JP5832287B2 - 神経障害に関連する神経毒性アミノ酸を検出するためのイムノアッセイ - Google Patents

神経障害に関連する神経毒性アミノ酸を検出するためのイムノアッセイ Download PDF

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Description

関連出願
本願は、2008年7月9日に出願された米国特許仮出願第61/079,334号の優先権の利益を主張し、これは、参照によってその全体が本明細書に明確に組み込まれる。
本発明は、β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)に結合する抗体、ならびに試料中のBMAAの存在を検出するために試料をスクリーニングするためのイムノアッセイおよびキットに関する。
非タンパク質アミノ酸β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)は、種々の分類群のシアノバクテリアによって産生され(非特許文献1)、様々な実験条件下でインビボおよびインビトロに投与される場合、神経興奮および神経毒性作用を有することが示されている。BMAAは、ソテツ種から形成される粉末中に認められ得るため、BMAAは、グアム島のチャモロ人の間で数十年前に同定された独特の神経疾患に関連する候補神経毒であると考えられており、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソニズム、および認知症の特徴と臨床的類似性を有する症状の組み合わせであるため、グアム島の筋萎縮性側索硬化症−パーキンソン痴呆症複合(ALS−PDC)として公知であり、これは、BMAA含有ソテツ粉を含む、食生活と関係していると考えられている(とりわけ、非特許文献2、非特許文献3)。食物連鎖におけるBMAAの生物濃縮は、例えば、グアム島において、ソテツの根においてシアノバクテリア共生生物によって産生されるBMAAは、ソテツ宿主に取り込まれ、それらの組織にBMAAを更に蓄積するオオコウモリ(コウモリ)または人々によって食される、種子の肉質種皮(sarcotesta)および種子の配偶体等の構造に蓄積され、BMAAの高蓄積レベルを有するオオコウモリ(コウモリ)が、人々により食される場合、劇的な生物濃縮を有することが示されている(とりわけ、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。
近年、BMAAは、ソテツまたはオオコウモリを食していない被験体の組織において検出されており、BMAAの検出可能なレベルを有する一部の被験体は、アルツハイマー病、ALS、および進行性核上麻痺(PSP)等の神経障害を(症状に基づいて)臨床的に診断されているか、または(例えば、脳組織の剖検に基づいて)診断が確認されており、一方、BMAAの検出可能なレベルを有する他の被験体は、神経障害の無症候期であった(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
組織試料および/または環境試料の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはHPLC質量分析法(HPLC−MS)の分析による、BMAA等の神経毒性アミノ酸について組織試料および環境試料を分析するためのクロマトグラフ法が開示されている(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、特許文献1、特許文献2)。
米国特許第7,256,002号 米国特許出願公開第2007/0254315号 米国特許出願公開第2007/0292893号
Cox et al.(2005)Proc Natl Acad Sci USA 102:5074−5078 Spencer et al.(1987)Science 237:517−522 Kisby et al.(1992)Neurodegeneration 1:73−82 Bannack et al.(2003)Neurology 61387−389 Cox et al.(2002)Neurology 58:956−959 Cox et al.(2003)Proc Natl Acad Sci USA 100:13380−13383 Murch et al.(2004)Proc Natl Acad Sci USA 101:12228−12231 Murch et al.(2004)Acta Neurol Scand 110:267−269
本発明は、β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)の存在を検出するために試料をスクリーニングするためのイムノアッセイを提供する。本発明は、イムノアッセイを提供し、ここで、遊離BMAAが検出されるか、またはタンパク質結合BMAAが検出されるか、または遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方が検出される。本明細書に提供されるイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)であり得、ELISAは、抗体捕捉アッセイ、間接競合ELISA、または直接ELISAであり得るが、これらに限定されない。本明細書に提供されるイムノアッセイは、免疫ブロットアッセイであり得る。
本発明は、BMAAの存在を検出するために試料をスクリーニングするためのイムノアッセイを提供し、ここで、イムノアッセイには、BMAAに結合する抗体が含まれる。本発明は、BMAAの存在を検出するために試料をスクリーニングするためのイムノアッセイを提供し、これには、BMAAに結合し、L−アラニン、L−グルタミン、L−チロシン、グリシル−グリシン、L−グリシン、L−ロイシン、L−フェニルアラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸、およびL−アスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸には実質的に結合しない、抗体を含む。本発明は、BMAAに結合する抗体を含むイムノアッセイを提供し、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または抗体フラグメントであり得る。本発明は、BMAAに結合する抗体を含むイムノアッセイを提供し、抗体は、検出可能に標識され得、標識は、放射性標識、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、コロイド金標識、色素部分、常磁性化合物、検出可能な酵素、ビオチン、アビジン、またはストレプトアビジンであり得るが、これらに限定されない。本発明は、BMAAに結合する抗体を含むイムノアッセイを提供し、抗体は、検出可能に標識されない抗体であり得、イムノアッセイは、BMAAに結合する標識されない抗体に結合する検出可能に標識された二次抗体を更に含み、標識は、放射性標識、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、コロイド金標識、色素部分、検出可能な酵素、検出可能なリガンド、ビオチン、アビジン、またはストレプトアビジンであり得るが、これらに限定されない。二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いて標識され得る。
本発明は、BMAAの存在を検出するために、試料をスクリーニングするためのイムノアッセイを提供し、イムノアッセイには、増幅ステップを更に含まれる。
本発明は、BMAAに結合する抗体と試料とを接触させ、抗体を検出することによって、本明細書に提供されるようなイムノアッセイを用いて、BMAAの存在を検出するために、試料をスクリーニングするための方法を提供する。本発明は、本明細書に提供されるような、イムノアッセイを用いて、組織試料中のBMAAの存在を検出するために、被験体からの組織試料をスクリーニングするための方法を提供し、試料中の検出可能な量のBMAAの存在は、BMAAの環境源への被験体の曝露を示す。本発明は、神経組織または非神経組織が挙げられるが、これらに限定されない、組織試料中のBMAAの存在を検出するために、試料をスクリーニングするための方法を提供し、神経組織は、毛髪、皮膚、爪、鉤爪、または蹄等のケラチン組織であり得る。本発明は、組織試料の免疫ブロット上でタンパク質結合BMAAを検出することによって、本明細書に提供されるようなイムノアッセイを用いて、BMAAの存在を検出するために、試料をスクリーニングするための方法を提供する。本発明は、本明細書に提供されるようなイムノアッセイを用いて、環境試料中のBMAAの存在を検出するために、環境試料をスクリーニングするための方法を提供し、環境試料は、水試料、または食料品からの試料であり得るが、これらに限定されない。本発明は、本明細書に提供されるようなイムノアッセイを用いて、環境試料中のBMAAの存在を検出するために、環境試料をスクリーニングするための方法を提供し、方法には、試料中のシアノバクテリア物質を検出するために、試料をスクリーニングすることを更に含むことができる。本発明は、環境試料の免疫ブロット上でタンパク質結合BMAAの存在を検出し、免疫ブロット上でシアノバクテリアタンパク質を更に検出することによって、環境試料をスクリーニングするための方法を提供する。
本発明は、BMAAに結合する抗体を提供する。本発明は、BMAAに結合し、L−アラニン、L−グルタミン、L−チロシン、グリシル−グリシン、L−グリシン、L−ロイシン、L−フェニルアラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸、およびL−アスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸には実質的に結合しない、抗体を提供する。本発明は、BMAAに結合する抗体を提供し、抗体は、遊離BMAAに結合することができるか、または抗体は、タンパク質結合BMAAに結合するか、または抗体は、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方に結合する。本発明は、BMAAに結合する抗体を提供し、抗体は、L−BMAA異性体に結合し、BMAAのD異性体には実質的に結合しない。本明細書に記載されるようなBMAAに結合する抗体は、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体、または抗体フラグメントであり得る。本明細書に記載されるようなBMAAに結合する抗体は、検出可能に標識され得る。本明細書に記載されるようなBMAAに結合する抗体は、インビボ画像診断法で用いるために標識され得る。
本発明は、BMAAの存在を検出するために、試料をスクリーニングするためのキットを提供し、キットは、1つ以上の容器手段(容器)を受容するように区画化される運搬手段(運搬)を含み、キットは、BMAAに結合する抗体を伴う少なくとも1つの容器手段を含む。本明細書に提供されるようなキットでは、BMAAに結合する抗体が、検出可能に標識され得、キットは、試料に結合した標識された抗体を検出するための手段を伴う、少なくとも1つの容器手段(容器)を更に含むことができる。本明細書に提供されるようなキットでは、BMAAに結合する抗体は、標識されないものであり得、標識されない抗体に結合する標識された二次抗体を伴う、少なくとも1つの容器手段を更に含むことができ、試料に結合した標識されない抗体に結合する標識された二次抗体を検出するための手段を伴う容器手段を更に含むことができる。本明細書に提供されるようなキットには、既知量のBMAAを含有する対照試料を伴う容器手段を含むことができる。本明細書に提供されるようなキットには、BMAAの存在を検出するために、試料を調製するための手段を含むことができ、かかる手段には、試料を機械的に分離するための手段、および試料を化学的に分離するための手段が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明は、BMA
Aの存在を検出するために、被験体からの組織試料をスクリーニングするためのキットを提供し、組織試料は、毛髪または皮膚等のケラチン組織試料であり得るが、これらに限定されない。本発明は、BMAAの存在を検出するために、環境試料をスクリーニングするためのキットを提供し、環境試料は、水試料または食料品からの試料であり得るが、これらに限定されない。本明細書に提供されるようなキットは、複数の試料タイプをスクリーニングするための手段を含有することができる。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)の存在を検出するために試料をスクリーニングするためのイムノアッセイ。
(項目2)
遊離BMAAが検出される、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目3)
タンパク質結合BMAAが検出される、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目4)
遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方が検出される、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目5)
前記イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目6)
前記ELISAは、抗体捕捉アッセイである、項目5に記載のイムノアッセイ。
(項目7)
前記ELISAは、間接競合ELISAである、項目5に記載のイムノアッセイ。
(項目7)
前記ELISAは、直接ELISAである、項目5に記載のイムノアッセイ。
(項目8)
前記イムノアッセイは、免疫ブロットアッセイである、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目10)
BMAAに結合する抗体を含む、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目11)
BMAAに結合する前記抗体は、L−アラニン、L−グルタミン、L−チロシン、グリシル−グリシン、L−グリシン、L−ロイシン、L−フェニルアラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸、およびL−アスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸には実質的に結合しない、項目10に記載のイムノアッセイ。
(項目12)
BMAAに結合する前記抗体は、ポリクローナル抗体である、項目10に記載のイムノアッセイ。
(項目13)
BMAAに結合する前記抗体は、モノクローナル抗体である、項目10に記載のイムノアッセイ。
(項目14)
BMAAに結合する前記抗体は、抗体フラグメントである、項目10に記載のイムノアッセイ。
(項目15)
BMAAに結合する前記抗体は、検出可能に標識される、項目10に記載のイムノアッセイ。
(項目16)
前記抗体は、放射性標識、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、コロイド金標識、色素部分、常磁性化合物、検出可能な酵素、ビオチン、アビジン、およびストレプトアビジンからなる群から選択される標識を用いて標識される、項目15に記載のイムノアッセイ。
(項目17)
BMAAに結合する前記抗体は、検出可能に標識されず、BMAAに結合する前記抗体に結合する検出可能に標識される二次抗体を更に含む、項目10に記載のイムノアッセイ。
(項目18)
前記二次抗体は、放射性標識、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、コロイド金標識、色素部分、常磁性化合物、検出可能な酵素、検出可能なリガンド、ビオチン、アビジン、およびストレプトアビジンからなる群から選択される標識を用いて標識される、項目17に記載のイムノアッセイ。
(項目19)
前記二次抗体は、検出可能な酵素を用いて標識される、項目18に記載のイムノアッセイ。
(項目20)
前記検出可能な酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、項目19に記載のイムノアッセイ。
(項目21)
増幅ステップを更に含む、項目1に記載のイムノアッセイ。
(項目22)
項目1に記載のイムノアッセイに従ってβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)の存在を検出するために試料をスクリーニングするための方法であって、BMAAに結合する抗体と前記試料とを接触させることと、前記抗体を検出することと、を含む、方法。
(項目23)
被験体からの組織試料をスクリーニングし、前記組織試料中のBMAAの存在を検出することを含み、前記試料中の検出可能な量のBMAAの存在は、BMAAの環境源への前記被験体の曝露を示す、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記組織試料は、神経組織である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記組織試料は、非神経組織である、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記非神経組織は、ケラチン組織である、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記ケラチン組織は、毛髪である、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記ケラチン組織は、皮膚である、項目26に記載の方法。
(項目30)
前記ケラチン組織は、爪、鉤爪、または蹄である、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記組織試料の免疫ブロット上でタンパク質結合BMAAの存在を検出することを含む、項目23に記載の方法。
(項目32)
前記試料は、環境試料である、項目22に記載の方法。
(項目33)
前記環境試料は、水試料である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記環境試料は、食料品からのものである、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記試料中のシアノバクテリア物質を検出するために前記試料をスクリーニングすることを更に含む、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記環境試料の免疫ブロット上でタンパク質結合BMAAの存在を検出することを含み、前記免疫ブロット上でシアノバクテリアタンパク質を検出することを更に含む、項目32に記載の方法。
(項目37)
BMAAに結合する抗体。
(項目38)
L−アラニン、L−グルタミン、L−チロシン、グリシル−グリシン、L−グリシン、L−ロイシン、L−フェニルアラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸、およびL−アスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸には実質的に結合しない、項目37に記載の抗体。
(項目39)
前記抗体は、遊離BMAAに結合する、項目37に記載の抗体。
(項目40)
前記抗体は、タンパク質結合BMAAに結合する、項目37に記載の抗体。
(項目41)
前記抗体は、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方に結合する、項目37に記載の抗体。
(項目42)
前記抗体は、L−BMAA異性体に結合し、BMAAのD異性体には実質的に結合しない、項目37に記載の抗体。
(項目43)
前記抗体は、ポリクローナル抗体である、項目37に記載の抗体。
(項目44)
前記抗体は、モノクローナル抗体である、項目37に記載の抗体。
(項目45)
前記抗体は、抗体フラグメントである、項目37に記載の抗体。
(項目46)
前記抗体は、検出可能に標識される、項目37に記載の抗体。
(項目47)
前記抗体は、インビボ画像診断法で用いるために標識される、項目37に記載の抗体。
(項目48)
1つ以上の容器手段を受容するように区画化された運搬手段を含む、β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)の存在を検出するために、試料をスクリーニングするためのキットであって、少なくとも1つの容器手段は、BMAAに結合する抗体を含む、キット。
(項目49)
BMAAに結合する前記抗体は、検出可能に標識される、項目48に記載のキット。
(項目50)
前記試料に結合した前記標識された抗体を検出するための手段を含む、少なくとも1つの容器手段を更に含む、項目49に記載のキット。
(項目51)
BMAAに結合する前記抗体は、標識されない、項目48に記載のキット。
(項目52)
前記標識されない抗体に結合する標識された二次抗体を含む、容器手段を更に含む、項目51に記載のキット。
(項目53)
前記試料に結合した前記標識されない抗体に結合する前記標識された二次抗体を検出するための手段を含む、容器手段を更に含む、項目52に記載のキット。
(項目54)
既知量のBMAAを含有する対照試料を含む、容器手段を更に含む、項目48に記載のキット。
(項目55)
BMAAの存在を検出するために、前記試料を調製するための手段を更に含む、項目4
8に記載のキット。
(項目56)
前記試料を調製するための前記手段は、前記試料を機械的に分離するための手段を含む、項目55に記載のキット。
(項目57)
前記試料を調製するための前記手段は、前記試料を化学的に分離するための手段を含む、項目55に記載のキット。
(項目58)
被験体からの組織試料をスクリーニングするための、項目48に記載のキット。
(項目59)
前記組織試料は、ケラチン組織試料である、項目58に記載のキット。
(項目60)
環境試料をスクリーニングするための、項目48に記載のキット。
(項目61)
前記環境試料は、水試料である、項目60に記載のキット。
(項目62)
前記環境試料は、食料品からのものである、項目60に記載のキット。
(項目63)
複数の試料タイプをスクリーニングするための、項目48に記載のキット。
BMAAに対する抗体の産生および試験するために使用される複合および免疫付与の手順の概略を示し、ここで、KLHは、キーホールリンペットヘモシアニンであり、BSAは、ウシ血清アルブミンであり、GLUは、グルタルアルデヒドであり、EDCは、カルボジイミドである。 示されるような異なるpH値を有する緩衝液の存在下で、MAXISORP(商標)(図3A)、MEDISORP(商標)(図3B)、およびMULTISORP(商標)(図3C)プレート上で、BMAAは、20μg/mLの被覆濃度であり、BMAA複合体に対して産生される抗血清(EDC1−1、EDC2−1、Glu1、Glu2、Glu3、Glu4)およびヌル血清(NS1、NS2)の反応性を測定するための抗体捕捉イムノアッセイからの結果を示す。 左から右に、0.2mM、0.5mM、1mM、および10mMの被覆濃度で、グルタルアルデヒドで連結されたBMAA、L−アラニン(L−Ala)、L−グルタミン(L−Gln)、L−チロシン(L−Tyr)、グリシル−グリシン(glygly)、L−グリシン(L−Gly)、L−ロイシン(L−leu)、L−フェニルアラニン(L−Phe)、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸(L−Glu)、およびL−アスパラギン酸(L−Asp)を用いて、1/1000の希釈(パネルA)および1/2000の希釈(パネルB)で、BMAA複合体のKLH−GLU−BMAAに対して産生される抗血清(抗KGBの3回目の採血)の反応性を測定するための抗体捕捉イムノアッセイからの結果を示す。 KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清を用いてプローブされるBSA−BMAA複合体の免疫ブロットの画像を示し、ここで、各ブロットのレーン1は、BSA−GLU−BMAA(BGB)を含有し、各ブロットのレーン2は、BSA−EDC−BMAA(BEB)を含有し、各ブロットのレーン3は、天然BSAを含有し、ブロットAは、1/100の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされ、ブロットBは、1/200の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされ、ブロットCは、1/500の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされ、ブロットDは、1/100の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされ、ブロットEは、1/200の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされ、ブロットFは、1/500の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされる。 BMAA複合体に対して産生される抗血清を用いてプローブされるキリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ(Cylindrospermopsis raciborskii)株CR3(「CR3タンパク質」)の全タンパク質抽出物の免疫ブロットの画像を示し、ここで、各ブロットのレーン1は、BSAを含有し、各ブロットのレーン2は、CR3タンパク質を含有し、各ブロットのレーン3は、BMAAで予めインキュベートされたCR3タンパク質を含有し、ブロットAは、1/100の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされ、ブロットBは、1/200の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされ、ブロットCは、1/500の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされ、ブロットDは、1/100の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされ、ブロットEは、1/200の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされ、ブロットFは、1/500の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされた。 BMAA複合体に対して産生される抗血清を用いてプローブされる、キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3(「CR3タンパク質」)の全タンパク質抽出物および並列BSA対照の免疫ブロットの画像を示し、奇数のレーンは、天然BSAを含有し、偶数のレーンは、CR3全タンパク質を含有し、レーン3〜10は、抗KGB抗血清を用いてプローブされ、レーン12〜10は、抗KEB抗血清を用いてプローブされ、レーン2および12は、以下の通りにヌル血清を用いてプローブされた。レーン2、1/200の希釈でヌル血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン3、1/200の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン4、1/200の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン5、1/500の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン6、1/500の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン7、1/1000の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン8、1/1000の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン9、1/2000の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン10、1/2000の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン12、1/200の希釈でヌル血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン13、1/200の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン14、1/200の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン15、1/500の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン16、1/500の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン17、1/1000の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたBSA;レーン18、1/1000の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質;レーン19、1/2000の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたBSA;およびレーン20、1/2000の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされたCR3タンパク質。 BMAA複合体に対して産生される抗血清を用いてプローブされる、キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3(「CR3タンパク質」)、大腸菌株HK29(「大腸菌株HK29タンパク質」)、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)(「クロレラタンパク質」)、およびテトラセルミス(Tetraselmis)種のタンパク質(「テトラセルミスタンパク質」)の純粋株の全タンパク質抽出物(1レーン当たり20μgのタンパク質)の免疫ブロットの画像を示し、ここで、レーン1および11は、分子量マーカー(100〜1000Da)を含有し、レーン2、6、12、および16は、CR3タンパク質を含有し、レーン3、7、13、および17は、大腸菌HK29タンパク質を含有し、レーン4、8、14、および18は、クロレラタンパク質を含有し、レーン5、9、15、および19は、テトラセルミスタンパク質を含有し、レーン2〜5は、1/500の希釈でヌル血清を用いてプローブされ、レーン6〜9は、1/500の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされ、レーン12〜15は、1/1000の希釈で抗KEB抗血清を用いてプローブされ、レーン16〜19は、1/500の希釈で抗KGB抗血清を用いてプローブされた。
