本願発明者らは、上述の課題を解決するための種々の検討の中で、水中での放電によって液中の過酸化水素の濃度が増加すること、及びその際の過酸化水素の濃度は水を電気分解する場合と比べて条件によっては100倍程度にもなることを実験的に確認した。これは、放電によって生じた水酸ラジカルや酸素ラジカルが最終的に過酸化水素になったためと考えられる。
一方、液体に超音波を照射した場合には、水から直接水酸ラジカルは生じないが、過酸化水素は分解し、水酸ラジカルが生成する。本願発明者らはこれらのことを考え合わせ、放電と超音波照射とを組み合わせることで、水酸ラジカルによって効果的且つ継続的に液体を浄化することができるとともに、液体の過酸化水素濃度を一定範囲に制御することができることに想到した。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態及び変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
本発明の実施形態1に係る放電ユニット(1)は、室内の空調を行う空気調和装置(10)の室内ユニット(11)に搭載されるものである。この室内ユニット(11)は、一般家庭向けの壁掛け式のルームエアコンで構成されている。
図1に示すように、室内ユニット(11)は、横長で略半円筒形状の室内ケーシング(12)を備えている。室内ケーシング(12)には、その前面側(図1の左側)の上側略半分に吸込口(13)が形成され、その下端部に吹出口(14)が形成されている。吸込口(13)は、室内空気を室内ケーシング(12)内に取り込むための空気の導入口を構成している。吹出口(14)は、室内ユニット(11)で温調した空気を室内ケーシング(12)内から室内へ供給する空気の供給口を構成している。
室内ケーシング(12)の内部には、吸込口(13)から吹出口(14)に亘って被処理空気が流れる空気通路(15)が形成されている。この空気通路(15)には、プレフィルタ(16)、室内熱交換器(17)、ファン(18)、及びドレンパン(19)が設けられている。
上記プレフィルタ(16)は、上記吸込口(13)に沿うようにして該吸込口(13)の内部近傍に設けられている。このプレフィルタ(16)は、吸込口(13)の全域に亘って配置されている。そして、プレフィルタ(16)は、被処理空気中の塵埃を捕集する集塵手段を構成している。
上記室内熱交換器(17)は、図示しない室外機と冷媒配管を介して接続されており、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路の一部を構成している。この室内熱交換器(17)は、いわゆるフィンアンドチューブ式の空気熱交換器を構成している。室内熱交換器(17)は、冷媒回路の冷媒の循環方向に応じて蒸発器又は凝縮器として機能する。つまり、室内熱交換器(17)は、室内空気を冷却する冷却部、及び室内空気を加熱する加熱部を構成している。
上記ドレンパン(19)は、室内熱交換器(17)の下方に設けられている。ドレンパン(19)は、室内熱交換器(17)で被処理空気が冷却される際、空気中の水蒸気が凝縮し熱交換器(17)から滴下する凝縮水を回収する凝縮水の回収部を構成している。
ドレンパン(19)は、図2に示すように、上側が開放された扁平な皿状に形成され、その底部に位置する底板(55a)と、該底板(55a)の周囲を囲む周壁(55b)と、該周壁(55b)を貫通して設けられる排水経路(57)とを有している。ドレンパン(19)には、回収された水(ドレン水)(56)が貯留されている。そして、ドレンパン(19)には、放電ユニット(1)と、ドレンパン(19)内の水に超音波を照射する超音波発生部(94)とが設けられている。
また、本実施形態の浄化装置は、高電圧発生部(70)に接続された放電波形発生部(3)と、電極対(64,65)に印加する電圧のオン又はオフを制御する制御部(2)と、増幅器(9)を介して超音波発生部(94)に所定の周波数の交流電圧を供給する超音波波形発生部(8)と、超音波波形発生部(8)を介して超音波発生部(94)の動作を制御する制御部(5)と、ドレンパン(19)内の液体の過酸化水素濃度をモニタするセンサ(7)とを備えている。なお、図示しないが、センサ(7)のモニタ結果に基づいて制御部(2,5)を制御する中央演算装置(CPU)が設けられていてもよい。制御部(2,5)による放電ユニット(62)及び超音波発生部(94)の制御方法については、後に説明する。なお、後述のいわゆるフィードフォワード制御を行う場合、センサ(7)は必ずしも設けられなくてもよい。
放電ユニット(1)は、ドレン水(56)中で放電を行うための水中放電装置を構成している。放電ユニット(1)は水中で放電を行う放電部(20)と、水中で電気分解を行う電気分解ユニット(60)とを備えている。
放電部(20)は、電極A(64)と電極B(65)とで構成される電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に電圧を印加する高電圧発生部(70)と、電極A(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
電極対(64,65)は、ドレン水(56)中で放電を発生させるためのものである。電極A(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。電極A(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。電極A(64)は、高電圧発生部(70)の正極側に接続されている。電極A(64)は、例えば、ステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。一方、電極B(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。電極B(65)は、電極A(64)の上方に設けられている。電極B(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(23)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。電極B(65)は、電極A(64)と略平行に配設されている。電極B(65)は、高電圧発生部(70)の負極側に接続されている。電極B(65)は、例えばステンレス、真鍮、白金等の導電性の金属材料で構成されている。
