以下に、本発明にかかる列車ブレーキ制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1から3に係る列車ブレーキ制御装置1とブレーキ装置とで構成されるブレーキシステムを模式的に表す図である。図1には、列車ブレーキ制御装置1と、圧縮空気の供給源として機能する圧縮空気タンク5と、鉄道車両を支持する空気ばね6a、6bと、ブレーキシュー3a,3bを制御するブレーキシリンダ2a,2bと、列車の車輪4a,4bとが示されている。
列車ブレーキ制御装置1は、主たる構成として、制御部11、ブレーキ制御弁12a,12b、中継弁13a,13b、SR圧力センサ14a,14b、AC圧力センサ15a,15b、BC圧力センサ16a,16b、およびAS圧力センサ17a,17bを有して構成されている。
ブレーキ制御弁12a,12bは、圧縮空気を中継弁13a,13bに供給する電磁弁である供給弁(AMV:Apply Magnet Valve)と、中継弁13a,13bからの圧縮空気を排出する電磁弁である排気弁(RMV:Release Magnet Valve)とから構成される。
また、ブレーキ制御弁12a,12bは、圧縮空気タンク5からの供給元圧縮空気27と制御部11からの電磁弁開閉信号sAMV,sRMVとに基づき、AMVとRMVを開閉することで、中継弁13a,13bに供給する圧縮空気の流量を制御する。
中継弁13a,13bは、圧縮空気タンク5の供給元圧縮空気27を利用して、ブレーキ制御弁12a,12bから圧縮空気の圧力に比例し、かつ流量を増幅した圧縮空気をブレーキシリンダ2a、2bに供給する。
SR圧力センサ14a,14bは、圧縮空気タンク5からブレーキ制御弁12a,12bへ供給される供給元圧縮空気27の圧力(SR圧)を計測し、その計測値をSR圧力計測値PSRとして制御部11へ出力する。
AC圧力センサ15a,15bは、ブレーキ制御弁12a,12bから中継弁13a,13bへ供給される圧縮空気の圧力(AC圧)を計測し、その計測値をAC圧力計測値PACとして制御部11へ出力する。
BC圧力センサ16a,16bは、中継弁13a,13bからブレーキシリンダ2a,2bへ供給される圧縮空気の圧力(BC圧)を計測し、その計測値をBC圧力計測値PBCとして制御部11へ出力する。
AS圧力センサ17a,17bには、鉄道車両の重量を表す信号である空気ばね圧縮空気の圧力(AS圧)が入力され、AS圧力センサ17a,17bは、このAS圧を計測してその計測値をAS圧力計測値22として制御部11へ出力する。
空気ばね6a,6bでは、鉄道車両にかかる荷重に応じて、AS圧力センサ17a,17bへ出力される空気ばね圧縮空気の圧力が変更される。そのため、制御部11では、AS圧力計測値22に基づいて鉄道車両にかかる荷重を計測することができる。
制御部11には、鉄道車両の減速度を表すブレーキ指令20と、AS圧力センサ17a,17bからのAS圧力計測値22と、SR圧力センサ14a,14bからのSR圧力計測値PSRと、AC圧力センサ15a,15bからのAC圧力計測値PACと、BC圧力センサ16a,16bからのBC圧力計測値PBCとが入力される。
制御部11では、ブレーキ指令20とAS圧力計測値22とに基づいて、鉄道車両に必要なブレーキ力が計算される。必要なブレーキ力は、原理的には鉄道車両の荷重とブレーキ指令20(減速度)との積で求まる。そして、制御部11は、計算されたブレーキ力に基づいてブレーキシリンダ2a,2b内の目標圧力値を計算する。また、制御部11は、この目標圧力値と、SR圧力計測値PSRと、AC圧力計測値PAC(またはBC圧力計測値PBC)とに基づいて、ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力と目標圧力値との誤差が減少するように、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVを生成する。生成された電磁弁開閉信号sAMV,sRMVは、ブレーキ制御弁12a,12bへ出力される。そして、ブレーキ制御弁12a,12bがこの電磁弁開閉信号sAMV,sRMVに基づいて動作することにより、ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力が目標圧力まで高まる。ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力が高まることにより、ブレーキシュー3a、3bが車輪4a,4bに押し当てられ、ブレーキシュー3a、3bと車輪4a,4bとの間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって所望のブレーキ力が得られる。以後、制御部11で計算された目標圧力値をBC圧目標値と称する。
次に図2に用いて、制御部11の内部構成と動作を説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る制御部11の構成例を表す図である。図2には、1つのブレーキ制御弁に対応する制御部11が示されている。本実施の形態では、説明を簡単化するため、1つのブレーキ制御弁に対する制御系の動作について説明する。なお、図1に示される列車ブレーキ制御装置1のように複数のブレーキ制御弁12a,12bを制御する場合、図2に示される制御系と同じ制御系を複数用いればよい。また、本実施の形態では、AMVとRMVを1つずつ備えたブレーキ制御弁12a,12bが用いられているが、AMVとRMVの数はこれに限定されるものではなく、各ブレーキ制御弁12a,12bには、それぞれ複数のAMVおよびRMVを設けるように構成してもよい。
