JP5831583B2 - 分析装置 - Google Patents

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本発明は、析装置等に関する。
近年、医療診断や飲食物の検査等に用いられるセンサーの需要が増大しており、高感度かつ小型のセンサーの開発が求められている。このような要求に応えるために、電気化学的な手法をはじめ様々なタイプのセンサーが検討されている。これらの中で、集積化が可能であること、低コスト、測定環境を選ばないこと等の理由から、表面プラズモン共鳴を用いたセンサーに対する関心が高まっている。
例えば、特許文献1には、金属周期構造により光を表面プラズモンポラリトンに結合させる表面プラズモン共鳴センサーが開示されている。
特開2007−240361号公報
しかしながら、このセンサーでは、表面プラズモンの共鳴条件が、光の入射角度に対して選択性が大きいため、特定の入射角の光しか表面プラズモンポラリトンに結合しない。そのため、対物レンズで集光した光の一部しか表面プラズモンポラリトンに結合せず、十分なセンシング感度を得られないという課題がある。
本発明の幾つかの態様によれば、光と表面プラズモンポラリトンの結合効率を向上できる光デバイスを提供できる。
本発明の一態様は、電気伝導体の突起を仮想平面に対して平行な方向に沿って配列した突起群を含み、前記突起群における前記突起の配列周期は、第1の周期及び前記第1の周期とは異なる第2の周期を少なくとも含み、前記第1の周期及び前記第2の周期は、入射光の波長λ1よりも短い周期である光デバイスに関係する。
本発明の一態様によれば、電気伝導体の突起群が、仮想平面に対して平行な方向に沿って配列される。その突起群の配列周期には、入射光の波長λ1よりも短い第1の周期及び第2の周期が少なくとも含まれる。これにより、光と表面プラズモンポラリトンの結合効率を向上すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記突起群は、前記第1の周期で配列される第1の突起群と、前記第2の周期で配列される第2の突起群と、を有し、前記第1の突起群は、第1の領域に設けられ、前記第2の突起群は、前記第1の領域に隣接する第2の領域に設けられてもよい。
また、本発明の一態様では、前記突起群は、前記第1の周期から段階的に増加または減少する第1の可変周期で配列される第1の突起群と、前記第2の周期から段階的に増加または減少する第2の可変周期で配列される第2の突起群と、を有し、前記第1の突起群は、第1の領域に設けられ、前記第2の突起群は、前記第1の領域に隣接する第2の領域に設けられてもよい。
また、本発明の一態様では、前記第1の領域から前記第2の領域に亘って、前記第1の突起群及び前記第2の突起群の周期が段階的に増加又は減少してもよい。
これらの本発明の一態様によれば、第1の周期及び第1の周期とは異なる第2の周期を少なくとも含む周期で突起群を配列できる。
また、本発明の一態様では、前記入射光は、前記仮想平面に向かう垂線に対して第1の角度で入射する光と、前記仮想平面に向かう垂線に対して、前記第1の角度とは異なる第2の角度で入射する光と、を含み、前記第1の周期で配列される突起には、前記第1の角度で入射する光が入射し、前記第2の周期で配列される突起には、前記第2の角度で入射する光が入射し、前記第1の周期で配列される突起での前記表面プラズモン共鳴の共鳴波長と、前記第2の周期で配列される突起での前記表面プラズモン共鳴の共鳴波長とが、前記波長λ1となるように、前記突起群の材質と前記第1の周期と前記第2の周期と前記第1の角度と前記第2の角度が設定されてもよい。
このようにすれば、第1の周期で配列される突起での前記表面プラズモン共鳴の共鳴波長と、第2の周期で配列される突起での表面プラズモン共鳴の共鳴波長を、入射光の波長λ1と同じ波長にできる。これにより、第1の入射角度の入射光と第2の入射角度の入射光を表面プラズモンポラリトンに結合させることができる。
また、本発明の一態様では、前記第1の周期は、前記第2の周期よりも長い周期であってもよい。
また、本発明の一態様では、前記第1の周期は、前記第2の周期よりも短い周期であってもよい。
これらの本発明の一態様によれば、第1の周期と第2の周期の大小関係を設定できる。これにより、表面プラズモンポラリトンの伝搬方向を調整できる。
また、本発明の一態様では、前記突起群は、同一の配列方向に配列されてもよい。
また、本発明の一態様では、前記突起群は、縞状に配列され、前記突起群の配列方向は、縞状配列の全体に亘って同じ一直線方向であってもよい。
また、本発明の一態様では、前記突起群は、同心円状に配列され、前記突起群の配列方向は、同心円状配列のラジアル方向であってもよい。
これらの本発明の一態様によれば、突起群を、基材の表面に平行な方向に沿って、同一の配列方向に配列できる。
また、本発明の一態様では、前記突起群の配列方向は、前記入射光の偏光方向と同じ方向であってもよい。
また、本発明の一態様では、前記入射光は、直線偏光であり、前記突起群の配列方向は、前記直線偏光の偏光方向と同じ方向であってもよい。
また、本発明の一態様では、前記入射光は、ラジアル偏光であり、前記突起群の配列方向は、前記ラジアル偏光の偏光方向と同じ方向であってもよい。
これらの本発明の一態様によれば、入射光の偏光方向と同じ方向に沿って、突起群を配列できる。
また、本発明の一態様では、前記突起群の頂面に、電気伝導体により形成される第1の小突起群を含み、前記第1の小突起群における突起間の間隔は、前記突起群における前記突起の配列周期よりも短くてもよい。
このようにすれば、突起群の突起の頂面に第1の小突起群を形成できる。これにより、第1の小突起群に局在型の表面プラズモンを励起できる。
また、本発明の一態様では、前記仮想平面に平行な面であって前記突起群の隣り合う突起間に、電気伝導体により形成される第2の小突起群を含み、前記第2の小突起群における突起間の間隔は、前記突起群における前記突起の配列周期よりも短くてもよい。
