JP5831405B2 - 熱間圧延方法及び熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び熱延鋼板の製造装置 - Google Patents

熱間圧延方法及び熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び熱延鋼板の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、熱間圧延方法及び熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び熱延鋼板の製造装置に関する。本発明は、特に、潤滑圧延を前提とした熱間圧延方法及び熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び熱延鋼板の製造装置に関する。
熱間仕上圧延機列において熱間圧延を行う場合、圧延条件によっては被圧延材表面が「肌荒れ」と呼ばれるような荒れた状態になり、品質不良が発生することがある。特に、仕上圧延機の下流側圧延機にて30%以上となるような高い圧下率で圧延を行う場合、肌荒れが発生し易くなる。また、高強度鋼の圧延等で圧延負荷が高い圧延を行う場合にも肌荒れが発生し易くなる。また、1本の被圧延材を圧延する際に、被圧延材の先端部よりも尾端部側で肌荒れが発生し易くなる傾向もある。
肌荒れ抑制のため、これまでに様々な対策がなされてきている。その中の効果的な対策の一つとして、圧延機のロール(ワークロールやバックアップロール。以下において同じ。)に潤滑剤を供給しながら圧延を行う潤滑圧延がある。従来は、肌荒れ抑制に必要な潤滑程度(潤滑剤の供給形態。以下において同じ。)が操業経験に基づいて設定されることが多い。このほか、圧延状況を計測し計算することによって潤滑程度を把握し、潤滑剤の供給量を調整する方法も開示されている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、圧延機の出側の板速度とロール回転速度とを計測し、圧延の先進率を求めて潤滑剤の供給量を調整する方法が開示されている。また、特許文献3には、圧延中の圧延荷重または圧延負荷トルクを計測して潤滑剤の供給量を調整する方法が開示されている。
特開平7−214119号公報 特許平9−155423号公報 特許平11−156410号公報
特許文献1乃至特許文献3に開示されている技術では、現在圧延されている材料(以下において、「当該圧延材」ということがある。)の定常状態における潤滑状態を調整可能である。しかしながら、これらの技術では次に圧延される材料(以下において、「次材」ということがある。)の噛み込み性は考慮されていない。
潤滑圧延を行った場合、当該圧延材の尾端部まで潤滑剤を供給したまま圧延すると、次材の先端部がワークロールに噛み込まれる時に、ワークロールに過剰に残存した潤滑剤の影響によってスリップが発生し、操業トラブルが発生し易くなる。これまでは、当該圧延材の尾端部の圧延距離(ワークロールに噛み込まれていない尾端部の長さ)を十分に残した状態で潤滑剤をロールに供給するのを停止し、ロールに残存した潤滑剤を焼き切り(以下において、このような処理を「尾端部焼き切り」または単に「焼き切り」ということがある。)、さらに次材の先端部が圧延されるまでは潤滑剤の供給を停止した状態とすることで、次材の先端部を圧延する時のスリップを防止するという方法が用いられることが多かった。しかしながら、尾端部の圧延時に潤滑剤の供給を停止すると、尾端部の肌荒れ抑制の効果が得られ難くなり、肌荒れ発生部の切り下げなどの歩留まり悪化の原因となっていた。なお、尾端部焼き切りに必要な、当該圧延材の尾端部の圧延距離は、潤滑剤の種類や圧延条件にも左右されるが、一般的には全圧延長(当該圧延材の長手方向長さ)の10%以上の長さに達することが多い。