本開示は、神経障害に関連する神経毒性アミノ酸を検出するために、試料をスクリーニングするためのイムノアッセイ、抗体、およびキットを提供する。本発明は、試料中のBMAAの存在を検出するためのイムノアッセイ、抗体、およびキットを提供し、BMAAに結合する抗体と試料とを接触させることと、試料に結合した抗体を検出すること、を含む。試料中のβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)を検出するために、試料をスクリーニングするためのイムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。BMAAの環境源への曝露を検出するために、被験体をスクリーニングするためのイムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。BMAAの環境源を同定するために、環境試料をスクリーニングするためのイムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。
本発明は、BMAAに結合する抗体と組織試料とを接触させ、組織試料に結合した抗体を検出することによって、被験体からの組織試料中のBMAAの存在を検出するために、イムノアッセイ、抗体、およびキットを提供する。本発明の一態様に従って、被験体からの組織試料中のBMAAを検出するために本発明のイムノアッセイを用いて、BMAAの環境源への曝露のために被験体をスクリーニングするためにイムノアッセイ、抗体、およびキットが提供され、組織試料中の検出可能な量のBMAAの存在は、BMAAが、スクリーニングされる組織中の検出可能なレベルまで蓄積されているので、被験体が、BMAAの環境源に曝露されていることを示す。本発明の別の態様に従って、被験体からの組織試料中のBMAAを検出するために本発明のイムノアッセイを用いて、神経障害、特に、BMAAに関連する神経毒性アミノ酸への曝露のために被験体をスクリーニングするために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供され、組織試料中の検出可能な量のBMAAの存在は、被験体が、神経障害に関連する神経毒性アミノ酸に曝露されていることを示す。本発明の別の態様に従って、被験体からの組織試料中のBMAAを検出するために本発明のイムノアッセイを用いて、神経疾患に罹患している、または罹患する危険性がある被験体をスクリーニングするために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。
本発明は、BMAAに結合する抗体と環境試料とを接触させ、環境試料に結合した抗体を検出することによって、環境試料中のBMAAの存在を決定するために、イムノアッセイ、抗体、およびキットを提供する。本発明の一態様に従って、環境試料中のBMAAを検出するために本発明のイムノアッセイを用いて、BMAAの環境源のために、スクリーニングするためのイムノアッセイ、抗体、およびキットが提供され、環境試料中の検出可能な量のBMAAの存在は、試料が、BMAAの環境源であることを示す。別の態様に従って、神経障害、特に、BMAAに関連する神経毒性アミノ酸について、環境試料をスクリーニングするために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。一実施形態では、本発明は、被験体によって摂取され得るか、または摂取されている、環境試料中のBMAAの存在を検出するために、イムノアッセイを提供する。一実施形態では、環境試料は、水試料または食料品が含まれ得るが、これらに限定されない。
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することができるが、方法および材料の限定されない例示的な実施形態が、本明細書に記載される。
「抗体」という用語は、元来は、抗原標的に特異的に結合し、認識する、免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントによって実質的にコードされるポリペプチドを指すことが理解されるが、本明細書で使用されるとき「抗体」という用語は、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、無傷抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗原に対する血清反応(即ち、抗原に対して産生される抗血清)、内因性遺伝的配列の発現によって産生される抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体(新たに合成される)、多価抗体、一本鎖抗体、抗体フラグメント、抗体部分配列、抗原に結合する能力を保有する任意の抗体部、一価Fabフラグメント、二価F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、dAbフラグメント、Fvフラグメント(可変フラグメント)、一本鎖Fvフラグメント(scFvs)、単離相補性決定領域(CDR)、ファージディスプレイライブラリーを用いて生成されたエピトープ結合ポリペプチド等を包含し、上述の用語のうちの1つ以上を使用して、本発明の抗体、例えば、BMAAに結合する組み換えモノクローナル抗体を説明し得る。
「BMAAの存在を検出する」または「BMAAの存在の検出」という語句、または同様の語句もしくはそれと文法的に同等のものは、試料中の検出可能なレベルまたは量のBMAAの有無を決定することを包含し、試料中のBMAAのレベルまたは量を決定すること、または定量化することを一般に包含することを理解されたい。語句は、限定されない方法において使用されることを理解されたい。更に、「BMAAレベルを決定する」もしくは「BMAAレベルの決定」という語句、または同様の語句は、試料中のBMAAのレベルまたは量を決定すること、または定量化することを包含することを理解されたい。ある限定されない実施形態では、検出可能なレベルのBMAAが試料中に存在するかどうかを確認するのみのイムノアッセイが提供される。ある限定されない実施形態では、試料または試料分画中のBMAAのレベルまたは量を決定すること、または定量化するための手段を提供する、イムノアッセイが提供される。他の限定されない実施形態では、例えば、1つの試料中のBMAAのレベルが、他の試料中で検出されたレベルと比較して、上昇したり、減少したりするかどうかを決定するために、複数の試料の分析および比較を可能にする、イムノアッセイが提供される。
本明細書で使用されるとき「選別する(screen)」もしくは「スクリーニングする(screening)」という語句、または同様の語句としては、神経障害に関連する神経毒性アミノ酸を検出するために、スクリーニングすること、および神経毒性アミノ酸のレベルまたは量を決定するために、スクリーニングすることが挙げられるが、これらに限定されず、神経障害、特に、BMAAに関連する神経毒性アミノ酸への被験体の実際のまたは潜在的な曝露を決定するために、被験体からの組織試料をスクリーニングすること、および神経疾患、特に、BMAAに関連する神経毒性アミノ酸を含有する環境試料を同定するために、スクリーニングすることも包含する。
「結合特異性」または「特異的結合」とは、第2の分子に対する第1の分子の実質的な認識、および実質的な結合を指す。本発明は、BMAAの実質的な認識、および実質的な結合に対する能力を有する担体タンパク質に複合されたBMAAに対して産生される抗血清(抗BMAA抗血清)、即ち、BMAAに対して結合特異性および特異性結合を有する抗BMAA抗血清を提供する。本発明は、BMAAに対して結合特異性および特異的結合を有する抗体を提供し、本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または抗体フラグメント、例えば、BMAAに対して結合特性を有する、Fv、一本鎖Fv、Fab’、もしくはF(ab’)2フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「実質的結合」もしくは「実質的に結合する」という語句または同様の語句は、特定のアッセイ条件下で、アッセイ混合物中の分子間で、特異的結合もしくは認識する、または反応性の量を指す。本明細書で使用されるとき、実質的結合は、BMAA(標的分子)に結合するもしくは認識する抗体の能力と、1つ以上の異なる分子、例えば、BMAA(非標的分子)に構造的に類似したアミノ酸に結合する能力の抗体の欠損との差異に関し、このため、差異は、特定の一連のアッセイ条件下で行われるべきBMAAを検出するための有意のアッセイを認めるには十分である。分子間の結合または反応に影響を及ぼし得るアッセイ条件としては、標的および非標的分子の相対濃度、ならびにインキュベーションの時間および温度が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、実質的結合は、BMAAとの抗体の反応性と、1つ以上の異なる分子、例えば、BMAAに構造的に類似したアミノ酸との反応性の抗体の欠損との差異に関し、このため、差異は、特定の一連のアッセイ条件下で行われるべきBMAAを検出するための有意のアッセイを認めるには十分である。本明細書で使用されるとき、「実質的に結合しない」または「実質的に交差反応しない」という語句は、一般に、特定のアッセイ条件下で、アッセイ混合物中の分子間で結合または認識する量を指し、BMAAに結合または認識可能な抗体が、実質的に、構造的に類似したアミノ酸等の別の分子に結合または認識することができない、即ち、BMAAに結合または認識可能な抗体は、実質的に、構造的に類似したアミノ酸等の他の分子と交差反応できない。BMAAとの反応性を有する抗体は、結合能力、または構造的に類似したアミノ酸との交差反応を有し得、これは、分子の相対濃度およびインキュベーションを含む、特定の一連のアッセイ条件下で、BMAAに対して示した反応性の25%未満、好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満である。構造的に類似したアミノ酸を「実質的に結合しない」BMAAとの反応性を有する抗体は、構造的に類似したアミノ酸への検出可能な結合を示し得るか、または特定の一連のアッセイ条件下で、構造的に類似したアミノ酸への検出可能な結合を示し得ない。特異的結合、実質的結合、または実質的結合の欠損は、多くの周知の方法、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、特に、抗体捕捉ELISAもしくは間接競合ELISA、または免疫ブロット(「ウエスタンブロット」)アッセイ、またはラジオイムノアッセイ(RIA)、または免疫組織化学的アッセイを用いて、試験することができる。
本明細書に提供されるように、被験体は、本発明の方法を実施するのに好適ないずれの生物であり得る。特に、被験体は、哺乳動物、更に具体的には、霊長類、なお更に具体的には、ヒトである。一実施形態では、被験体は、神経障害に関連する神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体に曝露される実験動物である。このような実験動物としては、マウス、ウサギ、ラット、コウモリ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル、類人猿、または神経障害についての研究に好適な他の動物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本発明の方法は、1つ以上の神経疾患が存在する動物モデルについての実験動物を使用して実行される。別の実施形態では、本発明の方法は、1つ以上の神経疾患の動物モデルの開発の一環として、実験動物を使用して実行される。なお別の実施形態では、本発明の方法は、神経障害に関連する神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体への曝露の効果が、脳の化学、構造、または機能の研究により測定されている実験動物を使用して実行される。一実施形態では、被験体は、ヒトである。別の実施形態では、被験体は、1つ以上の神経障害に罹患しているヒトである。別の実施形態では、被験体は、1つ以上の神経障害について無症候であるヒトである。別の実施形態では、被験体は、神経障害を発症する危険性があると同定されているヒトである。なお別の実施形態では、被験体は、神経障害に関連する少なくとも1つの神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体へ曝露されていたことが既知であるか、またはその疑いがあるヒトである。
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、および参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む、本願が制御されよう。
本明細書で使用されるとき、「a」、「an」、および「the」という単数形は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
試料中の神経毒性アミノ酸のアッセイ
本発明の一態様に従って、神経障害、特に、BMAAに関連する神経毒性アミノ酸の1つ以上の形態の存在を検出するために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。
一態様に従って、神経毒性アミノ酸、特に、1つ以上の形態のBMAAの存在を検出するために、被験体からの組織試料を分析することによって、被験体における神経毒性の存在を検出するために、イムノアッセイおよびキットが提供され、これは、神経毒性の存在を示し得る。別の態様に従って、神経毒性アミノ酸、特に、1つ以上の形態のBMAAの存在を検出するために、環境試料を分析することによって、神経毒性の環境源を検出するために、イムノアッセイおよびキットが提供され、これは、神経毒性の存在を示し得る。
試料中の神経毒性アミノ酸、特に、BMAAは、「遊離」形態(例えば、細胞質、循環、非結合、容易に放出される)、「タンパク質結合」形態(例えば、タンパク質の表面に結合されているか、またはタンパク質のポリペプチド鎖に組み込まれている)に存在し得、「遊離」および「タンパク質結合」形態の双方は、他の細胞成分と関連し得(例えば、糖類、脂質、もしくはポリマー(例えば、セルロース、キチン、アミロース、プロテオグリカン)に複合された)、他の試料成分(例えば、カルバメート付加物)に修飾され得るか、誘導体化され得るか、またはそうでなければ連結され得ることを理解されたい。これらの形態(例えば、遊離、タンパク質結合)のいずれか、または全てが、当業者によって検出され得、検出のために使用されるイムノアッセイによって異なり得ることを理解されたい。1つの限定されない例示的な実施形態では、BMAAは、遊離(非結合)形態で組織試料または環境試料中に存在し得るか、またはタンパク質結合形態で存在し得、ここで、タンパク質結合形態としては、タンパク質の表面に結合されているBMAA(例えば、複合、共有結合、非共有結合によって、側基として、スペーサー基を介する連結等)またはタンパク質のポリペプチド骨格を形成するアミノ酸鎖に組み込まれるBMAAが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、遊離BMAAレベルおよびタンパク質結合BMAAレベルが共に、決定される。一実施形態では、遊離BMAAレベルのみが決定される。別の実施形態では、タンパク質結合BMAAのレベルのみが決定される。別の実施形態では、試料中に存在するBMAAの全ての形態が、「遊離」BMAAとして放出されるため、例えば、加水分解または消化によって試料を処理した後、試料中の全BMAAが決定される。ある実施形態では、当業者は、試料中の該当する1つ以上のBMAA複合体を決定することができ、使用されるイムノアッセイまたは抗体が、BMAA複合体を検出するのに適切であるかどうか、および試料が、検出に使用可能であるBMAA複合体を作製するために処理されるべきかどうかを決定することができる。他の実施形態では、BMAAに加えて、追加のアミノ酸、タンパク質、または他の成分を決定するために、イムノアッセイが提供される。
本明細書に提供されるイムノアッセイ、抗体、およびキットは、被験体からの組織試料、および環境スクリーニングで使用される環境試料が挙げられるが、これらに限定されない、本発明に従って任意の試料を分析するために、当業者によって利用可能であることを理解されたい。当業者は、試料の特定の特性に適合するために必要に応じて、例えば、分析用のケラチン組織試料を調製するために、またはセルロース、キチン、もしくはプロテオグリカン細胞壁を有する物質を含む環境試料を調製するために必要に応じて、本発明の方法を修正することができることを理解されたい。
神経毒性アミノ酸および神経毒性誘導体に対する抗体
本発明は、神経毒性アミノ酸およびその神経毒性誘導体に結合する抗体を提供し、試料中の少なくとも1つの神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体の存在を検出するために、これらの抗体を利用するための方法およびキットを更に提供する。一態様に従って、本発明は、BMAAに結合する抗体、ならびに組織試料中のBMAAの存在を検出するために、これらの抗体を利用するための方法およびキットを提供する。一態様に従って、本発明は、環境試料中のBMAAの存在を検出するために、これらの抗体を利用するための方法およびキットを提供する。別の態様に従って、本発明は、組織試料または環境試料中のBMAAを決定するためにイムノアッセイを提供する。
上記で論じられるように、本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、無傷抗体、一本鎖抗体、抗体フラグメント、抗原に対する血清反応(抗原に対して産生される抗血清)、自然発生する抗体(即ち、内因性遺伝子的配列の発現から得られる)、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体(合成された抗体)を包含し、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv(可変フラグメント)、一本鎖Fv(scFv)、Fab’、もしくはF(ab’)2フラグメントであり得るが、これらに限定されない。ポリクローナル抗体は、抗原を有する宿主動物に免疫付与すること、免疫付与後、血清を回収すること、および抗原に対して結合特異性を有する血清(抗原に対する抗血清)を特徴付けすることによって、調製され得ることを理解されたい。当該技術分野において既知の方法を用いて、免疫付与された動物からの膵臓細胞を回収し、細胞を免疫付与することによって、例えば、骨髄腫細胞と融合し、次いで、所望の特異性および親和性で抗体を発現するクローンをスクリーニングすることによって(Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495−497)、モノクローナル抗体を調製し得、組換えDNA法を用いて、モノクローナル抗体を更に修正または最適化することができることを理解されたい。「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントによって実質的にコードされるポリペプチドに対するその元来の意義において、例えば、Paul,ed.,Fundamental Immunology(3rd ed.1993)において、詳細に記載されるように、抗原標的を特異的に結合し、かつ認識することを指すことができることを理解されたい。「抗体」という用語には、組換えDNA方法論の使用によって、あるいは化学合成によって、無傷抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)の酵素的もしくは化学的分解から得られるフラグメント、または新たに合成することができるフラグメント等の抗体フラグメント、例えば、FvまたはscFvが含まれる。「抗体」という用語には、キメラ抗体、ヒト化抗体、組み換えモノクローナル抗体等を含む、組み換え抗体が含まれる。
2〜5kDa未満の分子量を有する、アミノ酸、特定の薬物、有機化合物、金属、低毒素、ならびに、ペプチドおよびオリゴ糖等の低分子量化合物は、免疫系刺激アジュバントの存在下で、投与される場合でさえ、通常、免疫原性ではない。これらの化合物への免疫反応を生じるために、免疫原性担体タンパク質等の免疫原性担体化合物にこのような化合物を複合することは必要である。ハプテンという用語は、一般に、免疫原性担体化合物に複合されたより低分子量化合物を指すことが理解され、ここで、ハプテン担体構造において、ハプテンは、低分子量化合物が、それ自体では免疫原性ではあり得ない場合でさえ、抗原として機能を果たすことができることを理解されたい。次いで、ハプテン担体複合体を使用して、公知の方法に従って、レシピエント動物(例えば、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、またはウサギ)に免疫付与し、レシピエント動物における免疫反応を導く。任意のステップには、初期免疫付与、または複数の初期免疫付与、および1つ以上の「ブースター(booster)」免疫付与のために、アジュバント(例えば、完全フロインドアジュバント、CFA)とハプテン担体複合体を混合することを含む。次いで、免疫反応の生成物を回収、かつ分析して、ハプテンに対する抗体反応を同定する。
ハプテン担体複合体を用いて抗体を生成するための方法は、当該技術分野において公知である。免疫原性担体化合物を選択し、免疫原性担体化合物へのハプテンを複合するためのプロトコルは、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,NY,1988)pp.78−87に記載されるように、当該技術分野において公知である。免疫原性担体化合物としては、チログロブリン、β−ガラクトシダーゼ、デキストラン、ポリリシン、ツベルクリン由来タンパク質、オボアルブミン(OVA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒツジ血清アルブミン、ヤギ血清アルブミン、もしくはフィッシュ血清アルブミンのような血清アルブミン、およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が含まれ得るが、これらに限定されない。ハプテン(例えば、神経毒性アミノ酸またはその誘導体)の存在を決定するために分析され得る、試料中に推定上生じない、免疫原性担体化合物を選択することができる。これにより、抗担体抗体から抗ハプテン抗体を単離する必要がない、抗血清を使用することが可能である。その大きいサイズが、それを高度に免疫原性させ、複合に使用可能である多数のリジン残基が、ハプテンに対する担体としてそれを非常に有用にさせるため、例えば、軟体動物に見出される吸収系タンパク質であるKLHが、多くの場合、選択され、その一方、軟体動物と他の分類群との間の系統発生的分離は、KLH担体タンパク質と、神経毒性アミノ酸または誘導体の存在を決定するために分析される試料中に自然発生するタンパク質に対する抗体間の交差反応の危険性を軽減する。一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体を、BMAAまたはBMAA誘導体の存在を決定するために分析され得る試料中にそれが推定上生じないという前提で選択される担体タンパク質に複合させる。一実施形態では、担体タンパク質は、KLHである。一実施形態では、担体タンパク質は、BSAである。
