JP5845072B2 - アルミニウム面削材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1は、99.9999%以上の純度レベルを有する高純度アルミニウム材を開示している。
また、三層電解法により精製(精錬)して得た純度99.999%以上のアルミニウム材をさらに一方向凝固法により精製することで99.9999%以上のアルミニウム材を得ることができることも知られている。
また、鋳造材を加工した加工材においても面削加工を行う必要がある場合がある。例えば、鋳造材を圧延して圧延板を得た後、表面酸化被膜の除去および表面欠陥の除去等を目的に圧延材に面削加工を行う場合がある。
例えば、面削後のアルミニウム材の面削面(面削を施した面)の表面から2μmまでの領域における鉄の平均汚染濃度は30ppm程度である。この平均汚染濃度の水準は、通常の純アルミニウム(例えば、純度99%程度)の面削材では問題とならない水準であるがしかし、高純度アルミニウム材にとっては問題となり得る水準である。
2)前記切削チップを前記アルミニウム材に接触させ、かつ該切削チップと該アルミニウム材が接触する部分に鉱物油または植物油を主成分とする切削油を供給しながら前記フライスカッターを回転させて面削加工を行う工程と、を含むことを特徴とする面削加工する方法である。
しかし、フライスカッターは切削チップ(切削工具)のみがアルミニウム材等の被面削材に接触し、切削チップを保持する支持部は被面削材に直接接触しないことから、支持部に含まれる鉄は被面削材の純度に影響を与えることがないと考えられていた。このため、このような鉄を含む支持部を有するフライスカッターは高純度アルミニウムを含む種々のアルミニウムおよびアルミニウム合金およびアルミニウム以外の非鉄金属の面削にも用いられている。
そして、この知見を基にして、鉄を含まない材料、好ましくはアルミニウム合金、によりフライスカッターの支持部を形成することで、面削加工による高純度アルミニウム材の表面部での鉄の汚染(鉄の濃度の上昇)を抑制できるという本願発明に到達したものである。
最初に本発明に係るアルミニウム面削材の製造方法(すなわち、高純度アルミニウム材の面削加工方法)の詳細を説明し、続いて本願発明の製造方法により得られた好適な高純度アルミニウム面削材について説明する。
(1)フライスカッター
図1は、本願発明に係るフライスカッター10を示す斜視図である。図1では、構造を容易に理解できるように、下面(フライス加工時に被面削材である高純度アルミニウム材と対向する側の面)を上、上面(フライス盤に取り付ける側の面)を下にしてフライスカッター10を示している。
フライスカッター10は、切削チップ12と、切削チップ12を固定保持する支持部14とを有する。
支持部14は、好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金より形成されている。アルミニウムを主成分とする材料を用いることで鉄以外の不純物の侵入も抑制できるからである。
支持部14は、より好ましくは、アルミニウム合金より形成されている。鉄以外の不純物の侵入も抑制できることに加え、高純度アルミニウム材を高精度に面削加工するのに必要な剛性を容易に確保できるからである。
好ましいアルミニウム合金として、高い耐摩耗性、摺動性、高温強度を特徴とする、ハイシリコンアルミニウム合金を例示できる。
ハイシリコンアルミニウム合金とは、一般に過共晶Al−Si合金(Si含有量12.6%以上)のことであり、アルミ合金の基材中に初晶Siである晶出物が点在しており、その効果による高い耐摩耗性、摺動性、高温強度を特徴としている。
合金番号AC3A(Al−Si系)、AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系)、AC9A、AC9B(Al−Si−Cu−Mg系)に相当するアルミニウム合金が挙げられる。
従って、従来のフライスカッターの鋼より成る支持部と同様の形状であってよい。
これらの切削チップの中でも好ましいのは、表面にダイヤモンドコーティング層を有する超硬チップである。高純度アルミニウムを含む、純アルミニウムに対して高い切削性を有し、高い面削精度が得られるからである。
それぞれの切削チップ12は、その一部が支持部14の下面から突出するように固定されている。これによりフライスカッター10を用いて面削加工を行う際、支持部14が直接、被面削材に接触することなく、切断チップ12を被面削材に接触させることができる。
例えば、切削チップ12をろう付けにより支持部14に固定してよく、また支持部14が下面側に突出した複数の突出部を有し、それぞれの突起部に切削チップ12を固定してもよい。
次にフライスカッター10を用いてフライス加工を行う。
フライス加工は、フライス盤にフライスカッター10を取り付けた後、切削チップ12を被面削材である高純度アルミニウム材に接触させ、かつフライスカッター10を回転させることで行う。
フライスカッター10は、下面(図1では上方側)が被面削材である高純度アルミニウム材に対向するようにして、上面側(図1では下方側)をフライス盤に取り付ける。