高電圧発生部(70)は、電極対(64,65)に所定の電圧を印加する電源で構成されていても良い。即ち、高電圧発生部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加するものであっても良い。また、高電圧発生部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
絶縁ケーシング(71)は、ドレンパン(19)の底板(55a)に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。電極A(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、電極A(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、電極A(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、電極A(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、電極A(64)と電極B(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(電極A(64))のみを内部に収容し、且つ電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を成す開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、図4に示すように、電流経路の電流密度が集中することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部を成す気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
このような構成の放電部(20)では、高電圧発生部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、開口(74)に形成される気泡(B)内で放電が発生する。これにより、気泡(B)の近傍では、過酸化水素を主とした活性種が生成される。
一方、電気分解ユニット(60)は、陽極(67)と、該陽極(67)に対応して設けられる陰極(68)とを備えている。陽極(67)は、銅材料で構成されている。一方、陰極(68)は、上記陽極(67)に含まれる銅よりもイオン化傾向の低い白金材料で構成されている。各電極(61,62)は、上下に扁平な板状であって、略平行に配置される。尚、各電極(61,62)は、複数の貫通孔を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状、或いは、棒状に形成されても構わない。
陽極(67)と陰極(68)との間には、直流電源(75)によって、直流電圧が印加される。直流電源(75)のうち、陰極(68)が接続される負極側は、接地されている。直流電源(75)で発生させる電圧は、放電部(20)の高電圧発生部(70)で発生させる電圧に比べて低い。
このような構成の電気分解ユニット(60)では、直流電源(75)から各電極(61,62)に直流電圧が印加されると、陽極(67)及び陰極(68)の周囲で電気分解が起こる。陰極(68)側では、陰極(68)から電子を受け取る反応(還元反応)が起こる。陰極(68)の周囲では、水素ガスが発生するとともに、ドレン水(56)中に水酸化イオンが生成される。一方、陽極(67)側では、陽極(67)へ電子を渡す反応(酸化反応)が起こる。陽極(67)の周囲では、酸素ガスが発生するとともに、ドレン水(56)中に水素イオンが生成される。また、陽極(67)に含まれる銅も、電気分解によって銅イオンとなり、水に溶出される。このように、電気分解ユニット(60)は、銅イオン等を水中に発生させるイオン発生部(60)を構成している。
水中には、過酸化水素と、水素イオンと、銅イオンとが共存する。このような条件下では、いわゆるフェントン反応によって、反応性の高い活性種である水酸ラジカルが生成される。
次に、図2に示す例において、超音波発生部(94)は、板状の圧電セラミックス(95)と、間に圧電セラミックス(95)を挟むように設けられた一対の金属板(96a,96b)とで構成される。超音波発生部(94)を封入するケース(97)は密閉され、ドレンパン(19)の底部に配置されている。超音波発生部(94)は、電極対(64,65)よりも、ドレンパン(19)の給水口に近い位置(言い換えれば、注水口から遠い位置)に配置される。
金属板(96a,96b)には、増幅器(9)によって増幅された超音波波形発生部(8)の出力信号(交流電圧)が供給される。これにより、超音波発生部(94)は任意の周波数の超音波をドレンパン(19)内の液体に照射する。ただし、過酸化水素を分解して水酸ラジカルを効率良く発生させるためには、超音波の周波数が、100kHz以上程度であれば特に好ましい。
なお、超音波発生部(94)は、ドレンパン(19)内の液体に超音波を照射できる範囲で任意の位置に設置されていてもよい。例えば、図5(a)に示すように、超音波発生部(94)がドレンパン(19)の底部外側に設置されていてもよく、ドレンパン(19)の内部において、電極対(64,65)よりも注水口に近い位置に設置されていてもよい。超音波発生部(94)がドレンパン(19)の底部外側に設置されている場合、超音波はドレンパン(19)の壁面を介して液体に伝達される。
また、超音波発生部(94)の構成は、図2に示す例に限られない。例えば、図5(b)に示すように、金属ケース(97a)の上部と金属板(96)とで板状の圧電セラミックス(95)を挟み、両者の間に交流電圧を供給する構成であってもよい。
