JP5846493B2 - 中空ナノ構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である1種以上の酸化物によって構成された酸化物ナノコア部材を準備する工程と、
該酸化物ナノコア部材の表面に炭素被覆層を形成する工程と、
該炭素被覆層の表面に、非炭素材料によって構成されたシェル層を形成することにより、コア−シェル構造体を作製する工程と、
該コア−シェル構造体を熱処理する工程と
を上記順に有する、中空ナノ構造体の製造方法である。
炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である1種以上の酸化物によって構成された酸化物ナノコア部材を準備する工程と、
該酸化物ナノコア部材の表面に炭素被覆層を形成する工程と、
該炭素被覆層の表面に、非炭素材料によって構成されたシェル層を形成することにより、中間体を作製する工程と、
該中間体に対して、
表面に、炭素被覆層、及び非炭素材料によって構成されたシェル層、を順に形成することを1又は複数回行うことにより、コア−シェル構造体を作製する工程と、
該コア−シェル構造体を熱処理する工程と
を上記順に有する、中空ナノ構造体の製造方法である。
非炭素材料層を有するシェル部材と、該シェル部材によって画定された中空部とを有し、
上記シェル部材が、上記中空部側の表面に、上記非炭素材料層を構成する材料とは異なる非炭素材料で構成された内側層を有し、
上記内側層を構成する非炭素材料は、対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料である、中空ナノ構造体である。
非炭素材料層を有し第1の中空部を画定する第1のシェル部材と、非炭素材料層を有し第2の中空部を画定する第2のシェル部材と、を有し、
上記第1のシェル部材が、上記第2の中空部に配置されている、中空ナノ構造体である。
第1の本発明に係る中空ナノ構造体の製造方法の一の実施形態について説明する。図1は、中空ナノ構造体の製造方法S100(以下、「製造方法S100」又は単に「S100」と略記することがある。)を説明するフローチャートである。また図2は、製造方法S100を断面視によって模式的に説明する図である。図1に示すように、製造方法S100は、コア部材準備工程S101と、炭素被覆層形成工程S102と、シェル層形成工程S103と、熱処理工程S104とをこの順に有する。以下、図1及び図2を参照しつつ、各工程について順に説明する。
コア部材準備工程S101(以下、単に「S101」と略記することがある。)は、炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である1種以上の酸化物によって構成された酸化物ナノコア部材(以下、単に「コア部材」又は「ナノコア」と略記することがある。)10を準備する工程である。本工程で準備した酸化物ナノコア部材10が、最終的に製造される中空ナノ構造体100の形状を決める鋳型となる。
炭素から一酸化炭素ガスが発生する反応:
C(s)+(1/2)O2(g) → CO(g) (1)
の標準反応ギブズエネルギーΔrG○(C,CO)、又は、炭素から二酸化炭素ガスが発生する反応:
(1/2)C(s)+(1/2)O2(g) → (1/2)CO2(g) (2)
の標準反応ギブズエネルギーΔrG○(C,CO2)が、金属Mの酸化反応:
xM(s、l、又はg)+(1/2)O2(g) → MxO(s) (3)
の標準反応ギブズエネルギーΔrG○(M,MxO)よりも負になる温度領域のうち最低の温度が1500℃以下であることを意味する。このとき、当該温度領域において、炭素が酸化物MxOを0価に還元して一酸化炭素ガスを発生する反応:
MxO(s)+C(s)→xM(s、l、又はg)+CO(g) (4)
の標準反応ギブズエネルギーΔrG○=ΔrG○(C,CO)−ΔrG○(M,MxO)、又は、炭素が酸化物MxOを0価に還元して二酸化炭素ガスを発生する反応:
MxO(s)+(1/2)C(s)→xM(s、l、又はg)+(1/2)CO2(g) (5)
の標準反応ギブズエネルギーΔrG○=ΔrG○(C,CO2)−ΔrG○(M,MxO)が負の値となり、炭素による酸化物MxOの0価への還元反応が自発的に進行する。
ΔrG○(C,CO) < ΔrG○(M,MxO) (6)
又は
ΔrG○(C,CO2) < ΔrG○(M,MxO) (7)
が成立する温度領域が絶対零度以上1500℃以下の温度範囲に存在するならば、当該酸化物は本発明に言う「炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である酸化物」に該当する。
酸化物ナノコア部材を構成する酸化物の、炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度は、1500℃以下でなければならず、1000℃以下であることが好ましく、750℃以下であることより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましく、360℃以下であることが特に好ましい。
「炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1000℃以下である酸化物」としては、上記例示した具体的な酸化物のうち、CuO、Cu2O、ZnO、FeO、Fe2O3、Fe3O4、Ag2O、As2O5、As2O6、Bi2O3、CdO、CoO、Co3O4、CrO3、Cs2O、GeO、GeO2、HgO、In2O3、K2O、MnO2、Mn2O3、MoO2、MoO3、NiO、Ni2O3、OsO4、PbO、PbO2、Pb3O4、PdO、Rb2O、Re2O7、Rh2O3、RuO2、RuO4、Sb2O5、Sb4O6、SeO2、SeO3、SnO、SnO2、TeO2、Tl2O、V2O5、WO2、及びWO3を挙げることができる。
「炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が750℃以下である酸化物」としては、上記例示した具体的な酸化物のうち、CuO、Cu2O、FeO、Fe2O3、Fe3O4、Ag2O、As2O5、As2O6、Bi2O3、CdO、CoO、Co3O4、CrO3、Cs2O、GeO、GeO2、HgO、In2O3、K2O、MnO2、MoO2、MoO3、NiO、Ni2O3、OsO4、PbO、PbO2、Pb3O4、PdO、Rb2O、Re2O7、Rh2O3、RuO2、RuO4、Sb2O5、Sb4O6、SeO2、SeO3、SnO、SnO2、TeO2、Tl2O、WO2、及びWO3を挙げることができる。
「炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が500℃以下である酸化物」としては、上記例示した具体的な酸化物のうち、CuO、Cu2O、Ag2O、As2O5、As2O6、Bi2O3、CdO、CoO、Co3O4、CrO3、GeO、HgO、MnO2、MoO3、NiO、Ni2O3、OsO4、PbO、PbO2、Pb3O4、PdO、Re2O7、Rh2O3、RuO2、RuO4、Sb2O5、Sb4O6、SeO2、SeO3、TeO2、及びTl2Oを挙げることができる。
「炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が360℃以下である酸化物」としては、上記例示した具体的な酸化物のうち、CuO、Cu2O、Ag2O、As2O5、As2O6、Bi2O3、CdO、CoO、Co3O4、CrO3、HgO、MoO3、NiO、Ni2O3、OsO4、PbO、PbO2、Pb3O4、PdO、Rh2O3、Re2O7、RuO2、RuO4、Sb2O5、Sb4O6、SeO2、SeO3、TeO2、及びTl2Oを挙げることができる。
上記した酸化物の中でも、熱処理の温度をより低くすることが可能になる点、及びナノワイヤ等としての入手が容易である点等の観点から、CuO、Cu2O、NiO、Co3O4、Fe2O3、Fe3O4、SnO2、及びZnOが特に好ましい。なお、2種以上の酸化物を適宜組み合わせて用いることも可能である。
ここで、本発明においてある酸化物が「絶対零度以上80℃以下の温度においては炭素による還元反応が進行しない酸化物」であるか否かは、次の炭素混合加熱試験によって決定するものとする。
レーザー回折法による体積分布の中間値を与える球相当径が10μmである非晶質炭素粉末10mmol分と、これに20mmolの酸素原子を含む量の、上記同様に定義される球相当径が10μmである当該酸化物粉末との均一混合物を、Arガスフロー雰囲気(内径5mmの石英ガラス管使用、1気圧、標準状態(0℃,1気圧)換算で8mL/秒)中、80℃で24時間保持する。系から流出したフローガスを捕集分析して二酸化炭素も一酸化炭素も検出されない場合に、当該酸化物は「絶対零度以上80℃以下の温度においては炭素による還元反応が進行しない酸化物」であるものとする。
なお上記における二酸化炭素および一酸化炭素の検出は、赤外線式ガス分析計(FTIRあるいはNDIR)を用いて行うものとする。
また例えば亜鉛酸化物ナノコアについては、サファイア基板表面に触媒として例えば金の薄膜をコーティングし、真空下でZnO粉末を加熱して昇華させてサファイア基板上に析出させることにより、サファイアの結晶構造の周期性に起因して周期的な並びでZnOナノワイヤが成長することが知られている。また亜鉛酸化物に関しては、ZnO粉末の熱昇華および温度等の堆積条件を設定することにより、ZnOナノリングやZnOナノコイルが作製できることも報告されている(R. Yang and Z. L. Wang, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 1466-1467.)。
炭素被覆層形成工程S102(以下、単に「S102」と略記することがある。)は、S101で準備した酸化物ナノコア部材10の表面に炭素被覆層20を形成する工程である(図2(B)参照。)。炭素被覆層20は、後述する熱処理工程S104においてコア部材10の還元的分解処理を容易にする観点から、非晶質炭素によって形成することが特に好ましい。炭素被覆層20が非晶質炭素であることにより、熱処理を受けた際に炭素原子が酸化物ナノコア部材10中に浸透拡散することが一層容易になるので、より低い温度での熱処理によってコア部材10を分解処理することが可能になる。
シェル層形成工程S103(以下、単に「S103」と略記することがある。)は、S102で形成した炭素被覆層20の表面に、非炭素材料によって構成されたシェル層30を形成することにより、コア−シェル構造体50を作製する工程である(図2(C)参照。)。シェル層30を構成する非炭素材料としては、後述する熱処理工程S104における熱処理の温度で炭素による還元を受けない材料を好ましく用いることができる。そのような材料としては、後述する熱処理工程S104の加熱温度において融解しない金属及び半導体、並びに、当該加熱温度において炭素によって還元されない安定酸化物等を挙げることができる。
ΔrG○(C,CO) > ΔrG○(M,MxO) (8)
及び
ΔrG○(C,CO2) > ΔrG○(M,MxO) (9)
がともに成立することを意味する。そのような安定酸化物としては、例えばSiO2、Al2O3、TiO2、及びMgO等を好ましく挙げることができる。