制御部11は、主たる構成として、BC圧目標値計算部111と、理想流量計算部112、流量誤差補正部113、流量推定部114、電磁弁開閉信号計算部115とを有して構成されている。
BC圧目標値計算部111は、ブレーキ指令20とAS圧力計測値22とに基づいて、鉄道車両に必要なブレーキ力を計算し、このブレーキ力が得られるようにBC圧目標値Pref(t)を計算する。計算されたBC圧目標値Pref(t)は、理想流量計算部112へ出力される。なお、ブレーキ指令20とAS圧力計測値22とに基づいてBC圧目標値Pref(t)を計算する方式は、テーブルを用いた方式や関数を用いた方式などでよい。また、フィルタ等を用いて、BC圧目標値Pref(t)が滑らかに変化するように計算してもよい。
次に、理想流量計算部112の構成とその動作を説明する。まず、理想流量計算部112の動作の概要を説明する。理想流量計算部112には、BC圧目標値計算部111からのBC圧目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとが入力される。理想流量計算部112では、BC圧目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとの間の誤差が低減されるように、ブレーキシリンダ2a,2bに流入する圧縮空気の理想的な流量が計算される。そして、この流量が、理想流量quとして流量誤差補正部113へ出力される。
本実施の形態では、理想流量計算部112の一例として、遅れ時間が大きい制御対象に対して有効な制御である2自由度内部モデル制御が用いられているが、理想流量計算部112の構成は2自由度内部モデル制御に限定されず、周波数整形で設計した制御器やPID制御など、連続信号が入力可能なアクチュエータに対する制御系であれば、どのような方式を用いてもよい。
図2に示される理想流量計算部112は、無駄時間補正部112aと、フィードフォワード流量計算部112bと、圧力減算器112cと、フィードバック流量計算部112dと、流量加算器112eを有して構成されている。
無駄時間補正部112aには、BC圧目標値計算部111からのBC圧目標値Pref(t)が入力される。無駄時間補正部112aは、BC圧目標値Pref(t)を所定の時間Tdだけ遅らせ、BC圧目標補正量Pref(t−Td)として圧力減算器112cへ出力する。
フィードフォワード流量計算部112bには、BC圧目標値計算部111からのBC圧目標値Pref(t)が入力される。フィードフォワード流量計算部112bは、式(1)より、フィードフォワード流量qFFを計算し、計算結果を流量加算器112eへ出力する。式(1)のqFFはフィードフォワード流量を表し、以下同様に、kは空気の比熱比、Pnは大気圧、ρnは空気の密度、Vはブレーキシリンダの体積を表している。また、式(1)の右上にある()付きの数字は、時間微分の回数を表しており、以後、各記号の右上につく()付きの数字は時間微分の回数を表す。
圧力減算器112cには、無駄時間補正部112aからのBC圧目標補正量Pref(t−Td)とAC圧力計測値PACとが入力され、圧力減算器112cは、式(2)より、これらの値の誤差を計算し、計算結果を圧力誤差Peとしてフィードバック流量計算部112dへ出力する。
フィードバック流量計算部112dは、圧力減算器112cからの圧力誤差Peが入力され、フィードバック流量計算部112dは、式(3)により、圧力誤差Peを低減するような空気流量を計算する。そして、計算した空気流量をフィードバック流量qFBとして流量加算器112eへ出力する。式(3)のKは比例ゲインである。
流量加算器112eには、フィードフォワード流量計算部112bからのフィードフォワード流量qFFとフィードバック流量計算部112dからのフィードバック流量qFBとが入力され、流量加算器112eは、式(3)のようにこれらの値を加算し、加算した結果を理想流量quとして流量誤差補正部113へ出力する。
ここまでが本実施の形態に係る想流量計算部112の動作である。なお、式(4)において、理想流量quが正であることは、中継弁13a,13bやブレーキシリンダ2a,2bに圧縮空気を供給することを意味する。また、理想流量quが負であることは、中継弁13a,13bやブレーキシリンダ2a,2bから圧縮空気を排出することを意味する。
次に、流量推定部114の動作を説明する。流量推定部114は、SR圧力計測値PSRとAC圧力計測値PACとに基づいて、AMVが開いた場合に中継弁13a,13bとブレーキシリンダ2a,2bとに供給される圧縮空気の流量推定値q^AMVと、RMVが開いた場合に中継弁13a,13bとブレーキシリンダ2a,2bとから排出される圧縮空気の流量推定値q^RMVとを計算する。『岡田、長坂著:サーボアクチュエータとその制御、コロナ社、1985』に記載されている、空気などの圧縮性流体の流量特性より、AMVが開いた場合に流れる圧縮空気の流量は、式(5)で求まり、RMVが開いた場合に流れる圧縮空気の流量は、式(6)で求まる。