−運転動作−
次に、本実施形態に係る空気調和装置(10)の運転動作について説明する。なお、以下には、空気調和装置(10)の冷房運転動作を例示して説明する。
図1に示すように、空気調和装置(10)の運転時には、ファン(18)が運転状態となる。また、室内熱交換器(17)の内部には低圧の液冷媒が流通し、この室内熱交換器(17)が蒸発器として機能する。
室内空気が吸込口(13)から室内ケーシング(12)内に導入されると、この空気はプレフィルタ(16)を通過する。プレフィルタ(16)では、空気中の塵埃が捕集される。プレフィルタ(16)を通過した後の空気は、室内熱交換器(17)を通過する。室内熱交換器(17)では、冷媒が空気から吸熱し、空気の冷却が行われる。以上のようして冷却された空気は、吹出口(14)から室内へ供給される。
以上のような冷房運転時には、室内熱交換器(17)で凝縮した凝縮水がドレン水(56)としてドレンパン(19)内に溜まり込む。ドレン水(56)が長期に亘ってドレンパン(19)に滞ると、ドレン水(56)中に雑菌が増殖し、悪臭発生の原因となる。更に、雑菌の増殖が進行すると、ドレン水(56)中に泥状物(いわゆるスライム)が発生する。そこで、本実施形態の空気調和装置(10)では、放電ユニット(1)によってドレン水(56)中に過酸化水素と反応性の高い水酸ラジカルとを生成し、これらの活性種によって、ドレン水(56)を定期的に浄化するとともに、発生したスライムを分解除去するようにしている。
放電部(20)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。
高電圧発生部(70)から電極対(64,65)に所定の電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。この際、電極A(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、電極B(65)に導通する負極側の水と、正極側の電極A(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、電極A(64)と電極B(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、電極A(64)と電極B(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴い放電が発生する。以上のようにして、気泡(B)で放電が行われると、放電領域近傍では、過酸化水素を主とした活性種が生成される。
一方、電気分解ユニット(60)では、陽極(67)と陰極(68)との間に直流電源(75)から所定の直流電圧が印加されると、陽極(67)及び陰極(68)の周囲では、電気分解が起こる。
陰極(68)側では、陰極(68)から電子を受け取る反応(還元反応)が起こる。反応式(1)に示すように、陰極(68)側では、水が反応して、水素ガスが発生するとともに、ドレン水(56)中に水酸化物イオンが生成される。
4H2O + 4e− → 2H2 + 4OH− (1)
一方、陽極(67)側では、陽極(67)へ電子を渡す反応(酸化反応)が起こる。反応式(2)に示すように、陽極(67)側では、水が反応して、酸素ガスが発生するとともに、ドレン水(56)中に水素イオンが生成される。また、反応式(3)及び反応式(4)に示すように、陽極(67)に含まれる銅も、電気分解によって銅イオンとなり、ドレン水(56)中に溶出される。
2H2O → O2 + 4H+ + 4e− (2)
Cu → Cu+ + e− (3)
以上のように、放電によって生成された過酸化水素と、電気分解によって生成された水素イオンと銅イオンとが水中に存在すると、反応式(4)に示す所謂フェントン反応が起こり、銅イオンが触媒的に作用して、水酸ラジカルが生成される。
H2O2 + H+ + Cu+ → ・OH + H2O + Cu2+ (4)
このように、ドレン水(56)中に、活性種である過酸化水素及び水酸ラジカルが生成されると、ドレン水(56)は浄化される。つまり、ドレン水(56)中の雑菌及び臭気成分は分解され除去される。また、水酸ラジカルは、過酸化水素に比べて反応性が高い。そのため、生成された過酸化水素及び水酸ラジカルによる浄化は、過酸化水素だけで浄化するよりも浄化能力は高くなる。
また、水酸ラジカルは寿命が非常に短く、すぐに反応して過酸化水素に変化してしまう。そのため、従来の放電ユニットでは、放電によってドレン水(56)中に水酸ラジカルが生成されても、その水酸ラジカルの大半は雑菌等に作用する前に過酸化水素に変化していた。しかし、本実施形態の放電ユニット(1)では、水酸ラジカルが過酸化水素に変化しても、その過酸化水素をフェントン反応によって、再び水酸ラジカルに変化させることができる。つまり、水酸ラジカルを再生することができ、水酸ラジカル濃度を低下させることなく、強い浄化能力を維持することができる。
また、放電に伴って発生する熱がもたらす対流によって、生成される過酸化水素及び水酸ラジカルの拡散が促される。また、気泡(B)で放電が行われると、この気泡(B)でイオン風が生成される。そして、このイオン風によって、過酸化水素及び水酸ラジカルの拡散効果は更に向上する。
また、陰極(68)を構成する白金は、陽極(67)に含まれる銅よりもイオン化傾向が低い。そのため、水中の銅イオンが白金から電子を奪って銅原子となる銅の析出反応は起こり難い。このように銅の析出反応が抑制されると、水中における銅イオンの濃度の低下がなくなり、フェントン効果による水酸ラジカルの生成効率を維持することができる。
更に、本実施形態の空気調和装置(10)では、放電に超音波処理を組み合わせることにより、水酸ラジカルの量を維持することができる。これについて以下に説明する。
図6は、本実施形態の浄化装置による液体処理の基本サイクルを示す図である。同図に示すように、ドレンパン(19)内に溜められた水等の液体は、まず、電極対(64,65)間に生起される放電によって浄化される。この際には、放電によって液体中に水酸ラジカル等の活性種が生成し、有機物等の分解や殺菌などが行われる(図3中のステップSt1、St2)。水酸ラジカルは短時間で過酸化水素に変化する(ステップSt3)。
