JP5840420B2 - 海流発電装置 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、海流発電装置に関する。
水を動力として用いる発電システムには、ダムなどの高低差を利用した水車による発電、海の波力、潮汐を利用する発電、浸透膜や温度差を利用する発電など数多くの種類が存在する。中でも大容量のエネルギが容易に得られる発電システムは、高低差を利用する発電システム以外では、潮流や海流などの海水の流れを利用する発電システムである。
しかしながら、海水の流れを利用する潮流発電システムや海流発電システムは、大容量機に関して改良の余地を残しており、欧州の一部で先行して開発が進められている。
ここで、海流(又は潮流)発電システムは、海流を受けて回転する翼や発電機本体などを含む種々の設備が海中に設置されることになるため、海中に存在する生態系への影響を考慮する必要がある。具体的には、回転中の翼の端部で生じる渦の影響で魚類などが死傷する場合が考えられる。このため、発電の効率の低下を極力抑えつつこの渦の発生を低減することの可能な発電装置の開発が望まれている。
米国特許第7,530,224号公報 米国特許第7,425,772号公報
本発明が解決しようとする課題は、翼の端部での渦の発生を効率的に低減することができる海流発電装置を提供することである。
実施の形態の海流発電装置は、海底に固定される。この海流発電装置は、回転軸、翼水流発生部、取水部及び導水路を備えている。回転軸は、発電機に動力を伝達する。翼は、回転軸に対して基端部が一体的に固定され、第1の水流としての海流を受けて回転軸と共に回転する。水流発生部は、翼の先端部分に設けられ、回転中の翼の圧力面側から負圧面側へこの翼の先端を乗り越えて回り込む第2の水流を抑えるための第3の水流を発生させる。取水部は、海流に沿った方向から海水を取り入れる。導水路は、取水部によって取り入れられた海水を翼の内部で導水する。さらに、前記水流発生部は、導水路によって導水された海水を翼の先端部分の端面から吐出させる吐出孔を有する。
第1の実施形態に係る水流発電装置の構成を示す側面図。 翼端渦について模式的に示す側面図。 翼を先端側からみた状態で翼端渦の発生原理を説明するための斜視図。 図1の水流発電装置が備えた水流発生部の機能を説明するための図。 第2の実施形態に係る水流発電装置の構成を示す側面図。 図5の水流発電装置を示す正面図。 図5の水流発電装置が備えた翼の先端部分の構造を示す図。 第3の実施形態に係る水流発電装置が備えた翼の先端部分の構造を示す図。 第4の実施形態に係る水流発電装置が備えた翼の先端部分の構造を示す図。 第5の実施形態に係る水流発電装置が備えた翼の内部構造を示す図。 図10に示す翼をその長手方向に沿った方向からみた断面図。 第6の実施形態に係る水流発電装置が備えた翼の先端部分の構造を示す図。 図1、図5に示す水流発電装置と設置方法が異なる他の水流発電装置を示す斜視図。
以下、実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施の形態]
図1に示すように、本実施形態の水流発電装置1は、キャップ2と、複数の翼3と、回転軸5と、ナセル7と、支柱9と、を主に備えたプロペラ型の海流発電(又は潮流発電)システムである。
水流発電装置1は、海水に対しての耐腐食性の高い材料や、耐腐食性の高い塗料をコーティングした材料を用いた海底固定式の装置である。支柱9の下端部は、例えば水深200mを超える海底に固定される。一方、支柱9の上端部は、ナセル7を底部側から支持する。
ナセル7は、発電機を内蔵する筐体である。回転軸5は、ナセル7内の発電機に動力を伝達する。つまり、回転軸5の一端部(後端部)は、ナセル7内の発電機にカップリング機構などを介して連結されている。一方、回転軸5の他端部(先端部)には、キャップ2が固定されている。
キャップ2は、図1に示すように、略円錐形状に形成されており、球状に膨出させた頂点部分2a、及びわずかに中央部分を凹ませた傾斜面2bを有する。キャップ2は、回転軸5と同軸的に配置されると共に、その頂点部分2aが、海流(第1の水流F1)の方向と対向する向きで回転軸5に固定されている。このようなキャップ2は、頂点部分2aで受けた海流(第1の水流)を、傾斜面2bによって放射状に分散して各翼3側へ送る水流分散部として機能する。
翼3は、例えば3つ設けられている。各翼3は、回転軸5に対して基端部3aが一体的に固定され、海流(第1の水流)を受けて回転軸5と共に回転する。具体的には、翼3のぞれぞれは、回転軸5の軸方向におけるキャップ2とナセル7との間に配置されている。さらに、各翼3は、それぞれの基端部3aが回転軸5の軸まわりに120°の間隔をおいて各々固定されている。
