JP5838994B2 - 電極材料と電極形成用ペースト、電極板及びリチウムイオン電池並びに電極材料の製造方法 - Google Patents
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Description
このような二次電池としては、例えば、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウムイオン電池等が知られている。
また、最近では、エネルギー技術と住宅とのコラボレーションとしてHEMS(ホームエネルギー・マネッジメント・システム)が知られており、スマート家電や電気自動車、あるいは太陽光発電等、家庭の電気に関わる情報と制御システムを集中することで、自動制御、電力需給の最適化等を管理し、賢くエネルギーを消費するシステムが注目されている。
そこで、電子伝導性を向上させた電極材料として、例えば、LixAyDzPO4(但し、AはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの群から選択された少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択された少なくとも1種、0<x≦2、0<y≦1、5≦z≦1.5)からなる1次粒子を複数個集合して二次粒子とし、かつ、これら二次粒子間に炭素等の電子伝導性物質を介在させた電極材料やその製造方法が提案されている(特許文献1、2)。
このような耐久性劣化の要因としては、電極材料から電解液にLi以外の金属不純物が溶出することが挙げられる。すなわち、電解液中へLi以外の金属不純物が溶出した場合、この金属不純物が負極表面に電析し、負極の表面に存在する堆積層(SEI:Solid Electrolyte Interphase)が破壊され、その後のSEI再構成により容量劣化が引き起こされる。また、電析した金属不純物がセパレーターを突き破ることが、電池がショートする一因にもなっている。
また、特許文献3の電極材料では、オリビン系正極活物質の電子伝導性を向上させるために、酸化マンガン等のMn化合物を電極材料に混合することがある。そこで、Li以外の金属不純物の溶出が抑制された電極材料が求められていた。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の電極材料は、次の(1)、(2)のいずれかからなる電極材料である。
(1)LixAyDzPO4(但し、AはCo、Mn、Ni、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x≦2、0<y≦1、0≦z≦1.5)粒子(以下、単にLixAyDzPO4粒子とも称する)の表面にFeが存在しかつ前記Feを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子からなり、この表面被覆LixAyDzPO4粒子は、水素イオン指数4(pH=4)の硫酸溶液に24時間浸漬させたときのLi溶出量が200ppm以上かつ700ppm以下、P溶出量が500ppm以上かつ2000ppm以下である。
この接触した状態としては、特に限定されないが、LixAyDzPO4粒子同士または炭素質被膜同士の接触面積が小さく、さらに、接触部分が断面積の小さい頸部状となって強固に接続された状態の凝集体であることが好ましい。すなわち、接触面積が小さくなることで凝集粒子内に空隙が形成され、よって、リチウムイオンの拡散浸透が容易になるので好ましい。また、接触部分が断面積の小さい頸部状であれば、凝集体内部にチャネル状(網目状)の空隙が三次元に広がった構造となるので、より好ましい。
ここでは、上記の(1)の電極材料について説明し、上記の(2)の電極材料については、上記の(1)の電極材料と異なる点について適宜説明することとする。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
Feが上記の範囲でLixAyDzPO4粒子の表面に含有されていれば、このLixAyDzPO4粒子の表面に炭素質被膜が効率的に生成され、LixAyDzPO4粒子そのものの特性が過度に阻害されない。
これらLi溶出量及びP溶出量は、これらの粒子を、これらの粒子の10倍の質量であり25℃に保持したpH=4の硫酸溶液に投入して撹拌することにより、25℃にて24時間浸漬し、この24時間後に、これらの粒子から硫酸溶液に溶出してきたLi溶出量及びP溶出量を測定することで求めることができる。
これらLi溶出量及びP溶出量を測定する方法としては、ICP分光分析が、検出感度が高く、かつ高感度の多元素同時定量を行うことができる点で好ましい。
その理由は、この表面被覆LixAyDzPO4粒子は、40℃以上かつ500℃以下で熱処理することで室温以上の熱エネルギーが付与されることとなり、よって、この表面被覆LixAyDzPO4粒子に含まれるLi及びPが粒子内部から溶出し、これら溶出したLi、Li化合物、P、P化合物が粒子の表面に存在することになるからである。
この表面被覆LixAyDzPO4粒子を硫酸溶液(pH=4)に浸漬させた場合、この表面に存在すると考えられるLi、Li化合物、P、P化合物から先に硫酸溶液(pH=4)中に溶出されることとなるので、結果として、Li以外の金属不純物の溶出を抑制することになる。
