JP5836958B2 - 単独標的実体の免疫化学的検出 - Google Patents

単独標的実体の免疫化学的検出 Download PDF

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Description

本発明は、単独分子、単独分子構造、単独粒子などの単独標的実体を、前記単独実体が固定化されている試料において免疫化学的可視化および定量する分野に存する。詳細には、本発明は、生物学的または化学的標的の単独ユニットを可視化および定量するための方法、詳細には、組織学的試料における生物学的標的の単独分子の免疫化学的可視化に関する。本発明の方法は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素によって媒介して検出可能な分子の別々のデポジット(沈着、deposit)を、試料の単独標的部位に形成するステップであって、単独標的部位が標的の単独ユニットを含むステップを含む。
免疫化学は、医学的診断における一般的なツールであり、また、治療用バイオマーカーを評価するために日常的である。詳細には後者は多くの場合に、その存在規模の定量的評価を必要とする。細胞および組織への抗体の施与は、これらの試薬を、固体支持体上か、溶液中に固定化された精製タンパク質に施与する場合に遭遇するような困難を上回る特有の困難をもたらす。免疫検出に影響を及ぼし得る多くの因子、特には、組織の固定および調製、抗原賦活化の所要時間および種類ならびに抗体特異性が存在する。追加的な困難は、低レベルで存在する標的を検出する可能性である。可溶性アッセイと同じく、非特異的背景レベルを上昇させることなく、シグナルを増大させることが重要となる。最も一般に調査されている手法は、シグナル増幅であり、これは、連続した複数ラウンドの酵素反応によって達成される。
DABは、ペルオキシダーゼ活性で標識されている組織学的試料中の標的タンパク質を可視化するために広く使用されているホースラディッシュペルオキシダーゼの発色性基質である。その方法は、試料のタンパク質を標的とする抗体に結合しているHRPがDABを、溶液から、標的とされたタンパク質の部位へとデポジットさせ、それによって、タンパク質を標識することを利用する。その方法は、特に高感度ではなく、したがって、相対的に豊富な標的タンパク質を検出するために適している。DABデポジットに付随するシグナルをさらに増幅することはできない。述べるべき他の欠点は、その方法が、全ての標的部位を飽和させるために、標的特異的な抗体をむしろ多い量で要求し、比較的遅いことである。さらに、その方法は、均一な染色パターンをもたらし、これは、顕微鏡使用者には、細胞構造、例えば膜、細胞質および核の細胞内解像と均一な色として見え、このことによって、正確に染色を定量することが不可能になる。
触媒によるシグナル増幅(CSA)(米国特許第5,863,748号;同第5,688,966号;同第5,767,267号;同第5,721,158号;同第5,583,001号;同第5,196,306号;同第6,372,937号;同第6,593,100号;同第6,593,100号に記載)は、ビオチニル−およびフルオレシル(fluorescyl)−チラミドを採用して、HRP標識標的タンパク質からのシグナルを増大させて、そうして、慣用の方法(即ち上記の方法)によってはさもないと検出不可能である量の少ない標的の検出を可能にした。しかしながら、特に、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)および免疫組織化学(IHC)試料では、背景染色が著しく、染色の結果の解釈が困難であるために、CSAは、臨床組織病理学において組織学的試料を評価するための日常的な手法としては広く受け入れられてはいない。
最近では、IHC試料中の量の少ない標的分子を検出することを可能にする他のHRPベースの増幅方法が記載されている(WO2009036760号、WO2010094283号およびWO2010094284号に記載)。その方法は、DABをHRPの発色性基質としてではなく、HRPによる他の検出可能なHRP基質のデポジションを媒介する架橋剤として利用する。方法は、デポジットされたHRP基質のシグナルの著しい増幅をもたらし、このことによって、方法の感度は、CSA方法に匹敵するものとなるが、後者の方法と比較すると、新規方法は、背景標識をもたらさないという利点を有する。この新規方法の他の利点のうち、検出手順の速度が、従来のDABまたはビオチニル−チラミド検出手順よりもかなり早いことは、述べる価値がある。しかしながら、以前の方法の問題、即ち、検出される染料の量の判断に基づくIHC試料中の標的量の判断は、解決されていない。新規方法は、非常に輪郭明瞭ではあるが、従来のDAB法またはCSA法と同様に、細胞構造の細胞内解像と同じ均一な染色である染色パターンをもたらす。この染色パターンは、試料中の染色の量に対し標的の量を直接的に概算することを可能とはしない。それというのも、これらの2つの量の間の相関は線形ではないためである。したがって、これらの方法全てによって可視化された組織学的試料中の標的の量は相対的でしかなく、正確に評価することはできない。
したがって、方法論に関する品質保証スキームは改良され、IHC染色の標準を高めているが、染色結果の解釈に関するスキームは、変わっていない。組織が「陽性」または「陰性」であるかを評価するために変動するカットオフレベルを使用する種々のスコアリングシステムが通常は、抗原を評価するために使用される。そのような現在使用されている評価は、医学的診断において決定的に重大であり得る誤差と必然的に結びついている。
試料中に存在する個別標的分子の正確な量の評価に基づく標的発現の評価、いわゆる単独分子検出(SMD)アプローチは、より信頼性があり、医学的診断および療法の両方に関して評価し得るであろうIHCにおける新たなスコアリングシステムに至る1つの方法となり得るであろう。残念ながら、組織学的試料中の標的タンパク質の単独分子を可視化することを可能にする利用可能な技術の数は、今のところ非常に限られており、これらはむしろ面倒であり、手順が長い。
基本的に、全ての利用可能な単独タンパク質分子検出技術は、DNAをベースとする増幅システムを使用する。単独タンパク質分子検出はイムノPCRの出現で初めは証明された(Sano T、Smith CL、Cantor CR.Immuno−PCR:very sensitive antigen detection by means of specific antibody−DNA conjugates.Science 1992;258:120〜122;Adler M、Wacker R、Niemeyer CM.A real−time immuno−PCR assay for routine ultrasensitive quantification of proteins.Biochem Biophys Res Commun 2003;308:240〜250;Niemeyer CM、Adler M、Wacker R.Immuno−PCR:high sensitivity detection of proteins by nucleic acid amplification.Trends Biotechnol 2005;23:208〜216)。抗体−DNAハイブリッド構成体を使用して、PCRで達成可能な高感度検出によって、抗体の結合親和性が補足された。加えて、イムノDNAコンジュゲートにつながれている長いssDNAオリゴマーを生じさせるローリングサークル増幅(RCA)、等温技術を使用するために、イムノDNA検出ストラテジーは拡張されている(Gusev Y、Sparkowski J、Raghunathan A、Ferguson H Jr、Montano J、Bogdan N、Schweitzer B、Wiltshire S、Kingsmore SF、Maltzman W、Wheeler V.Rolling circle amplification:a new approach to increase sensitivity for immunohistochemistry and flow cytometry.Am J Pathol 2001;159:63〜69)。
述べるべきこれらのSMD手法のいくつかの本質的な欠点は、
(i)抗体−DNAハイブリッドの合成が、問題となり得るが、それというのも、タンパク質1つごとのDNAコンジュゲートの位置および数の制御が常には直線的でなく、多くの場合に、抗体1つ当たりのDNAタグの不均一な濃度をもたらし;増幅反応を制御するのが困難であり;増幅ステップが、温度不安定性であり;標識が安定してなく、標識は、時間経過と共に標的から拡散するはずであるなどのためである。非常に成功しているインテイン化学(または化学的結紮)を使用してのタンパク質へのオリゴヌクレオチドタグの部位特異的コンジュゲーションにおける最近の開発にもかかわらず、コンジュゲートの調製はまだ面倒なままであること;
(ii)方法のステップが、温度制御を必要とすること;
(iii)検出手順が、多すぎるステップを含むこと;および
(iv)検出のプロセス全体が、比較的長時間かかることである。
本発明のSMD手法は、上記の障害を克服し、試料中にある標的の単独実体を可視化および定量し、その際、前記単独実体が固定化されていることを、簡単かつ信頼可能にし得る。
本発明は、種々の試料中の様々な標的の単独実体を可視化、検出および定量するための迅速で、簡略で、かつ確実な方法であって、その際、標的が固定化されている方法を提供する。方法は、組織学的試料などの複雑な生体試料を評価するために特に有利である。
本発明の方法は、非常に幅広い動的濃度範囲の単独分子、単独分子構造、単独分子複合体、単独粒子などの標的の個別の単独実体を試料のホスト多様性で可視化することができる新規の強力なシグナル増幅システムを含む。「標的の単独実体」という用語は、「標的の単独/個別ユニット」という用語と本明細書では互換的に使用されている。
本発明の方法は、
a)試料において、酵素活性で標識された1つまたは複数の標的部位を形成し、その際、前記標的部位それぞれが、標的の単独ユニットを含み、前記標的部位が、試料の単独標的ユニットの全量の分別部分集団で形成されているステップと;
b)検出可能な分子(本明細書では「リポーター分子」または「リポーター」とも称される)の別々のデポジットを単独標的部位それぞれに形成するステップとを含む。
一部の実施形態では、試料が本発明による標的部位を既に含んでいる場合には、上記のステップ(a)が余計なこともある。
他の実施形態では、本発明の方法は、1つまたは複数のさらなるステップ、例えば
c)リポーター分子の別々のデポジットを単独標的部位で視覚的に識別可能なドットとして検出するステップを含んでよい。
一実施形態では、本発明は、固定化されている標的の個別単独ユニットを試料中で可視化する方法(方法(1))に関し、この方法は、
a)標的の個別ユニットの集団を含む試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
標的の個別単独ユニットの分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の単独標的部位はそれぞれ、前記分別部分集団の個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つが酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
a)(a)の試料を、
2mM未満の量のペルオキシド化合物、
(a)の別々の単独標的部位に付随している酵素の第1基質および
前記酵素の第2基質
を含む水溶液(i)中でインキュベートするステップであって、
前記第1基質は、
(1)前記酵素と反応するとラジカルを発生させることができ、
(2)前記酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で前記第2基質の分子を架橋させて、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができる
水溶性の電子リッチな有機化合物であり、
前記第2基質は、前記酵素の基質および検出可能な標識として働くことができる少なくとも2つの化合物を含むコンジュゲート分子であり、検出可能な標識は、蛍光、発光、放射性もしくは発色物質または特異的結合対のメンバーからなる群から選択され、
それによって、第2基質の別々のデポジットを(a)の別々の単独標的部位に形成し、(a)の前記単独標的部位を可視化するステップとを含む。
上記のとおりのステップ(a)および(b)を含む本発明の方法は、別々のデポジットを単独標的部位で検出する1つまたは複数のステップをさらに含んでよい。
一実施形態では、上記の方法(1)は、固定化されていて、幅広い動的濃度で存在する標的の単独個別ユニットを試料中で検出および可視化するために使用することができ、この場合、
a)試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み;
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
標的の個別単独ユニットの第1分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の第1標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、前記第1分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つはオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
b)(a)の試料を、(a)の第1標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1標的部位に形成するステップと;
c)(b)の試料を、(a)の第1の単独標的部位に付随している残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
d)試料(c)を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、標的の個別単独ユニットの第2の分別部分集団で1つまたは複数の別々の第2の標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、前記第2分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
e)(d)の前記試料を、第2単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第2集団および上記方法(1)のステップ(b)(即ち、請求項1のステップ(b))によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第1集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第2集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む。
本発明の他の実施形態では、方法(1)は、少なくとも2つの異なる固定化標的の個別ユニットを試料中で検出および可視化するために使用することができ、この場合、
a)試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが第1標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
第1標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、第1標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第1単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、第1標的の個別単独ユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
b)(a)の試料を、第1単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および上記方法(1)のステップ(b)(即ち、請求項1のステップ(b))によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1単独標的部位に形成するステップと;
c)(b)の試料を、(a)の第1単独結合部位に付随している酵素の残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
d)試料(c)を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが第2標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
第2標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、第2標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第2単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、第2標的の個別のユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
e)(d)の試料を、第2単独結合部位に付随している第1基質、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質の分子の第2集団および上記方法(1)のステップ(b)(即ち、請求項1のステップ(b))によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第1標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第2標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む。
本発明の他の態様は、試料中の標的を定量する方法に関し、この方法は、
a)本発明の方法のいずれか(上記)に従って、生体試料を処理するステップと;
b)試料中の視覚的に識別可能なドットを定量するステップと;
c)試料中の標的の量を評価するステップとを含む。
他の態様では、本発明は、本明細書に記載されている単独標的検出および定量方法を医学的診断において、詳細には、生物学的マーカーの単独ユニットの可視化および定量が、診断の精度、治療処置の効力の推定、疾患の結果の予測、疾患の危険性の予知または治療計画に関する患者の層別化などのために必須である予診および治療用途のために使用することに関する。
他の態様では、本発明は、本発明の方法を使用して、様々な標的の個別単独ユニットを検出および定量するためのアッセイに関する。
本発明の増幅システムは、非常に強力で確固としていると同時に、柔軟で、容易に制御可能である。これは、試料を評価するための現行の検出方法、詳細には、通常の明視野または蛍光顕微鏡法を使用する検出方法の限界を大いに拡げる。詳細には、本発明の増幅システムを含む検出方法を使用すると、
(i)固定化された標的の単独実体を、組織学的試料などの複雑な試料中で可視化および定量することができ;
(ii)様々なアッセイフォーマットを使用して、固定化された標的の単独実体を検出および定量することができ;
(iii)固定化された標的の単独実体を、10〜20分以内など非常に迅速に検出および定量することができるが、しかしながら、必要ならば、結果の品質を損なうことなく、可視化および検出手順をより長い期間延長または中断することができ;
(iv)典型的には背景の標識を低減するために使用されるブロッキングが、不要であり;
(v)温度制御が不要であり;
(vi)固定化された標的の単独実体を、非常に幅広い動的範囲で検出および定量することができ、
(vii)多数の固定化された標的の単独実体を1つの手順で、試料において検出および定量することができる。
したがって、本発明のSMD可視化システムの大きな利点は、それが簡潔、迅速、確実、信頼可能、かつ柔軟であることである。このことによって、様々なアッセイを使用して、様々な標的の単独実体を様々な試料において可視化および定量することができる。追加的な利点は、方法が、市販か、または製造するのが容易である十分に定義されている化学化合物である化合物を利用することである。さらなる利点は、方法の全ての手順を、手動および自動の両方で実施することができることである。
Her2(+2)を発現する組織試料の免疫化学的染色の代表的な顕微鏡写真を示す図であり、(1)はHer2が本発明によって可視化されている試料であり、(2)はHer2がWO2009036760に記載される方法によって可視化されている試料である。右パネルは、方法(1)および方法(2)の染色パターンの図示である。 本発明の方法による単独分子検出のプロセスの図示である(請求項1のステップ(b)および請求項23〜24のステップ(c)を示す)。 本発明の方法による細胞中のHer2の定量化の結果を示す図である(実施例10を参照):a.0+Herceptest対照細胞系の10×画像の単色分割。1画像につき21ドット(黒色)を特定した;b.1+Herceptest対照細胞系の10×画像の単色分割。1画像につき36ドット(黒色)を特定した;c.3+Herceptest対照細胞系の10×画像の単色分割。1画像につき2567ドット(黒色)を特定した;d.乳癌の10×画像の2色分割。ドットは白色、核黒色、背景灰色である;e.3+Herceptest対照細胞系の10×画像の2色分割。ドットは黒色、核白色、背景灰色である。cと同じ試料。
試料中で固定化された標的の個別ユニットを可視化する方法
本発明の一態様は、固定化されている標的の単独個別ユニット、例えば単独標的分子、単独粒子などを試料中で可視化する方法に関する。
一実施形態では、本発明は、固定化されている標的の単独ユニットを可視化する方法に関し、前記方法は、
a)別々の単独標的部位それぞれが標的の単独個別ユニットを含む、1つまたは複数の別々の単独標的部位を形成するステップと;
b)検出可能な分子の別々のデポジットを、(a)の別々の単独標的部位に形成して、それによって、前記単独標的部位を可視化するステップと、場合によって、
c)別々のデポジットを、別々の単独標的部位で検出するステップとを含む。
詳細には、上記方法のステップ(a)、(b)および、場合によって(c)は、次のとおりに行うことができる:
a)a)標的の個別ユニットからなる集団を含む試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み;
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが標的の個別単独ユニットに直接結合することができる
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
標的の個別単独ユニットの分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の単独標的部位はそれぞれ、前記分別部分集団の1つの個別単独ユニットと、そのうちの少なくとも1つが酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと、
b)(a)の試料を、
2mM未満の量のペルオキシド化合物、
(a)の別々の単独標的部位に付随している酵素の第1基質および
前記酵素の第2基質
を含む水溶液(i)中でインキュベートするステップであって、
前記第1基質は、
(1)前記酵素と反応するとラジカルを生じさせることができ、
(2)前記酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で前記第2基質の分子を架橋させて、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができる
水溶性の電子リッチな有機化合物であり、
前記第2基質は、前記酵素の基質および検出可能な標識として働くことができる少なくとも2つの化合物を含むコンジュゲート分子であり、検出可能な標識は、蛍光、発光、放射性もしくは発色物質または特異的結合対のメンバーからなる群から選択され、
それによって、第2基質の別々のデポジットを(a)の別々の単独標的部位に形成し、(a)の前記単独標的部位を視覚的に識別可能なドットとして可視化するステップと、場合によって、
c)第1基質の別々のデポジットを(a)の単独標的部位で検出し、(a)の単独標的部位を視覚的に識別可能なドットとして可視化し、それによって、標的の単独個別ユニットを可視化するステップとを含む。
一部の実施形態では、ステップ(b)は、
(b’)(a)の試料を、
2mM未満の量のペルオキシド化合物および
(a)の標的部位に付随している酵素の第1基質
を含む水溶液(ii)中でインキュベートするサブステップであって、前記第1基質は、
(1)前記酵素と反応するとラジカルを生じさせることができ、
(2)前記酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で前記第2基質の分子を架橋させ、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができる
水溶性電子リッチな有機化合物であるサブステップと、続いて、
(b’’)試料(b’)を、水溶液(i)(上記)中でインキュベートするサブステップとを連続して含んでよい。
一部の実施形態では、ステップ(c)は、
c’)(a)の単独標的部位に第2基質の別々のデポジットを含む(b)の試料を、デポジットされた第2基質の検出可能な標識に特異的に結合することができる結合剤と共にインキュベートし、デポジットされた第2基質の1つまたは複数の分子と、前記結合剤の1つまたは複数分子とを含む複合体を形成するサブステップと、
(c’’)試料(c’)において、第2基質の別々のデポジットに結合している結合剤を検出して、それによって、単独標的部位を検出し、それによって、前記単独標的部位に付随している標的の個別単独ユニットを検出するサブステップとを含んでよい。
本発明の方法(上記および下記)は場合によって、1つまたは複数の追加的なステップ、例えばステップ(a)、(b)または(c)に先行するステップ、例えば、ステップ(a)の前の、試料の内生または残りのペルオキシダーゼ活性を阻害する化合物で試料をクエンチするステップ、またはステップ(a)、(b)および/または(c)の間の1つまたは複数のステップ、またはステップ(c)の後のステップ、例えば、ステップ(a)、(b)および(c)の前、その後もしくはそれらの間の1つまたは複数の洗浄ステップを含んでよい。一実施形態では、方法は、少なくとも1つの自動ステップを含んでよい。
方法の他の実施形態は、下記のセクションで検討される。
試料
「試料」という用語は、より大きな全体または群からの代表的な一部または単独アイテム、検出される標的をおそらく含有する物質または対象の量または部分、例えば、分析される標的分子、粒子、構造を含む生物学的、化学的、環境物質、例えば、生検試料、食品試料、土壌試料などの部分または量を意味する。典型的な試料は、物質または対照の残りが同様か、同様であるべきことを示す。一実施形態では、本発明の試料は、環境試料、例えば土壌試料または溢流の試料であってよい。他の実施形態では、試料は、食品試料であってよい。他の実施形態では、試料は、有機分子のライブラリの部分であってよい。他の実施形態では、試料は、戦争の試料であってよい。
一実施形態では、本発明の試料は、生体試料である。
生体試料は、
1.懸濁されている細胞および/または細胞破片を含む試料、例えば血液試料、クローニングされた細胞、体組織ホモジネートなどの懸濁液;
2.動物身体、体組織、塗沫もしくは体液の無損傷または損傷細胞を含む試料または腫瘍の試料、例えば生検試料;(これは、新鮮な組織試料または保存組織試料、例えばホルマリン固定パラフィン埋め込み組織試料であってよい);
3.生体を含む試料、例えば、動物、植物、細菌、真菌などを含む培地の試料;
4.ウイルス粒子、その破片またはウイルス産生物を含む試料、例えば、ウイルスの核酸、タンパク質、ペプチドなどを含む身体塗沫;
5.細胞オルガネラ(複数可)を含む試料;
6.天然または組換え生物学的分子を含む試料、例えば血漿試料、条件付細胞培地など、
7.植物細胞またはその破片を含む試料によって例示され得る。
上述の生体試料の例は、説明を目的として示されており、本発明の実施形態を限定するために示されているのではない。
化学的試料の例は、化学化合物のライブラリ、例えばペプチドライブラリの試料によって説明することができるが、これらに限定されない。環境試料の例は、土壌、水または空気試料および食品試料によって説明することができるが、これらに限定されない。
本発明は、固定化された標的を含む試料(例えば、上記の例のいずれかとして)に、即ち、例えば、ある種の支持体または培地に、またはその中に付着している試料または標的の場合など、標的が本発明による検出手順の間に移動する自由を妨げられている試料、例えば、標的の運動が機械的または化学的手段によってかなり低減されているか、除去されている試料に関する。したがって、該当する標的の単独個別ユニットを含む試料を一実施形態では、検出手順の前に固体支持体に固定化することができ、例えば、固体体組織試料をガラススライド上に固定化する。本発明の固定化された標的を含む試料の例には、これらに限られないが、ガラスまたはプラスチックスライド上に固定化された体組織試料または膜もしくはELISAプレートなどの上に固定化された生物学的または化学的分子を含む試料が包含される。これらの実施形態中の試料の標的は、試料内に固定化されていてよく、例えば、組織試料内に固定化されているタンパク質であるか、または固体物質の一部またはニトロセルロース膜などのゲルなどのある種の物質の表面上もしくはその中に固定化される。一実施形態では、固体支持体は、三次元構造、例えばコラーゲンまたは寒天ブロックであってよい。この実施形態では、標的、例えば分子または粒子は、構造内に固定化されていてよい。
一実施形態では、本発明は、標的を含まない試料、例えば対照試料に関する。他の実施形態では、本発明は、標的をおそらく含む試料、例えば未知の含分での試料に関する。
上述の「固体支持体」という用語は、本発明による手順の条件下で不溶性である任意の物質の一片を意味し、例えば、ニトロセルロース膜、ガラススライドなどであってよい。試料および/または標的を固定化するのに適した支持体の例には、これらに限られないが、ポリスチレン、ポリプロピレン、置換ポリスチレン、例えば、アミノ化またはカルボキシレート化ポリスチレンなどの合成ポリマー支持体;ポリアクリルアミド;ポリアミド;ポリビニルクロリド;ガラス;アガロース;ニトロセルロース;ナイロン;ポリビニリデンジフルオリド;表面改質ナイロンなどが包含される。本発明は、本明細書に記載の条件下で化学的に不活性である固体支持体に関し、即ち、選択される支持体は、方法による検出結果に対して何ら重大な影響を有してはならない。したがって、選択されたアッセイフォーマット、例えば、IHC、ELISA、ブロッティングなどに合わせて、試料または標的を固定化するために適した任意のそのような不活性支持体を選択することができる。
標的
「標的」という用語は、本内容では、特に物理的および/または機能的特徴によって特徴付けられ得る試料中におそらく存在する該当する対象を意味する。本発明の内容では、「標的」という用語は、その対象の実質的に同一の実体のプール全体に関し、試料中のその対象の単独実体に関するのではないことは理解される。「実質的に同一」という用語は、本内容では、試料中の標的のプール全体の全て、または実質的に全ての単独実体が、それらを標的として認識させる1つまたは複数の特徴を有することを意味する。例えば、標的は、試料中の特定のタンパク質の全ての分子を包含する特定のタンパク質であってよく;本発明の標的の他の例は、特定の分子複合体または分子構造を含む試料の実質的に全ての対象を包含する特定の分子複合体または構造であってよく;本発明の標的の他の例は、ウイルス性粒子または細菌であってよく、その際、試料のそのウイルス性粒子またはその細菌の集団全体が、標的である。
特定の細胞種、組織、細胞構造、生理学的条件などに特徴的である形質に関連する分子、分子複合体、構造、粒子または生物体などの生物学的対象は多くの場合に、その特定の細胞種、組織、細胞構造または生理学的条件の「生物学的マーカー」と称される。そのような生物学的マーカーの非限定的例には、これらに限られないが、特定のヌクレオチド配列、タンパク質または他の生物学的分子、例えば炭水化物または脂質、染色体または膜構造、ウイルス、細菌、微生物などが包含される。本発明の一部の実施形態では、「標的」という用語は、「生物学的マーカー」という用語と互換的に使用されており、特定の細胞種、組織、生理学的状態などに特徴的な分子、分子複合体、構造または粒子に関し、その際、試験試料中の後者の生物学的マーカーのいずれかの集団全体が、標的であるとみなされる。
一実施形態では、標的は、タンパク質、例えば、細胞膜受容体または細胞質タンパク質であってよく、他の実施形態では、標的は、核酸、例えば、細胞質核酸であってよい。後で述べられた標的のいずれの誘導体も、例えば、標的タンパク質または核酸などの断片、前駆体、変異型もまた、本発明の一部の実施形態では、標的であってよい。
したがって、本発明の異なる実施形態では、標的は、生物学的もしくは化学的標的分子または粒子または分子もしくは細胞の複合体または分子もしくは細胞の構造またはウイルスまたは微生物または前記標的分子、粒子、複合体、構造、ウイルスもしくは微生物の断片であってよい。化学的および環境試料中に含有される標的には、種々の汚染物質、毒素、戦争用物質、分子ライブラリの膜、工業的有害廃棄化合物などであってよい。
詳細には、本発明は、多数の独立した実質的に同一のユニットによって試料中で表され得る標的に関し、詳細には、本発明は、標的の単独個別ユニットに関する。
「ユニット」という用語は、算出の際に統一体としてみなされ、1つの特定の機能を行うために働く標的の単独量を意味している。「個別」という用語は、ユニットが、同じ種類の他のユニットまたは環境の他の成分から分離可能であり(機能の物理的形質によって)、別々に見なし、カウントすることができることを意味する。「個別のユニット」という用語は、「単独ユニット」という用語と互換的に使用されている。「単独」という用語は本内容では、標的ユニットが、分離可能な統一体からなっているか、数において1つのみからなっているか、多くと対立するか、もしくは多くと異なる1つからなることを意味する。例えば、標的タンパク質の単独/個別ユニットは、標的タンパク質の単独で個別のタンパク質分子を、即ち、同じ種類の複数の分子のうちの1つの分子を意味する。「実質的に同一のユニット」という用語は、標的の複数の単独ユニットが、これらのユニットを標的として見なし得る1つまたは複数の形質を有することを意味する。「独立」という用語は、標的の単独ユニットが、識別可能な実体として存在していて、試料中の同じ種類の他の識別可能な実体の存在に依存していないことを意味する。
本発明は、一部の実施形態において、分子の単独部分である単独ユニットに関する。「分子の単独部分」という用語は、分子のこの部分を同じ分子の他の部分とは別にみなさせる特定の特性を有する分子の部分、例えば、標的タンパク質のタンパク分解断片、融合タンパク質の部分、標的タンパク質の特定のドメイン、核酸の特定の構造、エピトープなどに関する。
したがって、一実施形態では、本発明は、単独個別標的分子である標的の単独/個別ユニットに、即ち、試料中に存在する複数の単独個別標的分子に関するものであり得、他の実施形態では、本発明は、分子の単独個別の部分である標的の単独/個別ユニット、例えば、試料中の複数の標的分子に存在する特定の分子構造、例えばエピトープに関するものであり得る。他の実施形態では、本発明は、ウイルス性粒子のプールを試料中に存在させている複数の単独個別ウイルス性粒子に関するものであり得る。
種々の実施形態において、標的の複数の単独ユニットは、単独個別の生物学的または化学的分子、単独個別の単独粒子、単独個別の分子もしくは細胞複合体、単独個別の分子もしくは細胞構造または単独個別のウイルスまたは単独個別の微生物または前記分子、粒子、複合体、構造、ウイルスもしくは微生物の単独個別の断片によって表され得る。
好ましい一実施形態では、標的は、例えば核酸およびホルモンのポリペプチドおよび成長因子およびそれらの受容体、細胞接着分子、シグナル伝達分子、細胞周期調節分子など、例えば遺伝子、RNAおよび成長因子PDGF、VEGF、TGF、HGFまたはEGFを包含する群のタンパク質、それらの受容体および経路関連分子、シグナル伝達経路、例えばJAK/STAT経路またはAkt1/PKB細胞生存経路または5−FU経路に関する遺伝子およびその産生物、エストロゲン受容体ERおよびその遺伝子(ERS1)など、癌に関する生物学的マーカーである。本発明の方法は、前記生物学的マーカーの簡潔で迅速な可視化および定量を可能にする。
本発明の方法は、試料中に幅広い動的範囲で存在する標的の単独個別ユニットを可視化および定量することを可能にする。標的の非常に多い量も非常に少ない量も両方とも、1つの同じ試料中で可視化および定量することができるか、またはこれらは、別々の試料中で評価することができる。例えばタンパク質標的および核酸標的または2つ以上の異なるタンパク質標的または2つ以上の異なる核酸標的など、2つ以上の異なる標的を1つまたは同じ試料中で可視化することができる。
一実施形態では、標的の単独ユニットは、試料全体に実質的に均一に分散していてよく、他の実施形態では、標的の単独ユニットは、試料の一部により豊富に、かつその他の部分にはより少ない量で存在してよい。後者の実施形態のいずれでも、本発明の方法を使用して、1つの同じ試料中で標的の単独ユニットを可視化および定量することができる。単独標的ユニットが、該当する他の標的に付随している、例えば特定の分子集合または構造で存在する一部の実施形態では、その前記特定集合または構造が、病的状態のバイオマーカーである。該当する前記の他の標的も、試料中の単独標的ユニットを可視化および定量することによって、可視化および定量することができる。