アミノ酸およびアミノ酸誘導体等の小分子に対する抗体は、当該技術分野において既知である。米国特許第4762781号は、様々なアミノ含有小分子に対する抗体を製造および使用することを記載し、米国特許第5112738号は、ヒスタミンに対する抗体を製造および使用することを記載し、Geffordら (1985,J Neurochem 44:1221−1228)は、インドールアルキルアミンに対する抗血清を製造および使用することを記載している。米国特許第6,608,178号は、最近のアルコール消費量を検出するために、セラトニン代謝産物5−ヒドロキシトリプトフォール(5−HTOL)に対して特異的な抗体の調製および使用を記載し、ここで、5−HTOLまたは5−HTOLのグルクロニドまたは硫酸塩複合体に対して特異的であり、セラトニン(5−ヒドロキシトリプトアミン、5−HT)、セラトニン代謝産物5−ヒドロキシインドール−3−酢酸(5−HIAA)、ならびに構造的に関連したインドールおよび他のグルクロニド等の他の化合物に特異的結合活性がなかった、抗体を、開発した。グルタミン酸塩等の興奮性アミノ酸に対するポリクローナル抗体の製造および使用は、多数のグループ、例えば、Heplerら(1983,J Histochem Cytochem 36:13)、Petruszら(1990,Brain Res 529:339)、およびOrdronneauら(1991,J Immunol Methods 142:169−176)によって記載されている。神経伝達物質等の種々のアミノ酸およびアミノ酸誘導体に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方は、当該技術分野において既知であり、例えば、ポリクローナル抗アスパラギン酸塩、ポリクローナル抗GABA、ポリクローナル抗グルタミン酸塩、ポリクローナル抗セラトニン、モノクローナル抗GABA、モノクローナル抗アスパラギン酸塩、およびモノクローナル抗グルタミン酸塩等が市販されており、全て、Sigma Aldrich Co.,St.Louis,MOから入手可能であるか、またはアミノ酸に対するポリクローナル抗体は、Signature Immunologies(Salt Lake City UT)から入手可能である。
本理論に縛られることを望むものではないが、担体化合物に連結される単一の分子に基づくハプテンは、ほぼ常に、線状決定基に存在することに留意されるべきであり、これは、制限された可動性を有する隣接した相互作用部位によって特徴付けられる空間における分子構造である。線状決定基は、ハプテン標的に結合する抗体が、実質的に、常に、結合が、相互排他的である範囲まで同一または重複する線状エピトープを攻撃するように、免疫系への非常に制限された一連の標的を示す。故に、ポリクローナル法によって産生された抗ハプテン抗体は、非常に多くの場合、分子選択性が考慮される限り、モノクローナル特性を有する。これは、以下の少なくとも2つの理由において重要である。(a)特定の抗ハプテン抗体の制限特性は、一般に、そのハプテン標的に対するその親和性である、および(b)ポリクローナル法は、通常、モノクローナル法よりも高親和性、選択的な抗ハプテン抗体を見出すために迅速かつ容易な方法を提供する。巨大タンパク質等の非線状決定基免疫原に対する抗体の親和性は、複雑であるが、非常に狭い範囲の親和性において実質的に全て有用な抗体の収束する、非常に小型で線状抗原性決定基を有するハプテン免疫原の場合と対比されるはずである。更に、線状決定基の成分が、一部の可動性を有し得るが、線状決定基が、異なる標的を示す少数の構造中に存在し得、かつ異なる標的構造に対して抗体が生成され得るように、この動作は、通常、制限される。
本明細書に提供されるように、神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体は、免疫原性担体化合物に複合され、レシピエント動物に投与される免疫原性ハプテン担体複合体を形成し、ハプテン担体複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応の生成物を分析して、該当する神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体に対して抗体反応を同定する。一実施形態では、BMAAは、免疫原性担体タンパク質に複合され、レシピエント動物に投与される免疫原性BMAA担体タンパク質複合体を形成し、BMAA担体タンパク質複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応の生成物を回収し、分析して、BMAAまたはそのBMAA誘導体に対して抗体反応を同定する。一実施形態では、BMAAは、担体タンパク質としてKLHに複合され、レシピエント動物に投与されるKLH−BMAA複合体を形成し、KLH−BMAA複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応の生成物を分析して、BMAAまたはそのBMAA誘導体に対して抗体反応を同定する。別の実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体は、担体タンパク質としてBSAに複合され、BSA−BMAA複合体を形成する。
本明細書に提供されるように、本発明の一態様に従って、免疫原性ハプテン担体複合体に対して産生される抗体を、免疫原性ハプテン担体複合体において使用される担体とは異なる第2の担体に複合されたハプテンに対して、その後試験した。更に、本態様に従って、当業者は、免疫原性ハプテン担体複合体に対する免疫反応の生成物の分析をハプテンに結合する抗体の反応性のみが検出されるような方法で行うことができるように、レシピエント動物が、第2の担体に対して免疫反応性がある可能性が低いという仮定に依存して、第2の異なる担体を選択することができる。以下に示される限定されない例示的な実施例では、KLH−BMAA複合体を使用して、ウサギにおける免疫反応、即ち、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清を生成する。免疫付与後、抗血清を回収し、次いで、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清を、BSA−BMAA複合体を用いて、評価し、BMAAに結合する抗体を検出し、特徴付ける。以下の実施例において限定されない例示的な実施形態に示されるように、BSA−BMAA複合体を、イムノアッセイにおいて使用し、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清を試験することができ、例えば、BSA−BMAA複合体を使用して、抗体捕捉アッセイ用のマイクロタイタープレートを被覆し、BMAAと反応する抗体に対する抗血清を試験する。本理論に縛られることを望むものではないが、KLHが、抗血清の試験中、存在しない場合、KLHに対する抗体が存在するとしても、免疫原性ハプテン担体複合体のKLH部分に対していかなる抗体も検出されないと考えられる。本発明の更なる態様に従って、および以下の実施例において限定されない例示的な実施形態に示されるように、免疫原性KLH−BMAA複合体を用いた免疫付与に対する免疫反応の生成物(例えば、抗血清)は、KLHを用いて免疫沈降させ、存在するいかなる抗KLH抗体を除去することができる。
免疫原性担体化合物へのハプテンの複合は、ハプテンおよび担体で利用可能である反応基の種類および数によって異なる。免疫原性担体化合物へのハプテンの複合は、ハプテンと担体化合物との間に複合リンカーまたはスペーサーを導入することを更に含み得る。リンカーおよびスペーサーは、複合中、ハプテンの構造的立体配座の変化を最小化すること、次いで、レシピエント動物の免疫系への提示、イムノアッセイにおいて抗体による認識のためにハプテンの提示を促進することが挙げられるが、これらに限定されない、種々の基準に従って当業者によって選択され得る。リンカーおよびスペーサーは、グルタルアルデヒド(GluまたはGLU)およびカルボジイミド(EdcまたはEDC)リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、グルタルアルデヒドを使用して、アミノ基にアミノ基を連結することができ、MBS(m−マレイミド安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、スルフヒドリル基にアミノ基を連結することができ、カルボジイミドを使用して、カルボキシル基にアミノ基を連結することができる。(Antibodies: A Laboratory Manual,E.Harlow and D.Lane,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,NY,1988)を参照されたい。)
一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体は、グルタルアルデヒド(GLU)を用いて、担体タンパク質としてKLHに複合され、レシピエント動物に投与されるKLH−GLU−BMAA(KGB)複合体を形成し、KGB複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応(抗血清)の生成物を分析して、BMAAまたはそのBMAA誘導体との抗体反応を同定する。一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体は、カルボジイミド(EDC)を用いて担体タンパク質としてKLHに複合され、レシピエント動物に投与されるKLH−EDC−BMAA(KEB)複合体を形成し、KEB複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応(抗血清)の生成物を分析して、BMAAとの抗体反応を同定する。
一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体は、グルタルアルデヒド(GLU)を用いて、担体タンパク質としてBSAに複合され、レシピエント動物に投与されるBSA−GLU−BMAA複合体を形成し、BSA−GLU−BMAA複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応の生成物を分析して、BMAAまたはそのBMAA誘導体との抗体反応を同定する。一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体は、カルボジイミド(EDC)を用いて、担体タンパク質としてBSAに複合され、レシピエント動物に投与されるBSA−EDC−BMAA複合体を形成し、BSA−EDC−BMAA複合体に対して免疫反応を生成し、次いで、免疫反応の生成物を分析して、BMAAまたはそのBMAA誘導体との抗体反応を同定する。
複合、免疫付与、および特徴付け手順の限定されない例示的な実施形態が、以下の実施例に開示される。図1は、限定されない例示的な実施形態の概略を示し、ここで、BMAAまたはBMAA誘導体は、GLUを用いて、担体タンパク質としてKLHに複合され、KLH−GLU−BMAA(KGB)複合体を形成するか、またはEDCを用いて、KLH−EDC−BMAA(KEB)複合体を形成し、各KLH−BMAA複合体をレシピエント動物に投与し、KLH−BMAA複合体に対して免疫反応を生成する。BMAAまたはBMAA誘導体はまた、GLUを用いて、担体タンパク質としてBSAに複合され、BSA−GLU−BMAA(BGB)複合体を形成するか、またはEDCを用いて、BSA−EDC−BMAA(BEB)複合体を形成し、BSA−BMAA複合体を、KLH−BMAA複合体(抗血清)に対して免疫反応の生成物を分析するために使用して、BMAAまたはそのBMAA誘導体との抗体反応を同定する。
本発明の別の態様に従って、以下の実施例に見出される限定されない例示的な実施形態に示されるように、定義される架橋(例えば、GLUまたはECD)を用いて調製した免疫原性ハプテン担体複合体に対して産生される抗体を、次いで、異なる架橋を介して同一または異なる担体に複合されるハプテンに対して試験した。
神経毒性アミノ酸および神経毒性誘導体に対する抗体の選択性
神経毒性アミノ酸およびその神経毒性誘導体との抗体反応は、許容可能なレベルの選択性と組み合わせて、ハプテン標的に対して許容可能な高親和性かつ特異性を有さなければならない。許容可能なレベルの選択性は、ハプテン標的に結合すること、および他の抗原、特に、構造的に類似した抗原との許容可能な低レベルの交差反応を有することを含む。本理論に縛られることを望むものではないが、ハプテンによって示される標的(エピトープ)の物理化学的特性が、少数のほぼ固定された残渣物から生じるため、有用な抗体(ポリクローナル源からでさえ)は、抗体がポリクローナルである場合でさえ、および異なる源からの抗体(例えば、異なる源動物において産生される抗体)が比較される場合でさえ、多くの場合、ハプテン標的に対して類似の範囲の親和性を有する。該当するハプテンに対する抗体の親和性は、異なる被覆濃度のハプテンを用いて、抗体捕捉アッセイ等の当該技術分野において既知の方法、または結合の基線レベルが決定されている試料への増加量のハプテンを添加することによって、結合の競合阻害測定を用いて決定することができる。同様に、該当するハプテンの抗体に対する抗体の選択性は、他の抗原を、ハプテンに結合する基線レベルが決定されている試料に添加する競合アッセイ等の当該技術分野において既知の方法を用いて、決定することができる。
免疫反応の生成物、例えば、抗血清または他の抗体組成物が、複数の類似した抗原を標的とし、多くの場合、異なる親和性で結合し、多くの場合、異なるエピトープを標的とする、複数の抗体を含有する場合、交差反応は、時々、見られる。上述のように、ハプテン免疫原は、非常に小さい、線状抗原性決定基を示し、抗ハプテン抗体は、一般に、結合が相互排他的である範囲で、同一または重複する標的(線状エピトープ)を攻撃し、ひいては、ポリクローナル法によって産生された抗ハプテン抗体は、分子選択性が、交差反応であると見なされる限り、非常に多くの場合、モノクローナル特性を有し、時々、単一抗体の特性のため、標的または立体空間は、1つより多くの異なる分子によって形成することができる。上述のように、該当するハプテンに対する選択性および他の抗原との交差反応は、当該技術分野において既知の方法を用いて、抗血清または他の抗体組成物等の試料に対して決定することができる。
本発明の一態様に従って、神経毒性アミノ酸またはその誘導体に対して産生される抗血清が提供され、ここで、抗血清は、血清が、広範な精製または富化することなく、本発明の方法およびキットにおいて使用されるように、他の抗原との許容可能な低レベルの交差反応と組み合わせて、ハプテン標的に対して許容可能な高親和性かつ特異性を示す。一態様に従って、BMAA担体タンパク質複合に対して産生される抗血清(抗BMAA抗血清)は、他の抗原との許容可能な低レベルの交差反応と組み合わせて、BMAAに対して許容可能な高親和性かつ特異性を示す。本態様に従って、BMAA担体タンパク質複合に対して産生される抗血清(抗BMAA抗血清)は、BMAA複合および遊離BMAAに実質的に結合し、構造的に類似したアミノ酸には実質的に結合しない(即ち、相当量で結合しない、または検出可能な量で結合しない)。本態様に従って、BMAA担体タンパク質複合に対して産生される抗血清(抗BMAA抗血清)は、BMAA複合体との反応性および遊離BMAAとの反応性を示し、構造的に類似したアミノ酸が、比較的高濃度で存在する場合でさえ、構造的に類似したアミノ酸に実質適に結合しないか、検出可能に結合しないか、またはそれと実質的に交差反応しない。以下の実施例に開示される限定されない例示的な実施形態では、BMAA担体タンパク質複合に対して産生される抗血清(抗BMAA抗血清)は、BMAA複合体との反応性および遊離BMAAとの反応性を示し、構造的に類似したアミノ酸が、比較的高濃度で存在する場合でさえ、アラニン、グルタミン、チロシン、グリシル−グリシン、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸、およびアスパラギン酸を含む構造的に類似したアミノ酸と実質的に交差反応しない。本発明の一態様に従って、本明細書に提供される抗BMAA抗血清は、広範な精製または富化することなく、本発明のイムノアッセイおよびキットにおいて使用することができる。
別の態様に従って、精製ステップは、抗血清を使用して、該当する神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体を決定する前に、非特異的抗体または非抗体タンパク質等の望ましくない材料を除去するために行われ得る。本発明の一態様に従って、所望の程度の特異性または純度は、当該技術分野において既知の方法を用いて、神経毒性アミノ酸またはその誘導体に対して産生される抗血清等の免疫反応の生成物を富化することによって達成することができる。精製および/または富化の方法としては、タンパク質A/Gクロマトグラフィー、硫安沈殿法、および親和性クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、免疫原性担体タンパク質に複合されるBMAAまたはBMAA誘導体に対して産生される抗血清は、硫安沈殿法によって部分精製に供される。以下の実施例において示される限定されない例示的な実施形態では、KLHに複合されるBMAAまたはBMAA誘導体に対して産生される抗血清は、KLHを用いて免疫沈降し、抗KLH抗体を除去することによって、部分精製に供される。一実施形態では、免疫原性担体タンパク質に複合されるBMAAまたはBMAA誘導体に対して産生される抗血清は、カラムマトリックスに連結されるBMAAまたはBMAA誘導体を有する親和性カラムに供される。
イムノアッセイ、抗体、およびキットは、同一の化合物の異性体を区別するために、例えば、アミノ酸のLおよびD形態を区別するため、または神経毒性異性体と同一の化合物の非神経毒性異性体を区別するために提供される。以下の実施例において示される限定されない例示的な実施形態に示されるように、L−BMAAとD−BMAAを区別することができる抗体が提供される。
標的ハプテンに対して高親和性を有し、同様のハプテンに対して低交差反応を有する抗体を製造し、使用するための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Signature Immunologies,Inc.(Salt Lake City UT)から市販のある種のポリクローナル抗体は、ある種のアミノ酸の遊離(非結合)形態に対して、高標的特異性および低交差反応を有する。一実施形態では、標的神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体に対して許容可能な高親和性を有し、他のアミノ酸との低交差反応を有する、抗体が提供される。一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体に対して許容可能な高親和性を有し、他のアミノ酸との交差反応を有する、抗体が提供される。
一態様に従って、神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体の遊離(非結合)形態、または神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体のタンパク質結合形態、または神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体の双方の形態と反応する、抗体が提供される。一実施形態では、遊離形態に対して特異的な抗体、およびタンパク質結合形態に対して特異的な抗体を含む、抗血清が提供される。一実施形態では、遊離形態およびタンパク質結合形態の双方を認識することが可能な抗体が提供される。神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体のタンパク質結合形態としては、タンパク質、例えば、ポリペプチド鎖に組み込まれる神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体のタンパク質結合形態、および/または、そうでなければタンパク質と会合される、例えば、共有もしくは非共有結合によってたんぱく質に接着されるか、またはスペーサーもしくはリンカー基を通してタンパク質に複合される、神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体のタンパク質結合が挙げられるが、これらに限定されないことを理解されたい。
ポリクローナル抗体、またはポリクローナル抗体を含有する抗血清等の組成物は、異なるエピトープを認識する抗体を含み得ることを理解されたい。BMAAもしくはBMAA誘導体の遊離(非結合)形態を認識する抗体が提供され得、BMAAもしくはBMAA誘導体のタンパク質結合形態を認識する抗体が提供され得、かつBMAAもしくはBMAA誘導体の遊離(非結合)形態およびタンパク質結合形態の双方を認識する抗体が提供され得ることを理解されたい。BMAAもしくはBMAA誘導体のタンパク質結合としては、タンパク質、例えば、ポリペプチド鎖に組み込まれるBMAAもしくはBMAA誘導体のタンパク質結合形態、および/または、そうでなければタンパク質と会合される、例えば、共有もしくは非共有結合によってたんぱく質に接着されるか、またはスペーサーもしくはリンカー基を通してタンパク質に複合される、BMAAもしくはBMAA誘導体のタンパク質結合が挙げられるが、これらに限定されないことを理解されたい。以下の実施例において限定されない例示的な実施形態に示されるように、抗BMAAポリクローナル抗体、またはBMAAに対して産生される抗体を含有する抗血清は、遊離BMAAと、複合されたBMAAと、およびタンパク質結合BMAAと反応し得る。
モノクローナル抗体が提供される実施形態では、当業者は、神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体に対して所望のレベルの立体特異性を有するこれらのクローンを同定するために、個別に、抗体産生宿主またはクローンをスクリーニングすることができる。
必要であると考えられる場合、同様の立体配置を有する異なるハプテンに対する抗体の親和性は、異なる標的に対する相対的な親和性、および神経毒性アミノ酸もしくは神経毒性アミノ酸誘導体に対する親和性を決定するために、マッピングされ得る。
神経毒性アミノ酸の存在を検出するためのイムノアッセイおよび抗体
本明細書に提供されるような抗体は、組織試料または環境試料等の試料中の神経毒性アミノ酸および神経毒性アミノ酸誘導体の存在、レベル(量)、および配置を検出するために、当業者によってイムノアッセイにおいて使用され得る。本発明のイムノアッセイは、神経毒性アミノ酸もしくはその神経毒性誘導体の遊離(例えば、非結合、複合されない、細胞質、循環)形態、神経毒性アミノ酸もしくはその神経毒性誘導体のタンパク質結合形態、または神経障害に関連する神経毒性アミノ酸もしくはその神経毒性誘導体の複合された形態(例えば、糖複合体、脂質複合体、もしくはカルバメート付加物)を分析するために実行することができ、これらの形態のいずれか、または全てを分析し得る。当業者は、どの形態の神経毒性アミノ酸もしくはその神経毒性誘導体が、試料中に存在しているか、およびどの形態が所与の実施形態について診断もしくは予測の目的物であるかを決定することができる。本開示において他の箇所に記載される神経毒性アミノ酸および神経毒性アミノ酸誘導体の存在、レベル、および配置を決定するための物理化学的方法と共に、本明細書に提供されるような抗体およびイムノアッセイが使用され得る。
本明細書に提供される抗体と共に使用するために好適なイムノアッセイおよびイムノアッセイ形式は、当該技術分野において公知である。アッセイ成分の残りの部分から結合抗体−神経毒性アミノ酸複合体の分離を必要としない均質イムノアッセイ形式は、本明細書に提供されるように、神経毒性アミノ酸および神経毒性アミノ酸誘導体の存在、レベル、および配置を決定するのに適している。多くの場合、磁性粒子またはプラスチック製ビーズ等の固体相試薬を利用して、アッセイ成分の残りの部分から結合抗体−神経毒性アミノ酸複合体を除去する、少なくとも1つのステップを必要とする均質イムノアッセイ形式は、本明細書に提供されるように、神経毒性アミノ酸および神経毒性アミノ酸誘導体の存在、レベル、および配置を決定するのに適している。当業者は、必要に応じて、イムノアッセイ形式を選択し、適応することができることを理解されたい。好適なイムノアッセイ形式としては、凝集ベースのアッセイ、沈殿ベースのアッセイ(「オクタロニー」アッセイ)、ラジオイムノアッセイ、フルオロイムノアッセイ、発色もしくは比色イムノアッセイ、不均一酵素イムノアッセイ、不均一蛍光イムノアッセイ、蛍光消光もしくは蛍光増感を含む均一イムノアッセイ、蛍光偏光、酵素基質標識イムノアッセイ、補欠分子族標識イムノアッセイ、酵素モジュレータ標識イムノアッセイ(例えば、阻害剤標識を用いて)、酵素標識イムノアッセイ、エネルギー転移イムノアッセイ、化学的に励起された蛍光イムノアッセイ、二重抗体立体障害イムノアッセイ、または例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,New York,1988に記載されるような他のイムノアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
神経毒性アミノ酸および神経毒性アミノ酸誘導体、特に、BMAAを検出するために、イムノアッセイで用いるイムノアッセイ形式としては、アッセイ可能な検出システムにおいて、抗体または抗原を用いる酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が挙げられるが、これに限定されず、好適なELISA形式には、例えば、Crowther,1995.“ELISA.Theory and Practice” Methods Mol.Biol.42:1−223、Engvall and Perlmann,1971,“Enzyme−linked immunosorbent assay(ELISA).Quantitative assay of immunoglobulin G” Immunochem.8:871−874、Davies,1994,“Principles” in,The Immunoassay Handbook.D.Wild,ed.Stockton Press,New York,p.3−47、およびHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,New York,1988,Appendix F、およびChu et al.(1989,Appl Environ Microbiol 55:1928−1933)、およびMetcalf et al.(2000,Water Research 34:2761−2769)に記載されるような、抗体捕捉ELISA、競合ELISA、または間接競合ELISAが含まれ得る。「酵素イムノアッセイ」(EIA)という用語はまた、本イムノアッセイ形式を指すためにも一般に使用される。