式(5)のSAMVは、AMVが取り付いている配管の断面積を表し、式(6)のSRMVは、RMVが取り付いている配管の断面積を表している。また、RMVが開いた場合は中継弁13a,13bとブレーキシリンダ2a,2bとから圧縮空気が排出されるため、流量推定値q^RMVの値が負になっている。式(5),(6)のgは、重力加速度を表す。
流量推定部114で計算された流量推定値q^AMV,q^RMVは、流量誤差補正部113と電磁弁開閉信号計算部115へ出力される。
次に、流量誤差補正部113の構成とその動作を説明する。まず、流量誤差補正部113の動作の概要を説明する。流量誤差補正部113には、理想流量計算部112からの理想流量quと、流量推定部114からの流量推定値q^AMV,q^RMVと、後述する電磁弁開閉信号計算部115からの電磁弁開閉信号sAMV,sRMVとが入力される。そして、流量誤差補正部113は、これらの信号に基づいて、BC圧目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとの誤差が小さくなるように、理想流量quの誤差を補正する。そして、補正された補正流量値quuは、電磁弁開閉信号計算部115へ出力される。
流量誤差補正部113は、主たる構成として、流量誤差補正加算器113a、実流量推定部113b、流量誤差減算器113c、流量ローパスフィルタ113dから構成される。
流量誤差補正加算器113aには、理想流量計算部112からの理想流量quと、後述する流量ローパスフィルタ113dからの流量補正値qcとが入力される。流量誤差補正加算器113aは、式(7)によりこれらの値を加算し、計算結果は、補正流量値quuとして電磁弁開閉信号計算部115と流量誤差減算器113cへ出力される。
実流量推定部113bには、流量推定部114からの流量推定値q^AMV,q^RMVと、電磁弁開閉信号計算部115からの電磁弁開閉信号sAMV,sRMVとが入力される。実流量推定部113bは、これらの値に基づいて、実際にブレーキシリンダ2a,2bに流れた空気流量を計算し、計算結果を実流量推定値q^uとして流量誤差減算器113cへ出力する。
具体的には、実流量推定部113bは、式(8)より、AMVを通りブレーキシリンダ2a,2bへ供給される圧縮空気の流量qAMVと計算する。また、実流量推定部113bは、式(9)より、RMVを通りブレーキシリンダ2a,2bから排出される圧縮空気の流量qRMVを計算する。そして、実流量推定部113bは、式(10)より、これらの和を計算し、その計算結果を実流量推定値q^uとして流量誤差減算器113cへ出力する。
式(8)の電磁弁開閉信号sAMV=1は、AMVが開いていることを表し、sAMV=0は、AMVが閉じていることを表している。また、式(9)のsRMV=1は、RMVが開いていることを表し、sRMV=0はRMVが閉じていることを表している。
流量誤差減算器113cには、流量誤差補正加算器113aからの補正流量値quuと、実流量推定部113bからの実流量推定値q^uとが入力される。流量誤差減算器113cは、式(11)により、これらの差を計算し、計算結果を流量誤差q^eとして流量ローパスフィルタ113dへ出力する。
流量ローパスフィルタ113dには、流量誤差減算器113cからの流量誤差q^eが入力される。流量ローパスフィルタ113dは、式(12)より、流量誤差q^eにローパスフィルタを掛けた値を計算し、計算結果を流量補正値qcとして流量誤差補正加算器113aへ出力する。式(12)において、sはラプラス演算子、Tsはローパスフィルタの時定数を表している。なお、流量ローパスフィルタ113dは、式(12)のような2段のローパスフィルタに限定されるものではなく、1段のローパスフィルタや、時定数を2つ持たせた2段のローパスフィルタでもよい。
次に、電磁弁開閉信号計算部115の動作を説明する。電磁弁開閉信号計算部115には、流量誤差補正部113からの補正流量値quuと、流量推定部114からの流量推定値q^AMV,q^RMVとが入力される。電磁弁開閉信号計算部115は、これらの値に基づき、AMVとRMVの開閉信号である電磁弁開閉信号sAMV,sRMVを計算し、この信号を流量誤差補正部113とブレーキ制御弁12a,12bへ出力する。
以下、電磁弁開閉信号計算部115における計算内容を具体的に説明する。電磁弁開閉信号計算部115では、式(13)により、補正流量値quuと流量推定値q^AMVとが比較される。補正流量値quuが流量推定値q^AMV以上の場合、AMVを開くことを示す電磁弁開閉信号sAMV(sAMV=1)が生成され、補正流量値quuが流量推定値q^AMV未満の場合、AMVを閉じることを示す電磁弁開閉信号sAMV(sAMV=0)が生成される。また、電磁弁開閉信号計算部115では、式(14)により、補正流量値quuと流量推定値q^RMVとが比較される。補正流量値quuが流量推定値q^RMVより大きい場合、RMVを閉じることを示す電磁弁開閉信号sRMV(sRMV=0)が生成され、補正流量値quuが流量推定値q^RMV以下の場合、RMVを開くことを示す電磁弁開閉信号sRMV(sRMV=1)が生成される。