一実施形態では、本発明は、試料中に存在する単独個別標的ユニットの全数のうちの大部分または小部分など、試料中に存在する単独標的ユニットの分別部分集団に関する。「分別部分集団」という用語は、本内容では、試料中の標的の単独ユニットの全量のうちの99%以下、例えば90%以下、試料中の標的のユニットの全量のうちの85%未満、例えば75〜80%など、試料中の標的の単独ユニットの全量のうちの75%未満、例えば1%から50%など、試料中の標的のユニットの全量のうち1%から25%などである単独標的ユニットの集団全体のうちの一部を意味する。全集団のうちの50%〜99%に相当する分別部分集団の単独標的ユニットは、本発明では、試料中に存在する単独標的ユニットの大部分として定義される。試料中の単独標的ユニットからなる集団全体のうちの50%未満に相当する分別部分集団は、本発明では、試料中に存在する単独標的ユニットの小部分と定義される。
一実施形態では、個別の単独標的ユニットの大部分が、本発明の別々の単独標的部位の形成に関与していてよく;他の実施形態では、個別の単独標的ユニットの小部分が、本発明の別々の単独標的部位の形成に関与していてよい。一実施形態では、標的または標的の単独ユニットが試料中にごく僅かな量で存在する場合、実質的に全ての個別単独ユニットが、本発明の別々の単独結合部位の形成に関与していることが好ましいことがある。
結合剤
本発明の方法は、標的をおそらく含む試料を、そのうちの少なくとも1つは標的の単独個別ユニットを認識し、それと特異的に結合し得る1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートするステップを含む。
「結合剤」という用語は、標的の単独ユニット、例えば標的タンパク質の個別分子に直接的に、または間接的に特異的に結合し得る分子を表している。「特異的に」という用語は、結合剤が、標的に対する特定の親和性、例えば標的分子に対する親和性または標的に結合している作用物質に対する特定の親和性、例えば標的タンパク質に結合している一次抗体に対する親和性、一次抗体とコンジュゲートされているハプテンに対する親和性などを有することを意味している。「直接的に」という用語は、標的の単独個別のユニットに対する特異的な親和性を有する結合剤が、この単独個別ユニットと相互作用して、相互作用の際、直接結合を形成する、例えば、一次抗体が、前記一次抗体を生じさせるための抗原として使用された単独個別標的分子に直接結合することを意味している。「間接的に」という用語は本内容では、標的の単独個別のユニットに対する特異的な親和性は有さないが、その単独個別のユニット、例えば一次抗体に特異的に結合し得る他の物質に対して特異的な親和性を有するか、または前記単独個別のユニットに、例えばハプテンに随伴またはリンクする物質に対して特異的な親和性を有し;後者の物質と直接的に相互作用し、前記物質と結合を形成し、それによって、その結合剤が、標的の単独ユニットに間接的に結合する結合剤に関する。
標的の単独ユニットに直接的に特異的に結合し得る結合剤は本明細書では典型的に、第1結合剤によって表される。標的の単独ユニットに間接的に特異的に結合し得る結合剤は典型的には、第2結合剤によって表される。しかしながら、本発明による検出システムは、標的の単独ユニットに間接的に結合し得るさらなる結合剤、例えば第3、第4およびそれ以上のさらなる結合剤を含んでよい。
典型的には、第1結合剤または、一部の実施形態では、第2もしくは第3結合剤を使用して試料と接触させて、標的を認識させ、それに結合させ、かつそれと共に複合体を形成させる。第2、第3およびそれ以上の結合剤を、本発明による方法のさらなるステップで使用して、例えば、検出可能な分子のデポジットを下記の標的部位で認識することができる。一部の実施形態では、第2、第3およびさらなる結合剤を使用して、標的に結合しているシグナルを増幅する。これらの結合剤はまた、柔軟性を検出システムに加えるために、例えば、標的に結合している元々のシグナルを、例えば赤色蛍光シグナルを緑色などに変化させるために有用である。
本発明の結合剤は、異なる特異的結合対のメンバーであってよい。
いくつかの異なる特異的結合対が、当分野では知られており、これらは、互いに特異的に結合し得る2つの異なる分子の対である。本発明の実施で使用するために適した特異的結合対のメンバーは、免疫または非免疫種のものであってよい。
非免疫特異的結合対には、2つの成分が互いに自然の親和性を共有しているが、抗体ではないシステムが包含される。例示的な非免疫結合対は、ビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジン、葉酸−葉酸結合タンパク質、相補的核酸、受容体−リガンドなどである。本発明にはまた、互いに共有結合を形成する非免疫結合対が包含される。例示的な共有結合対には、マレイミドおよびハロアセチル誘導体などのスルフヒドリル反応性基ならびにイソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、ハロゲン化スルホニルなどのアミン反応性基ならびに3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)および3−(ジメチル−アミノ)安息香酸(DMAB)などのカプラー染料などが包含される。
免疫特異的結合対は、抗体−抗体系またはハプテン−抗ハプテン系によって例示することができる。一実施形態では、本発明の免疫特異的結合対は、互いに親和性を有する2つ以上の抗体分子、例えば、一次抗体は、第1結合剤を代表し、二次抗体は第2結合剤を代表する一次抗体および二次抗体対を含む抗体−抗体結合対であってよく;3つまたは4つ以上の抗体メンバーを含む抗体系を、他の実施形態で使用することができる。本発明の他の実施形態では、免疫結合対は、ハプテン−抗ハプテン系によって表され得る。そのような実施形態では、第1結合剤は、標的およびハプテンに対して親和性を有する分子、例えば、ハプテンに結合する一次抗体または核酸配列を含むコンジュゲートによって表され得、第2結合剤は、抗ハプテン抗体によって表され得る。
「ハプテン」という用語は、それに対して抗体が作られ得る単離エピトープとみなすことができる小分子を示しているが、ハプテンは単独では、動物に注射されても、免疫応答を誘発することはなく、担体(通常はタンパク質)にコンジュゲートする必要がある。ハプテンは小分子であるので、ハプテンの多数のコピーを、タンパク質、ヌクレオチド配列、デキストランなどの大きな分子、例えば、ポリマー分子に結合させることができる。ハプテンは、シグナルを増幅することが必要または有利であるアッセイフォーマットのための便利な標識分子として働くことができる。したがって、結合しているハプテンの多数のコピーが、増強された感度、例えば高いシグナル強度をもたらす。適切なハプテンの非限定的な例には、フルオレセイン(FITC)、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、mycジゴキシゲニン(DIG)、チロシン、ニトロチロシンビオチンおよび染料、例えば、テトラメチルローダミン、Texas Red、ダンシル、Alexa Fluor 488、BODIPY FL、ルシファーイエローおよびAlexa Fluor 405/Cascade Blue蛍光体が包含され、米国特許出願公開20080305497号に記載されているハプテンもまた、本発明の目的のために使用することができる。
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリンまたはその一部を示し、それには、源、生産方法および他の特徴に関わらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドが包含される。この用語には、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、単特異性、多特異性、ヒト化、単一鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異およびCDR−グラフト抗体が包含される。抗体の一部は、抗原になお結合し得る任意の断片、例えば、Fab、F(ab’)、Fv、scFvを包含することができる。抗体の由来は、産生方法に関わらず、ゲノム配列によって定義される。
一次抗体は、本発明の内容では、標的に、より具体的には試料の標的の単独ユニットに、例えば単独標的分子に特異的に結合する抗体結合剤、例えば全抗体分子、前記分子の断片または誘導体、例えば、抗体またはポリマー化抗体を含むコンジュゲートを指す。一部の実施形態では、一次抗体は、異なる標的の2つ(またはそれ以上)の単独個別ユニットに結合し得る二価抗体、例えば、受容体ダイマー、例えばHer2/Her3ダイマーに結合し得る抗体であってよい。この実施形態では、本発明による標的の単独ユニットは、単独Her2/Her3ダイマーであり、標的は、試料の前記ダイマー全てを包含する試料中のHer2/her3ダイマーの集団である。一次抗体は、任意の温血種、例えば哺乳動物、トリに由来してよい。
二次抗体は、本発明の内容では、抗体結合剤、例えば、全抗体分子、前記分子の断片または誘導体、例えば、一次抗体または標的部位にデポジットされたハプテンまたは一次抗体もしくは他の結合剤に直接的または間接的に結合しているハプテンに特異的に結合する抗原結合ドメインを有する抗体またはポリマー化抗体を含むコンジュゲートを指す。
三次抗体は、本発明の内容では、抗体結合剤、例えば、抗体分子全体、前記分子の断片または誘導体、例えば、二次抗体に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗体もしくはポリマー化抗体を含むコンジュゲートまたは二次抗体にリンクされるハプテンまたは二次抗体もしくは標的部位にデポジットされたハプテンにコンジュゲートされているポリマーにリンクするハプテンを指す。
時には、抗体は、二次および三次抗体の両方として機能し得る。
一次抗体、二次抗体および三次抗体を包含する本発明で使用される抗体は、いずれの哺乳動物種、例えば、ラット、マウス、ヤギ、モルモット、ロバ、ウサギ、ウマ、ラマ、ラクダまたは任意のトリ種、例えば、ニワトリ、アヒルに由来してもよい。哺乳動物またはトリ種のいずれかに由来するとは、本明細書で使用される場合、特定の抗体をコードする核酸配列の少なくとも一部が、特定の哺乳動物、例えば、ラット、マウス、ヤギまたはウサギまたは特定のトリ、例えば、ニワトリ、アヒルのゲノム配列に由来していることを意味する。抗体は、いずれかのアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEまたはいずれかのサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4であってよい。
ある種の実施形態では、一次抗体は、生体試料の細胞によって発現される生物学的マーカー、詳細には前記の生物学的マーカーの単独個別のユニットに特異的に結合し得る抗原結合領域を含有する。マーカーは、細胞表面で、または細胞膜内で、即ち、細胞の内部で、例えば、細胞質内、小胞体内などで発現されてよい。一部の実施形態では、生物学的マーカーを、細胞から抽出することができ、したがって、これは、細胞不含培地中に、例えば水溶液中に存在するか、またはこれは、細胞培地、血漿、脳脊髄液中などに存在する溶解性分子である。対応する試料の例は、上記されている。
ある種の実施形態では、二次抗体は、一次抗体に、例えば、一次抗体の定常領域に特異的に結合する抗原結合領域を含有する。ある種の実施形態では、二次抗体は、ポリマーにコンジュゲートされていてよい。一部の実施形態では、5から15の二次抗体などの2から20の二次抗体が、1つのポリマーとコンジュゲートされていてよい。他の実施形態では、1つのポリマーが、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の二次抗体などの1から10の二次抗体とコンジュゲートされていてよい。
ある種の実施形態では、三次抗体は、二次抗体に、例えば、二次抗体の定常領域に、または二次抗体にリンクしているハプテンに、または二次抗体とコンジュゲートされているポリマーに特異的に結合する抗原結合領域を含有してよい。ある種の実施形態では、三次抗体は、ポリマーにコンジュゲートされている。一部の実施形態では、1〜20の三次抗体が、1つのポリマーにコンジュゲートされていてよい。他の実施形態では、1、2、3、4または5の三次抗体などの1〜5の三次抗体が、1つのポリマーとコンジュゲートされていてよい。
一部の実施形態では、結合剤の単独結合ユニットを含むポリマー、例えば、一次、二次または三次抗体の分子1つとコンジュゲートされているポリマーが、好ましいことがある。
本発明の目的のために使用することができる抗体には、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、ファージディスプレイまたは代替技術を使用して製造されるキメラ、CDRグラフトおよび人工選択抗体を包含する改変抗体が包含される。
本発明の抗体結合剤は、当分野でよく知られている多数の方法のいずれかによって例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:a Laboratory Manual(1988)(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor NY)に従って、製造することができる。組換え抗体分子を調製するための技術は、上記の参照文献ならびにいくつかの他の参照文献、例えば、欧州特許第0623679号;欧州特許第0368684号;および欧州特許第0436597号に記載されている。抗体をコードする核酸は、cDNAライブラリから単離することができる。抗体をコードする核酸は、ファージライブラリから単離することができる(例えば、McCaffertyら、1990、Nature 348:552、Kangら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4363;欧州特許第0 589 877 B1号を参照されたい)。抗体をコードする核酸は、既知の配列の遺伝子かき混ぜによって得ることができる(Markら、1992、Bio/Technol.10:779)。抗体をコードする核酸は、in vivo組換えによって単離することができる(Waterhouseら、1993、Nucl.Acid Res.21:2265)。本発明の方法で使用される抗体には、ヒト化免疫グロブリンが包含される(米国特許第5,585,089号、Jonesら、1986、Nature 332:323を参照されたい)。本発明の抗体は、その結合親和性を保つと推定されるならば、任意の可能な方法で変化させることができ、例えば、エフェクタータンパク質、毒素、標識などと融合させることができる。抗体を種々の作用物質とコンジュゲートする方法も、よく知られており、下記の本発明の例示的な実施形態に記載されている。
本発明の一実施形態では、抗体結合剤は、Fab領域によって表される。
一実施形態では、抗体結合剤は、2つ以上の異なる抗体結合剤を含む組成物、例えば、第一抗体結合剤および第二抗体結合剤を含み、それら2つ以上の異なる抗体物質が、異なる免疫結合対である組成物であってよい。一実施形態では、組成物において、2つ以上の異なる抗体結合剤のうちの少なくとも1つは、標的に特異的に結合し得る抗体であり、他の少なくとも1つは、酵素を含む抗体である。
他の実施形態では、本発明は、相補的ヌクレオチド配列または核酸類似分子などの非免疫特異的結合対のメンバーである結合剤に関する。
核酸または核酸類似分子、例えば、DNA分子、RNA分子、PNA分子を含む結合剤は、核酸標的の単独個別ユニットを可視化および定量するために有用であり得る。
本発明の目的のために結合剤として使用される核酸配列は、化学的に合成するか、または組換え細胞中で製造することができる。製造の両方の様式が、当分野でよく知られている(例えばSambrookら(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)。一部の実施形態では、核酸結合剤は、ペプチド核酸(PNA)を含む。ペプチド核酸は、DNAおよびRNA中に通常存在するデオキシリボースまたはリボース糖主鎖が、ペプチド主鎖に置き換えられている核酸分子である。PNAを製造する方法は、当分野で知られている(例えば、Nielson、2001、Current Opinion in Biotechnology 12:16を参照されたい)(参照によって本明細書に組み込まれる)。他の実施形態では、結合剤は、ロックド核酸(LNA)を含んでよい(Sorensonら、2003、Chem.Commun.7(17):2130)。
核酸結合剤は、一部の実施形態では、生体試料中の標的配列の単独ユニット、例えば単独mRNA配列に、ストリンジェンシーの特異的な条件下で特異的にハイブリダイズする少なくとも1つのオリゴ−または少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含んでよい。「ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション」という用語は本明細書では、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85〜90%相補的であるなど互いに有意に相補的であるヌクレオチド配列が、互いに結合したままであるハイブリダイゼーション条件を記載するために使用されている。相補性のパーセントは、Altschulら(1997)のNcleic Acids Res.25:3389〜3402(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているとおりに決定される。
ストリンジェンシーの規定条件は、当分野で知られており、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons,Inc.(Ausubelら、1995版.)、セクション2、4および6(参照によって本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。加えて、規定のストリンジェントな条件は、Sambrookら(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、チャプター7、9、および11(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェンシー条件である。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例は、4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、65〜70℃でのハイブリダイゼーションまたは4×SSC+50%ホルムアミド中、42〜50℃でのハイブリダイゼーション、続いて、1×SSC中、65〜70℃での1回または複数回の洗浄である。追加的な試薬、例えば、ブロック剤(BSAまたはサケ精子DNA)、洗浄剤(SDS)、キレート化剤(EDTA)、フィコール、PVPなどをハイブリダイゼーションおよび/または洗浄緩衝液に加えることができることは理解されるであろう。
一部の実施形態では、結合剤を、中程度のストリンジェントな条件下で、試料中の標的配列にハイブリダイズしてよい。中程度のストリンジェンシーには、本明細書で使用される場合、例えば、DNAの長さに基づき、通常の当業者であれば容易に決定することができる条件が包含される。例示される条件は、Sambrookらによって、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第1巻、1.101〜104頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されており、5×SSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の予備洗浄溶液、50%のホルムアミド、6×SSC、42℃でのハイブリダイゼーション条件(または50%のホルムアミド中、42℃でのStark溶液などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)および60℃、0.5×SSC、0.1%のSDSの洗浄条件を使用することを包含する。
一部の実施形態では、結合剤を、低いストリンジェントな条件下で試料中の標的配列にハイブリダイズさせる。低ストリンジェンシー条件には、本明細書で使用される場合、例えば、DNAの長さに基づき、通常の当業者であれば容易に決定することができる条件が包含され得る。低ストリンジェンシーには、例えば、35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのトリス−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%のPVP、0.1%のフィコール、1%のBSAおよび500μg/mlの変性サケ精子DNAを含有する溶液中、40℃で6時間のDNAの予備処置が包含され得る。ハイブリダイゼーションを、次の変更を伴う同じ溶液中で実施する:0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.2%のBSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)の硫酸デキストランおよび5〜20×10のCPM結合剤を使用する。試料を、ハイブリダイゼーション混合物中、18〜20時間、40℃でインキュベートし、次いで、2×SSC、25mMのトリス−HCl(pH7.4)、5mMのEDTAおよび0.1%のSDSを含有する溶液中、55℃で1.5時間洗浄する。洗浄溶液を、新鮮な溶液に取り替え、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。
他の実施形態では、本発明は、非抗体タンパク質に由来するペプチド配列、例えば種々のタンパク質の核酸結合ドメイン、種々の細胞および核内受容体のリガンドならびにそれらの誘導体に由来するペプチド配列であるか、またはそのようなペプチド配列を含む結合剤に関するものであり得る。そのような結合剤の一部の非限定的例は、抗体定常領域に結合し得る相補的カスケードの従来の経路のc1qタンパク質、MHC分子、例えば、MHCクラスIおよびMHCクラスIIおよび特殊MHC、ロイシンジッパードメインを有する分子、例えば、fos/jun、myc、GCN4などの細胞シグナル伝達経路に関与している分子などの特異的結合対を有する分子、SrcまたはGrb−2などのSH1またはSH2ドメインを有する分子;免疫グロブリン受容体、例えば、Fc受容体;キメラタンパク質、即ち、2つ以上の特異的結合対の形質を組み合わせるように改変されたタンパク質であってよく、例えば、ロイシンジッパーを抗体のFc領域へと操作することができ、SH2ドメインを、抗体のFc領域で発現されるように操作することができる。他の実施形態では、融合タンパク質を、置換可変ドメインを備えた抗体のFc部分を含むように操作することができる。
結合剤はまた、大きな生物学的分子のある種の構造ユニットに特異的に結合し得る小分子であってもよい。
一部の実施形態では、結合剤は、検出可能な標識、例えば蛍光物質、ハプテン、酵素などを含んでよい。一実施形態では、本発明は、デポジットされた検出可能な分子に特異的に結合することができ、本発明の標的部位を可視化するために使用される標識された結合剤、即ち、標識された第3またはさらなる結合剤に関する。一実施形態では、本発明は、酵素標識を含む結合剤に関する。適切な酵素標識の非限定的な例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ−ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ベータ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ(GO)であってよい。一実施形態では、結合剤は、標識としてHRPを含んでよい。他の実施形態では、結合剤は、標識としてAPを含んでよい。
本発明の標的部位を形成するために必要な結合剤の量は、種々の因子、例えば試料の種類、標的の種類、結合剤の種類、結合剤の結合親和性などに応じて変動し得る。共通する一般的知識を使用して、当業者であれば、適切な結合剤を選択し、いずれの特定の実施形態についても必要な量を決定することができる。一部の実施形態では、例えば、試料が豊富な量の標的を含むか、または標的が幅広い動的濃度範囲で存在する実施形態では、標的部位を形成する結合剤の量を調節して、試料中に存在する標的の全ての単独ユニットではなく、その分別部分集団が、本発明の標的部位の形成に関わっているようにすることが好ましいことがある。他の実施形態では、例えば、標的または標的の単独ユニットの非常に低い標的発現を伴う試料の場合には、標的の全てまたは実質的に全ての単独ユニットが、本発明の標的部位の形成に関わっていることが好ましいことがある。後者の実施形態では、試料の個別単独ユニットの実質的に大部分との結合部位の形成を確実にするであろう、即ち、存在する標的の単独ユニットの実質的に大部分が、標的部位の形成に関わっているであろう量で、結合剤を使用することが好ましいことがある。
酵素
本発明では、標的の1つまたは複数の個別のユニットを含む試料
本発明では酵素を含む少なくとも1つの結合剤は直接的または間接的に、標的の単独ユニットに結合し、前記ユニットと共に複合体を形成する。
本発明による酵素は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素である(「オキシドレダクターゼ」または「本発明の酵素」と本明細書では互換的に称される)。
「オキシドレダクターゼ活性を有する酵素」という用語は、一方の分子(還元体、また、水素または電子供与体とも称される)から他方の分子(酸化体、また、水素または電子受容体とも称される)へと電子の移動を触媒する、酵素のEC番号分類においてEC1として分類される酵素を意味する。一部の好ましい実施形態では、本発明は、E1.10.(フェノールオキシダーゼ)およびE1.11.(ペルオキシダーゼ)として分類されているオキシドレダクターゼに関する。
好ましい一実施形態では、本発明は、フェノールオキシダーゼ、詳細には、銅含有オキシダーゼ酵素、ラッカーゼ(E 1.10.3.2)のファミリーに関する。ラッカーゼは、フェノールおよび同様の分子に作用して、一電子の酸化を行う。ラッカーゼは、天然に生じるフェノールのファミリーであるリグノールの酸化カップリングを促進することによって、リグニンの形成の際に役割を果たす。本発明の目的に適したラッカーゼは例えば、Phillips LEおよびLeonard TJ(Benzidine as a Substrate for Measuring Phenoloxidase Activity in Crude Cell−Free Extracts of Schizophyllum commune.Mycologia 1976、68:277〜285)またはKunamneni A、Plou FJ、Ballesteros A、Alcalde M.(Laccases and their applications:a patent review.Recent Pat Biotechnol. 2008、2(1):10〜24)またはRodriguez Couto S、Toca Herrera JL(Industrial and biotechnological applications of laccases:a review.Biotechnol Adv.2006、24(5):500〜13.)によって記載されている酵素であってよい。
「ラッカーゼ」という用語は、本明細書では、本発明のフェノールオキシダーゼ活性を有する酵素を示すために使用されているが、しかしながら、ラッカーゼが、本発明の目的に適したフェノールオキシダーゼの多くの実施形態の1つであることは理解される。
他の好ましい実施形態では、本発明は、下式の反応を触媒するペルオキシダーゼ酵素活性に関する:
ROOR’+電子供与体(2e)+2H → ROH+R’OH
本発明の好ましい一実施形態では、ペルオキシダーゼ活性を有する酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)である。本発明の他の実施形態では、ペルオキシダーゼ活性を有する酵素は、ダイズペルオキシダーゼ(SP)である。
一部のペルオキシダーゼでは、最適な基質は、過酸化水素であり、一部の他のものは、有機ペルオキシドなどの有機ヒドロペルオキシドでより高い活性を有する。電子供与体の性質は、酵素の構造に非常に依存しており、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、電子供与体および受容体の両方として様々な有機化合物を使用することができる。HRPは、アクセス可能な活性部位を有し、多くの化合物は、反応の部位に到達し得る。
酵素活性、即ちオキシジレダクターゼ(oxidireductase)活性、例えばフェノールオキシダーゼまたはペルオキシダーゼ活性は、結合剤の分子に直接的または間接的にリンクする酵素の全長分子か、または酵素活性と合成されている酵素の断片、例えば酵素分子の全長の51%から99.9%もしくは51%未満、例えば40%、30%未満によって表され得る。
本発明の結合剤は、1つまたは複数の酵素部分と直接的または間接的にコンジュゲートされていてよい(「部分」という用語は、本内容では、オキシドレダクターゼ活性を示し得る酵素の分子の一部を意味し、これには、酵素分子の全体または実質的に全体と、オキシドレダクターゼ酵素活性を示し得る前記分子の一部との両方を包含する)。第1および/または第2結合剤の両方またはいずれかの分子は、オキシドレダクターゼの1つまたは複数の官能的に活性な部分とコンジュゲートされていてよい。一実施形態では、第1結合剤の少なくとも1つの分子は、オキシドレダクターゼ活性を示し得る1つまたは複数の酵素部分とコンジュゲートされていてよく;他の実施形態では、第2結合剤の少なくとも1つの分子は、1つまたは複数のそのような部分とコンジュゲートされていてよい。第3およびさらなる結合剤の分子もまた、オキシドレダクターゼとコンジュゲートされていてよい。「直接的にコンジュゲートされている」という用語は、酵素部分が、化学的結合を介して結合剤の分子にリンクしていることを意味する。「間接的にコンジュゲートされている」という用語は、酵素の部分が、一方で結合剤との化学的結合および他方で酵素との化学的結合を有するリンキング分子を介して結合剤の分子にリンクしていることを意味する。生物学的分子およびリンカー分子をコンジュゲートする方法は、当分野でよく知られており、下記に例示されている。
一実施形態では、オキシドレダクターゼの部分は、HRPの部分、例えばHRP分子全体、HRP酵素活性を示し得るその断片であり、これはまた、酵素活性を有するHRPの部分を含む組換えタンパク質などであってもよい。他の実施形態では、オキシドレダクターゼの部分は、ダイズペルオキシダーゼ(SP)の部分であってよい。他の実施形態では、オキシドレダクターゼの部分は、ラッカーゼの部分であってよい。
オキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む結合剤の非限定的例は、1つまたは複数のHRPの部分とコンジュゲートされている抗体分子またはその誘導体、例えばFabおよびHRPとコンジュゲートされている核酸結合剤であってよい。そのような結合剤は、単独標的ユニット、例えば単独標的分子に直接的に、または間接的に結合して、それによって、複合体を形成していてよく、その際、単独のそのような複合体は、標的の単独個別のユニットと、結合剤のうちの1つまたは複数がオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤とを含む。
一実施形態では、結合剤は、結合剤に直接的にリンクしている1つまたは2つ以上のペルオキシダーゼの部分を含むコンジュゲート、例えば、1つまたは複数のHRPの部分と直接的にコンジュゲートされている抗体分子である。他の実施形態では、結合剤は、ペルオキシダーゼ活性を有する2つ以上の酵素、例えば、結合剤に間接的にリンクしている2つ以上のHRPの部分を含むコンジュゲート、例えば、1つまたは複数の抗体の分子と、主鎖ポリマーに独立に結合している1つまたは複数のHRP部分、即ちペルオキシダーゼ活性を有する酵素とが、結合剤に、即ち抗体に間接的にリンクしているコンジュゲートであってよい。
結合剤の分子1つ当たりのHRPの数は、結合剤1つ当たり1酵素部分から、結合剤1つ当たり20〜50、またはさらに多くまで変動してよい。一部の実施形態では、HRP部分の数が、1結合剤当たり少なくとも2、好ましくは2から20〜25酵素部分、例えば4、5、6、7、8、9、10などの3から20の間である結合剤を使用することが好ましいことがある。意外にも、結合剤1つ当たりの酵素部分の数が1つより多い、好ましくは結合剤1つ当たり2つより多い、結合剤1つ当たり3つより多い結合剤を使用することが判明した。一部の実施形態では、結合剤1つ当たり4つを超える酵素部分、好ましくは結合剤1つ当たり5から20、例えば、5から15を含む結合剤を使用することが好ましいことがある。4つを超える酵素部分を有する結合剤は、サイズが実質的に同一のドットとして可視化し得る標的部位を形成するために有利である。一部の実施形態では、そのような結合分子のプールの酵素を含む結合剤分子がそれぞれ、ほぼ同じ数の酵素部分、例えば、プールの結合剤1つ当たり4〜6、結合剤分子1つ当たり酵素部分5〜7、6〜8、7〜9、8〜10など、例えば、抗体分子1つ当たり、例えば、一次または二次抗体分子1つ当たりHRP部分5〜6または6〜7を含むことがさらに好ましいことがある。多数のHRP部分を含む後に述べた結合剤構成体は、例示である。述べられている効果を達成するために、結合剤は、上記で検討された本発明のオキシドレダクターゼ活性を有する任意の酵素の多数の部分を含んでよい。結合剤はまた、種々のオキシドレダクターゼ酵素の多数の部分の組合せを含んでもよい。
一部の他の実施形態では、1つまたは2つ以上の酵素、例えばHRPの部分とコンジュゲートされている結合剤、例えば単独抗体分子または抗体の単離Fab領域の比較的に小さいコンジュゲート分子が好ましいことがある。そのような結合剤は、比較的コンパクトな分子であり、このことは、標的中または試料中に「隠れている」か、またはマスクされている標的の個別ユニットを検出するためには有利であり得、例えば、個別の単独標的分子は、周囲の他の分子によってマスクされていることがあり、単独標的構造は、標的分子中に隠れ得るか、または単独ウイルス性粒子は、細胞を含む複雑な生体試料においては達することが困難であることがある。
一部の他の実施形態では、結合剤および数十から数百の酵素部分を含む大きなコンジュゲートが好ましいことがある。そのような結合剤は、例えば、非常に迅速な標的検出が重要であるか、または個別の標的部位当たり大きなデポジットを得ることが望ましい場合において有利であることがある。
オキシドレダクターゼ活性、例えばペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む結合剤に(直接的または間接的に)結合している標的の単独ユニットは、本発明の単独標的部位を構成する。
一実施形態では、本発明の単独標的部位は、標的の単独標的ユニットと、少なくとも1つの一次抗体またはその誘導体と、ペルオキシダーゼ活性を有する1つまたは2つ以上の酵素、例えばHRPとコンジュゲートされている少なくとも1つの二次抗体またはその誘導体とを含む。
他の実施形態では、単独標的部位は、標的の単独ユニットと、ハプテンとコンジュゲートされている少なくとも1つの一次抗体分子と、ペルオキシダーゼ活性を有する1つまたは2つ以上の酵素、例えばHRPとコンジュゲートされているハプテンに対する抗体とを含んでよい。
他の実施形態では、標的部位は、標的の単独ユニットと、標的に特異的な1つまたは複数の第1核酸/核酸類似体結合剤と、第1核酸/核酸類似体結合剤に特異的な1つまたは複数の第2核酸/核酸類似体結合剤とを含んでよい。
上記の実施形態は、非限定的である。本発明は他の実施形態では、上記で検討された任意の標的の単独ユニットと、本発明の標的部位を作る上記で検討された任意の結合剤との任意の組合せに関し得る。
本発明の単独標的部位は一実施形態では、本発明の酵素活性で標識されている、即ち、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素と直接的にもしくは間接的にコンジュゲートされている標的の単独ユニット、またはオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む組換え融合分子の単独ユニットを含む固体支持体の単独部位であってよい。一実施形態では、オキシドレダクターゼ酵素は、それ自体が標的であることもあり、対応して、標的部位は、この実施形態では、固定化されたオキシドレダクターゼ酵素の部分、例えば固体支持体上、またはその中に固定化されているHRPまたはラッカーゼなどのオキシドレダクターゼ酵素の単独ユニットをまさに含むことがある。
酵素基質
1つまたは複数の結合剤とインキュベーションし、上記の本発明の標的部位を形成した後に、本発明による1つまたは複数の単独標的部位を含む試料を、水溶液(i)中でインキュベートする。本発明による水溶液(i)は、本発明の単独標的部位に付随している酵素の第1基質を含み、その際、前記第1基質は、(1)酵素と反応すると安定なラジカルを発生させることができ;かつ(2)酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で前記酵素の第2基質の分子を架橋させて、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができる水溶性の電子リッチな有機化合物である。本発明による水溶液(i)はまた、本発明の単独標的部位に付随している酵素の第2基質も含み、その際、前記第2基質は、前記酵素の基質および検出可能な標識として働くことができる少なくとも2つの化合物を含むコンジュゲート分子であり、その際、検出可能な標識は、蛍光、発光、放射性もしくは発色物質または特異的結合対のメンバーからなる群から選択される。