そこで、本発明は、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制しつつ、次材の先端部噛み込み時におけるスリップ等の操業トラブルを抑制することが可能な、熱間圧延方法及び熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び熱延鋼板の製造装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、熱間圧延での潤滑圧延について検討した結果、潤滑剤の供給量が比較的少ない場合でも、潤滑剤による肌荒れ改善効果を十分に有することを知見した。さらに、そのような潤滑剤の供給を当該圧延材の最尾端部が圧延される直前まで安定して実現するとともに、当該圧延材の最尾端部の圧延終了直前に潤滑剤の供給を停止し、さらに次材の最先端部が噛み込まれるまで潤滑剤の供給を停止したままとすることにより、従来実施されていたような、尾端部焼き切りを行わずとも、次材の先端部を圧延する時の噛み込み性を確保可能であることを知見した。本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。
本発明の第1の態様は、潤滑剤がワークロールに供給されている熱間仕上圧延機にて被圧延材に潤滑圧延を行う際に、ワークロールの出側における被圧延材の速度、及び、ワークロールの周速度を用いて算出された先進率FS、理論計算により算出される無潤滑状態の先進率FSA、理論計算により算出される圧延荷重低減が飽和する状態にまで潤滑剤を多量に供給した場合の先進率FSBを用いて下記式で表わされる変数xが0.4以上0.9以下を満たす範囲内の値となるように、潤滑剤の供給量を調整する、熱間圧延方法である。
x=(FS−FSB)/(FSA−FSB)
本発明の第1の態様及び以下に示す本発明の他の態様(以下において、これらをまとめて単に「本発明」ということがある。)において、「熱間仕上圧延機」は、4段又は6段の圧延ロールを備えた圧延機(スタンド)が5〜7スタンド連続で備えられている熱間仕上圧延機列に備えられるスタンドのうち、被圧延材の進行方向下流側に配置された3スタンド程度の仕上後段スタンドであっても良く、仕上後段スタンドよりも被圧延材の進行方向上流側に配置された仕上前段スタンドであっても良い。
また、上記本発明の第1の態様において、上記範囲内で、変数xが満たすべき数値範囲を、被圧延材(当該圧延材)の次に圧延される被圧延材(次材)の圧下率及び/又は板厚に応じて変更することが好ましい。
また、上記本発明の第1の態様において、少なくともワークロールの10回転分の被圧延部(被圧延材の尾端側の部位)をワークロールの上流側に残した状態よりも前に、潤滑剤の量の調整を実施完了していることが好ましい。
また、上記本発明の第1の態様において、少なくともワークロールの10回転分の被圧延部(被圧延材の尾端側の部位)をワークロールの上流側に残した状態よりも前に、先進率FSを算出し、算出された先進率FSを用いて算出される変数xが上記範囲内の値である場合には、被圧延材の尾端部を圧延する直前まで潤滑剤を供給しながら潤滑圧延を行い、算出された先進率FSを用いて算出される変数xが上記範囲内の値でない場合には、潤滑剤の供給を直ちに停止することが好ましい。
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様にかかる熱間圧延方法を用いて鋼板を熱間圧延する工程を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造方法である。
本発明の第3の態様は、ワークロールと、該ワークロールへと供給される潤滑剤を放出する潤滑剤供給手段と、ワークロールの出側における被圧延材の速度を特定する板速度特定手段と、ワークロールの周速度を特定する周速度特定手段と、板速度特定手段により特定された被圧延材の速度、及び、周速度特定手段により特定されたワークロールの周速度を用いて算出される先進率FSが満たすべき条件を特定し、特定された条件に沿って潤滑剤の量を調整する潤滑剤制御手段と、を有し、上記条件が、先進率FSと、理論計算により算出される無潤滑状態の先進率FSA、理論計算により算出される圧延荷重低減が飽和する状態にまで潤滑剤を多量に供給した場合の先進率FSBとを用いて下記式で表わされる変数xが0.4以上0.9以下を満たす範囲内の値になることである、熱間仕上圧延機である。