次に図3,4を用いて、本実施の形態の効果を説明する。図3は、図2に示される制御部11を用いた場合における効果を説明するための第1の図であり、図3には、図1に示されるブレーキシステムの構成要素の一部が示されている。図4は、図2に示される制御部11を用いた場合における効果を説明するための第2の図であり、図4には、制御部11で用いられる2自由度内部モデル制御のブロック線図が記されている。
なお、図3,4には、説明を簡単化するため、1つの車輪に対応する制御部11、ブレーキ制御弁12a、ブレーキシリンダ2a、およびAC圧力センサ15aが図示されており、以下の説明では、図3,4に示される構成を用いて本実施の形態に係る制御部11の効果を説明する。
制御部11では、ブレーキ制御弁12aの開閉によりブレーキシリンダ2aに流れる圧縮空気の流量が推定され、この実流量推定値q^uと補正流量値quuとの誤差が減少するように流量補正値qcが計算される。そして、この理想流量quは流量補正値qcによって補正され、補正された補正流量値quuと流量推定値q^AMV,q^RMVとの比較により、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVが計算される。
すなわち、制御部11では、ブレーキ制御弁12aからブレーキシリンダ2aへ流れる圧縮空気の流量と理想流量quとが等しくなるように、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVが計算される。その結果、ブレーキシリンダ2aへ流れる圧縮空気の流量が理想流量quと等しくなる。図3に示される制御部11では図4に示される内部モデルと同じ動作が行われる。
なお、ブレーキ制御弁12aに使用される電磁弁(AMV、RMV)を開いたときに、ブレーキシリンダに供給される圧縮空気の流量、もしくはブレーキシリンダから排出される圧縮空気の流量は、ブレーキシリンダ2aの圧力や、圧縮空気タンク5からブレーキ制御弁12aへ供給される供給元圧縮空気27の圧力に応じて変化する。上記特許文献1に記される従来技術では、本実施の形態1に係る電磁弁開閉信号計算部115の代わりに、予め閾値が決められた量子化器やPWM制御が用いられているが、この圧縮空気の流量の変化が考慮されていないため、この圧縮空気の流量が理想流量quと等しくなるように、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVを計算することができない。
それに対し本実施の形態に係る制御部11では、ブレーキシリンダ2aの圧力や供給元圧縮空気27の圧力を考慮して、圧縮空気の流量推定値q^AMV,q^RMVが計算され、さらに電磁弁開閉信号計算部115において電磁弁開閉信号sAMV,sRMVが計算される。そして、流量誤差補正部113において理想流量quが補正される。そのため、ブレーキ制御弁12aからブレーキシリンダ2aへ流れる圧縮空気の流量と理想流量quとが等しくなるように、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVを計算することができる。
このことにより、制御対象であるブレーキシリンダ2aを制御するアクチュエータとして、離散化した信号しか入力できないAMV,RMVが用いられた場合でも、連続量である理想流量quが入力可能なアクチュエータと同等の制御が行える。
なお、上述したオン・オフ制御よりもPID制御や周波数整形法などに基づいた制御のほうが、追従特性や安定性が改善され、性能が向上することが以前より知られている。従って、PID制御や周波数整形法などを用いた場合とほぼ等価な特性が得られる本実施の形態に係る制御部11の制御のほうが、オーバーシュートがない応答が得られるなど、高い制御性能を得ることが可能となる。
なお、『川村、野方、田所、早川、松浦著:制御用アクチュエータの基礎、コロナ社、2006』には、ブレーキシリンダへ流れる空気流量qBと、ブレーキシリンダ2a(2b)内の圧力変化PB(1)との関係が、式(15)で表されることが述べられている。
本実施の形態では、中継弁13aからブレーキシリンダ2aに供給される空気の圧力(BC圧)が、ブレーキ制御弁12aの出力側の圧力(AC圧)に比例して調整される。そのため、式(15)において、ブレーキシリンダ2a内の圧力(PB)は、ブレーキ制御弁12aの出力側のAC圧力計測値PACと等しいと考えられる。
また、制御部11の流量誤差補正部113、流量推定部114、および電磁弁開閉信号計算部115では、理想流量quとブレーキシリンダ2aへ流れる空気流量qBとの誤差が小さくなるように、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVが計算され、この計算結果がブレーキ制御弁12aへ出力される。そのため、式(15)において、理想流量quと空気流量qBとは等しいと考えられる。以上のことにより、空気流量qBとブレーキシリンダ2a(2b)内の圧力変化PB(1)との関係式は、式(16)で表される。図4には、この式(16)がブレーキシリンダ2aの特性として記載されている。また図4には、AC圧力センサ15aの特性が遅れ要素e−Td・sとして記載されている。