熱処理工程S104(以下、単に「S104」ということがある。)は、S103で作製したコア−シェル構造体50を熱処理する工程である(図2(D)参照。)。コア−シェル構造体50を熱処理することにより、炭素被覆層20の炭素による酸化物ナノコア部材10の還元的分解が進行し、中空ナノ構造体100が製造される(図2(E)参照。)。この分解反応は固相還元反応であるが、炭素被覆層20の炭素原子が酸化物ナノコア部材10を構成する酸化物の格子間隙又は結晶粒界を通じてコア部材内部に浸透拡散することにより、コア部材10の表面のみならず、コア部材10の内部においても酸化物の炭素による還元反応が進行すると本発明者は推定している。酸化物ナノコア部材10を構成する酸化物(例えばCuO等。)が還元されて生じた0価の元素(例えばCu等。)は、シェル層30の内側面に堆積して新たな層40を形成する(図2(E))。酸素を失ったことにより、0価の元素がシェル層30内側に占める体積は、熱処理前に酸化物が占めていた体積よりも減少している。炭素が還元剤として作用した結果生じたCO及び/又はCO2ガスは、シェル層30の欠陥部分や結晶粒界等を通じて外部に放出されると考えられる。また、余剰の炭素原子は、シェル層30の欠陥部分や結晶粒界等を通って外部に放出されるか、又はシェル層30の結晶格子の格子間隙を通じて浸透拡散して外部に放出されると考えられる。
S104における熱処理の温度は、上記した酸化物ナノコア部材10を構成する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度以上である必要がある。なお、ある温度において実際に炭素による還元反応が起きるか否かは、当該温度を保持温度として上記した炭素混合加熱試験を行うことによって知ることができる。捕集した流出フローガスから上記の各検出方法でCO2又はCOが検出されれば還元反応が起きると判断できる。
S104における熱処理の温度は、上記した酸化物ナノコア部材10を構成する酸化物の炭素による還元反応が起きる最低温度以上である必要がある。還元反応の活性化障壁等も考慮すると、通常100℃以上であり、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上であり、特に好ましくは300℃以上であり、また通常1500℃以下であり、応用可能性等の観点から好ましくは1000℃以下であり、より好ましくは750℃以下であり、さらに好ましくは500℃以下であり、特に好ましくは360℃以下であり、最も好ましくは310℃以下である。特に、熱処理温度を360℃以下とすることにより、MOS−FET等の半導体集積回路の配線形成プロセスにおいて許容される上限温度を確実に下回るため、例えば電子デバイス材料への応用可能性を一層高めることができる。
第1の本発明に係る中空ナノ構造体の製造方法の他の実施形態について説明する。図3は、中空ナノ構造体の製造方法S200(以下、「製造方法S200」又は単に「S200」と略記することがある。)を説明するフローチャートである。また図4は、製造方法S200を断面視によって模式的に説明する図である。図3に示すように、製造方法S200は、コア部材準備工程S101と、炭素被覆層形成工程S102と、シェル層形成工程S103と、炭素被覆層露出工程S204と、熱処理工程S205とをこの順に有する。以下、図3及び図4を参照しつつ、各工程について順に説明する。
コア部材準備工程S101からシェル層形成工程S103までは、製造方法S100について上述したS101乃至S103と同様である。以下、炭素被覆層露出工程S204と、熱処理工程S205について説明する。
炭素被覆層露出工程S204(以下、「S204」と略記することがある。)は、S102で形成した炭素被覆層20を露出させる工程である(図4(D)参照)。S204においては、炭素被覆層20の一部を露出させる。このことは、シェル層30’(図4(F)参照)に開口部を設けることに相当する。図4におけるようにコア部材10がナノワイヤであった場合には、例えばコア−シェル構造体50の一部を機械的に折り取る等して切断することによって、炭素被覆層20を断面Aにおいて露出させることができる。このような切断は、例えば、一方の端部を保持したコア−シェル構造体50に対して、ピエゾ素子駆動のSiマイクロカンチレバー等を用いて、他方の端部においてコア−シェル構造体50の長手方向に交差する方向に力をかけ、脆性破壊させることによって行うことができる。シェル層30が金属(例えばPt等。)によって構成されていても、部材のサイズがナノメートルオーダーになると降伏応力が増大するので、脆性破壊させることが容易になっている。また、機械的な力を負荷する以外の方法としては、ドライエッチングにより端部を選択的にエッチングする方法等を例示することができる。また、コア−シェル構造体がナノビーズ状である場合には、集束イオンビーム(FIB)による穴あけ加工等の方法を例示することができる。
熱処理工程S205(以下、「S205」と略記することがある。)は、S204において炭素被覆層20を露出させたナノ−シェル構造体50’を熱処理する工程である(図4(E)参照)。熱処理の好ましい条件は、製造方法S100について上述したS104と同様である。S205においては、炭素被覆層20の一部が端面Aにおいて露出していること(すなわちシェル層30’が開口部を有していること)により、COガス及び/又はCO2ガス、並びに酸化物MxOが還元されて生じた0価の元素Mが当該開口部を通じてナノ−シェル構造体50’の外部に放出される。