x=(FS−FSB)/(FSA−FSB)
また、上記本発明の第3の態様において、上記範囲内で、変数xが満たすべき数値範囲が、被圧延材(当該圧延材)の次に圧延される被圧延材(次材)の圧下率及び/又は板厚に応じて変更されることが好ましい。
また、上記本発明の第3の態様において、少なくともワークロールの10回転分の被圧延部(被圧延材の尾端側の部位)をワークロールの上流側に残した状態よりも前に、潤滑剤の量の調整を実施完了させることが好ましい。
また、上記本発明の第3の態様において、少なくともワークロールの10回転分の被圧延部(被圧延材の尾端側の部位)をワークロールの上流側に残した状態よりも前に、先進率FSが算出され、算出された先進率FSを用いて算出される変数xが上記範囲内の値である場合には、被圧延材の尾端部を圧延する直前まで潤滑剤を供給するように、潤滑剤制御手段によって潤滑剤の量が制御され、算出された先進率FSを用いて算出される変数xが上記範囲内の値でない場合には、潤滑剤制御手段によって潤滑剤の供給が直ちに停止されることが好ましい。
本発明の第4の態様は、上記本発明の第3の態様にかかる熱間仕上圧延機と、該熱間仕上圧延機の出側に配設された冷却装置と、を備える、熱延鋼板の製造装置である。
本発明では、先進率FSが、先進率FSA及び先進率FSBを用いて特定される条件を満たすように、潤滑剤の供給量が調整され、先進率FSが満たすべき条件は、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制可能であり、且つ、次材の先端部の噛み込み性を向上させる観点から決定される。したがって、本発明によれば、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制しつつ、次材の先端部噛み込み時におけるスリップ等の操業トラブルを抑制することが可能な、熱間圧延方法及び熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び熱延鋼板の製造装置を提供することができる。加えて、圧延荷重を計測するだけでなく、圧延機出側の鋼板速度の計測結果を用いて先進率を算出し、潤滑供給量を調整して先進率を制御することにより、本発明によれば、肌荒れを抑制する条件をより確実に実現することができる。
本発明の熱間仕上圧延機10を説明する図である。 本発明の熱延鋼板の製造装置100を説明する図である。 圧延を行う際の圧延荷重の変化の例を示した図である。 潤滑油濃度と単位幅圧延荷重との関係を説明する図である。 潤滑油濃度と先進率との関係を説明する図である。 面圧分布を説明する図である。 x及び次材の圧下率と噛み込み不良の有無との関係を説明する図である。 x及び次材の入側板厚と噛み込み不良の有無との関係を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。以下の説明において、ワークロールと被圧延材との接触部を「ロールバイト」ということがある。
図1は、本発明の熱間仕上圧延機10を説明する図である。図1に示した熱間仕上圧延機10は、4段圧延機を用いた、熱間仕上圧延機列の最終スタンド(熱間仕上圧延機列に備えられる複数のスタンドのうち被圧延材の進行方向最下流に配置されたスタンド)を想定した図である。被圧延材Sは、潤滑ヘッダー5が配置されている側からセンサー9bが配置されている側へ向けて圧延される。