このLi溶出量が200ppm未満では、表面被覆LixAyDzPO4粒子の表面のLiやLi化合物の存在量が減少し、したがって、この粒子からのLi以外の金属不純物の溶出を抑制することができなくなる。一方、Li溶出量が700ppmを超えると、表面被覆LixAyDzPO4粒子の表面におけるLiやLi化合物の存在量が多くなり、この粒子の表面を覆うLiやLi化合物の厚みが厚くなりすぎてしまい、その結果、リチウムイオン電池に適用した場合にLiの挿入・脱離が阻害されることとなり、充分な充放電特性を発現することができなくなる。
このP溶出量が500ppm未満では、表面被覆LixAyDzPO4粒子の表面のPやP化合物の存在量が減少し、したがって、この粒子からのLi以外の金属不純物の溶出を抑制することができなくなるからであり、一方、P溶出量が2000ppmを超えると、表面被覆LixAyDzPO4粒子の表面におけるPやP化合物の存在量が多くなり、この粒子の表面を覆うPやP化合物の厚みが厚くなりすぎてしまい、その結果、リチウムイオン電池に適用した場合にLiの挿入・脱離が阻害されることとなり、充分な充放電特性を発現することができなくなるからである。
ここで、表面被覆LixAyDzPO4粒子の平均粒子径を上記の範囲とした理由は、平均粒子径が0.01μm未満では、Feを含むLixAyDzPO4粒子の表面を炭素質被膜により充分に被覆することが困難となり、高速充放電における放電容量が低くなり、その結果、充分な充放電性能を実現することが困難となるからであり、一方、平均粒子径が20μmを超えると、LixAyDzPO4粒子の内部抵抗が大きくなり、その結果、高速充放電における放電容量が不十分なものとなるからである。
上記以外の方法としては、この表面被覆LixAyDzPO4粒子を水等の溶媒に分散させて分散液とし、この分散液の個数平均粒子径を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定することによっても求めることができる。
ここで、凝集粒子の平均凝集粒子径を上記の範囲とした理由は、平均凝集粒子径が0.5μm未満では、凝集粒子が小さすぎて舞い易くなり、電極形成用ペーストを作製する際に取り扱いが困難になるからであり、一方、平均凝集粒子径が100μmを超えると、この電極材料を含む正極材層を集電体上に形成して電極板を作製した際に、乾燥後の正極材層の膜厚を超える大きさの凝集粒子が存在する可能性が高くなり、したがって、正極材層の膜厚の均一性を保持することができなくなるからである。
このように、この凝集粒子の体積密度を40体積%以上とすることで、凝集粒子が緻密化することにより凝集粒子の強度が増加し、例えば、この凝集粒子と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを混合して電極形成用ペーストを調製する際に凝集粒子が崩れ難くなり、その結果、電極形成用ペーストの粘度の上昇が抑制され、かつ流動性が保たれることにより、塗工性が良くなると共に、電極形成用ペーストの塗膜における電極材料の充填性の向上をも図ることができる。
炭素質被膜の被覆率は、透過型電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて測定することができる。ここで、炭素質被膜の被覆率が80%未満では、炭素質被膜の被覆効果が不十分となり、リチウムイオンの脱挿入反応が表面被覆LixAyDzPO4粒子の表面にて行なわれる際に、炭素質被膜が形成されていない箇所におけるリチウムイオンの脱挿入に関わる反応抵抗が高くなり、放電末期の電圧降下が顕著になるので、好ましくない。
この炭素質被膜の厚みを上記の範囲とした理由は、厚みが0.1nm未満では、炭素質被膜の厚みが薄すぎてしまうために所望の抵抗値を有する膜を形成することができなくなり、その結果、導電性が低下し、電極材料としての導電性を確保することができなくなるからであり、一方、厚みが20nmを超えると、電池活性、例えば、電極材料の単位質量あたりの電池容量が低下するからである。
ここで、炭素質被膜中の炭素量を上記の範囲に限定した理由は、炭素量が0.5質量部未満では、炭素質被膜の被覆率が80%を下回ってしまい、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるからである。一方、炭素量が5質量部を超えると、LixAyDzPO4粒子の表面には導電性を得るために必要最低限となる炭素質被膜を形成するための炭素量を超える量の炭素が存在することとなり、LixAyDzPO4粒子の単位質量あたりのリチウムイオン電池の電池容量が必要以上に低下するからである。
ここで、球状が好ましい理由としては、この表面被覆LixAyDzPO4粒子と、導電助剤と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して電極形成用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、この電極形成用ペーストの集電体への塗工も容易となるからである。また、形状が球状であれば、この表面被覆LixAyDzPO4粒子の表面積が最小となり、よって、添加するバインダー樹脂(結着剤)の混合量を最小限にすることができ、得られる正電極の内部抵抗を小さくすることができるからである。
酸化マンガンの含有量については、特に限定されず、電子伝導性が向上するように適宜調整して含有させることとすればよい。例えば、電極材料中に1ppm以上かつ1.0質量%以下含有させることが好ましい。
酸化マンガンの分布状態については、特に限定されず、表面被覆LixAyDzPO4粒子の内部に分布していてもよく、この粒子の表面に分布していてもよい。