一態様に従って、本明細書に提供されるような抗体は、従来のイムノアッセイ形式において、「一次」抗体として使用される標識されない抗体である。したがって、本明細書に提供されるような抗体は、一次抗体を認識する検出可能な二次抗体によって、検出され、測定され得る。検出可能な二次抗体を選択するための方法および使用するための方法は、当該技術分野において既知である。好適な検出可能な二次抗体は、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、リゾチーム、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等に連結され得、カップリングは、種々の架橋剤、例えば、Freytagら(1984,Clin.Chem.30:417−420)によって記載されるような、グルタルアルデヒド、ジマレイミドもしくはチオール試薬等を用いて従来の手法によって達成することができるか、またはビオチンもしくはアビジンに連結され得るか、または例えば、放射性標識を用いて直接標識され得る。神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体に結合した一次抗体に結合される二次抗体の量を検出することにより、成分の検出および定量化を可能にする。
別の態様に従って、本明細書に提供されるような抗体は、当該技術分野において公知のプロトコルに従って、神経毒性アミノ酸もしくはその誘導体への抗体の結合の直接検出および定量化のために、例えば、放射性標識抗体、または蛍光部分(蛍光色素分子)、発光部分、化学発光部分、コロイド金、色素部分で標識された抗体、酵素連結抗体、ビオチン標識抗体、アビジン標識抗体、ストレプトアビジン標識抗体、または他の検出可能な部分を用いて標識された抗体を直接標識され得る。限定されない例示的な実施形態では、標識抗BMAA抗体には、例えば、ビオチン標識抗BMAA抗体が提供される。
一態様に従って、抗体捕捉イムノアッセイを提供して、本明細書に提供されるような抗体の存在および親和性、即ち、神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体との抗体反応を決定する。本アッセイでは、既知量の標識されない神経毒性アミノ酸または誘導体は、例えば、各ウェルが、既知量の神経毒性アミノ酸または誘導体を含有するように、連続希釈したストック溶液を用いて、マルチウェルマイクロタイタープレートの一連のウェルをコーティングすることによって、固体支持体に連結され、本明細書に提供されるような抗体(「一次」抗体)は、アッセイウェルに添加され、固体基板に連結された神経毒性アミノ酸または誘導体に結合することによって、固体支持体上に「補足」され、一次抗体を認識する検出可能な二次抗体によって検出される。各アッセイにおいて、固体支持体に結合される神経毒性アミノ酸または誘導体に結合される(「によって捕捉される」)、一次抗体の量は、当該技術分野において既知の方法によって、一次抗体に結合される検出可能な二次抗体の量を測定することによって決定される。一実施形態では、神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体に対して産生される抗血清が、抗体捕捉アッセイにおいて使用され、抗血清中に存在する神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体との抗体反応のレベルを検出される。一実施形態では、BMAAまたはBMAA誘導体に対して産生される抗血清が、抗体捕捉アッセイにおいて使用され、固体支持体に連結されるBMAAまたはBMAA誘導体への抗体結合が、測定される。
一態様に従って、抗体を生成するのに使用される遊離(非結合)形態の神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体に結合するための本明細書に提供されるような抗体の能力を決定するために、間接競合ELISAが提供される。本アッセイでは、既知量の標識されない神経毒性アミノ酸または誘導体は、例えば、各ウェルが、既知量の神経毒性アミノ酸または誘導体を含有するように、連続希釈したストック溶液を用いて、マルチウェルマイクロタイタープレートの一連のウェルをコーティングすることによって、固体支持体に連結される。本明細書に提供されるような抗体が、「一次」抗体として使用され、遊離神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体が、アッセイウェルに添加され、既知量の遊離神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体の存在下の抗体捕捉は、遊離神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体の不在下の抗体捕捉と比較される。以下の実施例に示される限定されない例示的な実施形態に開示されるように、間接競合ELISAを行い、遊離BMAAと共にBMAA複合体に対して産生される抗血清の反応性を決定し、提供される遊離BMAAに結合する抗体を構築することができる。
一態様に従って、試料中の神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体を結合するための本明細書に提供されるような抗体の能力を決定するために、免疫ブロットアッセイが提供される。一態様に従って、本明細書に提供されるような抗体は、試料中に存在するいずれの成分との反応があるかどうかを決定するために、試料からの全細胞抽出物またはタンパク質調製物上で「ドットブロット」形式を用いて、免疫ブロットアッセイを行うことができる。別の態様に従って、「ウエスタンブロット」形式において、免疫ブロットアッセイを行うことができ、ここで、試料のタンパク質含有抽出物中のタンパク質は、例えば、大きさおよび/または負荷に基づいてタンパク質を分離するためにSDS−PAGEを用いて分離され、その後、分離されたタンパク質は、細胞膜、例えば、ナイロンまたはニトロセルロース等に移され、本明細書に提供されるような抗体が、イムノアッセイにおいて使用され、細胞膜上でタンパク質結合神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体を検出する。一実施形態では、本明細書に提供されるようなBMAA(BMAA−KLH複合体)に対して産生される抗体を使用して、組織試料または環境試料からのタンパク質調製物のウエスタンブロットによりBMAAまたはBMAA誘導体を検出する。
一態様に従って、タンパク質抽出物は、組織試料または環境試料から調製され、BMAAまたはBMAA誘導体のためのイムノアッセイが、本明細書に提供されるようなタンパク質抽出物に行われ、抗体によるタンパク質結合の認識は、試料が、タンパク質結合BMAAまたはBMAA誘導体を含有し得ることを示すことを理解されたい。一実施形態では、被験体からの組織試料を得、BMAAへの抗体の結合を可能にする条件下で、BMAAに結合する少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物と組織試料を接触させ、組織試料中のBMAAに結合される抗体を検出することによって、被験体は、BMAAの環境源への曝露についてスクリーニングされ、組織試料への抗体結合は、組織が、BMAAを含有することを示し、ひいては、被験体が、BMAAの環境源に曝露していることを示す。
一実施形態では、環境試料を得、BMAAへの抗体の結合を可能にする条件下で、BMAAに結合する少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物と環境試料とを接触させ、環境試料中のBMAAに結合した抗体を検出することによって、BMAAの環境源が、検出され、環境試料への抗体結合は、環境試料が、BMAAを含有し、ひいては、BMAAの環境源であることを示す。一実施形態では、BMAAへの抗体の結合を可能にする条件下で、BMAAに結合する少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物と環境試料を接触させ、環境試料中のBMAAに結合した抗体を検出し、環境試料への抗体結合をシアノバクテリアの試料への抗体結合と比較し、環境試料への抗体結合が、BMAAのシアノバクテリア源の存在を示すかどうかを決定することによって、環境試料中のBMAAのシアノバクテリア源が、検出される。
一実施形態では、組織試料のタンパク質抽出物の免疫ブロット(「ウエスタンブロット」)アッセイは、BMAAに結合する少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物(例えば、BMAAに対して産生される抗血清)を用いて行われ、抗体によって認識されるタンパク質バンドが同定される。一実施形態では、環境試料のタンパク質抽出物の免疫ブロットまたは「ウエスタンブロット」アッセイは、BMAAに結合する少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物(例えば、BMAAに対して産生される抗血清)を用いて行われ、抗体によって認識されるタンパク質バンドが同定される。一実施形態では、ケラチン組織試料のタンパク質抽出物の免疫ブロットまたは「ウエスタンブロット」アッセイが行われ、本発明の抗体によって認識されるタンパク質バンドが同定される。別の実施形態では、神経毒性組織試料のタンパク質抽出物の免疫ブロットまたは「ウエスタンブロット」アッセイが行われ、本発明の抗体によって認識されるタンパク質バンドが同定される。
一態様に従って、タンパク質結合BMAAとの反応がある抗体は、原位置標識または画像手法、例えば、免疫組織化学的手法に使用され、ここで、抗体は、タンパク質結合神経毒性アミノ酸または神経毒性アミノ酸誘導体を含有する病変に結合する。組織学的標本におけるアミノ酸等の小分子を検出するための免疫細胞化学に対するプロトコルは、例えば、Signature Immunologies,Inc.(Salt Lake City UT)からのウサギポリクローナル抗体、例えば、http://www. immunologics.com/hpi.html.に記載されるような、金複合された、またはフルオロフォア複合された抗ウサギ二次抗体を用いたエポキシ樹脂包埋された標本における高性能免疫細胞化学の当該技術分野において既知である。
増幅を使用して、シグナルの強度および/または選択性を増強することができる。同様に、当業者は、神経毒性アミノ酸および神経毒性アミノ酸誘導体を修正し、本発明のイムノアッセイによって検出可能な標識複合体を得ることができる。
当業者により、本明細書に提供されるようなイムノアッセイおよび抗体を使用して、神経毒性アミノ酸およびその神経毒性誘導体のための試料を分析することができ、試料としては、組織試料および環境試料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供されるようなイムノアッセイを使用して、生きている被験体(生インビトロ、インビトロ)から得られた組織試料、生きている被験体(インビボ)に存在する組織試料、保存された組織、生検および/または検死試料等の保存された検体、または博物館の検体を分析することができる。保存された組織は、凍結された組織、組織学的検体、固形の保管媒体上で乾燥された組織、または保存された組織の他の形態であり得る。
本明細書に提供されるような抗体を、画像法および診断アプリケーションにおいて、インビボで使用し、被験体における神経毒性アミノ酸およびその神経毒性誘導体を検出することができる。特に、本明細書に提供されるような抗体を、インビボ診断画像用に使用し、体液中、または体内腔中、または他の体組織中の神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体を検出することができる。一実施形態では、タンパク質結合BMAAとの抗体反応は、脊髄、血管、尿管、尿道、食道、頸部、子宮、または膀胱等の体内腔中に導入され、抗体は、内腔中の体液中のBMAAに含有するタンパク質、または内腔中の壁上の組織中のBMAAを含有するタンパク質に結合することができる。別の実施形態では、タンパク質結合BMAAとの抗体反応は、例えば、潅流によって、組織または臓器に導入され、抗体は、組織または臓器中の原位置でBMAAを含有するタンパク質に結合することができる。本発明の抗体は、特定のアプリケーションに対してタンパク質結合BMAAの検出を可能にする診断に有効である用量で所与される。インビボ画像のために、抗体は、標識されるか、そうでなければ、抗体が直接検出できるように検出可能なマーカーに連結され得る。別の実施形態では、二次抗体等の検出器は、体内腔に導入され、BMAAに結合される抗体を検出する。本発明の抗体に連結され得る検出可能なマーカーは、131I、125I、123I、18F、19F、11C、13C、14C、75Br、76Br、またはH等の放射性同位元素を含む。マーカーは、常磁性化合物、例えば、ランタニドを含む化合物であり得る。マーカーは、造影超音波による検出に好適な造影剤、例えば、抗体に複合される好適な生体適合シェルおよび重量ガス(ペルフルオロカーボンまたは窒素)を有する超微粒気泡であり得る。インビボ診断画像法のために、使用され得る検出装置の種類は、検出可能なマーカーを選択する際に主要因子であるため、マーカーは、X線(例えば、125I、57Co、テクネチウム−99m(99mTc))、超音波(例えば、ペルフルトレン超微粒気泡)、MRI(例えば、ガドリニウム、19F、H)、PET(18F)、コンピュータ断層撮影(CAT)、磁気スペクトロスコピー(MRS)、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、生物発光画像法(BLI)、または他のアプリケーションに対して選択され得る。幾つかの実施形態では、BMAAに結合される標識抗体は、臓器または組織中で局所的に検出されるか、または測定される。幾つかの実施形態では、BMAAに結合される標識抗体は、X線、超音波、PET、またはMRI等の画像法を用いて、被験体の全てまたは一部を走査することによって、全身的に測定される。インビボ画像法および診断アプリケーションのための投与に好適な医薬組成物が、提供され、医薬組成物には、タンパク質結合BMAAとの抗体反応およびBMAAに結合される抗体の検出を可能にする検出可能なマーカーが含まれる。病変を検出するための抗体等のマーカーを導入し、検出するためのプロトコルは、米国特許第5,716,595号、第6,375,925号、および第6,782,289号に見出され、参照によって本明細書に組み込まれる。
試料調製
本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットは、試料の特定の特性を適合させるための調製ステップ、例えば、分析用の組織試料を調製するためのステップ、またはインビボ測定/画像のために被験体を調製するためのステップ、または分析用の環境試料を調製するためのステップを含み得ることを理解されたい。試料調製としては、試料の機械的または化学的崩壊が含まれ得るが、これらに限定されず、化学的崩壊としては、本明細書に提供されるようなイムノアッセイおよび抗体による検出のための試料からBMAAを放出するために、加水分解(例えば、酸加水分解)、酵素消化、または溶媒抽出(溶媒分割)が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、毛髪等のケラチン組織は、強酸および加熱を用いて加水分解され、BMAAのイムノアッセイは、中和された加水分解物において行われる。別の実施形態では、毛髪は、例えば、米国特許第6,949,344号に記載されるような、還元剤および洗剤を含有する、プロテアーゼ混合物を用いて、酵素的に消化され、BMAAのイムノアッセイは、消化において行われる。別の実施形態では、脳組織等の神経組織は、まず、酸性条件(例えば、0.1Nのトリクロロ酢酸)下で、均質化され、遊離アミノ酸を放出し、タンパク質を沈殿させるために遠心分離され、次いで、沈殿物を、強酸および加熱(例えば、110℃で24時間、6NのHCl)を用いて加水分解に供し、その後、中和された浮遊物のイムノアッセイを行い、試料中の遊離BMAAを決定し、中和された沈殿の加水分解物のイムノアッセイを行い、加水分解によって沈殿物から放出されたタンパク質結合BMAAを決定する。
一実施形態では、セルロースを含む環境試料は、BMAAを決定するための細胞含有物および細胞壁物質を放出するために、セルラーゼで処理される。一実施形態では、キチンを含む環境試料は、BMAAを決定するための細胞含有物および細胞壁物質を放出するために、キチナーゼで処理される。
一実施形態では、試料を処理して、複数の試料分画を得、本発明のイムノアッセイを使用して、1つ以上の得られる試料分画中のBMAAを決定する。一実施形態では、試料を処理して、例えば、米国特許第7,256,002号に開示されるような、タンパク質分画および可溶性分画を得ることができ、ここで、シアノバクテリア、ソテツ種組織、オオコウモリ(コウモリ)の毛髪および皮膚、ヒト脳組織試料を処理して、(可溶性または細胞質分画からの)遊離アミノ酸を除去し、タンパク質結合BMAAを含有すると想定されるタンパク質分画を得、その後、タンパク質分画を加水分解し、加水分解物中のBMAAを、HPLCを用いて決定した。別の実施形態では、試料は、異なる両極性の溶媒を用いて抽出され、例えば、水性および親油性分画を得ることができる。
一態様に従って、BMAAイムノアッセイの感受性は、現行のイムノアッセイ手順に適するレベルまで試料中のBMAA濃度を増加させ、潜在的に干渉する物質を除去するために、イムノアッセイ前に、試料濃度および/または試料浄化によって増強され得る。限定されない例示的な実施形態では、市販の固相抽出(SPE)吸着剤は、溶液からのBMAAを保有し、次いで、溶出ステップにおいてBMAAを放出する、それらの能力に対して評価された。初期SPEスクリーニングからの結果に基づいて、異なる高分子SPE相の更なる試験は、強力な陽イオン高分子SPE吸着剤(例えば、StrataXC)は、許容可能なBMAAの保有および溶出特性を有すると考えられることを示した。一実施形態では、試料は、本明細書に提供されるように、試料のイムノアッセイ前に、SPE吸着剤を用いて予備浄化に供される。一実施形態では、複数のSPE相は、本明細書に提供されるように、イムノアッセイ前に、試料の連続SPE抽出を用いて、試料からBMAAの保有および浄化に対する多面的アプローチについて使用される。
神経障害についてのスクリーニング
本発明は、被験体からの少なくとも1つの組織試料をスクリーニングし、BMAAの存在を検出することによって、神経障害に罹患している、または罹患する危険性がある被験体をスクリーニングするためのイムノアッセイ、抗体、およびキットを提供する。本明細書に提供されるように、神経障害(神経学的障害、または神経学的疾患、または神経疾患としても公知である)は、中枢神経系(脳、脳幹、および小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)、および自律神経系(その一部は中枢神経系および末梢神経系の双方に位置する)に関与する障害である。神経障害は、1つ以上の環境因子または遺伝的因子が、被験体における神経障害の発症に寄与し得るように、複雑な病因を有し得ることを理解されたい。神経障害は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、またはパーキンソン病のような、よく特徴付けされた障害または症候群を含むか、または複数の障害において観察される徴候(例えば、失語症)または症候(例えば、振せん)であり得る。被験体における神経障害の発症は、1つの因子、または因子の組み合わせに起因し得ることを更に理解されたい。同様に、被験体における特定の神経障害は、他の被験体において同一の神経障害を生じる異なる因子、または因子の異なる組み合わせに起因し得ることを理解されたい。本明細書に提供されるようなイムノアッセイは、1つ以上の環境因子または遺伝的因子が役割を果たしている神経障害についてのスクリーニングに適している。
スクリーニング法としては、被験体における1つ以上の神経障害を診断するための方法、被験体における1つ以上の神経障害の診断を確認するための方法、被験体における1つ以上の神経障害を発症する危険性または可能性を予測するための方法、被験体における神経障害の重症度を予測するための方法、および神経障害の発症に関連する神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体への被験体の曝露を決定するための方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、繰り返し試験を行い、被験体における神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体の存在およびレベル、ならびに/または環境試料中の神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体の存在およびレベルについての時間連続データを生成するための方法を含む。方法は、被験体からの組織試料中の神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体の存在を、評価している神経障害に関する他の物理的または心理学的な決定と相関付けることを含む。方法は、被験体からの1つ以上の組織試料中の神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体のレベルを、評価している神経障害に関する他の物理的または心理学的な決定と相関付けることを更に含む。一実施形態では、組織試料が、神経障害に罹患していると診断された被験体から得られ、BMAAレベルが決定され、1つ以上の神経障害を診断するための方法の一環として、これらの結果が、その被験体の他の物理的測定または心理学的測定と比較される。
本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットを使用するスクリーニングは、1つ以上の神経障害の診断を精緻化または確認するために、1つ以上の神経障害に罹患しているもしくは発症している危険性を評価するために、あるいは他の可能な診断を除外するために、実施され得る。一実施形態では、本発明のイムノアッセイを行い、1つ以上の神経障害について現在症状を身体に現していない被験体からの組織試料中のBMAAの存在を検出する。別の実施形態では、本発明のイムノアッセイを行い、1つ以上の神経障害について現在症状を示す被験体からの組織試料中のBMAAレベルを検出する。別の実施形態では、本発明のイムノアッセイを行い、神経障害に罹患している疑いがある被験体からの組織試料中のBMAAの存在を検出し、1つ以上の神経障害を診断するための方法の一貫として、これらの結果が、被験体の他の物理的または心理学的測定と比較される。更なる実施形態では、本発明のイムノアッセイを反復して行い、時間と共に、組織試料中のBMAAレベルを測定し、神経障害を発症している危険性があり得、追加のモニタリングを必要とし得る被験体を同定する。更なる実施形態では、本発明のイムノアッセイを行い、1つ以上の組織試料中のBMAAの存在を検出し、当業者は、BMAAレベルを、評価している神経障害に関する物理的もしくは心理学的な決定等の他の測定、ならびに/または被験体の遺伝的分析(例えば、家族歴および/または遺伝子型組織試料)と相関付け、神経疾患に罹患しているもしくは発症している危険性もしくは可能性を決定することができる。
別の態様に従って、長期間にわたって反復間隔で組織試料を摂取すること、イムノアッセイを行い、各組織試料中のBMAAの存在を検出すること、および縦断研究に有用なBMAAレベルについての時間連続データを提供することによって、神経障害の縦断研究のための方法が提供される。なお別の実施形態では、本発明のイムノアッセイを反復して行い、長期間にわたって被験体からの組織試料中のBMAAの存在を検出し、ここで、各試料中のBMAAのレベルまたは量は、時間と共に組織中のBMAA蓄積についてのデータを提供し、これは、1つ以上の神経障害の将来的な発病の可能性および/またはタイミングおよび/または重症度を予測するのに有用である。なお別の実施形態では、本発明のイムノアッセイを反復して行い、長期間にわたって被験体からの組織試料中のBMAAの存在を検出し、ここで、各試料中のBMAAのレベルまたは量は、時間と共に組織からのBMAA放出についてのデータを提供し、これは、1つ以上の神経障害の将来的な発病の可能性および/またはタイミングおよび/または重症度を予測するのに有用である。
本発明は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびALS−PDC(グアム島ALS−PDCまたはlytico−bodig病とも称される)として公知の神経病理的疾患が挙げられるが、これらに限定されない、神経障害についてのスクリーニングで用いるイムノアッセイ、抗体、およびキットを提供する。本開示の教示は、本発明がスクリーニング法を提供する他の神経障害を同定するための十分なガイダンスを提供し、当業者は、本発明の方法を実施し、被験体からの組織試料中のBMAAの存在を検出し、BMAAのレベルを決定し、次いで、被験体における神経疾患の他の兆候とこれらのレベルを比較し、試料中のBMAのレベルと特定の神経疾患の兆候との間で相関関係が存在するかどうかを確定することができる。異なる疾患は、多くの場合、類似の徴候および症状(例えば、振せん、認知症、失語症)を共有するため、本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットは、神経疾患について初期スクリーニングの一貫として、用いるのみ適し得、ここで、イムノアッセイに基づいた初期スクリーニングの結果は、どの更なる試験が、完全な評価のために必要とされるかを決定するために、信頼される。例えば、ALS−PDCの被験体は、アルツハイマー病またはパーキンソン病、あるいは双方の疾患と類似の症状を有し得、ALS−PDCは、別個の疾患であると考えられているが、ALS−PDCの被験体がまた、アルツハイマー病またはパーキンソン病にも罹患している可能性がある。同様に、アルツハイマー病の被験体および他の形態の認知症の被験体は、幾つかの類似の症状を有し得るが、種々の組織のBMAA含有量において異なり得る。したがって、被験体におけるBMAAレベルの測定は、どの神経障害が存在し、被験体において観察された徴候および症状に寄与しているかを同定するのに役立ち得る。
一態様に従って、被験体からのいずれの組織試料を用いて、本発明のイムノアッセイを行うことができる。一実施形態では、組織試料を分析して、BMAAの存在を検出する。別の実施形態では、BMAAの存在を検出することは、組織試料中に存在するBMAAの量を決定することを含む。別の実施形態では、組織試料を分析して、インビボまたはインビトロの組織中のBMAAの存在だけでなく、BMAAの配置を検出し得る。別の実施形態では、組織試料を処理して、少なくとも2つの試料分画を得、少なくとも1つの分画を分析して、BMAAの存在を検出する。遊離BMAAおよび/またはタンパク質結合BMAAのレベル(量)は、組織試料の性質および特定の実施形態において回答されるべき質問に従って、決定(定量化)され得る。幾つかの実施形態では、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方のレベルを決定することが所望され得る。他の実施形態では、遊離BMAAレベルのみを決定することが所望され得る。他の実施形態では、タンパク質結合BMAAレベルのみを決定することが所望され得る。幾つかの実施形態では、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方が、分析して、試料中の全BMAAレベルを決定する単一の試料分画(加水分解物)中に回収されるように、組織は、完全に化学的に(例えば、加水分解によって)分離され得る。