より詳細には、各翼3のそれぞれの基端部3aは、例えば、ハブやロータなどを介して回転軸5に固定されている。また、回転軸5が一定の方向に回転する回転力を翼3のそれぞれから得られるように、個々の翼3は、圧力面(正圧面)及び負圧面のそれぞれが一定の向きにそろう形状に形成されている。なお、図1では、翼3の先端部分3bの構造を視覚的に把握しやすくするために、図1中の上下の翼3のひねられた形状を模式的に図示している。
このように構成された各翼3は、海流を受けてキャップ2及び回転軸5と共に一体となって回転することにより、海流を回転エネルギに変換し、さらに、出力軸としての回転軸5は、この回転力(動力)をナセル7内の発電機に伝達する。
ここで、本実施形態の水流発電装置1を用いて海流発電を行う場合、日本近海では例えば対馬海流、黒潮、親潮などが流れる海域を利用することが可能である。一方、水流発電装置1で潮流発電を行う場合、日本近海では最大級の鳴門海峡のうず潮などの利用を例示できる。しかしながら、プロペラ型の水流発電装置では、回転中の翼の先端部で生じる渦の影響で魚類などが死傷する場合が考えられ、海中に存在する生態系への影響を考慮する必要がある。
具体的には、図2、図3に比較例として示すように、海流である第1の水流F1を受けて回転方向Rに回転する翼10の先端部分10bでは、この翼10の圧力面P側から負圧面N側へこの翼10の先端を乗り越えて回り込む第2の水流F2が翼端渦Wとなって出現する。
そこで、本実施形態の水流発電装置1は、図4に示すように、全ての翼3の先端部分3bに水流発生部8が設けられている。水流発生部8は、翼端渦Wとなる第2の水流F2を抑えるための第3の水流F3を積極的に発生させる。この水流発生部8は、翼3の先端部分3bから流体を吐出(又は噴出)させる吐出部8aを有している。吐出部8aは、翼3の先端部分3bの端面に開口する複数の吐出孔8bによって構成されている。
これらの吐出孔8bから流体が吐出されることで発生する水流F3は、図4に示すように、翼3の圧力面側から負圧面側へ翼3の先端を乗り越えて回り込もうとする第2の水流F2を妨げるように作用し、この第2の水流F2を抑え込むことが可能となる。また、吐出孔8bが、翼3の先端部分3bのしかも端面に選択的に設けられていることで、翼3の回転力の低下、つまり発電効率の低下が極力抑えられる。
また、翼3の内部は例えば中空構造になっている。翼3内を通って吐出孔8bから吐出させる流体としては、水流発電装置1本体内に、例えば予め圧力を加えつつ蓄えておいた水や海水の他、適宜の気体などを例示することができる。また、水流発電装置1本体の外部から翼3内へ吐出用の水、海水、気体などを取り込める機構を水流発電装置1が予め備えていてもよい。
既述したように、本実施形態の水流発電装置1によれば、翼3の先端部分3bでの翼端渦Wの発生を効率良く低減することができる。これにより、海中の生態系へ水流発電が及ぼす影響を抑制することが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施形態を図5〜図7に基づき説明する。なお、これらの図において、図1〜図4に示した第1の実施形態中の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付与し重複する説明を省略する。
図5〜図7に示すように、本実施形態の水流発電装置11は、水流発電装置1に加え、取水部14及び導水路15をさらに有している。また、水流発電装置11は、キャップ2及び翼3に代えて、キャップ12及び翼13を備えている。
取水部14は、海流(第1の水流F1)に沿った方向から流水(海水)を取り入れる。導水路15は、取水部14から取り入れた流水をそれぞれの翼13の内部を通して吐出部8a(複数の吐出孔8b)へと導く。取水部14は、図5、図6に示すように、キャップ12の頂点部分12aに形成された取水孔14a、及び、キャップ12の傾斜面12bに形成された複数の取水孔14bを有する。
翼13は、内部が中空構造で構成されている。具体的には、翼13は、例えば圧力面側を構成するプレートと負圧面側を構成するプレートとの周縁部どうしを接合して形成されている。導水路15は、中空の翼13内に例えば導水用のパイプを配置することで形成されている。図7に示すように、導水路15は、翼13の長手方向に沿って延びる主水路15aと、翼13の先端部分13bの内部で主水路15aから各吐出孔8bに向けてそれぞれ分岐する複数の分岐水路15bと、を備えている。