第1基質
本発明の単独標的部位に付随している酵素の第1基質(後記では「第1基質」とも称される)は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質である。この基質は、(1)水溶性の電子リッチな有機化合物であり、(2)前記酵素と反応すると安定なラジカルを発生させることができ、かつ(3)(前記酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で)前記酵素の第2基質の水溶性分子を架橋させて、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができる。
「水溶性」という用語は、第1基質の分子が、水および水含有溶液に溶解することを意味する。「電子リッチな化合物」という用語は、本内容では、交互の単独および多数の結合を有する化合物を包含する、結合p軌道の共役系を含む有機化合物を意味する。孤立対およびラジカルは、この系の一部であってよい。化合物は、環式、非環式または両方であってよい。「コンジュゲートされている」とは、間に存在するシグマ結合を超えた一方のp軌道と他方との重なりが存在することを意味する(より大きな原子では、d軌道が関与していてよい)。共役系は、間にある単結合を橋かけする重なったp軌道の領域を有する。これによって、隣接して並ぶp軌道全てにわたるパイ電子の非局在化が可能となり、このことは一般に、分子の全体エネルギーを下げ、安定性を高め得る。共役系のパイ電子は、単結合または原子に属さず、むしろ、原子団に属する。
本発明のオキシドレダクターゼ活性を有する酵素の群には、多大な数の基質を利用することができる多様な酵素が包含される。これらの基質のうち、本発明の基質は、本発明のオキシドレダクターゼ活性を有する酵素と反応すると、ラジカル、好ましくは安定なラジカルを発生させることができる共役パイ系を含む水溶性で有機のエレクトロンリッチな有機化合物である化合物である。「安定なラジカル」という用語は、本内容では、本発明の条件下で、例えば水溶液(i)中で、第1基質のラジカルが、少なくとも20秒、好ましくは約1分から約15分またはそれより長く、例えば2、3、4または5分、5から10分の間などの寿命を有することを意味する。さらに、本発明の第1基質の群をなしている化合物のラジカルは、本発明の第2基質の水溶性分子を架橋させて、それによって、前記水溶性分子を水不溶性ポリマー生成物に変換することができる。
詳細には、一実施形態では、本発明は、第2結合はいずれも二重結合である連続する炭素原子の群を含む水溶性で有機の電子リッチな化合物、好ましくは、少なくとも3つの(C−C=)の繰り返しからなる鎖を含む化合物または芳香環構造を含む化合物の群によって表される第1基質に関する。
一実施形態では、第1基質は、式(I)の構造を含む化合物によって表され得る:
Figure 0005836958
[式中、
R1は、アリールまたはビニルであり、
R2、R3およびR4は独立に、H、N−(X)、O−(X)(ここで、Xはアルキル、ビニルまたはアリールまたはHである)であり、R2、R3およびR4は、同時にHであることはなく、
ここで、
Hは水素であり;
Oは酸素である]。
本発明のオキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質としての能力を有する上式の化合物の非限定的例は、3’3’−ジアミノベンジジン、フェルラ酸、アルファ−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸およびその誘導体であってよい。
好ましい一実施形態では、本発明は、第1基質としての3’3’−ジアミノベンジジン(DAB)に関する。
本発明は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素、即ちホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)およびペルオキシド化合物、即ち過酸化水素の存在下で第2基質の分子を架橋させ得る安定なラジカルを形成させ、第2基質の架橋分子をばらばらに、単独標的部位にデポジットさせるために、DABの能力を利用する。
他の好ましい実施形態では、本発明は、第1基質としてのフェルラ酸に関する。
フェルラ酸もまた、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素、即ちホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)およびペルオキシド化合物、即ち、過酸化水素の存在下で本発明の第2基質の分子を架橋させ、前記第2基質をばらばらに、本発明の単独標的部位にデポジットさせることができる。
一部の他の好ましい実施形態では、本発明は、3’3’−ジアミノベンジジン、フェルラ酸の誘導体に関するものであり得る。「誘導体」という用語は、本内容では、3’3’−ジアミノベンジジン、フェルラ酸に由来する化合物、またはそれらの分子の中の1個の原子が、他の原子または原子団で置き換えられると3’3’−ジアミノベンジジン、フェルラ酸から生じると想像し得る化合物を意味する。本発明は、上記で検討された本発明の第1基質についての要件を満たす3’3’−ジアミノベンジジン、フェルラ酸の誘導体に関する。
水性培地(i)および/または水性培地(ii)中での第1基質の量は、第1基質を代表する化合物の構造に応じて、約0.05mMから約2mMで変動してよい。一般に、R1がビニルまたはビニル誘導体である式(I)の化合物は、R1がアリールまたはその誘導体である化合物よりも多い量で使用する。したがって、DABは、水溶液(ii)中でのその量が1mM未満、好ましくは0.05mMから0.08mMの間などの0.05mMから1mMの範囲内、例えば、約0.07mM、即ち、0.066mMから0.074mMまたは0.08mMから0.1mMの間、例えば、約0.09mMまたは0.1mMから0.3mMの間、例えば約0.15mM、約0.2mM、約0.25mMまたは0.3mMから0.6mMの間、例えば約0.35mM、約0.4mM、約0.45mM、約0.5mM、約0.55mMまたは0.6mMから1mMの間、例えば約0.7mM、約0.75mM、約0.8mM、0.8mMから1mMの間である場合に、本発明による第1基質として働く。後者の量でDABが存在する場合、直径約1マイクロメートル、1.5マイクロメートル、2マイクロメートル以上、例えば約3または4マイクロメートルなどの0.4マイクロメートルよりも大きな第2基質の別々の丸形のデポジットを形成することができることが、意外にも発見された。第2基質のそのようなデポジットを生じさせるために、第1基質としてのフェルラ酸は、水性培地(ii)中に、例えば、約1.5mMなどの約1mMから約2mMの間の量で存在してよい。
第2基質
本発明では、本発明の酵素の第2基質(本明細書では「第2基質」とも称される)は、前記酵素の基質および検出可能な標識として働くことができる少なくとも2つの化合物を含むコンジュゲート分子であり、その際、検出可能な標識は、蛍光、発光、放射性もしくは発色物質または特異的結合対のメンバーからなる群から選択される。
一部の好ましい実施形態では、本発明は、次の形質を共有する第2基質としての大きな群のコンジュゲート分子に関する:
1.コンジュゲート分子は、本発明の酵素の基質として、好ましくはHRPの基質として、かつ1つまたは複数の標識として働くことができる2つ以上の物質を含み、基質および標識が一緒に、水溶性リンカー化合物(後記では「リンカー」と称する)を介してリンクしている水溶性分子である;
2.酵素基質部分は、コンジュゲート分子において前記分子のある部分に「濃縮」されていて、標識は、前記分子の他の部分に「濃縮されており、その際、標識(複数可)は、約30個以上の連続的に相互接続している原子によって、基質から離されている、即ち約2.5nm以上、好ましくは3nmより大きく分離されている;
3.酵素基質は、2.5nm未満の距離によって互いに分離されている、例えば、30個未満の相互接続している炭素、窒素、硫黄および/または酸素原子などの炭素またはヘテロ原子によって、好ましくは5〜20個以下の原子によって、コンジュゲートの分子内で分離されている;
4.リンカーは、少なくとも30個の連続的に接続している原子を含む化合物である;
5.コンジュゲートは、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の環境下にない場合、ペルオキシド化合物および本発明の第1基質を含有する水溶液(ii)から沈殿しない。
6.コンジュゲートは、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の存在下で、かつ環境中に前記酵素の第1基質がない場合、ペルオキシド化合物を含有する水溶液(ii)から沈殿しない。
7.コンジュゲートは、環境中に前記酵素が存在する場合、ペルオキシド化合物および本発明のオキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質を含有する水溶液(ii)から沈殿する。
第2基質のデポジットは、視覚的手段によって直接的に検出可能であり得る。それというのも、これらは、一部の実施形態では、発色性、蛍光または発光標識を含み得るためである。他の実施形態では、沈殿した第2基質を、デポジションの後のステップにおいて「染色」して、可視化することができる。いずれの場合にも、第2基質のデポジットは、周囲の中での本発明の単独標的部位の存在を観察者に「レポート」するであろう。したがって、本発明の第2基質の分子は、本明細書では「リポーター」分子と互換的に称される。
第2基質分子の非限定的実施形態は、下記および実施例に詳述されている。
一実施形態では、本発明は、
(i)1つまたは複数の検出可能な物質(互換的に「標識」と称される)
(ii)本発明の酵素の基質として働くことができる少なくとも2つの物質および
(ii)リンカー
(ここで、
前記リンカーは、少なくとも2つの分岐点を含有する少なくとも30個の連続的に接続している原子からなる少なくとも1つの直鎖を含む化合物であり、ここで、前記分岐点は、少なくとも30個の連続的に接続している原子の分子距離によって分離されており;
標識(i)およびオキシドレダクターゼ基質部分(ii)は、リンカーに、少なくとも30個の連続的に接続している原子の距離によって分離されているその2つの分岐点の所で付着しており、かつ
任意の2つの隣接する酵素基質は、30個未満の連続して相互に結合している原子である分子距離によって互いに分離されている)
を含む水溶性コンジュゲート分子である第2基質に関する。
「検出可能な物質」という用語は、物質が、視覚的手段によって検出される検出可能な発色性、蛍光、発光または放射性シグナルを放出し得るか、またはその特異的結合対、例えば抗体、核酸配列、核酸配列類似配列、ハプテン、抗原、受容体、受容体リガンド、酵素などを使用して検出することができることを意味する。
一部の実施形態では、本発明の水溶性コンジュゲート分子は加えて、その形質を増強し得る、例えば、標識またはその酵素基質としてのその能力を改良し得るか、またはその水溶解性を増大/低減し得る部分を含むことができる。
一実施形態では、本発明のコンジュゲート分子は、式(II):
(Y)n−L−(Z)m
[式中、
Yは、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質として働くことができる部分であり;
Zは、検出可能な標識であり;
Lは、リンカー化合物であり
ここで、
nは、2から150の整数であり、
mは、1から150の整数である]
の化合物の群から選択することができる。
好ましい一実施形態では、Yは、下式(ii):
Figure 0005836958
[式中、
R1は、−H、−O−X、N(X)または−S−Xであり;
R2は、−H、−O−X、−N(X)または−S−Xであり、
R3は、−H、−OH、−NHまたは−SHであり;
R4は、−H、−O−X、−N(X)または−S−Xであり、
R5は、−H、−O−X、N(X)または−S−Xであり、
R6は、−CON(X)またはCO−Xであり、
ここで、
Hは水素であり;
Oは酸素であり、
Sは硫黄であり、
Nは窒素であり、
Xは、H、アルキルまたはアリールである]
の化合物から選択される。
一実施形態では、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質として働くことができる化合物のうちの少なくとも1つは、式(ii)の化合物である。
一実施形態では、コンジュゲート分子中の、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質として働くことができる化合物のうちの少なくとも2つは、式(ii)の化合物である。
一実施形態では、コンジュゲート分子中の、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質として働くことができる化合物のうちの少なくとも2つは、同一の式(ii)の化合物である。
一実施形態では、コンジュゲート分子中の、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質として働くことができる化合物のうちの少なくとも2つは、異なる式(ii)の化合物である。
一実施形態では、コンジュゲート分子中の、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質として働くことができる化合物は全て、式(II)によって定義される。一実施形態では、これらは、同一の化合物であり、他の実施形態では、コンジュゲート分子は、式(II)によって定義される異なる化合物の任意の組合せを含む。
好ましい一実施形態では、Yはケイ皮酸の残基であってよく;他の好ましい実施形態では、Yはフェルラ酸の残基であってよい。他の好ましい実施形態では、Yはコーヒー酸の残基であってよく;他の好ましい実施形態では、Yは、アミノケイ皮酸の残基であってよい。他の好ましい実施形態では、Yは、シナピン酸の残基であってよい。他の好ましい実施形態では、Yは、フェルラ酸、ケイ皮酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸またはシナピン酸の誘導体であってよい。
好ましくは、式(II)によって定義される残基Yは、基R6を介して、リンカーLに接続している。
好ましい一実施形態では、コンジュゲートは、2から4つの同一の残基Yを含む。他の好ましい実施形態では、コンジュゲートは、2から4つの異なる残基Yの組合せを含む。好ましい一実施形態では、2から4つの残基Yは、式(II)によって定義される化合物である。
好ましい一実施形態では、コンジュゲートは、2から4つのフェルラ酸残基またはその誘導体の残基を含んでよく、他の実施形態では、コンジュゲートは、2から4つのケイ皮酸残基またはその誘導体の残基を含んでよく;他の実施形態では、コンジュゲートは、2から4つのコーヒー酸残基またはその誘導体の残基を含んでよく;他の実施形態では、コンジュゲートは、2から4つのアミノケイ皮酸残基を含んでよく;他の実施形態では、コンジュゲートは、2から4つのシナピン酸残基またはその誘導体の残基を含んでよい。後者の化合物の2つから4つの誘導体は、同じ化合物であってよいか、または異なる化合物であってよい。
好ましい一実施形態では、コンジュゲート分子は、2つの式(II)のY化合物または2つのその誘導体、例えば2つのフェルラ酸残基または2つのケイ皮酸残基または2つのアミノケイ皮酸残基または2つのカフェイン酸残基または2つのシナピン酸残基と、1つまたは複数の検出可能な標識とを含んでよく;他の実施形態では、コンジュゲートは、3つのフェルラ酸、ケイ皮酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸、シナピン酸などの3つの式(II)の分子または3つのその誘導体と、1つまたは複数の検出可能な標識とを含んでよく;他の実施形態では、コンジュゲートは、4つの式(II)の化合物または4つのその誘導体、例えば4つのフェルラ酸、ケイ皮酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸、シナピン酸または4つの後者の誘導体と、1つまたは複数の検出可能な標識とを含んでよい。
一部の実施形態では、Y化合物の数は、例えば5〜10、10〜15、15〜20、20〜50、50〜100または100〜150の化合物など、4つより多くてよい。そのようなコンジュゲート分子の非限定的例は、実施例に記載されている。一部の好ましい実施形態では、そのようなコンジュゲートは、少なくとも30個の連続的に接続している原子、例えば30〜150個の原子からなる1つより多い直鎖を含んでよく、ここで、2つから4つのY化合物が、直鎖それぞれに、鎖の第1および同じ分岐点で付着しており、そのような直鎖のうちのいくつかは、他の水溶性リンカー分子、例えばデキストランに、前記直鎖の第2(他の)分岐点を介してリンクしている。
好ましい一実施形態では、コンジュゲート分子は、2つもしくは4つの異なる式(II)の化合物の組合せまたは2つもしくは4つのその誘導体の組合せ、例えば、2つのフェルラ酸残基および1つのケイ皮酸残基、2つのシナピン酸残基および2つのコーヒー酸残基などを含んでよい。
好ましい一実施形態では、Yは、アミノ酸チロシンの残基またはその誘導体の残基であってよい。コンジュゲートは、2から4つ以上のそのような残基を含んでよい。
一実施形態では、コンジュゲート分子は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質の組合せを含んでよく、その際、前記基質のうちの少なくとも1つはチロシンである。一実施形態では、コンジュゲート分子は、少なくとも1つのチロシン残基と、少なくとも1つの式(II)の化合物またはその誘導体とを含み、他の少なくとも1つは、式(II)の化合物、その誘導体、例えば1つのチロシン残基およびシナピン酸またはその誘導体の2つの残基である。
一部の実施形態では、コンジュゲートが4から6の残基Yを含むことが好ましいことがあり、ここで、Yは、任意の化合物または上記のとおりの任意の化合物の組合せによって表される。
本発明では、Y化合物は、コンジュゲート分子中において、群として位置しており、好ましくは、1群当たり2から4つのY化合物として群になっている(即ち、4つより多いY化合物を含むコンジュゲートは、2つから4つのY化合物からなる複数の群を含んでよく、ここで、前記群は、コンジュゲート分子において、原子団によって、例えば30個以上の接続している原子に対応する分子距離によって分離されている)。好ましくは、そのような群中の2つから4つのY化合物は、5〜15個以下、例えば5〜10、6〜12、7〜13、8〜14、9〜15個などの相互に接続している原子である2つの隣接するY残基の間に距離をもたらすスペーサー化合物を介して一緒に連結している。例えば、2から4つのY化合物は、2から4つのアミノ酸残基、例えば、リジン、セリン、システインなどの残基を含むペプチド鎖を構成するアミノ酸に付着していてよく、ここで、Y化合物は、ペプチドのアミノ酸残基の反応性基に、例えば、リジン残基のイプシロンアミノ基に付着している。2つから4つの化合物Yはまた、いくつかの分岐点を含む他の短いポリマーを介して互いに接続していてもよく、ここで、これらの分岐点の間の分子距離は、3〜7個の原子以下、好ましくは3〜5個の原子からなる鎖に対応し、Y化合物は、直接的、間接的に前記分岐点にリンクしていてよい。2から4つの化合物Yはまた、一緒に群になって、任意の2から4つのY化合物を付着させ得る2から4つの反応性基を有する非ポリマー分子にコンジュゲートされていてよい。Y化合物がそのような群になっている位置は後記では、コンジュゲート分子の「Yヘッド」と称される。
好ましい一実施形態では、Yヘッドは、短いポリマー、例えば、短いPNA分子または短いペプチドを介してリンクしている2から4つのY−残基を含み、ここで、ペプチドは好ましくは、リジン、セリングルタメートおよび/またはシステイン残基を含む。しかしながら、少なくとも2つのY−残基とコンジュゲートし得る15個以下の原子を含む任意の他のポリマーまたは非ポリマー水溶性分子およびリンカーLが、適し得る。
一実施形態では、2から4つの化合物Yを含む1つのYヘッドは、2つ以上の下式(III)
Figure 0005836958
[式中、RおよびRは、NHおよびOから選択され、Rは、メチル、エチル、プロピル、CHOCHおよび(CHOCHから選択され、ここで、連続的に繰り返すエチルオキシ基は3つ以下である]の繰り返しを含むポリマーにリンクしていてよい。生じたコンジュゲートは、1つ(またはそれ以上)の検出可能な標識とさらにコンジュゲートされていてよいか、または1つまたは複数のそのようなコンジュゲートの付着を可能にする1つまたは複数の反応性基を含む他の水溶性分子とコンジュゲートされていてよい。そのような水溶性分子の1つの非限定的例は、デキストランポリマーであってよい。
コンジュゲート分子においてY化合物の間隔が近いことは、本発明の第2基質としてのコンジュゲートの機能的能力に影響を及ぼし、即ち、コンジュゲートは、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素が環境中に存在しない場合には、ペルオキシド化合物および3,3’−ジアミノベンゼジン(diaminobenzedine)(DAB)を含有する水溶液中に溶けたままであるが、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素が環境中に存在する場合には、そのような溶液から迅速かつ効率的に沈殿する(1つのみのY化合物を含むか、またはYヘッドの形態でコンジュゲート分子において「濃縮」されていない、即ち、2つの隣接するY残基の間の分子間隔が、上記で検討された距離よりも大きい複数のY化合物を含むコンジュゲートと比較して。そのような化合物は、本発明の単独標的部位に別々のデポジットを効率的に形成しない)。
コンジュゲート分子の検出可能な標識は、視覚的に検出することができる任意の物質、例えば、蛍光または発光物質であってよいか、またはいくつかの検出手段を使用することによって検出することができる任意の物質、例えば、放射性標識、特異的結合対のメンバー、例えば、核酸配列、ハプテンなどであってよい。
任意の蛍光、発光、生体発光または放射性分子を、標識として使用することができる。それらの多くは、市販されており、例えば、蛍光染色液Alexa Fluor(分子プローブ)およびDyLight Fluor(Thermo Fisher Scientific)である。蛍光標識の他の非限定的な例は、次の分子であってよい:5−(および6)−カルボキシフルオレセイン、5−または6−カルボキシフルオレセイン、6−(フルオレセイン)−5−(および6)−カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、Cy2、Cy3、Cy5、AMCA、PerCP、R−フィコエリトリン(RPE)アロフィコエリトリン(APC)、テキサスレッド、プリンストンレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)コーティングされたCdSeナノ微結晶、ルテニウム誘導体、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2−ジオキセタンおよびピリドピリダジン、水素、炭素、硫黄、ヨウ化物、コバルト、セレン、トリチウムまたはリンの放射性同位体。
一部の実施形態では、検出可能な標識は、酵素であってよい。適切な酵素標識の非限定的例は、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ−ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ベータ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ(GO)であってよい。
他の実施形態では、検出可能な標識は、特異的結合対のメンバー、例えばハプテンであってよい。適切なハプテンの非限定的例として、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシギニン(digoxiginin)、フルオレセイン、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、ニトロチロシン、アセチルアミノフルレン(acetylaminoflurene)、水銀トリントロフォノール(mercury trintrophonol)、エストラジオール、ブロモデオキシウリジン、ジメチルアミノナフタレンスルホネート(ダンシル)、アミノ酸チロシン、セリンなどを挙げることができる。適切な特異的結合対の例としてまた、ビオチン、ストレプトアビジン、相補的天然および非天然オリゴヌクレオチド配列、亜鉛フィンガー結合ドメイン対なども挙げることができる。他の例は、上記で検討されている。
好ましい一実施形態では、標識はハプテンである。他の好ましい実施形態では、標識は蛍光物質である。他の好ましい実施形態では、標識は、特異的結合対のメンバーである。他の実施形態では、他の標識が好ましいことがある。
コンジュゲート分子(上記のいずれかとして)1つ当たりの検出可能な標識の数は変動してよい。一部の実施形態では、標識の数は、コンジュゲート分子1つ当たり1から3つ、例えば、1、2または3つの標識であってよい。一部の他の実施形態では、コンジュゲートはさらに、コンジュゲート分子1つ当たり4つから150までの標識を含んでよい。
好ましい一実施形態では、コンジュゲート(上記のいずれかとして)は、1つの検出可能な標識を含む。好ましい一実施形態では、コンジュゲート分子は、1つのYヘッド(上記で検討したいずれかとして)および1つの標識を含んでよい。
本発明では、コンジュゲート分子において、検出可能な物質(単独標識またはその複数)は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質である化合物から、例えばYヘッドから、2.5nm超の分子距離によって分離されている、例えば少なくとも30個の連続する原子、例えば30〜150個以上の連続する原子によって分離されている。コンジュゲートが、接続している原子からなる1つの鎖をYヘッドと1つ(以上の)標識との間のリンカーとして含む実施形態では、Yヘッドおよび標識(複数可)は、少なくとも30個の原子のぶん互いに離れて位置する分岐点で、例えば、30個の接続している原子からなる鎖の向かい合わせの末端で、前記鎖に連結している。
一部の実施形態では、コンジュゲートが1つより多い標識を含む場合、標識が群になって、標識の間に、少なくとも30個の連続的に接続している原子(「スペーサー」と称される)、好ましくは60個以上の連続している原子、例えば90個の連続的に互いに接続している原子からなる鎖に対応する分子距離が存在するようになっていることが好ましい。標識の間のスペーサーは親水性化合物であることが好ましい。次いで、後者の標識群は、コンジュゲート分子において、前記標識と、酵素基質部分とを上記の通りリンクさせるリンカー化合物に付着している、即ち、Yヘッドに最も近接して位置する群の標識は、Yヘッドの酵素基質のいずれからも、少なくとも30個の互いに接続している原子によって、即ち、少なくとも2.5nmの距離によって離されている。コンジュゲート分子における多数の標識のそのような配置は、後記では、「Zテール」と称される。
好ましくは、Zテールの標識間の少なくとも30個の連続する原子からなるスペーサーは、下式(III):
Figure 0005836958
[式中、RおよびRは、NHおよびOから選択され、Rは、メチル、エチル、プロピル、CHOCHおよび(CHOCHから選択され、ここで、連続的に繰り返すエチルオキシ基は3つ以下である]
の2つ以上の繰り返しを含むポリマー化合物である。
上記スペーサーに付着し、それによって分離されている多数の標識は、1つのYヘッドまたは複数のYヘッドと、任意の適切なリンカー、例えば多数の結合を可能にする水溶性ポリマー、例えばデキストランを介してコンジュゲートされていてよい。一部の実施形態では、複数のYヘッドが、そのようなポリマーを介して、複数のZテールとコンジュゲートされていてよい。
一実施形態では、本発明のコンジュゲート分子の多数の標識は、同じ検出可能な物質であってよく、他の実施形態では、標識は、異なる検出可能な物質であってよい。
標識のZテール配置は、(1)多数の疎水性標識を含むコンジュゲートが水溶液中で良好に溶解性なままであり、かつ(2)結合剤が、デポジットされたコンジュゲートを検出するために使用される場合に、標識が、結合剤により良好にアクセス可能であるという利点を有する。
オキシドレダクターゼ基質と標識との間(例えば、YヘッドとZテールとの間)のリンカーLは、本発明では、30〜150個以上の原子、例えば30、45、60、90、150、300、500個以上の原子などの少なくとも30個の連続する原子からなる鎖を含む分子である。好ましい一実施形態では、好ましくは、Lは、150個の連続する原子を含む。一部の実施形態では、リンカー分子は、接続している炭素原子2個ごとに、酸素または窒素の原子が後に続く原子からなる直鎖を含む。
好ましい一実施形態では、Lは、単独直鎖ポリマー分子であってよく;他の好ましい実施形態では、Lは、一緒にコンジュゲートされているいくつかの異なるポリマーを含んでよいコンジュゲート分子であってよい。
好ましい一実施形態では、Lは、例えば、下記を含むリンカーまたはポリエチレングリコールなど、2個の連続する炭素原子の後に、酸素または窒素から選択されるヘテロ原子が続く原子の鎖を含む直鎖ポリマーである。
他の好ましい実施形態では、リンカーは、下式(III):
Figure 0005836958
[式中、RおよびRは、NHおよびOから選択され、Rは、メチル、エチル、プロピル、CHOCHおよび(CHOCHから選択され、ここで、連続的に繰り返すエチルオキシ基は3つ以下である]
の2つ以上の繰り返しを含む化合物である。
好ましくは、Lは、R1およびRの両方がNHであり、RがCHOCHである上式の少なくとも2つの繰り返しを含む。好ましくは、Lは、下式(IV):
Figure 0005836958
[式中、nは1から10の整数であり、(B)は、分岐点である]
の1つ以上の繰り返しを含む。この式のL分子およびその合成は、参照によって本明細書に組み込まれるWO2007/015168号に詳細に記載されている。
「分岐点」という用語は、分岐、例えば、同じポリマーまたは他の分子の側鎖が付着していてよいポリマー分子における点を意味する。分岐点は、化合物YおよびZが、それを介して、Lに直接的に、または間接的にコンジュゲートし得る原子、原子団または官能基であってよい。
リンカーLとして使用し得る非常に多様なポリマー分子が存在する。例には、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、デキストランポリアルデヒド、カルボキシメチルデキストランラクトンおよびシクロデキストリンなどの多糖;プルラン、シゾフィラン、スクレログルカン、キサンタン、ジェラン、O−エチルアミノグアラン、6−O−カルボキシメチルキチンおよびN−カルボキシメチルキトサンなどのキチンおよびキトサン;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、6−アミノ−6−デオキシセルロースおよびO−エチルアミンセルロースなどの誘導体化セロロシック(cellolosic);ヒドロキシル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カラゲナン、アルギネートおよびアガロース;フィコールおよびカルボキシメチル化フィコールなどの合成多糖;ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(マレイン酸無水物)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(エチル−コ−ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルクロロアセテート)、アミノ化ポリ(ビニルアルコール)およびそれらのコブロックポリマーを包含するビニルポリマー;ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールまたはポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)含有ポリマー主鎖を包含する直鎖、くし形または多分岐ポリマーおよび分岐PAMAMデンドリマーを包含するデンドリマー;ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリウレタン、ポリ(エチレンイミン)、プルリオールを包含するポリアミノ酸;アルブミン、免疫グロブリンおよびウイルス様タンパク質(VLP)およびポリヌクレオチド、DNA、PNA、LNA、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドデンドリマー構成体を包含するタンパク質;混合ポリマー、即ち、1つまたは複数のポリマーの先行例からなるポリマー、コブロックポリマーおよびランダムコポリマーが包含される。
選択されたポリマーの特性を、性能を最適化するために改質することができ、例えば、長さまたは分岐を最適化することができる。さらに、様々な置換基を持つように、ポリマーを化学的に改質することができる。置換基をさらに化学的に保護および/または活性化させて、ポリマーをさらに誘導体化することができる。
好ましい一実施形態では、オキシドレダクターゼ基質と標識との間のリンカー化合物は、デキストランポリマーまたはデキストランポリマーを含むコンジュゲート分子である。
ポリマーを種々の化学的物質、例えば標識とコンジュゲートする方法は、当分野でよく知られており、本発明のコンジュゲートを製造するために使用することができる。例えば、ポリマーをビニルスルホンで活性化させ、検出可能な標識および式(II)の分子と混合して、ポリマーコンジュゲートを形成することができる。他の実施形態では、アルデヒドを使用して、ポリマー、例えばデキストランを活性化させ、次いでこれを、検出可能な標識および式(II)の分子と混合することができる。ポリマーコンジュゲートを調製するさらに他の方法は、成分を一緒にカップリングするためのいわゆる化学的選択的カップリングスキームを使用することにより、例えば、分子をチオール反応性マレイミド基で誘導体化し、その後、チオール改質されたポリマー主鎖に共有カップリングさせることができる。一部の他の実施形態では、式(I)の分子および検出可能な標識を、リンク化合物を介してポリマーに付着させることができる。この方法の例には、グルタル酸ジアルデヒド、ヘキサンジイソシアネート、ジメチルアピミデート(dimethylapimidate)、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなどのホモ二官能性リンカー化合物、例えばN−ガンマ−マレイミドビチロールオキシ(maleimidobytyroloxy)スクシンイミドエステルなどのヘテロ二官能性交差結合剤および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カボジイミド(cabodiimide)などのゼロレングス交差結合剤の使用が包含される。
1つまたは複数の式(III)の繰り返し(後記では「L30」と称される)を含むポリマーを誘導体化する方法は、参照によって本明細書に組み込まれるWO2007/015168号に詳細に記載されている。
2つのL30繰り返しを含むポリマー(L60と称される)、3つのL30繰り返しを含むポリマー(L90と称される)、5つのL30繰り返しを含むポリマー(L150と称される)などの様々な数の式(III)の繰り返しを含むポリマーであるリンカーを含む例示的なコンジュゲートは、実施例に記載されている。
水性培地(ii)中の第2基質の量は、約10−10Mから約10−4Mで変動してよく、例えば、コンジュゲート(上記のいずれか)が放射性標識を含む場合には、適用可能な量は、約10−10Mから約10−6Mまで、コンジュゲートが、蛍光標識または特異的結合対のメンバーである標識を含む場合には、約10−9Mから約10−4Mまでであってよい。
インキュベーション培地
一実施形態では、標的の単独ユニットを含む試料を、本発明による可視化手順の間に、種々の水性培地(本明細書では一括して「インキュベーション培地」と称される)中でインキュベートする。
「インキュベーション培地」という用語は、本内容では、望ましい反応結果を達成するために、一定期間(本明細書では「インキュベーション時間」と称される)の間、試料が維持される水溶液を意味する。
インキュベーション培地中で試料を維持/インキュベートする時間、即ちインキュベート時間は、インキュベーションの後に達成されることが望まれている技術的効果に応じて変動してよい。種々の実施形態において、インキュベーションを、約3秒から約3分まで、例えば約10秒、20秒、30秒、1分、2分、5分、10分以上、例えば1〜2時間、一晩続けてよい。一実施形態では、インキュベート時間は方法の全てのステップで、同じ期間を有してよく、即ちどのインキュベートも、5から10分など続けてよい。結合剤を含む水溶液(本明細書中、後記では「結合剤溶液」と称される)中の他の試料では、1〜3分続けてよく、水性培地(i)および/または水溶液(ii)培地中でのインキュベーションは、10分続けてよい。