本実施形態の電極材料の製造方法は、上記のLixAyDzPO4粒子と、有機化合物と、鉄源及びリン酸鉄リチウムの前駆体物質のうちいずれか一方または双方と、を溶媒に混合させてスラリーとするスラリー作製工程と、このスラリーを乾燥して乾燥物とし、次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下にて焼成して、LixAyDzPO4粒子の表面にFeが存在しかつ、このFeを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子、または、この表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子とする焼成工程と、この表面被覆LixAyDzPO4粒子、この表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子、のうちいずれか1種を、40℃以上かつ500℃以下の温度にて0.1時間以上かつ1000時間以下熱処理する熱処理工程とを有する方法である。
「スラリー作製工程」
上記のLixAyDzPO4粒子と、有機化合物と、鉄源及びリン酸鉄リチウムの前駆体物質のうちいずれか一方または双方と、を溶媒に混合させてスラリーとする工程である。
このLixAyDzPO4粒子を作製する方法しては、固相法、液相法、気相法等の従来の方法を用いることができる。特に、液相法は、粒子径を所望の大きさに制御することが可能であるので好ましい。
この場合、水熱処理時の温度、圧力及び時間を調整することにより、生成するLixAyDzPO4粒子の粒子径を所望の大きさに制御することができる。
これらの中でも、塩化リチウムと酢酸リチウムは、均一な溶液相が得られ易いので好ましい。
また、Cr源としてはCr塩が好ましく、例えば、硫酸クロム(II)(CrSO4)、塩化クロム(III)(CrCl3)、硝酸クロム(III)(Cr(NO3)3)の中から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。
特に、オルトリン酸、リン酸アンモニウム、リン酸リチウム等は、均一な溶液相を形成し易いので好ましい。
有機化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、多価アルコールが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
なお、これらLi源、Fe源及びPO4源は、既に述べたものと全く同様であるから、説明を省略する。
ここで、有機化合物の炭素量換算の混合比が0.6質量部未満では、この有機化合物を熱処理することにより生じる炭素質被膜のLixAyDzPO4粒子の表面における被覆率が80%を下回ることとなり、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、有機化合物の炭素量換算の混合比が10質量部を超えると、相対的にLixAyDzPO4粒子の混合比が低下し、電池を形成した場合に電池の容量が低くなるとともに、炭素質被膜の過剰な担持によりLixAyDzPO4粒子の嵩密度が高くなり、したがって、電極密度が低下し、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量の低下が無視できなくなる。
混合比の例としては、Pが1モルの場合、Feが0.03モル以上かつ0.09モル以下となる混合比が好ましく、0.04モル以上かつ0.08モル以下となる混合比がより好ましく、0.05モル以上かつ0.07モル以下となる混合比がさらに好ましい。
より具体的には、LixAyDzPO4粒子とLiFePO4粒子の合計質量に対して、LiFePO4粒子が1質量%以上かつ10質量%以下、好ましくは2質量%以上かつ9質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上かつ8質量%以下となるように混合すればよい。
この混合の際には、まず、LixAyDzPO4粒子を溶媒中に分散させ、その後、有機化合物を溶解することが好ましい。このようにすれば、均一分散したLixAyDzPO4粒子の表面が有機化合物にて被覆される。その結果、後の工程で焼成することにより、LixAyDzPO4粒子の表面に有機化合物由来の炭素質被膜が均一に付着するようになる。
上記のスラリーを乾燥して乾燥物とし、次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下にて焼成して、LixAyDzPO4粒子の表面にFeが存在しかつ、このFeを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子、または、この表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子とする工程である。
この乾燥方法としては、スラリーから溶媒を散逸させることができればよく、特に限定されないが、例えば、乾燥機による乾燥法、スプレイドライヤー等の噴霧乾燥法等が挙げられる。
この噴霧乾燥法としては、例えば、スラリーを、大気下、100℃以上かつ300℃以下の高温雰囲気中に噴霧し、乾燥させ、粒子状乾燥物または造粒状乾燥物とする方法が挙げられる。
この非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には、不活性ガスに対して水素(H2)等の還元性ガスを1体積%〜10体積%含む還元性雰囲気が好ましい。
この焼成過程では、Feは触媒として作用し、有機化合物は、熱処理の際に分解・反応して炭素を生成する。これにより、LixAyDzPO4粒子の表面にはFeが付着し、このFeが付着したLixAyDzPO4粒子の表面に有機化合物由来の炭素が付着し、炭素質からなる被膜を形成することとなる。