このようにすれば、突起群の隣り合う突起間に第2の小突起群を形成できる。これにより、第2の小突起群に局在型の表面プラズモンを励起できる。
また、本発明の他の態様は、光源と、上記のいずれかに記載の光デバイスと、前記光源からの前記波長λ1の光を前記突起群に向けて集光し、前記仮想平面に向かう垂線に対して第1の角度で入射する成分と前記第1の角度とは異なる第2の角度で入射する成分とを少なくとも含む入射光を前記突起群に向けて入射させる第1光学系と、前記光デバイスの前記回折格子により散乱または反射された光の中からラマン散乱光を取り出す第2光学系と、前記第2光学系を介して受光された前記ラマン散乱光を検出する検出器と、を含む分析装置に関係する。
図1(A)、図1(B)は、センサーチップの比較例。 入射光の入射角度についての説明図。 比較例における表面プラズモン共鳴の模式的な説明図。 比較例における表面プラズモンポラリトンの分散曲線。 図5(A)は、本実施形態のセンサーチップの構成例の平面視図。図5(B)は、本実施形態のセンサーチップの構成例の断面図。 P1>P2の場合の表面プラズモン共鳴の模式的な説明図。 表面プラズモンポラリトンの分散曲線。 図8(A)、図8(B)は、センサーチップの光入射角度に対する反射光強度の特性例。 センサーチップの詳細な構成例。 突起群が縞状に配列される場合の集光ビームの偏光方向の例。 センサーチップの第2の構成例。 突起群が同心円状に配列される場合の集光ビームの偏光方向の例。 センサーチップの変形例。 P1<P2の場合の表面プラズモン共鳴の模式的な説明図。 センサーチップの第3の構成例の断面図。 分析装置の構成例。 センサーチップの配置位置についての説明図。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.比較例
上述のように、金属周期構造を用いた表面プラズモン共鳴センサーでは、表面プラズモン共鳴が入射光の入射角に対して選択性が大きいという課題がある。この点について、図1(A)〜図4を用いて具体的に説明する。
図1(A)、図1(B)に、本実施形態のセンサーチップ(光デバイス)の比較例を示す。図1(A)は、センサーチップの平面図であり、図1(B)は、センサーチップの断面図である。図1(A)に示すように、このセンサーチップSCには、1次元の凹凸による金属周期構造が形成されている(網掛け部分により周期構造の突起部を表す)。具体的には、図1(B)に示すように、センサーチップSCの基材KBの平面に沿った方向に、突起群TKが周期Paで配列される。
このセンサーチップSCでは、金属周期構造により、光を表面プラズモンポラリトン(SPP:Surface Plasmon Polariton)へ結合させる。その励起された表面プラズモンポラリトンは、金属周期構造の表面近傍に増強電場を生成し、その増強電場は、センサー表面に付着した標的物に作用して表面増強ラマン散乱を生じさせる。そして、その表面増強ラマン散乱による散乱光スペクトルを取得することで、標的物(特定物質)の検知を行う。
図2に示すように、センサーチップSCには、対物レンズLNで集光したレーザー光LBが入射光として照射される。このように対物レンズLNで集光すると、レーザー光LBの照射領域IAには、種々の角度で光線が入射する。例えば、光軸上ではθa1=0°で光線が入射し、照射領域IAの外周上ではθa2≠θa1で光線が入射する。このとき、上述のセンサーチップSCでは、金属周期構造による表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)の光入射角選択性が大きいため、特定の角度成分(例えばθa1=0°)を有する光しか表面プラズモンポラリトンへ結合しない。この点について、図3、図4を用いて説明する。
図3は、比較例における表面プラズモン共鳴の模式的な説明図である。図3に示すように、周期Paの金属格子に、θa1=0°、θa2>0°で波数kaの光が入射するものとする。そうすると、金属格子の回折条件により、θa1=0°の入射光に対して波数2π/Paのエバネッセント波(Evanescent Wave)が生じ、θa2>0°の入射光に対して波数2π/Pa±kaxのエバネッセント波が生じる。ここで、kax=ka・sinθa2である。
例えば、波数2π/Paのエバネッセント波に対して表面プラズモンポラリトンが結合するとする。そうすると、θa1=0°の入射光により波数2π/Paの表面プラズモン(SP:Surface Plasmon)が励起される。一方、θa2>0°の入射光では、波数2π/Pa±kaxのエバネッセント波が表面プラズモンポラリトンと結合せず、表面プラズモンは励起されない。
図4には、比較例における表面プラズモンポラリトンの分散曲線を示す。A1は分散曲線であり、A2はライトラインであり、A3はθa1=0°の場合の回折条件を表す直線であり、A4とA5はθa2>0°の場合の回折条件を表す直線である。共鳴条件は、回折条件を表す直線A3〜A5と分散曲線A1との交点により表される。すなわち、θa1=0°の場合には、周波数ω0の入射光に共鳴し、θa2>0°の場合には、周波数ω1、ω2≠ω0の入射光に共鳴する。従って、レーザー光LBが単一周波数ω0であるとすると、特定の入射角度θa1=0°の入射光のみが波数2π/Paの表面プラズモンポラリトンと結合することになる。
このように、比較例のセンサーチップでは、特定の角度(例えば、垂直入射θa1=0°)で入射した光だけが表面プラズモンポラリトンへ結合するため、センサーチップの一部でしか表面プラズモン共鳴が生じない。そのため、光と表面プラズモンポラリトンの結合効率が極めて低くなってしまい、微弱なラマン散乱光を高感度にセンシングする上での課題となっている。
2.構成例
そこで、本実施形態では、入射光の入射角度に応じて周期が異なる金属格子を形成することで、入射光と表面プラズモンポラリトンの結合効率を向上し、表面増強ラマン散乱等のセンシング感度を向上する。図5(A)〜図7を用いて、この本実施形態のセンサーチップ(光デバイス、金属格子)について説明する。なお、以下では、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせている。