第1の本発明に係る中空ナノ構造体の製造方法のさらに他の実施形態について説明する。図5は、中空ナノ構造体の製造方法S1000(以下、「製造方法S1000」又は単に「S1000」と略記することがある。)を説明するフローチャートである。また図6は、製造方法1000を斜視図によって模式的に説明する図である。S1000は、複数のコア部材を各個に炭素被覆した後、一体のシェル層によって被覆して、その後熱処理することにより、中空ナノ構造体として高秩序ナノ多孔質体1000を製造する方法である。図5に示すように、製造方法S1000は、コア部材準備工程S1010と、炭素被覆層形成工程S1020と、シェル層形成工程S1030と、熱処理工程S1040と、分離工程S1050とをこの順に有する。以下、図5及び図6を参照しつつ、各工程について順に説明する。
コア部材準備工程S1010(以下、単に「S1010」と略記することがある。)は、複数の酸化物ナノコア部材として、ZnOナノワイヤ配列を形成する工程である。サファイア基板表面に触媒として例えば金の薄膜をコーティングし、真空下でZnO粉末を加熱して昇華させてサファイア基板上に析出させることにより、サファイアの結晶構造の周期性に起因する周期的な並びで、サファイア基板上に複数のZnOナノワイヤを成長させる。形成したZnOナノワイヤ配列は、サファイア基板上に各ZnOナノワイヤが立設された構造を有している(図6(A)参照)。
炭素被覆層形成工程S1020(以下、単に「S1020」と略記することがある。)は、S1010で準備したZnOナノワイヤ配列の各ZnOナノワイヤの表面に炭素被覆層を形成する工程である。炭素被覆層の形成は上記同様に行うことができ、例えばスパッタリング堆積法により好ましく行うことができる。
シェル層形成工程S1030(以下、単に「S1030」と略記することがある。)は、サファイア基板のZnOナノワイヤ配列が立設された表面に、シェル層を構成すべき非炭素材料(以下、単に「シェル材料」ということがある。)を堆積させることにより、一体のシェル層を形成する工程である。シェル層を構成する非炭素材料としては、上記同様の非炭素材料が使用可能である。ただし、電着による堆積が可能になる等の観点からは、金属を好ましく採用できる。シェル材料を堆積させる方法としては、上記したスパッタリング堆積法等の公知の方法を用いることができる。また、シェル材料が金属である場合には、S1010でサファイア基板表面に形成していたAu薄膜を陰極として用いるなどして、当該金属を電析させる方法を採ることも可能である。
S1010乃至S1030を経ることにより、各個に炭素被覆された複数の酸化物ナノコア部材(ZnOナノワイヤ)が一の一体のシェル層によって被覆された形態の、コア−シェル構造体が作製される(図6(B)参照)。
熱処理工程S1040(以下、単に「S1040」と略記することがある。)は、S1030で作製したコア−シェル構造体を熱処理する工程である。コア−シェル構造体を熱処理することにより、炭素被覆層の炭素によってZnOナノワイヤが還元的に分解処理され、シェル層中のZnOナノワイヤが存在していた箇所に中空部が形成される。これにより、中空ナノ構造体として高秩序ナノ多孔質構造体1000がサファイア基板に直接又は間接に付着した構造が形成されることになる。S1040は、上記の熱処理工程と同様の条件下で行うことができる。
分離工程S1050(以下、単に「S1050」と略記することがある。)は、S1040で形成された高秩序ナノ多孔質構造体1000を、サファイア基板から分離する工程である。本工程S1050は、サファイア基板(及びAu薄膜等)を例えばドライエッチングやウェットエッチング等の公知の方法で分解処理することによって行うことが可能である。また、高秩序ナノ多孔質構造体1000の厚さが十分に厚いために強度が十分にある場合には、切削加工でサファイア基板を切り離すこと等によって行うことも可能である。
S1010乃至S1050を経ることにより、単独の高秩序ナノ多孔質構造体(ナノ多孔質膜)1000を得ることができる(図6(C)参照)。
製造方法S1000によって製造される高秩序ナノ多孔質構造体1000は、一定の厚さを有する膜状ないしは板状のシェル層に、該シェル層を貫通するように、複数の略平行な筒状の中空部が設けられた、多孔質の構造を有する。そして、これら複数の中空部は、S1010で準備したZnOナノワイヤ配列の周期性を反映して、周期的な並びで配置されている(図6(C)参照)。
第2の本発明に係る中空ナノ構造体の製造方法の一の実施形態について説明する。図7は、中空ナノ構造体の製造方法S300(以下、「製造方法S300」又は単に「S300」と略記することがある。)を説明するフローチャートである。また図8は、製造方法S300を断面視によって模式的に説明する図である。製造方法S300は、2つのシェル層を有する多層中空ナノ構造体300を製造する方法である。図7に示すようにS300は、コア部材準備工程S301と、第1炭素被覆層形成工程S302と、第1シェル層形成工程S303と、第2炭素被覆層形成工程S304と、第2シェル層形成工程S305と、熱処理工程S306とをこの順に有する。以下、図7及び図8を参照しつつ、各工程について順に説明する。
コア部材準備工程S301(以下、「S301」と略記することがある。)は、第1の本発明の製造方法S100について上述したS101と同様にして、酸化物ナノコア部材10を準備する工程である(図8(A))。
第1炭素被覆層形成工程S302(以下、「S302」と略記することがある。)は、第1の本発明の製造方法S100について上述したS102と同様にして、酸化物ナノコア部材10の表面に第1の炭素被覆層120を形成する工程である(図8(B))。第1の炭素被覆層120の厚さは、該層に含まれる炭素だけでコア部材10を全て還元可能な厚さとしてもよいし、後述する第2の炭素被覆層140に含まれる炭素量を合計した炭素量がコア部材10を全て還元可能な炭素量となる厚さとしてもよい。