熱間仕上圧延機10は、一対のワークロール1a、1a、及び、該ワークロール1a、1aにそれぞれ接触するバックアップロール1b、1bと、ワークロール1a、1aに向けて潤滑剤を供給する、ワークロール1a、1aのロールバイト入側に設置された潤滑ヘッダー5、5と、被圧延材Sに付与される圧延荷重Pを測定するセンサー9a(ロードセル)と、被圧延材Sの移動速度(以下において、「鋼板速度」ということがある。)を測定するセンサー9bと、ワークロール1a、1aの回転数を計測するセンサー9cと、潤滑ヘッダー5、5からワークロール1a、1aに向けて供給される潤滑剤の量を調整可能な潤滑剤調整手段11と、を有している。潤滑剤ヘッダー5、5から放出される潤滑剤は、水(又は温水。以下において「水」という。)と混合された潤滑剤である。潤滑剤に含まれる水は、給水配管2から、遠隔操作可能なバルブ3を経由して強制混合機4へと供給される。一方、水と混合される潤滑油は、潤滑剤供給配管6から、流量制御装置7及び遠隔操作可能なバルブ8を経由して強制混合機4へと供給される。強制混合機4では、供給されてきた水と潤滑油とを混合(油水混合)し、油水混合された潤滑剤を潤滑ヘッダー5、5へと供給する。潤滑ヘッダー5、5から放出される潤滑剤の供給のON/OFFは、バルブ8、又は、バルブ8及びバルブ3を操作することによって切替えることができ、バルブ8、又は、バルブ8及びバルブ3の動作を潤滑剤調整手段11によって制御することによって、潤滑ヘッダー5、5から放出される潤滑剤の量を制御することができる。
熱間仕上圧延機10では、センサー9cによって計測されたワークロール1a、1aの回転数、及び、センサー9bによって計測された被圧延材Sの鋼板速度に関するデータが、潤滑剤調整手段11へと送られる。潤滑剤調整手段11では、センサー9cから送られてきたデータを用いてワークロール1a、1aの周速度が算出され、当該周速度と、センサー9bから送られてきた鋼板速度とを用いて、被圧延材Sの先進率FSが算出される。そして、この先進率FSと、理論計算により算出した無潤滑状態の先進率FSAと、理論計算により算出した圧延荷重低減が飽和する状態にまで潤滑剤を多量に供給した場合の先進率FSBとが、例えば、
FS=xFSA+(1−x)FSB (但し、0.4≦x≦0.9) …式1
を満たすように、潤滑ヘッダー5、5から放出される潤滑剤の量を制御する。
図2は、熱間仕上圧延機10を備える熱延鋼板の製造装置100を説明する図である。図2では、複数の熱間仕上圧延機10、10、…を備えた熱間仕上圧延機列20の上流側に配設される粗圧延機や、冷却装置30の下流側に配設される巻き取り機の記載を省略しており、熱間仕上圧延機10、10、…も簡略化して示している。図2において、被圧延材Sは熱間仕上圧延機列20から冷却装置30の方向へと移動する。図2に示したように、本発明の熱延鋼板の製造装置100は、複数の熱間仕上圧延機10、10、…を具備する熱間仕上圧延機列20と、該熱間仕上圧延機列20の下流側に隣接して配設された冷却装置30と、を備えている。製造装置100では、例えば、熱間仕上圧延機列20を構成する熱間仕上圧延機10、10、…のうち、被圧延材Sの進行方向下流側に配置された3つの熱間仕上圧延機10、10、10で圧下率が30%以上の高圧下圧延を行った後、当該3つの熱間仕上圧延機10、10、10のうち最も下流側に配設されている熱間仕上圧延機10による仕上圧延が終了してから0.2秒以内に、冷却装置30を用いて、600℃/s以上(好ましくは1000℃/s以上)の冷却速度で被圧延材Sを急冷する。このようにすることで、超微細結晶粒を有する鋼板(超微細粒鋼)を製造することが可能になる。さらに、製造装置100には、熱間仕上圧延機10、10、…が備えられているので、被圧延材(超微細結晶粒を有する鋼板)の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制しつつ、次材の先端部噛み込み時におけるスリップ等の操業トラブルを抑制することが可能になる。したがって、本発明によれば、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制しつつ、次材の先端部噛み込み時におけるスリップ等の操業トラブルを抑制することが可能な、熱延鋼板の製造装置100を提供することができる。
図3は、1コイルの圧延を行う際の圧延荷重の変化の例を示した図である。図3には、被圧延材の先端部を圧延開始する際には、噛み込み時のスリップ防止のため潤滑剤の供給を停止し、先端部の噛み込み終了後に、図中の潤滑供給開始点に達してから潤滑剤の供給を始める場合の圧延荷重の変化を示している。図3のCASE1は潤滑剤の供給量が比較的少ない場合を説明する例であり、図3のCASE2はCASE1よりも潤滑剤の供給量を多くした場合を説明する例である。