図4の内部モデルによって、周波数特性が計算可能になるため、比例ゲインKの調整が容易になる。さらに、図4の内部モデルでは、AC圧力センサ15aの遅れも考慮されている。すなわち、本実施の形態では、AC圧力センサ15aの遅れ時間を考慮して、比例ゲインKを調整することができるため、例えばAC圧力センサ15aの遅れ時間Tdが大きい場合においても、比例ゲインKを適切な値にすることによって良好な追従特性を得ることができる。従って、制御対象であるブレーキシリンダ2aの特性や、AC圧力センサ15aの遅れ時間Tdが判明すれば、制御部11では、これらの値を用いて適切な比例ゲインKを計算することが可能となる。
上記特許文献3の従来技術では、テーブルを用いて圧力計測値に対してパラメータを変更する必要があったが、本実施の形態に係る制御部11ではそのようなテーブルが不要であり、調整が容易化される。
なお、本実施の形態では、AC圧力計測値PACを制御部11にフィードバックした構成例を説明しているが、AC圧力計測値PACの代わりに、BC圧力計測値PBCを制御部11にフィードバックするように構成してもよい。通常、BC圧力センサ16a,16bは、AC圧力センサ15a,15bよりも遅れ時間が大きいため、BC圧力計測値PBCを制御部11にフィーバックして制御する場合、遅れ時間の大きさが問題となる。従って、従来のオン・オフ制御では、この遅れ時間の大きさにより、制御部11の安定化(ブレーキシリンダ圧力のハンチング防止)が困難になる。
本実施の形態に係る制御部11では、比例ゲインKを適切に設定することにより、遅れ時間が大きくなっても制御部11の安定化が可能である。また、本実施の形態では、BC圧力計測値PBCをフィードバックして制御を行うことにより、中継弁13aにおける圧力損失を補償することができ、圧力目標値Pref(t)とブレーキシリンダ2a内の圧力(PB)との誤差を、さらに低減することが可能となる。
また、本実施の形態では、比例ゲインKが固定の場合を説明しているが、比例ゲインKは固定値でなくてもよい。例えば、ブレーキシリンダ2aへ圧縮空気を供給する場合と、ブレーキシリンダ2aから圧縮空気を排出する場合とで、それぞれ比例ゲインKを変更してもよい。
また、本実施の形態では、SR圧力センサ16a,16bで計測されたSR圧力計測値PSRを用いて、流量推定値q^AMV、q^RMVを計算している。しかしながら、SR圧力計測値PSRの変化量は小さいため、SR圧力計測値PSRの代わりに、予め定めた値(固定値)を使用してもよい。これにより、SR圧力計測値PSRが利用不可能な場合(例えばSR圧力センサ14aを設けることができない場合)においても、本実施の形態に係る制御部11が利用可能となる。
また、本実施の形態では、AMVとRMVを1つずつ備えたブレーキ制御弁12a,12bが用いられているが、AMVとRMVの数はこれに限定されるものではない。例えば、AMVの代わりに、AMVH(Apply Magnet Valve High)とAMVL(Apply Magnet Valve Low)とを用いると共に、RMVの代わりに、RMVH(Release Magnet Valve High)とRMVL(Release Magnet Valve Low)とを用いてもよい。この場合、流量推定部114で使用される式(5)、式(6)を式(17)、式(18)、式(19)、式(20)に変更する。また、実流量推定部113bで使用される式(8)、式(9)、式(10)を式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)に変更する。また、電磁弁開閉信号計算部115で使用される式(13)、式(14)を、式(26)、式(27)、式(28)、式(29)に変更すればよい。
なお、式(17)に示されるSAMVLはAMVL弁が取り付けられている配管の断面積を表し、式(18)に示されるSAMVHはAMVH弁が取り付けられている配管の断面積を表し、式(19)に示されるSRMVLはRMVL弁が取り付けられている配管の断面積を表し、式(20)に示されるSRMVHはRMVH弁が取り付けられている配管の断面積を表している。
また、本実施の形態では、流量誤差q^eが流量ローパスフィルタ113dに入力され、流量補正値qcが計算されているが、流量ローパスフィルタ113dを用いなくてもよい。例えば、流量ローパスフィルタ113dの代わりに、所定サンプリング時間だけ入力値を保存するメモリなどを用いてもよい。
以上に説明したように、実施の形態1に係る列車ブレーキ制御装置1は、ブレーキ指令20に基づいてブレーキシリンダ2a,2bに作用するブレーキシリンダ圧力を制御する制御部11と、供給された圧縮空気をブレーキシリンダ2a,2bに供給する供給弁とブレーキシリンダ2a,2b内の圧縮空気を排気する排気弁とを有する電磁弁(ブレーキ制御弁12a,12b)と、空気の圧力を計測して圧力計測値(PAC,PSR,PBC,22)を出力する圧力センサ(17a,17b、14a,14b、15a,15b、16a,16b)と、を備え、制御部11は、ブレーキ指令20と前記圧力計測値とに基づいてブレーキシリンダ2a,2b圧力の圧力目標値(Pref(t))を求め、前記圧力目標値と前記圧力計測値との間の誤差を低減するようにブレーキシリンダ2a,2bに流入する圧縮空気の理想流量quを出力する理想流量計算部112と、前記圧力計測値に基づいて前記電磁弁の開閉時にブレーキシリンダ2a,2bへ供給される、またはブレーキシリンダ2a,2bから排気される圧縮空気の流量を推定し、流量推定値q^AMV,q^RMVとして出力する流量推定部114と、理想流量quと流量推定値q^AMV,q^RMVとに基づいて前記電磁弁の開閉信号(sAMV,sRMV)を出力する電磁弁開閉信号計算部115と、流量推定値q^AMV,q^RMVと開閉信号(sAMV,sRMV)とに基づいて、ブレーキシリンダ2a,2bへ供給される、またはブレーキシリンダ2a,2bから排気される圧縮空気の流量(実流量推定値q^u)を推定し、推定した実流量推定値q^uと理想流量quとの誤差が低減するように補正流量quuを計算する流量誤差補正部113と、を有するように構成されている。