第1シェル層形成工程S303(以下、「S303」と略記することがある。)は、第1の本発明の製造方法S100について上述したS103と同様にして、炭素被覆層120の表面に、非炭素材料によって構成された第1のシェル層130を形成することにより、中間体250を作製する工程である(図8(C))。
第2炭素被覆層形成工程S304(以下、「S304」と略記することがある。)は、第1の本発明の製造方法S100について上述したS102と同様にして、中間体250の表面に第2の炭素被覆層140を形成する工程である(図8(D))。第2の炭素被覆層140の厚さに対応して、最終的に製造される多層中空ナノ構造体300における第1のシェル層130と第2のシェル層150との空隙の大きさが定まる。第2の炭素被覆層140の厚さは、最終的に製造される多層中空ナノ構造体300における第1のシェル層130と第2のシェル層150との空隙の所望の大きさ、及び、コア部材10の還元に関与させるべき炭素の量に応じて適宜決定することができる。
第2シェル層形成工程S305(以下、「S305」と略記することがある。)は、第1の本発明の製造方法S100について上述したS103と同様にして、S304で形成した第2の炭素被覆層140の表面に第2のシェル層150を形成することにより、コア−シェル構造体260を形成する工程である(図8(E))。なお、第2のシェル層150は、第1のシェル層130を構成する非炭素材料と同一の非炭素材料によって形成してもよく、また異なる非炭素材料によって形成してもよい。
熱処理工程S306(以下、「S306」と略記することがある。)は、コア−シェル構造体260を熱処理する工程である(図8(F))。熱処理の雰囲気及び温度については、第1の本発明の製造方法S100について上述したS104と同様である。酸化物ナノコア部材10を構成する酸化物(例えばCuO等。)が還元的に分解されて生じた0価の元素(例えばCu等。)は第1のシェル層130の内側に堆積して、内側層160を形成する。熱処理の時間は上記S104と同様でもよいが、炭素原子が第1のシェル層130を透過して酸化物ナノコア部材10の還元反応に関与する必要がある場合には、長めにとることが好ましい。例えば、コア部材として外径160nmのCuOナノワイヤを用い、第1及び第2の炭素被覆層の厚さをそれぞれ60nmとし、銀からなる第1及び第2のシェル層の厚さをそれぞれ100nmとした場合には、加熱温度300℃において加熱時間を120分〜360分等とすることができる。
第3の本発明に係る中空ナノ構造体について説明する。図9は、第3の本発明の一実施形態である中空ナノ構造体500を説明する断面模式図である。図9に示すように、中空ナノ構造体500は、非炭素材料層410を有するシェル部材450と、該シェル部材450によって画定された中空部470とを有し、シェル部材450が、中空部470側の表面に、非炭素材料層410を構成する非炭素材料とは異なる非炭素材料で構成された内側層420を有する。そして、内側層420を構成する非炭素材料は、対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料である。中空ナノ構造体500は、上記第1の本発明の中空ナノ構造体の製造方法S100によって好ましく製造することができる。
非炭素材料層410を構成する非炭素材料としては、第1の本発明の中空ナノ構造体の製造方法について上述した非炭素材料(例えばPt、Ag、SiO2等。)を採用できる。非炭素材料層410の厚さは特に制限されるものではないが、通常は1nm以上であり、好ましくは3nm以上であり、また通常100nm以下であり、好ましくは10nm以下である。
上記の通り、内側層420を構成する非炭素材料は、対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料(例えばCuO等。)である。ここで、ある非炭素元素Mが「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料」であるとは、当該非炭素元素Mの酸化物MxO(xは整数又は分数)のうち少なくとも一種が、炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である酸化物であることを意味する。すなわち対応する酸化物が複数種類存在する非炭素元素については、それら酸化物のうち一種類でも炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下であれば、「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料」に該当するものとする。
内側層420を構成する非炭素材料の、対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度は1500℃以下でなければならず、1000℃以下であることが好ましく、750℃以下であることより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましく、360℃以下であることが特に好ましい。
「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1000℃以下である非炭素材料」としては、上記例示した具体的な非炭素材料のうち、Cu、Zn、Fe、Ag、As、Bi、Cd、Cr、Co、Cs、Ge、Hg、In、K、Mn、Mo、Ni、Os、Pb、Pd、Rb、Re、Rh、Ru、Sb、Se、Sn、Te、Tl、V、及びWを挙げることができる。