インキュベーションは、標的、結合剤などの種類に応じて、様々な温度で行うことができる。本発明による手順は、実質的に温度とは独立しており、約+4℃から約+40℃までの温度で行うことができるが、しかしながら、所望の場合には、温度を、インキュベーション期間を延長または短縮するために使用することができ、例えば、より低い温度を使用すると、インキュベート時間を延長することができ、逆に、より高い温度を使用すると、インキュベーションの時間を短縮することができる。
インキュベーション培地の組成の非限定的実施形態は、下記で検討される。
結合剤培地
本発明の方法のステップ(a)では、試料を、上記のとおりの1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートする。したがって、一実施形態では、本発明は、例えば、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む結合剤などの結合剤を含む水溶液に関する。この培地は、本明細書では、「結合剤培地」と称される。
そのような培地中で試料をインキュベートすることによって達成されるべき所望の技術的効果の1つは、本発明による標的部位の形成である。したがって、結合剤培地は、選択された結合剤が溶解性であり、単独標的ユニットに結合し得る水性培地である。基本的に、結合剤培地は、4から9までの範囲のpHを有する1つまたは複数の結合剤の緩衝水溶液である。一部の実施形態では、結合剤培地は、有機または無機塩を含んでよい。無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウムから選択することができる。有機塩は、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムまたはイミダゾール塩、例えばイミダゾール塩酸塩などから選択することができる。
結合剤培地中での塩の量は、約10−3Mから飽和まで、例えば約20mMから約200mMまで、または約50mMから約500mMまでの範囲であってよい。好ましい一実施形態では、培地は、塩を約10mMから500mMまでの量で含んでよい。他の好ましい実施形態では、培地は、塩を含まなくてよい。
上述のとおり、典型的には、結合剤培地のpH値は、pH3.5からpH9.5の間、例えば、pH5からpH7の間、pH5.5からpH6.5の間またはpH6.5から7.5の間またはpH7からpH8の間またはpH7.5からpH8.5の間またはpH8からpH9の間など、約4から約9まで変動してよい。適切な緩衝能力を有する任意の緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)およびイミダゾール緩衝液を使用することができる。他の適切な緩衝液は、Good,NE.ら(1966)Hydrogen ion buffers for biological research.Biochem.5(2)、467〜477に見出すことができる。培地のpH値は、結合剤を標的に結合させるために決定的であることがある;これを、結合剤および標的の性質に応じて、最適化することができる。
一部の実施形態では、結合剤培地は、有機改質剤(「有機改質剤」という用語は、任意の非水溶媒を意味する)、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、モノ−およびジエチレングリコール、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールなどを含んでよい。有機改質剤の量は、約1%から約20%(v/vまたはw/v)まで変動してよいか、または一部の実施形態では、20%より多くてよい。
一部の実施形態では、結合剤培地は、洗浄剤、例えばポリエチレングリコール−p−イソオクチフェニルエーテル(isooctyphenyl ether)(NP−40))または界面活性剤(例えばモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween)をベースとする界面活性剤またはブロックコポリマーをベースとする界面活性剤(プルロニックなど)から選択される)などを含んでよい。洗浄剤の量は、約0.001%から約5%/v/vまたはw/v)まで変動してよい。
一部の実施形態では、結合剤培地は、結合剤安定化剤、例えばウシ血清アルブミンまたはデキストランを含んでよい。安定化剤の量は、0.01%から20%(w/v)まで変動してよい。
一部の実施形態では、結合剤培地は、イオンキレート化剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレンジアミンヒドロキシルフェニル酢酸タイプのキレート化剤(EDHPA)など)を含んでよい。キレート化剤の量は、約10−9Mから約10−6Mまで変動してよい。
一部の実施形態では、結合剤培地は、非特異的結合部位、即ち、標的を含まない固体支持体の部位を飽和させるための1つまたは複数のブロック剤を含んでよい。種々の実施形態に適したブロック剤のいくつかの非限定的例は、デンハート液、ウシ血清アルブミン、脱脂乳などであってよい。
上記で検討されたとおり、本発明は、非常に多様な種類の標的、結合剤およびアッセイフォーマットを企図しており、したがって、結合剤培地の組成は変動してよく、当分野の知識を使用して、特定の実施形態ごとに調節すべきである。結合剤培地の一部の非限定的例は、実施例において記載されている。
一実施形態では、試料が、低濃度範囲で存在する標的を含む場合、結合剤と標的との相互作用を促進するために、その内容(例えばpH、塩濃度など)およびインキュベーション条件(例えば、インキュベーション期間、温度)が最適化されている結合剤培地中で、比較的多い量の結合剤を使用することが好ましいことがある。そのような最適化は、標的の最大数の単独ユニットを結合剤と結合させ、最大数の別々の単独標的部位を形成することを保証するためである。この実施形態では、試料中での標的の僅かな発現によって、重大な数の単独標的部位同士の重なりは予期されない。
一実施形態では、試料が、低濃度範囲で存在する標的を含む場合、結合剤と標的との相互作用を促進するために、その内容(例えばpH、塩濃度など)およびインキュベーション条件(例えば、インキュベーション期間、温度)が最適化されている結合剤培地中で、比較的多い量の結合剤を使用することが好ましいことがある。そのような最適化は、標的の最大数の単独ユニットを結合剤と結合させ、最大数の別々の標的部位を形成することを保証するためである。この実施形態では、試料中での標的の僅かな発現によって、重大な数の単独標的部位同士の重なりは予期されない。
好ましい一実施形態では、試料中に存在する全てまたは実質的に大部分の利用可能な単独標的ユニットに結合し、それらと共に別々の単独標的部位を形成するように、結合培地中の結合剤の量を調節する。
他の実施形態では、標的が試料中で豊富に発現される場合には、培地中の1つまたは複数の結合剤、例えば、第1、第2および/または第3結合剤の量を、結合剤が試料中の単独ユニットの分別部分集団のみと別々の単独標的部位を形成し得るように調節すべきである。別法では、そのような実施形態では、pH、塩含有率などの結合剤培地の組成または温度などのインキュベーション条件を調節して、それらが、単独標的部位の形成に関与している1つまたは複数の結合剤の標的結合能力に影響を及ぼし、したがって、結合剤が、試料中に存在する標的の単独ユニットの分別部分集団とのみ標的部位を形成するようにすることができる。
したがって、一実施形態では、豊富に、または幅広い動的濃度範囲で発現される標的を含む試料を、結合剤培地中、結合剤が単独標的ユニットの分別部分集団の集団と共に別々の単独標的部位を形成し得る条件下でインキュベートする。「分別部分集団」という用語は本内容では、試料中の標的の単独ユニットの全量に対して99%以下、例えば、90%以下、試料中の標的のユニットの全量に対して85%未満、例えば75〜80%など、試料中の標的の単独ユニットの全量に対して75%未満、例えば、1%から50%までなど、試料中の標的のユニットの全量に対して1%から25%などである集団全体のうちの割合と定義される。一実施形態では、インキュベーション条件を調節して、結合剤が、試料中に存在する標的の単独ユニットの全量に対して、約0.1%から約1%までなどの1%未満である単独標的ユニットの分別部分集団と共に別々の単独標的部位を形成するようにしてよい。
水溶液(i)
結合剤培地中でのインキュベーションの後に、試料を、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質および、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質およびペルオキシド化合物を含む水溶液(i)でインキュベートする。
場合によって、水溶液(i)中でインキュベートする前に、試料を、第2基質を含まない水溶液(i)である水溶液(ii)中でインキュベートすることができる。
したがって、一実施形態では、本発明は、水溶液(i)であるインキュベーション培地に関し、他の実施形態では、本発明は、水溶液(ii)であるインキュベーション培地に関する。
水溶液(i)および水溶液(ii)は両方とも、適切な緩衝能力を備えた水性緩衝溶液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)およびイミダゾール緩衝液であってよい。他の適切な緩衝液は、Good,NE.ら(1966)Hydrogen ion buffers for biological research.Biochem.5(2)、467〜477に見出すことができる。インキュベーションの技術的効果、即ち、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質の別々のデポジットを別々の本発明の単独標的部位に形成することを達成するために、溶液のpH値を調節することができ、例えば、約4から約9までの範囲のpHに調節することができる。しかしながら、水溶液(i)および(ii)のpHは、インキュベーション技術的効果について、あまり重要ではない。
水溶液(i)および水溶液(ii)は両方とも、有機または無機塩をさらに含んでよい。
無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウムなどから選択することができる。
有機塩は、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムまたはイミダゾール塩、例えばイミダゾール塩酸塩などから選択することができる。
水溶液(i)および水溶液(ii)中での塩の量は、約10−3Mから飽和まで、例えば約20mMから約200mMまで、または約50mMから約500mMまでの範囲であってよい。好ましい一実施形態では、培地は、塩を約10mMから500mMまでの量で含んでよい。他の好ましい実施形態では、培地は、塩を含まなくてよい。
水溶液(i)および水溶液(ii)は両方とも、異なる実施形態では、
(i)有機改質剤および/または
(ii)酵素促進剤および/または
(iii)鉄キレート化剤および/または
(iv)洗浄剤および/または
(v)抗菌剤
をさらに含んでよい。
有機改質剤は、培地中に、約1%から約20%(v/vまたはw/v)までの量で存在してよいが、しかしながら、一部の実施形態では、より高い濃度の有機改質剤が必要なことがある。有機改質剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であってよい。他の例には、これらに限られないが、主にC1〜C4、即ち低級アルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、モノ−およびジエチレングリコール、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される有機改質剤が包含される。一部の実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG2000またはプロピレングリコールを使用することが有利であることがある。これらの場合、培地中のポリエチレングリコールの量は、約0.1%(v/v)から約20%(v/v)まで、例えば、5〜10%(v/v)など、約1%(v/v)から約15%までで変動してよい。
「酵素促進剤」という用語は、ペルオキシダーゼの触媒活性を増強する任意の化合物を意味する。そのような酵素促進剤は、主にフェニルボロン酸誘導体およびニッケルまたはカルシウムなどの二価金属イオンからなる群から選択することができる。酵素促進剤の量は、約10−7から約10−3Mまでで変動してよい。
鉄キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレンジアミンヒドロキシルフェニル酢酸タイプのキレート化剤(EDHPA)であってよい。鉄キレート化剤の濃度は、約10−9Mから約10−6Mまでで変動してよい。
洗浄剤は、ポリエチレングリコール−p−イソオクチフェニルエーテル(NP−40))から選択することができ、界面活性剤は、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween)をベースとする界面活性剤またはブロックコポリマーをベースとする界面活性剤(プルロニックなど)から選択することができる。洗浄剤の濃度は、約0.001%から約5%まで変動してよい。
水溶液(i)の必須の成分は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質、前記酵素の第2基質およびペルオキシド化合物である。
第1基質および第2基質の実施形態は、上記で詳細に検討されている。
好ましい一実施形態では、第1基質は、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)またはその誘導体であってよい。他の好ましい実施形態では、第1基質は、フェルラ酸またはその誘導体であってよい。
水溶液(i)中の第1基質の量は、第1基質として選択された化合物に応じて変動してよい(上記の検討を参照されたい)。例えば、DABが第1基質として選択されている実施形態では、水溶液(ii)および水溶液(ii)中でのDABの量は、1.4mM未満、好ましくは1.2mM未満、好ましくは1mM未満、約0.005mMから約0.5mMまでなど、例えば、約0.3mMまたは約0.2mM、約0.15mMなどである。フェルラ酸が第1基質として使用されている実施形態では、前記化合物の量は、2.5mM未満、好ましくは2mM未満、例えば約1.5mMである。「約」という用語は本内容では、+/−0.05〜0.5mMを意味する。
水溶液(i)は、約10−10Mから約10−4Mまでなどの様々な量の酵素の第2基質を含んでよい。例えば、第2基質(上記のいずれかとして)が放射性標識を含む実施形態では、適用可能な量は、約10−10Mから約10−6Mまでの範囲であってよい。例えば、第2基質が、蛍光標識または特異的結合対のメンバーである標識を含む他の実施形態では、量は、約10−9Mから約10−4Mまでの範囲であってよい。
一実施形態では、水溶液(i)は、第2基質の同一のコンジュゲート分子の集団を含んでよい。他の実施形態では、水溶液(i)は、第2基質の異なるコンジュゲート分子の集団を含んでよい。
本発明の好ましいペルオキシド化合物は過酸化水素であるが、しかしながら、他のペルオキシド化合物もまた、異なる実施形態では使用することができ、例えば一部の実施形態では、これは好ましくは、例えば、tert−ブチルペルオキシド、ジtert−ブチルペルオキシド、過酢酸などの有機ペルオキシドであってよいか、または一部の実施形態では、これは、過酸化水素尿素付加物などの過酸化水素の付加物であってよい。
水溶液(i)および水溶液(ii)中のペルオキシド化合物の量は、5mM以下、好ましくは5mM未満、好ましくは0.1mMから5mMの範囲、例えば0.1mMから1mMの間、1mMから2mMの間、2mMから3mMの間または3mMから4mMの間、好ましくは、約1mMから約2mMまでの範囲、約1.5mMなどであってよい。「約」という用語は本内容では、+/−0.05〜0.5mMを意味する。
オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質、前記酵素の第2基質およびペルオキシド化合物を含む水溶液(i)は、本明細書では、「デポジション培地」と称される。
水溶液(ii)は、水溶液(i)と同じ化合物を同じ量で含んでよいが、但し、水溶液(ii)は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質を含まない。
一部の実施形態では、単独標的部位を含む試料を、初めに水溶液(ii)中で、次に水性培地(i)中でインキュベートすることができる。
他の実施形態では、単独標的部位を含む試料を、水溶液(ii)中で予備インキュベーションすることなく、水溶液(i)中でインキュベートする。
本発明では、デポジション培地は、安定な溶液であり、即ち、溶解された化合物の沈殿は、少なくとも5時間などの比較的長時間、生じない。培地の貯蔵寿命を延長するために、培地を+20℃未満、例えば+4〜+10℃の温度で貯蔵し、かつ/または培地に抗菌剤を加えることが有用なことがある。抗菌化合物は、そのような目的のために一般に使用されている任意の抗菌化合物、例えばアジ化ナトリウム、Proclin(商標)またはBronidox(登録商標)であってよい。
検出培地
一実施形態では、本発明は、ステップ(b)の後に、第2基質の別々の単独デポジットを単独標的部位で検出することを含む1つまたは複数のステップを含む方法に関し、例えば、第2基質の別々のデポジットを含む試料を、第2基質のデポジットされた分子の検出可能な標識に特異的に結合し得る結合剤を含むインキュベーション培地中でインキュベートすることができる。
第2基質のデポジットされた分子の検出可能な標識に特異的に結合し得る結合剤を含むインキュベーション培地は典型的には、上記で検討された結合剤培地と同様または同じ組成を有する。
デポジットされた第2基質の検出可能な標識に結合する結合剤は、一実施形態では、酵素、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスホターゼ(AP)を含んでよい。そのような結合剤は、酵素の発色性基質を用いる標準的な可視化系、例えば、酵素基質溶液または呈色溶液を使用して、検出することができる。この種の培地は、可視化のために利用可能な手段に応じて、かつデポジットの検出可能な標識の性質に関して共通する当分野の一般的な知識に従って選択されるべき当分野で知られている任意の適切な培地であってよい。そのような検出の非限定的例は、実施例に記載されている。
別法では、結合剤がHRPを含む場合、本発明の可視化方法は、前記結合剤に結合している第2基質の別々のデポジットを含む試料を、上記のデポジション培地中でインキュベートするさらなるステップを含んでよい。そのようなさらなるステップは、デポジットされた第2基質に随伴するシグナルが弱いか、または一次デポジットのサイズが比較的小さい一部の実施形態において有利であることがある。追加的なデポジションステップによって、デポジットに随伴するシグナルをさらに増幅することができ、これはまた、検出可能なデポジットのサイズを単独標的部位で増大させることができる。さらに、そのステップによってまた、検出可能なシグナルの特徴を改質する、例えばシグナルのスペクトル特性を変化させることができ、例えば、赤色シグナルとして検出可能な当初の標識を、緑色シグナルとして検出可能な標識に置換することができるが、それは、当初デポジションのために使用される赤色標識を含むコンジュゲート分子(方法のステップ(b)で)の代わりに、この追加的なデポジションのための前記緑色標識を含むコンジュゲート分子を使用することによる。しかしながら、そのような本発明の方法の柔軟性は、余分な複雑さを、検出の追加的なステップにおいて使用される試薬に加えることはなく、それというのも、方法のステップ(a)および(b)(上記で検討されている)のインキュベーション培地の全ての実施形態を、これらの追加的なステップにおいて実質的な変更を伴うことなく、成功裏に使用することができるためである。
一実施形態では、本発明は、洗浄培地、即ち、インキュベーションの技術的効果が実施された後に、試料から、残りの化合物(インキュベーション培地の)を除去するための培地に関する。本発明の方法は、典型的には、上記の培地中で試料をインキュベーションするステップの後に、例えばステップ(a)と(b)との間などに、1つまたは複数の洗浄ステップを含んでよい。典型的には、洗浄培地は、洗浄ステップに先行するステップにおいて、試料をインキュベートするために使用されていたのと同じ培地であるが、インキュベーション培地の必須化合物は含まない、即ち、結合剤、酵素の基質などは含まない。
一実施形態では、本発明は、内生オキシドレダクターゼ活性をクエンチするための培地に関する。この種の培地は、当分野でその目的のために常套的に使用されているそのような種類の任意の培地、例えば、過酸化水素溶液であってよい。この培地は、方法のステップ(a)の前に使用することができる。これはまた、ステップ(b)の後、およびデポジットされた第2基質を検出する追加的なステップの前に使用することができる。手順のこの段階でのこの培地の適用は、試料中の残りのオキシドレダクターゼ活性をクエンチするために使用することができる。
第2基質の別々のデポジット
意外にも、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質および比較的に僅かな量のオキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質、DABおよび過酸化水素などのペルオキシド化合物からなる特殊なコンジュゲート分子を含むデポジション培地の特定の条件を使用すると、前記コンジュゲート分子の別々のデポジットを本発明の単独標的部位に形成することができ、これは、通常の顕微鏡光学を使用して直接的に観察するか、または識別可能なドットとして可視化することができる識別可能な物理的形質、即ち、直径で0.4マイクロメートル超の丸形デポジットを有することが見出されている。同様の増幅システム(検出可能なコンジュゲート分子のHRP−DAB媒介されるデポジションを用いる。詳細については、WO2009036760号、WO2010094283号およびWO2010094284号を参照されたい)を使用すると、従来のHRP−DAB IHC染色を改良することが可能であり、その際、標的染色の均一な色パターンが、より輪郭明瞭となって、それによって、細胞構造、例えば膜、細胞質および核の細胞内解像が改良される。本可視化システムは代わりに、1つの単独ドットが、1つの個別標的分子などの1つの個別の標的ユニットに対応する標的染色のドット化パターンをもたらし、それによって、単独標的分子などの個別の単独標的ユニットの細胞内解像を可能にする。
本発明の方法によって生じる本発明の検出可能なコンジュゲート分子のデポジットは、三次元的であり、実質的に球形を有し、これは二次元フィールドでは、例えば顕微鏡フィールドでは、識別可能な実質的に円形のドットとして観察される。したがって、「円形ドット」(本明細書では、「ドット」および「識別可能なドット」という用語と互換的に使用される)は本内容では、二次元フィールドでは識別可能な実質的に円形のドットとして観察される本発明の検出可能なコンジュゲート分子の球形デポジットを示している。「識別可能な」という用語は本内容では、本発明のドットが、眼または考えにおいて区別可能であることを意味する。「実質的に円形」という用語は、本発明の識別可能なドットが、約0.65またはそれ未満の偏心を有することを意味する。本発明によるドットは、約0.4ミクロンまたはそれより大きい直径を有する。「約」という用語は本内容では、+/−0.05〜0.5mMを意味する。比較すると、従来のDAB−HRP方法によるDAB染色のデポジットまたはWO2009036760号、WO2010094283号およびWO2010094284号の方法によって得られる標的部位での染色の単独デポジットまたはCARD方法によるビオチニル−およびフルオレシルチラミドデポジットの「ドット」は、通常の顕微鏡光学素子(倍率4倍または10倍の明視野または蛍光光学など)の解像限界未満、即ち、0.1ミクロン未満のサイズを有する。したがって、後者の方法によって可視化された個別の単独標的ユニットを、低倍率顕微鏡フィールド(4倍または10倍など)で直接観察することは不可能である。本明細書に記載の方法は、本発明の検出可能なコンジュゲート分子の単独デポジットを単独標的部位で検出および可視化することを可能にし、それによって、低倍率光学素子を使用して、試料中の標的の固定化された単独ユニットを観察することを可能にする。
(オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の)「第2基質の1つの単独デポジット」または(本発明の)「検出可能なコンジュゲート分子の1つの単独デポジット」という用語は、第2基質の多数のコンジュゲート分子の単独集積に関する。本発明では、本発明の第2基質の1つの識別可能なデポジットは、約1000から1000000までのコンジュゲート分子またはそれ以上を含んでよい。
上記で検討されたとおり、単独標的部位にデポジットされた第2基質は、視覚的に同定可能な分子、例えば視覚的に検出可能な標識、例えば蛍光標識を含む分子を含んでよい。したがって、一実施形態では、そのような第2基質のデポジットのドットを、顕微鏡使用者は、デポジットが形成した直後に慣用の蛍光顕微鏡を使用することによって検出することができる。標準的な顕微鏡光学素子によって直接的には観察することができない標識、例えば、特異的結合対のメンバーを含むリポーター分子のデポジットは、少なくとも1つの追加的なステップ、検出ステップ、例えば上記の追加的なステップ(c)を使用して、本発明に従って可視化すべきである。
ドットの数、そのサイズおよび外観を制御することができる。例えば、異なる実施形態では、特定のサイズおよび特定の外観(例えば特定の色)のドットを生じさせることができる。
一実施形態では、種々の数の酵素部分(「酵素部分」または「酵素」という用語は本内容では、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素を意味する)、例えば結合剤1つ当たり種々の数のHRPを含む本発明の標的部位の形成に関与する結合剤を使用することによって、デポジットのサイズおよびドットサイズを変動させることができる。他の実施形態では、ドットサイズは、デポジションプロセスの期間によって制御することができる。他の実施形態では、デポジション培地における第1および/または第2基質またはペルオキシド化合物の量などのデポジション培地の内容によって、ドットサイズを調節することができる。
したがって、一実施形態では、標的部位を形成するために使用される結合剤の分子1つ当たりの酵素ユニットの数で、ドットのサイズに影響を及ぼすことができる。ドットサイズは、1つまたは複数の結合剤および標的の1つの単独ユニットを含む複合体1つ当たりの酵素部分の数に直接相関し得ることが見出されている:標的部位を形成するために使用される結合剤が分子1つ当たりより多い数の酵素部分を含む場合には(その他は同じデポジション条件下で(即ち、同じインキュベーション時間、デポジション培地の同じ組成)、同じではあるが、分子1つ当たりより少ない数の酵素部分を含む結合剤を用いた場合に得られるドットと比較して、より大きなドットが観察される。
本発明の条件下で1つの単独デポジットに対応する可視のドットを生じさせるためには、標的部位が、単独、即ち1つの酵素部分を含むことで、例えば標的部位の形成に関与している結合剤が、単独HRP部分を含むことで十分であるが;しかしながら、2つ以上の酵素部分が、同じ標的部位に存在する実施形態では、この標的部位に随伴するドットは、第1の場合のドットよりも大きい。したがって、一実施形態では、1つの単独標的部位に随伴する結合剤は、HRPの1つの単独部分を含んでよく、他の実施形態では、結合剤は、2つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10のHRP部分を含んでよい。一実施形態では、結合剤1つ当たりの酵素部分の数は、少なくとも2つ、好ましくは3から10、4から8などの部分である。
意外にも、酵素部分の数が結合剤の分子1つ当たり少なくとも2つである、本発明の標的部位の形成に関与している結合剤を使用すると、その他は同じ条件下で、即ち、可視化手順の同じ条件下で、ほぼ同じサイズのドットを生じさせることができることが見出された。したがって、一実施形態では、本発明は、固定化された標的を含む試料を、結合剤のうちの少なくとも1つは少なくとも2つのオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートする方法に関する。したがって、標的の個別ユニットは、この実施形態では、個別の実質的に同一のドットとして、即ち、同じサイズのドットとして可視化される。一実施形態では、ペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む結合剤の分子のプールは、不均一であってよく、その際、前記分子は、例えば2から10の間の分子、11から20の間の分子など、1分子当たり種々の数の酵素部分を含む。他の実施形態では、本発明は、ペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む結合剤の分子のプールのうちのいずれの分子も、結合剤分子1つ当たり1〜3、2〜4〜、3〜5、4〜6、5〜7、6〜8、7〜9、8〜10、9〜11、10〜12などの酵素部分など、結合剤の分子1つ当たり実質的に同一の数の酵素部分を含む方法に関する。
他の実施形態では、ドットのサイズを、デポジション培地における第1基質の量によって、例えばDABの量によって調節する。デポジットされたリポーター(ドット1つ当たり)が1000分子以上である大きなドット、即ち、直径が0.4ミクロン以上または1ミクロン以上または2または3ミクロン以上、4もしくは5ミクロンなどであるドットは、デポジション培地におけるDABの量(その他は、可視化手順の同じ条件で、即ち、同じ結合剤、同じリポーター、同じ量のリポーター、ペルオキシドの同じ濃度、同じインキュベーション時間など)が、約0.01mMから約1mMまでの範囲、例えば、0.05mMから0.75mMの間、約0.075mMから約0.5mMまでなど、約0.1mMなど、例えば0.15mM、または約0.3mM、例えば0.28mMなどである場合に、形成することができる。より小さいサイズ、即ち0.4ミクロン未満のドットは、デポジション培地においてDABのより多い量および少ない量の両方を使用すると、観察することができる。
本発明のコンジュゲート分子の組成および構造は、本発明の第2基質(上記で検討)としてデポジットされる前記分子の能力に影響を及ぼし、したがって、これらは、デポジットのサイズおよびドットの見かけのサイズに影響を及ぼす。さらに、コンジュゲートの標識は、ドットの外観に影響を及ぼし得る。例えば、コンジュゲート分子が蛍光標識を含む実施形態では、標識の蛍光基の性質は、ドットの外観に影響を及ぼし、例えば、同一の条件下で、リサミン(赤色蛍光基)を含むコンジュゲートは、フルオレセイン(緑色蛍光基)を含む同様のコンジュゲートよりも強いドットをもたらす。さらに、デポジション培地においてより多い量の第2基質は、他は同じ条件下で、より大きなデポジットの形成をもたらし得る。
ドットのサイズはまた、第2基質をデポジションするために使用される時間によって調節することができる。デポジション培地中でのインキュベーション時間が長いほど、より多い量のコンジュゲート分子を単独標的部位にデポジットさせることができ、それによって、単独デポジットのサイズ、続いて、単独ドットのサイズを大きくすることができる。他は同じ条件で、即ち、同じ結合剤、同じ培地などで、インキュベーション時間を30秒から10分へと延長すると、酵素は、直径約5マイクロメートルの単独ドットとして観察することができるデポジットを生じ得る。しかしながら、さらにインキュベーション期間のさらなる延長は、単独デポジットのサイズを増大させない。しかしながら、デポジション培地中でのインキュベーション時間が長いほど、単独デポジットのサイズは低下せず、望ましい場合には、より長いインキュベーション時間、例えば、20または30分以上を使用することができる。したがって、異なる実施形態では、方法のデポジションステップの期間は、約30秒から約20分まで、例えば1、2、3、4、5、10または15分など、変動してよく、一実施形態では、インキュベーション時間は、約30秒であってよく、他の実施形態では、時間は、約2分であってよい。一実施形態では、コンジュゲート分子を5〜10分の間デポジットさせることが好ましい。
デポジション培地中のペルオキシド化合物の量もまた、リポーターデポジットのサイズ、したがって、ドットサイズを調節するための因子として使用することができる。直径5マイクロメートルまでの単独ドットを得るためには、デポジション培地中での、例えば、過酸化水素などのペルオキシド化合物の量は、2mM未満であるべきであり、好ましくは、その量は、1.5mMを超えない。ペルオキシド化合物の量がより多いと、より小さいサイズのドットが形成される。
上記で検討された因子は全て、本内容では「一次因子」と称される。それというのも、これらは、第2基質の当初、即ち一次デポジットの形成に影響を及ぼすためである。上述のとおり、例えば、第2基質のコンジュゲート分子が蛍光標識を含む場合には、そのような一次デポジットは、デポジションが生じた直後に観察することができる。他の実施形態では、例えば、コンジュゲートが特異的結合対のメンバー、例えばハプテンである標識を含む場合、一次デポジットは、直接観察することはできないが、しかしながら、これらは、デポジションステップの後の1つまたは複数の検出ステップ(本内容では「二次可視化手順」と称される)で可視化することができる。二次可視化手順のいくつかの因子もまた、視覚的サイズおよびドットとしてのデポジットの外観に影響を及ぼすことができ、それらによって、本発明の可視化システムの柔軟性が増す。したがって、これらの因子は、「二次因子」と称される。
特異的結合対のメンバーである標識を含むリポーター分子のデポジットは、デポジションステップに直接または間接に続く次の検出ステップ(c’)および(c”)を行うと可視化することができる:
(c')単独標的部位に第2基質の別々のデポジットを含む試料を、デポジットされた第2基質の検出可能な標識に直接的または間接的に結合し得る1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、それによって、デポジットされたリポーターと前記少なくとも1つの結合剤とを含む複合体を形成するステップであって、結合剤の少なくとも1つは、放射性、蛍光または発光物質、特異的結合対のメンバーまたは酵素から選択される1種または複数の検出可能な標識を含むステップ、
(c’’)試料中で、検出可能な標識を含む結合剤を検出して、それによって、1つまたは複数のリポーターデポジットを1つまたは複数の個別の標的部位で可視化し、かつそれによって、標的の1つまたは複数の個別ユニットを試料中で可視化するステップ。
「間接的に」という用語は、本内容では、1つまたは複数の場合によるステップ、例えば、洗浄ステップが、ステップ(b)と(c’)との間に存在してよいことを意味する。
発色性または蛍光基質、例えば、HRPまたはアルカリホスホターゼ(AP)を利用し得る多数の酵素部分(検出可能な標識として)を含む結合剤を認識するリポーターを使用することによって、デポジットを「染色」し、識別可能な視覚的に検出可能なドットを生じさせることができる。この場合、ある種のサイズの識別可能で視覚的に検出可能なドットを生じさせることによって、単独デポジットの元のサイズを、「大きく」または「小さく」することができる。一実施形態では、HRPまたは他のオキシドレダクターゼ酵素で標識された結合剤およびデポジションの最適な条件(上記で検討)を使用して、デポジションのステップを、1回または複数回繰り返して、それによって、単独標的部位での検出可能なデポジットのサイズを、繰り返すたびに大きくすることができる。他の実施形態では、HRPまたは他のオキシドレダクターゼ酵素で標識された結合剤およびデポジションの最適以下の条件(上記で検討)を使用して、デポジションステップを繰り返して、より小さいサイズ、したがって、対応する検出可能なドットのより小さいサイズのデポジットを得ることができる。一実施形態では、一次デポジションのために使用されたコンジュゲート分子とは異なる、例えば、フルオレセイン標識の代わりに、他の標識、例えばリサミン標識を含むコンジュゲート分子を第2基質として使用して、デポジションステップを繰り返すことができる。他の実施形態では、デポジション時間またはデポジション培地条件を最適化して、より小さな、またはより大きな二次デポジットを一次単独標的部位に生じさせることができる。
したがって、本発明の可視化方法は、柔軟で強力な増幅システムを含む。二重の調節システムは、一部の実施形態では、例えば、大きな一次デポジットをより小さなサイズのドットとして可視化することが望ましい実施形態では、特に有利であり得る特別な柔軟性をもたらす。より小さなサイズのドットによって、より正確な標的ユニットを試料中で位置決定することができ、また、標的のより広い動的範囲を検出することができる。
上記の二重調節はまた、2つ以上の異なる標的を検出すべき実施形態において、または標的が試料中に広い動的濃度範囲で存在する実施形態において、または一次デポジットが弱い検出可能なシグナルをもたらす実施形態などにおいて、望ましいことがある。幅広い動的濃度範囲で試料中に存在する、即ち、試料において、標的濃度の勾配が存在する標的の可視化および定量は、困難であることがある。範囲の下限では、ドットに関連している標的部位の数が、試料全体にわたる標的の存在についての統計的に有効な情報をもたらすには不十分であることがある一方で、同定範囲の上限では、標的の単独ユニットの可視化は、互いに分離して視覚的に識別することができないいくつかの重なったドットが存在することによって、困難であることがある。大きな一次デポジットに対応してドットの見かけのサイズを小さくするために上記の一次および/または二次因子を使用することで、これらの問題を克服し、幅広い動的範囲で試料中に存在する標的を可視化および定量することができる。