したがって、本実施形態の水流発電装置11によれば、キャップ12表面の取水孔14a、14bによって海流(第1の水流F1)に沿った方向から取り入れた海水を、導水路15を介して各吐出孔8bから吐出(第3の水流を発生)させることで、翼13の先端部分13bでの翼端渦の発生を効果的に低減することができる。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施形態を図8に基づき説明する。なお、図8において、図7に示した第2の実施形態中の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付与し重複する説明を省略する。
本実施形態の水流発電装置は、図8に示すように、第2の実施形態の翼13に代えて翼23を備えている。翼23は、導水路15の分岐水路15bに代えて分岐水路15cを有する。この分岐水路15cには、水流増勢部22が設けられている。水流増勢部22は、分岐水路15c内の流水を通す開口面積を、取水部側から吐出部8a(吐出孔8b)側へ向かう方向に除々に縮小させるように構成され、ベルヌーイの定理に基づき水流を増勢する。
したがって、本実施形態の水流発電装置によれば、分岐水路15cの水流増勢部22で増勢された水流を各吐出孔8bから吐出(第3の水流を発生)させることで、翼23の先端部分23bでの翼端渦の発生をより効果的に低減することができる。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施形態を図9に基づき説明する。なお、図9において、図3、図4に示した第1の実施形態中の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付与し重複する説明を省略する。図9は、第4の実施形態に係る水流発電装置が備えた翼をその先端側からみた斜視図である。
本実施形態の水流発電装置は、図9に示すように、第1の実施形態の翼3に代えて翼33を備えている。翼33には、取水部24が設けられている。取水部24は、翼33における海流(第1の水流F1)を直接受ける部位に形成された複数の取水孔24aを有する。さらに、翼33には、各取水孔24aから取り入れた流水を当該翼33の内部を通して各吐出孔8bへとそれぞれ導く複数の導水路35が形成されている。
したがって、本実施形態の水流発電装置によれば、翼33表面の複数の取水孔24aによって海流(第1の水流)に沿った方向から取り入れた海水を、導水路35を介して各吐出孔8bから吐出(第3の水流を発生)させることで、翼端渦の発生を効果良く低減することができる。また、第3の実施の形態と同様に、導水路35に水流増勢部を設けることで、翼端渦の発生をより効果的に抑えることが可能となる。
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施形態を図10及び図11に基づき説明する。なお、図10、図11において、図3、図4に示した第1の実施形態中の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付与し重複する説明を省略する。ここで、図10は、第5の実施形態に係る水流発電装置が備えた翼をその厚さ方向に沿った方向からみた図である。図11は、図10に示す翼をその長手方向に沿った方向からみた断面図である。
本実施形態の水流発電装置は、図10及び図11に示すように、第1の実施形態の翼3に代えて翼43を備えている。また、この水流発電装置は、第2の実施形態の導水路15に代えて、導水路45を備えている。翼43は、例えば圧力面側を構成するプレートと負圧面側を構成するプレートとの周縁部どうしを接合して形成されており、内部が中空構造で構成されている。
さらに、この翼43は、補強用の複数の梁(フレーム)42を内部に有している。これらの梁42は、翼43の内部で例えば格子状に配置されている。また、翼43の内部には、前述した導水路45が設けられている。この導水路45は、梁42どうしの間の間隙で構成されている。
したがって、本実施形態の水流発電装置によれば、翼43の内部に複数の梁42を配置することによって同時に導水路45を形成することができるので、導水路形成用のパイプなどを別途配置する必要がなく、しかも翼43本体の機械的強度を高めることができる。
また、この水流発電装置において、導水路45内の流水を通す開口面積を、取水部側から吐出部(吐出孔)側へ向かう方向に除々に縮小させるようにして梁42を構成することで、第3の実施の形態と同様に、吐出部から吐出させる水流を増勢することができ、これにより、翼端渦の発生を効果的に抑制することができる。
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施形態を図12に基づき説明する。なお、図12において、図4に示した第1の実施形態中の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付与し重複する説明を省略する。