この構成により、実流量推定値q^uと理想流量quとの誤差を低減することができるため、電磁弁のように、離散化した入力信号しか入力できないアクチュエータを用いた場合においても、連続信号が入力可能なアクチュエータと同等の制御が行える。従って、圧力センサの遅れ時間が大きい場合においてもハンチングを発生させることなく、目標圧力値と圧力計測値との誤差を低減することができる。また、従来技術では、圧力計測値とローパスフィルタの値とを対応付けたテーブルを用いて圧力計測値のパラメータを変更する必要があったが、本実施の形態に係る制御部11では、そのようなテーブルが不要であり、調整が容易化される。その結果、列車ブレーキ制御装置1の性能向上を図ると共に、パラメータ作業に伴う作業が不要であることからLCA(Life Cycle Assessment)の観点からも好ましい列車ブレーキ制御装置1を提供することができる。
また、実施の形態1に係る圧力センサ(15a,15b)は、電磁弁からの圧縮空気の圧力を検出し、圧力計測値(PAC)として出力するようにしたので、制御部11には、BC圧力センサ16a,16bよりも遅れ時間が小さいAC圧力計測値PACがフィードバックされるため、ハンチングが発生しづらい列車ブレーキ制御装置を得ることが可能となる。
また、実施の形態1に係る圧力センサ(16a,16b)は、ブレーキシリンダ2a,2bに供給される圧縮空気の圧力を検出し、圧力計測値(PBC)として出力するようにしたので、中継弁13a,13bにおける圧力損失を補償することができ、圧力目標値Pref(t)とブレーキシリンダ2a,2b内の圧力(PB)との誤差を低減することができる。
また、実施の形態1に係る圧力センサ(15a,15b、14a,14b)は、電磁弁に供給された圧縮空気の圧力と電磁弁からの圧縮空気の圧力とを検出し、圧力計測値(PSRおよびPAC)として出力するようにしたので、SR圧力計測値PSRが用いられていない場合に比べて制御部11における制御の精度を向上させることができ、列車ブレーキ制御装置1の性能向上を図ることができる。
また、実施の形態1に係る圧力センサ(16a,16b、14a,14b)は、電磁弁に供給された圧縮空気の圧力とブレーキシリンダ2a,2bに供給される圧縮空気の圧力を検出し、圧力計測値(PSRおよびPBC)として出力するようにしたので、SR圧力計測値PSRが用いられていない場合に比べて制御部11における制御の精度を向上させることができ、列車ブレーキ制御装置1の性能向上を図ることができる。
また、実施の形態1に係る電磁弁開閉信号計算部115は、補正流量値quuが正であり、かつ供給弁が開いた場合における流量推定値q^AMVよりも補正流量値quuが大きい場合には、供給弁を開く信号を開閉信号(sAMV)として出力し、補正流量値quuが負であり、かつ排気弁を開いた場合における流量推定値q^RMVよりも補正流量値quuが小さい場合には、排気弁を開く信号を開閉信号(sRMV)として出力するようにしたので、高い制御性能を得ることが可能となる。
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る制御部21の構成例を表す図である。実施の形態1との差異は、電磁弁開閉信号計算部115の代わりに電磁弁開閉信号計算部215が用いられている点である。実施の形態2の特徴は、電磁弁開閉信号計算部215にヒステリシス差を設けることで、ブレーキ制御弁2a(2b)の開閉回数を低減している点である。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同一または類似の部分には同一または類似の符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。また、BC圧目標値計算部111、理想流量計算部112、流量誤差補正部113、および流量推定部114は実施の形態1と同じ動作であるため、実施の形態2ではこれらの説明を割愛する。
制御部21は、主たる構成として、BC圧目標値計算部111、理想流量計算部112、流量誤差補正部113、流量推定部114、電磁弁開閉信号計算部215を有して構成されている。
電磁弁開閉信号計算部215には、流量誤差補正部113からの補正流量値quuと、流量推定部114からの流量推定値q^AMV,q^RMVとが入力される。電磁弁開閉信号計算部215は、これらの値に基づき電磁弁開閉信号sAMV,sRMVを計算し、流量誤差補正部113とブレーキ制御弁12a(12b)へ出力する。