以上により、LixAyDzPO4粒子の表面にFeが存在しかつ、このFeを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子、または、この表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子が生成することとなる。
ただし、焼成時間が長くなり過ぎると、異常な粒成長が生じたり、リチウムが一部欠損した表面被覆LixAyDzPO4粒子または凝集粒子が生成したり等が起こり、よって、表面被覆LixAyDzPO4粒子または凝集粒子自体の性能が低下し、その結果、この表面被覆LixAyDzPO4粒子または凝集粒子を用いた電池特性が低下する原因となるので好ましくない。
上記の表面被覆LixAyDzPO4粒子または凝集粒子を、40℃以上かつ500℃以下、好ましくは80℃以上かつ400℃以下の温度にて0.1時間以上かつ1000時間以下、好ましくは0.5時間以上かつ300時間以下、より好ましくは0.5時間以上かつ200時間以下、熱処理する工程である。
熱処理工程における雰囲気は、特に限定されず、大気中であってもよく、非酸化性雰囲気中であってもよい。
以上により、所望の平均粒子径の表面被覆LixAyDzPO4粒子、または、この表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子を得ることができる。
本実施形態の電極形成用ペーストは、本実施形態の電極材料と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを含有してなるペーストである。
電極材料の含有率は、この電極材料と導電助剤と結着剤の合計質量を100質量%とした場合に、85質量%以上かつ98.5質量%以下が好ましく、90質量%以上かつ98.5質量%以下がより好ましい。この範囲で電極材料を含有することにより、電池特性に優れた電極を得ることができる。
ここで、含有率が0.1質量%未満では、本実施形態の電極形成用ペーストを用いて電極を形成した場合に、電子伝導性が十分ではなく、電池容量や充放電レートが低下するので好ましくない。一方、含有率が7質量%を超えると、電極中に占める電極材料が相対的に減少し、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量が低下するので好ましくない。
このように、電極材料と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを混合することにより、電極形成に優れ、かつ電池特性に優れた、電極形成用ペーストを得ることができる。
本実施形態の電極板は、本実施形態の電極材料を含む正極材層を集電体上に形成してなる電極板である。この電極板は、リチウムイオン電池の正極に用いられる。
次いで、この塗膜を加圧圧着して、金属箔の一方の面に正極材層を有する電極とし、次いで、この電極を40℃以上かつ500℃以下の温度にて0.1時間以上かつ1000時間以下熱処理することにより、本実施形態の電極板を得る。熱処理の条件は、上述した電極材料の製造方法の熱処理条件と全く同様である。
このようにして、本実施形態の電極板を作製することができる。
この電極板では、正極材層の電子伝導性を向上させることが可能である。
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態の電極板を備えている。
すなわち、このリチウムイオン電池は、本実施形態の電極板(正極)と、負極と、電解液とにより構成されている。
負極は、例えば、黒鉛粉末と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒と、必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤とを混合し、得られた負極形成用ペーストを金属箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上記の電極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成された金属箔を得、この塗膜を乾燥し、次いで加圧圧着し、金属箔の一方の面に電極材料を含む負極材層を有する電極を形成することにより、作製することができる。
電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を、例えば、濃度1モル/dm3となるように溶解することで作製することができる。この電解液はセパレーターを必要とするものであり、この電解液及びセパレーターの代わりに固体電解質を用いてもよい。
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、2molの硫酸マンガン(II)(MnSO4)、2molのリン酸(H3PO4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、120℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、LiMnPO4粒子を得た。
ここでは、Li源、Fe源及びPO4源を含む溶液は、LiMnPO4粒子とLiFePO4粒子との合計質量に対してLiFePO4粒子が5質量%となるように、Li源、Fe源及びPO4源それぞれの質量を設定した。
次いで、この表面がポリエチレングリコールにより被覆されたLiMnPO4粒子を、窒素(N2)雰囲気下、700℃にて1時間焼成し、表面が炭素質被膜により被覆され、粒子表面にFeが存在する表面被覆LiMnPO4粒子を得た。