フライス加工(面削加工)時には、フライスカッター10を、図1に示す中心軸Cが回転軸となるように回転させる。すなわち、面削により得ようとすると被切削材の平面に略平行な平面内で切削チップ10の刃先が回転するようにフライスカッター10を回転させる。
例えば、被面削材である高純度アルミニウム材を所定の送り速度で回転するフライスカッター10に対して相対的に移動させることにより、被面削材のより広い範囲を面削できる。この場合、多くのフライス盤で行われているように、フライス盤のテーブルの上に被面削材を配置し、テーブルを所定の送り速度で移動させることにより、被面削材を回転するフライスカッター10に対して相対的に移動してよい。
i) フライスカッター回転速度
フライスカッター10の回転速度は、400rpm(400回転/分)以上かつ800rpm(800回転/分)以下であることが好ましい。
400rpm未満では生産性が低く、800rpmを超えると、被面削材の温度が上昇し、焼付きが発生する場合があるからである。
送り速度は好ましくは、200mm/分以上かつ400mm/分以下であることが好ましい。
200mm/分未満では生産性が低く、400mm/分を超えると、被面削材の温度が上昇し、焼付きが発生する場合があるからである。
面削量(面削により除去する厚さ)は、面削を行うアルミニウム材の状態(例えば鋳造材か、圧延材であるか、表面の酸化被膜厚さ等)および用途に応じて適宜決定してよい。好ましい面削量は、例えば1mm以上かつ5mm以下である。
面削量が1mm未満では、表面欠陥と成りうる鋳造材の鋳肌および加工材表面の加工変質層の除去が不十分な場合があり、5mmを超えると、製品の歩留まりが大きく損なわれる場合があるからである。
上述の切削油として、フライス盤による面削加工に用いることができる任意の切削油を用いてよい。
好ましい切削油は、鉱物油(石油由来のアルカン類)を主成分(例えば質量比で50%以上)とする切削油、または植物油を主成分(例えば質量比で50%以上)とする切削油である。これらの好ましい切削油は、塩素系または無塩素系の極圧剤を含んでよい。
そして、必要に応じて、塩素系または無塩素系の極圧剤を含んでよい。
上述のフライス加工により面削したアルミニウム材は、必要に応じて、洗浄を行ってよい。洗浄により、例えば、フライス加工時に用いた切削油をアルミニウム材の表面から除去できる。
洗浄は、切削油の洗浄または脱脂に用いる任意の洗浄方法および/または洗浄液を用いて行ってよい。
好ましい洗浄液として、塩化メチレンを含む洗浄液を例示でき、より好ましくは塩化メチレンまたは塩化メチレンを主成分(例えば質量比で50%)とする洗浄液を例示できる。
以下に、被面削材である高純度アルミニウムについて詳述する。
フライス加工により面削するアルミニウム材は、純度が99.9995%以上(上述のように、質量比)のアルミニウムより成る。
このような高純度のアルミニウム材は、例えば、三層電解法により精製(精錬)して得た純度99.999%以上のアルミニウム材をさらに一方向凝固法により精製する等の既知の方法で得ることができる。
これらの6元素の含有量(濃度)の測定は、例えばICP発光分析により行うことができる。また、例えばGDMS(グロー放電質量分析)のような質量分析により測定することもできる。
これは、面削したアルミニウム材において、面削面(面削を行った面)の表面から2μmまでの範囲の鉄の濃度を深さ方向にGDMS分析し、得られたGDMS分析値の表面から2μmまでの範囲の鉄の平均濃度(ppm)から面削を行う前のアルミニウム材の鉄の濃度を引くことにより求めることができる。
GDMSによる深さ方向分析は、表面から例えば、0.1〜0.2μmおきに測定することが好ましい。測定間隔は一定であってもよく、また一定でなくてもよい。
本明細書ではこのようにして求めた鉄の濃度を「鉄の平均汚染濃度(2μm)」と呼ぶことがある。
上述したように、支持部14は、被面削材である高純度アルミニウム材と直接接触しない。従って、支持部14をアルミニウム合金により形成することにより面削を行った高純度アルミニウムの表面部の鉄の濃度(すなわち、表面部の鉄の平均汚染濃度)が低減される理由については、未だ明らかになっていない部分がある。
このような鉄粉等の一部は、被面削材に到達する。とりわけ、このような鉄粉等のなかでも切削チップと被切削材との接触部(すなわち、面削が行われいる部分)の近傍に到達した鉄粉等は、面削による加工発熱により加熱され、この結果、鉄が高純度アルミニウム材の表面部(例えば、表面部から2μm程度の領域)に拡散すると考えられる。
このため、例えば上述したフライスカッター回転速度、送り速度、面削量および切削油の種類等から選択される少なくとも1つのような面削条件を好適なものとすることで加工発熱(面削時の高純度アルミニウム材の温度上昇)を抑制することで、表面部の鉄濃度をより抑制できると考えられる。
本願発明に係る高純度アルミニウム材は、好ましくは中心部の純度(またはアルミニウム材全体の純度)が、99.9995%以上(上述の通り質量比)である。
純度が99.9995%以上の高純度アルミニウム材においては、表面から2μmまでの領域の鉄の平均汚染濃度が15ppmを超えると、電気抵抗が無視できないくらいに高くなる場合があり、この結果、喩え中心部の純度が99.9995%以上であっても電気伝導性および熱伝導性の両特性が著しく低下してしまう場合がある。
