−lnF(L)/Lのplotの切片および傾きからDおよび<ε>が求まる。また、平均転位密度ρは、<ε>を用いて(5)式より求めることができる。
ここで、bは、転位のバーガースベクトルの大きさである。
図7に、(a)熱間鍛造材(初期組織)および(b)92.8%熱間圧延材のγ相の331、420および422回折のXRDラインプロファイルを、(4)式に従って解析した結果を示す。なお、装置プロファイルg(s)は、焼鈍した純銅を用いて測定した。図7(a)に示す熱間鍛造材(初期組織)の測定結果と比較して、図7(b)に示す92.8%熱間圧延後の解析結果では、Lが小さい範囲でその傾きおよび切片が大きいことが確認された。これは、それぞれ微視ひずみの増加および結晶子サイズの減少に対応している。
表3に、解析より得られた熱間圧延前後の試料の転位密度および結晶子サイズをまとめて示す。各回折ピークの解析結果より、転位密度の平均値は、熱間鍛造材(初期組織)で1.1×1015−2であるのに対し、92.8%熱間圧延後には、4.6×1015−2となり、熱間圧延により転位密度が約4倍に増加したことが確認された。また、結晶子サイズも、熱間圧延により約1/2に微細化したことが確認された。したがって、熱間圧延による著しい高強度化は、高い転位密度が導入されることに起因することが明らかとなった。
N添加量の異なる二種類のCo−29Cr−6Mo(質量%)合金を用意した。各合金の分析組成を、表4に示す。以下、Nをほとんど含まない(添加量0.005質量%)合金を「CCM合金」、Nが0.12質量%添加された合金を「CCMN合金」と呼称する。両合金の30kg鋳塊を、高周波誘導溶解炉にて溶製した。この鋳塊を1225℃で12時間の均質化熱処理を行った後、1200℃に加熱して、一度の圧下率が20%未満となるようにスウェージ加工により直径14mmの丸棒を作製した。
この丸棒から、直径14mm、高さ28mmの円柱状試料を切り出した。この円柱状試料を1200℃で5分間加熱した後、油圧サーボプレス機にて大気中で熱間すえ込み鍛造を行った。γ→ε相変態は熱間鍛造性に悪影響を及ぼすため、試料温度をγ相が安定に存在し得る900℃以上に保持することが重要である。また、以前の研究結果から、微細結晶粒は比較的高速度の加工(ひずみ速度にして0.1〜1.0s−1)で得られることが分かっているため、油圧プレス機のストローク速度を30mms−1(初期ひずみ速度にして1.1s−1)とした。熱間鍛造は、CCM合金に対しては、圧下率61%(鍛造後の高さ11.0mm)、78%(6.10mm)および83%(4.66mm)、CCMN合金に対しては、圧下率を83%(4.71mm)とした。すべての試料は、σ相の析出を避けるため、高温鍛造後、水焼入れした。
熱間鍛造に供した丸棒材および熱間鍛造材に対し、組織観察、EBSD測定、X線回折、引張試験を行った。熱間鍛造に供した丸棒材の組織は、光学顕微鏡を用いて観察した。また、熱間鍛造材の組織観察は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM:Philips社製「XL30S−FEG」)を用いた後方散乱電子回折(EBSD)法で行った。組織観察用サンプルの作製、EBSD測定、X線回折、引張試験は、実施例1と同様の方法で行った。
[実験結果]
図8(a)および図8(b)に、それぞれ熱間据え込み鍛造前のCCM合金およびCCMN合金の丸棒材の組織を示す(以下、「初期組織」と呼称)。図8に示すように、両合金はいずれも等軸組織であり、結晶粒内には直線的な組織が観察される。これらは、CCM合金では、熱間加工後の水焼き入れにより導入された非熱的εマルテンサイト相と焼鈍双晶とに対応している。一方、CCMN合金では、そのほとんどは焼鈍双晶である。丸棒材のεマルテンサイト、焼鈍双晶を除いて算出した結晶粒径は、いずれの組成でも約100μmであった。
図9に、初期組織および熱間鍛造材のX線回折結果を示す。図9(a)に示すように、CCM合金の初期組織では、γ相の回折ピークに加えてε相の回折ピークが認められる。すなわち、CCM合金は、γ相とε相との二相組織であり、γ相の割合は90%を明らかに下回っていることが分かる。CCM合金の熱間鍛造材は、初期組織と比較してε相が少ないことが確認された。このことから、結晶粒の微細化により非熱的マルテンサイト変態が抑制されることが分かる。一方、図9(b)に示すように、CCMN合金の熱間鍛造材は、XRDパターンでε相のピークがほとんど認められず、実質的にγ単相組織(γ相が95%以上)であることが確認された。このことから、少量のN添加であってもγ相が安定化されることが分かる。
図10に、各合金の熱間鍛造材のEBSD測定により得られたImage quality(IQ) mapsを示す。観察面は、鍛造方向に平行な試料断面である。図10に示すように、熱間鍛造後の組織は、いずれの合金組成においても、初期組織と比較して著しく微細化されていることが確認された。また、圧下率83%の熱間鍛造により、いずれの合金組成においても、平均結晶粒径1μm以下の等軸超微細結晶粒組織が得られることが確認された。結晶粒径の測定値を、表5に示す。また、EBSD解析によれば、ほとんどの粒界は結晶方位差15°以上の高角度粒界であり、その割合は84〜96%である。以上より、Co−Cr−Mo合金では、熱間鍛造加工により、比較的小さな加工ひずみでも、一度の圧下率を20%以上とすることで超微細粒組織を作製することが可能であることが分かる。