第2基質の一次デポジットを検出する方法は、試料の種類、デポジットされた分子の特徴などに応じて、異なってよい。当分野の任意の適切な方法を使用することができ、例えば組織学的試料では、デポジットを、任意の標準的なIHC染色液を使用することによって検出することができ、例えばHRP−DAB染色、ELISA可視化またはイムノブロット染色などを他の実施形態で使用することができる。
試料中の標的の個別ユニットを検出する方法の実施形態
下記は、本発明の方法の実施形態の非限定的な例である。
組織学的試料中の生物学的マーカーの単独標的分子を検出する方法
一実施形態では、本発明の方法は、組織学的試料中の生物学的マーカーの単独分子などの単独標的分子を可視化するために使用することができ、この際、前記方法は、
a)生物学的マーカーの1つまたは複数の単独分子をおそらく含む試料を、結合剤のうちの少なくとも1つは前記生物学的マーカーの1つの個別の分子に直接結合することができ、結合剤のうちの少なくとも1つはペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、それによって、1つまたは複数の標的部位を形成し、その際、単独標的部位はそれぞれ、生物学的マーカーの1つの単独分子と、結合剤のうちの少なくとも1つがペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤とからなる複合体を含むステップと;
b)(a)の1つまたは複数の標的部位をおそらく含む試料を、
i)3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)
(ii)ペルオキシド化合物
(ここで、DABの量は、約0.1mMから約1mMまでであり、ペルオキシド化合物の量は、約0.5mMから約2mMまでである)および
(iii)下式:
(Y)n−L−(Z)m
[式中、
Yは、ペルオキシダーゼ活性を有する酵素の基質であり、
Zは、検出可能な標識であり;
Lは、リンカーであり、
nは、2から150までの整数であり、mは、1から150までの整数である]
によって定義される化合物の群から選択される
1つまたは複数のコンジュゲート分子の集団
を含む水溶液中でインキュベートして、それによって、前記リポーター分子の1つまたは複数の別々のデポジットを(a)の単独標的部位に形成し;試料中の前記単独標的部位を、識別可能な単独ドットとして可視化するステップと、場合によって、
c)別々のデポジットを単独標的部位で識別可能な単独ドットとして可視化して;
それによって、試料中の生物学的マーカーの1つまたは複数の単独分子を可視化するステップとを含む。
結合剤、コンジュゲート分子、インキュベーション培地(例えばステップ(b)の水溶液)、可視化手段などの実施形態は、上記で検討されている)。
HRPの代わりに、上記で検討されたオキシドレダクターゼファミリーの他の酵素および第1基質としてDAB以外の他の化合物を使用してよいことは理解される。さらに、本発明の第2基質として適した他の化合物を、上記で定義された式(Y)n−L−(Z)mの化合物の代わりに使用することができる。
一実施形態では、上記の方法は、上記で検討された任意のさらなるステップを含んでよい。一実施形態では、方法は、ステップa、bまたはcのいずれかの後に1つまたは複数のステップを含んでよい。他の実施形態では、方法は、ステップa、bまたはcのいずれかの前に1つまたは複数のステップを含んでよい。方法は、自動ステップの少なくとも1つを含んでよいか、または少なくとも1つの自動ステップをさらに含んでよい。
一部の実施形態では、例えば、生物学的マーカーが試料中で豊富に発現されるか、または幅広い動的濃度範囲で発現される場合には、結合剤が単独標的分子の分別部分集団と標的部位を形成し得る条件下で、試料を、単独標的部位の形成に関与している1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートすることが好ましいことがある。そのような条件の実施形態は、上記で検討されている。
他の実施形態では、例えば生物学的マーカーが低発現標的である場合には、生物学的マーカーの実質的に全ての単独分子が、標的部位の形成に関与していることが好ましいことがある。これらの実施形態では、最適な条件下、即ち、結合剤が利用可能な標的ユニットの全てと共に標的部位を形成し得る条件下で、試料を1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートすることが好ましい。
一実施形態では、標的は、表皮成長因子受容体(EGFR)または対応する核酸、詳細には、Her2受容体またはそれをコードする核酸である。
疾患の生物学的マーカーとして当分野で知られている任意のタンパク質または他の生物学的分子、構造または分子複合体が、本発明の範囲内に包含される。詳細には、本発明は、癌の生物学的マーカーに関する。
1つの試料中で少なくとも2つの異なる固定化された標的の単独ユニットを検出する方法
他の実施形態では、本発明の方法を使用して、1つの同じ試料中の2つ以上の異なる標的の単独ユニット、例えば、2つ以上の異なる生物学的マーカーの単独分子を検出および可視化することができる。
試料中、例えば組織学的試料中で少なくとも2つの異なる固定化された標的の単独ユニットを可視化および検出する方法は、本発明では、
試料を、第1標的に結合し得る1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートするステップであって、その際、
試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが第1標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
第1標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、第1標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第1単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、第1標的の個別単独ユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
b)(a)の試料を、第1単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および上記方法(1)のステップ(b)(即ち、請求項1のステップ(b))によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1単独標的部位に形成するステップと;
c)(b)の試料を、(a)の第1単独結合部位に付随している酵素の残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
d)試料(c)を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが第2標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
第2標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、第2標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第2単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、第2標的の個別のユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
e)(d)の試料を、第2単独結合部位に付随している第1基質、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質の分子の第2集団および上記方法(1)のステップ(b)(即ち、請求項1のステップ(b))によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第1標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第2標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む。
上記方法の標的は一実施形態では、異なる生物学的マーカー、例えば異なる生物学的分子である。一実施形態では、標的は、異なる核酸配列または異なるタンパク質分子である。一実施形態では、第1標的は、核酸配列でよく、第2標的は、タンパク質分子、例えば、Her2受容体およびHer2関連核酸配列であってよい。
一実施形態では、標的のうちの少なくとも1つは、生物学的マーカーであってよく、他の少なくとも1つは、参照マーカーであってよく、例えば、一方の標的はHer2受容体(生物学的マーカー)であり、他の標的は、サイトケラチン(参照マーカー)である。生物学的マーカーおよび参照マーカーの選択は、試料に依存しており、詳細には、疾患または他の生理学的状態の生物学的および参照マーカーが関係している実施形態では、関連先行技術において蓄積された知識に従って行うことができる。
上記の方法は、上記で検討された任意のさらなるステップを含んでよい。一実施形態では、方法は、ステップa、bまたはcのいずれかの後に1つまたは複数のステップを含んでよい。他の実施形態では、方法は、ステップa、bまたはcの前に1つまたは複数のステップを含んでよい。方法は、少なくとも1つの自動ステップを含んでよいか、少なくとも1つの自動ステップをさらに含んでよい。
一実施形態では、試料は、組織学的試料である。
一実施形態では、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素はHRPである。一実施形態では、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質はDABである。HRPおよびDABに関する実施形態は、上記の検討のいずれかであってよい。他の実施形態では、酵素は、他のオキシドレダクターゼ酵素からが好ましく、例えば上記の検討から選択することができる。他の実施形態では、第1基質は、第1基質として適した任意の他の化合物からが好ましく、例えば上記の検討から選択することができる。
異なる標的の単独ユニットを検出するために使用される集団の任意の第2基質の分子は例えば、上記のコンジュゲート化合物であってよい。一部の例示的な化合物はまた、実施例部分にも記載されている。第1集団のコンジュゲート分子および第2集団のコンジュゲート分子は、それらが含む異なる検出可能な標識によって異なる。他の実施形態では、第1集団の分子および第2集団のリポーター分子は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素のための基質として働き得る化合物の組成によってもさらに異なってよい。他の実施形態では、分子は、他の形質、例えば、コンジュゲート分子の構造、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質と標識との間のリンカーの長さ、検出可能な標識の数によってさらに異なってよい。
第2基質の分子をデポジションさせるステップ、即ち、ステップ(b)および/または(e)は、上記の任意の実施形態に従って行うことができ、例えば、試料を、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質およびペルオキシド化合物を有する溶液中で第1予備インキュベートし、次いで、第1基質、第2基質およびペルオキシド化合物の組合せを含む溶液中でインキュベートすることができる。
一実施形態では、少なくとも2つの標的のうちの少なくとも1つは、試料中に、幅広い動的濃度範囲で存在する。
1つの試料中で少なくとも2つの標的を可視化する非限定的例は、生物学的マーカーおよび参照マーカーの可視化であってよい。
幅広い動的濃度範囲で試料中に存在する固定化された標的の単独ユニットを検出する方法
試料中に幅広い動的濃度範囲で存在する標的の単独ユニットの検出および可視化は、その範囲の下限では、試料全体でのノイズおよび偽のデポジットのレベルと比較して非常に僅かな実際のリポーターデポジットの形成によって、統計的に妥当な情報を得るには困難であることがある一方で、範囲の上限では、単独ユニットの可視化が、視覚的に分離することができないドットの重なりが存在することによって、限られてしまうことがある。したがって、2つの異なるリポーターをデポジションさせる少なくとも2つの別々のステップを利用することが有利なことがあり、その際、第1リポーターの分子は、標的のユニットが豊富に存在する試料のエリアに位置している第1標的部位にデポジットさせ、第2リポーターの分子は、標的が少なく存在するエリアに位置している第2標的部位でデポジットさせる。
したがって、試料中で幅広い濃度範囲で存在する標的の単独ユニットを検出および可視化する方法は、本発明では、
a)試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み;
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
標的の個別単独ユニットの第1分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の第1標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、前記第1分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つはオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
b)(a)の試料を、(a)の第1標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1標的部位に形成するステップと;
c)(b)の試料を、(a)の第1の単独標的部位に付随している残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
d)試料(c)を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、標的の個別単独ユニットの第2の分別部分集団で1つまたは複数の別々の第2の標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、前記第2分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
e)(d)の前記試料を、第2単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第2集団および上記方法(1)のステップ(b)(即ち、請求項1のステップ(b))によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第1集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第2集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む。
一実施形態では、(a)および(d)の結合剤は、同じ結合剤であってよい。一実施形態では、標的の第1分別部分集団で単独標的部位を形成するためにステップ(a)で使用される結合剤の量が、ステップ(d)で標的の第2分別部分集団で単独標的部位を形成するために使用される結合剤の量よりも少ないことが好ましいことがある。
他の実施形態では、(a)および(d)の結合剤は、異なる結合剤、例えば2つの異なる抗体結合剤、2つの異なる核酸結合剤、結合剤(a)としての抗体および結合剤(b)としての核酸、標的に対して異なる親和性を有する2つの標的特異的抗体などであってよい。
一実施形態では、第1集団のリポーター分子および第2集団のリポーター分子は、それらが含む異なる検出可能な標識によって異なる。他の実施形態では、第1集団の分子および第2集団のリポーター分子は、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素のための基質として働くことができる化合物の組成によって異なる。他の実施形態では、分子は、他の形質、例えば、コンジュゲート分子の構造、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質と標識との間のリンカーの長さ、検出可能な標識の数などによって異なってよい。
固定化された標的の試料中での定量
一態様では、本発明は、固定化された標的を試料中で定量する方法に関する。本発明の標的の単独ユニットを可視化および検出する方法(上記)は、そのような標的の相対量を試料中で、詳細には組織学的試料中で定量的評価するために使用することができる。
固定化された標的を試料中で定量的評価するための方法、例えば、生物学的マーカーの発現を試料中で定量的評価するための方法は、一実施形態では、
a)試料を、
(i)請求項1(上記セクションの試料中で固定化された標的の単独ユニットを可視化する方法または上記セクションの組織学的試料中で生物学的マーカーの単独標的分子を検出する方法で検討されているとおり;
(ii)請求項36(上記セクションの試料中で幅広い動的濃度範囲で存在する固定化された標的の単独ユニットを検出する方法で検討されているとおり);または
(iii)請求項40(上記セクションの1つの試料中で少なくとも2つの異なる固定化された標的の単独ユニットを検出する方法で検討されているとおり)などの本発明の方法のいずれかに従って処理するステップと;
b)識別可能なドットを試料中で定量するステップと;
c)標的の量を試料中で評価するステップとを含んでよい。
処理された試料中での本発明の識別可能なドットの定量は、ドットの異なる形質を考慮して手動で、または自動で行うことができ、例えば、ドットは、眼に対して区別可能であるか、別々と考えられるので、これらはカウントすることができ、その際、カウントされるドットの数は、試料中でのマーカーの発現レベルを示し、ドットに特徴的な色を使用して、1つの試料中での2つの異なる標的に結合するドットを区別およびカウントすることなどができる。本発明の方法によって可視化された単独標的ユニットを含む試料のイメージを処理するためのソフトウェアを使用すると、異なる形質、例えば、ドット色特性、単独ドットまたは試料全体に随伴するシグナルの強度、試料内でのドットの相対分布などに基づき標的発現を評価することが可能である。
一実施形態では、カウントを手動で、即ち、試料の顕微鏡フィールドを観察している顕微鏡使用者または試料のデジタルイメージを分析する観察者が行うことができる。カウントはまた、細胞イメージを処理する分野で開発された任意の利用可能なソフトウェア、例えば、CellProfilerソフトウェアを使用して自動で行うこともできる。試料中のHer2の例示的な定量を実施例に記載する。
一実施形態では、試料中の標的の量を、何ら参照を伴うことなく、例えば標的の相対量または標的の単独ユニットの相対量として、試料中で評価することができる。他の実施形態では、標的の量を、参照マーカーを考慮して、例えば、試料の特定の生物学的分子または細胞構造当たりで比較して、試料体積と比較して、試料面積と比較してなどで評価することができる。
上記のとおりの方法は、複雑な組織学的試料において標的を定量的評価するために特に有利である。したがって、好ましい一実施形態では、本発明は、組織化学的試料での標的の定量的評価に関する。
本発明の方法を使用すると、組織学的試料中の標的を、参照マーカーを何ら使用することなく定量することができ、例えば、特定の体組織の試料をその特定の組織の試料が本発明による同じ可視化手順を使用して処理されていると仮定すると、標的に対応するドットの数などの参照を使用することによって特徴付けることができる。一実施形態では、標的を、毎回の生物学的標的の染色および染色結果の定量当たりの試料体積、試料面積(即ち、顕微鏡フィールドの面積または試料のデジタルイメージの面積)に対して定量することができる。
診断用途
生物学的マーカー、即ち、その発現が診断的、予診的または治療的値を有するマーカーの発現の推定は、医学的診断を成すか、もしくは確認するために、または治療的処置の結果を予測するために、または疾患の展開をモニタリングするために常套的に使用されている。そのような評価が、組織学的試料としてのそのような複雑な試料の分析に基づく場合には、これは相対値を有する。それというのも、分析結果は、試料の品質、検出方法の感度、発現レベルのバリエーションなどに著しく依存しており、したがって、同じ患者の同じ組織の一連の組織学的試料における生物学的マーカーの発現の評価は、非常に異なる結果をもたらし、誤った仮定および診断を導き、結果として、有効でない療法を導くことがある。本明細書に記載の方法に従って、患者試料中での前記マーカーの単独分子の含有率を推測することに基づき、診断および治療的マーカーの発現を評価すると、より信頼可能な評価および誤りのない医学的診断を、さらに個人化標的対象療法を得ることができる。
したがって、一実施形態では、本発明の方法は、患者において疾患を診断するために使用することができ、その際、前記診断は、患者から得られた生体試料を本発明の方法のいずれかに従って処理するステップを含む。
他の実施形態では、本発明の方法は、治療的処置の効力を患者において推測するために使用することができ、その際、前記推測は、本発明の方法のいずれかに従って処理されている患者試料を分析することを含む。
他の実施形態では、本発明の方法は、医学的予診を得るために、例えば、患者において疾患が発生する危険性を予診するために、または疾患からの回復の見込みもしくは失敗を予診するために使用することができ、その際、前記予診の方法は、患者から得られた生体試料を本発明の方法のいずれかに従って処理および分析するステップを含む。
他の実施形態では、本発明の方法は、治療計画に関して患者を層別するために使用することができ、その際、前記層別は、本発明の方法のいずれかに従って処理されている患者の試料を分析することを含む。
方法はまた、疾患、例えば、疾患の進行または改善をモニタリングするために使用することができるか、または新薬のスクリーニングのプロセスにおいても、例えば、in vitroアッセイなどにおいて新薬の治療可能性を推測するために使用することができる。
本発明の可視化方法は、様々なアッセイフォーマットで使用することができ、典型的には、後者の用途で、例えば、フローサイトメトリー(FC)、ELISA、組織化学(IHCおよびISHの両方)、ブロッティングなどのために使用される。例えば一実施形態では、生体試料は、細胞の懸濁液であってよい。懸濁液中の細胞の標的生物学的分子または標的構造を、FC、ELISA、IHCまたはISHを使用して検出することができる。ELISA、IHCまたはISHを、検出のために使用する場合、懸濁液の細胞を、固体支持体、例えば、プレート(ELISA)またはスライド(IHC)に付着させるべきである。他の実施形態では、生体試料は、体組織の試料、例えば、固定化およびパラフィン包埋された腫瘍試料の切片であってよい。そのような試料の細胞の標的分子または構造を典型的には、IHCまたはISHを使用して検出する。
IHCおよびISHアッセイフォーマットは通常、標的分子の可視化に先立つ一連の処理ステップを必要とし、それらは顕微鏡検査または顕微鏡写真の作成に適した固体支持体、例えば、ガラススライドまたは他の平坦な支持体にマウントされている組織切片上で、疾患状態のある種の形態学的インジケーターを選択的に染色することによって強調するか、または生物学的マーカーを検出するために行うことができる。したがって、例えば、IHCでは、試料を初めに固体から採取し、次いで、固定し、その後に初めて、これを、該当する生物学的マーカーに特異的に結合する抗体に曝露する。試料処理ステップはまた、本発明による可視化手順の前に他のステップを包含してよく、例えば、これは、組織のカッティングおよびトリミング、固定化、脱水、パラフィン浸潤、薄い切片へのカッティング、ガラススライドへのマウント、焼き付け、脱パラフィン、再水和、抗原回収、ブロッキングステップなどのステップを伴ってよく、洗浄ステップを、適切な緩衝液または溶媒、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)、トリス緩衝食塩水(TBS)、蒸留水を用いて行うことができる。洗浄緩衝液は場合によって、洗浄剤、例えば、Tween20を含有してよい。これらの手順は全て、実験室ではよく知られている常套的な手順である。
組織学的試料の2つのカテゴリー:(1)一般にはアルデヒドベースの固定剤で固定されていない新鮮な組織および/または細胞を含む標本および(2)固定および包埋組織検体の標本、多くの場合に保存材料の両方を、本発明の方法を使用して処理することができる。
組織検体を固定および包埋する多くの方法、例えば、アルコール固定およびホルマリン固定およびその後のパラフィン包埋(FFPE)が知られている。
再現可能で、生きているかのように、細胞および組織を保存するためには、固定剤が必要である。このことを達成するために、組織ブロック、切片または塗沫を、固定液に浸漬するか、または塗沫の場合には、乾燥させる。固定剤は、細胞および組織を安定化させ、それによって、それらを、処理および染色技術の硬直から保護する。
任意の適切な固定剤、例えば、エタノール、酢酸、ピクリン酸、2−プロパノール、テトラヒドロクロリド二水和物、アセトイン(モノマーおよびダイマーの混合物)、アクロレイン、クロトンアルデヒド(cis+trans)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、四酸化オスミウム、パラホルムアルデヒド、塩化第二水銀、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリクロロ酢酸、タングステン酸を使用することができる。他の例には、ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液)および中性緩衝ホルマリン(NBF)、グルタルアルデヒド、アクロレイン、カルボジイミド、イミデート、ベンゾエキノン(benzoequinone)、オスミウム酸および四酸化オスミウムが包含される。
新鮮な生検検体、細胞標本(接触標本および血液塗沫を包含)、凍結切片および免疫組織化学的分析のための組織は、エタノール、酢酸、メタノールおよび/またはアセトンを包含する有機溶媒中に一般に固定されている。
固定組織における特異的な認識を容易にするために、多くの場合に、標的、即ち、該当する生物学的マーカーを、検体の予備処置を介して賦活化または曝露させて、大部分の標的の反応性を高めることが必要である。この手順は、「抗原賦活化」、「標的賦活化」または「エピトープ賦活化」、「標的曝露」または「抗原曝露」と称される。抗原賦活化(抗原曝露)の広範な概観は、Shiら、1997、J Histochem Cytochem、45(3):327に見出すことができる。
抗原賦活化には、特異的検出試薬と相互作用する標的の可能性が最大化される様々な方法が包含される。最も一般的な技術は、適切な緩衝液中でタンパク質分解酵素(例えば、プロテイナーゼ、プロナーゼ、ペプシン、パパイン、トリプシンまたはノイラミニダーゼ)を用いる酵素消化またはEDTA、EGTA、トリス−HCl、クエン酸塩、尿素、グリシン−HClもしくはホウ酸を通常は含有する適切にpH安定化された緩衝液中でマイクロ波照射、水浴、スチーマー、通常の炉、オートクレーブもしくは圧力鍋中での加熱を使用する熱誘発エピトープ賦活化(HIER)である。洗浄剤をHIER緩衝液に加えて、エピトープ賦活化を増大させることができるか、または希釈培地および/またはすすぎ緩衝液に加えて、非特異的結合を低下させることができる。
抗原賦活化緩衝液は最も多くの場合に水性であるが、水の沸点を超える沸点を有する溶媒を包含する他の溶媒を含有してもよい。このことによって、標準圧力、100℃超での組織の処理が可能になる。
加えて、所望の場合には、試薬をインキュベートする前またはその間での真空および超音波の適用または切片の凍結および解凍を包含する種々の物理的方法によって、シグナル対ノイズ比を高めることができる。
内生ビオチン結合部位または内生酵素活性(例えば、ホスファターゼ、カタラーゼまたはペルオキシダーゼ)を、検出手順における予備検出ステップとして除去することができ、例えば、内生ビオチンおよびペルオキシダーゼ活性を、ペルオキシドで処理することによって除去することができる。内生ホスファターゼ活性は、レバミゾールでの処理によって除去することができる。内生ホスファターゼおよびエステラーゼは、加熱によって破壊することができる。当分野で知られているそのような予備処置の他の方法も、使用することができる。
本発明の方法を使用する場合には、非特異的結合部位のブロックは必要ないが、しかしながら、所望の場合には、例えば、不活性タンパク質などを用いる当分野の標準的なアプローチを使用して、ブロッキングを行うことができ、ウマ血清アルブミン(HSA)、カゼイン、ウシ血清アルブミン(BSA)およびオバルブミン、ウシ胎児血清もしくは他の血清またはTween20、Triton X−100、Saponin、BrijもしくはPluronicなどの洗浄剤を使用することができる。特異的試薬の未標識の標的非特異的バージョンを用いて、組織または細胞中の非特異的結合部位をブロックすることもまた、使用することができる。
試料をまた、フリーフローティング技術を使用して調製し、標的分子を検出することができる。この方法では、組織切片を、適切な容器内、例えば、微量遠心管内で、懸濁液またはフリーフローティング中で種々の試薬および洗浄緩衝液と接触させる。
染色手順の間に、例えば、「フィッシングフック様」デバイス、スパチュラまたはガラスリングを使用して、組織切片を異なる試薬および緩衝液を有する管から管へと移動させることができる。異なる試薬および緩衝液はまた、穏やかなデカンテーションまたは真空吸引によって変えることができる。別法では、次の染色ステップのための管に再び移す前に、組織切片を有する容器をCorning「Netwell」(Corning,)などの特殊な染色ネットにあけて、組織切片を洗浄することができる。
例えば、固定、抗原賦活化、洗浄、ブロック試薬、免疫特異的試薬と一緒のインキュベーションおよびオキシドレダクターゼ媒介デポジションを包含する全てのステップを、組織切片が自由にフローティングしているか、ネット上に留められている間に行う。リポーターのデポジションの後に、組織切片をスライド上にマウントし、リポーターを検出し、スライドをカバースリップでカバーし、その後、例えば、光学顕微鏡または蛍光顕微鏡によって分析する。
一部の実施形態では、方法の手順(a)の後の免疫特異的試薬との厳密なインキュベーションの後に、組織切片をスライドにマウントすることができる。次いで、残りの検出プロセスを、スライドにマウントされた組織切片で行う。
本発明の方法を使用するアッセイはいずれも、1つまたは複数の自動ステップを含んでよい。一実施形態では、アッセイは、手動の検出を含んでよく、他の実施形態では、アッセイは、全て自動化されていてよく、他の実施形態では、アッセイは、半自動検出のために調節されていてよい。
以下は、開示される発明の非限定作業例である。
略記号
MBHA 4−メチルベンズヒドリルアミン
NMP N−メチルピロリドン
HATU 2−(1h−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;メテナミニウム
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DCM ジクロロメタン
TFA トリフルオロ酢酸
TFMSA トリフルオロメチルスルホン酸
Flu フルオレセイン
Dex デキストラン
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
equi. 等量
L30 1,10,16,25−テトラアザ−4,7,13,19,22,28−ヘキサオキサ−11,15,26,30−テトラオキソ−トリアコンタン
L60、L90、L120、L150 2、3、4または5つのL30反復を含むL30の異なる重合体
CIZ 2−クロロZ=2クロロベンジルオキシカルボニル
FITC フルオレセイン(Flourescein)イソチオシアネート
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
GaM ヤギ抗マウス抗体
DNP 2,4ジニトロ−フルオロベンゼン(ジニトロフェニル)
ACim 4−アミノ−ケイ皮酸
LPR パーマネントレッド液(Dako K0540)
Sin シナピン酸(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシケイ皮酸)
Caf コーヒー酸(3,4−ジヒドロキシケイ皮酸)
PNA−X 中心窒素に結合している異なる置換基を含むペプチド核酸オリゴマー(N−(2−アミノエチル)−グリシン)
A アデニン−9酢酸、
C シトシン−1−酢酸、
D 2,6−ジアミノプリン−9酢酸、
G グアニン(guanuine)−9−酢酸、
Gs 6−チオグアニン(thuioguanine)−9−酢酸、
P 2−ピリミジノン−1酢酸、
T チミン−1−酢酸、
Us 2−チオウラシル−1−酢酸。
Dpr 2,3ジアミノプロピオン(propioninc)酸、
Phe フェニルアラニン、
Tyr チロシン、
Trp トリプトファン、
Lys リジン、
Cys システイン、
betaala ベータアラニン、N,Nジ酢酸
FFPE ホルムアルデヒド固定、パラフィン包埋
SMD 単独分子検出
架橋剤 オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第一の基質
リポーター ペルオキシダーゼ(peorxidase)活性を有する酵素の第二の基質
第二の基質分子
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異なるコンジュゲートおよびそれらの中間化合物は、おおよそ複雑性の高い順序でそれらの合成方法によって表の3欄に類別されている。
1.固相化学だけ。
2.固相、次に1溶液相ステップ。
3.固相、次に2溶液相ステップ。
4.固相、次に2溶液相ステップ
5.固相、次に4溶液相ステップ。
6.アミノおよびbetaala無水物中間体間の溶液相結合。
7.1置換基のデキストランコンジュゲート。
8.2置換基のデキストランコンジュゲート。
1.この群には、4つの天然塩基およびさらに4つの非天然塩基の三フルオレセイン標識PNA五量体から調製される8つのコンジュゲートが含まれる。(D18007〜D18014)。5〜6個のチロシンおよび3つのフルオレセインを有する4つのチロシンコンジュゲート、D18044、D18049、D18137、およびフルオレセイン標識の代わりに3つのDNPを有するD18138がある。D18128およびD18132は5つのチロシンおよび3つのフルオレセインを各々有し、このようにそれらは潜在的コンジュゲートであるが、それらはさらなるデキストラン結合のためにN末端シスチン残基も含み、それらは「中間体」の群に分類される。中間体には、重要なシステイン(D17127)およびベータアラニン(alnine)(D17126)三フルオレセインリンカー、ならびに7つのチロシン(D18084)または3つのフルオレセイン(D18085)を有するジアミノプロピオン酸リンカーがさらに含まれる。最後に、対照として用いられる小さな二フルオレセインリンカー(D17161)も固相合成単独で調製した。全てのこれらの化合物の合成手法は単純である。Boc保護単量体は市販されているか自家調製し、コンジュゲートおよび中間体は、直線固相合成と、その後の6:2:1:1のTFMSA:TFA:m−クレゾール:チオアニソールの混合物による樹脂からの切断によって調製される。最良の結果のために、結果として生じる全ての単量体の二重結合が用いられる。固相の上でのFmoc脱保護に続いて、リジン側鎖(およびN末端、D17161)にフルオレセインが導入される。フルオレセイン標識(NMPに0.2M、3×20分間)のために、HATU活性カルボキシフルオレセイン(混合異性体)を用いた。DNP標識化は、2,4−ジニトロ−フルオロ−ベンゼン(DIPEAを含むNMPに0.5M、2×10分間)で達成された。
2.この群には、遊離のN末端アミノ基および遊離のリジン側鎖アミノ基を運ぶ中間体の固相合成に続いて、溶液相でケイ皮酸誘導体によって標識される多数のコンジュゲートが含まれる。樹脂からの切断に続いて遊離のイプシロン−N−アミノ基を与えるリジン残基を導入するために、アルファ−N−Boc−(イプシロン−N−2−Cl−Z)−リジンを用いた。溶液相標識は、基本的に固相法の拡張であり、相対的高分子量中間体をTFAまたはNMP溶液からジエチルエーテルによってほとんど定量的に沈殿させることができることを利用する。
3.合成の観点からは、この群の中間体は、さらにより高い程度の複雑性を表す。1および2の場合のように固相合成および溶液相標識と、次に続く溶液相Fmoc脱保護のさらなるステップ。Boc−L30リンカーをBoc−2ClZおよびBoc−Fmoc−リジンと組み合わせることによる、保護された(Fmoc)リジン側鎖ならびに遊離のN末端および他のリジン側鎖遊離アミノ基(樹脂切断の間のN末端Bocおよび2−ClZリジン残基から)の組合せを有する中間体。これらの中間体は、2の場合のように溶液中でフェルラ酸によって標識することができる。しかし、エチレンジアミンによる洗浄ステップの前に、5%エタノールアミンによる追加の5分間のステップが用いられる。この追加の洗浄ステップは、エチレンジアミンによるFmoc脱保護の前にアミノ反応性種を不活性化する。この追加のステップなしでは、エチレンジアミンはそれがHATU活性化フェルラ酸を不活性化するよりも速くFmoc基を脱保護し、Fmocで「保護された」アミノ基はフェルラ酸で標識されるようになる。遊離アミノ基を有するこの群は、D17120(6つのフェルラ酸)、D17093(PNA骨格に結合している5つのフェルラ酸)、D17138(フェルラ酸間のL90リンカー)、D17139(3つの近接した対の6つのフェルラ酸)、D17104(フェルラ酸間のグリシンスペーサー)、D17192(フェルラ酸の代わりに6つの7−ヒドロキシクマリンを有する)、D18019(最も近接したフェルラ酸と遊離アミノ基の間の伸長したL270リンカー)、D18080(L90スペーシングを有する3つの遊離アミノ基)を含む。