次に、超音波発生部(94)から液体へと超音波を伝搬させ、液体中の過酸化水素を分解し、水酸ラジカルに変化させる(ステップSt4)。超音波照射により発生した水酸ラジカルは、再度過酸化水素に変化する。ただし、除菌等、液体の浄化反応に使われた水酸ラジカルは水に変化するので、放電を停止して超音波照射のみを行った場合には、過酸化水素の濃度は低下してゆくことになる。
なお、上記の液体浄化は、1回ごとにドレンパン(19)内の液体を全て入れ替える、いわゆるバッチ処理によって行ってもよい。あるいは、流入路(201)からドレンパン(19)への注水とドレンパン(19)から排水経路(57)への液体の流出を連続的に行う連続処理によって浄化を行ってもよい。
次に、放電と超音波処理を組み合わせた浄化装置の運転制御の具体例について説明する。図7(a)は、液体中の過酸化水素の濃度を用いてフィードバック制御を行う場合の運転制御の一例を示すタイムチャートである。以下の方法では、液体中の過酸化水素はセンサ(7)によって検知される。
この方法において、まずドレンパン(19)内に液体が溜まった状態で運転を開始する。制御部(2)は、電極対(64,65)間に所定の電圧を印加させ、放電を生起させる。この際、超音波発生部(94)はオフ状態にしておく。これにより、液体が浄化されるとともに、液体中の過酸化水素の濃度が上昇する。
次いで、液体の過酸化水素濃度があらかじめ設定された下限値を超えた場合、制御部(2)は電極対(64,65)への電圧供給を継続させ、制御部(5)は、超音波発生部(94)をオン状態にして液体に超音波を照射させる。これにより、放電により生成された水酸ラジカルと、過酸化水素から生成された水酸ラジカルとによって液体が浄化される。放電によって生成される過酸化水素の量は超音波によって分解される過酸化水素の量よりも多いので、この期間中も液中の過酸化水素の濃度は上昇する。
次に、液体の過酸化水素濃度があらかじめ設定された上限値を超えた場合、制御部(2)は電極対(64,65)への電圧供給を停止し、放電を停止させる。制御部(5)は、引き続き超音波発生部(94)をオン状態にして液体に超音波を照射させる。これにより、過酸化水素から生成された水酸ラジカルによって液体が浄化される。この期間中、超音波によって過酸化水素が分解されるので、液中の過酸化水素の濃度は減少する。
次いで、液体の過酸化水素濃度が上述の下限値を下回った時点で、制御部(2)は電極対(64,65)への電圧供給を再開する。これにより、液中の過酸化水素の濃度は再び上昇する。これ以後、同様に超音波照射のみを行う期間と超音波照射と放電とを組み合わせる期間とを繰り返すことで、液体の過酸化水素濃度を下限値以上、且つ上限値以下の範囲に制御しつつ、液体を浄化する。
−実施形態1の効果−
実施形態1では、放電ユニット(1)を空気調和装置(40)のドレン水(56)の浄化に利用するようにした。放電ユニット(1)では、放電部(20)で放電を行うとともに、電気分解ユニット(60)で水素イオンと銅イオンとを発生させると、ドレン水(56)中に過酸化水素と反応性の高い水酸ラジカルとが生成される。そのため、これらの活性種がもたらす高い浄化能力でドレン水(56)を常に清浄な状態に保つことができ、雑菌の増殖や悪臭の発生を未然に回避することできる。
また、雑菌の増殖が進行してドレン水(56)中にスライムが発生しても、反応性の高い水酸ラジカルがスライムに作用することによって、スライムを分解除去することができる。そのため、ドレン水(56)を排出する際に、スライムがドレンパンの排水経路(57)につまることを防止することができる。
また、実施形態1では、放電部(20)と、電気分解ユニット(60)とが独立して設けられている。そのため、放電部(20)だけを稼動して、過酸化水素だけで水を除菌することも可能である。そして、必要に応じて電気分解ユニット(60)を稼動し、水酸ラジカルを発生させることで、浄化能力を変更することができる。また、放電部(20)が稼動する間、電気分解ユニット(60)を停止させることによって、放電部(20)の放電を安定的に行うことができ、確実にドレン水の浄化を行うことができる。
また、この放電ユニット(1)は、極めて浄化能力が高くコンパクトに設計できるので、この放電ユニット(1)を空気調和装置(10)に搭載しても、空気調和装置の大型化を招くことがない。
更に、以上の方法において、制御部(2)は、動作開始後に液体の過酸化水素濃度が上限値に達するまでは放電を生起させて水酸ラジカルを発生させ、液体を浄化することができる。また、制御部(5)は、液体の過酸化水素濃度が所定の下限値を超える期間中に超音波発生部(94)をオン状態にする、言い換えれば、過酸化水素濃度が所定の下限値を下回る期間中には超音波発生部(94)をオフ状態にする。つまり、液中に十分な過酸化水素が存在する場合に超音波によって水酸ラジカルを発生させているので、液体を効果的に浄化することができる。さらに、十分な濃度の過酸化水素の存在下で超音波を継続的に照射することで、継続的に水酸ラジカルを生成することができるので、強い浄化能力を所定の期間中維持することができる。
更に、上述の方法によれば、ドレンパン(19)から排水経路(57)へと供給される液体中の過酸化水素の濃度を上限値以下に抑えることができるので、過酸化水素を除去するための工程を容易にすることができる。
なお、液体を連続処理する場合には、図2に示すように、超音波発生部(94)を電極対(64,65)よりも給水口側に配置することにより、放電によって生じた過酸化水素から超音波照射により効果的に水酸ラジカルを発生させることができる。
また、図2では、電極対(64,65)に印加する電圧のオン又はオフを制御する制御部(2)と、超音波発生部(94)の動作を制御する制御部(5)とを別個に設けたが、1つの制御部で電極対(64,65)に印加する電圧のオン又はオフと、超音波発生部(94)の動作とを制御することもできる。