図11に、EBSD測定により得られた各試験片の結晶方位差(misorientation angle)の分布を示す。図11に示すように、CCMN合金の初期組織は、結晶方位差15°以下の小角粒界の割合が低く(5%以下)、60°付近の分布が50〜60%と、多くの焼鈍双晶を含んでいることがわかる。いずれの合金においても、熱間鍛造により小角粒界の割合は増加するものの、最も小角粒界の割合の高い圧下率83%の熱間鍛造を行ったCCM合金においても、小角粒界は全結晶粒界の15%以下であり、実施例1に示した熱間圧延により得られる組織と大きく異なる。これは、一度に大きな圧下率で熱間鍛造を行うことによって、加工中に再結晶が生じ(動的再結晶)、加工により導入された転位が新たな結晶粒界の形成に消費されるためである。その結果、熱間鍛造材では、著しい結晶粒微細化が起こる。また焼鈍双晶の割合は、圧下率の増加とともに減少している。
図12に、圧下率83%の熱間鍛造を施したCCMN合金のEBSDデータを解析することにより作成した極点図を示す。図12に示すように、熱間鍛造により、鍛造方向とγ相の<110>方向とが平行な繊維集合組織を形成していることが確認された。
図13に、(a)CCM合金および(b)CCMN合金の熱間鍛造前後の試料に対して、室温引張試験を行ったときの公称応力−公称ひずみ曲線を示す。また、得られた引張特性を、平均結晶粒径とともに表5に示す。図13および表5に示すように、γ相とεマルテンサイト相とからなるCCM合金では、熱間鍛造率の増加とともに、0.2%耐力は著しく向上するが、引張延性は加工率の増加とともに低下し、83%熱間鍛造後には2.5%となることが確認された。一方、0.12%のNを添加したCCMN合金では、83%熱間鍛造後の試験片において、同じ加工率で熱間鍛造を行ったCCM合金と同等の高い0.2%耐力を示すと同時に、20%を超える大きな伸びを示すことが確認された。この著しい高強度化は、結晶粒の微細化とともに、高密度に転位が導入されたことによる転位強化によりもたらされたものである。また、CCMN合金において延性が損なわれない理由は、γ単相組織に結晶制御していることに起因する。したがって、CCMN合金は、高強度と高延性とを両立していることが確認された。
供試材として、実施例2の圧下率83%の熱間鍛造を施したCCMN合金を用いた。この供試材を用いて、赤外線コールドイメージ炉(アルバック理工社製)を用いて、加熱温度900〜1200℃、保持時間1〜5分の熱処理を行った。なお、熱処理後は、氷水中に焼入れした。
熱処理後の試料に対し、組織観察、EBSD測定、引張試験を行った。熱処理後の試料の組織観察は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FESEM:Philips社製「XL30S−FEG」)を用いた後方散乱電子回折(EBSD)法で行った。組織観察用サンプルの作成、EBSD測定、引張試験は、実施例1と同様の方法で行った。
[実験結果]
図14に、熱処理後の各試験片の組織を示す。図14に示すように、いずれも、熱間鍛造ままの試験片と比較して著しい結晶粒成長は起こっておらず、数μm程度以下の微細な組織が維持されていることが確認された。
図15に、引張試験により得られた各試験片の公称応力−公称ひずみ曲線を示す。比較のため、熱間鍛造前および熱間鍛造ままの試験片における結果も併せて示す。図15に示すように、1100℃および1200℃で1分間の熱処理を行った試験片は、熱間鍛造ままの引張特性と比較して強度は低下するものの、伸びが著しく増大することが確認された。また、熱間鍛造前の初期組織と比較して、熱間鍛造後に熱処理を行った試験片では、0.2%耐力が同等程度であっても大きな伸びを示すことが確認された。これは、熱処理材は、初期組織と比較して結晶粒が細かく調整されているためである。

Claims (14)

  1. Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、
    等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が〜100μmであり、転位密度および結晶子サイズがそれぞれ1×10154×10 15 −2 、10〜25nmであり、Σ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が10〜60%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを
    特徴とするCo−Cr−Mo基合金。
  2. Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、