ここで、以下では、センサーチップを表面増強ラマン散乱分光に用いる場合について説明するが、本実施形態では、この場合に限定されず、センサーチップによる増強電場を種々の分光手法に利用することが可能である。また、以下では、センサーチップが、金属で形成される金属格子である場合を例に説明するが、本実施形態ではこの場合に限定されない。すなわち、センサーチップは、電気伝導体により形成される格子であればよく、例えば半導体(例えばポリシリコン)により形成される格子であってもよい。
図5(A)は、本実施形態のセンサーチップの構成例の平面視図である。このセンサーチップは、表面プラズモン共鳴と表面増強ラマン散乱を利用して標的物(標的物質、標的分子)を検出するためのものであり、基材100(基板)、第1の突起群110、第2の突起群120を含む。このセンサーチップは、1次元の周期構造を有する回折格子である。
具体的には、基材100は、金属(広義には導電体)を含み、例えば円形や四角形の平板状に形成される。第1の突起群110は、第1の領域R1に形成され、基材100の平面(広義には面)に平行な第1の方向D1に沿って周期P1で配置される。第2の突起群120は、第2の領域R2に形成され、方向D1に沿って、周期P1とは異なる周期P2(P1>P2、またはP1<P2)で配置される。ここで、基材100の平面とは、突起群が形成される側の基材100の表面130に平行な面である。例えば、第1の突起群110と第2の突起群120は、基材100に対する平面視において、方向D1に直交する第2の方向D2に平行な縞状に形成される。
図5(B)は、本実施形態のセンサーチップの構成例の断面図である。この断面図の断面は、基材100の平面に垂直な面であり、突起群110、120の配列方向D1に平行な面である。図5(B)に示すように、基材100の平面の法線方向を方向D3とする。
基材100は、ガラス基板140の上に金属薄膜150を形成したものである。第1の突起群110は、第1材質の金属により形成され、第2の突起群120は、第2材質の金属により形成される。これらの金属薄膜150、第1の突起群110、第2の突起群120により金属格子160が構成される。第1、第2材質の金属は、例えば金属薄膜150と同じ材質の金属であり、Ag(銀)や、Au(金)、Pt(白金)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)等、またはこれらの合金が用いられる。第1の突起群110と第2の突起群120の断面形状は、基材100の表面130から高さHの凸形状である。凸形状は、例えば矩形(略矩形を含む)であり、あるいは台形、円弧等であってもよい。金属格子160の製造手法として、電子ビームリソグラフィーやナノインプリントを利用できる。
なお、上記構成例では、周期が異なる2つの金属凹凸構造が同心円状に分割された領域R1、R2に配置される場合を例に説明したが、本実施形態では、図5(A)に示すような領域R2が領域R1の周りを囲む場合に限定されない。例えば、本実施形態では、方向D1に沿って2つの領域R2が配置され、その2つの領域R2の間に領域R1が配置されてもよい。
3.周期P1、P2の設定手法
次に、本実施形態における周期P1、P2の設定手法について説明する。まず、本実施形態のセンサーチップの機能を説明する。図6は、P1>P2の場合の表面プラズモン共鳴の模式的な説明図である。なお、以下ではP1>P2の場合を例に説明するが、図14等に示すようにP1<P2であってもよい。
図6に示すように、入射光の波数がkiであり、周期P1の格子にθ1=0°で入射光が入射し、周期P2の格子にθ2>0°で入射光が入射するものとする。そうすると、金属格子の回折条件により、周期P1の格子では波数2π/P1のエバネッセント波が生じ、周期P2の格子では波数2π/P2±kixのエバネッセント波が生じる。ここで、kix=ki・sinθ2である。また、入射光の入射角度とは、基材平面の法線方向D3の反対方向(基材平面に向かう垂線)と入射光との成す角度である。
本実施形態では、2π/P2−kix=2π/P1を満たすように周期P1、P2を設定する。また、波数2π/P1のエバネッセント波に対して表面プラズモンポラリトンが結合するように周期P1を設定する。そうすると、入射角θ1、θ2の両方の入射光と表面プラズモンポラリトンが結合し、周期P1、P2の両方の格子で波数2π/P1の表面プラズモンが励起される。なお、図6に示すように、対物レンズの焦点よりも対物レンズ側にセンサーチップが配置され(図17に示す位置A)、P1>P2である場合には、センサーチップの内側から外側に向かう波数のエバネッセント波に表面プラズモンポラリトンが結合する。そのため、表面プラズモンポラリトンはセンサーチップの内側から外側に向かって伝搬する。
このように、本実施形態のセンサーチップは、チップ表面に形成された金属凹凸構造により入射光を表面プラズモンポラリトンへ結合させる。そして、その表面プラズモンポラリトンにより金属凹凸構造の表面近傍に強い局所電場を発生させる。センサーチップ内側の周期P1の金属凹凸構造は、垂直及びその近傍の角度成分を有する光を表面プラズモンポラリトンへ強く結合させる。一方、外側の周期P2の金属凹凸構造は、斜めの角度成分を有する光を表面プラズモンポラリトンへ強く結合させる。このようにして、上述の比較例に比べて、金属凹凸構造へ入射した光エネルギーのより多くを表面プラズモンポラリトンへ結合させることが可能となる。
次に、周期P1、P2の設定手法について説明する。図7に、本実施形態における表面プラズモンポラリトンの分散曲線を示す。B1は分散曲線であり、B2はライトラインであり、B3はθ1=0°の場合の回折条件を表す直線であり、B4とB5はθ2>0°の場合の回折条件を表す直線である。