このように表面から2μmまでの領域の鉄の平均汚染濃度を確実に15ppm以下にできることにより、電気伝導性および熱伝導性の両特性が安定的に優れた面削材を得ることができる。
面削面がこのように優れた平滑性を有することで、加工変質層が低減され、表面スジや割れ等の表面欠陥を少なくすることができ、表面外観が美しく、良い状態に保持することができる。また、表面欠陥への鉄粉等の浸入リスクを低減することができ、表面部の鉄の濃度(鉄の平均汚染濃度)を効果的に抑制できると考えられる。
なお、十点平均粗さ(Rz)は、日本工業規格(JIS)JIS B 0601に規定された表面粗さである。
三層電解法で精製して得た純度99.999%以上の5N(ファイブナイン)アルミニウムを一方向凝固法により精製して純度99.9999%以上の6N(シックスナイン)アルミニウム材を得た。
より詳細には、不純物6元素について、鉄が0.059ppm、シリコンが0.37ppm、マンガンが0.004ppm、クロムが0.020ppm、モリブデンが0.001ppm、バナジウムが0.016ppmで、6元素合計で0.47ppmであった。すなわち、バルクでの鉄の濃度は0.059ppmであった。
これらの不純物元素は、GDMS(グロー放電質量分析)により測定した。
フライス盤を用いて、上述の面削用アルミニウム材の両面(主面)に、表1に示す条件によりフライス加工(面削加工)を施し、実施例1、2および比較例のサンプルを作製した。
用いたフライス盤は、(株)鳳工業製汎用フライス盤ME−3である。
実施例1、2および比較例の何れにおいても用いた切削チップは、超硬材料の表面にダイヤモンドコーティング層を有する同じ種類のものであった。
何れのサンプルにおいてもフライカッターの回転速度を800rpmとし、フライス盤のテーブルに載せた上述の面削用アルミニウム材を送り速度300mm/分で移動させた。
実施例1で用いた切削油は、鉱物油を主成分(鉱物油ベース)とし塩素系の極圧剤が添加されている、東洋化学商会株式会社製「たつぞうくん」である。
実施例2で用いた切削油は、植物油を主成分(植物油ベース)とし無塩素系の極圧剤が添加されている、東洋化学商会株式会社製「スーパーたつぞうくん」である。
比較例で用いた切削油は、鉱物油を主成分(鉱物油ベース)とし塩素系の極圧剤が添加されている、東洋化学商会株式会社製「たつぞうくん」である。
洗浄は、サンプルに液体の塩化メチレンを直接かけた後、10分以上自然乾燥させることにより行った。
これにより実施例1、2および比較例サンプルを得た。
得られたそれぞれのサンプルを、エタノールで表面を洗浄後、自然乾燥させて分析用サンプルを得た。
図3は、それぞれのサンプルの表面から2μmまでの領域における鉄の平均汚染濃度を示す。
光波干渉式表面粗さ測定器((有)伊藤エンジニア製センサーLK−G15)によりそれぞれのサンプルの面削面の十点平均粗さ(Rz)を測定した結果を表2に示す。
12 切削チップ
14 支持部
Claims (8)
- 純度が質量比で99.9995%以上であるアルミニウム材をフライス盤で面削加工する方法であって、
1)アルミニウム合金より成る支持部と、該支持部に固定された切削チップと、を含むフライスカッターを準備する工程と、
2)前記切削チップを前記アルミニウム材に接触させ、かつ該切削チップと該アルミニウム材が接触する部分に鉱物油または植物油を主成分とする切削油を供給しながら前記フライスカッターを回転させて面削加工を行う工程と、
を含むことを特徴とする面削加工する方法。 - 前記切削チップが、超硬合金と該超硬合金の上に形成されたダイヤモンドコーティングとを含んで成ることを特徴とする請求項1に記載の面削加工する方法。
- 前記工程2)において、前記フライスカッターの回転速度が400rpm〜800rpmであることを特徴とする請求項1または2に記載の面削加工する方法。
- 前記工程2)において、前記アルミニウム材を送り速度200mm/分〜400mm/分で移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の面削加工する方法。
- 前記工程2)において、面削量が1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の面削加工する方法。
- 前記工程2)により得た面削加工したアルミニウム材を、塩化メチレンを含む洗浄液により洗浄する工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の面削加工する方法。
- バルク純度が質量比で99.9995%以上であり、面削された表面を有し、前記面削された表面から深さ2μmまでの領域における鉄の平均濃度からバルク部の鉄の濃度を引いて求める鉄の平均汚染濃度が15ppm以下であることを特徴とするアルミニウム面削材。
- 前記面削された表面の十点平均粗さ(Rz)が5μm以下であることを特徴とする請求項7に記載のアルミニウム面削材。
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