4.6つのフェルラ酸および3つの遊離アミノ基を有する中間体D18080から、さらなる溶液相標識によって2つのコンジュゲートが調製された。3つのテキサスレッドXを有するD18081および3つの7−ヒドロキシクマリンを有するD18096。コンジュゲートを2つの異なる置換基によってどのように溶液中で標識することができるかを、これは説明する。この利点は、最終標識の前に中間体D18080を精製することができるということであり、テキサスレッドなどの不安定であるか高価な標識を用いるときの利点である。
5.D17152の合成は、溶液中のリンカーに適用することができる固相合成化学の範囲、続く、低分子量反応物および溶媒を除去するためのジエチルエーテルによる反復沈殿を例示する。固相でNH2−Lys(NH2)−(L30−Lys(NH2))4−L30−Lys(Fmoc)を調製し、樹脂から切断した。Boc−L30リンカーを、次に溶液中で6つの遊離アミノ基に結合した。中間体を沈殿させ、TFA中の5%m−クレゾールに2回溶解した。次に、今はL30拡張アミノ基で2の場合のようにフェルラ酸標識を実施し、その後3の場合のようにエタノールアミンおよびエチレンジアミン洗浄が、最後に1の場合のように3回のTFA沈殿が続いた。
6.アミノ置換中間体と「betaala無水物」活性化中間体との間で断片結合を実行した。3つのフルオレセインを有するD17126は、N末端ベータアラニン−N,N−ジ酢酸をさらに運ぶ。10分間の活性化(88:10:2のNMP:ジイソプロピルカルボジイミド:ピリジン)によって、アミノ基への結合のために用いることができる環式の「betaala無水物」が形成される。これは、D17120からD17134(L30スペーシングを有する6つのフェルラ酸)を、D17139からD17148(L30スペーシングを有する3つの対の6つのフェルラ酸)を、D17152からD17156(6つのL30拡張フェルラ酸)を、およびD17192からD18003(6つの7−ヒドロキシクマリンを有する)を与えた。そのような断片結合の利点は、中間体を結合の前にHPLC精製することができ、大きく複雑であるが、全く純粋なコンジュゲートを与えることである。別の利点は、一連の関連するが異なるコンジュゲートを調製するために、D17126のような単一の中間体を用いることができることである。
7.単一の置換基を有するデキストランコンジュゲートには、対照フルオレセインのみのコンジュゲートD17132、D18130およびD18088(全てシステイン結合によるD17127からのDex70コンジュゲート)、D17162(D17127からのdex270コンジュゲート)ならびにD18086(ジアミノプロピオン酸を経るより非効率な結合によりD18085から)が含まれる。フルオレセインのみのコンジュゲートが作用しないことを実証するための対照として、これらは用いられた。コンジュゲートは、複数の中間体コンジュゲートをデキストランに結合することによってもこのように調製された。これらには、D18133(L30スペーシングチロシン−フルオレセインコンジュゲートD18132を有するdex70)およびD18130(チロシン−フルオレセインコンジュゲートD18128を有するdex70)が含まれる。単一のコンジュゲートをHRP基質および標識の両方に結合させる利点は、2つの置換基の間の一定の比が保証されることである。
8.2つの異なる置換基を有するデキストランコンジュゲートには、全て6つのフェルラ酸リンカーD18074および三フルオレセインリンカーD17127(またはリンカーの複製)を有するdex70である、D17130、D18077、D18079、D18090、D18122およびD21008が含まれる。約100個のフェルラ酸および70個のフルオレセインを有するD17130、D18077、D18079およびD21008の間に良い再現性があったが、D18122はさらなる過剰のフルオレセインリンカーに結合し、各々約100個のフェルラ酸およびフルオレセインを有するコンジュゲートを与えた。D17128はD17130に似ているが、用いたフェルラ酸リンカー(D17093)はリジン側鎖ではなくPNA骨格に結合するフェルラ酸を有する。コンジュゲートD18031もD17127を有するが、L270拡張フェルラ酸リンカーD18019を有する。このコンジュゲートは、HRP酵素がフェルラ酸により容易に接近できるようにする試みであった。
選択された化合物の合成手順の例
D19185:Boc−(Lys(2−Cl−Z))3−L150−Lys(Fmoc)は、固相で調製される。Fmoc基を除去し、その後前記のようにフルオレセイン標識が続く。中間体NH2−((Lys(NH2))3−L150−Lys(Flu)は、樹脂切断から生じる。それをジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに溶解し、沈殿させ、次にNMPに溶解し、DIPEAで塩基性にする。この溶液を、HATUおよびDIPEAで活性化したNMP中の0.2Mフェルラ酸の等量と混合する。10分後、標識は完了し、粗生成物はエチレンジアミンの添加によって10%の濃度まで5分間さらに「洗浄」される。ジエチルエーテルによる沈殿の後、生成物をさらにTFAに溶解し、ジエチルエーテルで3回沈殿させて低分子量破片を除去する。エチレンジアミンによる「洗浄」の前に、質量分光法は2種類の付加物(およびその組合せ)を示す:余分のフェルラ酸(他のフェルラ酸およびフルオレセイン上のフェノールエステル)を示している+(176)n、および+98(同様に保護されていないフェノール基の上のN,N’−テトラメチルウロニウム付加物)。これらはエチレンジアミン処理によって完全に除去され、活性エステルおよびフェルラ酸オリゴマーは同様に分解される。
D19185の合成を図1に例示する。
以下のフルオレセイン−フェルラ酸コンジュゲートがこのスキームによって作製された:D17157、D17158、D19112、D19185、D18015、D20086、D20118、D20120、D19037およびD18157(これらのコンジュゲートのいくつかの詳細な合成が下に記載される)。他の標識を有するフェルラ酸コンジュゲートには、以下のものが含まれる:D19048(リサミン標識);D19059、D18141およびD19040(DNP標識)。フェルラ酸の代わりにシナピン酸とのコンジュゲートは同じ方法論によって調製され、フルオレセイン標識を有する0328−018およびD21028ならびにDNP標識D21048を含む。D21020は3つのコーヒー酸およびフルオレセインを有し、D18146は6つの4−アミノ−ケイ皮酸および3つのフルオレセインを有し、両方ともに同じ手法によって調製される。
D17158 MBHA樹脂は、Fmoc−Lys(ivDDE)で150マイクロモル/gの負荷に下方負荷された。200mg樹脂をNMP中の20%ピペリジンで脱Fmocし、次にBoc−L30−OH(NMP中の0.26Mの1.5mL、0.9等量のHATU、2等量のDIPEAで2分間前活性化)と20分間結合させた。ivDDE基をNMP中の5%ヒドラジンで除去し、リジン側鎖をカルボキシフルオレセイン(Flu)(NMP中の0.2Mの1.5mL、0.9等量のHATU、2等量のDIPEAで2分間前活性化)で2×20分間標識した。樹脂を、NMP中の20%ピペリジン、NMP、DCM、次にDCMで処理した。中間体生成物H−L30−Lys(Flu)−NHをTFA:TFMSA:mクレゾール(7:2:1、1.5mlで1時間)で樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、ジエチルエーテルで再び沈殿させた。100μLのDIPEAでそれを塩基性にし、0.9等量のHATUおよび2等量のDIPEAで前活性化した0.5mLの0.3Mフェルラ酸に直接的に溶解した。25分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、450μLのNMPおよび50μLのエチレンジアミンに溶解した。5分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、15%アセトニトリル水溶液(8mL)に溶解し、100μLのTFAで酸性化し、RP−HPLC精製にかけた。
D17157 MBHA樹脂は、Boc−Lys(Fmoc)で100マイクロモル/gの負荷に下方負荷された。100mgの樹脂を、Boc−L30−OHによる5結合サイクルにかけた(a.1の場合のようにBoc−L30−OHとの結合。b.1:1のNMP:ピリジン中の2%酢酸無水物による2分間のキャッピング。c.TFA中の5%mクレゾールによる2×5分間の脱Bc)。1の場合のように、リジン側鎖を脱Fmocし、カルボキシフルオレセインで標識した。中間体生成物H−L150−Lys(Flu)−NHを樹脂から切断し、フェルラ酸でN末端標識し、1.1の場合のように精製した。
D16127 標準の固相化学でBoc−L90−Lys(Fmoc)−L90−Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc)を0.5gのMBHA樹脂の上で調製した(1.1および1.2のように)。NMP中の20%ピペリジンでFmoc基をリジン側鎖から除去し、化合物を反復カルボキシフルオレセイン標識にかけた(3×30分間)。TFAによるBoc基の除去後、固相上でN末端をベータアラニン−N,N−二酢酸(betaala)tert−ブチルエステルで標識した。樹脂からの切断およびHPLC精製の後、betaala−L90−Lys(Flu)−L90Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−NH2を単離した。
D17127 1.3に記載される手法を用いてBoc−L90−Lys(Fmoc)−L90−Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc)樹脂を調製し、フルオレセインで標識した。Boc基の除去後、N末端をN−Boc−S(4−メトキシベンジル)−Cys−OHで標識した。化合物はカラムから切断し、HPLCによって精製した。
D18074/D17128 MBHA樹脂にBoc−Lys(Fmoc)(2サイクル)、Boc−L30−OH(5サイクル)およびBoc−Lys(2ClZ)−OHを順番に結合した。2ClZ基を除去するために、10%チオアニソールスカベンジャーの存在下で中間生成物を樹脂から切断した。1.1の場合のように、N末端および5つの脱保護されたリジン側鎖をフェルラ酸で標識した(2×30分間)。次に、精製の前に、C末端リジン残基のNの上のFmoc基を、NMP中の10%エチレンジアミンで除去した。
D17134 betaala−L90−Lys(Flu)−L90Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−NH2(D16126)(上の1.4を参照)500nmolを88μLのNMPおよび2μLのピリジンに溶解し、10分間の10μLのジイソプロピルカルボジイミドとの反応によって環状無水物に変換した。無水物をジエチルエーテルで沈殿させ、250nmolのFer−(Fer−L30)−Lys(NH)−NHを含む100μLのNMPにペレットを溶解した。20分後、5μLのエチレンジアミンを加え、5分後に生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、酸性化し、HPLCで精製した。
D18044 Ac−(Tyr(2BrZ)−L30)−L90−Lys(Fmoc)−L90−Lys(Fmoc)−Lys(Fmoc)を、MBHA樹脂の上で調製した。固相の上で、Fmoc基を除去し、リジン側鎖をカルボキシフルオレセインで標識した。樹脂からの切断の後、生成物をHPLCで精製した。
D17140 Boc−Lys(2ClZ)−L60−Lys(2ClZ)−Lys(2ClZ)−L60−Lys(2ClZ)−Lys(2ClZ)−L30−Lys(Fmoc)を、MBHA樹脂の上で調製した。樹脂からの切断の後、中間体生成物H−Lys(NH)−L60−Lys(NH)−Lys(NH)−L60−Lys(NH)−Lys(NH2)−L30−Lys(Fmoc)を沈殿によって単離し、1.1の場合のようにフェルラ酸で標識した。最終生成物をHPLCによって単離した。
D18090 ジビニルスルホン10nmolで活性化したデキストランMW70kDaを、Fer−(Fer−L30)−Lys(NH)−NH(D18074)と反応させた(上の1.4を参照)。500nmol、総量300μLの0.16MのNaHCO pH9.5、40℃で30分間。わずかな沈殿が観察された後、さらなる100μLの水を加え、反応をさらに30分間進行させた。さらなる200μLの0.15M NaHCOを、500nmolのH−Cys−L90−Lys(Flu)−L90Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−NH2(D17127)と一緒に加えた(上の1.5を参照)。40℃で1時間の後、30分間の50μLの0.165Mシステインの添加によって反応混合液を抑え、溶液を濾過し、生成物は、10mMのCHESを含む20%EtOH水溶液pH9.0および0.1MのNaClによってsuperdex200の上でFPLCによって精製した。溶出した生成物は、約56個のフルオレセインおよび113個のフェルラ酸残基を含むデキストランコンジュゲートであった。
D19112 固相MBHA樹脂の上で、標準の固相Boc化学を用いてBoc−Lys(2Clz)−Lys(2ClZ)−L150−Lys(Fmoc)を調製した。NMP中の20%ピペリジンを用いてFmoc基を除去し(2×5分間)、遊離アミノ基をカルボキシフルオレセインで標識した(0.9等量のHATUおよび1等量のNMP中のDIPEAによって20分間で3回活性化した0.2Mカルボキシフルオレセイン)。樹脂を、2×5分間、NMP中の20%ピペリジンで次に処理した。樹脂からの切断は、TFA:TFMSA:m−クレゾール:チオアニソール(6:2:1:1)混合液で1時間実施し、中間体生成物H2N−Lys(NH2)−Lys(NH2)−L150−Lys(Flu)を生じた。この生成物をTFAに溶解し、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに次に溶解し、ジエチルエーテルで再び沈殿させた。次に、0.9等量のHATUおよび2等量のジイソプロピルエチルアミンで活性化した0.3Mフェルラ酸に沈殿物を溶解した。10分間の反応の後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、NMP中の10%エチレンジアミンに次に2分間溶解した。最終生成物をジエチルエーテルで次に沈殿させ、30%アセトニトリル水溶液に溶解し、C18カラムの上でHPLCにより精製した。
D19185、D20068およびD20171は、さらなるLys(Fer)基の導入により、D19112と同じ方法で調製した。
D21020 Caf−Lys(Caf)−Lys(Caf)−L150−Lys(Flu)を、D19185のように調製した。固相合成の後、コーヒー酸標識を溶液で実施した。
0328−018 Sin−Lys(Sin)−Lys(Sin)−L150−Lys(Flu)を、D19185のように調製した。固相合成の後、シナピン酸標識を溶液で実施した。
D20118は、L60リンカーを用いてD19112と同じ方法で調製された。
D20086は、L30リンカーを用いてD19112と同じ方法で調製された。
D20120は、L30リンカーを用い、さらにグルタミン酸残基を用いてD19112と同じ方法で調製された。グルタミン酸残基を組み込むために、Boc−Glu(O−ベンジル)を固相合成のために用いた。
D19048 0.5gのMBHA樹脂の上で、Boc−L150−Lys(Fmoc)を調製した。Fmoc基を除去し、80μLのDIPEAを添加した2mLのNMP中の100mgを用いて、リジン側鎖アミノ基をリサミン(MolecularProbes製品番号L20、ローダミンBスルホニルクロリド)により10分間で3回標識した。Boc基を次にTFAで除去し、Boc−Lys(2ClZ)をN末端に結合した。中間体生成物HN−Lys(NH)−L150−Lys(リサミン)を、TFA:TFMSA:m−クレゾール:チオアニソール(6:2:1:1)で樹脂から切断し、D19112について記載されているようにフェルラ酸で標識して、Fer−Lys(Fer)−L150−Lys(リサミン)を与えた。生成物をRP−HPLCによって精製し、リサミンの異なる異性体を表す2つの別々のピークに分けた。第一の異性体は塩基性水溶液でほとんど無色となり、放棄された。第二の異性体は塩基性水溶液で色および蛍光を保持し、収集された。
D19059はD19112と同じ方法で調製されたが、50μLのDIPEAを添加した1.5mLのNMP中の100mgの2,4−ジニトロフルオロベンゼンを用いて、ジニトロフェニルによって固相の上でC末端リジン側鎖アミノ基で20分間で2回標識した。
D18126:Fer−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L30−Lys(Fer)−L120−Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)−L90−Lys(Flu)=Fer−(Lys(Fer)−L30)5−(L90−Lys(Flu))3。この拡張コンジュゲートは、D19112と同じ経路によって調製された。Boc−(Lys(2ClZ)−L30)5−(L90−Lys(Fmoc))3は、固相の上で調製された。D19112の場合のように3つのFmoc基をNMP中のピペリジンで除去し、3つのカルボキシフルオレセインを導入した。中間体生成物NH2−(Lys(NH2)−L30)5−(L90−Lys(Flu))3を樹脂から切断し、N末端および5つの遊離リジン側鎖でフェルラ酸によって標識し、NMP中の10%エチレンジアミンで洗浄し、TFAから沈殿させ、HPLCで精製した。
D18146 ACim−(Lys(ACim)L30)5−(L90−Lys(Flu))3は、D18126と同じリジン−リンカー骨格の上で調製された。固相からの切断の後、中間体のフルオレセイン標識リンカーをNMPに溶解し、DIPEAで塩基性にした。NMP中の0.1Mの4−アミノ−ケイ皮酸を0.9等量のHATUおよび3等量のDIPEAで30秒間活性化し、リンカーに加えた。10%の最終濃度までのエチレンジアミンの添加によって、2分後に反応を抑えた。沈殿の後、生成物をRP−HPLCによって精製した。
D18074 Fer(Lys(Fer)−L30)5−Lys(NH2)。6つのフェルラ酸および遊離リジン側鎖アミノ基を有するこの中間体リンカーは、C末端Boc−Lys(Fmoc)を用いる固相化学と、続くBoc−L30リンカーおよびBoc−Lys(2ClZ)との交互結合によって調製された。樹脂からの切断に続いて、D19112について記載されている通りに、中間体生成物NH2(Lys(NH2)−L30)5−Lys(Fmoc)を溶液中でフェルラ酸によって標識した。10%エチレンジアミンによる最終処理では、Fmoc基も除去された。このホモフェルラ酸オリゴマーは、デキストランコンジュゲートD21008の調製で用いられた。
D18118 NH2−Cys−(L90Lys(Flu))。この中間体三フルオレセインリンカーは、リジンを導入するためにBoc−Lys(Fmoc)を用いて固相の上で直接的に調製され、リジンはFmocの除去の後にカルボキシフルオレセインで標識された。Boc(S−p−メトキシベンジル)システインを用いて、N末端システインを導入した。
D18044 固相の上で、Fer−(Tyr−L30)5−(L90−Lys(Flu))3をD18126のように調製した。チロシンを導入するために、N−Boc−O−2BrZチロシンを用いた。樹脂からの切断の後、生成物をHPLCで精製した。
D21008 D18074およびD18118とのDex70コンジュゲート。140μLの水の中の10nmolのビニルスルホン活性化70kDaデキストランを、さらなる200μLの水および60μLの0.8M炭酸水素ナトリウムpH9.5と混合した。500nmolの凍結乾燥D18074を溶解するために、この混合液を用いた。反応混合液を40℃で60分間維持し、次に250μLの水に溶解したさらなる500nmolのD18118を、さらなる50μLの0.8M炭酸水素ナトリウムpH9.5と一緒に反応混合液に加えた。40℃でのさらなる60分間の反応の後、0.8M炭酸水素ナトリウムpH9.5中の0.165mMシステインの70μLの添加によって反応を停止した。10mMのCHES、pH9.0、20%エタノール水溶液中の100mM NaClを溶出剤として用いて、コンジュゲートをsuperdex200の上で精製した。これは、コンジュゲートを含む第一のピーク、続いてコンジュゲートしていないリンカーをもたらした。81%のフルオレセインおよびフェルラ酸の全回収率に基づき、およびデキストランコンジュゲートの同じ回収率(81%)を仮定して、1デキストランにつき111個のフェルラ酸および83個のフルオレセインの比が計算され、(D18074)18.5−Dex70−(D18118)27.7に対応する。
D19059 0.1gのMBHA樹脂の上で、標準の固相化学により、Boc−Lys(2ClZ)−Lys(2ClZ)−L150−Lys(Fmoc)を調製した。Fmoc保護リジン側鎖をNMP中の20%ピペリジンで脱保護し(2×5分間)、1.5mlのNMPおよび50μLのDIPEAに溶解した150mgの2−4−ジニトロフルオロベンゼンによって2×20分間標識した。樹脂を、NMP中の20%ピペリジン、NMPおよびDCMで処理した。
中間体生成物をTFA:TFMSA:チオアニソール:mクレゾール(6:2:1:1、1.5mLで1時間)で樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、ジエチルエーテルで再び沈殿させた。100μLのDIPEAでそれを塩基性にし、0.9等量のHATUおよび2等量のDIPEAで前活性化した0.5mLの0.3Mフェルラ酸に直接的に溶解した。10分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、900μLのNMPおよび100μLのエチレンジアミンに再溶解した。2分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁し、ジエチルエーテルで沈殿させ、22%アセトニトリル水溶液(8.2mL)に溶解し、RP−HPLCで精製した。
収量8μmol、MS観察値3582(M+Na)、Fer−Lys(Fer)−Lys(Fer)−L150−Lys(DNP)の計算値3558.784。
D19112 1gのMBHA樹脂の上で、標準の固相化学により、Boc−Lys(2ClZ)−Lys(2ClZ)−L150−Lys(Fmoc)を調製した。Fmoc保護リジン側鎖をNMP中の20%ピペリジンで脱保護し(2×5分間)、反復カルボキシフルオレセイン標識(NMP中の0.2Mの3mL、0.9等量HATU、1等量DIPEAで2分間前活性化した)を3×20分間受けさせた。樹脂をNMP中の20%ピペリジンで処理し、次にNMP、DCMおよびTFAで洗浄した。中間体生成物をTFA:TFMSA:チオアニソール:mクレゾール(6:2:1:1、3mLで1時間)で樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、ジエチルエーテルで再び沈殿させた。200μLのDIPEAでそれを塩基性にし、0.9等量のHATUおよび2等量のDIPEAで前活性化した2mLの0.3Mフェルラ酸に直接的に溶解した。10分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、1350μLのNMPに再溶解し、150μLのエチレンジアミンを加えた。2分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁し、ジエチルエーテルで沈殿させ、25%アセトニトリル水溶液(24mL)に溶解し、RP−HPLCで精製した。
収量19μmol、MS観察値3749、Fer−Lys(Fer)−Lys(Fer)−L150−Lys(Flu)の計算値3750.998。
D19185 D19185は、固相合成と、その後の溶液中でのフェルラ酸による標識によって、D19112に類似して調製された。MS観察値4054。
D19037 D19037は、固相合成と、その後の溶液中でのフェルラ酸による標識によって、D19112に類似して調製された。MS観察値3447。
D18126 MBHA樹脂の上で、標準固相化学によって、Boc−(Lys(2ClZ)−L3090−Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc)−L90Lys(Fmoc))を調製した。Fmoc保護リジン側鎖をNMP中の20%ピペリジンで脱保護し(2×5分間)、反復カルボキシフルオレセイン標識(NMP中の0.2Mの3mL、0.9等量HATU、1等量DIPEAで2分間前活性化した)を3×20分間受けさせた。樹脂をNMP中の20%ピペリジンで処理し、次にNMP、DCMおよびTFAで洗浄した。中間体生成物をTFA:TFMSA:チオアニソール:mクレゾール(6:2:1:1、3mLで1時間)で樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁させ、ジエチルエーテルで沈殿させ、NMPに再懸濁させ、ジエチルエーテルで再び沈殿させた。200μLのDIPEAでそれを塩基性にし、0.9等量のHATUおよび2等量のDIPEAで前活性化した2mLの0.3Mフェルラ酸に直接的に溶解した。10分後、粗生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、1350μLのNMPに再溶解し、150μLのエチレンジアミンを加えた。2分後、生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、TFAに再懸濁し、ジエチルエーテルで沈殿させ、25%アセトニトリル水溶液(24mL)に溶解し、RP−HPLCで精製した。
収量2μmol、MS観察値10666。
結合(biding)剤
ヤギ抗マウス−Dex70−HRP(D18033/D18175)
13.7nmolのジビニルスルホン活性化70kDA MWデキストランを、30℃で3時間、600μL緩衝液(100mM NaCl、25mM NaHCO、pH9.5)中の602nmolのHRPと反応させた。次に、105μLの水の中の41.1nmolのヤギ−抗マウスF(ab)抗体を加え、反応をさらなる16時間連続させた。反応混合液を30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2中で生成物をsuperdex200の上で精製した。溶出した(eluded)生成物は、ヤギ抗マウス(GaM)およびHRPを含むデキストランコンジュゲートであった(8HRPおよび1,3抗体prコンジュゲート;比dex/GaM/HRP=1/1.1/7.5)。
抗FITC−Dex70−HRP(D18058/D18144)
10nmolのジビニルスルホン活性化70kDA MWデキストランおよび440nmolのHRPを、30℃で3時間、400μL緩衝液(100mMNaCl、25mMNaHCO、pH9.5)中で反応させた。次に、80μLの水の中の30nmolの抗マウスF(ab)抗体を加え、反応を40℃でさらなる90時間連続させた。反応混合液を30分間の50μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2中で生成物をsuperdex200の上で精製した。溶出した生成物は、抗FITCおよびHRPを有するデキストランのコンジュゲートであった(1コンジュゲートにつき9HRPおよび1.5.抗体;Dex/抗FITC/HRP比=1/2/9)。
ウサギ抗FITC F(ab’)−HRPコンジュゲート(D19142/D19154)
ポリクローナルのウサギ抗FITC IgG抗体をペプシンによって37℃で4時間消化し、superdex200の上で精製してペプシンおよびFc断片を除去した。
F(ab’)断片を、0.2Mリン酸ナトリウムpH6.0中の5mM EDTAでさらに透析した。25g/Lのタンパク質濃度まで、溶液をAmicon Ultraスピンカラムで濃縮した。6.0mLの前記溶液(150mgのF(ab’))に、487μLの50mg/mL DTT水溶液および423μLの56mM 2−メルカプトエタノール水溶液を加えた。反応混合液を室温で40分間静かに撹拌し、直後に0.2Mリン酸ナトリウムpH6.0中の5mM EDTAによってPD−10カラムの上で精製した。8.0mLの緩衝液で118mgのF(ab’)が回収された。
HRP(Servac)250mgを2.5mLの0.15M NaCl、0.05Mのリン酸カリウムpH8に溶解し、同じ緩衝液で透析した。透析の後、酵素溶液を40mg/mLの濃度に濃縮、調整した。3.21mL、128.6mgのHRP溶液に860μLの15mg/mL SMCCを加え、室温の暗所で30分間反応を進行させた。SMCC活性化HRP酵素は、0.15MのNaCl、0.05Mのリン酸カリウムpH8によってPD−10カラムの上で精製された。7.9mLで126.9mgが回収された。
8.0mLのF(ab’)に、SMCC活性化HRP溶液の6.25mLを加え、0.15M NaCl、0.05Mリン酸カリウムpH8で全容量を43.8mLに調整した。抗体断片と酵素との間の反応は、室温の暗所で210分間実施した。次に、室温で15分間の343μLの25mg/mLシステアミン水溶液の添加によって反応を抑え、反応混合液は精製までの間、一晩冷温保存した。試料を8mLまで濃縮し、4つの部分に分けてsuperdex200カラムに加え、150mM NaCl、50mMトリスpH7.6で溶出した。生成物は第一のピークに溶出し、未反応の抗体および酵素のピークが続いた。100mgのコンジュゲートがいくつかの分画で単離された。280nm/403nmでのUV測定は、0.8から1.2の間の抗体酵素分配比を示した。
ヤギ抗マウスF(ab’)−HRP(D19150/D19147)
DTTおよびメルカプトエタノールによるF(ab’)の還元およびSMCC活性化HRPへの結合によって、ヤギ抗マウスF(ab’)−HRPをウサギ抗FITC F(ab’)−HRPのように調製した。ウサギ抗FITC F(ab’)−HRPと同様に、12等量のSMCCをHRP活性化のために用い、F(ab’)とHRPとの間の1:1のモル分配比を用いた。
ヤギ抗ウサギF(ab’)−HRP(AMM 279.168)
DTTおよびメルカプトエタノールによるF(ab’)の還元およびSMCC活性化HRPへの結合によって、ヤギ抗ウサギF(ab’)−HRPをウサギ抗FITC F(ab’)−HRPのように調製した。ウサギ抗FITC F(ab’)−HRPと同様に、12等量のSMCCをHRP活性化のために用い、F(ab’)とHRPとの間の1:1のモル分配比を用いた。
結合剤ヤギ抗マウスF(ab’)−HRPコンジュゲート(D19150)
これは、D19142と同じ手法によって調製された(FITCの代わりにGaMで)。
結合剤ウサギ抗DNP F(ab’)−HRPコンジュゲート(D19053)
この結合剤は、ポリクローナルウサギ抗DNP抗体を用いてD19142と同じ手法によって調製された。
結合剤ウサギ抗FITC F(ab’)−アルカリ性ホスファターゼコンジュゲート(D20036)
D19142について記載されている通りに、ウサギ抗FITCをペプシンで消化し、F(ab)1に還元した。4.23mL緩衝液中の44.9mgの断片化抗体を、コンジュゲーションのために用いた。2.8mL緩衝液(25mMホウ酸塩、200mM NaCl、5mM MgCl2、0.2mM ZnCl2、pH8.2)中のアルカリ性ホスファターゼ(Boehringer、MW140.000)56mgを、107μLのDMSOに溶解させた1.6mgのSMCC(酵素に対して12等量)と室温の暗所で25分間反応させた。0.1Mトリス、0.2M NaCl、5mM MgCl2、0.2mM ZnCl2、pH8.2の緩衝液を用いて、この活性化酵素系溶液をゲル濾過した。55.3mgの酵素が7mLの容量で単離された。断片化抗体および活性化酵素を直ちに混合し、さらなる2.47mLの0.1Mトリス、0.2M NaCl、5mM MgCl2、0.2mM ZnCl2、pH8.2を加えた。混合液を室温で150分間反応させ、次に11.2mgのシステアミンの15分間の添加によって抑えた。0.1Mトリス、5mM MgCl2、0.2mM ZnCl2、pH7.2を用いてSuperdex200カラムの上で生成物は精製され、単一の幅広いピークとして溶出した。リポーターD19185をデポジットさせるためにD19150を用い、続いて異なる分画、および最後にパーマネントレッド液を色素原として用い、IHCアッセイで個々の分画をAP活性およびFITC結合について試験した。分画を含む全ての主要な生成物は同等の性能を発揮するので、プールした。
HRPとコンジュゲートしたDex70とコンジュゲートした結合剤ヤギ抗マウス抗体(D20052)
11nmolの70kDA MWデキストランを、30℃で3時間、316μLの緩衝液A(100mM NaCl、25mM NaHCO、pH9.5)中の484nmolのHRPと反応させた。その後、169μLの水の中の66nmolのヤギ抗マウスF(ab)をデキストラン−HRPコンジュゲートに加え、1時間反応させた。反応混合液を30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、緩衝液B(100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2)中で生成物をSephacryl300(GE Medical)の上で精製した。溶出した生成物は、ヤギ抗マウス(GaM)およびHRPを含むデキストランコンジュゲートであった。高分子量最適化精製と組み合わせた比較的短いコンジュゲーション時間の使用は、コンジュゲートサイズに基づき15の分画に最終コンジュゲート生成物を分離することを可能にした。個々の生成物分画、ならびにコンジュゲートしていない抗体およびHRPを含有する分画の測定は、81%のコンジュゲート回収を示し、8.91nmolのデキストランに対応した。総合すると、コンジュゲート分画(溶出液の分画7から22まで)は、平均で8.1個のHRP/デキストランおよび0.88個の抗体/デキストランに対応する72.3nmolのHRPおよび7.9nmolの抗体を含有していた。分画7〜8は最初のピークを生成し、続いて次第に消えていった(分画18〜22)幅広いピーク(分画9〜17)が続いた。
HRPとコンジュゲートしたDex70とコンジュゲートしたヤギ抗マウス抗体(D20168)
このコンジュゲートは、D20052と正確に同じ方法で生成された。均一な数のHRPを有する生成物を得るために、分画9および10だけを収集して一緒にプールした。
HRPとコンジュゲートしたDex150とコンジュゲートしたヤギ抗マウス抗体(D20060)
この結合剤はD20052のように調製されたが、より大きな分子量(150kDa)のデキストランが用いられた。精製の間、大多数のコンジュゲートが最初の4分画で単一のピークで溶出した。計算は、平均でデキストラン1分子につき16.5個のHRPおよび1.8個の抗体を示した。
HRPとコンジュゲートしたDex150とコンジュゲートしたヤギ抗マウス抗体(L348.121)
5.13nmolの150kDA MWデキストランを、40℃で3時間、300μLの緩衝液(100mM NaCl、25mM NaHCO、pH9.5)中の484nmolのHRPと反応させた。その後、169μLの水の中の66nmolのヤギ抗マウスF(ab)2をデキストラン−HRPコンジュゲートに加え、40℃でさらなる1時間反応させた。反応混合液を30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、緩衝液B(100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2)中で生成物をSephacryl300(GE Medical)の上で精製した。溶出した生成物は、ヤギ抗マウスF(ab)2およびHRPを含むデキストランコンジュゲートであった。生成物はコンジュゲートサイズに基づき3つの分画に分けられた:最大のコンジュゲートを含有する第一の分画(8〜11)、より小さなコンジュゲートを含む次第に消える分画、およびコンジュゲートしていないタンパク質。個々の生成物分画、ならびにコンジュゲートしていない抗体およびHRPを含有する分画の測定は、87%の総コンジュゲート回収を示した。組み込まれたHRPとデキストランとの間の直接比例関係の仮定は、分画8〜11が1デキストランにつき20.6個のHRPおよび2.32個の抗体を含有し、分画10〜11が1デキストランにつき10.9個のHRPおよび0.96個の抗体を含有することを示した。分画8〜11だけを実験のために用いた。より大きなデキストランコンジュゲートの使用がどのようにより多くのHRPの組込みを可能にするかを、このコンジュゲートは例証する。
HRPとコンジュゲートしたDex70とコンジュゲートしたヤギ抗ウサギ抗体(L348.111、分画10〜11)