組織試料は、生きている被験体から得られても、生きている被験体に存在しても、あるいは、保存された組織、生検および/または検死試料等の保存された検体、または博物館の検体から得られてもよい。保存された組織は、凍結された組織、組織学的検体、固形の保管媒体上で乾燥された組織、または保存された組織の他の形態であり得る。好適な組織試料としては、神経組織または非神経組織が挙げられるが、これらに限定されない。神経組織は、脳組織または脳−脊髄液(CSF)を含む中枢神経系(CNS)と関連付けられていても、末梢神経系(PNS)と関連付けられていてもよい。神経組織は、インビボ画像診断法に好適な脳脊髄液(CSF)が挙げられるが、これに限定されない、生きている被験体に存在する組織を含むことができる。非神経組織は、ケラチン組織、または血液、血清、唾液、または尿が挙げられるが、これらに限定されない、非ケラチン組織であり得る。非神経組織は、インビトロまたはインビボで分析され得る。例えば、血液のインビトロ分析は、被験体から血液を除去し、血液試料を分析することを伴い得るが、一方、血液のインビボ分析は、血管等の体内腔中の血液を検出し、画像することを伴い得る。
ケラチン組織としては、毛髪、皮膚、指の爪または足指の爪を含む爪、羽、鉤爪、蹄、または角が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様に従って、複数の時点で回収される被験体からのケラチン組織の試料、例えば、毛髪または皮膚試料を分析して、BMAAの存在を検出し、必要に応じて、BMAAレベルを決定することができる。一実施形態では、毛髪を分析して、BMAAの存在を検出する。一実施形態では、毛髪を分析して、試料中のBMAAの全レベル(量)を検出する。一実施形態では、毛髪を分析して、別個に(例えば、別個の試料分画中に)、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAを検出し、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAのレベル(量)も決定し得る。別の実施形態では、毛髪を分析して、遊離BMAAのみを検出する。別の実施形態では、毛髪を分析して、タンパク質結合BMAAのみを検出する。別の実施形態では、皮膚を分析して、BMAAを検出する。一実施形態では、皮膚を分析して、試料中のBMAAの全レベル(量)を検出する。一実施形態では、皮膚を分析して、別個に(例えば、別個の試料分画中に)、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAを検出し、遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAレベルも決定し得る。別の実施形態では、皮膚を分析して、遊離BMAAレベルのみを検出する。別の実施形態では、皮膚を分析して、タンパク質結合BMAAレベルのみを検出する。
別の実施形態では、脳組織を分析して、BMAAの存在を検出し、脳組織を分析して、組織中のBMAAレベルを決定し得る。別の実施形態では、インビボまたはインビトロで脊髄液(CSF)の試料を分析して、BMAAの存在を検出し、CSFを分析して、流体中のBMAAレベルを決定し得る。脳またはCSF組織を分析して、タンパク質結合BMAA、遊離BMAA、またはタンパク質結合と遊離BMAAの双方のレベルを決定し得、タンパク質結合BMAAは、神経タンパク質または他のタンパク質に結合され得る。
神経障害に関連する環境因子についてのスクリーニング
一態様に従って、環境試料中のBMAAの存在を検出することによって、神経障害に関連する環境因子についてのスクリーニングのために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。本明細書に提供されるようなスクリーニングとしては、環境試料を試験し、神経障害に関連する神経毒性アミノ酸またはその神経毒性誘導体への被験体の実際のまたは潜在的な曝露を決定することが挙げられるが、これに限定されない。環境試料は、摂取される物質、例えば、水試料または食物試料等から得られ得る。環境試料は、例えば、飲料水等の計画的に摂取される物質、または食物供給もしくは食物連鎖の一部である植物もしくは動物であり得る。代替として、環境試料は、偶発的に摂取される物質(例えば、内容物または分泌物が他の摂取される物質に関連するようになる生物(例えば、食用の植物中に存在するシアノバクテリア共生生物、または洗浄もしくは飲料用の水中のシアノバクテリア)からの物質)から得られ得る。
一実施形態では、環境試料中のBMAAレベルを決定(定量化)するために、BMAAへの被験体の実際のまたは潜在的な曝露を決定するために、本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。環境試料中のBMAAレベルの測定は、BMAAへの潜在的なまたは実際の曝露の決定につながり、これらの測定値は、これらの環境試料に曝露される被験体において、神経障害が発症する可能性を予測するために使用することができる。米国特許第7,256,002号に開示されるように、シアノバクテリアの保管物からの試料のHPLC分析は、試験されたほぼ全ての株が、BMAAを産生したことを示した。更に、米国特許第7,256,002号に開示されるように、ソテツ組織中に見出されるBMAAは、ソテツに取り込まれるシアノバクテリア共生生物によって産生されると考えられるため、ヒトおよび「オオコウモリ(flying fox)」(コウモリ)等のソテツを摂食する他の生物は、シアノバクテリア起源のBMAAを摂取すると考えられる。
別の態様に従って、環境試料は、シアノバクテリアを含有することで知られている水である。別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリアを含有する疑いがある水である。別の実施形態では、環境試料は、内容物が未知である水である。別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリアが含有する水を摂食する食物動物、例えば、魚、鳥、シカ、または家畜化動物であり得る。別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリアを含有するか、またはシアノバクテリアとの共生において生息する、地衣類、またはコケ、またはゼニゴケ類であり得る。
別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリアを含有するか、またはシアノバクテリアとの共生において生息する、海生もしくは淡水生藻類、または海生もしくは淡水生菌類であり得る。別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリアを含有するか、またはシアノバクテリアとの共生において生息する、海生もしくは淡水生無脊椎動物であり得る。別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリアにより残されたストロマトライト、石油化学堆積物、もしくはミネラル堆積物であり得る。別の実施形態では、環境試料は、シアノバクテリア、またはシアノバクテリアにより残されたストロマトライト、石油化学堆積物、もしくはミネラル堆積物を含有する、植物、地衣類、コケ、藻類、海生無脊椎動物を摂食する食用動物、例えば、トナカイ、カリブー、シカ、ムース、海水魚もしくは淡水魚、鳥、爬虫類、または家畜化動物であり得る。
別の態様に従って、環境試料は、環境試料中の、神経毒性アミノ酸、特に、BMAAを産生するシアノバクテリアの存在を検出することによって、試料が、神経障害に関連するかどうかを決定するかどうかを決定するためにスクリーニングされる。Nostoc属およびAnabena属が挙げられるが、これらに限定されない、属のシアノバクテリアの存在を検出するために、本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットを実施する。BMAAを産生するシアノバクテリアを検出するために環境試料をスクリーニングすることによって、神経障害に関連する環境因子への被験体の実際のまたは潜在的な曝露を決定することが可能である。
別の態様に従って、複数の環境試料を、試験して、食物連鎖の至るところの異なるレベルにおいて、神経性障害と関連がある神経毒性アミノ酸、特に、BMAAの存在およびレベルを決定する。本理論に縛られることを望むものではないが、神経障害に関連する因子、例えば、BMAAの生物濃縮は、より低い栄養段階由来の生物の消費よりも、より高い栄養段階由来の生物の消費が、神経毒性への更に高度な曝露を与え得るという結果となって、異なる栄養段階の生物組織における因子の蓄積により生じ得る。1つの例示的な実施形態では、複数の環境試料が、食物連鎖において試験され、これには、ソテツのサンゴ状の根、ソテツの葉、ソテツの種子、およびソテツの種子を食することが公知であるオオコウモリ(コウモリ)からの組織試料が含まれる。別の実施形態では、複数の環境試料が、食物連鎖において試験され、これには、水、水生植物、その水および水生植物を摂取する食用動物、例えば、魚、鳥、野生動物または家畜化動物、および草食動物を摂食する肉食動物が含まれる。一実施形態では、複数の環境試料が試験され、BMAAのような因子が特定の食物連鎖において見出されるかどうかを決定し得る。複数の環境試料を試験した後、神経毒性アミノ酸、例えば、BMAAのレベルが、その食物連鎖における蓄積または生物濃縮の証拠について、比較および分析され得る。
更なる態様に従って、神経疾患に関連する神経毒性アミノ酸について環境試料を試験することに加えて、被験体からの組織試料もまた分析される。被験体からの少なくとも1つの組織試料をスクリーニングすることにより、食物連鎖における環境因子(神経毒性アミノ酸、特に、BMAA)の蓄積または生物濃縮を決定するため、および有用なデータを提供し、その食物連鎖の各段階におけるこれらの環境因子(例えば、BMAA)のレベルを、その食物連鎖の種々の栄養段階からの物質を消費する被験体における神経性障害の頻度または重症度と相関付けるために有用なデータを提供する。一実施形態では、神経障害の症状、または診断を有する被験体からの組織試料を分析して、神経疾患に関連する神経毒性アミノ酸、特に、BMAAを検出する。別の実施形態では、神経障害について無症候である被験体からの組織試料を分析して、神経疾患に関連する神経毒性アミノ酸、特に、BMAAを検出する。本発明のこの態様は、神経障害と、神経障害に関連することが既知であるか、または疑いがある環境因子への曝露とを結びつけるための強力な手段を提供する。
限定されない例示的な実施形態では、開示された米国特許第7,256,002号では、BMAAレベルの上昇が、BMAAを含有することが既知であるか、または疑いがある食物源への既知の曝露後に、ALS−PDCで死亡した被験体の脳組織中に検出され、即ち、ALS−PDCで死亡した被験体は、彼らの人生において何回か伝統的なチャモロ食を食べていたチャモロ人であり、これには、ソテツの穀粉が含まれていた可能性があり、オオコウモリ(コウモリ)が含まれ得、オオコウモリの標本においてBMAAレベルの測定は、高濃度のBMAAを示し、1匹のオオコウモリの消費が、174kg〜1,014kgの加工されたソテツの穀粉を食べることにより得られる用量と等量のBMAA用量をもたらし得るという予測を導いた。加えて、BMAAレベルの上昇は、ALD−PDCに無症候であり、他の原因により死亡した1人のチャモロ人被験体において検出され、これは、発症した(ALD−PDC)チャモロ人および発症していない(無症候)チャモロ人の双方の脳組織において神経原線維変化の所見と合致した。対照的に、ALS−PDCについて無症候であり、他の原因で死亡した別のチャモロ人は、脳組織において検出可能なBMAAレベルを有していなかった。
本発明の別の態様は、神経障害に関連する環境因子によって環境汚染を検出するための方法を提供する。限定されない例示的な実施形態では、開示された米国特許第7,256,002号では、BMAAレベルの上昇が、アルツハイマー病に罹患していた非チャモロ人(カナダ人)被験体の脳組織において、および進行性核上麻(PSP)に罹患していた非チャモロ人(カナダ人)において見出され、これには、これらの被験体が、彼らの人生において何回かBMAAの環境源に曝露されていたことを示した。別の態様に従って、シアノバクテリアBMAAの生物濃縮は、食物連鎖を通して発生し得、これは、被験体の組織において蓄積をもたらす。神経毒性へ曝露された集団における疾病の頻度は、用量の関数であるので、低レベルの進行性神経障害でさえも、シアノバクテリアにより汚染された給水における低濃度のBMAAへの曝露に関連している恐れがある。したがって、本明細書に提供されるような環境スクリーニングは、BMAAまたは神経障害に関連する他の環境因子の考えられる環境源を調査するために、実行され得る。本明細書に提供されるような環境スクリーニングは、BMAAまたは神経障害に関連する他の環境因子への他の被験体の曝露を阻止または最小化し、それによりBMAAまたは他の因子に関連する神経障害を発症する危険を減少させるために、実行され得る。
更なる態様に従って、本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットは、被験体が摂食する前に、環境試料をスクリーニングすることによって、神経障害に関連する環境因子への曝露から被験体を保護するために使用することができる。一実施形態では、BMAAについて植物質または動物質を含む食物試料を試験するために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。別の実施形態では、BMAAについて給水を試験するために、イムノアッセイ、抗体、およびキットが提供される。BMAAについての環境スクリーニング用のキットは、BMAAへの曝露から被験体を保護するために、給水、食物供給源、および他の環境試料を試験するために、本発明の方法を実施するための材料を含む。別の態様に従って、本発明のイムノアッセイ、抗体、およびキットは、公衆衛生目的のために使用され、例えば、BMAAを産生するシアノバクテリアによる給水または食物供給源の汚染を示すことができる。
神経毒性アミノ酸についてのスクリーニングのためのキット
本発明は、本発明のイムノアッセイを行うための手段を含むキットを提供する。一実施形態では、本発明は、神経障害に罹患している、または罹患する危険性がある被験体をスクリーニングするためのキットを提供し、キットは、被験体からの組織試料中のBMAAの存在を決定するためのイムノアッセイを含む。別の実施形態では、本発明は、試料中のBMAAの存在を決定することによって、神経障害に関連する環境因子についての環境試料をスクリーニングするためのキットを提供し、キットは、環境試料中のBMAAの存在を決定するためのイムノアッセイを含む。本発明のキットは、複数のタイプの試料を分析するための手段を含み得、例えば、キットは、被験体からの組織試料、ならびに水試料または食物試料等の環境試料を分析するための手段を含み得る。代替として、本発明のキットは、1つまたは数タイプの試料を分析するための手段のみを含み得、例えば、キットは、毛髪等のケラチン組織試料を分析するための手段のみを含み得る。
このようなキットは、バイアル、管等の1つ以上の容器手段を受容するように区画化された運搬手段を含み得、容器手段のそれぞれは、方法に使用される別個の要素のうちの1つを含む。例えば、容器手段の1つは、BMAAに結合する抗体を含み得、構成要素は、要望通り、液体または凍結乾燥形態中に存在し得る。キットは、BMAAに結合する抗体を検出するために別個の要素を含む、追加の容器手段を含み得る。BMAAに結合する抗体は、検出可能に標識される場合、キットは、BMAAに結合される標識抗体を検出するために必要とされる試薬を含む1つ以上の追加の容器手段を含み得、ならびに、任意の容器手段は、検出反応を行うことを必要とする。例えば、BMAAに結合する抗体が、ビオチンに標識される場合、容器手段は、アビジンまたはストレプトアビジンレポーター分子、およびビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジンを生じることが可能な試薬を含み得る一方、別の容器手段は、非結合抗体およびレポーター分子を除去するための試薬を含み得る。BMAAに結合する抗体は、検出可能に標識されない場合、キットは、検出可能に標識される二次抗体を用いて、BMAAに結合する抗体を検出するための別途の要素を含む、更なる容器手段を含み得、これには、BMAAに結合する抗体に対して二次抗体結合を検出するために必要である試薬を含む。例えば、キットは、要望通り、液体または凍結乾燥形態において、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識された二次抗体を含む更なる容器手段を含み得る。別の容器手段は、試料およびBMAAに結合する抗体を用いて、二次抗体をインキュベーションするための試薬を含む一方、別の容器手段は、インキュベーション後、非結合抗体を除去するための試薬を含む。別の容器手段は、HRP活性、例えば、HRP基質を検出するための試薬を含む。必要ならば、更なる容器手段は、HRP生成物を視覚化するための手段を含む。イムノアッセイ形式に応じて、試料は、特定のステップのための容器手段に平面化され得るか、または容器の含有物は、使用のために除去され得る。
好ましくは、本発明のキットは、本明細書に提供されるように、イムノアッセイを行うために必要とする全ての要素および試薬、例えば、試料を操作するための容器、および反応を行うための容器、ならびに試料中のBMAAを決定するために観察可能な、そうでなければ、測定可能な反応を導入するための試薬を含む。故に、キットは、キットが与えられる全ての要素を含む受容容器手段に区画化された運搬手段を含み得る。
本発明のキットはまた、「対照」抗体、例えば、BMAAに結合しないヌル血清または抗体も含み得る。本発明のキットは、BMAAを含有することが周知の「陽性対照」試料を含み得る。本発明のキットは、BMAAに含有しないことが周知の「陰性対照」試料を含み得る。本発明のキットは、既知量のBMAAの「対照」または「標準」試料のパネルを含み得、これにより、標準曲線は、定量および検量のために構成され得る。キットは、複数の試料を分析するための手段を含み、例えば、上記のような継続研究のために、数日、数ヶ月、数年にわたり得る繰り返し間隔でイムノアッセイを行う手段を含み得る。
キットは、試料を回収するための手段を更に含み得る。被験体からの組織試料を回収するための手段は、当該技術分野において既知であり、例えば、毛髪もしくは爪試料を得るためのはさみもしくはクリッパー、またはプラスチック製のスティックもしくは口腔綿棒等の皮膚試料を得るためのデバイス、または血液試料を生成するためのランセット等の流体試料を得るためのデバイス、またはCSFを吸引するための中空針等である。環境試料を回収するための手段はまた、当該技術分野において既知であり、例えば、流体試料を回収するための密封可能な液体容器等である。試料を回収するための手段は、試料を保存するための手段、例えば、液体容器(容器)もしくは固体基質、固体支持体、マルチタイタープレート、試験管、トレイ等を更に含み得、ここで、保存手段は、試料を安定させる、および/または保存するための試薬を更に含み得る。
本発明のキットは、他の箇所で記載されるように、試料調製の手段を含み得る。キットは、例えば、本開示において他の箇所で記載されるように、強酸、酵素、浄化剤等を用いて、組織試料を機械的に分離するための手段、または組織試料を化学的に分離するための手段等の分析用の組織試料を調製するための手段を含有し得る。試料調製のための手段は、試料を処理して、異なる分画を得るための手段を含み得、それによって、試料中のタンパク質結合BMAA(例えば、タンパク質分画において)および遊離BMAA(例えば、可溶性もしくは細胞質分画において)を別個に分析するための手段を提供する。試料調製のための手段は、全試料抽出物のための手段を含み得、かつ、全試料抽出物中のタンパク質結合BMAAおよび遊離BMAAの双方を分析するための手段を含み得る。当業者は、任意の特定のイムノアッセイで用いるのに好適なキットを調製することができ、この精密な物理的な実施形態は、企図されるアッセイのタイプに応じて異なり得ることを理解されたい。
好ましいキットは、被験体からの組織試料中のBMAAの存在を決定するために調製される商業ユニットである。別の好ましいキットは、環境試料中のBMAAの存在を決定するための商業ユニットである。このようなキットの要素は、例えば、前述されるような、抗体、マイクロタイタープレート、標準試薬に加えて、種々の希釈剤および緩衝剤が含まれ得る。このキットはまた、固体支持体に結合される神経毒性アミノ酸複合体、または固体支持体に結合される抗体も含有し得る。固体支持体は、マイクロタイタープレート、または物質に適用される試料を、拡散するか、または「計深棒」または透過性物質等の1つ以上のその寸法に沿って、移動させることが可能な物質等の表面であり得、ここで、神経毒性アミノ酸およびその神経毒性誘導体は、抗体に結合し、検出可能な複合体を形成する一方、非結合物質が、カラム中のビーズ等を通過する。本キットはまた、分析されるべき1つ以上の神経毒性アミノ酸およびその神経毒性誘導体の標識抗体または標識複合体も含有し得る。
一態様に従って、キットは、好適な包装材料に包装される、本発明の少なくとも1つの方法を実践するために用いる1つ以上の組成物を含む。一態様に従って、本発明のキットは、本発明の少なくとも1つの方法を実践するためのラベルおよび/または包装挿入物を含む。本明細書で使用されるとき「包装材料」という用語は、キットの成分を収容する物理的構造を指す。包装材料は、無菌および/または安定条件下で成分を維持することができ、かかる目的に一般に使用される材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、箔、アンプル等)で構成することができる。「ラベル」および「包装挿入物」という用語は、本発明の少なくとも1つの方法を実践するための適切な説明書を指す。説明書は、1つ以上の言語において書かれた指示、図、写真、図表等によって示された図式的な指示、録音された口頭指示、固定のコンピュータ可読媒体においてコードされた指示、または本発明の少なくとも1つの方法を実践するためのキットの成分を使用するための指示を伝達するために好適な任意の他の指示形式であり得ることを理解されたい。
一実施形態では、本発明のキットは、BMAAもしくはBMAA誘導体の存在を決定することによって、被験体もしくは環境試料中の神経毒素の存在を検出するためのラベル、および/または包装挿入物を含む。一実施形態では、キットは、インビトロ、インビボ、または生インビトロで、被験体を治療するための説明書を含む。追加の実施形態では、キットは、インビボ、または生インビトロで、被験体を治療するための説明書を含む、ラベルまたは包装挿入物を含む。
説明書は、本明細書に記載されるように、本発明のイムノアッセイを実践するための指示を含むことができる。説明書は、「印刷物」上、例えば、キット内の紙もしくは厚紙の上、キットもしくは包装材料に貼られたラベル上とすることができ、またはキットの成分を含むバイアルもしくは管に添付することができる。説明書は、音声またはビデオテープを含み得、任意に、ディスク(フロッピー(登録商標)ディスケットまたはハードディスク)、CD−またはDVD−ROM/RAM等の光学CD、磁気テープ、RAMおよびROM等の電気的記憶媒体、磁気/光記憶媒体等のこれらの複合型等、コンピュータ可読の媒体上に含めることができる。
本発明のキットはまた、本発明の方法に従って神経毒性アミノ酸もしくは誘導体を検出するための1つ以上の検出手段(例えば、検出酵素および検出酵素基質、またはビオチンおよびビオチン結合部分、コロイド金、フリオロフォア、染色基等の他の標識部分)を含むこともできる。本発明のキットは、更に、緩衝剤、保存剤、または安定剤を含むことができる。キットは、標準曲線および較正アッセイを調製するための対照成分を更に含むことができる。キットのそれぞれの成分は、別個の個別の容器内に封入することができる。例えば、キットは、被験体における、神経毒性アミノ酸、特に、BMAAを検出するための単一ユニットを含むことができる。代替として、キットは、複数の試料中の神経毒性アミノ酸を検出するための複数のユニットを含むことができる。代替として、キットは、単一の試料中、または複数の試料中の複数の神経毒性アミノ酸を検出するための複数のユニットを含むことができる。キットの成分は、1つ以上の容器の混合物であり得、種々の容器の全ては、単一もしくは複数の包装内であり得る。
一実施形態では、キットは、好適な包装材料に包装された、組織試料中のBMAAもしくはBMAA誘導体を測定することによって、被験体における神経毒性の存在を検出するための1つ以上の組成物を含む。別の実施形態では、キットは、好適な包装材料に包装された、BMAAもしくはBMAA誘導体を測定することによって、環境試料中の神経毒性の存在を検出するための1つ以上の組成物を含む。
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が、本明細書に記載すされる。
実施例1.BMAAに対して産生される抗血清
BMAAを認識することが可能なポリクローナル抗体を、シアノバクテリア肝臓毒素ミクロシスチン−LRに対してポリクローナル抗体を産生し、評価するためのプロトコルから適合された方法によって産生した(Metcalf et al.2000,Water Research 32:2761−2769、Chu et al.1989,Appl Environ Microbiol 55(8):1928−1933)。簡潔に述べると、BMAA(分子量118Da)を、Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manualに開示されるように、抗体連結のための方法を適合することによって、巨大分子に複合し、哺乳類宿主に導入される場合、免疫反応を刺激した(Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。BMAAのキラル中心でカルボキシルおよびアミン官能基を、それぞれ、グルタルアルデヒド(GLU)およびカルボジイミド(EDC)リンカーのために選択し、グルタルアルデヒド−BMAA(GLU−BMAA)およびカルボジイミド−BMAA(EDC−BMAA)を産生した。GLU−BMAAおよびEDC−BMAAを、それぞれ、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはウシ血清アルブミン(BSA)に複合し、以下のBMAA複合体: BSA−GLU−BMAA(BGB)、BSA−EDC−BMAA(BEB)、KLH−EDC−BMAA(KEB)、およびKLH−GLU−BMAA(KGB)を産生した。
具体的には、グルタルアルデヒド結合BMAA複合体を、以下の通りに調製した。5mg/mL溶液のBMAAを、等容積で2倍濃度のPBSを50μLアリコートのBMAAに添加することによって調製した(水中の10mg/mL)。KLH−GLU−BMAA(KGB)において、KLHの溶液を、PBS中の10mg/mLの濃度で調製した。40μLのBMAAを、1mLのKLH溶液(10mg/mL)に添加し、次いで、960μLのPBSを添加した。PBS(約25%のストック)中の0.2%のグルタルアルデヒド溶液を調製した。等容積のグルタルアルデヒドを、一定に撹拌しながら、担体タンパク質BMAA溶液にゆっくりと添加し、次いで、室温で1時間、インキュベートした。PBS(pH7.4)中の1Mストックからのグリシンを、200mMの最終濃度まで、1時間、攪拌しながらインキュベートした。KGB複合体を、PBSに対して透析する(一晩で2Lを4回交換)ことによって、他の反応物から分離した。透析後、KLH複合体を含有する溶液のタンパク質濃度を決定し、KGBを、−20℃で、500μgのアリコート中に保存した。
