JP5840517B2 - 表面品質に優れたほうろう材の製造方法 - Google Patents

表面品質に優れたほうろう材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5840517B2
JP5840517B2 JP2012021582A JP2012021582A JP5840517B2 JP 5840517 B2 JP5840517 B2 JP 5840517B2 JP 2012021582 A JP2012021582 A JP 2012021582A JP 2012021582 A JP2012021582 A JP 2012021582A JP 5840517 B2 JP5840517 B2 JP 5840517B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glaze
enamel
aqueous solution
drying
enamel layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2012021582A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013159807A (ja
Inventor
一典 大澤
一典 大澤
理祥 鴨木
理祥 鴨木
文春 吉田
文春 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Metal Products and Engineering Inc
Original Assignee
JFE Metal Products and Engineering Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Metal Products and Engineering Inc filed Critical JFE Metal Products and Engineering Inc
Priority to JP2012021582A priority Critical patent/JP5840517B2/ja
Publication of JP2013159807A publication Critical patent/JP2013159807A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5840517B2 publication Critical patent/JP5840517B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Glass Compositions (AREA)

Description

本発明は、生地表面にほうろう(琺瑯)層を形成してなるほうろう材の製造方法に係り、とくにほうろう層の表面品質向上に関する。
ほうろう材は、生地表面にほうろう(琺瑯)層を有する。生地としては、冷延鋼板、熱延鋼板、アルミめっき鋼板、ステンレス鋼板などが用いられている。なお、ほうろう用鋼板(鋼帯)としては、JIS G 3133(ほうろう用脱炭鋼板および鋼帯)に規定がある。また、アルミめっき鋼板としては、JIS G 3314(溶融アルミニウムめっき鋼板および鋼帯)に規定がある。
ほうろう材は、一般的に、上記した鉄板系生地に前処理を施したのち、SiO2、Na2O、B2O3などを主成分としたガラス質のフリット、顔料や粘土などのミル添加物と、水とをボールミルに装填し回転させ粉砕して得られたスラリー状のスリップ(以下、釉薬ともいう)を塗布する施釉工程と、塗布した釉薬を乾燥する乾燥工程と、乾燥された釉薬を焼成する焼成工程とを順次施して、製造される。
なお、上引き釉薬を直接生地に施釉−乾燥−焼成する「直接1回掛けほうろう」を除き、一般的な製造工程としては、図4に示すような下引き釉薬を施釉−乾燥−焼成する下引き1回掛けほうろうと、さらにその上に上引き釉薬を、施釉−乾燥−焼成する2回掛けほうろうとがある。
ほうろう材は、耐水性、耐熱性、耐食性、耐酸性、耐溶剤性などに優れ、古くから、鍋・釜などの器物類、洗面器・洗面台・台所流し台・浴槽などの家庭用品類、薬品・醸造などの貯蔵用タンク類、建物の内装外装・トンネル内壁などの建材類等に、使用されている。
さらに、近年では、ほうろう材は、学校・オフィスなどで使用されるチョークボード(黒板)やマーカーボード(白板)、さらには映写用スクリーンボードなどのボード類にも利用されている。例えば、ほうろう製黒板はJIS S 6007に、ほうろう製白板はJIS S 6052に、それぞれ規定されている。