以下、電磁弁開閉信号計算部215における計算内容を具体的に説明する。電磁弁開閉信号計算部215では、式(30)により、補正流量値quuと流量推定値q^AMVとが比較される。補正流量値quuが流量推定値q^AMV以上の場合、AMVを開くことを示す電磁弁開閉信号sAMV(sAMV=1)が生成される。そして、AMVが開いている場合において補正流量値quuが流量推定値q^AMVのn倍(n<1)未満となったとき、電磁弁開閉信号計算部215では、AMVを閉じることを示す電磁弁開閉信号sAMV(sAMV=0)が生成される。
また、電磁弁開閉信号計算部215では、式(31)により、補正流量値quuと流量推定値q^RMVとが比較され、補正流量値quuが流量推定値q^RMV以下の場合、RMVを開くことを示す電磁弁開閉信号sRMV(sRMV=1)が生成される。そして、RMVが開いている場合において補正流量値quuが流量推定値q^RMVのn倍(n<1)より大きくなったとき、電磁弁開閉信号計算部215では、RMVを閉じることを示す電磁弁開閉信号sRMV(sRMV=0)が生成される。なお、これら以外の場合は、以前の状態が維持される。
なお、z−1sAMVとz−1sRMVは、所定時間前の電磁弁開閉信号を表す。この所定時間とは例えば、電磁弁開閉信号計算部215のサンプリング時間などである。
次に、実施の形態1による補正流量値quuの変化と実施の形態2による補正流量値quuの変化との違いを説明する。図6は、実施の形態1に係る電磁弁開閉信号計算部115を用いた場合における補正流量値quuの変化と電磁弁開閉信号sAMVの変化との関係を表した図であり、図7は、本実施の形態2に係る電磁弁開閉信号計算部215を用いた場合の補正流量値quuの変化と電磁弁開閉信号sAMVの変化との関係を表した図である。
なお、説明を簡略化するために、以下の説明では流量推定値q^AMVを一定値と仮定し、図6,7にはこの流量推定値q^AMVが示されている。実際には、流量推定値q^AMVは時間によって連続的に変化する値である。そして、補正流量値quuや電磁弁開閉信号sAMVが連続的に変化する場合であっても、本実施の形態に係る制御部21を用いた場合の効果を得ることができる。
まず、図6を用いて実施の形態1に係る電磁弁開閉信号計算部115を用いた場合の補正流量値quuと電磁弁開閉信号sAMVの変化を説明する。(1)時刻0において、制御部11が動作し始めると、BC圧目標値計算部111によりBC圧目標値Pref(t)が徐々に大きくなり、それに伴い補正流量値quuの値も大きくなる。そして、補正流量値quuの値が流量推定値q^AMVより大きくなったとき、電磁弁開閉信号sAMVが1になり、AMVが開く。(2)AMVが開くことによりブレーキシリンダ2a,2bへ圧縮空気が供給されると、ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力が大きくなると共に、AC圧力計測値PACも大きくなる。(3)このことによりBC圧目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとの誤差が小さくなり、補正流量値quuの値も小さくなっていく。そして、補正流量値quuが流量推定値q^AMVより小さくなったとき、電磁弁開閉信号sAMVが0になり、AMVが閉じる。
(4)そして、ブレーキシリンダ2a,2bへ圧縮空気が供給されなくなると、ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力やAC圧力計測値PACが変化しなくなるが、BC圧目標値Pref(t)は徐々に大きくなる。そのため、BC圧目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとの誤差が大きくなる。(5)そして、補正流量値quuが大きくなり、いずれ補正流量値quuが流量推定値q^AMVよりも大きくなり、AMVが開く。
実施の形態1の列車ブレーキ制御装置1では以上のことが繰り返し行われたため、AMVの開閉回数が実施の形態2に比べて多くなる。AMVやRMVなどのブレーキ制御弁12a,12bでは開閉可能な回数が決まっているため、出来るだけ少ない開閉回数で制御が行えることが望ましい。
次に、図7を用いて実施の形態2に係る電磁弁開閉信号計算部215を用いた場合の補正流量値quuと電磁弁開閉信号sAMVの変化を説明する。(1)時刻0において、制御部21が動作し始めると、BC圧目標値計算部111によりBC圧目標値Pref(t)が徐々に大きくなり、それに伴い補正流量値quuの値も大きくなる。そして、補正流量値quuの値が流量推定値q^AMVより大きくなったとき、電磁弁開閉信号sAMVが1になり、AMVが開く。(2)AMVが開くことによりブレーキシリンダ2a,2bへ圧縮空気が供給されると、ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力が大きくなると共に、AC圧力計測値PACも大きくなる。(3)このことによりBC圧力目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとの誤差が小さくなり、補正流量値quuの値も小さくなっていく。ここまでは、実施の形態1と同じ動作である。