まず、厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled Wave Analysis)により分散曲線B1を求める(L.Li and C.W.Haggans,J.Opt.Soc.Am.,A10,1184-1189(1993))。分散曲線B1は、金属の種類や、媒質の種類や、金属格子の断面形状に固有の曲線である。次に、入射光の周波数ω=ω0(角周波数)と分散曲線B1との交点B6を直線B3が通るように、周期P1を設定する。これにより、周期P1の格子により、入射角度θ1の入射光に対して表面プラズモン共鳴を生じさせることができる。次に、交点B6を直線B4(または直線B5)が通るように周期P2を設定する。すなわち、2π/P2−kix=2π/P1(または2π/P2+kix=2π/P1)を満たすように周期P2を設定する。これにより、周期P2の格子により、入射角θ2の入射光に対して表面プラズモン共鳴を生じさせることができる。このようにして、2つの金属凹凸構造に同じ共鳴波長をもたせることができる。
さて、上述のように、金属周期構造を用いた表面プラズモン共鳴センサーでは、表面プラズモン共鳴が入射光の入射角に対して選択性が大きいため、対物レンズで集光した光の一部しか表面プラズモンポラリトンと結合しないという課題があった。
この点、本実施形態のセンサーチップ(光デバイス)は、基材100に形成された金属格子160標的物を配置し、表面プラズモン共鳴及び表面増強ラマン散乱を利用して、標的物を検出する。金属格子160(電気伝導体格子)は、金属(電気伝導体)により形成される突起群110、120を有する。この突起群110、120は、基材100の表面130(広義には仮想平面)に平行な方向(例えば方向D1、またはラジアル方向)に沿って、入射光の波長λ1よりも短い周期で配列される。この突起群の周期は、第1の周期P1及び第1の周期P1とは異なる第2の周期P2(P2≠P1)を少なくとも含む。
なお、上記では、センサーチップが金属格子160を含む場合を例に説明したが、本実施形態ではこれに限定されず、センサーチップが突起群110、120を含んでさえいればよい。すなわち、金属格子160は、突起群110、120による周期構造の一例であり、本実施形態では、センサーチップが必ずしも格子に形成される必要はない。
ここで、周期P1、P2を少なくとも含む突起群の周期とは、周期P1、P2のみを含む周期であってもよく、周期P1、P2とは異なる他の周期をさらに含む周期であってもよい。また、仮想平面とは、突起群110、120の配列方向や入射光の入射角度θ1、θ2等の基準となる平面であり、例えば基材100の平面(例えば基材100の表面130)に平行な面である。
これにより、入射光と表面プラズモンポラリトンとの結合効率を向上することが可能になる。すなわち、上述のように、突起群の周期が周期P1とP2を含むことで、異なる入射角度θ1、θ2の入射光を同じ共鳴波長λ1(周波数ω0)で表面プラズモンポラリトンに結合させることができる。
具体的には、本実施形態では、図5(A)等に示すように、金属格子160は、第1の領域R1と、第1の領域R1に隣接する第2の領域R2を含む。第1の領域R1には、第1の周期P1で配列される第1の突起群110が設けられ、第2の領域R2には、第2の周期P2で配列される第2の突起群120が設けられる。
このようにすれば、領域R1、R2に一定の周期P1、P2で突起群を配列できる。これにより、周期P1及びP1とは異なる周期P2を少なくとも含む周期で、突起群を配列できる。
また、本実施形態では、第1領域R1には、第1の周期P1から段階的に増加または減少する第1の可変周期で配列される第1の突起群が設けられ、第2領域R2には、第2の周期P2から段階的に増加または減少する第2の可変周期で配列される第2の突起群が設けられてもよい。例えば、第1の領域R1から第2の領域R2に亘って、領域の境界で急激に周期を変化させず(領域内と同じ規則性に則って)、第1の突起群及び第2の突起群の周期が段階的に増加又は減少してもよい。
このようにすれば、領域R1、R2に周期P1、P2から段階的に変化する可変周期で突起群を配列できる。これにより、周期P1及びP1とは異なる周期P2を少なくとも含む周期で、突起群を配列できる。
ここで、周期が段階的に増加または減少するとは、1周期毎または複数周期毎に周期が増加または減少することである。例えば、増加は単調増加であり、減少は単調減少である。より具体的には、可変周期をPj(jは自然数)とし、周期Pjの突起への入射光の入射角度をθjとし、θ1=0°すると、2π/Pj−ki・sinθj=2π/P1(または、2π/Pj+ki・sinθj=2π/P1)を満たすように周期Pjが増加または減少することである。
また、本実施形態では、図6等に示すように、入射光は、基材100の平面に向かう垂線に対して第1の角度θ1で入射する光と、第1の角度θ1とは異なる第2の角度θ2で入射する光を含む。第1の突起群110(第1の周期P1で配列される突起)には、第1の角度θ1で入射する光が入射し、第2の突起群120(第2の周期P2で配列される突起)には、第2の角度θ2で入射する光が入射する。そして、図7等に示すように、第1の突起群110と第2の突起群120での表面プラズモン共鳴の共鳴周波数(共鳴波長)が、同じ周波数ω0(波長λ1)となるように、突起群の材質と周期P1と周期P2とが設定される。
このようにすれば、異なる入射角度θ1、θ2の入射光を同じ共鳴周波数ω0(共鳴波長λ1)で表面プラズモンポラリトンに結合させるように、突起群の材質と周期P1と周期P2を設定できる。
また、本実施形態では、図6等に示すように、第1の周期P1は、第2の周期P2よりも長い周期である(P1>P2)。また、本実施形態では、図14等に示すように、第1の周期P1は、第2の周期P2よりも短い周期であってもよい(P1<P2)。