なお、本実施形態の浄化装置では、放電及び超音波照射によって生じる水酸ラジカルによって、液体の浄化処理と同時にドレンパン(19)内に繁殖する細菌等を効果的に殺菌することもできる。
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、放電部(20)の絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図8及び図9に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、電極A(64)及び電極B(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
この変形例においても、各開口(74)が、電界密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、高電圧発生部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)で放電が発生し、放電領域近傍では、過酸化水素が生成される。また、電気分解ユニット(60)の陽極(67)の周囲では、電気分解によって、水素イオンと銅イオンとが生成される。水中では、過酸化水素と、水素イオンと、銅イオンとが共存する。このような条件下では、フェントン反応が起こり、水酸ラジカルが生成される。また、超音波照射によっても、過酸化水素から水酸ラジカルが生成される。そして、ドレン水(56)は、過酸化水素及び反応性の高い水酸ラジカルによって浄化される。
<実施形態1の変形例2>
以下、本実施形態における浄化装置の運転動作の変形例2について説明する。
図7(b)は、過酸化水素の濃度変化の測定値を用いてフィードフォワード制御を行う場合の運転制御の一例を示すタイムチャートである。
ここで用いられる浄化装置には、必ずしもセンサ(7)が設けられていなくてもよい。ただし、放電のみを行った場合にドレンパン(19)内の液体の過酸化水素濃度が0から下限値に達するまでに要する時間T1、放電と超音波照射とを同時に行った場合に液体の過酸化水素濃度が下限値から上限値になるまでに要する時間T2、超音波照射のみを行った場合に上限値から下限値に達するのに要する時間T3を、それぞれあらかじめ測定しておき、それらの測定データを制御部(2,5)内部又は外部に設けられたメモリ(図示せず)に記憶させておく。制御部(2,5)は測定データに基づいて以下の制御を行う。制御部(2,5)の内部又は外部には、時間をカウントするタイマを設けておく。
本変形例に係る方法において、まず制御部(2)は、電極対(64,65)間に所定の電圧を印加させ、放電を生起させる。この際、超音波発生部(94)はオフ状態にしておく。これにより、液体が浄化されるとともに、液体中の過酸化水素の濃度が上昇する。
次いで、運転開始から時間T1が経過した時点で、制御部(2)は電極対(64,65)への電圧供給を継続させ、制御部(5)は、超音波発生部(94)をオン状態にして液体に超音波を照射させる。これにより、放電により生成された水酸ラジカルと、過酸化水素から生成された水酸ラジカルとによって液体が浄化される。この期間中も液中の過酸化水素の濃度は上昇する。
次に、時間T2が経過した時点で、制御部(2)は電極対(64,65)への電圧供給を停止し、放電を停止させる。制御部(5)は、引き続き超音波発生部(94)をオン状態にして液体に超音波を照射させる。これにより、過酸化水素から生成された水酸ラジカルによって液体が浄化される。この期間中、液中の過酸化水素の濃度は減少する。
次いで、さらに時間T3が経過した時点で、制御部(2)は電極対(64,65)への電圧供給を再開し、この状態を時間T2の間継続する。これにより、液中の過酸化水素の濃度は再び上昇する。これ以後、同様に超音波照射のみを行う期間(時間T3)と超音波照射と放電とを組み合わせる期間(時間T2)とを繰り返すことで、液体の過酸化水素濃度を下限値以上且つ上限値以下の範囲に制御しつつ、液体を浄化する。
以上の方法によっても液体中の過酸化水素の濃度を下限値以上、且つ上限値以下の範囲に制御しつつ、液体を浄化することができる。なお、これは運転動作の一変形例であって、他の方法によっても液体の浄化を行うことができる。
《実施形態2》
次に、本発明の実施形態2を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態は、上記実施形態1の放電ユニット(1)と構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
図10に示すように、実施形態2の放電部(20)は、ドレンパン(19)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電部(20)は、電極A(21)と電極B(22)と絶縁ケーシング(41)とが一体的に組立てられている。
実施形態2の絶縁ケーシング(41)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(41)は、ケース本体(42)と蓋部(43)とを有している。
実施形態2のケース本体(42)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(42)は、円筒状の基部(46)と、該基部(46)からドレンパン(19)側に向かって突出する筒状壁部(47)と、該筒状壁部(47)の外縁部から更にドレンパン(19)側に向かって突出する環状凸部(48)とを有している。また、ケース本体(42)には、環状凸部(48)の先端側に先端筒部(49)が一体に形成されている。基部(46)の軸心部には、円柱状の挿入口(46a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(47)の内側には、挿入口(46a)と同軸となり、且つ挿入口(46a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