ほうろう材は、上記したように、ガラス質のフリット、顔料や粘土などのミル添加物、水などで構成された釉薬を、生地に塗布して乾燥し焼き固めた(焼成した)ものであるため、陶磁器のようにほうろう層の内部には大、小の気泡が数多く存在する。これら気泡は、使用した釉薬に起因して形成されたものである。
とくに製造から相当時間経過し、経時変化(以下、エージングという)した釉薬には、製造時あるいは保管中にフリットの成分の中で水に溶けやすい成分である、例えばNa2O、B2O3、CaOなどが溶け出している。これらの物質は、気泡の生成原因となる物質であるといわれており、このような釉薬を使用してほうろう層を形成すると、釉薬に溶け出した気泡の生成原因となる上記したような物質が焼成時に分解して、泡を発生し、それが大きくなってほうろう層表面に現れ、表面欠陥となりやすいといわれている。
このような問題に対し、釉薬をエージングしにくくするため、従来から、例えば非特許文献1に示されるように、ボールミルで釉薬を製造する際に、ボールミル自体に水を掛けて冷却しながら運転するとか、でき上がった釉薬を温度の低いところで保管するなどの工夫を行っていた。
社団法人日本琺瑯工業会編:ほうろう技術ガイドブック、p.211、1996年10月発行、発行所:日本琺瑯工業会
しかしながら、ボールミル自体に水を掛けて冷却しながら運転するとか、でき上がった釉薬を温度の低いところで保管するなどの対策を実施するためには、冷却装置や、冷蔵装置などの設備を必要とし、経済的に問題を残していた。
このような設備を配設できない場合や、とくに夏場のように、夜でも気温が下がらない暑い季節においては、釉薬のエージングは避けられず、多少の表面品質劣化や、製品歩留り低下を懸念しながら操業しなければならないという問題があった。また、釉薬が長期保留にならないように、釉薬のミル引き量と操業とをマッチングさせて、短期間の間に釉薬を使い切るなどの緻密な操業管理を徹底する必要があるが、そのような操業管理を行うことが困難な場合もあり問題となっていた。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、エージングされた釉薬を使用しても、表面欠陥の発生を防止して優れた表面品質を有するほうろう材とすることができる、表面品質に優れたほうろう材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、施釉−乾燥−焼成後のほうろう層内の気泡形成におよぼす各種要因の影響について鋭意検討した。
まず、エージングされた釉薬のpHを測定したところ、エージングされた釉薬は、製造(ミル引きした)直後の釉薬に比べて、pHが高くなっていることを見出した。pHが高くなった釉薬を使用してほうろう層を形成すると、ほうろう層内に形成される気泡が大きくなる傾向を示すことを見出し、釉薬のpHを製造時の値近傍またはそれ以下まで低くすることを考えた。
そして、エージングした釉薬に、酸性水溶液を添加してpHを10.50以下に調整することにより、施釉−乾燥−焼成後のほうろう層内に発生する気泡の大きさが小さくなり、ほうろう層の表面欠陥の発生が顕著に抑制できることを見出した。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
下引き釉薬を、実験室(室温:約25℃)で30日間放置して、エージングさせた。通常、ミル引きした直後(製造直後)の下引き釉薬のpHは10.0程度である。一方、エージング後の下引き釉薬のpHは10.7となっていた。なお、下引き釉薬として、フリット分の質量%で、SiO2:30〜40%を含み、残部が、Na2O:10〜30%、CaO:5〜10%、B2O3:5〜10%、Al2O3:1〜10%、CuO:1〜5%、F2:1〜5%、MnO:1〜2%、Ni:1〜2%、CoO:0〜1%などを含有する釉薬を用いた。
エージングした下引き釉薬500ccに10%塩酸水溶液を15〜50cc添加して、pHを10.5〜9.0の範囲の下引き釉薬(4種)とした。また、エージングした下引き釉薬500ccに10%水酸化ナトリウム水溶液を5cc〜10cc添加して、pHが11.0〜12.0の範囲の下引き釉薬(2種)とした。
そして、生地用鋼板(大きさ:100×150mm)を用意し、前処理として、該鋼板を4%硫酸ニッケル水溶液中に1分間浸漬する処理(Ni処理)を施した。
ついで、生地の表裏面に、焼成後の膜厚が40μmになるように下引き釉薬をスプレー塗布する施釉を行った。ついで、施釉された生地を恒温槽(100℃)に装入し5分間乾燥した。ついで、乾燥された生地を電気加熱炉(800℃)に装入し2分間焼成し、焼成後、室温まで空冷し、下引き層を形成した。