このように、センサーチップの内側の周期P1と外側の周期P2の長短を入れ替えることで、表面プラズモンポラリトンの伝搬方向を反対方向にできる。例えば、図9や図11に示すように、センサーチップの内側から外側に表面プラズモンポラリトンが伝搬する場合には、センサーチップ全面で偏りの無い増強電場を得ることができる。希薄な標的物では標的物の付着位置を予測できないが、偏りの無い増強電場によって付着位置に依らないセンシングが可能になる。なお、図17に示すように、センサーチップの配置を替えることで、表面プラズモンポラリトンの伝搬方向を入れ替えることもできる。
また、本実施形態では、突起群は、同一の配列方向に配列される。例えば、図5(A)に示すように、突起群は縞状(直線的な縞状)に配列され、その配列方向は、縞状配列の全体に亘って同じ一直線方向D1である。あるいは、図11に示すように、突起群は同心円状に配列され、その配列方向は、同心円状配列のラジアル方向(半径方向)であってもよい。
このようにすれば、基材100の表面に平行な方向に沿って、第1の周期P1及び第1の周期P1とは異なる第2の周期P2(P2≠P1)を少なくとも含む周期で突起群を配列できる。なお、本実施形態では、金属格子160は1次元周期構造に限定されず、2次元周期構造であってもよい。
また、本実施形態では、突起群の配列方向は、入射光の偏光方向と同じ方向である。例えば、図10に示すように、入射光は直線偏光であり、突起群の配列方向は、直線偏光の偏光方向と同じ方向D1である。あるいは、図12に示すように、入射光はラジアル偏光であり、突起群の配列方向は、ラジアル偏光の偏光方向と同じ方向(同心円の半径方向)であってもよい。
このようにすれば、入射光の偏光方向と同じ方向に突起群を配列できる。これにより、入射光によって自由電子プラズマの粗密波が偏光方向に沿った方向に誘起され、突起群の配列方向に沿って伝搬する表面プラズモンを励起できる。なお、本実施形態では、入射光が、突起群の配列方向と同じ偏光方向の直線偏光またはラジアル偏光を含んでいればよい。すなわち、突起群の配列方向と同じ偏光方向のみから成る入射光に限定されず、入射光が突起群の配列方向と同じ偏光方向の成分を含んでさえいれば、他の偏光方向の偏光を含んでいてもよい。
また、本実施形態では、図15に示すように、突起群(例えば第1の突起群110と第2の突起群120)の頂面220に、金属により形成される第1の小突起群200を含んでもよい。この第1の小突起群は、基材100の平面に平行な方向(方向D1またはラジアル方向)に沿って、第1の周期P1及び第2の周期P2を少なくとも含む突起群の周期よりも短い、第1の短周期PS1で配列される。
また、本実施形態では、図15に示すように、突起群の隣り合う突起間の底面230(仮想平面に平行な面であって突起群110、120の隣り合う突起間)に、金属により形成される第2の小突起群210を含んでもよい。この第2の小突起群210は、基材100の平面に平行な方向(方向D1またはラジアル方向)に沿って、第1の周期P1及び第2の周期P2を少なくとも含む突起群の周期よりも短い、第2の短周期PS2で配列される。
なお、上記では、第1の小突起群200が第1の短周期PS1で配列され、第2の小突起群210が第2の短周期PS2で配列される場合を例に説明したが、本実施形態ではこれに限定されない。すなわち、第1の小突起群200や第2の小突起群210は、必ずしも周期性を有する必要はなく、例えば、それぞれの群における突起の大きさには多少の分布があってもよい。
このようにすれば、突起群110、120により伝搬型の表面プラズモンが励起され、その伝搬型の表面プラズモンにより第1の小突起群200や第2の小突起群210に局在型の表面プラズモンが励起される。これにより、表面プラズモン共鳴による電場増強度をさらに向上できる。
4.詳細な構成例
図8(A)〜図10を用いて、センサーチップの詳細な構成例について説明する。
図8(A)に、センサーチップの光入射角度に対する反射光強度の特性例を示す。図8(B)に示すように、金属凹凸構造の素材はAgであり、断面形状は矩形であり、凹凸の高さは45nmであり、励起波長は633nmであり、偏光方向は金属凹凸構造の溝と直交する方向である。金属凹凸構造の周期が590nm、550nm、500nm、450nmのとき、入射角度を0°〜30°の範囲で変化させるものとする。
図8(A)に示すように、周期590nmでは、光入射角度が0°の条件において表面プラズモン共鳴が認められる。また、周期550nm、500nm、450nmでは、それぞれ光入射角度が5°、12°、20°の条件において表面プラズモン共鳴が認められる。
したがって、図5(A)に示すセンサーチップにおいて、P1=590nm、P2=500nmに設定すれば、およそ±15度の入射角度幅を有する集光ビームを表面プラズモンポラリトンに結合させることができる。これは、NA=0.2(NA:開口数)のレンズを用いて集光ビームを形成した場合に相当する。また、図9に示すように、金属凹凸構造群の数をひとつ増やし、第3の突起群170が周期P3で配列される第3の領域R3を第2の領域R2の外側に設けてもよい。そして、P1=590nm、P2=500nm、P3=450nmに設定すれば、およそ±25度の入射角度幅を有する集光ビームを表面プラズモンポラリトンへ結合することができる。これは、NA=0.4のレンズを用いて集光ビームを形成した場合に相当する。図9の太矢印で示すように、P1>P2>P3の場合には、表面プラズモンポラリトンは内側の領域R1から外側の領域R3に向かって方向D1に沿って伝搬する。
なお、図8(A)に示す角度特性における共鳴ピークの幅の広狭は、金属凹凸構造の高さに依存する。構造が浅い場合、共鳴ピークは鋭く深く、構造が深い場合、共鳴ピークは広く浅くなる傾向がある。この点にも考慮して、配置する金属凹凸構造の数(領域の数、周期の変化幅)を決めればよい。入射集光ビームの角度幅が広がるほど(集光光学系のNAが大きくなるほど)、構造の数は増える。