11nmolの70kDA MWデキストランを、40℃で3時間、316μLの緩衝液A(100mM NaCl、25mM NaHCO、pH9.5)中の484nmolのHRPと反応させた。その後、196μLの水の中の44nmolのヤギ抗ウサギをデキストラン−HRPコンジュゲートに加え、40℃でさらなる1時間反応させた。反応混合液を30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、緩衝液B(100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2)中で生成物をSephacryl300(GE Medical)の上で精製した。溶出した生成物は、ヤギ抗ウサギ(GaR)およびHRPを含むデキストランコンジュゲートであった。生成物は、コンジュゲートサイズに基づき4分画に分けた:おそらくいくつかの架橋コンジュゲートを含有する、生成物を含有する最初の2つの分画(分画8〜9)が第一のピークとして溶出し、次に分画10〜11(均一で大きなコンジュゲート)および分画12〜21(より小さな変動コンジュゲート)に分けられた幅広い肩部分、ならびに最後に分画22〜42のコンジュゲートしていない酵素および抗体が続いた。個々の生成物分画、ならびにコンジュゲートしていない抗体およびHRPを含有する分画の測定は、87%の総コンジュゲート回収を示した。組み込まれたHRPとデキストランとの間の直接比例関係の仮定は、分画10〜11が1デキストランにつき10.9個のHRPおよび0.96個の抗体を含有することを示した。これらの2分画だけを実験のために用いた。
HRPとコンジュゲートしたDex70とコンジュゲートした抗HER2抗体(D21100、分画9〜10)
4.6nmolの70kDA MWデキストランを、30℃で3時間、125μLの緩衝液A(100mM NaCl、25mM NaHCO、pH9.5)中の202nmolのHRPと反応させた。その後、489μLの水の中の18nmolの抗Her2をデキストラン−HRPコンジュゲートに加え、30℃でさらなる21時間反応させた。反応混合液を30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、緩衝液B(100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2)中で生成物をSephacryl300(GE Medical)の上で精製した。溶出した生成物は、抗Her2およびHRPを含むデキストランコンジュゲートであった。コンジュゲートサイズに基づき4分画に生成物を分けた:おそらくいくつかの架橋コンジュゲートを含有する、生成物を含有する最初の2つの分画(分画7〜8)が第一のピークとして溶出し、次に分画9〜10(均一で大きなコンジュゲート)および分画11〜19(より小さな変動コンジュゲート)に分けられた幅広い肩部分、ならびに最後に分画20〜41のコンジュゲートしていない酵素および抗体が続いた。個々の生成物分画、ならびにコンジュゲートしていない抗体およびHRPを含有する分画の測定は、68%の総コンジュゲート回収を示した。組み込まれたHRPとデキストランとの間の直接比例関係の仮定は、分画9〜10が1デキストランにつき9.1個のHRPおよび0.6個の抗体を含有することを示した。これらの2分画だけを実験のために用いた。
HRPとコンジュゲートしているDex70とコンジュゲートしている抗FITC抗体(AMM353−022分画8〜11)
11nmolの70kDA MWデキストランを、40℃で3時間、316μLの緩衝液A(100mM NaCl、25mM NaHCO、pH9.5)中の484nmolのHRPと反応させた。その後、196μLの水の中の66nmolの抗FITCをデキストラン−HRPコンジュゲートに加え、40℃でさらなる1時間反応させた。反応混合液を30分間の70μLの0.165Mシステインの添加によって抑え、緩衝液B(100mM NaCl、10mM HEPES pH7.2)中で生成物をSephacryl300(GE Medical)の上で精製した。溶出した生成物は、抗FITCおよびHRPを含むデキストランコンジュゲートであった。コンジュゲートサイズに基づき、3分画に生成物を分けた:生成物を含有する最初の分画(8〜11)は第一のピークとして溶出し、次に幅広い肩部分(より小さい変動コンジュゲート、分画12〜27)、ならびに最後に分画28〜45のコンジュゲートしていない酵素および抗体が続いた。個々の生成物分画、ならびにコンジュゲートしていない抗体およびHRPを含有する分画の測定は、90%の総コンジュゲート回収を示した。組み込まれたHRPとデキストランとの間の直接比例関係の仮定は、分画10〜11が1デキストランにつき11.7個のHRPおよび0.80個の抗体を含有することを示した。これらの2分画だけを実験のために用いた。
他の試薬
抗サイトケラチンモノクローナル抗体(Dako M3515)
インキュベーション培地(a)(ABCPT緩衝液):0.1%の4−アミノアンチプリン、0.2%Procline、2%BSA、0.2%カゼイン、2%PEG、0.1%Tween20、0.1M NaCl、10mM HEPES、pH7.2。
インキュベーション培地(b):50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、0.005%(1.5mM)過酸化水素、
DAB色素原溶液(Dako K3465)
LPR色素原溶液(Dako K0640)
ヘマトキシリン対比染色(Dako S3301)
洗浄緩衝液(Dako S3306)
標的賦活化溶液(Dako S1699)
インキュベーション培地中のリポーター、DABおよびHの量またはインキュベーション時間の関数としてのドットサイズ
一般手法:
ホルマリン固定パラフィン包埋組織で、染色実験を実行した。前処置として、キシレンの2浴(各々5分間)、96%エタノールの2浴、70%エタノールの2浴(各々2分間)でスライドを脱パラフィンした。スライドは、次に電子レンジ内の標的賦活化溶液(Dako S 1699)中で10分間沸騰させた。スライドを冷却させ、内因性ペルオキシダーゼ活性を10%過酸化水素で2分間抑えた。
実験1
全てのスライドを、HER2タンパク質のC末端に対する実験用モノクローナルマウス抗体とインキュベートした「クローン6C2」。以下のプロトコルを用いた:クローン6C2、55picoMと3分間のインキュベーション、洗浄緩衝液(Dako S3306)による洗浄、次にGaM/HRP(D20052、分画8)と370picoMの濃度で3分間のインキュベーション、次に洗浄。次に、表1に詳述されるように、スライドをデポジションステップ、リポーター結合剤ステップ(全てのリポーター、D19112、D20068、D20086、D20118、D20120を濃度10μMで用いた)、およびLPR色素原による染色ステップにかけた。各ステップの間で洗浄ステップを用いた。
Figure 0005836958
Figure 0005836958
Figure 0005836958
実験2
全てのスライドを実施例1の場合のように処理し、次に、表2に詳述されるようにデポジション、リポーター結合剤および色素原染色にかけた。
Figure 0005836958
Figure 0005836958
実験3
全てのスライドを実施例1の場合のように処理し、次に、表3に詳述されるようにデポジション、リポーター結合剤および色素原染色にかけた。
Figure 0005836958
Figure 0005836958
実験1〜3の結果
実験1(表1、スライド1〜5)および3(表3、スライド1〜5)は、他は同じ条件(同じ濃度の同じ結合剤、同じリポーター、DAB、リポーターおよびHの同じ濃度、同じインキュベーション時間)で、ドットサイズは、手順の最終、検出段階での色素原のデポジション時間、即ちリポーターデポジットを染色するパーマネントレッド液(LPR)色素原のデポジション時間に依存することを実証する。最大のドットはLPRの10分間の沈殿で生成され、ドットのサイズは沈殿時間の短縮に伴って縮小した。しかし、1分間の沈殿(スライド5)でさえ、小さいが明らかなドットを観察するのに十分であった。
実験1(表1:スライド1およびスライド6〜9)および実験3(表3:スライド1およびスライド6〜11)は、リポーター、DABおよびHを含有する培地での、標的、即ちHer2受容体の複合体を含有する試料の、HRP標識結合剤、即ちD20052、分画8とのインキュベーションの持続時間によって、したがって培地からリポーターをデポジットさせるために用いられた時間によってドットサイズが変動することを証明する(他の条件が一定の場合、即ち検出ステップ上の同じリポーター、同じ結合剤、同じ検出剤、DAB、Hリポーター、結合剤および検出染色剤の同じ濃度、染色剤のデポジションの同じ持続時間)。最大のドットは、10分間の沈殿で生成された。時間を15分間または20分間にさらに増加させることはより大きなドットに結びつかなかったが、バックグラウンド染色の有意な増加につながった。ドットサイズは、沈殿時間を10分間から1分間に短縮するに従って縮小した。
実験1(表1:スライド1および16〜19)および3(表3;スライド1および18〜22)は、DABおよびリポーターを含有するデポジション培地中のHの濃度を変更することによって、ドットサイズを変更することができることを証明する。過酸化水素の濃度が1.5mMであるとき、最大のドットが生成される。過酸化水素が存在しない場合、ドットは生成されない(表3:スライド18)。過酸化水素のより低い濃度およびより高い濃度は、ドットのサイズを縮小する。58.8mMで、ドットはほとんど区別できなくなる。
実験1(表1:スライド1および10〜15)および実験3(表3:スライド1および12〜17)で示すように、ドットサイズはDABおよびリポーターを含有するデポジション培地中のDAB濃度に対応して変動する。DABが0.14mMから0.28mMの濃度域で存在するとき、最大のドットが生成される。DABが存在しない場合、ドットは生成されない。DAB濃度を0.07mMに低下させることは、0.14mMでよりも小さく、より散在性であるドットにつながり、より高い濃度のDABも同様であり、2.09mMのDABでは、非常に小さなドットが生成される。
リポーター分子中のフェルラ酸残基の数(3対4の残基数)は、ドットサイズに対して軽微な影響を及ぼす。異なるリポーターで、ドットサイズはわずかに変動しただけである。実験1(表1:スライド20〜24)に示すように、4つのフェルラ酸部分をもつD20068リポーターは、3つの部分を有するリポーターより若干大きなドットを生成したが、同時に、バックグラウンド染色のレベルも増加した。最良の信号対雑音は、3つのフェルラ酸部分を含むD19112で得られた。
ドットサイズはリポーターの濃度と一緒に変動する。実験2(表2:スライド1〜6)は、5μMから20μMの範囲で、リポーターD19112が(他は同じ条件で)サイズがわずかに異なるだけであるデポジットを形成することを証明する。10および20μMは5μMより若干大きなドットを生成するが、バックグラウンド染色も同様に増加する。5μMより下では、ドットサイズは有意に低下する。しかし、1μMでさえ、小さなドットはなお十分に可視的である。
デポジットしたリポーター、即ちD20036に結合することが可能な結合剤の濃度は、わずかにドットサイズに影響するだけであった(実験2の表2:スライド7〜12に示す)。抗Flu−APコンジュゲート抗体(D20036)の濃度が50nMであったとき、最大のドットが得られた(他は同じ条件で)。100nMおよび50nM未満の濃度は、それほど大きなサイズのドットを生成しなかった。非常に低い濃度(6または3nM)では、非常に小さいがなお識別可能なドットが生成された。
リポーター濃度、リポーター結合剤の濃度、および検出染色(即ち検出ステップ上のLPR染色)の沈殿時間によってサイズが調節、特に縮小されたドットは、特徴的な強度勾配を示し、中心が最も強く染色され、周辺が散在性であり、これらのドットに全体的に散在性の表情を与えた。
沈殿ステップで高いDAB濃度、高い過酸化水素濃度または時間短縮によってサイズが調節、特に縮小されたドットは縮れた表情を有し、均一な強度および鋭い輪郭を有する。
オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第二の基質の構造の関数としてのドットサイズ:異なるコンジュゲート分子を試験する
全てのスライドを、実施例1の場合のように前処理した。次に、以下のプロトコルに従わせた:抗サイトケラチンDako M3515 2nMと3分間のインキュベーション、洗浄緩衝液(Dako S3306)による洗浄、次にGaM/HRP(D20168、分画9+10)と100picoMの濃度で3分間のインキュベーション。次に、スライドを異なるリポーターと、しかし他は同一の条件で(50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、DAB 0.14mM、H 1.5mM)10分間デポジションステップにかけた。これに、リポーター結合剤ステップD20036、20nMで10分間、およびLPR色素原による10分間の染色ステップが続いた。各ステップの間で洗浄ステップを用いた。以下のリポーターをこれらの条件の下で試験した。
D19112、D18044、D181126、D18146、D20171、D21016、0328−014(全て5μM)。デキストランリポーターコンジュゲートD21008は、50nMおよび250nMで試験された。実験1で試験されたリポーターと合わせて、これは以下の結論に導く。リポーターの性質は、リポーターデポジションがどれだけ効率的に起こるかに重大な影響を及ぼす。意外にも、D20171(1つのフルオレセイン、4つのフェルラ酸)およびD19112(1つのフルオレセイン、3つのフェルラ酸)などの比較的小さなリポーターは、D18126(3つのフルオレセイン、6つのフェルラ酸)または大きなデキストランコンジュゲートD21008(83個のフルオレセインおよび111個のフェルラ酸)などのより大きな分子よりも効率的であることが判明した。デキストランコンジュゲートの場合には、これは試料への浸透が劣っていることに帰することができる。この大きなコンジュゲートを用いた場合に組織型および固定がドットサイズに影響を及ぼしたという事実が、この考えを裏付ける。
比較的小さい(抗体−酵素コンジュゲートに対して)分子であるD18126の場合には、浸透不良は劣っている性能を十分に説明しないようである。より良好にデポジション機構を説明するために、いくつかの対照実験が実行された。デポジション培地にDABが存在しない場合、ドットは形成されなかった。しかし、DABだけでデポジション反応を実行し、次にDABを添加せずにD20171によるデポジション反応が続いた場合には、非常に小さなドットが生じた。機構の一部が、試料の、その後リポーターの支えの役目を果たすDAB重合体による、HRPによって促進されるコーティングであることをこの知見は強く示唆する。
デポジションステップに続いて沸騰CHES緩衝液での10分間の洗浄ステップで、別の実験が実施された。これはバックグラウンドを低減するために実施されたが、この非常にストリンジェントな洗浄はドットサイズの有意な低下にもつながった。ほとんどのデポジットしたリポーターは試料に共有結合で架橋せずに不溶性デポジットとして沈殿し、他のリポーターを真に固定化されているとみなすことができることを、これは証明する。この知見は、2つのさらなる機構を示す。DABとリポーターとの間の溶液相反応は、リポーターと試料との間の真の共有結合性架橋と一緒に沈殿する低下した溶解性の付加物をもたらす。それらを不溶性にするためにDABとのいくつかの反応を必要とするので、大きなリポーターは沈殿する可能性がより低く、より小さなリポーターはDABとの単一または少数の反応によって不溶性にされるようである。
短縮されたリンカー長を有するリポーター、D20086(L30)およびD20118(L60)は、D19112(L150)とほとんど同じくらいの大きさのドットを与えたが、これらの短くなったリポーターは若干より多くのバックグラウンドも生成した。このわずかに低下した信号(ドットサイズ)対雑音は、フルオレセインハプテンのより強い粘着性および減少した接近性をもたらす低下した溶解性のためのようである。このように、長く伸びたリンカーはリポーター性能を強化する。
極めて重要な因子は、リポーター中の反応性基の性質である。DABの不在下でリポーターをデポジットさせることができるという事実は、DABコーティングステップの後ならば、HRPが触媒するリポーターの急激な形成が役割を果たすことを実証する。同様に、フェルラ酸を有するリポーターD18126が4−アミノケイ皮酸を有する類似したリポーターD18146よりも大きいドットを生じるという事実、およびチロシン残基を有する同様に類似したD18044がドットを全く生成しない事実は、リポーター中の反応性基の重要性を示す。D19112に構造上類似するが、フェルラ酸の代わりにそれぞれコーヒー酸およびシナピン酸を有するリポーターD21020および0328−014は、いくぶん小さなドット(D21020)またはD19112よりわずかに大きい(0328−014)ドットを与える。フェルラ酸、コーヒー酸およびシナピン酸は全て非常に良いHRP基質であり、HRPによるリポーターの急激な活性化はリンカーデポジションへの可能性のある主要な寄与因子である。
結論として、多くの因子は、効率的なリポーターの作製に寄与する。相対的に小さいサイズは、水溶性リンカーの伸長をなお伸ばした。DABとの反応の結果有意に低下した、平衡した全体的な水溶性。良いHRP基質である2個以上のフェノールまたは芳香族アミンの存在は、優れたリポーターを作製する。3〜4個のフェルラ酸誘導体が好ましく、3個のシナピン酸誘導体が最も好ましい。即ち、試験した全ての中で、リポーター0328−014の性能が最も良かった。
下の表は、異なる構造(異なるY頭部、Y頭部とZ尾部との間の異なる分子距離、同じZ尾部(1つのFlu))を有する例示的なコンジュゲート分子を用いたいくつかのSMD染色の結果を要約する。
Figure 0005836958
相対的ドットサイズは、最適条件下でのミクロンで表す最大ドット直径にほぼ対応する:高pHでの組織の標的回収、室温で10分間の沈殿反応中の10μMリポーター、1.6mM過酸化水素及び0.28mMのDAB、20nMの抗FITC−APによる10分間のリポーター認識、続いて10分間のLPR。相対スコアは、異なる組織試料及び対照細胞系の上での異なる条件(標的回収及びリポーター濃度)の下でのいくつかの実験から判断され、定性的である。
HRP標識結合剤の量および結合剤当たりのHRPの部分の数の関数としてのドットサイズ
電子レンジで10分間の沸騰によって10個のスライドを脱パラフィンし、Dako標的賦活化培地(Dako S2763)で標的を賦活化した。100nM抗サイトケラチンマウス抗体(Dako M3515)を抗マウス二次抗体−HRPコンジュゲートの異なるモル等量数と予備混合し、30分後、混合液を表4に記載の最終濃度まで希釈した。
Figure 0005836958
全てのスライドを、同じプロトコルによる免疫染色にかけた。
1.一次抗体/二次抗体−HRP混合物;3分間インキュベーション
2.50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、0.005%過酸化水素、140μM DAB、5μM D19112;8分間インキュベーション
3.抗FITC−HRP、D20154、100nM;5分間インキュベーション
4.DAB色素原溶液;Dako K3468;2分間インキュベーション
5.ヘマトキシリン対比染色;1分間インキュベーション
ステップ1および3では、0.1%の4−アミノアンチプリン、0.2%Procline、2%BSA、0.2%カゼイン、2%PEG、0.1%Tween20、0.1M NaCl、10mM HEPES、pH7.2。希釈剤として(ABCPT緩衝液)を用いた。
全てのスライドは、褐色から黒色のドットのように見えるサイトケラチン特異的点状染色を示した。ドット数およびそれらのサイズは、スライド1〜3を通して増加した。スライド3〜5の上では、ドット数は事実上不変であったが、ドットのサイズはスライド3から5にかけて増加した。スライド6は、より少ないが一般により大きなサイズのドットを有した。最大のドットはスライド7〜10で観察されたが、サイズは、プレミックス中の同等二次的HRPコンジュゲートの数と一緒にわずかだけ増加した。二次的HRPコンジュゲートの数の増加に伴ってドット数は減少し、過剰な二次的コンジュゲートとの予備混合はより大きなアセンブリーおよびより遅い標的結合につながることを裏付けた。
結合剤当たりのHRPの数の関数としてのドットサイズ
D20052の分画(7,8,9,11,13,15,17,19,21)を100pMの全体のHRP濃度までABCPT緩衝液で希釈し、ドットサイズを各分画について調査した。分画のプールも分析し、試験に含まれたD19150(F(ab)1−HRP1)も同様であった。
以下のプロトコルが用いられた:
1.抗サイトケラチン(Dako 3515)1nM;1分間
2.D20052(100pM HRP)/D19150の分画;1分間
3.50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、0.005%過酸化水素、140μM DAB、10μM D19112;8分間
4.抗FITC−HRP、D19154 100nM;5分間
5.DAB色素原溶液;50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、0.2%過酸化水素、5.6mM DAB;1分間
6.ヘマトキシリン対比染色;1分間
結果:分画7および8は、以下の分画より有意に少ないドットを生成した。これらは最大のドットでもあったが、分画9〜12は、ほとんど同じ大きさの有意により多くのドットを生成した。分画13〜22は、サイズの小さくなるドットを生成した。1分子につき単一のHRP酵素を有するD19150は、D20052の分画のいずれよりも非常に多くのドットを生成し、ドットは非常により小さくもあった。各分画は比較的均一なサイズのドットを生成したが、全ての分画のプールは非常に不定のサイズのドットを生成した。
より大きなdex150コンジュゲートであるD20075の分画1〜4の試験は、上の実験5に記載されている通りに実施された。生成されたドットは、D20052の分画7および8のドットに似ている。即ち、ほとんどドットは生成されなかったが、それらはD12052の分画9〜12によって生成されたものより有意に大きくなかった。
結論
実験4〜6から、1結合剤分子当たりのHRPの数と類似した状況下で生成されたドットのサイズとの間に強力な相関があると、我々は結論する。予備混合またはコンジュゲーションを通して得られたかどうかに関係なく、結合剤の各分子中のHRPの数の増加は、より大きなドットにつながる。しかし、この影響は、約10個のHRP/分子当たりで横ばい状態になるようである。より大きなデキストランコンジュゲートは、より大きなものを生成しない。ドット数は、逆の相関を示す。より大きな分子、特に非常に大きなものは、より少数のドットを生成する。これは、各抗体分子に結合している酵素の質量から生じる立体障害、および大きな分子の一般により遅い拡散速度の結果であり得るだろう。しかし、実験4、スライド1〜3は、おそらくいくつかの単独酵素分子が急速な酵素阻害のために可視ドットの生成に失敗するので、単一の酵素部分を含む結合剤分子が、1分子につき2、3の酵素を有するものより少数の、下向きの不定のドットを生成することも示す。実験4〜6はリポーターデポジットの検出段階で非常に短い色素原沈殿時間を全て利用し、それらが見られたかもしれないものより小さく見えるようにドットを導く。リポーターデポジットの検出の間の最後の色素原沈殿時間が視覚的ドットサイズに影響を及ぼすことができることを、実験1〜3(上記)は示す。影響を最小にするために、この時間を短く保ち、酵素量の影響を強調した。
蛍光二重染色法
4つのスライドを、実施例1に記載のように前処理した。
D20168分画9〜10を、ABCPT結合剤緩衝液中で抗サイトケラチン(DakoM3515)の等モル量と5分間予備混合し、両試薬とも100nM濃度であった。この予備混合ステップの後、ABCPT結合剤緩衝液中の20pM溶液を調製した、「20pM混合液」。
スライド1を20pM混合液で1分間処理し、洗浄し(Dako洗浄緩衝液、S3006)、次にデポジション培地中の20μMのD20171および0.28mMのDABで1分間処理して洗浄した。
スライド2を20pM混合液で1分間処理し、洗浄し(Dako洗浄緩衝液、S3006)、次にデポジション培地中の5μMのD19048および0.28mMのDABで1分間処理して洗浄した。
スライド3を20pM混合液で1分間処理し、洗浄し(Dako洗浄緩衝液、S3006)、次にデポジション培地中の20μMのD20171+5μMのD19048および0.28mMのDABで1分間処理して洗浄した。
スライド4を20pM混合液で1分間処理し、洗浄し(Dako洗浄緩衝液、S3006)、次にデポジション培地中の20μMのD20171および0.28mMのDABで1分間処理して洗浄した。スライドを3Mの過酸化水素で1分間処理し、次に20pM混合液で1分間再び処理し、洗浄し(Dako洗浄緩衝液、S3006)、次にデポジション培地中の5μMのD19048および0.28mMのDABで1分間処理した。
最後に全てのスライドを水で洗浄し、エタノールで脱水し、蛍光封入剤(Dako K5331)で封入した。
結果。スライド1は、サイトケラチン陽性組織で蛍光性の丸い緑色のドットを与えた。スライド2は、サイトケラチン陽性組織で蛍光性の丸い赤色のドットを与えた。スライド3は、サイトケラチン陽性組織で、FITCフィルターを通して見たときに緑色、TRITCフィルターで見たときに赤色、二重フィルターでは黄色であった蛍光性の丸いドットを与えた。二重フィルターを通すと、緑色および赤色のドットは観察されなかった。スライド4は、サイトケラチン陽性組織で、二重フィルターを通して見たときに蛍光性の丸い緑色および赤色のドットの混合物を与えた。高いサイトケラチン発現の組織では、緑色および赤色のドットの黄色の重複部が多少あった。スライド4上で観察された赤色および緑色のドットの混合物と合わせたドットの丸みは、各ドットが単一の分子によって生成されるとの結論に我々を導く。スライド1および2だけに基づくと、用いた結合剤の極めて低い濃度にもかかわらず、観察されたドットは単独分子に由来しないと主張することができた。むしろ、ドットは、結合剤のいくつかの結合分子を各々有する、高いサイトケラチン濃度の細胞下クラスターと関連したものであり得るであろう。しかし、これがその場合であるとしても、スライド4は、スライド4の上でどれだけ多くの結合剤分子がインキュベーションステップの各々で各クラスターに結合していたかによって、様々な色のドットを、または、スライド3のように複数の分子が各クラスターに結合していた場合には、黄色のドットを示すと予想されるであろう。
この実施例は、2つの異なるリポーターの同時デポジションの価値も例示する。
2つの異なる共存標的の色素原二重染色法
スライドを、実施例1の場合のように前処理した。この実験のために、異なるHER2状態(Dakos Herceptestにより0+から3+であると評価された)を有する乳房組織の組織マイクロアレイを、試験材料として用いた。HER2タンパク質のC末端に対する実験用モノクローナルマウス抗体を用いた、「クローン6C2」。以下のプロトコルが用いられた:
1.ABCPT結合剤緩衝液中の、実施例7の場合のようにD20168分画9〜10と予備混合された10pMの抗サイトケラチン;3分間
2.0.45μMのDABを含むデポジション緩衝液中の5μMのD19059;8分
3.3M過酸化水素、3分間
4.ABCPT結合剤緩衝液(a)中の、実施例7の場合のようにD20168分画9〜10と予備混合された15pMの「クローン6C」、3分間
5.0.45μMのDABを含むデポジション緩衝液(b)中の5μMのD19112;8分間
6.ABCPT緩衝液中の25nMのD20036(抗FITC−AP)+25nMのD19053(抗FITC−AP)を10分間
7.パーマネントレッド液、Dako K0640、6分間
8.50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、5.8mM過酸化水素中の青い色素原400mg/L;6分間
結果:このプロトコルは赤色(Her2)および青色(サイトケラチン)のドットを乳房組織の上で生成し、二重染色にもかかわらず非常にかすかな青色バックグラウンドを生成したに過ぎない。光学顕微鏡写真が異なる組織で得られ、画像は標準のカラープリンターを用いて印刷された。これは、1画像につき数百のドットの手動カウントを可能にした。HerceptestによってHER2陰性(0+)と評価されていた組織は、赤色ドットの9倍多くの青色ドットを示した。強いHER2陽性(3+)と評価されていた組織は、青色ドットの3倍を超えて多くの赤色ドットを示した。即ち、青色ドットに対する赤色ドットの配分比は、0+組織よりも3+組織について約30倍高かった。1+および2+と評価された組織は、中間の配分比を示した。
低い存在度のmRNA標的(tagets)の染色
異なる組織試料を有するブロックのFFPE切片を有するスライドは、キシレン浸漬(emersion)(2×5分間)、続く96%エタノール(2×2分間)および70%エタノール(2×2分間)への浸漬によって脱パラフィンした。
スライドを脱イオン水で洗浄し、標的賦活化溶液、20mM MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン(ethanesuphonic)酸)pH6.55に移し、5分間電子レンジで沸騰させた。15分間の冷却の後、スライドを洗浄緩衝液(Dako S3006)で2回リンスし、37℃で2分間ペプシン消化にかけ、次に洗浄緩衝液で2回リンスした。
スライドを脱水した、70%エタノールで1分間、85%エタノールで1分間、96%エタノールで1分間。FITC標識抗カッパmRNAプローブ(Dako Y5202、即時使用可)をスライドに塗布し、それらにカバースリップをかけた。スライドを82℃で5分間変性させ、その後45℃で1時間のハイブリダイゼーションが続いた。ストリンジェント洗浄緩衝液(DakoキットK5201から)中で、スライドを65℃で10分間ストリンジェント洗浄した。
次に、スライドを以下のSMDプロトコルにかけた:
ペルオキシダーゼブロック、Dako S2023により2分間
3分間の洗浄
抗FITC−HRP、AMM353.022、インキュベーション培地1で20分間。
5つの異なる濃度を用いた(10、20、40、80、160picoM)
3分間の洗浄
インキュベーション培地2中のリポーターD21047、5μM、DAB 0.14mM、過酸化水素1.5mMで10分間
3分間の洗浄
インキュベーション培地1中の抗FITC−アルカリ性ホスファターゼ(D20036)20nMで10分間。
3分間の洗浄
パーマネントレッド液、Dako K0640、10分間
2分間の洗浄
ヘマトキシリン(水で6倍に希釈したDako S3309)で対比染色、2分間
脱イオン水による洗浄
Dako Fairmount、S3025による封入。
結果:全てのスライドは、約3ミクロンの直径の明らかに異なる赤色ドットを示した。ドットは全ての種類の組織に存在し、ドット数は抗FITC−HRPの濃度の増加に伴って増加した。高い濃度(80および160picoM)では、カッパ陽性細胞は、各々何十もの合体ドットで染色されたので、扁桃および結腸組織で明らかに特定することができた。複数の合体ドットは、他の組織でも、または扁桃もしくは結腸のカッパ陰性細胞でも観察されなかった。利点を有するこの技術を、mRNAなどの低い存在度の標的の場合にどのように定性的方法で用いることもできるかについて、これは例示する。
第一の基質としてのフェルラ酸
対照細胞系のブロックのFFPE切片を有するスライドは、キシレン浸漬(2×5分間)、続く96%エタノール(2×2分間)および70%エタノール(2×2分間)への浸漬によって脱パラフィンした。
スライドを脱イオン水で洗浄し、標的賦活化溶液、Dako pH9、S2367へ移し、10分間電子レンジで沸騰させた。
スライドを次に以下のSMDプロトコルにかけた:
ペルオキシダーゼブロック、Dako S2023により5分間
2分間の洗浄
インキュベーション培地1で1:50に希釈した抗サイトケラチンDako M3515で5分間。
2分間の洗浄
インキュベーション培地1中の1picoMヤギ抗マウス、L348.121で5分間
3分間の洗浄
様々な濃度のフェルラ酸(52mM、16mM、5.2mM、1.6mM、0.52mM)または0.14mMのDABを含むインキュベーション培地2中のリポーターD21047、20μM、過酸化水素1.5mMで10分間
9分間の洗浄
インキュベーション培地1中の抗FITC−アルカリ性ホスファターゼ(D20036)20nMで10分間
9分間の洗浄
パーマネントレッド液、Dako K0640、10分間
2分間の洗浄
脱イオン水による洗浄
Dako Fairmount、S3025による封入。
結果。
非常に効率的なリポーターデポジションを保証するために、多くの(20個)HRP酵素/分子を有する結合剤、高pHの標的賦活化条件(良い組織接近性を保証するために)を用いてプロトコルを最適化し、効率的なリポーター、D21047を比較的高い量で用いた。これらの条件下で、0.14mMのDABを有する対照スライドは、直径が最高4ミクロンのドットを生成した。フェルラ酸(架橋剤として)の場合には、濃度1.6mMが最適であった。2ミクロンまでのドットが生成された。フェルラ酸のより低い濃度およびより高い濃度はより小さなドットを生じ、最も高い濃度、52mMでは、ドットが観察されなかった。フェルラ酸またはDABなしでインキュベートされたスライドでは、ドットは観察されなかった。
理論に縛られないが、DABと同様に、フェルラ酸は、DABより効率的ではなく、異なる最適濃度を有するとはいえ、第二の基質の分子を架橋する能力を有することが示唆された。
架橋剤の存在下での4ミクロンまでのドットの生成、およびそれのないとき(他は同じインキュベーション条件下で)のドットの非生成は、直接的な酵素リポーター活性化がデポジション反応で軽微な役割だけを演ずることを示唆する。DABおよびフェルラ酸の両方は、HRPおよび過酸化物の存在下でホモ重合を経ることができる。大きなドット(4ミクロン)の存在は、HRP活性を有する部位から最高数ミクロン離れてリポーターをデポジットさせることができることを示し、デポジションの可能な機構は、一部の架橋剤分子がHRPと反応して対応するラジカルを生成すること、これらが架橋剤分子との、およびリポーター分子とのラジカル連鎖反応を誘発して、広範囲な非局在化によって十分に安定化されるオリゴマーラジカルを生成することであることを示唆する。これは、ラジカルが酵素から拡散し、最高10分間(デポジションが起こる前に)デポジション培地中にとどまることを可能にする。DABおよびフェルラ酸の両方で観察された最適濃度は、そのような機構を支持する。高い架橋剤濃度では、架橋剤/リポーターオリゴマーは、酵素活性部位の近くで速やかに不溶性化してデポジットすることができる。低過ぎる架橋剤濃度では、オリゴマー化は大きな不溶性オリゴマーを生成するには不十分である。
試料中のHer2の定量化
試験材料
試験材料として、Her2を発現するホルマリン固定パラフィン包埋細胞系sk45(+0系)、df45(+1系)、df23(+3系)のペレットの連続切片を用いた。あらゆる細胞系が存在する切片を提供するために、パラフィンの単一のブロックに細胞系のペレットを包埋した。
試験材料の前処理:
3つの細胞系を含有するブロックのFFPE切片を有するスライド(「スライド」とも呼ばれる)は、キシレン浸漬(2×5分間)、続く96%エタノール(2×2分間)および70%エタノール(2×2分間)への浸漬によって脱パラフィンされた。次に、スライドを脱イオン水で洗浄し、標的賦活化溶液、10倍希釈された(抗サイトケラチンにより、実施例1および2)高pH溶液(Dako S2375)、または低pH溶液(Dako S1700)(下の実施例10.3〜10.8を参照)へ移した。スライドを次に電子レンジで沸騰するまで加熱して(約5分間)、10分間静かに沸騰させた。その後、スライドを最低20分間冷却させ、10倍希釈の洗浄緩衝液(Dako S3006)へ次に移した。
一次抗体:
抗Her2抗体は、モノクローナルのウサギ抗体(Dakoクローン25−11−3)であった。濃縮された溶液中の計算された総タンパク濃度および(150kDa/モル)の抗体の分子量に基づいて希釈溶液を作製した。
コンジュゲート:結合剤およびリポーター
L348.111、分画10〜11
D21100、分画9〜10
AMM 353−022、分画8〜11
D21047
(詳細については、上の説明を参照のこと)
インキュベーション培地
溶液(a):0.1%の4−アミノアンチプリン、0.2%Procline、2%BSA、0.2%カゼイン、2%PEG、0.1%Tween20、0.1M NaCl、10mM HEPES、pH7.2(ABCPT緩衝液)
溶液(b):50mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1%ノニデットP40、0.1%塩化ベンザルコニウム、0.005%(1.5mM)過酸化水素
機器
Dako Autostainer Classic。この機器は、試薬およびインキュベーション時間を自由に使用し設定することができる、完全にオープンで、自由にプログラム可能な自動化IHC機器である。この機器は、4つの基本的作用を実行する
1.試薬吸引。
2.水平に置いたスライドから洗浄緩衝液を吹き飛ばす。
3.スライドの上へ試薬を一定量置く。(一吸いおよび一吐きとして知られる。)
4.洗浄緩衝液で洗い流すことによって、スライドを洗浄する。
単一のスライドのための一般的なプログラムは、下のプロトコル1に記載される。全てのSMD実験のために、最初のペルオキシダーゼブロックおよびドット形成ステップは、一定にしておいた。
プロトコル
ペルオキシダーゼブロック、Dako S2023で5分間
洗浄