被圧延材の肌荒れ抑制を主目的とする場合には、潤滑剤による圧延荷重低下はさほど大きくなくても良く、次材の噛み込み性を犠牲にしないようにするために、潤滑剤の供給量を低減した「軽度な潤滑状態」を実現させることが有効である。この「軽度な潤滑状態」は、各種圧延条件、ロールの温度、圧延速度等によって大きく変動するため、事前に高精度に予測することは困難である。したがって、軽度の潤滑状態を把握するためには、圧延中に圧延荷重や先進率を把握することが有効である。圧延荷重は、センサー9aによってほぼ時間遅れなく計測することが可能である。また、先進率は、センサー9bによって圧延機出側の鋼板速度を計測し、この計測結果とワークロールの周速度との比を求めることにより、僅かな時間遅れで特定することができる。本発明では、潤滑状態を監視しながら、上記式1を満たすように、潤滑ヘッダー5、5から放出される潤滑剤の供給量を制御することにより、次材の噛み込みが問題にならない程度の潤滑を行い、且つ、肌荒れ改善効果が得られる状態を実現する。潤滑剤の供給量をこのように制御することにより、操業トラブルの低下及び尾端部の表面品質要因切り下げ長の短縮(製品歩留まりの向上)を実現する。
潤滑ヘッダー5、5からワークロール1a、1aに向けて潤滑剤を供給し始めてから時間が経過すると、図3に潤滑定常状態と示したように、圧延荷重が安定した状態に到達する。本発明では、この潤滑定常状態の時に、先進率FSを算出する。圧延機出側の鋼板速度は通常は測定されないことが多いが、センサー9bとしてレーザー板速度計等を用いることにより、鋼板速度を計測することが可能である。本発明では、計測された圧延機出側の鋼板速度と、算出されたワークロール1a、1aの周速度とを用いて、先進率FSを求めることができる。
さらに、本発明では、無潤滑状態の先進率FSA、及び、圧延荷重の低減が飽和する状態にまで潤滑剤を多量に供給した場合(以下において、「強潤滑の場合」ということがある。)の先進率FSBを予め算出しておく。例えば圧延材質、仕上板厚、各スタンド圧下率配分、温度、鋼板速度などを製品製造と同一条件として圧延・潤滑の試験圧延を実施して、無潤滑条件と強潤滑条件にて先進率を測定しておけばよい。例えば、上記試験圧延で被圧延材の前半部分は無潤滑で圧延を行って先進率を測定すれば無潤滑状態のFSAを得ることができ、また、後半部分で潤滑剤を供給し、圧延荷重低下が飽和するまで潤滑剤の供給量を増加させた状態として先進率を測定すればFSBを算出することができる。以上のような試験圧延を各圧延条件で実施し、例えばデータベース化しておくことにより、製品製造時の圧延条件を参照してFSA及びFSBを算出できる。また、実際にそのようにして求めたFSA、FSBは無潤滑時と強潤滑時の摩擦係数を用いた2次元圧延理論との差は小さいので、無潤滑時と強潤滑時の摩擦係数を用いれば2次元圧延理論を用いた計算でも容易に求めることが可能である。
被圧延材の圧下率35%且つ被圧延材の出側板厚2.6mmの場合における、潤滑油濃度と単位幅圧延荷重との関係を図4に示す。図4に示したように、圧延荷重は、潤滑油濃度がある濃度以上になると徐々に低下し、ある濃度にて圧延荷重低減が飽和する。図4において、潤滑油濃度=0%の時の単位幅圧延荷重を無潤滑状態の圧延荷重PAとし、圧延荷重低減が飽和した時の単位幅圧延荷重を強潤滑の場合の圧延荷重PBとする。
被圧延材の圧下率35%且つ被圧延材の出側板厚2.6mmの場合における、潤滑油濃度と先進率との関係を図5に示す。なお、先進率は、センサー9bによって測定した被圧延材Sの鋼板速度、並びに、センサー9cによって測定したワークロール1a、1aの回転数、及び、ワークロール1a、1aの直径を用いて算出したワークロールの周速度を用いて算出した。