ついで、下引き層の上層として、焼成後の膜厚が全体で100μmになるように、Ti酸化物系の上引き釉薬をスプレー塗布する施釉を行った。なお、上引き釉薬としては、フリット分の質量%で、SiO2:30〜40%を含み、残部が、TiO2:15〜25%、B2O3:2〜6%などを含有する釉薬を用いた。
施釉された生地を、ついで、恒温槽(100℃)に装入し5分間乾燥した。乾燥された生地をさらに、電気加熱炉(800℃)に装入し2分間焼成し、焼成後、室温まで空冷して、上引き層を形成した。
得られたほうろう材から、断面が観察面となるように組織観察用試験片を採取し、観察面を#320〜#1500のエメリー紙で研磨し、さらにバフ研磨を行い、水洗、乾燥し、ほうろう層内の気泡を観察した。
ほうろう層断面を、光学顕微鏡(倍率:200倍)で観察し、10視野について撮影した。得られた組織写真を用いて、ほうろう層断面における下引き釉薬と上引き釉薬の界面近傍:±25μm、横方向300μmの領域(面積:15000μm2)について、領域内に存在する気泡の個数、気泡が占める面積率を計測した。そして、気泡1個当たりの平均面積を算出し、その平均面積を用いて気泡の円相当直径(平均)を求めた。
使用した釉薬のpHとほうろう層内に存在する気泡(断面泡)の円相当直径(平均直径)との関係を図1に示す。図1から、エージングした下引き釉薬に塩酸を添加してpHを低下させることにより、施釉−乾燥−焼成後のほうろう層内に存在する気泡の平均直径が小さくなっていることがわかる。一方、エージングした下引き釉薬に水酸化ナトリウムを添加してpHを増加させると、施釉−乾燥−焼成後のほうろう層内に存在する気泡の平均直径は大きくなっている。また、気泡の平均直径は、ほうろう層表面に現れた泡欠陥(表面欠陥)と良く対応することも分かった。
これらの結果から、まず本発明者らは、エージングした釉薬では、つぎのようなことが生じているものと推測した。
釉薬では、含まれるガラス質のフリットからNa等の成分が溶出し、例えば、次(1)式
Na2O+H2O→2NaOH ‥‥(1)、
次(2)式
Na2SiO3+H2O→SiO2+2NaOH ‥‥(2)
で示されるように、NaOH等に変化する。そして、NaOH等(アルカリ成分)が、経時変化(エージング)により、さらに増大し、釉薬のpHが増大するものと考えられる。
そして、このようなエージングしてpHが増大した釉薬を、生地に施釉し、乾燥、焼成すると、つぎのような反応により、ほうろう層内で泡が生成、成長するものと推測した。
その釉薬が生地に施釉され乾燥されたのち、焼成中に、例えば、粘土中の結晶水が熱分解する次(3)式
2H2O→2H2+O2 ‥‥(3)
で示されるような反応や、あるいは鋼板表面が酸化される次(4)式
3Fe+4H2O→Fe3O4+4H2 ‥‥(4)
に示されるような反応で、新たに生成したH2と釉薬内のNaOHが反応して、次(5)式
2NaOH+H2→2Na+2H2O ‥‥(5)
に示されるような反応で、H2O(水蒸気)が発生し、ほうろう層内で気泡を生成、成長するものと考えられる。
そして、エージングした釉薬に、塩酸を添加することによって、ほうろう層内の気泡が減少する理由については現在のところ明確になっているわけではないが、本発明者らは、つぎのように考えている。
エージングした釉薬内に、塩酸HCl を添加することにより、次(6)式
NaOH+HCl→NaCl+H2O ‥‥(6)
のように、生成されたNaOH等のOHイオンがHClのHイオンで中和され、エージングにより増大したNaOH等が減少し、OHイオンによる悪影響が軽減され、上記した焼成中に生じる(5)式で示される反応が抑えられて、ほうろう層中における気泡の生成と成長が抑制されたものと考えられる。
さらに、本発明者らは、塩酸水溶液に代えて、同様の酸性水溶液である、硫酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液をエージングした釉薬(pH10.7)に添加し、塩酸水溶液添加と同様に釉薬のpHを9〜10.5になるように調整して、同様の条件で施釉−乾燥−焼成してほうろう材を作製し、ほうろう層断面に形成された気泡の平均粒径を測定した。なお、水溶液の濃度は10%とした。得られた結果を、使用した釉薬のpHとほうろう層内に存在する気泡(断面泡)の円相当直径(平均直径)との関係で図2に纏めて示す。
また、塩酸水溶液等の酸性水溶液に代えて、酸性ガスの一種である二酸化炭素ガスをエージングした釉薬(pH10.7)に吹き込んで、同様に釉薬のpHを9〜10.5になるように調整して、同様の条件で施釉−乾燥−焼成してほうろう材を作製し、ほうろう層断面に形成された気泡の平均粒径を測定した。得られた結果を図3に示す。