BSA−GLU−BMAA(BGB)については、同一の手順を使用し、10mg/mLのBSA溶液から開始した。透析後、BSA複合体を含有する溶液のタンパク質濃度を決定し、BGBを、−20℃で、500μgのアリコート中に保存した。
EDC結合BMAA複合体を、以下の通りに調製した。50μLのBMAAストック(5mg/mL)を微小遠心管に添加した。11.1mg/mLの濃度で、PBS中のEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の溶液を調製し、450μLのEDC溶液をBMAA溶液に添加し、0.1MのNaOHを用いてpH8まで調整した。混合物を、室温で5分間、インキュベートし、pHを確認し、必要ならば、NaOHで調整した。KLH−EDC−BMAA(KEB)については、10mg/mLの濃度で、1mLのKLH担体タンパク質を含有する溶液を、EDC−BMAA溶液に添加し、混合物を、室温で4時間、インキュベートした。100mMの最終濃度まで酢酸ナトリウム(pH4.2)を添加する(1.1Mのストックに対しては、150μLを添加した)ことによって、反応を停止した。混合物を、室温で1時間、インキュベートした。KEB複合体を、PBSに対して透析する(一晩で2Lを4回交換)ことによって、他の反応物から分離した。透析後、KLH複合体を含有する溶液のタンパク質濃度を決定し、KGBを、−20℃で、500μgのアリコート中に保存した。
BSA−EDC−BMAA(BEB)については、同一の手順を使用し、10mg/mLのBSA溶液から開始した。BEB複合体を、上述のように透析することによって、他の反応物から分離し、BSA複合体を含有する溶液のタンパク質濃度を決定し、BEBを、−20℃で、500μgのアリコート中に保存した。
抗血清を産生させるために免疫付与で用いる、KLH−BMAA複合体、即ち、KLH−EDC−BMAA(KEB)およびKLH−GLU−BMAA(KGB)を選択した。BSA−BMAA複合体、即ち、BSA−EDC−BMAA(BEB)およびBSA−GLU−BMAA(BGB)を、抗血清を試験し、イムノアッセイを展開するためのイムノアッセイプレートを被覆するために使用した。
標準プロトコルに従って、New Zealand Whiteウサギに、KLH−EDC−BMAA(KEB)またはKLH−GLU−BMAA(KGB)を注射した(Metcalf et al.,2000)。簡潔に述べると、ウサギは、BMAA−KLH複合体(KEBまたはKGB)および完全フロインドアジュバントを含有する溶液の第1の皮下注射を受け、2週間後に、静脈内ブースター注射を行った。更なる抗原ブースター注射を、1ヶ月間隔で行い、各ブースター注射から1週間後に、血清の収穫があった(約20mLの血液)。収穫された血液は、赤血球から血清を分離する前に、凝固させ、一晩保存した。単離した血清は、PBSに対して透析する前に、3回の硫酸アンモニウム沈殿を行った。免疫前血清(「ヌル血清」)を含む各血清試料のアリコート(100μL)を、必要とされるまで、−20℃で保存した。1匹のウサギを、KGBで免疫付与し、血清は、8回の異なる時点(8回目の「採血」)で収穫した。合計2匹のウサギに、KEBで免疫付与し、第1のウサギは、2回目の採血後死亡し、第2のウサギは、次いで、KEBで免疫付与し、血清は、第2のウサギから5回の異なる時点(5回目の「採血」)で収穫した。KEBで免疫付与した2匹のウサギからの血清を用いた結果を区別するために、KEBで免疫付与した第1のウサギは、「KLH−EDC1−B MAA」抗血清として同定され、KEBで免疫付与した第2のウサギからの血清は、「KLH−EDC2−BMAA」抗血清として同定された。
実施例2.BMAAに対して産生される抗血清の予備的特徴付け
予備的測定によって、免疫血清が、担体タンパク質および架橋剤との抗体反応に加えて、BMAAと反応する抗体を含むことが示された。
抗体捕捉イムノアッセイ
ミクロシスチンに対して産生される抗血清を特徴付けることに成功したことを示すものと同様の抗体捕捉イムノアッセイ(Metcalf et al.,2000、Chu al.1989)を使用して、上述のように調製した、BMAA複合体に対して産生される抗血清を特徴付けた。ここで、ウサギ抗体の結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)および発色合成HRP基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)で標識された抗ウサギ二次抗体を用いて検出した。ウェルは、BMAA複合体(1ウェル当たり100μL)で被覆した後、プレートを洗浄し、PBS(Marvelブランド、1ウェル当たり180μL)中の1%(w/v)乾燥粉乳でブロックした。ブロックした後、更に洗浄し、次いで、一次抗体(PBS中)を適用する前に、プレートを、37℃で1時間、インキュベートした。一次抗体を添加し、インキュベートした後、各プレートを洗浄し、PBS中のヤギ抗ウサギIgG−HRP(Sigma)を、1/10000の希釈で、ウェル(1ウェル当たり100μL)に添加した。次いで、プレートを、37℃で1時間、インキュベートし、次いで、洗浄した。HRP基質TMBを、各ウェル(1ウェル当たり100μL)に添加し、プレートを、室温で30分間、展開させた。100μLの1MのHClを添加することによって、HRP−TMB反応が停止し、各プレートの450nm(A450)での吸光度を、各ウェル中の結合抗体の量を決定するために測定した。
ここで、BSA−BMAA複合体を、種々の被覆濃度でイムノアッセイプレートのウェル上で被覆し、同一の方法によって調製したBSA−BMAA複合体に対して産生される抗血清の試料を、イムノアッセイプレートに添加し(即ち、BEBに対して産生される抗血清を、BEBで被覆したウェルに添加し、BGBに対しても同一パターンである)、抗体を、プレート上で被覆したBSA−BMAA複合体に結合することによって捕捉し、ここで、抗体結合を、ヤギ抗ウサギIgG−HRP二次抗体、TMB基質、および各ウェルに対してA450の測定を用いて、測定した。BMAAで被覆したウェルをまた、ウェルを被覆するために使用したBMAA複合体で免疫付与する前に、ウサギから得たヌル血清を用いてプローブし、ここで、ヌル血清を、上述のように精製した。
抗体捕捉イムノアッセイへの異なる実験的アプローチを用いて、BMAAを、ウェルの表面に直接結合し(即ち、BSAまたはKLH複合体を通さない)、抗BMAA抗体結合を、上述のように測定した。抗体捕捉におけるpHおよびプレート形式の効果は、異なるpH値を有する溶液を用いて、異なるpH値で異なる結合特性を有することが既知の種々の形式のマルチウェルプラスチックプレートに直接結合されるBMAAを伴って、測定した。BMAA(20μg/mL)を、以下の異なるpH値を有する緩衝剤中で溶解した。pH4で酢酸塩、pH7.4でPBS、pH9.6で炭酸塩。次いで、BMAA溶液を、pH特異結合特性を有することが既知のプレートの Nunc brand MAXISORP(商標)、Nunc brand MEDISORP(商標)、およびNunc brand MULTISORP(商標)プレート(Thermo Fisher Scientific)上で被覆した。次いで、BMAA複合体に対して産生される抗血清、またはヌル血清(免疫前血清)のアリコートを、1/1000の希釈で、それぞれ、各プレート形式/pHの組み合わせに対して各血清試料を試験した設計において、各ウェルに添加した。以下の血清試料を、異なるpH値で異なるプレート形式に結合するために、試験した。2匹の異なるウサギからの2つのヌル血清試料(NS1、NS2);異なるウサギにおけるKLH−EDC−BMAAに対して産生される2つの抗血清(EDC1−1は、ウサギが死亡する前に、第1のBMAA−EDC免疫付与ウサギからの第1の採血であり、EDC2−1は、第2のBMAA−EDC免疫付与ウサギからの第1の採血であった);ならびに同一のウサギから1ヶ月間隔で採取されたKLH−GLU−BMAA(Glu1、Glu2、Glu3、Glu4)に対して産生される抗血清の4回の連続的採血。ウェルの表面に直接結合したBMAAを伴う形式は、各ウェル中で有意に高い吸光度の測定値を得、ここで、BMAA複合体に対して抗血清を添加し、添加したヌル血清(NS)を有するウェルの吸光度の測定値と比較したが、この形式は、更なる研究では使用しなかった。
BMAA複合体のBMAA部分に対して特異性のある検証
BMAA特異的抗体の存在を検証するため、即ち、抗血清を産生するための免疫反応を誘発するために使用するBMAA複合体のBMAA部分と反応する抗体の存在を検証するために、BMAA複合体に対して産生される抗血清を試験した。ここで、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清を、「逆」の架橋結合の化学物質を用いて合成したBSA−BMAA複合体に結合する能力に関して試験した。KLHが複合した免疫原に対して産生されるウサギ抗血清は、BSAに対して抗体を有さないため、BSA−BMAA複合体を使用して、BMAA特異的抗体を検出した。更に、異なる架橋結合の化学物質(GLU、EDC)を用いた、担体タンパク質(KLH)にBMAAを複合した結果として、BMAA分子の構成の立体配座の変化が予想され得ることが理解された。故に、1つの架橋結合の化学物質を介して複合したBMAAに対して産生される抗血清は、「逆」の架橋結合の化学物質を介して複合したBMAAに対して低い反応性を示し得ることが予想された。
KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清を、双方の架橋結合の化学物質を用いて調製したBSA−BMAA複合体に対して試験した場合、各抗血清は、「逆」の架橋結合の化学物質を介して複合したBSA−BMAAに対して陽性反応を示した。つまり、EDC結合BMAA複合体(KEB)に対して産生される抗血清は、GLU連結BSA−BMAA(BGB)に対して陽性反応を示した。同様に、GLU連結BMAA複合体(KGB)に対して産生される抗血清は、EDC結合BSA−BMAA(BEB)に対して陽性反応を示した。予想通りに、各抗血清は、抗血清を産生させるために使用したBMAA複合体と同一の架橋結合の化学物質を介して複合したBSA−BMAAに対して陽性反応を示した。KGBに対して産生される抗血清は、GLU架橋結合試料に反応するKEBに対して産生される抗血清と比較して、EDC架橋結合試料に対して更に強く反応すると考えられることが留意された。KEBで免疫付与した第1の動物は、本複合体(KLH−EDC2−BMAA)で免疫付与した第2の動物の抗血清よりも良好な反応を生じた抗血清(KLH−EDC1−BMAA)を生成した。
これらの結果は、BMAA特異的抗体が、収穫した抗血清のIgGプール中に存在し、複合に使用する架橋結合法が、BMAAを認識する抗血清の能力における検出可能な負の効果がなかったことを示した。
間接競合ELISAを用いて決定された遊離BMAAとの抗血清の反応性
遊離BMAAに結合するためのBMAA複合体に対して産生される抗血清の能力を、上述の抗体捕捉イムノアッセイから修正された間接競合ELISA形式を用いて決定した。つまり、抗体捕捉イムノアッセイを、ウェルに結合するBSA−BMAA複合体を有するプレートに対して、遊離BMAA(非結合および非複合)および抗血清を同時に各ウェルに添加することを除いて、溶液中の遊離BMAAおよびウェル上の結合BSA−BMAA複合体が、抗体結合に対して競合するように、上述のように、一般的に実行した。
簡潔に述べると、各アッセイウェルは、100μLのPBS中のBSA−BMAA(BGBまたはBEB)を、pH7.4で添加することによって被覆し、37℃で1時間、2μg/mL、1μg/mL、または0.5μg/mLのBSA−BMAA濃度を用いて、インキュベートした。次いで、ウェルを、PBS(Marvel brand、1ウェル当たり180μL)中の1%(w/v)乾燥粉乳でブロックした。遊離BMAA(50μL/ウェルのL−BMAA、MilliQ水中の10μg/mL)およびKLHが複合したBMAAに対する抗血清(抗KEBまたは抗KGB、PBS中で希釈した50μL/ウェル)を含有する「一次抗体」溶液を、1/1000、1/5000、1/10000、1/50000、および1/1000000(即ち、1/1×10)の希釈で、抗血清を用いて、各ウェルに添加した。ウェル上で被覆したBSA−BMAAに結合する抗体を、1/10,000で、PBS(100μL/ウェル)中のヤギ抗ウサギIgG−HRP(Sigma)を用いて検出し、洗浄し、TMB基質(KPL Laboratories、100μL/ウェル)を添加した。次いで、100μL/ウェルで1MのHSOを添加することによって、HRP/TMB反応は停止し、結合抗体の量を、450nm(A450)での吸光度を測定することによって決定した。抗体結合、即ち、抗原(遊離BMAA)への結合に対するBSA−BMAA複合体と競合する遊離BMAAの能力は、以下の等式を用いたA450値の比率として計算した%B値として報告した。
%B=(試験試料の吸光度/対照の吸光度)×100
「対照」値を、遊離BMAAを添加しなかったウェル中で測定した。100未満(<100)の%B値は、試験試料において、抗体の一部が、溶液中の遊離BMAAに結合し、ウェル上で被覆したBSA−BMAA複合体に対する抗体結合の量は、それによって減少した。つまり、<100の%B値は、抗血清中の抗体が、遊離BMAAを検出し、かつ結合したことを示した。
予備的評価を、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清、およびKLH−BMAA複合体と同一の架橋結合の化学物質および異なる架橋結合の化学物質を有するBSA−BMAA複合体で被覆したウェルを用いて行った。同一の架橋結合の化学物質を用いたアッセイは、(A)BGBで被覆したウェルに添加した3回目の採血からの抗KGB抗血清(GLU AS)、および(B)BEBで被覆したウェルに添加したEDCウサギ2の2回目の採血からの抗KEB抗血清(EDC2 AS)を用いて実行した。異なる架橋結合の化学物質を用いたアッセイを、(A)BEBで被覆したウェルに添加した3回目の採血からの抗KGB抗血清(GLU AS)、および(B)BGBで被覆したウェルに添加したEDCウサギ2の2回目の採血からの抗KEB抗血清(EDC2 AS)を用いて実行した。遊離BMAA、抗血清希釈、被覆濃度、および反応条件は、上述の通りであった。
同一の架橋結合の化学物質を用いたアッセイでは、1/1000の希釈で、KGBに対して産生される抗血清(GLU AS)を除いて、遊離BMAAへの結合はほとんど検出されず、これは、2μg/mLのBGBで被覆したウェル中の98%の%B値があり、1/50,0000の希釈で、KEBに対して産生される抗血清(EDC2 AS)は、2μg/mLのBEBで被覆したウェル中の80%の%B値があったが、再現性が、問題であった。
異なる架橋結合の化学物質を用いたアッセイでは、遊離BMAAへの結合の検出が向上した。<100%の%B値は、アッセイの大部分において測定され、抗血清中の抗体は、アッセイプレートウェル上で被覆したBSA−BMAA複合体に結合する代わりに、溶液中の遊離BMAAに結合することを示す。KGBに対して産生される抗血清(GLU AS)は、BEBで被覆したウェル中の80%の低%B値を有した。KEBに対して産生される抗血清(EDC2 AS)は、BGBで被覆したウェル中の70%の低%B値を有した。これらの結果は、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清が、遊離BMAAを検出することができた、即ち、抗血清が遊離BMAAと特異に反応した抗体を含んだことを示した。
KLHを用いた免疫沈降による抗血清の浄化
上述の実験が、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清が、遊離BMAAを検出することができたことを示した後、浄化手順を、KLH担体タンパク質および架橋結合分子に対する抗体等の外来要素を除去するために開発した。該当するハプテンは、担体タンパク質に架橋結合し、ハプテン−架橋剤−担体タンパク質複合体を、免疫付与のために使用し、哺乳類の免疫系は、架橋結合分子および担体タンパク質を含む、複合体の全ての部分に対して抗体を産生し得ることが期待される。故に、多くの場合、非ハプテンエピトープに対する抗体を除去するか、または軽減するための更なる浄化ステップを実行することが効果的であると考えられ、それによって、抗血清の調製において、抗ハプテン抗体の相対存在量を増加する。好適な方法は、免疫親和性カラムの免疫沈降または使用を含む。
KLHを用いた免疫沈降を、以下の通りに、KLHに対する抗体を除去するために実行した。1μgのKLHのアリコートを、安定化抗血清調製物(抗体溶液)に添加し、混合物を、37℃で30分間、反応させ、混合物は、遠心分離し、新たな1μgのKLHのアリコートを用いて、次の免疫沈降のために、浮遊物を未使用の管に移した。各免疫沈降で、1アリコートの抗血清を除去し、KLHに対する反応性およびBSA−BMAA複合体に対する反応性に対して試験した。双方の抗血清(即ち、GLU連結BMAAに対して産生される抗血清(KGB)およびEDC結合BMAAに対して産生される抗血清(KEB))を用いたKLH免疫沈降の結果によって、KLHに対する抗体のプールは、除去することができ、BSA−BMAA複合体に対する反応性は、部分的に精製された「KLHで浄化した(KLH−cleaned)」抗血清において維持されることが示された。
15ラウンドのKLHを用いた免疫沈降を、KGBに対して産生される抗血清における、3回目の採血(GLU AS)を実行し、各ラウンドの免疫沈降後に、アリコートを採取し、異なる濃度で、KLHに対する反応性、および異なる濃度で、同一の架橋結合の化学物質、即ち、BGBを有する、BSA−BMAAに対する反応性に対して試験した。
KLHを用いた15ラウンドの免疫沈降を、KGBに対して産生される抗血清における、第2のEDCウサギの2回目の採血(EDC2 AS)を実行し、各ラウンドの免疫沈降後、アリコートを採取し、異なる濃度で、KLHに対する反応性、および異なる濃度で、同一の架橋結合の化学物質、即ち、BEBを有する、BSA−BMAAに対する反応性に対して試験した。双方の抗血清については、KLHおよびBSA−BMAAに対する反応性の試験の結果によって、複数のラウンドの免疫沈降において、KLHに対する抗体を除去することができることが示されたが、部分的に精製された抗血清は、BSA−BMAA複合体に対する反応性の安定したレベルを示した。
15ラウンドのKLHを用いた免疫沈降後、それぞれ部分的に精製された抗血清(「KLHで浄化した抗血清」)を、溶液(1μg/mL)中の遊離BMAAに対する反応性について試験し、これには、同一または異なる架橋結合の化学物質を有するBSA−BMAA複合体で被覆したアッセイウェルを用い、前述の遊離BMAAでの反応性について試験するための間接競合ELISA形式を用いた。本手順において、希釈した抗血清は、(1)抗血清を産生させるために使用するKLH−BMAAを複合させるために使用する架橋結合の化学物質と同一の架橋結合の化学物質を有するBSA−BMAA複合体、および(2)抗血清を産生させるために使用するKLH−BMAAを複合するために使用する架橋結合の化学物質と逆の架橋結合の化学物質のBSA−BMAA複合体を用いて被覆したウェル中の1μg/mLで、遊離BMAAを用いて試験した。1/1000〜1/1×10の希釈で、抗血清を試験した。部分的に精製された抗血清は、対照と比較して、80〜100%の%B値によって示されるように、遊離BMAAを検出した。部分的に精製された抗血清は、遊離BMAAと反応することができることが決定されたが、部分的に精製された抗血清は、BMAA複合体に対して更に高い親和性を有することが更に決定された。部分的に精製された抗血清は、対照と比較して、80〜100%の%B値を有する、遊離BMAAに対して反応性を示した。部分的に精製された抗血清は、遊離(複合しない)BMAAに対する親和性よりも高いBMAA複合体に対する親和性を有することが更に決定された。
実施例3.構造的に類似したアミノ酸のBSA複合体を有する抗BMAA抗血清の反応性
BMAAは、アラニンの誘導体であり、グルタミン酸に類似した構造も有するため、BMAAに対して産生される抗血清を、BSA−アラニンおよびBSA−グルタミン酸複合体との反応性を示すかどうかを決定するために、実験を実行した。免疫沈降しない(「正常」)および部分的に精製された(「KLHで浄化した」)BMAA複合体に対して産生される抗血清のKGBおよびKEBを、BSA−アラニンおよびBSA−グルタミン酸複合体との反応性について試験した。アラニンおよびグルタミン酸を有する、以下のようなBSAとのGLUで連結した複合体、およびEDCで連結した複合体を調製し、試験した。BSA−GLU−アラニン(BGA)、BSA−EDC−アラニン(BEA)、BSA−GLU−グルタミン酸(BGG)、およびBSA−EDC−グルタミン酸(BEG)。
「正常」およびKLHで浄化した抗血清の連続希釈は、上述のように調製し(KLHを用いて免疫沈降する前に、「正常」抗血清を得、KLHで浄化した抗血清は、15ラウンドのKLH免疫沈降後、それぞれ、抗KGB抗血清および抗KEB抗血清を含んだ)、種々のBSAアミノ酸複合体で被覆したウェルに抗血清を添加し、上述のELISA形式を用いて抗体結合を測定することによって、各複合体(BGA、BEA、BGG、BEG)に対する反応性について試験した。
双方の正常およびKLHで浄化した抗血清は、BSA−グルタミン酸複合体およびBSA−アラニン複合体との幾つかの反応性を示したが、異なるパターンの反応性は、架橋結合の化学物質に応じて異なることが見出された。
同一の架橋結合の化学物質を、抗血清を産生させるために使用したKLH複合体、および抗血清を試験するために使用したBSA複合体において使用した場合、双方の「正常」およびKLHで浄化した抗血清は、BSA−BMAA複合体との期待された反応性に加えて、BSA−アラニンおよびBSA−グルタミン酸複合体との反応性を示した。双方の正常およびKLHで浄化したKGBに対して産生される抗血清の試料(即ち、GLU連結BMAA)は、GLU連結アラニンまたはGLU連結グルタミン酸複合体に対してよりもGLU連結BMAA複合体に対してより高い親和性を有した。対照的に、双方の正常およびKLHで浄化したKEBに対する抗血清(即ち、EDC結合BMAA)は、全ての3つのEDC結合複合体に対して平等に認識された。
対照的に、逆の架橋結合の化学物質を、抗血清を産生させるために使用するKLH複合体において使用した場合、BSA複合体を、抗血清(例えば、BEB、BEA、およびBEGとの反応性について試験された抗KGB抗血清)を試験するために使用し、抗血清は、複合体のいずれともほとんど反応性を示さなかった。
抗血清が、同一の架橋結合の化学物質を有する(認識された)BSA−アミノ酸複合体との反応性を示したため、これらの組み合わせを、遊離BMAAとの反応性について試験するために、間接競合ELISA形式において使用した。つまり、間接競合ELISAを、BSA−アミノ酸複合体で被覆したウェル中の抗体結合を競合するための遊離BMAAの能力を測定するために使用した。各抗血清については、BSA−アミノ酸複合体を、抗血清を産生させるために使用するKLH−BMAA複合体と同一の架橋結合の化学物質を用いて架橋結合した。故に、正常およびKLHで浄化したKGBに対して産生される抗血清を、BGB、BGA、またはBGGで被覆したウェル中の遊離BMAA(1μg/mL)との反応性について試験した。正常およびKLHで浄化したKGBに対する抗血清を、BEB、BEA、またはBEGで被覆したウェル中の遊離BMAA(1μg/mL)との反応性について試験した。双方の架橋結合の化学物質については、正常(免疫沈降されない)抗血清は、80%〜100%の%B値で、溶液中の遊離BMAAを検出することができた。しかしながら、溶液中の遊離BMAAを検出するために正常(免疫沈降しない)抗血清と同様にKLHで浄化した抗血清は、行わなかったが、遊離BMAAは、幾つかのアッセイにおいて検出された。
BSA−アラニンを用いた免疫沈降による更なる浄化
試験した3つのBSA−アミノ酸複合体(BSA−BMAA、BSA−アラニン、BSA−グルタミン酸)のうち、双方の架橋結合の化学物質(BGA、BEA)のBSA−アラニン複合体は、抗血清との最低の反応性を示した。したがって、KLHで浄化した抗血清を、BMAAのみに対して特異的な抗体において、高度に富化した抗血清調製物を作成するために、BSA−アラニンを用いた免疫沈降により、更に浄化した。次いで、上述のように調製したKLHで浄化した抗血清(15ラウンドの免疫沈降後、KGBに対して産生される抗血清の3回目の採血;15ラウンドのKLHを用いた免疫沈降後、KEBに対して産生される抗血清の第2のEDCウサギの2回目の採血)を、更なる14ラウンドのBSA−アラニンを用いた免疫沈降に供した。それぞれの免疫沈降(IP1〜IP14)後、各抗血清を、種々のBSA−アミノ酸複合体で被覆したウェルに抗血清を添加し、前述のELISA形式を用いて、抗体結合を測定することによって、BSA−BMAA複合体、BSA−アラニン複合体、およびBSA−グルタミン酸複合体との反応性について試験した。
1/1000の希釈で(試験した最も濃縮した溶液)、BGAを用いた免疫沈降後、KGBに対する抗血清は、BGBに対して良好な反応性、および他のアミノ酸複合体BGAおよびBGGに対して低反応性を示し、これは、抗血清が、BMAAに対して特異的であることを示した。BGBとの反応性は、初めの8ラウンドの免疫沈降1〜8(IP1〜IP8)中、低下し、最終の6ラウンドの免疫沈降(IP9〜IP14)中、良好なレベルの反応性を維持したが、BGAおよびBGGとの反応性は、継続的なラウンドの免疫沈降と共に低下し続けた。本実験において観察された反応性の傾向は、GLUの架橋剤を認識する抗体が、BGAを用いた免疫沈降により除去されていることを示唆していた。
1/1000の希釈で、BEAを用いて免疫沈降したKEBに対する抗血清は、免疫沈降が続行される場合、全てのBSA−アミノ酸複合体との反応性において減少を示した。この結果は、上記で報告される結果に一致しており、これは、特異的BSA−アミノ酸複合体を認識するためのKEBに対して産生される抗血清(双方の「正常」およびKLHで浄化した)の能力においてほとんど差異を示さない。
BSA−アラニンを用いた免疫沈降後、抗血清を、前述の間接競合ELISA形式を用いて、1μg/mLで、遊離BMAAとのそれらの反応性について試験した。双方の免疫沈降した抗血清(KGBに対する抗血清およびKEBに対する抗血清)は、遊離BMAAとの反応性をほとんど示さなかった。
実施例4.グルタルアルデヒドで連結した被覆形式を用いた抗BMAA抗血清の特異性および交差反応の試験
上述のように産生された抗血清を、酵素イムノアッセイのために、マイクロタイタープレートへのアミノ酸および他のハプテンを被覆するための代替的な方法である、Ordronneauらのイムノアッセイ法の適合(1991)を用いて試験した。Ordronneauらは、前述の方法には、アッセイ基質を使用したことを開示し、ここで、担体タンパク質は、基質に共役し、アミノ酸またはハプテンは、担体タンパク質に複合し、これは、再現性および精度において矛盾および問題を生じた。Ordronneauらは、グルタミン酸塩(Glu)に対するイムノアッセイを開発し、ここで、Gluは、担体タンパク質に共役する代わりにグルタルアルデヒドを介してプラスチック表面に直接連結し、Gluで被覆したイムノアッセイプレートは、Gluに対して産生される抗血清を試験するために使用した。