実施形態2の蓋部(43)は、略円板状に形成されて環状凸部(48)の内側に嵌合している。蓋部(43)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(43)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(43)を上下に貫通する円形状の1つの開口(44)が形成されている。
電極A(21)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。電極A(21)は、基部(46)の挿入口(46a)に嵌合している。これにより、電極A(21)は、絶縁ケーシング(41)の内部に収容されている。実施形態2では、電極A(21)のうちドレンパン(19)とは反対側の端部が、ドレンパン(19)の外部に露出される状態となる。このため、ドレンパン(19)の外部に配置される高電圧発生部(70)と、電極A(21)とを電気配線によって容易に接続することができる。
電極A(21)のうちドレンパン(19)側の端部(21a)は、絶縁ケーシング(41)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図10に示す例では、電極A(21)の端部(21a)が、挿入口(46a)の開口面よりも上側(ドレンパン(19)側)に突出しているが、この端部(21a)の先端面を挿入口(46a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(21a)を挿入口(46a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、電極A(21)は、実施形態1と同様、開口(44)を有する蓋部(43)との間に所定の間隔が確保されている。
電極B(22)は、円筒状の電極本体(22a)と、該電極本体(22a)から径方向外方へ突出する鍔部(22b)とを有している。電極本体(22a)は、絶縁ケーシング(41)のケース本体(42)に外嵌している。鍔部(22b)は、ドレンパン(19)の壁部に固定されて放電部(20)を保持する固定部を構成している。放電部(20)がドレンパン(19)に固定された状態では、電極B(22)の電極本体(22a)の一部が浸水された状態となる。
電極B(22)は、電極本体(22a)よりも小径の内側筒部(22c)と、該内側筒部(22c)と電極本体(22a)との間に亘って形成される連接部(22d)とを有している。内側筒部(22c)及び連接部(22d)は、ドレンパン(19)内の水中に浸漬している。内側筒部(22c)は、その内部に円柱空間(24)を形成している。内側筒部(22c)の軸方向の一端は、蓋部(43)と当接して該蓋部(43)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(22a)と内側筒部(22c)と連接部(22d)の間には、ケース本体(42)の先端筒部(49)が内嵌している。内側筒部(22c)の軸方向の他端側には、円柱空間(24)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(25)が設けられている。この漏電防止材(25)は、電極B(22)と接触することで、実質的に接地されている。これにより、漏電防止材(25)は、ドレンパン(19)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(24)の内側から外側への漏電を防止している。
電極B(22)は、電極本体(22a)の一部がドレンパン(19)の外部に露出される状態となる。このため、高電圧発生部(70)と電極B(22)とを電気配線によって容易に接続することができる。
尚、図10(及び図11)において図示を省略しているが、実施形態2の空気調和装置においても、図2に示したのと同様の高電圧発生部(70)、放電波形発生部(3)、制御部(2,5)、増幅器(9)、超音波波形発生部(8)、センサ(7)等が備えられている。
放電部(20)の運転の開始時には、図10に示すように、絶縁ケーシング(41)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。高電圧発生部(70)から電極対(21,22)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(44)の内部の電流密度が上昇していく。
図10に示す状態から、電極対(21,22)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(44)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図11を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(44)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(24)内の負極側の水と、電極A(21)との間に気泡(B)の抵抗が付与される。これにより、電極A(21)と電極B(22)との間の電位差が保たれ、気泡(B)で放電が発生する。その結果、放電領域近傍では、過酸化水素が生成される。また、電気分解ユニット(60)の陽極(67)の周囲では、電気分解によって、水素イオンと銅イオンとが生成される。水中では、過酸化水素と、水素イオンと、銅イオンとが共存する。このような条件下では、フェントン反応が起こり、水酸ラジカルが生成される。
また、実施形態1と同様に、超音波発生部(94)により水中に照射される超音波によっても、過酸化水素から水酸ラジカルが生成される。
そして、ドレン水(56)は、過酸化水素及び反応性の高い水酸ラジカルによって浄化される。
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2では、円板状の蓋部(43)の軸心に1つの開口(44)を形成しているが、この蓋部(43)に複数の開口(44)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(43)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(44)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(43)に複数の開口(44)を形成することで、各開口(44)の近傍でそれぞれ放電を発生させることができる。