(a)標的部位の形成:
一次抗体、溶液(a)に100pM
洗浄
HRP標識二次抗体、実施例に記載
洗浄
(b)標的部位でのリポーターデポジットの形成
溶液(b)中の0.28mMのDABおよび5μMリポーター(D21047)による10分間の試料(a)のインキュベーション
洗浄
(c)単独標的部位でのリポーターデポジットの検出
抗FITC−AP、10分間、インキュベーション培地1に20nMのD20036
洗浄
LPR、10分間、Dako K0640
洗浄
(d)ヘマトキシリン対比染色
ヘマトキシリン、5分間
脱イオン水による洗浄
(f)封入
自動化プロトコルにさらなる洗浄を導入することができる。洗浄ステップ時間を最低限に減らすことによって、自動化スケジューラは全体のプロトコル時間を最低限に保つ。しかし、洗浄ステップ時間は、機器のローディングに依存する。単一のスライドが染色されるようにプログラムされる場合、単一の洗浄ステップは20秒間に短縮することができるだろうが、48個のスライドの全装填は洗浄時間を相当増加させる。この時間変動を最小限にしておくために、実行のたびに平均で10個のスライドを染色した。したがって、洗浄ステップ時間は、1ステップにつき約2分間保たれた。リポーターデポジションおよび抗FITC−APとのデポジットのインキュベーションに続く複数の洗浄は、最小限のLPRバックグラウンド染色を保証する。大量の増幅(標的に結合している単一の抗体−デキストラン−HRP分子に由来する各赤色ドットは、平均で100,000,000,000個のLPR分子を含むと推定される)にもかかわらず、実質的にいかなるバックグラウンドも検出することができない。
ドットのカウントは、SMD染色スライドおよびそれらの画像の目視検査によってまず手動で実施された。自動化された画像分析は、フリーウェアJMicrovision vs.1.27を用いて実施された。例示的な実施形態では、記載されるように生成されたLPR赤色ドット、およびヘマトキシリン染色核は、自動的にカウントされた。自動化されたカウントは、目視検査および手動カウントによって検証された。分割および関心領域抽出は、色、飽和、強度、(HSI)色空間で色だけに基づくことができ、即ち強度および飽和は0〜255のフルレンジに設定された。ドット色は、188(バイオレット)〜255および0〜16(オレンジ)に、核色は76(緑色)から163(青色)に設定された。ドット−核コントラストは、DP50 5.5MpixelカメラおよびCellD画像捕捉ソフトウェアを備えたオリンパスBX51顕微鏡で実施された画像捕捉の間の、赤色(1.2)、中間緑色(1.0)の過剰曝露によって、および青色(0.56)の曝露の下で増強された。図3は、細胞の処理された画像、およびドットカウントの結果を示す。
以下に、本願(特願2012−534540号)の出願当初の特許請求の範囲を示す。
[請求項1]
固定化されている標的の単独個別ユニットを試料中で可視化する方法であって、
a)標的の個別ユニットの集団を含む試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
標的の個別単独ユニットの分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の単独標的部位はそれぞれ、前記分別部分集団の個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つが酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
c)(a)の試料を、
2mM未満の量のペルオキシド化合物、
(a)の別々の単独標的部位に付随している酵素の第1基質および
前記酵素の第2基質
を含む水溶液(i)中でインキュベートするステップであって、
前記第1基質は、
(3)前記酵素と反応するとラジカルを発生させることができ、
(4)前記酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で前記第2基質の分子を架橋させて、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができる水溶性の電子リッチな化合物であり、
前記第2基質は、前記酵素の基質および検出可能な標識として働くことができる少なくとも2つの化合物を含むコンジュゲート分子であり、検出可能な標識は、蛍光、発光、放射性もしくは発色物質または特異的結合対のメンバーからなる群から選択され、
それによって、第2基質の別々のデポジットを(a)の別々の単独標的部位に形成し、(a)の前記単独標的部位を可視化するステップとを含む方法。
[請求項2]
1つまたは複数の結合剤が、特異的結合対のメンバーである、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
標的部位が、試料中に存在する標的の単独個別ユニットの少数で形成されている、請求項1または2に記載の方法。
[請求項4]
標的部位が、試料中に存在する標的の単独個別ユニットの大多数で形成されている、請求項1または2に記載の方法。
[請求項5]
酵素が、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
[請求項6]
酵素が、ペルオキシダーゼまたはフェノールオキシダーゼ活性を有する、請求項5に記載の方法。
[請求項7]
酵素が、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ダイズペルオキシダーゼもしくはラッカーゼまたは前記酵素の機能的類似体である、請求項6に記載の方法。
[請求項8]
オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質が、式(I):
Figure 0005836958
[式中、
R1は、アリールまたはビニルであり、
R2、R3およびR4は独立に、H、N−(X) 、O−(X) (ここで、Xはアルキル、ビニルまたはアリールまたはHである)であり、R2、R3およびR4は、同時にHであることはなく、
ここで、
Hは水素であり;
Oは酸素である]
の構造を含む化合物である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
[請求項9]
化合物が、3,3’−ジアミノベンジジンまたはその誘導体である、請求項1または7に記載の方法。
[請求項10]
化合物が、フェルラ酸またはその誘導体である、請求項1または7に記載の方法。
[請求項11]
3,3’−ジアミノベンジジンまたはその誘導体の量が、1mM未満である、請求項9に記載の方法。
[請求項12]
コンジュゲート分子が、式(II):
Figure 0005836958
[式中、
R1は、−H、−O−X、N(X) または−S−Xであり;
R2は、−H、−O−X、−N(X) または−S−Xであり、
R3は、−H、−OH、−NH または−SHであり;
R4は、−H、−O−X、−N(X) または−S−Xであり、
R5は、−H、−O−X、N(X) または−S−Xであり、
R6は、−CON(X) またはCO−Xであり、
ここで、
Hは水素であり;
Oは酸素であり、
Sは硫黄であり、
Nは窒素であり、
Xは、H、アルキルまたはアリールである]
によって定義される、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質としての少なくとも1つの化合物を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
[請求項13]
少なくとも2つの化合物が、式(II)によって定義される、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
式(II)によって定義される少なくとも2つの化合物が、同一の化合物である、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
式(II)によって定義される少なくとも2つの化合物が、異なる化合物である、請求項13に記載の方法。
[請求項16]
化合物が、ケイ皮酸、フェルラ酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸もしくはシナピン酸またはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
[請求項17]
コンジュゲートが、少なくとも1つのチロシン残基を酵素の基質として含む、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
[請求項18]
コンジュゲートにおいて、単独標的部位に付随している酵素の基質として働くことができる少なくとも2つの化合物がいずれも、コンジュゲート分子内において互いに、30個以下の連続的に接続している原子によって分離されており、検出可能な標識は、前記基質のいずれからも、30個以上の連続的に接続している原子によって分離されている、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
[請求項19]
コンジュゲート分子において標識を、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素のいずれの基質からも分離する少なくとも30個の連続的に接続している原子が、下式(III):
Figure 0005836958
[式中、R およびR は、NHおよびOから選択され、R は、メチル、エチル、プロピル、CH OCH および(CH OCH から選択され、ここで、連続的に繰り返すエチルオキシ基は3つ以下である]
の2〜10個の繰り返しを含む、請求項18に記載の方法。
[請求項20]
第2基質が、同一のコンジュゲート分子の集団または異なるコンジュゲート分子の集団によって表され、コンジュゲート分子は、請求項12から19のいずれかに記載のいずれかと同様である、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
[請求項21]
ステップ(b)に先行して、水溶液(i)の第2基質を含まないものである水溶液(ii)中で試料をインキュベートするステップ(b’)を含む、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
[請求項22]
少なくとも1つの洗浄ステップを含む、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
[請求項23]
(b)の単独標的部位が検出される、ステップ(c)をさらに含む、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
[請求項24]
ステップ(c)が、
c')(a)の別々の単独標的部位に第2基質の別々のデポジットを含む(b)の試料を、デポジットされた第2基質の検出可能な標識に特異的に結合することができる結合剤と共にインキュベートし、デポジットされた第2基質の1つまたは複数の分子と、前記結合剤の1つまたは複数の分子とを含む複合体を形成するサブステップと、
(c'')試料(c’)において、第2基質の別々のデポジットに結合している結合剤を検出して、それによって、単独標的部位を検出し、それによって、前記単独標的部位に付随している標的の個別単独ユニットを検出するサブステップとを含む、請求項23に記載の方法。
[請求項25]
結合剤が、酵素を含む、請求項24に記載の方法。
[請求項26]
結合剤が、発色性、蛍光、発光もしくは放射性物質または特異的結合対のメンバーから選択される検出可能な標識を含む、請求項24に記載の方法。
[請求項27]
単独標的部位にある第2基質の単独で別々のデポジットが、円形の形状を有し、二次元フィールドにおいて視覚的に別々のドットとして同定される、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
[請求項28]
別々のドットが、約0.4マイクロメートルまたは0.4マイクロメートル超の直径を有するドットである、請求項27に記載の方法。
[請求項29]
標的が、生物学的または化学的標的分子、粒子、分子もしくは細胞複合体、分子もしくは細胞構造、ウイルスもしくは微生物または前記標的分子、粒子、複合体、構造、ウイルスもしくは微生物の断片から選択される、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
[請求項30]
標的が、生物学的マーカーである、請求項29に記載の方法。
[請求項31]
標的の個別ユニットが、個別の生物学的または化学的単独分子、個別の単独粒子、個別の単独分子もしくは細胞複合体、個別の単独分子もしくは細胞構造または個別の単独ウイルスもしくは微生物または前記分子、粒子、複合体、構造、ウイルスもしくは微生物の個別の単独断片から選択される、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
[請求項32]
試料が、生物学的、化学的または環境試料である、請求項1から31のいずれかに記載の方法。
[請求項33]
試料が組織学的試料である、請求項1から32のいずれかに記載の方法。
[請求項34]
標的が、タンパク質もしくは核酸分子またはそれらの断片もしくは誘導体である、請求項29から33のいずれかに記載の方法。
[請求項35]
タンパク質が、細胞膜受容体または細胞質タンパク質または細胞質核酸である、請求項34に記載の方法。
[請求項36]
固定化されていて、試料中で幅広い動的濃度範囲を示している標的の個別単独ユニットを試料中で検出する方法であって、
a)試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み;
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
標的の個別単独ユニットの第1分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の第1標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、前記第1分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つはオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
b)(a)の試料を、(a)の第1標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1標的部位に形成するステップと;
c)(b)の試料を、(a)の第1の単独標的部位に付随している残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
d)試料(c)を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、標的の個別単独ユニットの第2の分別部分集団で1つまたは複数の別々の第2の標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、前記第2分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
e)(d)の前記試料を、第2単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第2集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第1集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第2集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む方法。
[請求項37]
ステップ(a)およびステップ(d)の結合剤が、同じ結合剤である、請求項36に記載の方法。
[請求項38]
(a)および(d)の結合剤が、異なる結合剤である、請求項36に記載の方法。
[請求項39]
第1集団の第2基質の分子および第2集団の第2基質の分子が、異なるコンジュゲート分子である、請求項36から38のいずれかに記載の方法。
[請求項40]
試料中に存在する少なくとも2種の異なる固定化標的の個別単独ユニットを可視化および検出する方法であって、
a)試料を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが第1標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
第1標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、第1標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第1単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、第1標的の個別単独ユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
b)(a)の試料を、第1単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および請求項のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1単独標的部位に形成するステップと;
c)(b)の試料を、(a)の第1単独結合部位に付随している酵素の残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
d)試料(c)を、
(1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
(2)結合剤のうちの少なくとも1つが第2標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
第2標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
それによって、第2標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第2単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、第2標的の個別のユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
e)(d)の試料を、第2単独結合部位に付随している第1基質、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質の分子の第2集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第1標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第2標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む方法。
[請求項41]
少なくとも2種の標的が、異なる生物学的分子である、請求項40に記載の方法。
[請求項42]
標的の少なくとも2種が、異なる核酸配列または異なるタンパク質である、請求項40に記載の方法。
[請求項43]
標的の少なくとも1つが核酸であり、他の少なくとも1つがタンパク質である、請求項40に記載の方法。
[請求項44]
第1集団の第2基質分子および第2集団の第2基質が、異なる第2基質分子である、請求項40から43のいずれかに記載の方法。
[請求項45]
第2基質分子が、請求項12から19のいずれかに記載の化合物から選択され、第1基質分子が、請求項8から10のいずれかに記載の化合物から選択される、請求項36から44のいずれかに記載の方法。
[請求項46]
少なくとも1つの追加的なステップを含む、請求項36から44のいずれかに記載の方法。
[請求項47]
試料が、組織学的試料である、請求項36から46のいずれかに記載の方法。
[請求項48]
定義されたステップのいずれかに先立つ1つまたは複数のステップを含む、請求項1から47のいずれかに記載の方法。
[請求項49]
定義されたステップのいずれかに続く1つまたは複数のステップを含む、請求項1から48のいずれかに記載の方法。
[請求項50]
ステップのうちの少なくとも1つが自動化されているか、または少なくとも1つの自動化ステップをさらに含む、請求項1から49のいずれかに記載の方法。
[請求項51]
固定化標的を試料中で定量的評価する方法であって、
d)請求項1から50のいずれかに記載の方法によって、試料を処理するステップと;
e)試料中の視覚的に識別可能なドットを定量するステップと;
f)試料中の標的の量を評価するステップとを含む方法。
[請求項52]
識別可能なドットを手動または自動で定量する、請求項51に記載の方法。
[請求項53]
標的の量を、参照マーカー、試料体積または試料面積当たりの標的の量として相対的に評価する、請求項51または52に記載の方法。
[請求項54]
患者において疾患を診断する方法であって、患者から得られた生体試料を、請求項1から53のいずれかに記載の方法に従って処理するステップを含む方法。
[請求項55]
患者における治療処置の効力を推定する方法であって、患者から得られた生体試料を、請求項1から53のいずれかに記載の方法に従って処理するステップを含む方法。
[請求項56]
患者において疾患が発生する危険性または疾患からの回復の見込みもしくは失敗を予測する方法であって、患者から得られた生体試料を、請求項1から53のいずれかに記載の方法に従って処理するステップを含む方法。
[請求項57]
請求項1から53のいずれかに記載の方法に従って、標的の単独ユニットを検出するステップを含むアッセイ。

Claims (32)

  1. 固定化されている標的の単独個別ユニットを試料中で可視化する方法であって、
    (a)標的の個別ユニットの集団を含む試料を、
    (1)結合剤のうちの少なくとも1つがオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含み、
    (2)結合剤のうちの少なくとも1つが標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
    1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
    標的の個別単独ユニットの分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の単独標的部位はそれぞれ、前記分別部分集団の個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つが酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
    (b)(a)の試料を、
    0.1mMから5mM未満の範囲の量のペルオキシド化合物、
    (a)の別々の単独標的部位に付随している酵素の第1基質および
    前記酵素の第2基質
    を含む水溶液(i)中でインキュベートするステップであって、
    前記第1基質は、
    (3)前記酵素と反応するとラジカルを発生させることができ、
    (4)前記酵素およびペルオキシド化合物の両方の存在下で前記第2基質の分子を架橋させて、それによって、前記第2基質の水不溶性ポリマー生成物を生じさせることができ、
    少なくとも3つの(C−C=)の繰り返しからなる鎖または芳香環構造を含む水溶性で有機の電子リッチな化合物であって、
    式(I):
    Figure 0005836958
    [式中、
    R1は、アリールまたはビニルであり、
    R2、R3およびR4は独立に、H、N−(X) 、O−(X)(ここで、Xはアルキル、ビニルまたはアリールまたはHである)であり、R2、R3およびR4は、同時にHであることはなく、
    ここで、
    Hは水素であり;
    Oは酸素である]
    の構造を有する化合物であり、
    前記第2基質は、前記酵素の基質および検出可能な標識として働くことができる少なくとも2つの残基を含むコンジュゲート分子であり、検出可能な標識は、蛍光、発光、放射性もしくは発色物質または特異的結合対のメンバーからなる群から選択され、
    それによって、第2基質の別々のデポジットを(a)の別々の単独標的部位に形成し、
    (c)(a)の前記単独標的部位を可視化するステップとを含む、
    方法。
  2. 1つまたは複数の結合剤が、特異的結合対のメンバーである、請求項1に記載の方法。
  3. 酵素が、ペルオキシダーゼまたはフェノールオキシダーゼ活性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 第1基質が、3,3’−ジアミノベンジジンまたはその誘導体、またはフェルラ酸またはその誘導体である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. コンジュゲート分子が、式(ii):
    Figure 0005836958
    [式中、
    R1は、−H、−O−X、N(X)または−S−Xであり;
    R2は、−H、−O−X、−N(X)または−S−Xであり、
    R3は、−H、−OH、−NHまたは−SHであり;
    R4は、−H、−O−X、−N(X)または−S−Xであり、
    R5は、−H、−O−X、N(X)または−S−Xであり、
    R6は、−CON(X)またはCO−Xであり、
    ここで、
    Hは水素であり;
    Oは酸素であり、
    Sは硫黄であり、
    Nは窒素であり、
    Xは、H、アルキルまたはアリールである]
    によって定義される、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の基質としての少なくとも1つの残基を含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
  6. 少なくとも2つの残基が、式(ii)によって定義される、請求項5に記載の方法。
  7. 式(ii)によって定義される少なくとも2つの残基が、同一又は異なる残基である、請求項6に記載の方法。
  8. 少なくとも1つまたは少なくとも2つの残基が、ケイ皮酸、フェルラ酸、コーヒー酸、アミノケイ皮酸もしくはシナピン酸またはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項5から7のいずれかに記載の方法。
  9. コンジュゲート分子が、少なくとも1つのチロシン残基を酵素の基質としてさらに含む、請求項5から8のいずれかに記載の方法。
  10. コンジュゲート分子において、単独標的部位に付随している酵素の基質として働くことができる少なくとも2つの残基がいずれも、コンジュゲート分子内において互いに、30個以下の連続的に接続している原子によって分離されており、検出可能な標識は、前記基質のいずれからも、30個以上の連続的に接続している原子によって分離されている、請求項1からのいずれかに記載の方法。
  11. 第2基質が、同一のコンジュゲート分子の集団または異なるコンジュゲート分子の集団によって表され、コンジュゲート分子は、請求項5から10のいずれかに記載のいずれかと同様である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
  12. (b)の単独標的部位が検出される、ステップ(c)をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
  13. ステップ(c)が、
    (c')(a)の別々の単独標的部位に第2基質の別々のデポジットを含む(b)の試料を、デポジットされた第2基質の検出可能な標識に特異的に結合することができる結合剤と共にインキュベートし、デポジットされた第2基質の1つまたは複数の分子と、前記結合剤の1つまたは複数の分子とを含む複合体を形成するサブステップと、
    (c'')試料(c’)において、第2基質の別々のデポジットに結合している結合剤を検出して、それによって、単独標的部位を検出し、それによって、前記単独標的部位に付随している標的の個別単独ユニットを検出するサブステップとを含む、請求項12に記載の方法。
  14. 結合剤が、酵素を含む、請求項13に記載の方法。
  15. 結合剤が、発色性、蛍光、発光もしくは放射性物質または特異的結合対のメンバーから選択される検出可能な標識を含む、請求項13に記載の方法。
  16. 単独標的部位にある第2基質の単独で別々のデポジットが、円形の形状を有し、二次元フィールドにおいて視覚的に別々のドットとして同定される、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
  17. 標的が、生物学的または化学的標的分子、粒子、分子もしくは細胞複合体、分子もしくは細胞構造、ウイルスもしくは微生物または前記標的分子、粒子、複合体、構造、ウイルスもしくは微生物の断片から選択される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
  18. 標的が、生物学的マーカーである、請求項17に記載の方法。
  19. 固定化されていて、試料中で幅広い動的濃度範囲を示している標的の個別単独ユニットを試料中で検出する方法であって、
    (a)試料を、
    (1)結合剤のうちの少なくとも1つがオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含み;
    (2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
    1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
    標的の個別単独ユニットの第1分別部分集団を備えた1つまたは複数の別々の第1標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、前記第1分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別単独ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つはオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
    (b)(a)の試料を、(a)の第1標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1標的部位に形成するステップと;
    (c)(b)の試料を、(a)の第1の単独標的部位に付随している残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
    (d)試料(c)を、
    (1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
    (2)結合剤のうちの少なくとも1つが前記標的の個別ユニットに直接結合することができる、
    1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
    それによって、標的の個別単独ユニットの第2の分別部分集団で1つまたは複数の別々の第2の標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、前記第2分別部分集団の個別単独ユニットのうちの個別ユニット1つと、そのうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
    (e)(d)の前記試料を、第2単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第2集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
    (f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第1集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
    (g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、標的の第2集団の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む方法。
  20. ステップ(a)およびステップ(d)の結合剤が、同じ又は異なる結合剤である、請求項19に記載の方法。
  21. 第1集団の第2基質の分子および第2集団の第2基質の分子が、異なるコンジュゲート分子である、請求項19又は20に記載の方法。
  22. 試料中に存在する少なくとも2種の異なる固定化標的の個別単独ユニットを可視化および検出する方法であって、
    (a)試料を、
    (1)結合剤のうちの少なくとも1つがオキシドレダクターゼ活性を有する酵素を含み、
    (2)結合剤のうちの少なくとも1つが第1標的の個別単独ユニットに直接結合することができる、
    第1標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
    それによって、第1標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第1単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第1標的部位はそれぞれ、第1標的の個別単独ユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
    (b)(a)の試料を、第1単独標的部位に付随している酵素の第1基質、前記酵素の第2基質の分子の第1集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(a)の第1単独標的部位に形成するステップと;
    (c)(b)の試料を、(a)の第1単独結合部位に付随している酵素の残りの活性をクエンチするのに十分な量の過酸化水素溶液と共にインキュベートするステップと;
    (d)試料(c)を、
    (1)結合剤のうちの少なくとも1つが酵素を含み、
    (2)結合剤のうちの少なくとも1つが第2標的の個別ユニットに直接結合することができる、
    第2標的に結合することができる1つまたは複数の結合剤と共にインキュベートし、
    それによって、第2標的の個別単独ユニットを備えた1つまたは複数の別々の第2単独標的部位を形成するステップであって、単独の別々の第2標的部位はそれぞれ、第2標的の個別のユニット1つと、結合剤のうちの少なくとも1つは酵素を含む1つまたは複数の結合剤との複合体を含むステップと;
    (e)(d)の試料を、第2単独結合部位に付随しているオキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第1基質、オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の第2基質の分子の第2集団および請求項1のステップ(b)によるペルオキシド化合物と共にインキュベートして、それによって、第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、(d)の第2標的部位に形成するステップと;
    (f)試料において、第1標的部位にある第1集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第1の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第1標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップと;
    (g)試料において、第2標的部位にある第2集団の第2基質の分子の別々のデポジットを、第2の視覚的に識別可能なドットとして検出し、それによって、第2標的の1つまたは複数の個別単独ユニットを検出するステップとを含む方法。
  23. 少なくとも2種の標的が、異なる生物学的分子である、請求項22に記載の方法。
  24. 第1集団の第2基質分子および第2集団の第2基質分子が、異なる第2基質分子である、請求項22又は23に記載の方法。
  25. 第2基質分子が、請求項5から10のいずれかに記載の残基を含み、第1基質分子が、請求項4に記載の化合物から選択される、請求項19から24のいずれかに記載の方法。
  26. 試料が、組織学的試料である、請求項1から25のいずれかに記載の方法。
  27. 定義されたステップのいずれかの前または後に、1つまたは複数のステップをさらに含む、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
  28. ステップのうちの少なくとも1つが自動化されているか、または少なくとも1つの自動化ステップをさらに含む、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
  29. 固定化標的を試料中で定量的評価する方法であって、
    a)請求項1から28のいずれかに記載の方法によって、試料を処理するステップと;
    b)試料中の視覚的に識別可能なドットを定量するステップと;
    c)試料中の標的の量を評価するステップとを含む方法。
  30. 識別可能なドットを手動または自動で定量する、請求項29に記載の方法。
  31. 標的の量を、参照マーカー、試料体積または試料面積当たりの標的の量として相対的に評価する、請求項29又は30に記載の方法。
  32. 請求項1から31のいずれかに記載の方法に従って、標的の単独ユニットを検出するステップを含むアッセイ。
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