Ordronneauらの方法を、本発明の抗血清を試験するためのグルタルアルデヒド連結BMAA(担体タンパク質ではない)で被覆したイムノアッセイプレートを調製するために使用した。KGBに対して産生される抗血清の第3の「採血」を、実験用に使用した。Ordronneauらの方法は、BMAAおよびグルタミン酸で被覆した、MAXISORP(商標)およびMULTISORP(商標)プレート、ならびに抗BMAA抗血清(抗KGB、3回目の採血)を用いて、1/1000〜1/100,000の種々の希釈で、BMAAの存在下で、0〜1mMの濃度で、またはグルタミン酸の存在下で、1nM〜1mMの濃度で、実行した。MULTISORP(商標)プレートは、更に高い吸光度値、ならびにより良好なグルタルアルデヒド結合およびその後のBMAA結合を示した。1/1000、1/2000、1/5000、および1/10000の希釈で、KGBに対して産生される抗血清は、高被覆濃度(100μMおよび1mM)でBMAAがプレートに添加されている場合、BMAAで被覆したプレートへの結合の増加を示し、これは、プレートに被覆したBMAAの増加をもたらし、抗体結合に使用可能であると推定された。グルタミン酸塩の濃度の増加による、抗体結合への影響は見られなかった。
1/1000および1/2000の希釈で、KGBに対して産生される抗血清(抗KGB抗血清)を、BMAAに対する特異性を試験するために、BMAAおよび他のアミノ酸との交差反応について試験した。プレートを、グルタルアルデヒド連結を介して、BMAA、L−アラニン(L−Ala)、L−グルタミン(L−Gln)、L−チロシン(L−Tyr)、グリシル−グリシン(glygly)、L−グリシン(L−Gly)、L−ロイシン(L−leu)、L−フェニルアラニン(L−Phe)、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸(L−Glu)、およびL−アスパラギン酸(L−Asp)を用いて、0.2mM、0.5mM、1mM、および10mMの被覆濃度で、被覆した。図3に示されるように、双方の希釈(1/1000および1/2000)で、抗KGB抗血清は、BMAAの強い認識を示し、試験した他のアミノ酸との交差反応をほとんど示さなかった。1/1000の希釈で、抗KGB抗血清によるBMAAの認識(図3A)は、0.1〜10mMのBMAA被覆濃度で増加し、即ち、シグナルの強度は、結合するBMAAが増加すると共に増加した。1/2000の希釈で、抗KGB抗血清によるBMAAの認識(図3B)は、1mMのBMAA被覆濃度で、平坦域(plateau)に達し、これによって、飽和結合が、その濃度で達していることを示された。
このイムノアッセイ形式では、双方の希釈で、抗KGB抗血清は、BMAAの強い認識を示し、試験した他のアミノ酸との交差反応をほとんど示さなかったが、1/1000で、抗KGB抗血清は、特に、10mMの被覆で、L−グリシンおよびグリシル−グリシンとのわずかな反応性を示し(図3A)、これは、L−グリシンが、担体タンパク質に存在し得る任意の残りのグルタルアルデヒド基を不活性化するために、グルタルアルデヒドで架橋結合した免疫源複合体の手順中、使用する場合、全てが予期されないというわけではなかった。試験した全ての他のアミノ酸のうち、抗KGB抗血清のみが、10mMで、GABAと、および0.2mMで、アスパラギン酸とのわずかな反応性を示した。グルタルアルデヒドに結合すると、これらの分子の構造変化が、抗体によるその後の認識に影響し、「遊離」アミノ酸の更なる試験が、これらの所見の確認のために必要であり得るかどうかは決定されなかった。
実施例5.異なる源からのBMAAに対する抗BMAA抗血清の特異性;異性体特異性の反応性の決定
上述の免疫付与およびイムノアッセイを、Sigma(現在は、Sigma−Aldrich Inc.;Cat.No.B107、ロット番号097H4746)から市販のBMAAを用いて行った。イムノアッセイを、BMAAの2つの新規の異なるバッチ:Sigmaから市販のBMAAの未使用のロット(Lot 065K4707)からのバッチ、およびUniversity of Portsmouth, UKにおいて、Peter Nunnから得られた合成BMAAのバッチを用いて、再度行った。新規のバッチのそれぞれからのBMAA、即ち、Sigma(Sigma−Aldrich、Lot 065K4707)からのBMAA、およびPeter Nunn(University of Portsmouth,UK)から得られた合成BMAAの未使用のバッチを用いたイムノアッセイを、異なるバッチからのBMAA等の種々の標的に結合するための種々の抗血清の能力を測定するために、グルタルアルデヒド捕捉(上述されるようなグルタルアルデヒドで連結した抗体捕捉形態)を用いて、実行した。
簡潔に述べると、Nunc MULTISORP(商標)プレートのウェルを、蒸留水で洗浄した。各ウェルは、100mMのNaHPO(pH4.5)中の100μLの0.5%グルタルアルデヒドを受容し、プレートを、37℃で1時間、インキュベートした。プレートは、180μLの100mMのNaHPO(pH4.5)を用いて、2回洗浄した(即ち、プレートの各ウェルを、洗浄した)。100mMのNaHPO(pH8)で調製した、標的、例えば、BMAAの100μLのアリコートを、各ウェルに添加し、プレートを、37℃で1時間、インキュベートした。プレートは、各洗浄で180μLの100mMのNaHPO(pH8)を用いて、3回洗浄した。100mMのNaHPO(pH8)で調製した、0.1Mのエタノールアミンの100μLのアリコートを、各ウェルに添加し、プレートを、37℃で1時間、インキュベートした。プレートは、各洗浄で0.05%のTween20/PBS(PBST)を用いて、3回洗浄した。PBS中の1%の「Marvel」ブランドの乾燥粉乳の180μLのアリコートを、各ウェルに添加し、37℃で1時間、インキュベートした。プレートは、PBSTを用いて、3回洗浄した。PBS中の一次抗体の希釈物を調製し、100μLの(希釈された)一次抗体を、各ウェルに添加した。プレートを、37℃で1時間、インキュベートした。プレートは、PBSTを用いて、3回洗浄した。検出のために、100μLのIgG−HRP(1/10000、Sigmaヤギ抗ウサギIgG−HRP)を、各ウェルに添加し、プレートを、37℃で1時間、インキュベートした。プレートは、PBSTを用いて、3回洗浄した。定量化のために、HRP合成発色基質TMBを(1ウェル当たり100μL)添加し、色が、室温で30分間、発色することを可能にした。100μLの1MのHSOを添加することにより、反応を停止し、450nmでの吸光度を、プレートの各ウェルに対して測定した。
ある実験では、KGBに対して産生される抗血清(抗KGB抗血清)の3回目の採血(KBG3)は、硫酸アンモニウムを用いた沈殿および100μLの抗血清への10μgのKLHの添加によるKLHを用いた免疫沈降、37℃で30分間のインキュベーション、ならびに2000xgで5分間の遠心分離、浮遊物の回収によって、ELISAを用いるか、または更なるラウンドのKLH免疫沈降において浄化される。1/1000、1/2000、1/4000、1/8000、1/16000、および1/32000の希釈で、KLHで浄化した抗KGB抗血清を、1μM〜5mMのBMAA被覆濃度で、BMAAの2つの新規のバッチのそれぞれからのグルタルアルデヒド連結BMAAを有するプレートに添加し、プレートへの抗体結合を測定した。双方のBMAAバッチについては、抗KGB抗血清は、増加するBMAA被覆濃度に伴って、シグナルの強度(反応性)が増大することを示し、これにより、抗KGB抗血清が、BMAAに対して特異的な抗体を含むことを確認した。ここで使用したイムノアッセイは、10μMのBMAAの検出限度を有し、最大反応性(最大吸光度)を、双方のBMAAバッチに対して0.5mMのBMAA被覆濃度で測定した。
それぞれのBMAA被覆濃度に対する異なる抗血清希釈のシグナル強度(反応性)を、BMAAの2つの異なるバッチのそれぞれに対して決定し、相関係数を、y軸上にP.Nunnからの合成BMAAからの値に対する、x軸上にSigmaからのBMAAの未使用のロットからの値のプロットから計算した。分離回帰分析を実行し、相関係数を、抗KGB抗血清の1/1000の希釈、1/200の希釈、および1/4000の希釈に対して計算した。相関係数は、異なるBMAAバッチ間で正相関(>0.89)を示した。しかしながら、それぞれの抗KGB抗血清希釈に対する回帰線の傾きは、同一の抗血清希釈物および同一のBMAA被覆濃度を用いて得られたシグナルが、P.Nunn(University of Portsmouth,UK)からの合成BMAAを用いて得られたシグナルに比べて、SigmaからのBMAAの未使用のロットに対して2倍高かったことを示した。1/1000の希釈物は、0.65の回帰線の傾きを有し、1/2000の希釈物は、0.56の回帰線の傾きを有し、1/4000の希釈物は、0.49の回帰線の傾きを有する。
全ての源からのBMAAは、合成生成物であったが、それぞれの生成物は、異なる異性体の組成物であったことに留意すべきである。複合および免疫付与用に元の抗原として使用した、Sigma ロット番号097H4746からの合成BMAAは、94%を超えるL異性体を含有する場合、製造業者によって記載された。Peter Nunn(University of Portsmouth,UK)によって供給されたBMAAは、ほぼ等量で、L異性体のわずかに優位性がある、D形態とL形態の混合物を含有するものとして記載された(Peter Nunn、パーソナル通信)。回帰分析からの結果(上記参照)を、各生成物の異なる異性体の観点から評価し、これらの結果は、Sigma ロット番号097H4746からのBMAAを用いて調製したKGBに対して産生される、主にL異性体(>94%のL異性体)の抗血清は、グルタルアルデヒドで捕捉されたL−BMAA異性体に優先的に結合することを示し、BMAAのD異性体との反応性をほとんど示さなかった。これらの条件下で、抗血清は、BMAAのL異性体に結合し、BMAAのD異性体には実質的に結合しなかった。
精製されていないKGBに対して産生される抗血清(「正常」抗血清)の異性体特異性反応性が、明示された後、正常抗KGB抗血清の反応性を、部分的に精製された「KLHで浄化した」抗KGB抗血清および部分的に精製された「アラニンで浄化した」抗KEB抗血清と比較した。全ての抗血清を、1/1000および1/2000の希釈で、1μM〜5mMの被覆濃度で、ウェル中のBMAAへの結合を試験するために使用し、遊離BMAAは、500μMで存在した。双方の精製されていない「正常」抗KGB抗血清および部分的に精製されたKLHで浄化した抗KGB抗血清は、最大0.5mMのBMAAのBMAA被覆濃度の増加に伴って、BMAAで被覆したプレートへの結合の増加を示した。双方の希釈(1/1000および1/2000)の精製されていない「正常」抗KGB抗血清は、約0.5mMのBMAAの被覆濃度で結合のわずかな減少を示した。双方の希釈のKLHで浄化した抗KGB抗血清は、0.5mM〜5mMのBMAAの被覆濃度で、結合の安定期を示し、これは、約0.5mMを超えるBMAAの被覆濃度で、限定された抗体の抗体接近可能性および/または結合飽和を示し得る。対照的に、1/1000および1/2000の希釈で、アラニンで浄化した抗KEB抗血清は、1μM〜5mMのBMAAの任意の被覆濃度で、BMAA(即ち、BMAAで被覆したプレート)への検出可能な結合を示さなかった。
精製されていない「正常」抗KGB抗血清(3回目の採血)を、上述の、間接競合結合アッセイに対して修正された、グルタルアルデヒド捕捉イムノアッセイを用いて、遊離BMAAに結合するその能力を決定するために試験した。試験ウェルは、50μM、200μM、500μM、1mM、および5mMのBMAAのグルタルアルデヒドで連結したBMAA被覆濃度で被覆した。500μMの濃度で、遊離BMAA、ならびに1/1000、1/2000、および1/4000の希釈で、正常抗KGB抗血清(3回目の採血)を、試験ウェルに添加し、ウェル中のグルタルアルデヒドで連結したBMAAへの抗体結合を決定し、遊離BMAAとの抗血清の反応性を決定するために、上述のように、%B値を計算した。本実験では、抗血清は、大部分のアッセイにおいて、遊離BMAA(即ち、%B<100)を検出する(と反応させる)ことができた。結果は、%B値が、BMAA被覆濃度の増加に伴って、あるいは抗血清濃度(低抗血清希釈)の増加に伴って、減少すると考えられる、一般的な傾向を示した。測定された最大%B値は、56%であり、これは、遊離BMAAへの抗体結合のため、ウェル上で被覆したBMAAへの抗体結合の44%の減少を示す。
実施例6.抗BMAA抗体結合を検出するための増幅系
上述の実験は、BMAA複合体に対して産生される抗血清が、L−BMAAとの見かけの異性体特異性の反応性を有し、他のアミノ酸との交差反応がほとんどない抗体を含むことを構築し、抗血清は、約500μM(59μg/mL)の濃度で、遊離BMAAを検出するために使用することができた。下述されるように、実験は、抗血清の更なる精製を必要とせずに、遊離BMAAのシグナルおよび可検出性を向上するためのそれらの能力に対する種々の増幅系を評価するために実行した。
抗BMAA抗体シグナルの増幅
イムノアッセイ感受性は、より多くの検出酵素を有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)検出複合体を生成するために、VECTASTAIN(商標)ABC−ペルオキシダーゼキット(ウサギIgG用のVECTASTAIN(商標)ABC Eliteキット、Cat.No.PK−6101、Vector Laboratories,Burlingame CA)を使用することによって増加し、これにより、基質を添加すると、より強力な着色(更に強力なシグナル)、およびHRP共役IgG(IgG−HRP)を用いた標準アッセイと比較して、より高度な吸光度値をもたらした。抗体捕捉イムノアッセイにおいて、BMAA被覆濃度の増加に伴ってVECTASTAIN(商標)系を使用することによって、上記の実験に記載されるように、標準IgG−HRPを用いて測定されたシグナルと比較した場合、著しく強力な(増加した)シグナルの測定が可能であった。しかしながら、バックグラウンドシグナルはまた、VECTASTAIN(商標)系によって著しく増強され、これは、抗血清を評価する際に使用するべき適切な対照の開発を必要とする。
VECTASTAIN(商標)系を、遊離BMAAを検出するための精製されていない正常抗KGB抗血清の能力における、異なるグルタルアルデヒド濃度、異なる遊離BMAA濃度、および異なる抗血清希釈の効果を測定するために、上述のグルタルアルデヒドで連結した抗体捕捉アッセイにおいて、間接競合アッセイ形式において使用する。BMAA被覆における効果について試験した2つのグルタルアルデヒド濃度は、0.2%のグルタルアルデヒドおよび0.5%のグルタルアルデヒドであった。ウェルは、100mM、50mM、および20mMのBMAAのBMAA被覆溶液を用いて、グルタルアルデヒド連結を通して、BMAAで被覆した。KGBに対して産生される抗血清の3番目の採血(KGB3)を、1/8000、1/16000、および1/20000の濃度で使用した。遊離BMAAを、1μg/mLおよび10μg/mLの濃度で、ウェルに添加し、対照ウェルは、添加した遊離BMAAがなかった。本実験の設計において、1/8000で抗血清を、双方のレベルの遊離BMAAとの反応性について試験し、即ち、本実験は、1/8000で抗血清を、1μg/mLの遊離BMAAでインキュベートし、1/8000で抗血清が、10μg/mLの遊離BMAAでインキュベートしたことを含んだ。1/16000の希釈および1/20000の希釈で、抗血清を、10μg/mLの遊離BMAAを用いてのみインキュベートした。VECTASTAIN(商標)増幅系は、結果を増幅するために、上述のように使用した。%B値を、ブランクの補正の有無にかかわらず計算した。
全ての実験的設計からの結果は、抗KGB抗血清が、遊離BMAAと反応した抗体を含有したことを示し、即ち、%B<100は、遊離BMAAに結合した抗体が、ウェルを被覆するグルタルアルデヒドで連結したBMAAに結合しなかったことを示した。遊離BMAAの効果は、10μg/mLの遊離BMAAを用いてインキュベートした場合、1/16000および1/20000の希釈で、抗血清に対して最も顕著であった。ウェルを被覆するBMAAにおけるそれらの効果について試験した双方のグルタルアルデヒド濃度(即ち、0.2%および0.5%のグルタルアルデヒド)で、アッセイは、1μg/mLおよび10μg/mLの濃度で、遊離BMAAが、ブランクに対する%B値を補正する前および後の双方で、イムノアッセイによって検出することができたことを示した。
イムノアッセイ感受性を変えるための更なる修正
精製されていない「正常」抗KGB抗血清を示した前述の標準イムノアッセイ系は、59μg/mLで遊離BMAAを検出することができ、VECTASTAIN(商標)増幅系の使用は、向上した検出を提供した。潜在的なBMAAイムノアッセイの感受性、特に、ビオチン化等の化学修飾を更に向上するために、更なる開発および修正が実行した。
VECTASTAINと組み合わせたビオチン−アビジンの増幅 ビオチン−アビジン反応は、既知の最大親和性反応の1つであり、ビオチン化プローブは、アビジン系を用いて、酵素または固相に、迅速かつ特異的に付着させることができる。ビオチン化BMAAプローブを、下述のように、産生され、BMAAイムノアッセイの感受性および特異性を向上するために、VECTASTAIN(商標)キットからのアビジン−HRP複合体と組み合わせて使用した。
直接ELISAを用いた抗BMAA抗血清とのビオチン−BMAAの反応性
ビオチン化BMAAを、ウェルが、種々の希釈で、抗血清で被覆したELISA設計を用いて試験し、種々の量のビオチン化BMAAを、ウェルに添加し、固定化抗体へのビオチン化BMAAの結合を測定した。アッセイの目的は、ビオチン−BMAA複合体が、BMAAイムノアッセイで用いるのに実現可能であるかどうかを決定することと、ビオチン化BMAAが、BMAA複合体に対して産生される抗血清に結合するかどうかを決定するであるため、ELISAは、直接的な抗体結合アッセイであり、遊離BMAAを使用しなかった。
簡潔に述べると、KEBおよびKGBに対して産生される抗血清を、アッセイプレート上で被覆し、種々の希釈で、ビオチン−BMAAプローブを、抗血清で被覆したウェルに添加し、各ウェル中の固体化抗体へのビオチン−BMAA結合を、発色マーカー、例えば、HRPに複合したアビジンを用いて、測定した。
ビオチン化BMAAを以下の通りに調製した。1.18mg/mLの濃度で、PBS中のBMAAの溶液を調製した。ビオチン(リンカーを有する)溶液を、PBS中の6.99mg/mLの溶液を調製するために、十分なEZ−link Sulfo−NHS−LC−LC−ビオチンを用いて、調製した。混合および標識のために、1mLのBMAAを、1mLのビオチン溶液と混合し、成分を、ELISAにおいて使用する前に、室温で反応させた。1MのBMAA−ビオチン(ビオチン化BMAA)のストック溶液を調製し、体積基準で希釈した。1Mで、ビオチン−BMAAのストック溶液を、1/100(0.01M)、1/500(0.002M)、1/1000(0.001M)、1/5000(0.0002M)、1/10000(0.0001M)、1/50000(0.00002M)、および1/100000(0.00001M)(vol/vol)の希釈で使用した。
以下の抗血清を使用した。抗KEB抗血清、KEBで免疫付与した第2のウサギからの6番目の採血(EDC6、ウサギKLH−EDC2−BMAAからの6番目の採血);抗KGB抗血清、9番目の採血(GLU9)。各抗血清は、単一の収穫(単一の「採血」)を示し、硫酸アンモニウム沈殿によって初期部分精製に供した。抗血清は、下述されるように、ELISAにおいて使用する前に、PBS中で1/1000、1/5000、および1/10000に希釈した。
ELISAについては、ウェルは、100μLのアリコートの希釈された抗血清を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートすることによって、抗血清で被覆した。プレートは、PBSTを用いて3回洗浄した。プレートのウェルを、PBS中の180μLの1%のMarvel乾燥粉乳でブロックし、プレートを37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートにビオチンBMAA複合体を添加する前に、プレートは、PBSTを用いて3回洗浄した。PBSTを用いて3回洗浄する前に、プレートを37℃で1時間インキュベートした。VECTASTAIN(商標)増幅キットを用いて供給された100μLのアリコートのアビジン−HRP複合体を、各ウェルに添加し、次いで、37℃で1時間インキュベートした。室温で30分間、TMB基質(1ウェル当たり100μL)を添加する前に、プレートは、PBSTを用いて3回洗浄した。1MのHSO(100μL)を添加することによって、反応を停止し、450nmでの吸光度を各ウェルに対して測定した。
固定化抗体(抗血清)へのBMAA結合は、強力なシグナル用量反応を示し、シグナル強度の低下(A450 BMAA−ビオチンプローブへの抗体結合を示す)は、BMAA−ビオチンプローブの「用量」が低下する際に、低下した。全ての希釈(1/1000、1/5000、および1/10000)で、双方の抗血清(抗KEBおよび抗KGB)は、BMAA−ビオチンの低下(即ち、BMAA−ビオチン希釈の増加)に伴って、シグナル強度が低下する同一のシグナル用量パターンを示した。
異なる検出プローブ:単一の(増幅していない)アビジン−HRPプローブ
別の実験では、異なる市販の単一の(増幅していない)HRP−アビジンプローブを、VECTASTAIN(商標)HRP−アビジン複合体を使用するための代替物として、抗KGB抗血清からの固定化抗体に結合したBMAA−ビオチンプローブを検出するために使用した。上述のように、ELISAが実行した。簡潔に述べると、抗KGB抗血清(9回目の採血、上記参照)を、1/1000の希釈で、アッセイプレート上で被覆し、上述のように、1/100(0.01M)〜1/100000(0.00001M)の希釈で、ビオチン−BMAAをウェルに添加した。市販の単一のHRP−アビジンプローブ(Sigma−Aldrich,Cat.No.1−3151、250μg/mL)を、固定化抗体へのビオチン−BMAAの結合を検出する能力について試験した。アビジン−HRPを、異なる強度の溶液:アビジン−HRPで希釈された(vol/vol)、1/1000、1/2000、1/4000、および1/6000を提供するために希釈した。各ビオチン−BMAA濃度を、アビジン−HRPのそれぞれの希釈を用いて測定した。
強力なシグナル用量反応を、単一のアビジン−HRPプローブを用いて、観察した。各ビオチン−BMAA濃度(希釈)については、最強シグナルが、1/1000の希釈で、即ち、HRP−アビジンプローブの最大濃度で、HRP−アビジンプローブを用いたアッセイにおいて見られた。各ビオチン−BMAA希釈については、シグナル強度は、HRP−アビジン濃度に伴って低下した、即ち、シグナルは、HRP−アビジンプローブが、次第に希釈されると共に低下した。
ビオチン−BMAAの存在下で、遊離BMAAとの抗BMAA抗血清の反応性
アッセイウェルを異なる希釈で、ビオチン−BMAAで被覆し、市販の単一のHRP−アビジンプローブを、異なる希釈で、5μg/mLの濃度で、遊離BMAAとの抗KGBおよび抗KEB抗血清の反応性を検出するための間接競合ELISA形式において使用した。双方の抗KGBおよび抗KEB抗血清は、5μg/mLの遊離BMAAとの反応性を示し、%B<100の測定値によって立証されるように、最強の反応は、78%の低%B値を有する抗KGB抗血清で見られた。
実施例7.免疫ブロットにおけるBSA−BMAA複合体を検出するための抗BMAA抗体の使用
BMAAが、種々の方法で、ペプチドおよびタンパク質と会合され得、これには、ペプチドの表面への物理的付着もしくは会合、および/またはポリペプチド鎖へのBMAAの取り込みが含まれることを理解されたい。上述の実験は、KLH−BMAA複合体に対して産生される抗血清(抗KGBおよび抗KEB抗血清)は、複合および遊離形式でのBMAA(即ち、複合したBMAAおよび遊離BMAA)を認識することが可能な抗体を含有することを示した。したがって、上述のように、BMAA複合体に対して産生される抗血清を、免疫ブロット(ウエスタンブロット)におけるポリペプチドとのBMAAの会合を検出するために使用した。ある実験では、抗血清は、種々のタンパク質調製の免疫ブロット(ウエスタンブロット)をプローブし、これらの抗血清を、タンパク質会合BMAAを認識することができるかどうかを決定するために使用した。
上述の実験において立証されるように、抗KGBおよび抗KEB抗血清は、BMAA−BSA複合体を認識することが可能であった。したがって、抗KGBおよび抗KEB抗血清を、BSAおよび種々のBSA−BMAA複合体のウエスタンブロットをプローブするために使用した。以下の試料を、SDSゲル電気泳動法に供し、ウエスタンブロット(免疫ブロット)分析のために細胞膜に移した。BSA−GLU−BMAA(BGB)、BSA−EDC−BMAA(BEB)、および複合していないBSA(天然タンパク質)。BSA−BMAA複合体のプローブブロットへのKLHで複合したBMAAに対して産生される抗血清を用いた免疫ブロットからの結果は、免疫ブロットにおける高分子量タンパク質(例えば、BSA)の表面に化学結合した(複合した)BMAAの検出についての期待できる兆候を示した。
タンパク質は、ポリアクリルアミドゲル(1レーン当たり10μgのタンパク質)上に充填され、BioRad Mini−PROTEAN(登録商標)II(BioRad,Hercules CA)を用いて、200Vで約40分間、4%のスタッキングゲル、次いで、12%の分離ゲルを通して電気泳動に供した。
タンパク質を、以下の通りに、室温で一晩、ポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース膜に転移した(BioRad Mini Trans−Blot(登録商標)、BioRad,Hercules CA)。転移緩衝液(3.03gのトリス、14.4gのグリシン、200mLのメタノール;水を用いてILまで作製)を調製し、4℃で保存した。各ニトロセルロース膜を、タンパク質が転移するゲルの寸法に適合するように切断した。ゲル、ニトロセルロース膜、ろ紙、および転移緩衝液中のファイバーパッドに浸漬することによって、転移する前に、全ての構成成分を予め湿らせ、平衡化した。「サンドイッチ」を、清浄表面上の外側(灰色)があるホルダーカセットを開口し、カセットの灰色側に予め湿らせたファイバーパッドを置き、ファイバーパッド上に1枚のろ紙を置き、気泡を除去するように十分注意し、ゲル上に予め湿らせたニトロセルロース膜を置き、気泡を除去するように十分注意し、ニトロセルロース膜上にろ紙を置き、最後にファイバーパッドを添加し、ホルダーカセットを閉口することによって調製した。冷却ユニットを添加し、転移緩衝液で完全にタンクを充填した後、30Vで、90mAで、一晩(約18時間)、転移を行った。転移が完了したと見なした後、転移の質およびタンパク質バンドの位置は、Ponceau Sを用いた可逆的に染色することによって、視覚化することができた。必要に応じて、細胞膜は、本ステップ中、印を付けた。