図2、図3から、図1と同様に、エージングした下引き釉薬に塩酸以外の酸性水溶液を添加して、あるいは酸性ガスである二酸化炭素ガスを吹き込んで、pHを低下させることにより、施釉−乾燥−焼成後のほうろう層内に存在する気泡の平均直径が小さくなっていることがわかる。
これらの結果から、エージングした釉薬に塩酸等の酸性水溶液を添加して、あるいは二酸化炭素ガス等の酸性ガスを吹き込んで、pHを低下することにより、エージングした釉薬を使用しても、表面欠陥の発生が抑制され、優れた表面品質を有するほうろう層を有するほうろう材とすることができるという結論に到達した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)生地に、釉薬を塗布する施釉工程と、塗布した釉薬を乾燥する乾燥工程と、焼成工程を順次施し、生地表面にほうろう層を形成するほうろう材の製造方法であって、前記釉薬が、酸性水溶液を添加してpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整したものであることを特徴とする表面品質に優れたほうろう材の製造方法。
(2)生地に、下引き釉薬を塗布する下引き施釉工程と、該塗布した下引き釉薬を乾燥する下引き乾燥工程と、乾燥した下引き釉薬を焼成する下引き焼成工程を少なくとも1回以上施し、生地表面に下引きほうろう層を形成し、ついで、該下引きほうろう層の上層として、上引き釉薬を塗布する上引き施釉工程と、塗布した上引き釉薬を乾燥する上引き乾燥工程と、乾燥した上引き釉薬を焼成する上引き焼成工程を少なくとも1回施し、上塗りほうろう層を形成するほうろう材の製造方法であって、前記下引き釉薬が、酸性水溶液を添加してpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整したものであることを特徴とする表面品質に優れたほうろう材の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記酸性水溶液が、塩酸水溶液であることを特徴とするほうろう材の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記酸性水溶液を添加してpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整することに代えて、酸性ガスを吹き込んでpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整することを特徴とするほうろう材の製造方法。
(5)(4)において、前記酸性ガスが、二酸化炭素ガスであることを特徴とするほうろう材の製造方法。
本発明によれば、従来エージングして使用することができずに廃棄していた、高価な釉薬を再利用することが可能となり、製造コストの顕著な低減に繋がり、産業上格段の効果を奏する。また、エージングした釉薬を自然界に廃棄する必要もなくなり、地球環境の保全にも寄与するという効果もある。さらに、製造直後の下引き釉薬、上引き釉薬に、予め本発明を適用して、エージングが進行しにくくすることも可能になるという効果もある。
ほうろう層断面における断面泡の平均直径と釉薬のPHとの関係におよぼすエージングした釉薬への塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液添加の影響を示すグラフである。 ほうろう層断面における断面泡の平均直径と釉薬のPHとの関係におよぼすエージングした釉薬への硫酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液添加の影響を示すグラフである。 ほうろう断面における断面泡の平均直径と釉薬のPHとの関係におよぼすエージングした釉薬への二酸化炭素ガス吹込みの影響を示すグラフである。 ほうろう製品の製造工程の概要を示す説明図である。
ほうろう材の製造方法には、一般に、上引きほうろう層のみの直接1回掛けほうろうを除き、下引きほうろう層のみの1回掛けと、下引きほうろう層とその上層として上引きほうろう層を形成する2回掛けとする方法がある。ほうろう材の製造工程の概要を、図4に示す。以下、2回掛けの場合を例にとり説明する。
まず、生地を用意する。生地は、熱延鋼板、冷延鋼板、アルミめっき鋼板、ステンレス鋼板などの鉄系材料とすることが好ましい。用意された生地に、前処理を施す。前処理は、とくに限定する必要はないが、脱脂、硫酸水溶液で洗浄する硫酸酸洗、硫酸ニッケル水溶液に浸漬する硫酸ニッケル処理(Ni処理)、中和、乾燥等の、常用の処理を施すことが好ましい。
前処理を施された生地には、ついで、下引き釉薬(グランドコートともいう)を塗布する施釉工程が施される。塗布(施釉)方法は、とくに限定する必要はなく、スプレー塗布、ロールコーターの常用の塗布(施釉)方法がいずれも適用できる。また、塗布量は、形成するほうろう層厚さに応じて適宜決定すればよい。