次いで、この表面被覆LiMnPO4粒子を、大気雰囲気中、40℃にて0.5時間熱処理し、平均粒子径が55nmの表面被覆LiMnPO4粒子からなる実施例1の電極材料(A1)を得た。
この電極材料(A1)を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、LiMnPO4粒子の表面が薄膜状の炭素質被膜にて被覆されていることが観察された。
この電極材料(A1)3gを、25℃かつpH4の硫酸溶液30g中に24時間浸漬させ、次いで、固液分離し、得られた溶液中のFe溶出量、Li溶出量及びP溶出量をICP分析装置(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定した。
この電極材料の評価結果を表1〜表2に示す。
上記の電極材料(A1)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、実施例1のペーストを作製した。
上記のペーストを、厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cm2の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン電池の電極板を作製し、正極とした。
上記のリチウムイオン電池の正極に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極と負極の間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレーターを配置し、電池用部材とした。
一方、電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1モル/dm3となるように溶解することで作製した。
次いで、上記の電池用部材を上記の電解液に浸漬し、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
上記のリチウムイオン電池の充放電特性の評価を行った。
ここでは、上記のリチウムイオン電池について、60℃にて、1C電流値で充電電圧が4.2Vとなるまで定電流充電を行った後、定電圧充電に切り替えて電流値が0.01Cとなった時点で充電を終了した。その後、放電電流1Cでの放電を行い、電池電圧が2.5Vとなった時点で放電を終了した。その際の放電容量を測定し、初回放電容量とした。
また、同様の条件にて充放電を繰り返し、300サイクル目の放電容量を測定して、初回放電容量に対する容量維持率を算出した。
実施例1のリチウムイオン電池の評価結果を表3に示す。
Li源、Fe源及びPO4源を含む溶液について、LiFePO4粒子として5質量%から3質量%に変更した以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。実施例2の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
熱処理時間を0.5時間から200時間に変更した以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。実施例3の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
熱処理温度を40℃から200℃に変更した以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。実施例4の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
Li源、Fe源及びPO4源を含む溶液について、LiFePO4粒子として5質量%から8質量%に変更した以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。実施例5の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
LiMnPO4粒子と、ポリエチレングリコールと、水と、Li源、Fe源及びPO4源を含む溶液とを分散処理する際に、酸化マンガンをLiMnPO4粒子に対して0.5質量%加えた以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。実施例6の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
LiMnPO4粒子と、ポリエチレングリコールと、水を分散処理する際に、Li源、Fe源及びPO4源を添加せず、かつ、熱処理を行わなかった以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。比較例1の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
熱処理を行わなかった以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。比較例2の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
LiMnPO4粒子と、ポリエチレングリコールと、水と、Li源、Fe源及びPO4源を含む溶液とを分散処理する際に、酸化マンガンをLiMnPO4粒子に対して0.5質量%加え、かつ、熱処理を行わなかった以外は、実施例1と全く同様にして電極材料、ペースト、電極板及びリチウムイオン電池を得た。
これらについて、実施例1と同様にして測定し評価した。比較例3の電極材料及びリチウムイオン電池の評価結果を表1〜表3に示す。