「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が750℃以下である非炭素材料」としては、上記例示した具体的な非炭素材料のうち、Cu、Fe、Ag、As、Bi、Cd、Cr、Co、Cs、Ge、Hg、In、K、Mn、Mo、Ni、Os、Pb、Pd、Rb、Re、Rh、Ru、Sb、Se、Sn、Te、Tl、及びWを挙げることができる。
「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が500℃以下である非炭素材料」としては、上記例示した具体的な非炭素材料のうち、Cu、Ag、As、Bi、Cd、Co、Cr、Ge、Hg、Mn、Mo、Ni、Os、Pb、Pd、Re、Rh、Ru、Sb、Se、Te、及びTlを挙げることができる。
「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が360℃以下である非炭素材料」としては、上記例示した具体的な非炭素材料のうち、Cu、Ag、As、Bi、Cd、Co、Cr、Hg、Mo、Ni、Os、Pb、Pd、Rh、Re、Ru、Sb、Se、Te、及びTlを挙げることができる。
上記した具体的な非炭素材料の中でも、酸化物の還元のための熱処理の温度をより低くすることが可能になる点、及び酸化物ナノワイヤ等としての入手が容易である点等の観点から、Cu、Zn、Ni、Co、Fe、Sn、及びZnが好ましい。これらの元素は一種のみであってもよく、二種以上が混合等組み合わされていてもよい。
第4の本発明に係る中空ナノ構造体について説明する。図10は、第4の本発明の一実施形態である多層中空ナノ構造体600を説明する断面模式図である。図10に示すように、多層中空ナノ構造体600は、非炭素材料層510を有し第1の中空部550を画定する第1のシェル部材530と、非炭素材料層570を有し第2の中空部580を画定する第2のシェル部材570とを有し、第1のシェル部材530が第2の中空部580に配置されている中空ナノ構造体である。そして、第1のシェル部材530がさらに、該第1のシェル部材の非炭素材料層510とは異なる非炭素材料で構成された内側層520を、第1の中空部550側の表面に有し、内側層520を構成する非炭素材料は対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料である。多層中空ナノ構造体600は、上記第2の本発明の中空ナノ構造体の製造方法S300によって好ましく製造することができる。
第1のシェル部材530は、非炭素材料層510と内側層520とを有してなり、第1の中空部550を画定している。
非炭素材料層510を構成する非炭素材料としては、第2の本発明の中空ナノ構造体の製造方法について上述した非炭素材料(例えばPt、Ag、SiO2等。)を採用できる。非炭素材料層510の厚さは特に制限されるものではないが、通常は1nm以上であり、好ましくは3nm以上であり、また通常100nm以下であり、好ましくは10nm以下である。
内側層520を構成する非炭素材料は、「対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料」である。内側層520を構成する非炭素材料としては、上記第3の本発明の中空ナノ構造体の内側層について上述したものと同様の非炭素材料を採用できる。
第2のシェル部材570は、非炭素材料層570によって構成されており、第2の中空部580を画定している。
非炭素材料層570を構成する非炭素材料としては、第2の本発明の中空ナノ構造体の製造方法について上述した非炭素材料(例えばPt、Ag、SiO2等。)を採用できる。非炭素材料層570の厚さは特に制限されるものではないが、通常は1nm以上であり、好ましくは3nm以上であり、また通常100nm以下であり、好ましくは10nm以下である。
第1の本発明の製造方法により、CuOナノワイヤを酸化物ナノコア部材(鋳型)としてPtナノチューブを製造した実施例である。
直径0.1mmの銅細線(純度99.9%)を大気圧下、600℃に加熱して4〜40時間空気酸化することにより、当該細線の表面に直径数十nm〜700nm、長さ数μm〜100μmのCuOナノワイヤ群を成長させた。なお、加熱時間と成長したCuOナノワイヤの直径との間には正の相関がみられた。次に、図11(A)の光学顕微鏡写真に示すように、多自由度ナノ把持装置(K. Kobayashi, Y. Toku, M. Muraoka, "Manipulation of Nanowires by Chopsticks", Proc. ATEM '11, (2011), p.145.)を用いて単一のナノワイヤを分離し、さらに図11(B)の光学顕微鏡写真に示すようにAFMカンチレバーの先端に付着させた。
CuOナノワイヤを付着させたカンチレバー(以下、「NW付着カンチレバー」と略記することがある。)を、DCマグネトロンスパッタ装置(サンユー電子株式会社製SC−701HMCII)に取り付けた。この際、CuOナノワイヤがスパッタ装置の炭素ターゲット(株式会社ニラコ・C−076515)と平行になるようにした。スパッタ装置を作動させて一方向からCuOナノワイヤに炭素被覆を施した後、NW付着カンチレバーを裏返して設置し、反対側から再度CuOナノワイヤに炭素被覆を施した。炭素の合計スパッタ時間は4分とした。これは炭素被覆層の厚さが8nmとなる時間である。
炭素被覆層を形成した後、ターゲットを白金ターゲット(サンユー電子株式会社、φ49×t0.5/4N)に替え、同様にしてPtをスパッタ被覆することにより、コア−シェル構造体を作製した。Ptの合計スパッタ時間は9.4分とした。これはPtシェル層の厚さが80nmとなる時間である。