図10に、突起群が縞状に配列される場合の集光ビームの偏光方向の例を示す。図10に示すように、センサーチップ300には、直線偏光の集光ビームLBが入射される。この直線偏光は、入射ビームLBの入射領域IA全面で同じ偏光方向D1に偏光している。偏光方向D1は、図9等に示すように、突起群の配列方向D1と同じ方向である。このようにすれば、偏光方向に振動する電場により金属格子中の自由電子が揺さぶられ、方向D1に伝搬する表面プラズモンが励起される。
5.第2の構成例
上述の実施形態では、金属凹凸構造が縦縞状に配列される場合について説明したが、本実施形態では、周期が異なる金属凹凸構造が同心円状に配列されてもよい。図11に、このようなセンサーチップの第2の構成例を示す。
このセンサーチップの金属格子は、半径方向Dr(ラジアル方向)に沿って同心円状に配列された第1の突起群110、第2の突起群120、第3の突起群170を含む。第1の突起群110は、同心円の中心点BP(基準点)を含む第1の領域R1に第1の周期P1で配列される。第2の突起群120は、領域R1の外側の第2の領域R2に第2の周期P2で配列される。第3の突起群170は、領域R2の外側の第3の領域R3に第3の周期P3で配列される。これらの突起群の各突起は、中心点BPを中心とする円形に形成され、半径方向Drでの断面形状は例えば矩形である。なお、図11の太矢印で示すように、P1>P2>P3である場合、励起された表面プラズモンポラリトンは、同心円の中心点BPから外側へ向かって方向Drに沿って伝搬する。
次に、このセンサーチップの機能について説明する。このセンサーチップは、チップ表面に形成された同心円状の金属凹凸構造により入射光を表面プラズモンポラリトンに結合させ、その表面プラズモンポラリトンにより金属凹凸構造の表面近傍に強い局所電場を発生させる。内側の領域R1の金属凹凸構造は、垂直及びその近傍の角度成分を有する光を表面プラズモンポラリトンに強く結合させる。一方、外側の領域R2、R3の金属凹凸構造は、斜めの角度成分を有する光を表面プラズモンポラリトンに強く結合させる。このようにして、上述の比較例に比べて、金属凹凸構造へ入射した光エネルギーのより多くを表面プラズモンポラリトンに結合させることが可能となる。また、同心円状に突起群が配列されることで、平面視での回転方向(図13に示す方向Dφ)に依らず共鳴するため、センシング感度をより向上できる。
図12に、突起群が同心円状に配列される場合の集光ビームの偏光方向の例を示す。図12に示すように、センサーチップ300には、ラジアル偏光の集光ビームLBが入射される。ラジアル偏光とは、対物レンズ(第1光学系)の光軸の回りに対称な偏光であり、入射ビームLBの入射領域IAにおいて、同心円の中心点BPを中心とする半径方向Drに偏光している。偏光方向Drは、突起群の配列方向Drと同じ方向である。このようにすれば、偏光方向に振動する電場により金属格子中の自由電子が揺さぶられ、方向Drに伝搬する表面プラズモンが励起される。
6.変形例
上記実施形態では、P1>P2>P3の場合について説明したが、本実施形態では、図13に示すようにP1<P2<P3であってもよい。この場合、太矢印で示すように、表面プラズモンポラリトンは同心円の外側から中心点BPに向かって方向Drに沿って伝搬する。
図14を用いて、この伝搬方向について具体的に説明する。図14は、P1<P2の場合の表面プラズモン共鳴の模式的な説明図である。なお、以下では簡単のため、P1とP2についてのみ説明する。
図14に示すように、周期P1の格子では波数2π/P1のエバネッセント波が生じ、周期P2の格子では波数2π/P2±kixのエバネッセント波が生じる。P1<P2の場合、2π/P2+kix=2π/P1を満たすように周期P1、P2を設定する。そうすると、センサーチップの外側から内側に向かう波数のエバネッセント波に表面プラズモンポラリトンが結合する。そのため、表面プラズモンポラリトンはセンサーチップの外側から内側に向かって伝搬する。
7.第3の構成例
上記実施形態では、突起群により伝搬型の表面プラズモンが励起されるが、本実施形態では、回折格子が、局在型の表面プラズモンを励起する他の突起群を含んでもよい。図15は、このセンサーチップの第3の構成例の断面図である。
このセンサーチップは、基材100、第1の突起群110、第2の突起群120、第1の小突起群200、第2の小突起群210を含む。なお、以下では、図5(B)等で説明した構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
図15に示すように、第1の小突起群200は、第1の突起群110と第2の突起群120(以下、突起群とする)の頂面220に、突起群の配列方向D1(または方向Dr)に沿って周期的に配列される。第2の小突起群210は、突起群の突起間の底面230に、突起群の配列方向D1(または方向Dr)に沿って周期的に配置される。
より具体的には、第1の小突起群200は、頂面220からの高さがH2であり、突起群の周期P1、P2より短い第1の短周期PS1で配列される。第2の小突起群210は、底面230からの高さがH3であり、突起群の周期P1、P2より短い第2の短周期PS2で配列される。例えば、周期PS1やPS2は、500nm以下に設定することが望ましく、高さH2やH3は、200nm以下に設定することが望ましい。なお、高さH3は、H3>H1であってもよく、H3≦H1であってもよい。
第1の小突起群200と第2の小突起群210(以下、小突起群とする)の各突起の断面形状は、小突起群の配列方向D1での断面において、頂面220と底面230から凸形状に形成される。この凸形状は、矩形や台形、円弧等である。例えば、図5(A)に示すように、突起群が縞状に形成される場合、小突起群は突起群に平行な縞状に形成される。あるいは、図11に示すように突起群が同心円状に形成される場合、小突起群は、突起群の中心点BPを中心とする同心円状に形成される。この小突起群は、突起群と同じ金属により形成されてもよく、異なる金属により形成されてもよい。