なお、下引き釉薬は、SiO2、Na2O、B2O3、CaO、Al2O3などを主成分としたガラス質のフリットと、粘土などのミル添加物と、水とを、ボールミル等に装填し粉砕して、生成されるスラリー状のスリップである。下引き釉薬として一般的な組成は、フリット分の質量%で、SiO2:30〜50%を含み、残部が、Na2O:10〜30%、CaO:1〜20%、B2O3:5〜25%、Al2O3:1〜10%、CuO:1〜10%、F2:1〜7%、MnO:0〜6%、NiO:0〜6%、CoO:0〜6%などを含有する組成である。
本発明では、施釉工程で使用する下引き釉薬は、pH:10.5以下に調整されたものを使用する。なお、ミル引き直後であれば、pH:10程度を示し、とくにpHを調整する必要はないが、エージングした釉薬であれば、酸性水溶液を添加して、あるいは酸性ガスの吹込みにより、pH:10.5以下に調整する。
釉薬のpHが10.5を超えると、施釉−乾燥−焼成後のほうろう層内の気泡が粗大化し、ほうろう層表面まで浮上するか、あるいはほうろう層外へ放出され、泡、毛穴、ピンホール、黒点などを形成し、表面欠陥を増加させる。このため、本発明では酸性水溶液、あるいは酸性ガスの吹込みにより調整する釉薬のpHは10.5以下に限定した。なお、好ましくは、10.3以下である。
なお、調整するpHの下限については、pHが下がり過ぎると、ほうろうと鋼板の密着性が低下しやすくなる恐れがあること、あるいは釉薬の粘性変化が大きくなり、ほうろう層の表面仕上り状況の変動が大きくなりやすい。このため、pHの極端な低下は避け、pH:8.0以上とする。
また、添加する酸性水溶液は、酸性水溶液であればよく、とくにその種類を限定する必要はないが、塩酸水溶液、硫酸水溶液、酢酸水溶液、あるいは容易に入手しやすい炭酸水溶液(市販の炭酸飲料水)とすることが好ましい。その中でも塩酸水溶液は、それ以外の酸性水溶液に比べて、釉薬の粘性変化が小さいことから好ましい。
また、酸性水溶液の添加に代えて、酸性ガスを吹き込んでも、同様に、釉薬のpHを低下させることができる。また、吹き込む酸性ガスとしては、二酸化炭素ガス、窒素酸化物等が例示できるが、人体および自然環境破壊の観点から、二酸化炭素ガスとすることが好ましい。なお、ドライアイス(固形)を粉砕して粉状にしたドライアイス粉を釉薬中に添加しても同じ効果がある。二酸化炭素ガスを吹き込んだ場合には、次の(7)式、(8)式に示すような反応が進行して、NaOH 起因のOHによる悪影響が軽減されたものと考えている。
CO2+H2O→HCO3+H ‥‥(7)
H+NaOH→Na+H20 ‥‥(8)
なお、酸性ガスは、健康上、無害なものであればよく、とくに二酸化炭素ガスに限定されない。
施釉工程に続き、塗布された下引き釉薬を乾燥する下引き乾燥工程を施す。乾燥は、100〜500℃に加熱された乾燥炉に装填し、好ましくは30秒〜10分間保持する。
さらに、下引き乾燥工程に引続いて、乾燥された下引き釉薬を焼成する下引き焼成工程を施す。焼成は、750℃以上好ましくは850℃以下の温度に加熱された加熱炉に装入し、好ましくは1〜10分間保持する。これにより、生地表面に所望膜厚の下引きほうろう層を形成することができる。所望の下引きほうろう層を形成するために、下引き施釉工程−下引き乾燥工程−下引き焼成工程は、少なくとも1回は必要で、膜厚が薄かったり、焼き切れなどの不測の事態が発生した場合にはさらに繰返すことが必要となる。
下引きほうろう層を形成したのち、下引きほうろう層の上層として、上引きほうろう層を形成する。上引きほうろう層は、下引きほうろう層のうえに、例えば耐薬品性に優れたフリットや顔料などが配合された上引き釉薬(カバーコートとも言う)を塗布する上引き施釉工程、さらに、上引き乾燥工程、上引き焼成工程を少なくとも1回施して、形成される。なお、複数回施してもよい。
上引き釉薬として一般的な組成は、フリット分の質量%で、SiO2:30〜40%を含み、残部が、TiO2:15〜25%、B2O3:2〜6%などを含有する組成である。このような組成では、下引き釉薬に比較して、エージングによる特性の劣化の程度は低いが、皆無ではない。
上引きほうろう層の形成に際しては、下引きほうろう層形成時と同様に、上引き施釉工程において、上引き釉薬に酸性水溶液を添加あるいは酸性ガスを吹き込んでpHを10.5以下に調整することが好ましい。これにより、上引き釉薬がエージングしている場合にはとくに、下引き釉薬と同様に、とくに表面品質が向上するという効果が期待できる。しかし、上引き施釉工程で、上引き釉薬に酸性水溶液を添加すると、ほうろう表面の色彩、耐薬品性等の特性に影響する恐れがある場合には、上引き釉薬への酸性水溶液の添加は避けたほうがよい。