    等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が〜100μmであり、転位密度および結晶子サイズがそれぞれ3.5×10 15 〜5×1015−2 、5〜15nmであり、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が30〜60%、かつΣ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜40%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを
    特徴とするCo−Cr−Mo基合金。
  3. Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、
    等軸状の結晶粒組織を有する熱間鍛造材から成り、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が0.1〜μmであり、転位密度および結晶子サイズがそれぞれ1×10154×10 15 −2 、5〜20nmであり、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が20%以下、かつΣ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜40%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを
    特徴とするCo−Cr−Mo基合金。
  4. さらに、C:0.01〜0.3質量%を含んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金。
  5. Cr:29〜35質量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金。
  6. 棒材または線材から成り、γ相が長さ方向が<111>と<001>とを含む繊維集合組織を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金。
  7. 圧延板から成り、γ相がBrass方位{110}<112>とGoss方位{110}<001>とが混在した方位の集合組織を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金。
  8. 一軸鍛造により製造された鍛造方向とγ相の<110>方向とが平行な繊維集合組織を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金。
  9. Cr:25〜35質量%、Mo:3〜8質量%、N:0.08〜0.8質量%、Si:1質量%以下、Mn:1質量%以下を含み、残部がCoおよび不可避不純物から成り、
    等軸状の結晶粒組織を有し、Σ3粒界を除いて計測する平均結晶粒径が0.1〜10μmであり、転位密度が1×10152×10 15 −2 であり、結晶方位差が15°以下の小角粒界の割合が20%以下、かつΣ3粒界の方位関係から最大10°ずれた粒界の出現割合が5〜30%であり、面心立方構造のγ相が90%以上であることを
    特徴とするCo−Cr−Mo基合金。
  10. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金から成ることを特徴とする生体材料。
  11. Cr:25〜35質量%と、Mo:3〜8質量%と、Si:1質量%以下と、Mn:1質量%以下と、N:0.08〜0.8質量%とを含み、残部がCoおよび不可避不純物から成る原料に対して、圧下率の合計が60%以上になるよう、1000℃以上の熱間加工をγ単相領域で、一度の圧下率が20%未満、1000℃以上で180秒間の加熱を繰り返すことにより行うことを特徴とするCo−Cr−Mo基合金の製造方法。
  12. Cr:25〜35質量%と、Mo:3〜8質量%と、Si:1質量%以下と、Mn:1質量%以下と、C:0.01〜0.3質量%と、N:0.08〜0.8質量%とを含み、残部がCoおよび不可避不純物から成る原料に対して、圧下率の合計が60%以上になるよう、一度の圧下率が20%以上で1000℃以上の熱間加工をγ単相領域で行うことを特徴とするCo−Cr−Mo基合金の製造方法。
  13. 前記熱間加工は、圧下率が60〜92.8%であり、圧延加工、鍛造加工、スウェージ加工および溝ロール圧延加工のうちの少なくとも一つから成ることを特徴とする請求項11または12記載のCo−Cr−Mo基合金の製造方法。
  14. 前記熱間加工を行った後、900〜1200℃で熱処理を行うことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のCo−Cr−Mo基合金の製造方法。
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