図4と図5とを比較すると、潤滑油濃度=0%の時の先進率をFSAとするとき、潤滑油濃度を増加させていくと、圧延荷重が下がり始めるよりも少し低い潤滑油濃度で、先進率がFSAよりも小さくなり始め、圧延荷重が最低値まで低下するときの潤滑油濃度よりも低い濃度の時に、先進率は最小になる。先進率が最小になった潤滑油濃度よりも潤滑油濃度を高くすると、先進率は徐々に増大し、圧延荷重低減が飽和する潤滑油濃度よりも高い潤滑油濃度では、先進率がFSBに達し、その後、先進率は変化しなくなる。
均一な摩擦係数分布を仮定した二次元圧延理論にて圧延荷重及び先進率の計算結果が一致するのは、図4及び図5に示すグラフの左右両端、すなわち無潤滑の条件、及び、圧延荷重低減が飽和した条件の場合であり、潤滑油濃度がその中間の場合、先進率は圧延荷重から計算される値よりも小さくなる。
このような現象が生じるのは、以下に説明する現象が発生しているためであると推測される。
圧延荷重低減が飽和する濃度よりも潤滑油濃度が低い場合、潤滑剤はロールバイト入側に存在するものの、ロールバイト出側に達するまでに消費され尽くされてしまう状態(以下において、「焼き切れた状態」ということがある。)であったと考えられる。図6に示すように、ロールバイト入側でのみ潤滑剤が作用して面圧が低下すると、面圧がピークとなりロールの周速度と被圧延材の鋼板速度とが一致する中立点が、ロールバイト出側に向かって移動する。このため、先進率が、均一荷重を仮定した圧延荷重低減から算出される先進率よりも低くなると考えられる。これに対し、潤滑油濃度が高い場合には、ロールバイト出側でも潤滑剤が作用して面圧が低下するため、中立点はロールバイトの上流側に向かって戻っていくことになると説明できる。
すなわち、軽度の潤滑状態では、潤滑剤がロールバイト内で焼き切れた状態になるので、被圧延材の尾端部の圧延が終了する直前に潤滑剤の供給を停止して、次材の先端部を噛み込ませた場合でも、スリップトラブルがほとんど発生しないと考えられる。また、軽度の潤滑状態では、ロールバイト入側部分にだけでも潤滑剤が供給されているため、被圧延材の肌荒れを抑制する効果があると考えられる。
軽度の潤滑状態になっている場合には、従来のような長い焼き切り時間をとらなくても次材の噛み込み不良は生じない。そのため、図3のCASE1に示したように、尾端部を圧延する際にも潤滑剤の供給を継続することにより表面品質の圧下を防止し、歩留まりロスを低減することが可能になる。これに対し、図3のCASE2に示したように、測定した圧延荷重PがP<xPA+(1−x)PBである場合(この状態は、FS<xFSA+(1−x)FSBである場合に相当する。)には、次材の噛み込み不良が生じる虞がある。そのため、図4のCASE2の場合には、尾端部を圧延する前に潤滑剤の供給を停止し、次材の先端部が噛み込まれるまでは潤滑剤の供給を停止したままにする。
本発明者らは、実験により、圧延荷重の低下がほとんど起こっていなくても、先進率が少し低下した状態であれば、肌荒れを抑制可能な条件があることを知見した。例えば、図4及び図5において潤滑油の濃度が0.4%程度の場合、図4の圧延荷重は僅かに下がっているのに対し、図5の先進率は大きく低下している。この潤滑条件でも十分に肌荒れを抑制可能であるが、圧延荷重の低下が僅かなので、潤滑剤の供給量を、圧延荷重のみを計測して制御していると、肌荒れを抑制できない状態にまで、潤滑剤の供給量を低減しすぎてしまう場合がある。肌荒れを抑制できるのは先進率が少し低下した状態以降であるため、圧延機出側の鋼板速度の計測結果を用いて先進率を算出し、潤滑供給量を調整して先進率を制御することにより、肌荒れを抑制する条件をより確実に実現することができる。
具体的には、定常部潤滑圧延状態において、圧延機出側の鋼板速度を計測してロール周速との差から先進率FSを計算する。また、無潤滑状態の先進率FSA、及び、潤滑剤を荷重低減が飽和する状態にまで多量に供給した場合の先進率FSBを、理論計算により予め求めておく。そして、FS、FSA、及び、FSBが、
FS=xFSA+(1−x)FSB (但し、0.4≦x≦0.9) …式1
を満たすように、潤滑剤の量を調整する。ここで、x<0.4の場合には、次材の先端部が噛み込まれる際にスリップが発生する虞があり、0.9<xの場合には、潤滑剤による肌荒れ抑制効果が小さくなる虞がある。