上引き施釉工程後、さらに、常用の上引き乾燥工程、上引き焼成工程を施す。
上引き乾燥工程における乾燥は、100〜500℃に加熱された乾燥炉に装入し、好ましくは1〜10分間保持する処理とすることが好ましい。
さらに、上引き乾燥工程に引続いて、乾燥された上引き釉薬を焼成する上引き焼成工程を施す。上引き工程における焼成は、750℃以上好ましくは850℃以下の温度に加熱された加熱炉に装入し、好ましくは1〜10分間保持する処理とすることが好ましい。
なお、釉薬の塗布(施釉)量は、とくに限定する必要はなく、形成するほうろう層に応じて、適宜決定すればよい。
つぎに、本発明をさらに、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
ほうろうの連続焼成ラインを利用して、板厚0.35mm×板幅1200mmの鋼帯に、まず前処理として、脱脂処理および液温:70℃の硫酸ニッケル水溶液に浸漬するNi処理を施した。ついで、この前処理済鋼帯を生地として、連続的に下引きほうろう層と、その上層として上引きほうろう層を形成し、ほうろう材とした。
なお、下引きほうろう層の形成では、原材料をミル引きして釉薬としてから30日経過した、密着促進材であるNiとCoを含んだ系統の下引き釉薬(pH10.7)100リットルに、2%塩酸水溶液、2%硫酸水溶液を、表1に示すように種々変化した添加量(リットル)で混合し、撹拌した釉薬(下引き釉薬)を利用し、生地(鋼板)にスプレー塗布して、表1に示すライン速度で連続的に下引き施釉した。また、塩酸水溶液、硫酸水溶液に代えて、二酸化炭素ガスを表1に示す添加量、吹き込んだ。なお、市販のpH測定器で、混合したのちの釉薬のpHを測定し、表1に付記した。
下引き施釉に際しては、焼成後の膜厚で表裏面で約40μmとなるように、行った。施釉後、300℃の乾燥炉に装入し、1分間保持する乾燥工程と、770〜802℃の加熱炉に装入し、2分間保持する焼成工程を施し、下引きほうろう層を形成した。なお、使用した下引き釉薬の組成は、フリット分の質量%で、SiO2:30〜50%を含み、残部が、Na2O:10〜30%、CaO:1〜20%、B2O3:5〜25%、Al2O3:1〜10%、CuO:1〜10%、F2:1〜7%、MnO:0〜6%、NiO:0〜6%、CoO:0〜6%などを含有する組成であった。
ついで、冷却後、下引きほうろう層の上層として、上引きほうろう層を形成した。上引きほうろう層の形成に際しては、TiO2系の上引き釉薬を使用して、スプレー塗布して、上引き施釉した。上引き施釉に際しては、焼成後の膜厚で、上引きほうろう層と下引きほうろう層との合計で約110μmとなるように行った。
なお、上引き施釉は、pH:8.5程度のエージングしていない上引き釉薬を主として使用した。一部の上引き施釉では、エージングした上引き釉薬(pH:9.0)に酸性水溶液として、塩酸水溶液を添加してpH:8.0とした上引き釉薬を使用した。
施釉後、120℃の乾燥炉に装入し、1分間保持する乾燥工程と、表に示す温度の加熱炉に装入し、2分間保持する焼成工程を施し、上引きほうろう層を形成した。なお、使用した上引き釉薬の組成は、フリット分の質量%で、SiO2:30〜40%を含み、残部が、TiO2:15〜25%、B2O3:2〜6%などを含有する組成であった。
なお、エージングしたままの下引き釉薬を利用して、施釉した場合を従来例とした。
得られたほうろう材について、ほうろう層内の気泡を観察した。
得られたほうろう材から、断面が観察面となるように組織観察用試験片を採取し、観察面を#320〜#1500のエメリー紙で研磨し、さらにバフ研磨を行ったのち、水洗、乾燥し、断面組織観察に供した。ほうろう層断面を、光学顕微鏡(倍率:200倍)で観察し、10視野について撮影した。得られた組織写真を用いて、ほうろう層断面における下引き釉薬と上引き釉薬の界面を挟んで厚さ方向に±25μm、界面と平行する方向に300μmの領域(面積:15000μm2)について、領域内に存在する気泡の個数、気泡が占める面積率を計測した。そして、気泡1個当たりの平均面積を算出し、その平均面積を用いて、気泡の円相当直径(平均)を算出した。
得られた結果を、表1に示す。
Figure 0005840517
本発明例はいずれも、ほうろう層内の気泡が従来例に比べて著しく小さくなっており、従来例に比べて、表面品質が著しく向上したほうろう材となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、ほうろう層内の気泡が従来例とほぼ同じ平均直径を有し、従来例とほぼ同等の表面品質しか有していないことがわかる。