上記作製したコア−シェル構造体が付着しているNW付着カンチレバーを、Arガス雰囲気中、300℃にて30分間加熱処理することにより、CuOを還元的に分解し、Ptナノチューブを得た。
得られたPtナノチューブは、評価のため、図12(A)及び(B)の光学顕微鏡写真に示すように多自由度ナノ把持装置を応用して曲げ応力をかけ、脆性破壊させて切断し、開口部を有するPtナノチューブとした。
第1の本発明の方法によって、炭素及びPt被覆したCuOナノワイヤ(コア−シェル構造体)を曲げ応力をかけて切断することにより炭素被覆層の一部を露出させてから熱処理工程を行う形態で、単層Ptナノチューブを製造した実施例である。CuOナノワイヤに炭素被覆を施すまでは実施例1と同様に行った。
Ptの合計スパッタリング時間を、Ptシェル層の厚さが約30nmとなる時間とした点以外は、実施例1と同様にしてPtをスパッタし、コア−シェル構造体を作製した。
作製したコア−シェル構造体を、上記同様に多自由度ナノ把持装置を応用して曲げ応力をかけ、脆性破壊させて切断することにより、切断端面において炭素被覆層を一部露出させた。
炭素被覆層を一部露出させたコア−シェル構造体が付着しているNW付着カンチレバーを、Arガス雰囲気中、300℃にて240分間加熱処理することにより、CuOを還元的に分解し、これによって開口部を有するPtナノチューブを得た。
第2の本発明の製造方法により、CuOナノワイヤを酸化物ナノコア部材として多層Agナノチューブを製造した実施例である。CuOナノワイヤをAFMカンチレバーに付着させるまでは実施例1と同様に行った。
実施例1と同様の手法により両面からスパッタを行い、CuOナノワイヤに炭素被覆を施した。合計スパッタ時間は30とした。これは第1の炭素被覆層の厚さが60nmとなる時間である。
炭素被覆を施したCuOナノワイヤに対し、Agターゲット(サンユー電子株式会社、φ49×t0.5/4N)を用いた以外は実施例1と同様の手法により両面からスパッタを行い、Ag被覆を施した。合計スパッタ時間は6分とした。これは第1のAgシェル層の厚さが100nmとなる時間である。
上記第1炭素被覆層形成工程と同様にして両面から炭素をスパッタし、第1のAgシェル層の上からさらに炭素被覆を施した。合計スパッタ時間は30分とした。これは第2の炭素被覆層の厚さが60nmとなる時間である。
上記第1シェル層形成工程と同様にして両面からAgをスパッタし、第2の炭素被覆層の上からさらにAg被覆を施した。合計スパッタ時間は6分とした。これは第2のAgシェル層の厚さが100nmとなる時間である。
上記被覆したCuOナノワイヤが付着しているNW付着カンチレバーを、Arガス雰囲気中、300℃にて30分間加熱処理することにより、CuOを還元的に分解し、多層Agナノチューブを得た。
得られた多層Agナノチューブは、評価のため、実施例1同様に多自由度ナノ把持装置を応用して曲げ応力をかけ、脆性破壊させて切断し、開口部を有する多層Agナノチューブとした。
実施例1〜3の各ナノチューブについて、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製SU−70、加速電圧5kV、二次電子検出)により、断面形状を観察した。
図13(a)は、実施例1の単層Ptナノチューブの、切断前の形状例を示すSEM像である。チューブ直径は約300nmである。また、ナノチューブ先端が開口していないことが判る。
図13(b)は、実施例1の単層Ptナノチューブの切断後の断面形状を示すSEM像である。ナノチューブの外径は約300nmである。チューブの断面形状から、内部に空洞の形成が認められる。
図13(c)は、実施例2の単層Ptナノチューブの断面形状を示すSEM像である。ナノチューブの外径は約160nm、内径は約100nmである。実施例1同様の空洞形成が認められる。
図14は、実施例3の多層Agナノチューブの断面形状である。チューブ外径は約800nmである。また、炭素被覆層を形成した箇所が空洞になっていることが判る。このことから、炭素はCuOナノワイヤを還元してCO2ガスとして、或いは炭素原子として、Agシェル層の結晶格子間隙又は結晶粒界を通過して外部へ排出されたと推測される。
実施例1〜3の各ナノチューブについて、エネルギー分散型X線分光分析(EDX、加速電圧10kV)により、ナノチューブ断面中心部の元素分析を行った。結果を図15(a)〜(c)に示す。図15(a)は実施例1の単層Ptナノチューブの中心部分、図15(b)は実施例2の単層Ptナノチューブの内側面(紙面右上SEM像中に示した白い点の位置)、図15(c)は実施例3の多層Agナノチューブの中心部分の分析結果である。
図15(a)及び(c)の両方において、Cu及びシェル層の構成金属(それぞれPt、Ag)が顕著に検出されている。また、小さいが炭素や酸素を示すピークも認められる。他方、図15(b)においては、シェル層の構成金属(Pt)が顕著に検出されているが、Cuの検出強度は図15(a)と比較して著しく弱い。
図15(a)から、実施例1の単層Ptナノチューブにおいては、酸素を示すピークが比較的低く、Cuを示すピークが大きいことから、(1)相当程度還元反応が進行したこと、及び、(2)還元により生成したCuは、外部放出されず、ナノチューブ内壁面に堆積したこと、が読み取れる。
図15(b)から、実施例2の単層Ptナノチューブにおいては、Ptに対するCuの相対的なピーク強度が図15(a)と比較して著しく低いことから、炭素被覆層を一部露出させてから加熱したことにより、還元により生成したCuの大部分が外部に放出され、一部のみがシェル層内側に堆積したことが判る。