なお、上記では、小突起群の配列方向と突起群の配列方向が同じであるとしたが、本実施形態では、小突起群の配列方向と突起群の配列方向が異なる方向であってもよい。この場合、配列周期PS1やPS2は、方向D1における配列周期となる。
次に、この第3の構成例のセンサーチップによる表面増強ラマン散乱について説明する。本実施形態では、励起光を集光してセンサーチップに入射させる。そうすると、上述のように、突起群により伝搬型の表面プラズモンが励起される。この表面プラズモンは、金属格子160の表面に沿って伝搬し、小突起群に局在型の表面プラズモンを励起する。そして、この局在型の表面プラズモンは、小突起群の突起間に増強電場を励起し、その増強電場と標的物との相互作用により表面増強ラマン散乱が生じる。このとき、小突起群の突起間隔が狭いため、突起間に強い増強電場が励起される。そのため、突起間に吸着した標的物が1個〜数個であっても、その増強電場によって強い表面増強ラマン散乱を生じさせることができる。
8.分析装置
図16に、本実施形態のセンサーチップを含む分析装置の構成例を示す。この分析装置(広義には分光装置)は、センサーチップ300(光デバイス)、レーザー光源310(広義には光源)、コリメーターレンズ320、偏光制御素子330、対物レンズ350(第1光学系)、ダイクロイックミラー340、集光レンズ360、エタロン370(広義には、340と360と370は第2光学系)光検出器380(検出器)、搬送部420、支持部430を含む。なお、本実施形態の分析装置は図16の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば搬送部)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
レーザー光源310は、表面プラズモンを励起するレーザー光を出射する。レーザー光の波長はセンサーチップ300の共鳴波長と等しく、例えば633nmである。レーザー光源310から出射されたレーザー光は、コリメーターレンズ320により平行光にされ、偏光制御素子330により直線偏光(またはラジアル偏光)にされる。偏光制御素子330を通過したレーザー光は、ダイクロイックミラー340によりセンサーチップ300の方向に導かれ、対物レンズ350で集光され、支持部430に支持されたセンサーチップ300に入射する。センサーチップ300の表面には、例えば金属格子や検出物質選択機構が形成される。この金属格子の周期は、レーザー光の波長よりも短い。
図16に示す矢印は、標的物の搬送方向を示す。標的物は、ファン(図示は省略)の駆動を制御することにより、搬入口400から搬送部420の内部に導入され、排出口410から搬送部420の外部に排出される。このとき、搬送部420を通過する標的物の一部が、支持部430にて支持されたセンサーチップ300に付着し、センサーチップ300の表面に標的物(図示は省略)が配置される。
金属格子表面へレーザー光が入射すると、レーザー光の振動にともなって自由電子が共鳴振動し、金属格子表面の近傍には表面プラズモンポラリトンを介して極めて強い増強電場が生じる。その金属格子表面に例えば1〜数個の標的物質が近接すると、その標的物質から表面増強ラマン散乱が発生する。センサーチップ300からのレイリー散乱光とラマン散乱光は、対物レンズ350を通過し、ダイクロイックミラー340によって光検出器380の方向に導かれる。この散乱光は、集光レンズ360で集光され、エタロン370(分光器)を通過し、光検出器380に入射する。そして、エタロン370により散乱光からラマン散乱光が分光され、光検出器380によりそのラマン散乱光が受光される。このようにして、散乱光がスペクトル分解され、標的物のスペクトル情報が得られる。
以上の分析装置によれば、周期の異なる金属微細構造を有するセンサーチップ300を備えることで、角度幅のある入射集光ビームと表面プラズモンポラリトンを効率よく結合できる。これにより、高効率で高感度な表面プラズモン共鳴センサーを実現し、表面増強ラマン散乱スペクトルから標的物の有無を検出することが可能になる。また、高感度であるため、低濃度の被測定物質であっても正確に定性や定量ができる。また、本実施形態のセンサーチップは薄膜タイプであり、狭い場所に配置できるため、分析装置の小型化が可能になる。
なお、本実施形態の分析装置は、麻薬や爆発物の検知、医療や健康診断、食品の検査に用いられるセンシング装置へ広く応用することが可能である。また、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無などのように、物質の吸着の有無を検出するアフィニティー・センサー等として用いることができる。
9.センサーチップの配置位置
上述の分析装置では、センサーチップ300を着脱式にすることが可能である。その場合、センサーチップ300の表面を集光ビームの集光面(焦点からずれた位置)に合わせるために、オートフォーカス等の付加的な機構が必要となってしまう。
この点、図17に示すように、集光ビームの焦点の上下どちらかにオフセットを設けることで、着脱のたびにセンサーチップ300を集光面に合わせる操作を不要にできる。具体的には、センサーチップ300は、焦点(集光点)より対物レンズ350側の位置A、または焦点より対物レンズ350の反対側の位置Bのいずれかに配置される。これにより、分析装置の構成を簡素にできる。
また、センサーチップ300の配置を位置Aと位置Bで入れ替えることで、同じ周期構造のセンサーチップ300であっても、表面プラズモンポラリトンの伝搬方向を変えることができる。例えば、図11に示すように、P1>P2>P3の金属凹凸構造の場合、焦点の前の位置Aに置くと、励起された表面プラズモンポラリトンは中心から外側へ向かって伝搬する。一方、焦点の後の位置Bに置くと、励起された表面プラズモンポラリトンは外側から中心へ向かって伝搬する。