Claims (5)

  1. 生地に、釉薬を塗布する施釉工程と、塗布した釉薬を乾燥する乾燥工程と、焼成工程を順次施し、生地表面にほうろう層を形成するほうろう材の製造方法であって、
    前記釉薬が、酸性水溶液を添加してpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整したものであることを特徴とする表面品質に優れたほうろう材の製造方法。
  2. 生地に、下引き釉薬を塗布する下引き施釉工程と、該塗布した下引き釉薬を乾燥する下引き乾燥工程と、乾燥した下引き釉薬を焼成する下引き焼成工程を少なくとも1回以上施し、生地表面に下引きほうろう層を形成し、ついで、該下引きほうろう層の上層として、上引き釉薬を塗布する上引き施釉工程と、塗布した上引き釉薬を乾燥する上引き乾燥工程と、乾燥した上引き釉薬を焼成する上引き焼成工程を少なくとも1回施し、上塗りほうろう層を形成するほうろう材の製造方法であって、
    前記下引き釉薬が、酸性水溶液を添加してpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整したものであることを特徴とする表面品質に優れたほうろう材の製造方法。
  3. 前記酸性水溶液が、塩酸水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載のほうろう材の製造方法。
  4. 前記酸性水溶液を添加してpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整することに代えて、酸性ガスを吹き込んでpH:8.0以上かつpH:10.50以下に調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のほうろう材の製造方法。
  5. 前記酸性ガスが、二酸化炭素ガスであることを特徴とする請求項4に記載のほうろう材の製造方法。
JP2012021582A 2012-02-03 2012-02-03 表面品質に優れたほうろう材の製造方法 Expired - Fee Related JP5840517B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012021582A JP5840517B2 (ja) 2012-02-03 2012-02-03 表面品質に優れたほうろう材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012021582A JP5840517B2 (ja) 2012-02-03 2012-02-03 表面品質に優れたほうろう材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013159807A JP2013159807A (ja) 2013-08-19
JP5840517B2 true JP5840517B2 (ja) 2016-01-06