(4)実施の形態2は、補正流量値quuの値が流量推定値q^AMVより小さくなった場合でもすぐにAMVを閉じることはぜずに、補正流量値quuがn・q^AMV(n<1)よりも小さくなったときにAMVを閉じる。(5)そして、ブレーキシリンダ2a,2bへ圧縮空気が供給されなくなると、ブレーキシリンダ2a,2b内の圧力やAC圧力計測値PACは変化しなくなるが、BC圧目標値Pref(t)は徐々に大きくなる。そのため、BC圧目標値Pref(t)とAC圧力計測値PACとの誤差が大きくなる。そして、補正流量値quuが大きくなり、いずれ補正流量値quuが流量推定値q^AMVよりも大きくなり、AMVが開く。
以上のように、実施の形態2は、補正流量値quuの値が流量推定値q^AMVより小さくなっても、すぐにAMVを閉じずに、補正流量値quuがn・q^AMV(n<1)よりも小さくなってからAMVを閉じる。このことにより、AMVが閉じる時刻を遅くすることができ、その結果AMVの開閉回数を低減することが可能となる。
なお、実施の形態2ではAMVの動作を例にとって説明したが、RMVについても同様のことが言える。また、実施の形態2では、ブレーキ制御弁12a,12bのAMV・RMVがそれぞれ一つの場合を説明したが、AMV・RMVが複数ある場合についても同様の効果がある。
以上に説明したように、実施の形態2にかかる電磁弁開閉信号計算部215は、供給弁が開いている場合において、補正流量値quuが流量推定値q^AMVのn倍(n≦1)よりも小さくなったときには、供給弁を閉じる信号を開閉信号(sAMV)として出力し、排気弁が開いている場合において、補正流量値quuが流量推定値q^RMVのn倍(n≦1)よりも大きくなったときには、排気弁を閉じる信号を開閉信号(sRMV)として出力するようにしたので、実施の形態1と同様に高い制御性能を得ることができると共に、供給弁と排気弁の開閉回数を低減することができる。その結果、列車ブレーキ制御装置1のメンテナンスコストの低減を図ることができ、また列車ブレーキ制御装置1の信頼性を向上させることができる。
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3に係る制御部31の構成例を表す図である。実施の形態1との差異は、流量誤差補正部113の代わりに流量誤差補正部313が用いられている点であり、本実施の形態3と実施の形態1とでは、流量誤差補正部の構成が異なる。なお、実施の形態3では、実施の形態1と同一または類似の部分には同一または類似の符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。またBC圧目標値計算部111、理想流量計算部112、流量推定部114、電磁弁開閉信号計算部115は実施の形態1と同じ動作であるため、実施の形態3ではこれらの説明を割愛する。
制御部31は、主たる構成として、BC圧目標値計算部111、理想流量計算部112、流量誤差補正部313、流量推定部114、および電磁弁開閉信号計算部115を有して構成されている。
流量誤差補正部313は、流量誤差補正加算器313a、実流量推定部113b、推定流量遅延器313d、流量誤差補正積分器313fを有して構成されている。なお、実流量推定部113bの動作は実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。
推定流量遅延器313dには、実流量推定部113bからの実流量推定値q^uが入力され、推定流量遅延器313dは、実流量推定値q^uを1サンプリング時間保存し、保存している1サンプリング時間前の実流量推定値q^uの値を、1サンプリング時間前の実流量推定値z−1q^uとして流量誤差補正加算器313aに出力する。
流量誤差補正加算器313aには、理想流量計算部112からの理想流量quと、推定流量遅延器313dからの1サンプリング時間前の実流量推定値z−1q^uとが入力される。流量誤差補正加算器313aは、これらの値の差を式(32)より計算し、その計算結果を流量誤差qeとして、流量誤差補正積分器313fへ出力する。ここで、z−1は遅延要素を表している。
流量誤差補正積分器313fには、流量誤差補正加算器313aからの流量誤差qeが入力される。流量誤差補正積分器313fは、流量誤差qeを式(33)より積分(積算)し、積分(積算)した結果を流量補正値qcとして、電磁弁開閉信号計算部115へ出力する。
以上のように流量誤差補正部313を構成することにより、流量誤差補正部313の特性をΔΣ変調(連続値の入力信号を離散値の出力信号に変換する技術)と同じ特性にすることが可能となる。従って、制御部31においても、ブレーキ制御弁12a,12bからブレーキシリンダ2a,2bへ流れる圧縮空気の流量と理想流量quとが等しくなるように、電磁弁開閉信号sAMV,sRMVが計算される。そのため、制御部31でも制御部11と同様の制御性能を得ることが可能となる。
なお、本実施の形態の制御部31では、電磁弁開閉信号計算部115が用いられているが、電磁弁開閉信号計算部115の代わりに、実施の形態2の電磁弁開閉信号計算部215を用いても同様の効果を得ることができる。
なお、本発明の実施の形態1〜3にかかる列車ブレーキ制御装置は、本発明の内容の一例を示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略するなど、変更して構成することも可能であることは無論である。