免疫ブロット分析については、細胞膜を、転移ユニットから除去し(または、適切な場合、Ponceau Sの脱染色溶液から除去し)、0.1%の乾燥粉乳(Marvel ブランド)/PBST中で、1時間インキュベートした。次いで、細胞膜を、PBSTを用いて、1回の洗浄当たり5分間、3回(3×5)、洗浄した。必要に応じ、ニトロセルロース膜を、試料レーンに対応するストリップに切断した。細胞膜を、種々の希釈で、2時間、一次抗体を用いてインキュベートし、次いで、PBSTを用いて、1回の洗浄当たり5分間、3回(3×5)、洗浄した。本明細書に記載の実験では、抗KGB抗血清の9回目の採血(GLU9 AS)および抗KEB抗血清の第2のEDCウサギの6回目の採血(EDC6 AS)を、1/100、1/200、および1/500の希釈で、一次抗体として使用した。二次抗体標識のために、細胞膜を、IgG−HRP(1:250)を用いて、2時間インキュベートし、次いで、PBSTを用いて、1回の洗浄当たり5分間、3回(3×5)、洗浄した。ペルオキシダーゼ基質を、5mLの冷却メタノール中の15mgの4−クロロナフタールの溶液と、25mLのPBS中の15μLのHの溶液を混合することによって調製した。抗体結合を視覚化するために、発色ペルオキシダーゼ基質を、2つの溶液を一緒に混合し、洗浄した細胞膜に適用することによって調製した。バンドを展開させる際(通常、約5〜10分間)に、反応を監視した。水を添加することによって、更なる展開を停止した。次いで、細胞膜(全細胞膜および/またはストリップ)を、ブロット乾燥させた。
全ての転移したBSA含有タンパク質を視覚化するためのニトロセルロース膜のPonceau S染色からの結果は、同一の細胞膜上の転移したタンパク質への抗体結合を示す免疫ブロット(ウエスタンブロット)の結果と比較した。ウエスタンブロットからの結果は、Ponceauブロットとの類似性および差異を示した。抗KGB抗血清(9回目の採血、Glu9 AS)が、ブロットをプローブするための一次抗体として使用した場合、抗血清調製の全ての強度(1/100、1/200、および1/500の希釈)は、BGB試料(図4、ブロットA、B、およびCのレーン1)と反応すると考えられたが、BEB試料(図4、ブロットA、B、およびCのレーン2)、または天然BSA(図4、ブロットA、B、およびCのレーン3)と反応するとは考えられなかった。抗KGB抗血清を用いた、BGB複合体は、試料に対して以前に観察されたPonceau染色と一致した抗体染色を示し、ここで、BGB試料は、191、85、および70kDaに対応する位置(図4、ブロットA、B、およびCのレーン1)でバンドの強い染色を示した。天然BSA対照との反応性の不足は、抗KGB抗血清の反応性が、BMAAおよび/またはGLU架橋剤に対して特異的であり、BSAとの特異的な反応性がなかったことを示す。EDCで架橋結合した複合体(BSA−EDC−BMAA、BEB)との反応性の欠如は、抗KGB抗血清がBEBを認識することができたことを前述のイムノアッセイの結果が示したため(上述参照)、解釈し難く、これは、抗KGB抗血清が、ウエスタンブロット上でBEBにおけるエピトープを認識することが期待され得ることを示唆した。
抗KEB抗血清(6回目の採血、EDC6 AS)が、ブロットをプローブするための一次抗体として使用した場合、抗血清調製の全ての強度(1/100、1/200、1/500)は、BEB(図4、ブロットD、E、およびFのレーン2)およびBGB試料(図4、ブロットD、E、およびFのレーン3)と反応し、ゲルを通して観察された染色および強く染色するバンドは、191、167、60、53、35、29、21、および10kDaに対応する位置で同定されると考えられた。1/100の希釈で、抗KEB抗血清は、天然BSA(図4、ブロットD、レーン1)とわずかな反応を示したが、1/200および1/500の希釈(図4、ブロットE、レーン1およびブロットF、レーン1)では反応は見られなかった。双方のBSA−BMAA複合体(BEBおよびBGB)との抗KEB抗血清の反応性は、以前のELISA結果に従って、抗KEB抗血清が双方のBEBおよびBGBを認識することができたことを示している(上記参照)。
実施例8.キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3からのシアノバクテリアタンパク質調製剤の免疫ブロット分析
免疫ブロット分析を、キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3からのシアノバクテリアタンパク質調製において行い、これは、タンパク質分画中のBMAA(タンパク質結合BMAA)に加えて、大量の細胞質BMAA(遊離BMAA)を含有することが以前より知られていた(Cox et al. (2005) Proc Natl Acad Sci USA 102:5074−5078)。キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3(「CR3」)は、University of Dundeeでの大量培養から収穫され、以下の通りに調製した。175mLのフィラメント状のシアノバクテリアの後期対数増殖期(late log phase)培養の試料を除去し、ガス胞は、機械的衝撃(作業台上で充填した遠心分離管を激打すること)によって崩壊させた。フィラメントを、3500rpmで、10分間遠心分離した(Heraeus Labofuge 400)。浮遊物を除去し、ペレットを再懸濁し、4000rpmで、更に遠心分離するために1.5mLの微小遠心管に移した(2.5分間、Eppendorf centrifuge 5415D)。浮遊物を再度除去し、ペレットを、pH7.5で、1mLの最終容量まで、50mMのトリス緩衝液中で再懸濁した。懸濁液を、約1分間、氷上で超音波処理し、細胞を分解し、タンパク質を放出した。懸濁液を、再度遠心分離し、浮遊物のタンパク質濃度を、色素結合タンパク質(Sigma)を用いて、595nmで吸光度を測定して分析した(Bradford,1976,Anal Biochem 72:248−254)。次いで、懸濁液を、1mMの最終濃度までのEDTAおよび10%(v/v)の濃度までのグリセロールを添加することによって修正した。
電気泳動法および免疫ブロット分析前に、CR3タンパク質調製の一部の試料を、BMAAが、シアノバクテリアタンパク質調製物中に存在する任意のタンパク質と反応するかどうかを試験するための試料を調製するために、遊離BMAAで予めインキュベートした(BMAAを「添加した」)。天然BSAを対照として使用した。
SDS−PAGEを、上述のように、1レーン当たり28μgのタンパク質(28μgのCR3全タンパク質抽出物)を充填し、4%のスタッキングおよび12%の分離ゲルを用いて行い、ニトロセルロース膜に転移させた。タンパク質が、ニトロセルロース膜に転移した後、抗KGB抗血清(9回目の採血、KGB9)および抗KEB抗血清(6回目の採血、KEB6)を、CR3タンパク質のウエスタンブロットをプローブするために一次抗体として使用した。図5に示されるように、双方の抗KGBおよび抗KEB抗血清は、CR3タンパク質調製においてタンパク質上の1つ以上のエピトープと反応した(全てのブロットのレーン2)。双方の抗血清は、CR3タンパク質と反応したが、反応プロファイルは異なった。抗KGB抗血清は、10〜120kDaの範囲の分子量を有するタンパク質と反応した。抗KEB抗血清は、21〜196kDaの範囲の分子量を有するタンパク質と反応した。遊離BMAAとのCR3タンパク質調製物の予めインキュベート(「添加」)は、抗血清反応性における検出可能な効果がなかった(全てのブロットのレーン3)。これらの結果は、CR3シアノバクテリアタンパク質調製物が、抗BMAA抗血清によって認識されるエピトープを持つタンパク質を含有したことを示した。
BSA対照は、試験した最高の抗血清希釈(1/100)で、双方の抗血清とのわずかな反応性を示したが、抗血清濃度が低下した際には、この反応性は、見られなかった。この結果は、一次抗体が、高濃度で存在する場合、一部は、BSAに対して非特異的結合を示した(図5、全てのブロットのレーン1)。
実施例9.免疫ブロットにおける非特異的反応性の試験
免疫ブロット上で観察された反応性の一部(上記参照)が、非特異的反応性のためによるものである可能性を試験するために、免疫ブロット分析を、低希釈のBMAAに対して産生される抗血清(抗KGBおよび抗KEB)、およびヌル(免疫前)血清を用いて実行した(図6)。キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3(「CR3」)抽出物および天然BSAの試を、非特異的反応性について評価した。SDS−PAGEのために、28μgのタンパク質(CR3 全タンパク質抽出物)または10μgのBSAを、各レーンにおいて充填し、ゲル組成物、走行条件、転移条件、および免疫ブロット条件は、上述の通りであった。
抗KGB抗血清(KGB9)を、1/200、1/500、1/1000、および1/2000の希釈で、一次抗体として使用した。抗KEB抗血清(EDC6)を、1/200、1/500、1/1000、および1/2000の希釈で、一次抗体として使用した。免疫付与前にウサギから回収したヌル血清(NS)を、1/200の希釈で、一次抗体として使用した。
双方の抗血清は、全ての希釈で、CR3抽出物においてタンパク質との反応性およびBSA試料とのごくわずかな反応性を示した。抗KGBおよび抗KEB抗血清について見られる反応性パターンの比較は、抗KEB抗血清が、多数のタンパク質バンドと反応し、これらのバンドの染色は、更に顕著であることを示した一方、抗KGB 抗血清は、1つのタンパク質複合体のみと反応すると考えられた。抗KEB抗血清は、全ての希釈で、ブロット上で可視的な異なるバンドを有する、約66kDaの平均分子量に対応する領域において、CR3タンパク質と反応した。1/200の希釈で、抗KEB抗血清は、約54〜66kDaの分子量に対応する領域において、BSAとの反応性を示した。抗KGB抗血清は、約50kDaの平均分子量に対応する領域において、CR3タンパク質との強力な反応性を示した。ヌル血清はまた、約50kDaの平均分子量に対応する、同一の領域において、CR3タンパク質との反応性を示した。
CR3抽出物では、NSは、50〜60kDaのバンドと反応した(レーン2、12)。しかしながら、染色の強度を比較した場合、抗KGB抗血清が、著しく高い染色強度を示し、CR3試料において、多くのタンパク質バンドを認識したことは明らかであった。この差異はまた、抗KEB抗血清およびヌル血清(NS)を比較した場合、見られたが、対比は、あまり劇的ではない。この実験では、ヌル血清を用いた前回の実験が、異なるBMAA複合体で免疫付与する前に異なるウサギから採取したヌル血清間の差異を示さなかったので、ヌル血清(NS)を、1匹のウサギから回収し、その結果、BMAAまたはBMAA複合体とのいずれのウサギ特異的反応性も前兆候はなかった。これらの結果から、バンドが、ヌル血清(NS)対照でインキュベートした細胞膜に出現し始める場合、着色反応が停止したので、ヌル血清(NS)を、ウエスタンブロットに対する対照指標として使用した。つまり、特異反応は、恐らく完了し、いかなる更なる着色が、恐らく、非特異反応によるものであることを理解されるため、バンドがNSを用いてプローブした試料中に出現し始める場合、着色反応を停止する。
抗KEB抗血清は、多種多様のCR3タンパク質バンドと反応すると考えられ、バンドが、抗KGB反応タンパク質よりも更に画定されたため、下述の分析における抗KGB抗血清よりも更なる希釈で、抗KEB抗血清を使用し得ると判断された。更に、より濃縮した抗血清溶液(例えば、1/100の希釈)が、非特異的結合の増加をもたらすと考えられたため、一次抗体の低濃度(高希釈)は、BMAA含有タンパク質の特異的検出の可能性を向上させるために、下述の分析において使用した。
実施例10.他のシアノバクテリア株からのタンパク質調製物の免疫ブロット分析
タンパク質抽出物を、タンパク質プロファイルと抗血清反応性を比較するために、抗KGBおよび抗KEB抗血清を用いて、免疫ブロット分析用に追加のシアノバクテリア株から調製した。全タンパク質抽出物を、ミクロキスティス(Microcystis)株PCC7820、スピルリナ(Spirulina)株PCC8005、およびバルチックノドゥラリア(Baltic Nodularia)から調製した。キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイ株CR3(「CR3」)からのタンパク質調製物は、比較用の分析および陽性対照として含まれた。各株からの試料を、SDS−PAGE用のゲル(29μgのタンパク質/レーン)上に充填し、ゲル組成物(例えば、4%のスタッキング、12%の分離)、走行条件、転移条件、および免疫ブロット条件は、上述の通りであった。
SDS−PAGEゲルは、各シアノバクテリアタンパク質調製物に対するタンパク質プロファイルを示すために、クマシー染色を用いてタンパク質を染色した。SDSゲルを、更に感受性が高い硝酸銀染色で染色し、感受性の低いクマシーブルーと比較した場合、追加のタンパク質バンドが見られ、これは、クマシー染色では見られなかったが、免疫ブロット(ウエスタンブロット)分析によって潜在的に検出可能であった、抽出物において、様々なタンパク質の存在を示した。タンパク質が、SDS−PAGEゲルからニトロセルロース膜に転移した後、タンパク質転移は、タンパク質を視覚化するためにPonceau Sを用いて細胞膜を可逆的に染色することによって評価された。SDS−PAGEゲルを、タンパク質が、ゲル中に存在し(前)、ゲルからニトロセルロース膜に転移した(後)ことを確認するために、転移前後、タンパク質について試験し。
4つのシアノバクテリアタンパク質抽出物のブロットを、BMAA複合体に対して産生される抗血清が、これらの抽出物において、タンパク質と反応するかどうかを決定するため、および任意の特定のシアノバクテリアタンパク質が、BMAAに会合したものであると考えられるかどうか間接的に調査するために、抗KEB抗血清および抗KGB抗血清を用いてプローブした。4つのシアノバクテリアタンパク質抽出物のブロットをまた、非特異的反応性について試験するために、ヌル血清(NS)を用いてプローブした。タンパク質株からの染色パターンおよび結果、ならびに免疫ブロットを比較した。
抗BMAA抗血清を用いてプローブした免疫ブロットを、ヌル血清を用いてプローブした免疫ブロットと比較した場合、抗BMAA抗血清で見られた反応は、異なるパターンおよび更に高いシグナル強度を示した。シアノバクテリアタンパク質調製物で抗BMAA抗血清の反応の強度は、各株に対して異なり、キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイCR3が、最も強い(濃い色)反応を示し、ミクロキスティスPCC7820が、次に強く、次いで、スピルリナPCC8005、最も弱い(淡い色)反応が、バルチックノドゥラリアで見られた。免疫ブロットを、ヌル血清を用いてプローブした場合、約59kDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが観察された。免疫ブロットを、抗BMAA抗血清でプローブした場合、バンドが、以下の通りに、各株において標識された。CR3のために、約243、149、129、および114KDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが標識され、約42〜104kDaの分子量を有するタンパク質に対応する「塗布標本」が標識された。PCC8005のために、約249、129、44、および29kDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが標識された。バルチックノドゥラリアのために、136、123、44、および30kDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが標識された。PCC7820のために、約69〜106kDaの分子量を有するタンパク質に対応する「塗布標本」が標識された。
実施例11.市販の生物を用いた抗BMAA抗血清の反応性
シアノバクテリアが、抗BMAA抗血清の反応性の株特異性のある差異を示したため(上記参照)、他の生物を、抗BMAA抗血清とのそれらの潜在的な反応性を解明するために、免疫ブロット分析によって評価した。パン酵母(サッカロマイセスセレヴィシエ)の市販の栄養補助食品および「緑藻類」(クロレラ種)の食物栄養補助食品を、免疫ブロットによって抗BMAA抗血清とのそれらの反応性について試験した。クロレラ食物栄養補助食品からのタンパク質調製物は、抗BMAA抗血清と強く反応し、パン酵母(サッカロマイセスセレヴィシエ)調製物は、わずかな反応性を示した。
実施例12.大腸菌、テトラセルミス、およびクロレラとの抗BMAA抗血清の反応性
上述の試験した市販の製品の起源が構築され得なかったため、更なる研究を、公知の歴史と共に純粋な株を用いて実行した。更に、ある生物のこれらの純粋な株を、シアノバクテリアとの比較のために、見込まれる「陰性対照」として試験した。シアノバクテリアとの可能なBMAA会合の状況が、より良好に理解され得るように、大腸菌(株HK29;Dr.H.K.Young,University of Dundee)、緑藻クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)および緑藻テトラセルミス種の純粋株を、可能な陰性対照として得た。
大腸菌(株HK29)、クロレラブルガリス、およびテトラセルミス種の純粋株を、得、収穫し、全タンパク質抽出物を調製した。各株からの試料を、SDS−PAGE用のゲル(29μgのタンパク質/レーン)上に充填し、ゲル組成物(例えば、4%のスタッキング、12%の分離)、走行条件、転移条件、および免疫ブロット条件は、上述の通りであった。キリンドロスペルモプシス ラキボルスキイCR3のタンパク質調製物を比較用として含んだ。
図7に示されるように、CR3タンパク質試料との期待された反応性のパターンが見られ、他の生物からのタンパク質試料は、ブロットをプローブするために使用する抗血清との幾つかの反応性を示した。1/500もしくは1/1000で、抗KEB抗血清、あるいは、1/500(試験した希釈のみ)で、抗KGB抗血清は、いずれも、緑藻類、クロレラ、およびテトラセルミスのいずれのタンパク質との検出可能な反応性を示さなかった。
1/500の希釈で、抗KEB抗血清(EDC6 AS)は、約124、89、59、および35kDaの分子量を有するタンパク質に対応するCR3試料中のバンドが標識され(図7、レーン6)、1/1000の希釈で、抗KEB抗血清は、約121、94、79kDaの分子量を有するタンパク質に対応するCR3中のバンドが標識された(図7、レーン12)。1/500で、抗KEB抗血清は、約124、97、86、79、73、59、50、46、38、35、27、24、22、16、12、11、および9kDaの分子量を有するタンパク質に対応する大腸菌試料中のバンドの強力な標識を示した(図7、レーン7)。1/1000の希釈で、抗KEB抗血清は、約109、98、88、61、48、43、38、27、25、23、16、14、13、および9kDaの分子量を有するタンパク質に対応する大腸菌試料中のバンドが弱く標識されたが、バンドは、1/500で、抗血清を有するものよりもはるかに低い強度で標識された(図7、レーン13)。
1/500の希釈で、抗KGB抗血清は、約84〜36kDaの範囲の分子量を有するタンパク質に対応する「塗布標本」のCR3試料においてバンドが標識された(図7、レーン16)。1/500の希釈で、抗KGB抗血清は、約66、58、49、44、および24kDaの分子量を有するタンパク質に対応する、大腸菌試料において、バンドの強力な標識を示した(図7、レーン17)。
ヌル血清(1/500の希釈で)は、CR3との反応性をほとんど示さなかった(図7、レーン2)。大腸菌試料では、ヌル血清は、約91、13、および12kDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが標識された(図7、レーン3)。クロレラでは、ヌル血清は、約11kDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが標識された(図7、レーン4)。テトラセルミスでは、ヌル血清は、約10kDaの分子量を有するタンパク質に対応するバンドが標識された(図7、レーン5)。
大腸菌株HK29のタンパク質との抗KEBおよび抗KGB抗血清の反応性は、同一量の全タンパク質抽出物が、各レーンに充填された場合、以前試験したシアノバクテリア株のいずれかのタンパク質との抗血清の反応性よりも強力であった。大腸菌調製における広範な特異タンパク質バンドは、双方の抗血清によって染色された。大腸菌株HK29の試料を、収穫し、HPLCによるBMAA分析のためにフリーズドライした。
変性SDS−PAGEを使用して、上記で試験した全ての生物からのタンパク質を分離したため、ならびに免疫ブロット上で抗KGBおよび抗KEB抗血清が標識された種々の異なるタンパク質バンドが、種々の生物からのタンパク質を分離し、変性したため、合成免疫複合体との反応性の分析によって立証されるように、およびBMAA複合体に対して産生される抗血清が、生きている生物からのタンパク質抽出物と反応することを示す結果によって実証されるように、上記の実験は、BMAAがポリペプチド鎖に取り込まれることを示唆した。
種々の修正は、添付の請求項に定義されるように、本発明の精神および範囲から逸脱されることなく、好ましい実施形態になされ得る。

Claims (32)

  1. β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)の存在を検出するために試料をスクリーニングするためのイムノアッセイであって、β−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)のL異性体に結合し、BMAAのD異性体との反応性をほとんど示さない抗体を含む、イムノアッセイ。
  2. 遊離BMAAが検出される、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  3. タンパク質結合BMAAが検出される、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  4. 遊離BMAAおよびタンパク質結合BMAAの双方が検出される、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  5. 前記イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  6. 前記ELISAは、抗体捕捉アッセイである、請求項5に記載のイムノアッセイ。
  7. 前記ELISAは、間接競合ELISAである、請求項5に記載のイムノアッセイ。
  8. 前記ELISAは、直接ELISAである、請求項5に記載のイムノアッセイ。
  9. 前記イムノアッセイは、免疫ブロットアッセイである、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  10. BMAAに結合する前記抗体は、L−アラニン、L−グルタミン、L−チロシン、グリシル−グリシン、L−グリシン、L−ロイシン、L−フェニルアラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、L−グルタミン酸、およびL−アスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸に結合しないか、またはほとんど反応性を示さない、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  11. BMAAに結合する前記抗体は、ポリクローナル抗体である、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  12. BMAAに結合する前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  13. BMAAに結合する前記抗体は、抗体フラグメントである、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  14. BMAAに結合する前記抗体は、検出可能に標識される、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  15. 前記抗体は、放射性標識、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、コロイド金標識、色素部分、常磁性化合物、検出可能な酵素、ビオチン、アビジン、およびストレプトアビジンからなる群から選択される標識を用いて標識される、請求項14に記載のイムノアッセイ。
  16. BMAAに結合する前記抗体は、検出可能に標識されず、BMAAに結合する前記抗体に結合する検出可能に標識される二次抗体を更に含む、請求項1に記載のイムノアッセイ。
  17. 前記二次抗体は、放射性標識、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、コロイド金標識、色素部分、検出可能な酵素、検出可能なリガンド、ビオチン、アビジン、およびストレプトアビジンからなる群から選択される標識を用いて標識される、請求項16に記載のイムノアッセイ。
  18. 前記二次抗体は、検出可能な酵素を用いて標識される、請求項17に記載のイムノアッセイ。
  19. 前記検出可能な酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である、請求項18に記載のイムノアッセイ。
  20. 請求項1に記載のイムノアッセイに従ってβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)の存在を検出するために試料をスクリーニングするための方法であって、BMAAに結合する抗体と前記試料とを接触させることと、前記抗体を検出することと、を含む、方法。
  21. 被験体からの組織試料をスクリーニングし、前記組織試料中のBMAAの存在を検出することを含み、前記試料中の検出可能な量のBMAAの存在は、BMAAの環境源への前記被験体の曝露を示す、請求項20に記載の方法。
  22. 前記組織試料は、神経組織である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記組織試料は、非神経組織である、請求項21に記載の方法。
  24. 前記非神経組織は、ケラチン組織である、請求項23に記載の方法。
  25. 前記ケラチン組織は、毛髪である、請求項24に記載の方法。
  26. 前記ケラチン組織は、皮膚である、請求項24に記載の方法。
  27. 前記ケラチン組織は、爪、鉤爪、または蹄である、請求項24に記載の方法。
  28. 前記組織試料の免疫ブロット上でタンパク質結合BMAAの存在を検出することを含む、請求項21に記載の方法。
  29. 前記試料は、環境試料である、請求項20に記載の方法。
  30. 前記環境試料は、水試料である、請求項29に記載の方法。
  31. 前記環境試料は、食料品からのものである、請求項29に記載の方法。
  32. 前記試料中のシアノバクテリア物質を検出するために前記試料をスクリーニングすることを更に含む、請求項29に記載の方法。
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