《実施形態3》
図13は、本発明の実施形態3における浄化装置を示す構成図である。同図では、実施形態1に係る浄化装置と同様の構成については図2と同じ符号を付している。また、排水経路(57)、放電波形発生部(3)、制御部(2,5)、増幅器(9)及びセンサ(7)は図13では図示を省略しているが、実際には本実施形態の浄化装置に設けられている。以下では、主に実施形態1に係る水中放電装置と異なる点について説明する。
本実施形態の水中放電装置は、ドレンパン(19)と、ドレンパン(19)内に配置された電極対(64a,65a)と、電極対(64a,65a)に接続された高電圧発生部(電源部)(70a)と、ドレンパン(19)の底部に設置された超音波発生部(94)とを備えている。更に、陽極(67)と、該陽極(67)に対応して設けられる陰極(68)と、直流電源(75)とを有する電気分解ユニット(60)を備えている。
電極(64a)は絶縁ケーシング(71a)の内部に収納され、電極(65a)は絶縁ケーシング(71b)の内部に収納されている。電極(64a)及び電極(65a)は、それぞれ扁平な板状に形成されている。また、電極(64a)及び電極(65a)は、耐腐食性の高い導電性の金属材料で構成されている。高電圧発生部(70a)は、数キロボルト程度の電圧を電極対(64a,65a)に供給する。
絶縁ケーシング(71a,71b)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されており、図2に示す絶縁ケーシング(71)と同様の構成を有している。
すなわち、絶縁ケーシング(71a)は、一面(図13では右側の面)が開放された容器状のケース本体(180a)と、該ケース本体(180a)の上記開放部を閉塞する板状の蓋部(73a)とを有している。また、絶縁ケーシング(71b)は、一面(図13では左側の面)が開放された容器状のケース本体(180b)と、該ケース本体(180b)の上記開放部を閉塞する板状の蓋部(73b)とを有している。
絶縁ケーシング(71a)の蓋部(73a)には、該蓋部(73a)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74a)が形成されている。絶縁ケーシング(71b)の蓋部(73b)にも、該蓋部(73b)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74b)が形成されている。これらの開口(74a,74b)により、電極(64a)と電極(65a)との間の電界の形成が許容されている。開口(74a,74b)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74a,74b)は、電極対(64a,65a)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
絶縁ケーシング(71a,71b)は、ドレンパン(19)内の互いに対向する側面に、蓋部(73a,73b)同士が対向するように設置されている。言い換えれば、電極(64a)と電極(65a)とは互いに対向するよう配置されている。
絶縁ケーシング(71a,71b)の開口(74a,74b)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、液体がジュール熱によって気化して気泡が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71a,71b)の開口(74a,74b)は、該開口(74a,74b)に気相部としての気泡を形成する気相形成部として機能する。この構成により、電圧が電極対(64a,65a)に供給された場合に電極対(64a,65a)間の気泡内に放電を生起させることができる。
また、電気分解ユニット(60)で水素イオンと銅イオンとを発生させると、フェントン反応により水酸ラジカルが生成する。
なお、超音波発生部(94)の具体的な構成は実施形態1に係る浄化装置と同様である。
本実施形態の浄化装置を、図7(a)、(b)に示す方法で運転することにより、液中の過酸化水素の濃度を所定の範囲内に保持しつつ、ドレンパン(19)内の液体を効果的に浄化することができる。
《実施形態4》
図14は、本発明の実施形態4における浄化装置を示す構成図である。同図では、実施形態1に係る浄化装置と同様の構成については図2と同じ符号を付している。また、排水経路(57)、放電波形発生部(3)、制御部(2,5)、増幅器(9)及びセンサ(7)は図14では図示を省略しているが、実際には本実施形態の浄化装置に設けられている。以下では、主に実施形態1に係る浄化装置と異なる点について説明する。
本実施形態の浄化装置は、ドレンパン(19)と、ドレンパン(19)内に配置された電極対(64,65)と、電極対(64,65)に接続された高電圧発生部(電源部)(70b)と、ドレンパン(19)の底部に設置された超音波発生部(94)とを備えている。更に、陽極(67)と、該陽極(67)に対応して設けられる陰極(68)と、直流電源(75)とを有する電気分解ユニット(60)を備えている。
本実施形態の浄化装置においては、電極A(64)及び電極B(65)がそれぞれ高電圧発生部(70b)の正極側及び負極側にそれぞれ接続され、高電圧発生部(70b)から電極対(64,65)に高電圧のパルス電圧が供給される。
また、電極A(64)を囲む絶縁ケーシング(71)は設けられない。電極A(64)及び電極B(65)は共に板状であり、ドレンパン(19)内の側面に、互いに対向するように設置される。