本実施形態の水流発電装置は、図12に示すように、第1の実施形態の翼3に代えて翼53を備えている。この翼53は、翼3の水流発生部8に代えて水流発生部58を備えている。この水流発生部58は、翼53の先端部分53bの圧力面(正圧面)Pと負圧面Nとの間を貫通する複数の貫通孔58aを有している。
これらの貫通孔58aにより、圧力面Pと負圧面Nとの圧力差が緩和されることなり、図4に示すように、翼3の圧力面P側から負圧面N側へ翼3の先端を乗り越えて回り込む第2の水流F2を抑えることが可能となる。また、貫通孔58aが、翼53の先端部分53bに選択的に設けられていることで、翼53の動力の低下(発電効率の低下)を極力抑えることができる。
このように、本実施形態の水流発電装置によれば、翼53の先端部分53bでの翼端渦の発生を低減することができる。また、貫通孔58aの形成位置を避けるようにして、第1の実施形態と同様に複数の吐出孔8b(水流発生部8)を翼53の先端部分53bに設けることで、翼端渦の発生をより効果的に低減することが可能となる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
また、例えば図1及び図5では、水流発電装置を支柱で海底に固定する固定式の水流発電装置を例示したが、これに代えて、図13に示すように、係留式の水流発電装置61を適用してもよい。この水流発電装置61は、水中での浮力を発生させる構造体62によりナセル7を介して水流発電装置本体が支持されている。この構造体62は、係留ワイヤ63によって海底にアンカ部64を介して固定(アンカ)されている。上述した第1〜第6の実施形態の水流発電装置をこのような方式で設置することも可能である。
また、第1〜第6の実施形態では、主に海流発電や潮流発電など、海水の流れを利用した発電について例示したが、水深方向に対して直交する方向から水流を得られる環境であれば、海中以外の水中でも、第1〜第6の実施形態の水流発電装置を適用することが可能である。
1,11,61…水流発電装置、2,12…キャップ、2a,12a…頂点部分、2b,12b…傾斜面、3,13,23,33,43,53…翼、3a…翼の基端部、3b,13b,23b,53b…翼の先端部分、5…回転軸、7…ナセル、8,58…水流発生部、8a…吐出部、8b…吐出孔、14,24……取水部、14a,14b,24a…取水孔、15,35,45…導水路、15a…主水路、15b,15c…分岐水路、22…水流増勢部、42…梁、58a…貫通孔、F1…第1の水流(海流)、F2…第2の水流、F3…第3の水流、N…負圧面、P…圧力面(正圧面)、R…回転方向、W…翼端渦。

Claims (6)

  1. 海底に固定される海流発電装置であって、
    発電機に動力を伝達する回転軸と、
    前記回転軸に対して基端部が一体的に固定され、第1の水流としての海流を受けて前記回転軸と共に回転する翼と、
    前記翼の先端部分に設けられ、回転中の前記翼の圧力面側から負圧面側へこの翼の先端を乗り越えて回り込む第2の水流を抑えるための第3の水流を発生させる水流発生部と、
    前記海流に沿った方向から海水を取り入れる取水部と、
    前記取水部によって取り入れられた海水を前記翼の内部で導水する導水路と、
    を備え、
    前記水流発生部は、前記導水路によって導水された海水を前記翼の先端部分の端面から吐出させる吐出孔を有する、海流発電装置。
  2. 前記回転軸と同軸的に配置され、かつ前記海流と対向する向きに膨出した頂点部分と凹みを有する傾斜面とを含み、受けた前記海流を放射状に分散して前記翼側へ送る水流分散部をさらに具備し、
    前記取水部は、前記頂点部分に形成された第1の取水孔と前記傾斜面に形成された複数の第2の取水孔とを有する、
    請求項1記載の海流発電装置。
  3. 前記導水路は、海水を通す開口面積を、前記取水部側から前記吐出孔側へ向かう方向に除々に縮小させて水流を増勢する水流増勢部を含む、
    請求項1又は2記載の海流発電装置。
  4. 前記取水部は、前記翼における前記海流を直接受ける部位に形成された第3の取水孔を有する、
    請求項1ないし3のいずれか1項に記載の海流発電装置。
  5. 前記翼は、中空構造であると共に補強用の複数の梁を内部に有し、
    前記導水路は、前記梁どうしの間の間隙で構成されている、
    請求項1ないし4のいずれか1項に記載の海流発電装置。
  6. 前記水流発生部は、前記翼の先端部分の圧力面と負圧面との間を貫通する貫通孔を有する、
    請求項1ないし5のいずれか1項に記載の海流発電装置。
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