金属ナノ構造のセンシング応用では、センサーチップ300の中心へ表面プラズモンポラリトンを集中させて、中心においてのみ局所電場の強度を高めることは必ずしも必要ではない。中心のみ局所電場が増強されることは、センサーチップ300の感度均一性やセンシングの再現性と相反する場合があるためである。どのような物質をどのように検出するかというセンシングの用途に応じて、表面プラズモンポラリトンの伝搬方向を考慮し、金属凹凸構造の構成と配置位置を決めることが望ましい。
ここで、図17に示すように、センサーチップ300には、対物レンズ350の光軸と一致する光線を含む集光ビームが入射される。そして、対物レンズ350とセンサーチップ300は、対物レンズ350の光軸がセンサーチップ300の領域R1(図11等に示す領域R1)を通るように配置される。但し、本実施形態は、この場合に限定されず、入射角度に幅のある集光ビームがセンサーチップ300に入射されてさえいればよい。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(標的物、入射光、回折格子、導電体等)と共に記載された用語(標的物質、集光ビーム、金属格子、金属等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光デバイス、分析装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
100 基材、110 第1の突起群、120 第2の突起群、130 基材の表面、
140 ガラス基板、150 金属薄膜、160 金属格子、170 第3の突起群、
200 第1の小突起群、210 第2の小突起群、220 突起群の頂面、
230 突起群の突起間の底面、300 センサーチップ、310 レーザー光源、
320 コリメーターレンズ、330 偏光制御素子、
340 ダイクロイックミラー、350 対物レンズ、360 集光レンズ、
370 エタロン、380 光検出器、400 搬入口、410 排出口、
420 搬送部、430 支持部、
D1 第1の方向、D2 第2の方向、D3 法線方向、Dr ラジアル方向、
IA 入射領域、ki 入射光の波数、LB 入射ビーム、P1 第1の周期、
P2 第2の周期、P3 第3の周期、PS1 第1の短周期、
PS1 第2の短周期、R1 第1の領域、R2 第2の領域、R3 第3の領域、
θ1 第1の角度、θ2 第2の角度、λ1 共鳴波長、ω0 共鳴周波数

Claims (8)

  1. 光源と、
    電気伝導体の突起を仮想平面に対して平行な方向に沿って配列した突起群と、
    前記光源からの長λ1の光を前記突起群に向けて集光し、前記仮想平面に向かう垂線に対して第1の角度で入射する成分と前記第1の角度とは異なる第2の角度で入射する成分とを少なくとも含む入射光を前記突起群に向けて入射させる第1光学系と、
    前記光デバイスの前記突起群により散乱または反射された光の中からラマン散乱光を取り出す第2光学系と、
    前記第2光学系を介して受光された前記ラマン散乱光を検出する検出器と、
    を含み、
    前記突起群は、
    同心円状に配列され、前記同心円状の配列のラジアル方向において第1の周期で配列される突起と前記ラジアル方向において前記第1の周期とは異なる第2の周期で配列される突起とを少なくとも含み、
    前記第1の周期及び前記第2の周期は、
    前記入射光の前記波長λ1よりも短い周期であり、
    前記第1光学系は、
    前記第1の角度で入射する成分の前記入射光を前記第1の周期で配列される突起に入射させ、前記第2の角度で入射する成分の前記入射光を前記第2の周期で配列される突起に入射させ、
    前記突起群の材質と前記第1の周期と前記第2の周期と前記第1の角度と前記第2の角度は、
    前記第1の周期で配列される突起での前記表面プラズモン共鳴の共鳴波長と、前記第2の周期で配列される突起での前記表面プラズモン共鳴の共鳴波長とが、前記波長λ1となるように、設定されることを特徴とする分析装置。
  2. 請求項1において、
    前記突起群の配列方向は、
    前記入射光の偏光方向と同じ方向であることを特徴とする分析装置。
  3. 請求項において、
    前記入射光は、
    ラジアル偏光であり、
    前記突起群の配列方向は、
    前記ラジアル偏光の偏光方向と同じ方向であることを特徴とする分析装置。
  4. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記突起群は、
    前記第1の周期で配列される第1の突起群と、
    前記第2の周期で配列される第2の突起群と、
    を有し、
    前記第1の突起群は、
    第1の領域に設けられ、
    前記第2の突起群は、
    前記第1の領域に隣接する第2の領域に設けられることを特徴とする分析装置。
  5. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記第1の周期は、
    前記第2の周期よりも長い周期であることを特徴とする分析装置。
  6. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記第1の周期は、
    前記第2の周期よりも短い周期であることを特徴とする分析装置。
  7. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記突起群の頂面に、電気伝導体により形成される第1の小突起群を含み、
    前記第1の小突起群における突起間の間隔は、
    前記突起群における前記突起の配列周期よりも短いことを特徴とする分析装置。
  8. 請求項1乃至のいずれかにおいて、
    前記仮想平面に平行な面であって前記突起群の隣り合う突起間に、電気伝導体により形成される第2の小突起群を含み、
    前記第2の小突起群における突起間の間隔は、
    前記突起群における前記突起の配列周期よりも短いことを特徴とする分析装置。
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