Family

ID=49172326

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012021582A Expired - Fee Related JP5840517B2 (ja) 2012-02-03 2012-02-03 表面品質に優れたほうろう材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5840517B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111351336A (zh) * 2018-12-21 2020-06-30 青岛经济技术开发区海尔热水器有限公司 一种内胆烘干系统

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5139712A (ja) * 1974-10-02 1976-04-02 Ferro Enamels Japan Kogetsukanaihoronoseizoho
US4476156A (en) * 1983-03-10 1984-10-09 The United States Of America As Represented By The United States Department Of Energy Low temperature process for obtaining thin glass films
JPH04362182A (ja) * 1991-06-07 1992-12-15 Taketo Sakuma ゾル・ゲル法によるセラミック体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013159807A (ja) 2013-08-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2545199B1 (de) Metallische oberflächen mit dünner, glas- oder keramikartiger schutzschicht mit hoher chemischer beständigkeit und verbesserten antihaft-eigenschaften
CN102181862B (zh) 一种搪瓷钢板的制备方法
CN103693996B (zh) 光触媒构件
JP5611976B2 (ja) 高耐薬品性を有するガラス質顔料保護層又はガラスセラミック顔料保護層を備える金属物品
TWI413706B (zh) The manufacturing method of the water supply equipment for the house and the water supply equipment for the house
DE102004001097A1 (de) Metallische Substrate mit verformbarer glasartiger Beschichtung
EP2125649A1 (de) Beschichtungszusammensetzung
CN113677641A (zh) 自清洁抗菌玻璃质搪瓷板
KR101275782B1 (ko) 무기 도료 조성물 및 이를 제조하는 방법
JP5840523B2 (ja) 優れた表面品質を有するほうろう材の製造方法
JP5840517B2 (ja) 表面品質に優れたほうろう材の製造方法
CN106467361A (zh) 一种无铅易洁日用瓷及其制法
CN116730616A (zh) 一种铸铁搪瓷锅的搪瓷底釉料和低温搪瓷制备方法
EP2172438A1 (en) Sanitary ware and process for production thereof
KR101149899B1 (ko) 타일 코팅액 조성물 및 이를 이용한 타일
CN110357433A (zh) 一种耐高温耐热冲击珐琅涂层及其制备方法和应用
CN106892682A (zh) 一种烹饪器具的制造方法
CN108868038A (zh) 防火、耐高温烤瓷铝板
CN104974560B (zh) 一种易于清洁且使用寿命长的五金洁具及其生产方法
CN104621875B (zh) 一种加工珍珠的方法
ES2609262T3 (es) Esmaltado sin escamas de chapa de acero no esmaltable
Chen et al. Zinc–rich inorganic silicate anticorrosive coating incorporating muscovite for steel bars in sand–based autoclaved aerated concrete
CN104404515B (zh) 用于烤炉的搪瓷钣金件的制备方法及烤炉
JP2002194494A (ja) ほうろう用鋼板、その製造方法、ほうろう製品、およびその製造方法
CN105623422A (zh) 一种纳米改性内墙乳胶漆

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20130717

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20140326

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141201

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150617

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150623

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150819

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151110

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151111

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5840517

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees