詳細な説明
今回の組成物と方法について説明する前に、本発明はここに説明される特定の過程、組成物または方法のみに限られているものではないことを理解しておく必要がある。というのは、それらは多様である可能性があるからだ。本説明で使われる専門用語もまた、特定の解釈または実施態様のみを説明する目的であって、添付の請求の範囲内のみに限られる本開示の範囲に限定する意図はないと理解しておく必要がある。例外が特筆されない限り、本件で使われるすべての技術用語、科学用語は当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を持っている。本明細で記述されているものと同様または同等ないかなる方法や物質も、本開示の実施態様の実施または検査で使用できるが、好ましい方法、装置、物質を説明する。ここで言及された全ての出版物は、その全部を参考文献としてここに組み込まれる。以前の発明のお陰でそのような開示の日時を早めるような権利が本発明にはないという了解として解釈されるものは本明細書にはない。
本明細書と添付の請求で使用されるとき、単数態様の不定冠詞(「a」、「an」)及び定冠詞(「the」)は、背景が明瞭に指示しない限り、複数の参照を含むことが言及されなければならない。従って、例えば、単数で「分子薬剤」と記載する時は単数または複数の分子薬剤と当業者に既知のその同等物を意味する。
本明細書で使用されるとき、「約」という単語は、その使われた数の10%高低以内の数であるという意味である。従って、約50%と言えば、45%〜55%間であるという意味である。
治療と関連して「投与する」という表現を使う時、直接標的の組織内または表面に治療薬を投与、或いは治療薬が標的とされる組織にプラスの効果を与えるように治療薬を患者に投与することを意味する。従って、「投与する」という表現を本明細書で分子薬剤と関連して使用されるとき、分子治療薬を標的の組織内または表面に投与すること、分子薬剤を例えばそれが標的の組織に到達するように静脈注射によって患者へ全身投与すること、または分子薬剤をそのシークエンスをコード化した形で標的の組織に投与すること(例えば、いわゆる遺伝子治療によって)を含むが。これらだけには限定しない。
「動物」、「患者」、「対象者」は、本明細書中で使用されている場合、人間と人間以外の野生、家畜等の脊椎動物のことを意味するが、これだけとは限らない。幾つかの実施態様では、その用語は人間と他の高等動物とマウス、ラットのような実験動物を意味する。幾つかの実施態様では、その用語は人間を意味する。
本明細書中で使用されている場合、分子薬剤の「効果的な量」とは、細胞内において標的mRNAの分解または中和を引き起こす、または標的蛋白の分解または中和を引き起こすのに十分な量である事を意味する。臨床的に効果的な量という用語は、対象者に投与した時に対象者における瘢痕化が阻害されるか、減少するか、予防できる量の事である。
「改善する」という用語は、供与された、または適用された、または投与された者に組織の見かけ、形質、性質と物理的特質のどれか或いはすべてが、本件の開示で変化したことを示している。形質の変化は、次のどれか或いはそれらの組み合わせで説明されうる。皮膚の見かけの改善、皮膚の瘢痕化の減少、瘢痕拘縮の減少、皮膚の柔軟性の増加、皮膚の縮みの減少、または皮膚の堅さと弾力性の増加などである。
「阻害する」という用語は、標的mRNAまた標的核酸の発現に作用させるか、防ぐ目的で、本開示で使用の分子薬剤を投与すること含む。
本明細書中で使用されている場合、「標的mRNA」とはsiRNAのアンチセンス鎖に相補的なセンス配列を含むmRNAのことである。標的mRNAは人間以外の動物または人間のmRNAでありうる。できれば、標的mRNAは人間のものであることが好ましい。siRNAが標的mRNAをサイレンシングするか標的mRNAとRISC複合体を形成する作用がある限り、そのような標的mRNAはsiRNAのアンチセンス鎖と100%ホモロジーである必要はない。例えば、特定の実施態様では、siRNAのセンス鎖は、1個から5個のヌクレオチド、1個から4個のヌクレオチド、1個から3個のヌクレオチド、1個から2個のヌクレオチド、または1、2、3、4、5個のヌクレオチドの何れかの数で標的mRNAと異なる可能性がある。本開示の方法において標的mRNAの特殊な使用方法には、例えばCCT-eta, α-SMAのそれらの一方または両者が含まれている。例えば、方法にて使われる標的mRNAには、SEQ ID Nos. 7, 8, 11, 12, 13, 14, 21, 22のmRNAを含む。
「分子治療薬」という用語は、例えば、限定するものではないが、siRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体を含む。
「核酸」、或いは「核酸分子」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成した断片、およびライゲーション、切断、エンドヌクレア−ゼの作用、エキソヌクレア−ゼの作用のどれかによって生成した断片を言及している。核酸は、天然ヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドのような)の単量体、天然ヌクレオチドの類似体(例えば、天然ヌクレオチドのα-鏡像異性体)の単量体、または両者の組み合わせから構成され得る。修飾されたヌクレオチドには、糖鎖部位に修飾が存在するか、プリミヂンかプリン塩基部位に存在する場合か、両方とも,またはいずれか一方がありうる。糖鎖修飾とは、例えば1個か複数個のヒドロキシ基がハロゲン基、アルキル基、アミン基、アジド基で置換されたものを含み、または糖はエーテルやエステルとして機能しうる。更に、全糖鎖部は、アザ糖やカルボサイクリック糖類似体のような立体的、電気的に類似した構造で置換することが可能である。塩基部位での修飾の例は、アルキル化されたプリン、ピリミジン、アシル化されたプリン、ピリミジン、或いは他の有名なヘテロサイクリック結合置換が含まれる。核酸の単量体は、リン酸ジエステル結合か類似の結合によって連鎖されうる。リン酸ジエステル結合の類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデート、ホスホラミデート等を含む。「核酸」という用語には、いわゆる「ペプチド核酸」と呼ばれるものも含み、それはポリアミド主鎖に結合する天然または修飾された核酸の塩基を含有する。核酸は1重鎖でも2重鎖でもありうる。
本発明の実施態様には、製薬学的組成物(または「医薬品」)の投薬も含む。これらの組成物には、薬学的や生理的に許容できる担体、医薬品添加物、希釈剤と共に、上述した何れかの分子治療薬、特にsiRNA、リボゾーム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNA 分子、抗体、ベクター、母細胞等を含む。
「薬学的に許容できる」とは、担体、希釈剤または医薬品添加物は他の配合成分と共存できなければならず、それを受ける者にとって有害なものであってはならないことを意味する。
特に記述しない限り、「皮膚」という用語は、外珠皮のこと、或いは身体をカバーし、真皮と表皮から構成され、皮下組織上にあるものを意味している。
概して、「ベクター」という用語は、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または目的のsiRNAを発現しうる構築物を示す。ベクターはデオキシリボ核酸(DNA) またはリボ核酸(RNA)から構成されうる。ベクターには、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼやヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼやピューロマイシン-N-アセチル-トランスフェラーゼのような選択性のあるマーカー1個か複数を含められると同様に、任意に、ポリアデニル化配列、1個か複数の制限部位を含むことも可能である。更に、選択した母細胞や使用するベクターによっては、複製開始点や、別の核酸の制限部位、エンハンサー、転写を誘導する配列、選択性のあるマーカー等の遺伝因子を本件で記述するベクターに組み込むこともできる。
本明細書中で使用されている場合、「治療する(treat)」、「治療された(treated)」、「治療すること(treating)」は、治療法と予防または予防的手段の両者を意味する。その目的は望ましくない生理状態、障害、疾患の状態を予防することやスローダウン(弱める)させること、或いは、効果的または望ましい臨床結果を得る事である。本発明の目的として、有益で望ましい臨床的結果とは、それらに限定するとは限らないが、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の形成の予防、形成したscar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の衰退、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の形成の安定化(すなわち悪化しないこと)、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の進行の始まりを遅らせること、または進行を遅くすること、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)を改善することを含む。治療には異常なレベルでの副作用なく臨床的に重要な応答を引き出すことも含む。
例えば、いくつかの側面で本発明は、上記で記載した分子薬剤、薬学的に受容できる担体または希釈剤から成る薬学的組成物、または上記で記載した分子薬剤を含む有効量の薬学的組成物を対象としている。
成体哺乳動物の組織は瘢痕形成による治癒によって怪我に応答する。対照的に、哺乳動物の胎児は瘢痕形成なしで治癒する能力があり、それは再生に関係した過程である。瘢痕形成は傷の部位をすばやく閉鎖することになるが、結果的に生じた瘢痕が、例えば動きの制限や腸の癒着など、しばしば持続的な病理状態を生命体に起こす原因となりうる。表現形のレベルで成体創傷と胎児創傷の治癒法は幾多の重要な点で異なる。成体創傷治癒は顕著な初期の急性炎症反応に特徴づけられるが、胎児創傷治癒ではそれは起こらないし、成体創傷の治癒で観察される中間体の肉芽組織の堆積も胎児創傷治癒では示されない。加えて、成体創傷の治癒では創傷部位の顕著な収縮が特徴的であり、組織の線維芽細胞が(そしてその細胞の誘導体である筋線維芽細胞が)媒介すると考えられる。一方、胎児創傷ではそのような収縮は起きない。線維芽細胞/筋線維芽細胞は創傷収縮に次のようにして影響を及ぼす可能性がある。それは収縮ユニットとして共同して作用するか、または細胞の運動過程において創傷に牽引力を与えるようと其々に作用するかであり、後者の方がより可能性がある。
瘢痕化は外観の損傷、痛み、患者にとって医療費の負担となる重要な原因である。線維症、瘢痕拘縮が関係する多数の病気があり、本開示の実施態様がそれらに有益でありえ、それらの病気では皮膚創傷治癒することが最も明らかな効用となる。例えば、腹部手術後に内臓において、腱の損傷後、関節と筋肉において、鼓膜損傷後、角膜(目)損傷後、デュピュイトラン拘縮およびぺロニー症などにおいて瘢痕が形成される。
デュピュイトラン拘縮とは手の固定された屈曲拘縮のことで、指は手のひらの方へ屈折し完全に伸ばすことが(ストレートに)できない。デュピュイトラン拘縮は皮下の手のひらの筋膜の拘縮が原因である。薬指と小指が一般的にもっとも影響を受ける。進行した場合中指も影響されうるが、人差し指と親指はほとんど常に影響されない。デュピュイトラン拘縮は進行が遅く、通常痛みが無い。この病状にある患者においては、手のひらの皮下の組織は厚くなり短縮するので、指に結合している腱が自由に動かなくなる。手掌腱膜は肥厚になり拘縮するようになる。
外科手術においては、瘢痕組織の形成と拘縮が主なる臨床的課題である。同様に、不慮の火傷または他の怪我や外傷から起きる瘢痕形成がしばしば重篤な結果となり、機能的な障害と見た目の美醜に関する影響を引き起こす。現在のところ、瘢痕化を防ぐ満足できる治療はない。従って、瘢痕化または線維症を減弱させるまたは予防する効果的な治療が必要とされている。さらに付け加えると、デュピュイトラン拘縮、ペイロニー病、肺線維症、肝硬変、間質性肺疾患、瘢痕性脱毛症のような瘢痕化または線維症として特徴付けられる疾患を治療する方法が必要とされている。
本開示の幾つかの実施態様は、瘢痕化を減少または予防する事を対象にしている。本開示の幾つかの実施態様は、線維症の治療と予防を対象にしている。線維症とは、回復過程や反応過程としての臓器や組織における線維結合組織が、健常人の臓器や組織での線維結合組織の形成に比べ、過剰に形成または増加する疾患である。線維症は、負傷、治療、疾患など何れか1つまたはそれらすべてを原因として発生し得る。瘢痕化するとは、その下部にある臓器や組織の構造を破壊するような癒合性線維症の事である。
特定の理論に縛られることを望むものではないが、T-複合体ポリペプチドを含むシャペロニンのeta サブユニットであるCCT-eta (SEQ ID Nos. 9、15-18)は、成体の(スキルス)創傷治癒の間に上昇する可能性があるが、胎児の創傷治癒環境では減少すると考えられている。CCT分子は真核生物では主要な細胞質内のシャペロニンであり、全細胞内蛋白質の15%までと作用すると見積もられている。CCT ホロ酵素の構造はシャペロニンのなかではユニークなものである。つまり、8つの異なったサブユニット、alpha, beta, gamma, delta, epsilon, eta, theta, zeta (zetaの変異体であるzeta 2は睾丸においてのみ高度に発現する)を含有するリング2つを含む。それら8つのポリペプチドサブユニットは8つの異なる遺伝子に暗号化されている。完全な集合体の分子量は約900 kD であるが、それら各サブユニットは1量体または多量体として別々に局在し、機能をしているという証拠もある。
CCT の主な基質は、細胞骨格蛋白質(例えば、チュブリンやアクチン)と考えられるが、CCT複合体が全細胞内蛋白質の15%までと作用するという見積りから、胚形成、繊毛発生、細胞の生存、細胞の増殖のような様々な現象への関与も示唆されてきた。それゆえ、CCTの構成物の変化が、細胞の生理機能に対し多面的な影響を与える可能性がある。特定の理論に縛られることを望むものではないが、CCT-eta mRNAは、胎児の皮膚組織からの線維芽細胞では成体皮膚線維芽細胞に比べ、相当に少なく発現していると信じられている。
CCT-etaは、一酸化窒素(NO)シグナル系の主要な細胞内媒体である可溶性のグアニリルシクラーゼ(sGC)のコファクターである阻害性コファクターでもある。特定の理論に縛られるのではないが、CCT-etaは成体の創傷治癒で上昇する事から、その結果sGC活性が抑制され、創傷環境全体として一酸化窒素シグナル系が阻害されると示唆される。アルギニン(とその他の一酸化窒素シグナル系を刺激する試薬)が、創傷治癒に効果的な影響をすると示されている事から、CCT-etaの増加が、一酸化窒素に媒介される効果を阻害することで成体の創傷治癒のスキルスな性質の原因になっている可能性がある。
細胞内アクチンは、細胞の動きと牽引力にとって主要な細胞骨格因子であり、おそらくCCT ホロ酵素の主な基質であろう。線維芽細胞は2種類のアクチンのアイソフォーム(つまりβ-アクチンとγ-アクチン)を発現しており、真核細胞すべてのタイプに同様に発現している。しかし、ある特定の条件では、線維芽細胞はアクチンのアルファ-平滑筋アイソフォーム(α-SMA)を発現する可能性がある。例えば、細胞培養において血清で刺激された時、或いは成体の創傷治癒の際に「筋線維芽細胞」として機能するようin vivoで刺激された時である。筋線維芽細胞とは創面収縮と瘢痕形成に最も関与している派生細胞である。α-SMAの存在が、妊娠後期ですでに成体の瘢痕形成しうる表現型へ移行している胎児組織においてさえ瘢痕形成の出現と密接に関係していると観察されている。α-SMAのmRNAと蛋白量は成体創傷治癒間では永続的に上昇し、一方、初期に瘢痕化がない胎児創傷治癒ではα-SMAはほとんど存在しない。
特定の理論に縛られるのではないが、CCT-eta (SEQ ID Nos. 9、15-18)は、α-SMA(SEQ ID No. 10、19-20)の発現を制御していると考えられている。そのα-SMAの発現は瘢痕の収縮を開始し維持するのに必要である。CCT-eta発現(そしてその結果としてα-SMAの発現または直接に)を標的にすることで、細胞形成の主エフェクターである線維芽細胞と筋線維芽細胞の働きを抑え、積極的に創傷サブスタンスを収縮させ、瘢痕拘縮を少なく抑えることができる。従って、選択的にCCT-etaまたはα-SMAの発現を阻害する薬剤を使用して、瘢痕化または線維芽細胞を減少させる方法が必要とされる。
アルファ平滑筋アクチン(α-SMA)は、375個のアミノ酸からなる42 kDaの蛋白質であり、ACTA2遺伝子によってコードされ(遺伝子マップ座10q22-q24)、N端のアセチル化、メチル化(tele-His75)、チロシンのニトロ化(Tyr296)によって翻訳後修飾(PTM)されている。α-SMAは創傷治癒で線維芽細胞の筋線維芽細胞への形質転換をみる指標となり、筋線維芽細胞は瘢痕の収縮力の原因となる主な媒介とされている。従って、上昇したCCT-etaは筋線維芽細胞発生を増加させ、それに伴って瘢痕の収縮力が強まるのである。なぜならα-SMA蛋白量は事実上CCT-eta蓄積を追跡しているからである。逆に、胎児創傷治癒過程で観察されるCCT-etaの減少は、線維芽細胞の筋線維芽細胞への形質転換を抑えることによって瘢痕化を阻止している可能性がある。
筋線維芽細胞は線維芽細胞由来の最終分化細胞であり、脱分化した平滑筋細胞SMC)であり、可能性として組織の線維形成や上皮性癌悪性化に重要な役割をしている生殖細胞系の転移したものでありうる。α-SMA 陽性の筋線維芽細胞はデュピュイトランによる結節のストロマおよび多種の癌腫に観察されている。α-SMA陽性の筋線維芽細胞の存在は、概して癌腫の悪性さが増し予後不良である事と関係している。α-SMA陽性の筋線維芽細胞は創傷修復中である非悪性組織のストロマにもみられる。α-SMA陽性の筋線維芽細胞の異常調節は、アテロスクレローシスを含む広い範囲での線維性の疾患と関係している。α-SMAは、平滑筋腫、平滑筋肉腫、ある種の横紋筋肉腫を含む多種の筋原性の軟組織腫瘍に発現している。
胎児の線維芽細胞は成体細胞に比べ構成型のα-SMAの発現が少なく、CCT-etaの減少がα-SMA蛋白量を著しく減少させるが、CCT-betaの減少ではそのような効果はない。α-SMAの直接的な減少により、CCT-etaの減少際に観察されたベーサルと成長因子に誘導される運動性両者を同様に減少させるし、成体の線維芽細胞が胎児のそのパターンを模倣したかのような変化が生じる可能性がある。
CCT-eta mRNAとその蛋白、α-SMA mRNAとその蛋白を標的にした分子薬剤を含む組成物と方法は、創傷治癒または線維症において瘢痕を治療しまたは予防する目的で使用される。分子薬剤はそれらmRNAと蛋白の分解または抑制を生じ、その結果、CCT-eta、α-SMAの一方或いは両者が生成されないか、少なく生成されるであろう。
従って、本開示の実施態様は、T-複合体ポリペプチド含有シャペロニンのサブユニットであるetaポリペプチド(「CCT-eta」)を阻害する薬剤、平滑筋アクチン(「α-SMA」)を阻害する薬剤、またはそれらの組み合わせ等から選択された分子薬剤を投与することを含む、瘢痕化を減少させる方法を対象にしている。幾つかの実施態様では瘢痕化に線維形成も含みうる。幾つかの実施態様では、瘢痕化を減少させる方法とは、創傷での瘢痕化を減少させること、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の形成の予防、形成したscar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の衰退、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の形成の安定化(すなわち悪化しないこと)、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)の進行の始まりを遅らせること、または進行を遅くすること、scar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)を改善すること、傷跡や瘢痕の硬さを減少させ、線維症を軽減し、治療または予防してscar(瘢痕)またはcicatrix(瘢痕)をよくする或いは改善することを含みうる。幾つかの実施態様では、瘢痕化を減少させる方法には、瘢痕化の減少、または瘢痕化の治療、または瘢痕化の予防、または線維形成の減少、線維症の治療、または線維形成予防を含みうる。幾つかの実施態様では、CCT-etaを阻害する薬剤はCCT-eta mRNAの発現を阻害する薬剤、CCT-eta蛋白を阻害する薬剤、これら一方または両者から選択されうる。幾つかの実施態様では、α-SMAを阻害する薬剤はα-SMA mRNAの発現を阻害する薬剤、α-SMA蛋白を阻害する薬剤、これら一方または両者から選択されうる。
幾つかの実施態様では、分子治療薬は、siRNA 、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、これら1つまたはそれらの組み合わせから選択されうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAの発現を阻害する薬剤は、siRNA 、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、これら1つまたはそれらの組み合わせから選択されうる。幾つかの実施態様では、α-SMA mRNAの発現を阻害する薬剤は、siRNA 、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、これら1つまたはそれらの組み合わせから選択されうる。幾つかの実施態様では、siRNAはセンス鎖とアンチセンス鎖を含みうる。幾つかの実施態様では、センス鎖はSEQ ID No. 1 (CCT-eta mRNAの阻害目的) 或いは 5 (α-SMA mRNAの阻害目的)を含みうる。幾つかの実施態様では、アンチセンス鎖はSEQ ID No. 2 (CCT-eta mRNAの阻害目的) 或いは6 (α-SMA mRNAの阻害目的)を含みうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 1かそれのバリアントを含有するセンス鎖と、SEQ ID No. 2かそれのバリアントを含有するアンチセンス鎖を含むsiRNAを含む。幾つかの実施態様では、α-SMA mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 5かそれのバリアントを含有するセンス鎖と、SEQ ID No. 6かそれのバリアントを含有するアンチセンス鎖を含むsiRNAを含む。
そのような分子薬剤のバリアントは、異なる種の配列の多様性(例えば、ヒトmRNAまたは蛋白)と、CCT-etaのmRNAまたはalpha-SMAのmRNA内の異なった標的配列を組み込むことで作成された。かかる手法は当業者が備えている技能の範囲内である。本明細書中で使用されている場合、「バリアント」には、開示された配列に対し次のホモロジーのあるものが含まれている。それは、約50%から約99.9%、約50%から約99%、約50%から約95%、約50%から約90%、約50%から約85%、約50%から約80%、約50%から約75%、約50%から約70%、約50%から約65%、約50%から約60%、約50%から約55%、約60%から約99.9%、約60%から約99%、約60%から約95%、約60%から約90%、約60%から約85%、約60%から約80%、約60%から約75%、約60%から約70%、約60%から約65%、約70%から約99.9%、約70%から約99%、約70%から約95%、約70%から約90%、約70%から約85%、約70%から約80%、約70%から約75%、最小約60%、最小約70%、最小約80%、最小約85%、最小約90%、最小約95%、最小約99%、或いはこれらの値のうちのいずれかの2つの値の間である。例えば、幾つかの実施態様では、CCT-etaに対するsiRNAのセンス鎖のバリアントは、SEQ ID No. 1と最小約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%のホモロジーのあるバリアントを含みうる。同様に、幾つかの実施態様では、CCT-eta に対するsiRNAのアンチセンス鎖のバリアントには、SEQ ID No. 2と最小約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%のホモロジーのあるバリアントを含みうる。
他の例として、幾つかの実施態様では、α-SMAに対するsiRNAのセンス鎖のバリアントには、SEQ ID No. 5と最小約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%のホモロジーのあるバリアントを含みうる。同様に、幾つかの実施態様では、α-SMAに対するsiRNAのアンチセンス鎖のバリアントには、SEQ ID No. 6と最小約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%のホモロジーのあるバリアントを含みうる。本明細書中で使用されている場合、「ホモロジー」は2つの配列の間にある配列の相関関係の程度を意味する。
幾つかの実施態様では、siRNAはベクター内にコードされうる。幾つかの実施態様では、ベクターはプラスミドベクターかウイルスベクターから選択されうる。
幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 8, 11, 12, 13, 14、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせから選択された標的mRNAを阻害するsiRNAを含む。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 11, 12, 13, 14、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせから選択された標的mRNAを阻害するsiRNAを含む。幾つかの実施態様では、α-SMA mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 9, 21, 22、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせから選択された標的mRNA を阻害するsiRNAを含む。幾つかの実施態様では、α-SMA mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 21, 22、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせから選択した標的mRNA を阻害するsiRNAを含む。
幾つかの実施態様では、CCT-eta蛋白を阻害する薬剤は抗体でありうる。幾つかの実施態様では、その抗体は、SEQ ID No. 9, 15, 16, 17, 18、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせを含むCCT-eta蛋白を阻害する。幾つかの実施態様では、α-SMA蛋白を阻害する薬剤は抗体でありうる。幾つかの実施態様では、その抗体は、SEQ ID No. 10, 19, 20、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせを含むα-SMA蛋白を阻害する。幾つかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でありうる。
本開示の実施態様は、CCT-eta mRNAの発現を阻害する薬剤、CCT-eta蛋白を阻害する薬剤、α-SMA mRNAの発現を阻害する薬剤、α-SMA蛋白を阻害する薬剤から成るグループから選択した治療用分子薬剤を投与することを含む創傷治癒における瘢痕化を減少させる方法を対象にしている。
本発明の特定の実施態様は、瘢痕化過程を抑制するための、siRNAに媒介されたCCT-eta mRNA、α-SMA mRNAの一方または両者の分解法を提供する。更に、本発明の実施態様は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを使用してCCT-eta mRNA、α-SMA mRNA の一方または両者の阻害法を提供する。本開示の実施態様は、CCT-etaとα-SMA蛋白に対する抗体と関係がある。瘢痕か線維症が生じ病態が発生している身体のどの部分でもまたはどのような状況にでも、siRNA、アンチセンス、リボザイム、抗体技術を使用しての遺伝子プロダクトを標的にした治療介入が潜在的に可能である。
1つの実施態様では、siRNAは、標準的なWatson-Crickの塩基対相互作用(以下では「塩基対した」)によってアニールしたセンスRNA鎖と相補的アンチセンスRNA鎖を含む。センス鎖は、標的mRNA内に存在する標的配列に一致するか、相当のホモロジーがある核酸配列を含みうる。幾つかの実施態様では、siRNA のセンス鎖とアンチセンス鎖は、2つの相補的一本鎖RNA分子を含みうるか、または2つの相補的配列が塩基対になり共有結合で一本鎖「ヘアピン」領域で共有結合したひとつの分子を含みうる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、後者のタイプのsiRNA分子にあるヘアピン領域は、細胞内で「ダイサー」蛋白(またはそれに同等のもの)によって切断され、塩基対した2つの異なるRNA分子を形成する。
本発明に包含されているセンス鎖の例にはSEQ ID Nos. 1, 3, 5、それらのバリアントまたはそれらを組み合わせたものがある。さらに、siRNAセンス鎖のバリアントには、標的のmRNA内に内在する標的配列に一致するか、かなりのホモロジーがある核酸配列を含みうる。特定の配列は公開されているが、違う種(例えばヒト)からの標的mRNAに対するsiRNAのバリアントの作成法、或いは標的mRNA内の異なる配列に対するsiRNAのバリアントの作成法は、当業者が備えている技能の範囲内である。本発明に包含されるアンチセンス鎖の例にはSEQ ID Nos. 2, 4、6がある。幾つかの実施態様では、CCT-etaを阻害する薬剤、またはα-SMAを阻害する薬剤は、ヒト由来の標的mRNAに対するsiRNAでありうる。幾つかの実施態様では、標的mRNAは、SEQ ID Nos. 7, 8, 11-14, 21-22、それらのバリアントまたはそれらを組み合わせたものから選択されうる。幾つかの実施態様では、標的mRNAは、SEQ ID Nos. 7, 8、それらのバリアントまたはそれらを組み合わせたものから選択されうる。幾つかの実施態様では、標的mRNAは、SEQ ID Nos. 11-14, 21-22、それらのバリアントまたはそれらを組み合わせたものから選択されうる。
RNA干渉(「RNAi」)は多くの真核生物で保存されている転写後遺伝子調節法である。RNAiは、細胞内に存在する短い(30ヌクレオチド未満)2重鎖RNA (「dsRNA」)分子より誘導される。「低分子干渉RNA」または「siRNA」と呼ばれる、これら短いdsRNA分子は、siRNAと配列にホモロジーがあるメッセンジャーRNA(「mRNA」)をワンヌクレオチド分解能以内に破壊してしまう。siRNAと標的のmRNAは、標的のmRNAを開裂する「RNA誘導サイレンシング複合体」すなわち「RISC)と結合すると考えられている。siRNAは明らかに複数回ターンオーバー酵素のようにリサイクルされ、1つのsiRNA 分子が約1000のmRNA分子を開裂することができる。siRNA媒介によるmRNAのRNAi分解法は、それ故に標的遺伝子の発現を抑制するために現在可能である技術より有効である。
当業者であれば、対象者の身長や体重、創傷回復や疾患浸透の程度、対象者の年齢や健康度や性別、投与方法、および局部か全身投与かなどの因子を考慮することにより、対象者に投与するsiRNA の効果量を容易に決めることができる。通常、siRNAの効果量は、創傷修復中の部位かその近辺では、細胞間の濃度が約1ナノモラー(nM)から約100 nMの間であるが、約2 nMから約50 nMの間が好ましく、更に約2.5 nMから約10 nMの間がより好ましい。より多い量か少ない量のsiRNAが投与できるかどうかはよく考慮されるべきである。
このように、本発明の実施態様は、RNAiにより誘導される、CCT-etaまたはα-SMAをコードしているmRNAの分解を特に標的にし引き起こすsiRNAを対象にしている。本開示でsiRNA化合物と組成物は創傷での線維症の治療または予防、瘢痕化の減少を目的として使用されうる。
本発明の実施態様では、本明細で開示したsiRNAを発現する組み換えプラスミドとウイルスベクターも提供する。siRNAのような製薬学的組成物と薬学的に許容され得る担体も同様である。
siRNAの発現に適したプラスミドの選択、siRNAを発現させる核酸の配列をプラスミド中に挿入する方法、目的の細胞に組み換えプラスミドを導入させる方法は、当業者が備えている技能の範囲内である。次の例が参照になる。Tuschl, T. (2002), Nat. Biotechnol, 20: 446-448; Brummelkamp TR et al. (2002), Science 296: 550-553; Miyagishi M et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20: 497-500; Paddison PJ et al. (2002), Genes Dev. 16: 948-958; Lee NS et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20: 500-505; Paul CP et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20: 505-508、これらは全ての開示は本明細書に参照として組み込まれている。
幾つかの実施態様では、siRNAを線維症または創傷修復の部位またはその周辺で、組み換えウイルスベクターからin vivoで細胞内で発現させることが可能である。本発明の組み換えウイルスベクターは、siRNAをコードしている配列、siRNA配列を発現するために適したプロモーターを含んでいる。適応可能なプロモーターには、例えば、U6またはHI RNA pol III プロモーター配列、サイトメガロウイルスプロモーターがある。適応可能なプロモーターの選択は当業者が備えている技能の範囲内である。本発明の組み換えウイルスベクターには、特定の組織または特殊な細胞内環境で、siRNAの発現を誘導したり制御したりが可能なプロモーターも含む。siRNAをin vivoで細胞に導入することができる組み換えウイルスベクターの使用については、詳しく下記に記載する。
幾つかの実施態様では、siRNAは組み換えウイルスベクターから、2つの別々の相補的RNA分子としてか、2つの相補的部位があるひとつのRNA分子として発現されうる。
発現したいsiRNA分子のコード配列を受け入れ可能なウイルスベクターであれば、例えばアデノウイルス(AV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス)、ヘルペスウイルス等なども使用可能である。ウイルスベクターの指向性も、他のウイルス由来のエンベロープ蛋白や他の細胞表面抗原でベクターをシュードタイピングすることで修正可能である。例えば、本発明のAAV ベクターは、水疱性口炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラ等由来の細胞表面蛋白でシュードタイピングされうる。
本発明の使用に適する選りすぐった組み換えウイルスベクター、siRNAを発現する核酸の配列をベクター内に挿入すつ方法、目的の細胞にウイルベクターを導入する方法は、当業者が備えている技能の範囲内である。次の例が参照になる。Dornburg R (1995), Gene Therap. 2: 301-310; Eglitis MA (1988), Biotechniques 6: 608-614; Miller AD (1990), Hum Gene Tlierap. 1: 5-14; and Anderson WF (1998), Nature 392: 25-30。これら全ての開示は本明細書に参照として組み込まれる。
更に、本発明の実施態様では、CCT-eta mRNAとα-SMA mRNAの両者を標的にして効果的な量のsiRNAカクテルを投与することを含む創傷の瘢痕化を抑える方法についても企図している。
幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与することにより、創傷のヒドロキシプロリン含量は減少しうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与することにより、創傷のα-SMA蛋白含量は減少しうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与することにより、創傷のα-SMA mRNA含量は減少しうる。
幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与することにより、創傷のコラーゲン含量は減少しうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与することにより創傷のコラーゲン含量は標準に戻りうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与するとコラーゲン含量が、無傷の皮膚に比べ、約60%から約120%、約60%から約100%、約60%から約90%、約60%から約 80%、約70%から約120%、約70%から約100%、約70%から約90%、約70%から約80%、 約80%、約90%、約100%へとこれらの何れかにまでに減少しうる。
幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与すると、創傷の引張強度が増加しうる。幾つかの実施態様では、CCT-eta mRNAを標的にしたsiRNAを投与すると、処置していない創傷に比較して引張強度の再蓄積が増加しうる。幾つかの実施態様では、無傷である皮膚の引張強度の約30%から約100%を創傷が再蓄積しうる。幾つかの実施態様では、無傷である皮膚の引張強度の約30% から約95%、約30%から約90%、約30%から約85%、約30%から約80%、約30%から約75%、約30% から約70%、 約30%から約65%、約30%から約60%、約30%から約55%、約30%から約50%、約30%から約45%、これらの何れかを創傷が再蓄積しうる。
幾つかの実施態様では、α-SMA mRNAを標的にしたsiRNAを投与すると、創傷の引張強度が増加しうる。幾つかの実施態様では、α-SMA mRNAを標的にしたsiRNAを投与すると、処置していない創傷に比較して引張強度の再蓄積が増加しうる。幾つかの実施態様では、創傷は無傷の皮膚の引張強度の約30%から約100%を再蓄積しうる。幾つかの実施態様では、創傷は無傷の皮膚の引張強度の約30% から約 95%、 約30%から約90%、 約30%から約85%、 約30%から約80%、 約30%から約75%、 約30%から約70%、 約30%から約65%、 約30%から約60%、 約30% から約55%、 約30%から約50%、約30% から約45%、何れかを再蓄積しうる。
本開示の特定の実施態様は、これらに限定することないが、デュピュイトラン拘縮、ペイロニー病、肺線維症、肝硬変、間質性肺疾患、瘢痕性脱毛症のような瘢痕化または線維症の特徴である疾患の、CCT-etaを阻害する薬剤とα-SMAを阻害する薬剤から選択した治療用分子薬剤の効果的な量を対象者に投与することを含む治療方法を対象としている。幾つかの実施態様では、治療用分子薬剤は、CCT-eta mRNAの発現と作用を阻害する薬剤、CCT-eta蛋白を抑制する薬剤、α-SMA mRNAの発現と作用を阻害する薬剤、α-SMA蛋白を抑制する薬剤を含みうる。本開示の特定の実施態様は、デュピュイトラン拘縮の治療と予防に関与している。本開示の特定の実施態様は、ペイロニー病の治療と予防に関与している。
本開示の実施態様は、CCT-etaまたはα-SMAのmRNA鎖からの蛋白への翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞内で転写されたmRNA鎖に相補的である一本鎖RNAまたはDNAである。アンチセンスRNA/DNAは、それと相補的なmRNAの翻訳を阻害するために細胞に導入されるが、それは相補的mRNAと塩基対を形成し、物理的に翻訳装置を妨害することができるのである。幾つかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID Nos. 7, 8, 11, 12, 13, 14, 21, 22、各々またはそれらの組み合わせから選択された標的のmRNAに相補的なものでありうる。
本開示の実施態様は、そのようなアンチセンスヌクレオチドと薬学的に許容できる担体を含む製薬学的組成物同様、本件で開示したアンチセンスヌクレオチドをコードする組み換えプラスミドまたはウイルスベクターのような核酸分子の効果量を対象者に投与することを含む瘢痕化を減少させる方法も提供する。
本発明の実施態様は、更に、CCT-eta mRNA (SEQ ID Nos. 7、11-14) と α-SMA mRNA (SEQ ID Nos. 8、21-22)を標的にするアンチセンスヌクレオチドカクテルの効果量を対象者に投与することを含む、創傷の瘢痕化を治療または予防する方法も企図するものである。
本開示の実施態様は、CCT-etaまたはα-SMA をコードしているRNAを分解するリボザイムの治療的に効果のあるその量を患者に投与するステップを含む、瘢痕化を治療または予防する方法を提供する。「リボザイム」とは特定の核酸配列を分断することができる核酸分子のことである。リボザイムはRNA、DNA、核酸類似体(例えば、ホスホロチオエート)またはこれらのあらゆる組み合わせ(例えば、DNA/RNAキメラ)から成りうる。特に好ましい実施態様の中では、リボザイムは特定の認識のためのアンチセンス配列とRNA分解酵素活性を有するRNA分子と理解されるべきである。リボザイムは塩基対相互作用により基質のRNAに結合し、結合した標的RNAを開裂し、開裂産物をリリースし、そしてリサイクルされこの過程を複数回繰り返す。
特定の実施態様では、リボザイムをコードしている核酸分子を提供する。幾つかの実施態様では、その核酸分子には、プラスミド、ウイルス、レトロトランスポゾン、コスミド、アデノウイルスまたはレトロウイルスなどから選択されたベクターを含みうる。
実施態様では、siRNAの投与は、siRNAそのものを送達試薬と混ぜて投与することも、またはsiRNAを発現する組み換えプラスミドかウイルスベクターとしての投与も可能である。
特定の実施態様では、CCT-etaとα-SMAの核酸配列は、siRNAをデザインする、または目標の配列を整然と「walk down」するアンチセンスヌクレオチドをデザインするために使用されうる。本開示ではすべてのその可能な配列を特にリストしないが、それらはすべてこの発明の範囲に入る。この発明でのそのようなsiRNAとアンチセンスヌクレオチドを調製する方法は、当業者が備えている技能の範囲内である。
今回のsiRNAと共に投与するための適切な送達試薬には、Mirus Transit TKO親油性試薬、アテロコラーゲン、lipofectin、lipofectamine、cellfectin、またはポリ陽イオン(例えば、ポリリシン)、またはリポゾームがある。
リポゾームは、網膜や癌組織のような特定の組織へのsiRNAの導入を助け、siRNAの血中での半減期を長引かせることができる。本発明の使用目的にリポゾームは適しているが、それは標準的な小胞形成性脂質から形成されている。小胞形成性脂質とは、通常、中性または陰性に荷電したリン脂質とコレステロールのようなステロールを意味する。脂質の選択は、通常、望ましいリポゾームの大きさと血中でのその半減期のような因子を考慮することにより決められる。例えば、Szokaらによって記述されているように、リポゾームを調製する多種の方法が知られている。Szoka et al. (1980), Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467、U.S. Pat. Nos. 4,235,871, 4,501,728, 4,837,028、5,019,369。これらは全ての開示は本明細書に参照として組み込まれている。
特に好ましくは、単核マクロファージと細網内皮系によってクリアランスされることを避けるために、本siRNAを包み込んでいるリポゾームを、例えば、その構造表面にオプソニン化阻害部位を結合させることによって修飾する。1つの実施態様では、本発明のリポゾームにはオプソニン化化阻害部位とリガンド両方を含みうる。
幾つかの実施態様では、送達試薬にはアテロコラーゲンを含みうる。アテロコラーゲンは、高純度の子牛真皮コラーゲンをペプシン消化させたもので、幾つかのヒトへの臨床的応用(主に美容)をも含む広範囲の応用において安全なものである。
幾つかの実施態様では、送達試薬は、アガロースマトリックスに埋め込まれたsiRNA-lipofectamine ナノ粒子複合体を含む、ゲルベースの調製剤でありうる。
幾つかの実施態様では、送達試薬は、リン酸カルシウムをベースにしたナノ粒子である。リン酸カルシウムをベースにしたナノ粒子はゲル/軟膏混合液で調製されうる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ゲル/軟膏混合液は分子薬剤(siRNAのような)のウイルスベクターを使わない創面環境への送達法として理想的であると考えられている。
siRNAを発現する組み換えプラスミドについては上述した。幾つかの実施態様では、そのような組み換えプラスミドを直接、または適当な送達試薬と共に投与できる。送達試薬には、Mirus Transit LT1 lipophilic reagent、lipofectin、lipofectamine、cellfectin、ポリ陽イオン(例えば、ポリリシン)、またはリポゾームがある。siRNAを発現する組み換えウイルスベクターについても上述したが、そのようなベクターを患者の線維症や創傷修復の部位に送達する方法については、当業者が備えている技能の範囲内である。
分子薬剤は、線維症や創傷修復の部位またはその近辺の組織の細胞に分子薬剤を導入する適切な方法で、対象者に投与されうる。例えば、ジーンガン、エレクトロポレーション、或いは他の適切な非経口または局所または腸内投与法により分子薬剤が投与される。特定の実施態様では、線維症や創傷修復の部位またはその近辺に、分子薬剤は注射または局所投与により与えられる。別の実施態様では、分子薬剤は静脈注射でに投与される。
本発明の分子薬剤と適当な担体を含めた医薬製剤とは、本発明の分子薬剤の効果量を含む、タブレット、カプセル、カシェ剤、ペレット、錠剤、粉末や顆粒、これらに限定しないがこれらを含む固形製剤、そして、溶液、懸濁液、乳剤、乾燥粉末、これらに限定しないがこれらを含む非経口製剤でありうる。
幾つかの実施態様では、分子薬剤は局所投与されうる。幾つかの実施態様では、局所剤には、これらに限定しないが、溶液、粉末、液体エマルジョン、液体懸濁液、半固形、軟膏、外用製剤、クリーム、ゲル、ゼリー、および発泡体を含んでいる。幾つかの実施態様では、分子薬剤は、製薬上許容できる希釈剤、賦形剤、崩壊錠、吸着薬、潤滑油、界面活性剤、疎水性溶媒、水溶性溶媒、乳化剤、緩衝液、保水剤、保湿剤、可溶剤、防腐剤等で調剤されている。投与の手段と方法については当分野で既知のもので、当業者はガイダンスとして多種の薬理学文献を参照できる。例えば、Modern Pharmaceutics, Banker & Rhodes, Marcel Dekker, Inc. (1979); およびGoodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 6th Edition, MacMillan Publishing Co., New York (1980)で調べられる。
分子薬剤は、単回投与または複数投与できる。分子試薬の投与が注入による場合、注入は1回量まとめての注入または複数注入でありうる。薬剤を注射する場合は、直接、線維症や創傷修復組織の部位や近傍に行うか、または全身注射を行うことができる。線維症や創傷修復組織の部位や近傍にまたは全身への薬剤の複数注入も行われる。
当業者にとっては、分子薬剤を対象者に投与する適切な投薬計画は容易に決定できる。例えば、線維症や創傷修復組織の部位や近傍に、1回の注射または沈着のような方法で分子薬剤を対象者に1度で投与する方法がある。別法として、分子薬剤を対象者に1日にまたは1週間に複数回投薬する法がある。投薬計画が複数回投薬である場合、対象者に投与すべき分子薬剤の効果量とは、全投薬計画に渡って投与する分子薬剤の全量のことであると理解される。
特定の実施態様では、分子薬剤は当分野で既知の技術に従って、対象者に投与する前に製薬学的組成物として製剤されうる。本明細書中で使用されている場合、「医薬製剤」とはヒトと獣医用の製剤を含む。本発明の薬学的組成物の調製法は、当業者が備えている技能の範囲内で、例えばRemington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985)に記述されている。これら全ての開示は本明細書に参照として組み込まれている。
本開示の分子薬剤は、それらが活性を維持できる方法による既存のやり方で投与されうる。投薬は全身または局所または経口でありうる。例えば、これらには限定しないが、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔、経皮、経口、バッカル、眼などこれらの方法、膣内投与、吸入、デポ注射、インプラントによる方法で投薬されうる。従って、本開示の分子薬剤の投与方法(単独または他の製薬との組み合わせのいずれか)には、これらには限定しないが、舌下投与、または注射が可能であり(皮下または筋肉に注射された短時間作用、デポ、インプラント、ペレット型を含む)、または膣クリーム、座薬、ペッサリー、膣リング、直腸座薬、子宮内器具、パッチやクリームなどの経皮吸収フォーム等の使用がある。
投与の特殊な方法と投与計画の選択については、最適な臨床結果に達するために、臨床家にとって既知の方法に沿って臨床家によって調整され量を決められるべきである。分子薬剤の投与量は治療上効果のある量のことである。投薬量は、処置を受ける対象者の特徴、例えば、特殊な対象者、年齢、体重、健康、もしあれば現在受けている治療のタイプ、その頻繁度などに依存し、当業者(例えば、臨床家)により容易に決定されうる。
本開示の分子薬剤と、適切な担体を含む医薬製剤には、本開示の有効量のポリマーまたははコポリマーを含む、これらには限定しないが、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、錠剤、粉末、顆粒を含む固形製剤、これらには限定しないが、溶液、粉末、液体エマルジョン、液体懸濁液、半固形、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル、ゼリーや発泡剤を含む局所投薬剤、およびこれらには限定しないが、溶液、懸濁液、乳液、乾燥粉末を含む非経口投薬剤でありうる。当分野では既知であるが、有効成分は、製薬的に許容できる希釈剤、充填剤、膨潤、吸着薬、潤滑油、界面活性剤、疎水性溶媒、水溶性溶媒、乳化剤、バッファー、保湿剤(ヒューメクタント)、保湿剤(モイスチャライザー)、可溶化剤、防腐剤などの調剤と調製される。その投薬の手段と方法については当分野で既知のもので、当業者はガイダンスとして多種の薬理学文献を参照できる。例としてModem Pharmaceutics, Banker & Rhodes, Marcel Dekker, Inc. (1979); およびGoodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 6th Edition, MacMillan Publishing Co., New York (1980)で調べられる。
固形構成物には、従来の無毒性の担体が使える。例えば、マンニトール、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等がある。
本開示の分子薬剤は、注射による非経口投与のためにも調製できる。例えば、ボーラス注射または連続点滴がある。適切な非経口投与法には、血管内投与 (例えば静脈内ボーラス投与、点滴静注、動脈内ボーラス投与、動脈内注入、血管カテーテル注入)、末梢と内部組織への投与、皮下注入(浸透圧ポンプなどによって)を含む皮下注射または沈着、線維症、創傷修理中の部位または近傍への直接(例えば局所)投与、そして吸入がある。
注射用の製剤は、例えば、アンプルまたは防腐剤添加された複数回用の容器でなど、単位投与剤形で提示されうる。その組成物は、油性や水溶性溶媒での懸濁液または溶液またはエマルジョンのような形態を取ることができ、そして、懸濁剤、安定化剤、分散剤のような製剤化剤を含むうる。
経口投与には、それら化合物は、当分野でよく知られている薬学的に受容可能なこれらの化合物と混ぜ合わせることで容易に調製できる。このような担体で、本発明の化合物をタブレット、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として治療対象の患者が経口摂取するために調製することができる。経口投与用の製剤は、固刑の添加物を加え、場合によっては混合物を研削し、もしタブレットや糖剤コアをにするのを望むなら適当な補助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工するすることにより調製される。適切な添加物には、これらには限定しないが、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールを含む糖類、これらには限定しないが、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、タラカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調剤などの、これらには限定しないが充填剤を含む。必要に応じて、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのような塩などの崩壊剤を加えることができる。
糖剤コアは、それに適したコーティングにより調製されうる。この目的では濃縮砂糖液を使うことができるが、これは任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液と適切な有機溶媒または溶媒混合系等を含みうる。活性化合物量の認識や異なる化合を特徴付ける目的でタブレットや糖剤コーティングに、染料や顔料を添加してもよい。
経口で使用可能な製剤としては、これらには限定しないが、ゼラチンで製造されたプッシュフィットカプセル、同様にゼラチンと、グリセロールやソルビトールなどの可塑剤から製造された軟質の密封カプセルなどが挙げられる。プッシュフィットカプセルには、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、並びに場合により安定化剤のこれらの混合物に活性成分を添加したものを含みうる。軟質のカプセルでは、活性化合物は、脂肪油、パラフィン液、ポリエチレングリコール液のような適当な液体に溶解または懸濁される。加えて、安定化剤を添加することも可能である。経口投与目的の製剤すべては、そのような投与法に最適な服用量を使用すべきである。
口腔内投与には、組成物は、例えば、既存の方法で調製された錠剤やトローチの形に調製できる。
吸引による投与には、本開示に従って使用する化合物は、それに適している噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロ メタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化物やその他適当なガスなどを使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形で都合よく投与される。エアロゾル加圧の場合は、一定量を導入するバルブを供給することで投与単位を決定できる。吸入器または散布器での使用目的で、ゼラチンのようなカプセルとカートリッジは、化合物のパウダーミックスと乳糖やデンプンなどの適切なパウダーを添加して調製できる。
本開示の化合物は、例えばココアバターや他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む坐薬または停留浣腸のような直腸剤に調製することもできる。
前述した調製に加えて、本開示の化合物はデポ製剤としても調剤できる。そのような長時間作用する製剤はインプラント(例えば、皮下にまたは筋肉内に)または筋肉注射で投与できる。
デポ注入では約1ヶ月から約6ヵ月またはそれ以上の間隔で投与できる。このように、例えば化合物は、適当な高分子または疎水性材料(例えば、許容できる油中でのエマルション)やイオン交換樹脂と、または難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として、調製されうる。
経皮投与においては、本開示の化合物は、例えばプラスターに塗ることもできるし、または経皮吸収治療システムに適用し結果的に組織に供給するすこができる。
分子薬剤の製薬学的組成物には適当な固体やゲル状担体または賦形剤も含む。そのような担体または賦形剤の例には、これらには限定しないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、例えばポリエチレングリコールのようなポリマー等がある。
本開示の分子薬剤は、他の活性成分との組み合わせで投与できる。例えば、それはアジュバント、蛋白分解酵素阻害剤または他の薬や化合物で、そのような組み合わせは本明細書で記載されている方法が目的としている効果を成し遂げるために望ましくまたは好都合であると考えられる。
今回の発明と実施態様が提示している使用される方法とマテリアルは、以下に示す非限定的実施例への参照でさらに理解されうる。
実施例1
妊娠20-21日目のニュージーランド白ウサギに全身麻酔下で正中線開腹手術を行った。子宮角を誘導し、限定子宮摘出が行われ、選択した胎児に1cmの直線的な全層背部の外皮切開創を形成した。動物一匹あたり2から3匹以上の胎児には行わなかった。次に、羊水を温めた食塩水またはPlasmalyte溶液で置換し、子宮摘出部位は縫合閉塞され、開腹切開は閉じられた。成体ウサギの毛が剃られ露出された背側には、皮下組織が傷つかないように留意して2 cmの全層切開創が左右に作られた。創傷治癒が妨げられないように、これら成体ウサギの切開創をOpsiteドレッシングで覆った。12時間後、手術されたウサギを再び麻酔し、創傷部位付近の組織の0.5-1 mmゾーンを取り集めた(FW)。同様に、対照の同腹きょうだいからの無傷の胎児の皮膚(FC)も収集した。創傷のある成体ラビットの皮膚組織および対照の成体ラビットの皮膚組織も収集され、瞬時にRNAlater(登録商標) (Ambion、Austin, TX)に保存された。
長い時間経過で成体の創傷治癒をモニターするために、創傷がある妊娠していない成体ウサギのみを定期的に犠牲にし、創傷組織と対照組織をある間隔で、怪我後28日まで追跡した。胎児と成体の各創傷組織と対照組織から抽出した総RNAの質と量を決定するために、OD260/OD280比をND-1000 スペクトロフォトメーター(Nanodrop Technologies, Inc.、Wilmington, DE)で測定し、Agilent 2100 BioAnalyzer (Agilent Technologies Inc.、Palo Alto, CA)でキャピラリー電気泳動を行った。
ラビットCCT-etaの全cDNAは、完全長のクローニングとシークエンシングによって構築され、その後全cDNAの長さにわたるエンドシークエンスプライマーを使って実験的に確かめた。FC、FW、成体対照(AC)、成体創傷(AW) の各組織より抽出した総RNAは、CCT-etaとα-SMAのmRNA発現の相対量を決定するために、定量的比較RT-PCRアッセイで求めた。comparative critical cycle(Ct)法を使用し、内部コントロールとしてGADPHを使い、目的の遺伝子産物の発現量を正規化し相対量を計算した。データは、Applied Biosystemsが提供している7900 HT SDSソフトウェア バージョン2.1によって解析した。
蛋白はThermo Fisher Scientific (Rockford, IL)から購入したTissue Protein Extraction Reagent(T-PER、組織用蛋白質抽出試薬)を使用して無傷の対照皮膚と創傷の成体皮膚から抽出した。蛋白濃度はBradfordアッセイにより測定した。蛋白抽出液の各同量をSDS-PAGE で分離し、WhatmanTM Protran pure nitrocellulose immobilization膜に転移した。膜をCCT-eta、α-SMAに特異的な抗体で反応させ、HRPで標識された2次抗体を結合させ、ウエスタンブロッテングでシグナルを検出した。蛋白質の各同量をロードしたかを確認するためにGADPHに対してもイムノブロットをした。バンドの強さはAlpha Innotech Corporation(San Leandro, CA)から購入したAlphaImagerを使用し測定した。
結果(図1): CCT-eta mRNA (SEQ ID No. 7)は胎児創傷で減少し、実のところ成体の創傷で上昇している。CCT-eta mRNAは成体の創傷治癒で持続的に上昇している。CCT-eta蛋白(SEQ ID No. 9)は成体の創傷で上昇している。α-SMA mRNA(SEQ ID No. 8)と蛋白 (SEQ ID No. 10)は成体の創傷で有意的に増加している。
実施例2
創傷治癒と瘢痕形成に必須の性質である線維芽細胞の運動能や収縮性における、CCT-eta(SEQ ID No. 9)の役割について検討した。CCT-eta(CCT-betaではない)は、成体の線維芽細胞に比べ胎児の線維芽細胞に低く発現していることを見出した。in vitroでの創傷治癒アッセイにより、上皮成長因子(EGF)と血小板由来成長因子(EGF)刺激に応答して細胞遊走が増加が示された。一方、胎児の線維芽細胞は無応答であった。
低分子干渉RNA(siRNA)(SEQ. ID Nos. 1と2)による成体線維芽細胞でのCCT-etaのダウンレギュレーションは、ベーサル(basal)と成長因子刺激両者において細胞の運動能を低めた。対照的にCCT-beta(SEQ ID Nos. 23と24)に対するsiRNAではそのような効果はなかった。
成体線維芽細胞は、細胞引張力顕微鏡(cellular traction force microscopy)によって胎児の線維芽細胞より本質的に収縮性があると観察された。この収縮性はEGF、PDGFと反応して増加した。CCT-eta siRNA(SEQ. ID Nos. 1と2)は、PDGFで誘導される成体線維芽細胞の収縮性を阻害した。一方、CCT-beta siRNA (SEQ ID Nos. 23と24)にはそのような効果はなかった。
両例の各々において、CCT-etaをダウンレギュレーションすることは成体線維芽細胞の挙動をより胎児線維芽細胞の特徴に近づくように調節するということであった。
次に、成体の創傷治癒にその重要な役目が知られている遺伝子産物である、α-平滑筋アクチン(α-SMA)の発現に対する、CCT-etaの効果を検討した。胎児線維芽細胞は成体細胞より少なくα-SMA(SEQ ID No. 10)を発現していることを観察した。siRNAによるCCT-etaの減少により、細胞内β-アクチンはほとんど影響されなかったが、α-SMAはかなり減少した。対照的に、CCT-betaの減少ではアクチンの異性体両者にはわずかしか影響しなかった。siRNAでα-SMAを直接的に阻害すると、ベーサルの線維芽細胞の収縮性も成長因子に誘導される線維芽細胞の収縮性も減少した。
これらの結果は、CCT-etaが線維芽細胞の運動性と収縮性の特異的調節因子であり、α-SMA発現の特異的調節によって瘢痕なしの創傷治癒の表現型を可能にする重要な因子であると示している。
実施例3
方法:損傷8日後、治癒過程の成体ウサギの創傷を切り取り、薄片化しCCT-eta-特異的アンチセンスプローブでのin situハイブリダイゼーションアッセイプロトコールに適用した。
結果(図2):CCT-etaの上昇は明らかに局所創傷に応答したもので、全身的なものであると一般化されない。角化細胞の移動先端、浸潤性線維芽細胞を含む多種の細胞集団、そして近隣にある皮筋層の筋細胞でさえ、CCT-etaメッセンジャー発現の十分な増加を示した。
実施例4
目的:この研究の目的は、CCT-etaがメッセンジャー量だけではなく、蛋白量においても増加することを確認することである。
方法:成体ニュージーランド白ウサギの背側に切開創傷を作り、密封包帯でカバーした。創傷は1ヵ月間まで治癒させ、幾つかの試料を分析のために再び切除した。
結果:集めた創傷治癒の免疫組織化学によって、in situ実験で観察されたように、CCT-eta発現は損傷に接しているすぐ側の細胞集団で劇的に増加した(図3)。それらには、上皮(角化細胞)の移動先端、浸潤性線維芽細胞、損傷した皮筋層の下部にある筋組織を含む。対照としてCCT-beta サブユニット(参照表1参照、SEQ ID Nos. 23と24)を調べたがin situまたは免疫組織化学でもそのような増加は見られなかった。
実施例5
目的:ウサギCCT-eta発現を抑えるように設計されたウサギsiRNAコンストラクトが、従来のリポゾーム媒介の分子トランスフェクション法により、その結果瘢痕形成を抑制できるかどうかを検討することである。
方法:CCT-etaに対する化学合成ウサギsiRNA(SEQ. ID No. 1と2)5 μgと、線状ポリエチレンイミンであるjetPEI試薬との複合体をin vivoで作成した。N/P比(複合体のイオンバランス値)は8に設定され、必要量の0.8 μlのjetPEI試薬を、上記のsiRNAと混合し10 %グルコースで5 μlに希釈し、室温で15分間インキュベートした(製造元のインストラクションに従って)。注入の準備ができた時、この複合体をさらに生理食塩液で200 μlに希釈し、成体ニュージーランド白ウサギに作られた背面の切開創傷に皮内注射した。全体の創傷の形態と見た目は28日間観察し、その時点でウサギを犠牲にし創傷を除去し顕微鏡像で組織を検査した。
結果(図4A、4B):jetPEI 試薬/ siRNA複合体はうまく許容され、不都合な炎症反応や壊死を引き起こすことなく、創傷治療に付随する有害な影響を示す証拠もなかった。しかし、肉眼や、顕微鏡像では使用したsiRNAの濃度では瘢痕形成に対する効果は少ないものであった。
実施例6
導入可能なナノ粒子は、アテロコラーゲンとsiRNAを4℃で混合して得られた複合体から形成された。アテロコラーゲンの最終濃度は0.05%から1.75%.の間である。
興味深いことに、4℃ではアテロコラーゲンは液状で、しかし37℃ではゼラチンのようなもっと粘度のあるものである。従って、それらナノ粒子はゲル状で局所的に投与が可能である(注射も可能である)。
方法:ウサギCCT-eta siRNA (SEQ ID Nos. 1、2)とアテロコラーゲンとのナノ粒子複合体は、本動物モデルにおいての瘢痕抑制薬剤として評価された。5 μMのウサギsiRNA溶液は局所的に使われた。また、全層の背面切開創傷にも皮内注射された。400 μl の10 μM CCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)は400 μl のアテロコラーゲン(Atelogene、日本)と混合した。その溶液は4℃で20分間混合し、できた混合液の100 μlを創傷の縁の部位に局所的に塗布、あるいは直接注射するかのどちらかで行った。活性のあるウサギCCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)に加え、スクランブルコントロールウサギ siRNA (SEQ ID Nos. 3、4)も使用した(表1)。
動物は、創傷/瘢痕が再び切除されCCT-eta発現を分析される前に、再び28日間の治癒期間与えられた。
結果(図5):アテロコラーゲン単独またはsiRNAとの複合体どちらも、それに起因する治癒の悪化はなく異常な組織応答を引き出すことなく、外皮組織によく取り込まれた(図5A)。瘢痕形成は、siRNAのこの量ではすべてのテストした条件で同じように起こるようであった。つまり、CCT-eta 発現は28日間で有意的な差があるようには観察されなかった(図5B)。
実施例6
2 μlのlipofectamineと2.5 μlのウサギCCT-eta siRNA(SEQ ID No. 1、2)を100 μlのOptiMEMと混合した(最終濃度が50 pMに相当)。20分間室温でインキュベーションした後(ナノ粒子が構築されるように)、最終生成物のウサギsiRNA/lipofectamine混合物は1%のアガロースストック溶液と混合し0.3%のアガローストランスフェクション溶液を得た。そのゲル状の混合物を注意深く混ぜた後、その混合物は、ニュージーランド白ウサギに作成した2 cmの全層背面切開創傷に局所的に塗布した。創傷は28日間の治癒期間を与えられ、その間に選んだ創傷/動物から定期的にサンプルを取得した。集めたサンプルはqRT-PCRとウェスタンブロットでCCT-eta発現の減少を分析した。
結果(図6):qRT-PCRによりCCT-etaのメッセージが投与後2週間目で30%までに減少していることを示された(図6B)。投与後21日目(図6C)で、治療された対照群のCCT-eta量はベースラインにまでに戻っていた。それは28日目(図6D)でも維持していた。ウェスタンブロットでのCCT-eta蛋白の定量結果も本質的に同様であった。
実施例7
CCT-eta(SEQ ID Nos. 1、2)に対するウサギsiRNA配列を使用し、それに対応するマウスCCT-etaからの配列を使って、CCT-etaを標的にするヘアピンRNAをエンコードするDNAインサートを、Ambion siRNA Converter programによって設計した。このプログラムは、制限サイトクローニング配列に隣接するヘアピン/ループ配列を含む2つのDNA配列(表2、SEQ ID Nos. 25-28を参照)を作り出した。これらの配列を含む2つのオリゴヌクレオチドは、IDT から供給された。標準的なプロトコール(製造元の推奨に従って)に追従して、オリゴは2重鎖にし、BamHI/HindIIIを使用してpRNA-CMV3.1-Neo内にクローンした。ライゲーションされたプラスミドをOneShot/TOP10細胞(Invitrogen)にトランスフォームした。そしてシークエンスとトランスフェクションのためのプラスミドDNAを調製するために、各クローンを調製した。ヘアピンコンストラクトをシークエンスするのは困難な可能性があり、そして、その障害のある2重鎖トポロジーのため、度々不完全なシークエンスを得る結果になる。しかしながら、回収されたプラスミドのうちシークエンスの最後までクローンされた配列を含むものは読むことができた(ライゲートされたオリゴの約半分まで行った)。このプラスミドはpRNA-mEta 1203siRNAという(図7)。
pRNA-CMV3.1対照プラスミドは次のDNA配列を含む。5'-GGATCCTCGCTTACCGATTCAGAATGGTTGATATCCGCCATTCTGAATCGGTA
AGCGACGAAGCTT-3'(SEQ ID No. 29)である。これはルシフェラーゼ(luciferase)の発現をノックダウンするsiRNAをコードしている。これは、標準的なプロトコールとLipofectamine 2000(Invitrogen)を使って、pRNA-mEta 1203siRNAと共にNIH3T3線維芽細胞に対照としてトランスフェクトされた。48時間後、細胞を植え継ぎ、1 μg / mLのG418存在下で細胞を3週間培養して安定した系を樹立した。3週間後、細胞を植え継ぎ、約1 X 106 の細胞を6-ウェルプレートに蒔いた。24時間後、細胞をPBSで1度洗い、m-PER試薬(Pierce)を使って5分間細胞をプレート上で溶解させ、遠心した。これらは製造元のプロトコールに従った。可溶画分は氷上に移され、1部分をSDS-PAGEサンプルバッファーで希釈し4-20%のグラヂエントがあるSDS-PAGEゲル(できあいの製品、Bio-Rad)で分離した。試料はPVDF膜 (Millipore ImmobilonP)に転写され、1時間室温でTBST + 5% Blockで膜をブロックした。そのブロットを洗浄しネズミ抗-Eta抗体(Serotek、1:500)で4℃で一晩インキュベートした。洗浄しヤギ抗ラット抗体(Biosource、1:5,000)で室温で1時間インキュベートした。ブロットはAmersham ECL 試薬で現像した。試料をロードする時の回収率を知るために、 検出後ブロットをマウス抗-GAPDH抗体(ABCAM、1:5,000)でTBST中で室温、1時間インキュベートし、洗浄、そしてヤギ抗-Mouse抗体(Amersham、1:5,000)とTBST中で室温、1時間インキュベートし、Amersham ECL試薬で現像した。
結果(図8):CCT-eta蛋白(SEQ ED No. 9)は対照細胞で容易に検出可能であるが、pRNA-mEta 1203 siRNAを持つ細胞では劇的に減少している(ほとんど検出不可能な程度まで)。GAPDHはロード用対照として使われているが両細胞タイプとも同様の結果である。これらのデータはpRNA-mEta 1203siRNAが効果的にCCT-etaメッセージと蛋白を抑えることが可能と示している。
実施例8
成体ウサギ線維芽細胞は10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640で培養した。CCT-eta(SEQ ED Nos. 1、2)とCCT-beta(SEQ ID Nos. 23、24)に対するウサギsiRNAのトランスフェクションはLipofectamine 2000を使った製造元のプロトコールに従って行った。簡単に説明すると、7.5 μlの20 μM siRNAを200 μlのOpti-MEMと混合した。4μl のLipofectamine 2000を200 μl のOpti-MEMで希釈し室温で5分間インキュベートした。インキュベーション後、上述Lipofectamine 2000希釈液をウサギsiRNA希釈液と混ぜ合わせ、そしてさらに20分間インキュベートした(CCTサブユニットとα-SMA両者を標的にしているsiRNA配列の濃度は150 pMになる)。総量400 μlであるsiRNA-Lipofectamine 2000複合体を、6 ウェルプレート上で約90 %コンフルエンスまでで培養された成体ウサギ線維芽細胞の各ウェルに添加した。37℃で24時間インキュベーション後、細胞を通常の培養液(0.1%透析FBS、抗生物質を含むRPMI 1640培養液)に移し変え、そして48時間放置した。48時間通常の培養液でのインキュベーション後、細胞をin vitroスクラッチ創傷プロトコールに適応した。その後48時間で細胞集団をEGF(1 nM)/ PDGF(200 nM)または対照という条件で刺激した。このように、細胞の運動性をアッセイしている間はこれらの成長因子を継続して共存させた(あるいは対照、つまり無処置)。この最後の時点で、細胞は集められ総RNAと蛋白が分離された。
適切な標的CCTサブユニットmRNAが減少しているかを確認するために、定量的な逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を行った(データは示さない)。総細胞内蛋白は、ウエスタンブロットで、CCT-eta、CCT-beta、α-SMA、beta-アクチン、ロードコントロールとしてGAPDHの蓄積を調べた。
結果(図9、14):CCT-etaとCCT-betaに対するsiRNAはそれらの標的蛋白を効率的に減少させた。ベータアクチン量はどちらのCCTアイソフォームの減少にも影響されなかった。しかし、明らかにCCT-eta siRNAを投与した時α-SMA量は劇的に減少したが、CCT-beta siRNAの使用では本質的には変化がなかった。CCT-etaの減少は、創傷治癒中に細胞集団の上に拡大された線維芽細胞の細胞骨格の性質を細胞レベルで変化させる可能性があり、従って同様に組織の収縮性を変化させることを可能にする。
CCT-etaに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 1、2)は成体線維芽細胞のベースの運動性とEGFに誘導される運動性を減少させ(図14A)、一方対照のスクランブルsiRNA (SEQ ID Nos. 3、4)にはいずれの効果もない。CCT-etaに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 1、2)は成体線維芽細胞のPDGFに誘導される収縮性を消失させ対照のスクランブルsiRNAにはそのような効果はなかった(図14B)。
実施例9
CCT-etaに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 1、2)から作成したsiRNA アガロース/siRNA製剤を、創傷が生じた時点、その7日後、さらに14日後に切開創/切除創に局所的に投与した。そして創傷が完全に閉鎖される過程を、典型的には4-5週間待った。そして多種の分子的、形態的そして他の分析のために、創傷を切除した。
結果:本プロトコールによって処置した創傷と無処置の創傷の間には、創傷閉鎖の速さに有為的な差はなかった。毒性が生じるまたは壊死の兆候は形態上の検査では見られなかった。
次に、対照皮膚、無処置の対照創傷、ウサギCCT-eta mRNAを標的にしたウサギsiRNA処置創傷をqRT-PCRで調べたところ、創傷は形成後4-5週間の時点でCCT-etaの持続的な上昇を引き起こし、この増加はsiRNA処置で優位的に抑えられるということを確証した。従って、siRNAの反復しての投与するというプロトコールは、CCT-eta発現を4-5週間抑制するという点で明らかに効果的であった(図10A)。
α-SMA RNAに対するsiRNA処置の有効性も検討した。α-SMA RNAの減少があった(図10B)。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、下流のα-SMA蛋白の阻害は(CCT-eta 蛋白の減少による)α-SMAの分解産物を形成する可能性がある。そのような産物がネガティブに転写を制御するというある証拠もある。
実施例10
目的:我々のウサギCCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)によって推定される線維芽細胞のin vivoでの生理的な変化が創傷のコラーゲン蓄積を減少させるかどうか検討することである。
方法:対照と処置された創傷の総コラーゲン量を測定する目的で、ヒドロキシプロリンアッセイを行った。コラーゲンの堆積が結局のところ瘢痕形成の最も重要な証明である。
結果(図11):ウサギCCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)で治癒中の創傷を処置すると創傷に堆積したコラーゲンの量が有為的に減少した。これらの結果はCCT-eta減少が線維芽細胞の生理に影響を及ぼす(そしてその故に創傷の生理にも)という機構を確立するものである。その瘢痕形成のサインとなる分子マーカーが、CCT-etaに対するウサギsiRNA(SEQ ID Nos. 1、2)によって抑えられることを示しており、創傷へのウサギsiRNAの断続的で適度な投与法はすべての創傷治癒のすべての炎症や増殖段階を通して創傷治癒応答を制御する効果があることを示している。
火傷では対照皮膚に比べα-SMA量はより多く、感染した火傷ではさらに多くなっている(図12A)。α-SMAと同様、火傷はコラーゲンメッセージ蓄積をかなり増加させ、感染したものではさらにかなり増加する(図12B)。火傷はコラーゲン蛋白を増加させ、感染したものではさらにコラーゲンを蓄積させ、それは瘢痕形成の増加と一致する(図12C)。
実施例11
胎児と成体線維芽細胞から抽出したRNAと蛋白についてはqRT PCR (図15Aと15B)、ウエスターンブロット(図15Cと15D)分析をそれぞれ行った。CCT-eta mRNA(SEQ ID No. 7)は、胎児線維芽細胞と比較した時成体線維芽細胞ではもっと豊富であった(15A)。CCT-betaメッセージは胎児と成体線維芽細胞の間には有意差のある差はなかった(15B)。数値は、2重で行った独立した実験の3回分の平均± SEMのことである。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。NS=有意差はない。胎児と成体線維芽細胞の蛋白同量をロードした結果、成体線維芽細胞は有意に増加したCCT-eta蛋白(15C)を発現していることを示した(15C)。対照的に、CCT- beta蛋白量は胎児と成体線維芽細胞の間で差はなかった(15D)。示したブロットは少なくとも3回行った異なる実験からの代表的なものである。
胎児と成体ウサギの皮膚から取得した初代培養の線維芽細胞をin vitro創傷治癒アッセイを使って運動性を調べた(図16)。細胞はEGFとPDGFの濃度を上げながら処置した。それらの値はベースラインの運動性を標準にしたもので、各濃度でのEGF- またはPDGF-に誘導される細胞運動性として示した。ベースラインの運動性は胎児と成体の線維芽細胞で基本的には同じであるが、成体線維芽細胞のみ成長因子刺激に応答した。これらの値は3重で行った独立した実験の6回分の平均 ± SEMのことである。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。
CCT-etaあるいはCCT-beta mRNA量をqRT-PCRで分析したところ、siRNAがトランスフェクトされた成体線維芽細胞でのベーサルの発現、EGFに誘導される発現の両者が効果的に阻害されると示された(図17)。CCT-etaに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 1、2)とCCT-betaに対するsiRNAは、線維芽細胞での両ベーサルとEGFに誘導される各標的mRNAと蛋白の発現を減少させる(図17A、17B)。結果はCCT-eta (SEQ ID No. 7)またはCCT-beta mRNAの測定を相対比率で表し(RQ)、対照のベースライン値(100%)のパーセンテージで計算した。数値は独立した実験の6回分の平均 ± SEMのことで、各々の実験は2重で行った。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。Ntx- トランスフェクションなし、EGF-EGF処置(1 nM)、siRNA-CCT-eta/CCT-beta siRNAで処置、Scr-対照スクランブルsiRNA処理(図17C、17D)。CCT-etaまたはCCT-beta抗体(1:500)を使ってのウエスタンブロットの結果は、siRNAを投与した時CCT-etaとCCT-beta蛋白量は効果的に減少すると示された。しかし、スクランブルsiRNAを投与した時は減少しない。GAPDHはロードのコントロールとして使われた。図17では、最大4回までの実験から、すべて類似しているが代表的なイムノブロットを各分析に示した。
in vitro創傷治癒アッセイにおいて、EGF(1 nM) +/- CCT-etaに対するsiRNA(図18A)、CCT-betaに対するsiRNA (図18B)の存在または非存在下で、細胞をインキュベートした。CCT-etaに対するsiRNAはEGFに誘導される線維芽細胞遊走を減少させ、一方CCT-betaに対するsiRNAは減少させない。すべての実験では、サブユニット特異的スクランブルsiRNA配列が対照として使われた。図18では細胞の運動能はEGFやsiRNAで処置しない時(100%)のベースライン運動能に対する相対的パーセンテージで表した。活性のあるCCT-etaに対するsiRNAはベースの運動能、EGFに誘導される運動能両者を抑えるが、CCT-betaに対するsiRNAとスクランブルコントロールは影響しない。図20では、値は独立した実験の6回分の平均 ± SEMのことで、各々の実験は3重で行った。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。
in vitro創傷治癒アッセイにおいて、PDGF (200 nM) +/- CCT-etaに対するsiRNA (SEQ ID Nos. 1 、2) (図19A)、CCT-betaに対するsiRNA (図19B) の存在または非存在下で、細胞をインキュベートした。CCT-etaに対するsiRNAはPDGFに誘導される線維芽細胞遊走を減少させ、一方CCT-betaに対するsiRNAは減少させない。すべての実験では、サブユニット特異的スクランブルsiRNA配列がコントロールとして使われた。図19では細胞の運動能はPDGFやsiRNAで処置しない時(100%)のベースライン遊走のパーセンテージで表した。EGFと同様にCCT-etaに対する活性のあるsiRNAは、ベースの運動能、PDGFに誘導される運動能両者を抑えるが、CCT-betaに対するsiRNAとスクランブルコントロールは影響しない。数値は独立した実験の6回分の平均 ± SEMのことで、各々の実験は3重で行った。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。
引張力顕微鏡(traction force microscopy)で調べると胎児の線維芽細胞は成体線維芽細胞より収縮性が少ない(図20A)。成体線維芽細胞は胎児の線維芽細胞より収縮性がある。図20Aでは、各バーは2回の独立した実験から細胞20以上の平均 ± SEMを示す。成体線維芽細胞をPDGFで処置すると観察される累積牽引力が増加する。EGF処置でも同様であるがより少ない増加であった(図20B)。図20Bでは、各バーは2回の独立した実験から細胞25以上の平均 ± SEMを示す。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。
pDSRed2-Clと共にCCT-eta siRNA (SEQ ID Nos. 1、2)(図21A)またはCCT-beta siRNA(図21B)をトランスフェクトされた成体線維芽細胞は、緑の蛍光物質上で赤色に蛍光する細胞のマイクロ変位フィールド(microdisplacement fields)として定量された。CCT-betaではなくCCT-etaに対するsiRNAは、PDGFに誘導される牽引力を成体線維芽細胞で抑える。各アッセイは各実験で定量した30以上の細胞を使って2回ずつ繰り返した。CCT-eta siRNAはPDGF処置(200 nM)で観察された細胞牽引力の増加を抑えたが、CCT-beta siRNAと対照のスクランブルは効果がなかった。数値は独立した実験の2回分の平均 ± SEMのことあり、統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。
胎児と成体の線維芽細胞から抽出したRNAと蛋白についてはqRT PCR (図22A)、ウエスタンブロット(図22B)分析をそれぞれ行った。mRNA量と蛋白量においてα-SMAは胎児線維芽細胞と比較して成体線維芽細胞では有意に増加したことを示した。α-SMA mRNA(SEQ ID No. 8)量は胎児線維芽細胞と比較して成体線維芽細胞により多く存在する(図22A)。数値は独立した実験の3回分の平均 ± SEMのことで、各々の実験は2重で行った。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。胎児と成体の線維芽細胞の蛋白を同量ロードした結果、成体線維芽細胞はα-SMA蛋白(SEQ ID No. 10)をより多く有意に発現していることが示された(図22B)。GAPDHはロードのコントロールとして使われた。
α-SMA mRNA量のqRT-PCR解析の結果、siRNAをトランスフェクトした成体線維芽細胞においてベーサル発現もEGFによる誘導も効果的な阻害が示された(図23A)。結果はα-SMA mRNAの測定値を相対比率で表し(RQ)、対照のベースライン値(100%)のパーセンテージとして計算した。数値は独立した実験6回分の平均 ± SEMで、各々の実験は2重で行った。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。Ntx- トランスフェクションなし、EGF-EGF処置(1 nM)、siRNA- α-SMA siRNA(SEQ ID Nos. 5、6)で処置、Ctr -非特異的siRNA処理。α-SMA抗体(1:500)を使用したウエスタンブロットの結果は、siRNAを投与した時α-SMA蛋白が効果的に減少し、非特異的siRNAの場合は減少しなかった(図23B)。GAPDHはロードのコントロールとして使われた。4つのブロットは類似しているが代表的なイムノブロットを各分析に示した。α-SMAに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 5、6)は、成体線維芽細胞において両ベーサルとEGFに誘導されるα-SMAのmRNAと蛋白量を特異的に減少させた。
in vitro創傷治癒アッセイにおいて、EGF(1 nM) +/- α-SMAに対するsiRNA の存在または非存在下で、細胞をインキュベートした(図24)。すべての実験において非特異的コントロールsiRNAを対照として使用した。細胞の運動能はEGFやsiRNAで処置しない時のベースライン運動能(100%)の相対的パーセンテージで表した。α-SMAに対する活性のあるsiRNAはベースの運動能、EGFに誘導される運動能両者を抑えるが、非特異的コントロールsiRNAは影響しない。数値は独立した実験の8回分の平均 ± SEMのことで、各々の実験は2重で行った。統計学的解析はStudent's t test(スチューデントのt検定)によって行った。α-SMAに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 5、6)は成体線維芽細胞においてベースとEGFに誘導される両細胞遊走を阻害した。
実施例12
ウサギモデルで創傷治癒を制御するために、ナノ粒子複合体として導入されたCCT-etaに対するsiRNA(SEQ ID Nos. 1、2)の有効性を検討した。皮膚損傷の動物モデルにおける瘢痕形成を抑えるという点でのナノ粒子に媒介されるsiRNAの導入について、その安全性と効果を検討した。別の目的は形態的、生化学的性質を調べることにより、創傷治癒におけるCCT-eta ダウンレギュレーションの影響を明らかにすることであった。
成体ウサギの背面に作った全層切開創傷を、アガロースマトリックス中のCCT-etaに対するsiRNA(SEQ ID No. 1 and 2)または対照(スクランブルsiRNA)(SEQ ID Nos. 3、4)で局所的に処置した。そして創傷が完全に閉鎖されるまで治癒を待った(瘢痕堆積を伴う)。典型的には約4週間以上であった。そして治癒した創傷部位を切除し生じた瘢痕形成を調べるために分析した。CCT-etaに対する活性のあるsiRNAを週に1度投与することで、CCT-etaとα-SMAのmRNA量と蛋白量を持続的に減少さることができるとスクランブルsiRNAとの比較で明らかになった。ヒドロキシプロリンアッセイによって、CCT-eta siRNAで処置した創傷は、無処置とスクランブルsiRNA処置した創傷と比較した時、総コラーゲン含量が少ないということが明らかになった。マッソン・トリクローム染色した創傷切片のMetamorph分析でも、処置した創傷の総コラーゲン含量が同様に減少していると示された。治癒した創傷の機械的強度を調べるためにテンシオメーターを使用した。驚くことに、CCT-eta siRNAで処置した創傷は、無処置とスクランブルsiRNA処置した創傷と比較すると、引張強度が増加していると現実に示された。これらのデータはCCT-etaに対するsiRNAが瘢痕形成を鎮静し創傷治癒を促進する効果的な薬剤であることを示唆している。
方法:成体ウサギの背側の毛を剃り、皮下組織が傷つかないように注意して2 cmの全層切開創を左右に6つ作った。
低融点アガロースでのCCT-eta siRNAの複合体形成:siRNAは、アガロースマトリックスに埋め込んだ調製済siRNA-lipofectamineナノ粒子複合体を使用してゲルベースの製剤によって治癒中の創傷に導入された。2.5 μlのlipofectamineと5.0 μlのCCT-eta siRNA(100 pmol)を100 μlのOptiMEM と混合した。20分間室温でインキュベーションした後(ナノ粒子が構築されるように)、最終生成物siRNA/lipofectamine混合物を、0.8%のアガローストランスフェクション溶液100 μlと混合した。ゲルベースの混合物100 μl(最終濃度: 0.4% アガロースに50 pM siRNA)を注意深く混ぜた後、成体ニュージーランド白ウサギの2 cmの全層背面切開創傷に投与した。動物を0日目、7日目、14日目にゲルベース混合物で治療した。創傷は28日間に渡って治癒させ、29日目に切除された。創傷組織の多種の生物化学的、分子生物学的分析を行った。
ヒドロキシプロリンアッセイ: ウサギにsiRNAを投与後29日目に、創傷総コラーゲンの蓄積を、Woessner's method2によるヒドロキシプロリンアッセイを使って定量的に解析した。結果は創傷/無傷組織1グラム当たりのミリグラム量として表した。
Metamorph分析: MetaMorphl分析のソフトウェアは、創傷治癒組織構造に対するCCT-eta siRNAの効果をアッセイするのに使用した。このソフトウェアはマッソン・トリクローム染色した薄片をスキャンしコラーゲンの蓄積度を数値化するものである。無傷の皮膚、対照(無処置)創傷、siRNA-処置創傷(CCT-etaまたはスクランブルコントロール)を比較した。
定量的リアルタイムRT-PCR(qRT-PCR): qRT-PCRは、対照と処置された組織サンプルから分離したRNAの総量100 ngを使用して行った。アルファSMA (α-SMA), CCT-eta、CCT-beta用のプライマーとTaqmanプローブはPrimer Express Software (Applied Biosystems、Foster City, CA)を用いて設計した。フォワードプライマーとリバースプライマーはIntegrated DNA Technologies(Coralville, IA)から購入し、fluorocoupled TaqmanプライマーはApplied Biosystemsから購入した。逆転写酵素(RT)反応(逆プライマーを使って)とそれに続くリアルタイムPCRアッセイは3、4、5に前述したように行った。comparative critical cycle (Ct)法を使い、GAPDHを内部コントロールとして使って、標的の遺伝子の量を標準化し相対量を計算した。データはApplied Biosystemsが提供している7900 HT SDS ソフトウェア バージョン2.1で解析した。
引張強度: 組織試料を二分しフォイルに平らにして包み液体窒素中で瞬時に凍結させ-80℃に保存した。凍結した標本は3つの試料に分け、横断面をカリパスで測り、そして試料をテンシオメーター内でクランプし創傷が分断されるまで力を加えた。カスタマイズしたコンピューターソフトウェアプログラムで測定値を記録し、引張強度が次の式から計算された。最大テンシオメーターリーディング(gに変換)/横断面積(mm2)=引張強度(g/mm2)。一つの創傷から取った別個の標本の結果をまとめ、一つの創傷当たりの平均の引張強度を決定した。それらは各グループとして表にあらわした。
結果:CCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)で処置した創傷は、毒性は示さず良好な創傷閉鎖を示した(図30)。28日目までの断続的な時間ポイントでの全層切開創傷の代表的な写真を示した。CCT-eta siRNAで処置した創傷には如何なる異常な局所炎症もなく、対照創傷と同じ時間経過で治癒された。
CCT-etaのmRNA量(SEQ ID No. 7)はCCT-eta siRNAで処置された創傷で相当に減少していた(図25)。定量的リアルタイムRT-PCRによって、創傷の試料ではCCT-eta mRNAが相対的に増加していると示された。それとは逆に、そのCCT-etaの増加はCCT-eta siRNAで創傷を処置した時、十分に抑えられていた。
アルファSMAのmRNA(SEQ ID No. 8)量はCCT-eta siRNAで処置された創傷ではかなり減少していた(図26)。定量的リアルタイムRT-PCRによって創傷の試料ではα-SMAが相対的に増加していることが示された。創傷がCCT-eta siRNAで処置された時、アルファ-SMAのこの増加は著しく鈍くなった。
CCT-eta siRNAで処置された創傷は、MetaMorph分析で検討したところコラーゲン含量がより少ないと示された(図27)。無処置で治癒した創傷はMetaMorphの 合計値(約1.4に)に40%増加を示した。CCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)はその増加を抑え無傷の皮膚と近い値にまで回復させた。対照のスクランブルsiRNA(SEQ ID Nos. 3、4)には無処置の創傷と比較して効果がなかった。
成体創傷でCCT-eta量が抑えられると、ヒドロキシプロリン含量も減少した(図28)。ヒドロキシプロリン量は、前述したように、無傷、創傷コントロールから採取した皮膚試料、siRNA処置した試料について測定した。組織ヒドロキシプロリン総量は組織コラーゲン総量を反映するもので、CCT-etasiRNA処置により減少した。
引張強度の増加はCCT-eta siRNAで処置された創傷で顕著であった(図29)。CCT-eta siRNAで処置された創傷は、対照創傷と比べ引張強度が約50%まで高い再蓄積を示した。スクランブルsiRNAで処置された創傷は無処置の対照創傷とは区別が出来なかった。
結論:創傷治癒においてCCT-eta mRNA量が増加すると確認した。RT-PCRによって対照に比べCCT-eta siRNAで処置された創傷ではCCT-eta mRNAが減少すると示された。アガロースゲルマトリックスと結合したsiRNA複合体を複数回、投与すると、全層切開創傷でのsiRNAによるCCT-eta発現の減少を促進した。α-SMAのmRNA量はCCT-eta siRNAで処置された創傷では相当減少していた。生化学的分析によって、CCT-eta siRNAで処置された創傷でヒドロキシプロリン含量の減少を示したが、それは総コラーゲン量が減少したことを意味している。
全創傷の全体と組織学的検査によって、異常な組織炎症や毒性を示す証拠は何もないことが示された。MetaMorph分析によって、CCT-eta siRNAは創傷コラーゲンの好ましい再組織化に影響すると示された。CCT-etaをダウンレギュレートすることは、実際に引張強度として測定された、創傷治癒の機械的な性質を改善することである。
実施例13
創傷治癒におけるCCT-eta siRNAの効果をみるために、MetaMorph分析ソフトウェを使ってアッセイを行った。それはコラーゲン含量と組織化度を知るために組織片をスキャンし、それを数値に加算するものである。無傷の皮膚、対照(無処置)創傷、siRNA-処置創傷(CCT-etaまたはスクランブルコントロール)を創傷形成後30日で採取した。切除された組織は10%緩衝ホルマリン液で固定され、パラフィンブロックに挿入され、コラーゲンの堆積を評価するために染色剤で染色した。これは総コラーゲン量が増加し、無処置の創傷に比べ創傷治癒のはより組織化されていることを示した(瘢痕形成の既知の性質と一致して)。しかし、CCT-eta siRNAはコラーゲン堆積のこのパターンを逆にすることができる。スクランブルsiRNAにはそのような効果はなかった(図31)。図31で、無傷の皮膚のMetaMorph分析では値を1と標準化した。無処置で治癒した創傷はMetaMorph合計値(約1.4に)の40%増加を示した。CCT-eta siRNAはその増加を抑え無傷の皮膚と近い値にまで回復させる。対照スクランブルsiRNAは無処置の創傷と比べ効果がなかった。
無傷の皮膚の引張強度を、無処置とCCT-eta siRNAで処置した両創傷治癒の引張強度と比べた。組織試料を二分しフォイルに平らにして包み液体窒素中で瞬時に凍結させ-80℃に保存した。引張強度測定には、凍結した標本は3つの試料に分け、横断面をカリパスで測り、そして試料をテンシオメーター内でクランプし創傷が分断されるまで力を加えた。カスタマイズしたコンピューターソフトウェアプログラムで測定値を記録し、引張強度が次の式から計算された。最大テンシオメーターリーディング(gに変換)/横断面積(mm2)=引張強度(g/mm2)ひとつの創傷から取った別個の標本の結果をまとめ、ひとつの創傷当たりの平均の引張強度を決定した。それらは各グループとして表にあらわした。結果は図32に示した。図32で、無傷の皮膚の引張強度を1という値に標準化した。対照(無処置)創傷の損傷後30日での組織引張強度が、無傷の皮膚の約30%にまでにと相当の減少を示した。CCT-eta siRNAで処置された創傷は、対照創傷と比べ引張強度が約50%まで高い再蓄積を示した。スクランブルsiRNAで処置された創傷は無処置の対照創傷とは区別が出来なかった。CCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)の投与は、創傷治癒のコラーゲンプロフィールを変化させるが、無処置の対照創傷、スクランブルsiRNA-処置創傷に比較して、実験的に作られた創傷の引張強度を実際に増加させた。
結論:MetaMorph分析によって、CCT-eta siRNA(SEQ ID Nos. 1、2)は、創傷のコラーゲンの好ましい再組織化に影響すると証明された。CCT-eta siRNAは実際に引張強度として測定した創傷治癒の機械的な性質を増進すると示された。
本明細書の開示は、好適な実施態様を参照してかなり詳細に記述されているが、別の解釈も可能である。従って、添付の請求の趣旨と範囲は「説明」と本明細書内に含まれる好ましい解釈に限定されるべきではない。
本発明は以下に関するものである。
1.T-複合体ポリペプチド含有シャペロニンのサブユニットであるetaを阻害する薬剤、α-平滑筋アクチンを阻害する薬剤、またはそれらの組み合わせ等から選択された分子治療剤を投与することを含む瘢痕化を減少させる方法。
2.瘢痕化は線維症を含む、前記1に記載の方法。
3.CCT-etaを阻害する薬剤はCCT-eta mRNAの発現を阻害する薬剤、CCT-eta蛋白を阻害する薬剤、またはその組み合わせから選択される、前記1に記載の方法。
4.CCT-eta mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 1またはそのバリアントを含有するセンス鎖、そしてSEQ ID No. 2またはそのバリアントを含有するアンチセンス鎖を含むsiRNAを含む、前記3に記載の方法。
5.CCT-eta mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 7, 11, 12, 13, 14またはそのバリアントからまたはそれらの組み合わせから選択された標的mRNAを阻害するsiRNAを含む、前記3に記載の方法。
6.CCT-eta 蛋白を阻害する薬剤は抗体である、前記3に記載の方法。
7.抗体はSEQ ID No. 9, 15, 16, 17, 18またはそれらの組み合わせを含むCCT-eta蛋白を阻害する、前記6に記載の方法。
8.α-SMAを阻害する薬剤は、α-SMA mRNAの発現を阻害する薬剤、α-SMA蛋白を阻害する薬剤、またはその両者から選択される、前記1に記載の方法。
9.α-SMA mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 5またはそのバリアントを含有するセンス鎖、そしてSEQ ID No. 6またはそのバリアントを含有するアンチセンス鎖を含むsiRNAを含む、前記8に記載の方法。
10.α-SMA mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 8, 21, 22またはそのバリアントからまたはそれらの組み合わせから選択された標的mRNAを阻害するsiRNAを含む、前記8に記載の方法。
11.α-SMA蛋白を阻害する薬剤は抗体である、前記8に記載の方法。
12.抗体はSEQ ID No. 10, 19, 20 またはそれらの組み合わせを含むα-SMA蛋白を阻害する、前記11に記載の方法。
13.分子薬剤はsiRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、またはそれらの組み合わせから選択される、前記1に記載の方法。
14.分子薬剤はベクターにコードされている、前記1に記載の方法。
15.ベクターはプラスミドベクターまたはウイルスベクターから選択する、前記14に記載の方法。
16.分子薬剤は導入試薬と併せて投与される、前記1に記載の方法。
17.導入試薬はMirus Transit TKOの親油性試薬、アテロコラーゲン、lipofectin, lipofectamine, cellfectin、ポリカチオン、リポゾーム、あるいはそれらの組み合わせから選択される、前記16に記載の方法。
18.線維症は、デュピュイトラン拘縮、ペイロニー病、肺線維症、肝硬変、間質性肺疾患、瘢痕性脱毛症から選択される、前記2に記載の方法。
19.CCT-eta を阻害する薬剤、α-SMAを阻害する薬剤、またはそれらの組み合わせから選択される効果量の治療分子薬剤を含む組成物。
20.前記19に記載の組成物にはさらに薬学的に受容できる医薬品添加物も含まれる。
21.分子薬剤は、CCT-eta mRNAの発現を阻害する薬剤、CCT-eta蛋白を阻害する薬剤、α-SMA mRNAの発現を阻害する薬剤、α-SMA蛋白を阻害する薬剤、またはそれらの組み合わせから選択されうる、前記19に記載の組成物。
22.CCT-eta mRNAはSEQ ID No. 7, 11, 12, 13, 14、そのバリアントまたはそれらの組み合わせを含む、前記21に記載の組成物。
23.α-SMA mRNAはSEQ ID No. 8, 21, 22、そのバリアントまたはそれらの組み合わせを含む、前記21に記載の組成物。
24.CCT-eta蛋白はSEQ ID No. 9, 15, 16, 17, 18、そのバリアントまたはそれらの組み合わせを含む、前記21に記載の組成物。
25.α-SMA蛋白はSEQ ID No. 10, 19, 20, それらのバリアントまたはそれらの組み合わせを含む、前記21に記載の組成物。
26.CCT-eta mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 1またはそのバリアントを含有するセンス鎖、そしてSEQ ID No. 2またはそのバリアントを含有するアンチセンス鎖から成るsiRNAから構成されている、前記21に記載の組成物。
27.α-SMA mRNAを阻害する薬剤は、SEQ ID No. 5またはそのバリアントから成るセンス鎖、そしてSEQ ID No. 6またはそのバリアントから成るアンチセンス鎖を含むsiRNAを含む、前記21に記載の組成物。