更に、浄化装置には、例えばドレンパン(19)の底部など、少なくとも電極対(64,65)の間であって、電極対(64,65)よりも低い位置に設けられたノズル(吐出手段)(119)と、ノズル(119)に空気等の気体を送るエアポンプ(送出手段)(99)とが設けられている。エアポンプ(99)によってドレンパン(19)内の気体は、ノズル(119)を介して循環される。ただし、エアポンプ(99)によってドレンパン(19)内に外部から気体を供給してもよい。
超音波発生部(94)の構成は実施形態1に係る浄化装置と同様であり、ドレンパン(19)の底部に設置されていてもよいが、ドレンパン(19)内の液体に超音波を照射できる限りにおいて任意の位置に設置可能である。
少なくとも放電処理を行う期間中、ノズル(119)から液体中へと泡が吐出される。液中に泡が存在する状態で電極対(64,65)にパルス電圧を供給することにより、泡の内部で放電が生起され、水酸ラジカルが生成する。
また、電気分解ユニット(60)で水素イオンと銅イオンとを発生させると、実施形態1において説明したのと同様にフェントン効果が得られ、これによっても水酸ラジカルの量を維持することができる。
本実施形態の浄化装置では、実施形態1に係る浄化装置と基本的に同じ方法、すなわち図7(a)、(b)に示す方法で、放電と超音波照射とを組み合わせた液体浄化が行われる。ただし、図7(a)、(b)に示す放電処理の期間中は、高電圧発生部(70b)から電極対(64,65)へとパルス電圧が間欠的に供給され、電極対(64,65)間に間欠的に放電が生起される。
以上の構成及び方法によれば、電極対(64,65)間にパルス放電を発生させる場合でも、超音波照射と組み合わせることで、過酸化水素濃度の増加を抑えつつ、高い浄化能力を発揮することができる。
《実施形態5》
図15は、本発明の実施形態5における浄化装置を示す構成図である。同図では、実施形態1、実施形態3に係る浄化装置と同様の構成については図1及び図13と同じ符号を付している。また、排水経路(57)、放電波形発生部(3)、制御部(2,5)、増幅器(9)及びセンサ(7)は図15では図示を省略しているが、実際には本実施形態の浄化装置に設けられている。以下では、主に実施形態2に係る浄化装置と異なる点について説明する。
本実施形態の浄化装置は、ドレンパン(19)と、ドレンパン(19)内に配置された電極対(64b,65b)と、電極対(64b,65b)に接続された高電圧発生部(電源部)(70c)と、ドレンパン(19)の底部に設置された超音波発生部(94)とを備えている。更に、陽極(67)と、該陽極(67)に対応して設けられる陰極(68)と、直流電源(75)とを有する電気分解ユニット(60)を備えている。
電極(64b)と電極(65b)とは、それぞれドレンパン(19)内の側面に、互いに対向するように設置されている。
電極(64b)は、少なくとも1つの導電部(164)と、導電部(164)を囲む絶縁部(165)とを有している。
電極(65b)は、少なくとも1つの導電部(166)と、導電部(166)を囲む絶縁部(167)とを有している
以上のように、電極(64b)における導電部(164)の露出面、及び電極(65b)における導電部(166)の露出面の面積は小さいので、電圧を電極対(64b,65b)に供給した場合には導電部(164,166)の表面で電流密度の集中部が形成される。そのため、導電部(164,166)の表面では液体がジュール熱によって気化して気泡が形成される。この泡によって導電部(164,166)の露出面が覆われた状態で高電圧発生部(70c)からの電圧供給を継続することにより、泡の内部で放電が生起される。
なお、超音波発生部(94)の具体的な構成は実施形態1及び実施形態3に係る浄化装置と同様である。
本実施形態の浄化装置を、図7(a)、(b)に示す方法で運転することにより、液中の過酸化水素の濃度を所定の範囲内に保持しつつ、ドレンパン(19)内の液体を効果的に浄化することができる。
また、電気分解ユニット(60)で水素イオンと銅イオンとを発生させると、実施形態1において説明したのと同様にフェントン効果が得られ、これによっても水酸ラジカルの量を維持することができる。
以上の構成によっても、電極対(64b,65b)間での放電と、超音波照射と組み合わせることで、過酸化水素濃度の増加を抑えつつ、高い浄化能力を発揮することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
〈電気分解ユニットの構成〉
上述した各実施形態では、陽極(67)は銅材料で構成されている。しかしながら、陽極(67)は銅を含む金属で構成するようにしてもよい。さらに、陽極(67)は鉄材料で構成するようにしてもよい。鉄材料で陽極(67)を構成した場合は、反応式(6)に示すフェントン反応で、水酸ラジカルを生成することができる。また、陽極(67)は鉄を含む金属で構成するようにしてもよい。
Fe → Fe2+ + 2e− (5)
H2O2 + H+ + Fe2+ → ・OH + H2O + Fe3+ (6)
また、上述した各実施形態では、陰極(68)は白金材料で構成されている。しかしながら、陰極(68)は、陽極(67)に含まれる銅または鉄よりもイオン化傾向の低い金属で構成されていればよく、例えば、銀や金でも構わない。
〈イオン発生部の構成〉
上述した各実施形態では、銅または鉄を含む金属によって形成される陽極(67)を有する電気分解ユニット(60)を、銅イオンまたは鉄イオンを発生させるイオン発生部としている。しかしながら、上記実施形態に限らず、例えば、銅片や鉄片をドレン水中に浸漬することで、これらをイオン発生部とすることもできる。また、銅イオンまたは鉄イオンを含む液体をドレン水中へ供給する構成であっても、これらをイオン発生部とすることもできる。
〈水中放電装置の用途〉
上述した水中放電装置は、空気調和装置(10)のドレンパン(19)に回収されるドレン水を浄化する用途に適用されている。しかしながら、水を浄化するものであれば、他の用途に適用することもできる。これらの用途としては、例えば、給湯器或いは加湿器のタンク水の浄化、除湿器で補足された水の浄化等があげられる。また、水中放電装置は、放電及び電気分解によって得られた水を所定の洗浄対象に供給ないし噴霧することで、この洗浄対象を洗浄する用途に適用することもできる。