その理由は、サイクル時のFe溶出やMn溶出が抑制され、SEI破壊や負極へのFe系不純物やMn系不純物が電析するのを抑えられたことで、容量劣化が抑制されたことによると考えられる。
また、溶出させた後の溶液のpHが8.3〜8.9となったのは、溶液の水素イオン濃度が低下し、アルカリ側へシフトするLi量が多く溶出したことによると考えられる。
その理由は、サイクル時のMnやFeの溶出が抑制されず、SEI破壊や負極へのMn系不純物の電析量が多くなり、容量劣化が著しいことによると考えられる。
また、溶出させた後の溶液のpHが7.0以下となったのは、溶液中の水素イオン濃度が低下したものの、アルカリ側へシフトするLi量が少なかったことによると考えられる。
Claims (7)
- LixAyDzPO4(但し、AはCo、Mn、Ni、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x≦2、0<y≦1、0≦z≦1.5)粒子の表面にFeが存在しかつ前記Feを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子からなり、
前記Feは、Fe単体、またはFe化合物として前記表面に存在し、
前記Fe化合物は、塩化鉄(II)(FeCl 2 )、硫酸鉄(II)(FeSO 4 )、酢酸鉄(II)(Fe(CH 3 COO) 2 )またはその水和物、硝酸鉄(III)(Fe(NO 3 ) 3 )、塩化鉄(III)(FeCl 3 )、クエン酸鉄(III)(FeC 6 H 5 O 7 )、鉄酸リチウムまたはリン酸鉄リチウムであり、
前記表面被覆LixAyDzPO4粒子は、水素イオン指数4の硫酸溶液に24時間浸漬させたときのLi溶出量が200ppm以上かつ700ppm以下、P溶出量が500ppm以上かつ2000ppm以下であることを特徴とする電極材料。 - LixAyDzPO4(但し、AはCo、Mn、Ni、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x≦2、0<y≦1、0≦z≦1.5)粒子の表面にFeが存在し、かつ、このFeを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子からなり、
前記Feは、Fe単体、またはFe化合物として前記表面に存在し、
前記Fe化合物は、塩化鉄(II)(FeCl 2 )、硫酸鉄(II)(FeSO 4 )、酢酸鉄(II)(Fe(CH 3 COO) 2 )またはその水和物、硝酸鉄(III)(Fe(NO 3 ) 3 )、塩化鉄(III)(FeCl 3 )、クエン酸鉄(III)(FeC 6 H 5 O 7 )、鉄酸リチウムまたはリン酸鉄リチウムであり、
前記凝集粒子は、水素イオン指数4の硫酸溶液に24時間浸漬させたときのLi溶出量が200ppm以上かつ700ppm以下、P溶出量が500ppm以上かつ2000ppm以下であることを特徴とする電極材料。 - さらに、酸化マンガンを含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の電極材料。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の電極材料と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを含有してなることを特徴とする電極形成用ペースト。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の電極材料を含む正極材層を集電体上に形成してなることを特徴とする電極板。
- 請求項5記載の電極板を備えてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
- LixAyDzPO4(但し、AはCo、Mn、Ni、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x≦2、0<y≦1、0≦z≦1.5)粒子と、有機化合物と、鉄源及びリン酸鉄リチウムの前駆体物質のうちいずれか一方または双方と、を溶媒に混合させてスラリーとし、
次いで、このスラリーを乾燥して乾燥物とし、
次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下にて焼成して、前記LixAyDzPO4粒子の表面にFeが存在しかつ前記Feを含む粒子の表面を炭素質被膜により被覆した表面被覆LixAyDzPO4粒子、または前記表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子とし、
次いで、前記表面被覆LixAyDzPO4粒子、前記表面被覆LixAyDzPO4粒子を複数個凝集した凝集粒子、のうちいずれか1種を、40℃以上かつ500℃以下の温度にて0.1時間以上かつ1000時間以下熱処理し、
前記鉄源は、塩化鉄(II)(FeCl 2 )、硫酸鉄(II)(FeSO 4 )、酢酸鉄(II)(Fe(CH 3 COO) 2 )またはその水和物、硝酸鉄(III)(Fe(NO 3 ) 3 )、塩化鉄(III)(FeCl 3 )、クエン酸鉄(III)(FeC 6 H 5 O 7 )、またはリン酸鉄リチウムであり、
前記有機化合物は、前記熱処理の際に分解・反応し、前記Li x A y D z PO 4 粒子の表面に付着して前記炭素質被膜を生成するものであることを特徴とする電極材料の製造方法。
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