図15(c)から、実施例3の多層Agナノチューブにおいては、Cuに対する酸素のピークが高いことから、(イ)30分という還元時間が不十分であった、又は(ロ)還元を完全に進行させるには炭素の量が不足していた、と考えられる。
また例えば、SiO2等の絶縁体をシェルとするナノチューブの中空部にPtやAg等の導電性金属が堆積しており、先端が切断されたことにより端面のみで当該導電性金属層を露出させた形態は、絶縁被覆型微小電極としての構造を有していることから、細胞等の液中局所電位の計測への応用が期待される。
このような金属ナノコイルについては、電磁誘導による誘導電流発生等が期待される。また、外部磁場下での電流印加による電磁アクチュエータ素子としての応用も期待されるところである。
20 炭素被覆層
30、30’ シェル層
40 内側層
50、50’ コア−シェル構造体
100、200、500 中空ナノ構造体
120 第1の炭素被覆層
130 第1のシェル層
140 第2の炭素被覆層
150 第2のシェル層
160 内側層
170 第1の中空部
180 第2の中空部
250 中間体
260 コア−シェル構造体
410 非炭素材料層
420 内側層
430 シェル部材
470 中空部
510 非炭素材料層
520 内側層
530 第1のシェル部材
550 第1の中空部
570 第2のシェル部材(非炭素材料層)
580 第2の中空部
600 多層中空ナノ構造体
1000 高秩序ナノ多孔質構造体(中空ナノ構造体)
Claims (8)
- 炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である1種以上の酸化物によって構成された酸化物ナノコア部材を準備する工程と、
前記酸化物ナノコア部材の表面に炭素被覆層を形成する工程と、
前記炭素被覆層の表面に、非炭素材料によって構成されたシェル層を形成することにより、コア−シェル構造体を作製する工程と、
前記コア−シェル構造体を熱処理する工程と
を上記順に有し、
前記シェル層を構成する非炭素材料が、前記熱処理の温度で炭素による還元を受けない材料である、中空ナノ構造体の製造方法。 - 多層中空ナノ構造体を製造する方法であって、
炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である1種以上の酸化物によって構成された酸化物ナノコア部材を準備する工程と、
前記酸化物ナノコア部材の表面に炭素被覆層を形成する工程と、
前記炭素被覆層の表面に、非炭素材料によって構成されたシェル層を形成することにより、中間体を作製する工程と、
前記中間体に対して、
表面に、炭素被覆層、及び非炭素材料によって構成されたシェル層、を順に形成すること
を1又は複数回行うことにより、コア−シェル構造体を作製する工程と、
該コア−シェル構造体を熱処理する工程と
を上記順に有し、
いずれの前記シェル層を構成する非炭素材料も、前記熱処理の温度で炭素による還元を受けない材料である、中空ナノ構造体の製造方法。 - 前記シェル層は、前記熱処理の温度で炭素が浸透及び拡散できる層である、
請求項1又は2に記載の中空ナノ構造体の製造方法。 - 前記熱処理する工程の前に、
最も内側の前記炭素被覆層を露出させる工程
をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空ナノ構造体の製造方法。 - 前記酸化物が、CuO、Cu2O、NiO、Co3O4、Fe2O3、Fe3O4、SnO2、及びZnOからなる群から選ばれる1種以上である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の中空ナノ構造体の製造方法。 - 前記熱処理の温度が360℃以下である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の中空ナノ構造体の製造方法。 - 中空ナノ構造体であって、
非炭素材料層を有するシェル部材と、
該シェル部材によって画定された中空部と
を有し、
前記シェル部材が、前記中空部側の表面に、前記非炭素材料層を構成する材料とは異なる非炭素材料で構成された内側層を有し、
前記内側層を構成する前記非炭素材料は、対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料であり、
前記非炭素材料層を構成する非炭素材料は、前記内側層を構成する非炭素材料に対応する酸化物の炭素による還元反応が起きる最低温度以上の温度から選ばれる少なくとも一つの熱処理温度で炭素による還元を受けない材料である、
中空ナノ構造体(ただし、前記非炭素材料層を構成する材料がシリカ、アルミナ、ジルコニア又はチタニアであり且つ前記内側層を構成する材料が鉄族金属、ロジウム又は白金である場合を除く。)。 - 多層中空ナノ構造体であって、
非炭素材料層を有し、第1の中空部を画定する第1のシェル部材と、
非炭素材料層を有し、第2の中空部を画定する第2のシェル部材と
を有し、
前記第1のシェル部材が、前記第2の中空部に配置されており、
前記第1のシェル部材がさらに、該第1のシェル部材の前記非炭素材料層とは異なる非炭素材料で構成された内側層を、前記第1の中空部側の表面に有し、
該内側層を構成する非炭素材料は、対応する酸化物の炭素による還元反応の標準反応ギブズエネルギーに基づく最低温度が1500℃以下である非炭素材料であり、
前記第1のシェル部材の非炭素材料層および前記第2のシェル部材の非炭素材料層を構成する非炭素材料は、前記内側層を構成する非炭素材料に対応する酸化物の炭素による還元反応が起きる最低温度以上の温度から選ばれる少なくとも一つの熱処理温度で炭素による還元を受けない材料である、
中空ナノ構造体。
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