本発明において、FSが上記式1を満たす条件となっている場合、必要に応じて、FSが上記式1を満たす範囲内で、潤滑剤の供給量を調整しても良い。この調整は、肌荒れ抑制効果が得られやすい形態にする観点から、潤滑圧延開始後極力早い段階で実施し、潤滑剤の供給形態を早期に安定させることが好ましい。
上記式1のxは、次材の圧下率や、次材の入側板厚に応じて、値を調整する(適宜変更する)ことが好ましい。例えば、次材の圧下率が大きい場合や、次材の入側板厚が厚いような場合、さらには、次材の圧下率が大きく且つ次材の入側板厚が厚い場合には、次材の噛み込み性を安定させたい。そのため、これらの場合、例えば、xを中央値(0.65)よりも上限値(0.9)に近い値にすることが好ましい。すなわち、次材の圧下率及び入側板厚とxとの間には正の相関があることが好ましい。
また、本発明において、潤滑剤の供給量調整は、尾端部の焼き切り有無を判定できるタイミングまでに実施を完了しておくのが好ましい。尾端部の焼き切り有無を判定するタイミングは、以下に示す考え方に沿って決定することができる。
潤滑剤がワークロールに過多に付着した状態から、潤滑剤の供給を停止した状態で圧延を行った場合、ワークロールと被圧延材との接触回数が増大するほど、焼き切り効果(潤滑剤の残存量を低減させる効果)が顕著になり、例えばワークロールを10回転させると大半の潤滑剤が残存していない状態にすること、すなわち、尾端部の焼き切り効果が現れ、次材の噛み込み性を大きく改善することが可能になる。したがって、本発明では、ワークロールの上流側に存在している被圧延材の部分(以下において、「未圧延部」ということがある。)の長さが、ワークロールの全周の10倍に相当する長さ以上である時に、尾端部の焼き切り判定をして潤滑剤のワークロールへの供給停止を完了させることが好ましい。ただし、あまりにも早いタイミングでワークロールへの潤滑剤の供給を停止してしまうと、被圧延材の尾端部に無視できないほどの品質不良部が発生することが懸念される。そのため、未圧延部の長さが、ワークロールの全周の20倍に相当する長さ以上である場合には、潤滑剤の供給を停止しないことが好ましい。
また、算出した先進率FSが上記式1の右辺よりも小さい場合には、次材の噛み込み不良が生じる虞があるため、未圧延部が多く残っている場合には、潤滑剤の量を低減することにより、上記式1を満たすようにすれば良い。これに対し、例えば、未圧延部の長さが短い場合には、潤滑剤の量を低減する制御を行うのみでは次材の噛み込み不良の抑制には不十分になる虞がある。そこで、次材の噛み込み不良を抑制しやすい形態にするため、本発明では、算出した先進率FSが上記式1を満たさない場合には、直ちに潤滑剤の供給を停止しても良い。
被圧延材の先端部を無潤滑にて圧延した際に、無潤滑の状態では上記式1のxが上限値(0.9)を超えることが想定され、潤滑剤の供給を開始することにより、上記式1を満たす状況になることが想定される。ここで、ワークロールの状態や計測精度等の様々な要因により、無潤滑状態であっても上記式1を満たしたり、xが上記式1における下限値(0.4)に満たなかったりすることも想定され得る。無潤滑状態であるにもかかわらず、FSがx=0.4とした場合の式1の右辺よりも小さい場合、無潤滑でも摩擦係数が低下していることも想定され、さらに摩擦係数を低下させる事態は回避したい。そこで、このような場合には潤滑剤を供給しないことが好ましい。これに対し、無潤滑状態であるにもかかわらず、FSが上記式1を満たす場合、肌荒れ抑制のためには少しでも潤滑剤を供給することが好ましい。そこで、このような場合には上記式1を満たす範囲内で潤滑剤の供給を開始することが好ましい。
本発明において、式1を満たすどの状態を制御目標とするか、には自由度がある。例えば、特に肌荒れ抑制の効果が重視される鋼種の場合には、xの値を、中間値(0.65)よりも下限値(0.4)に近くすることが好ましく、特に次材噛み込み時のスリップを防止したい場合には、xの値を、中間値(0.65)よりも上限値(0.9)に近くすることが好ましい。
本発明の熱間仕上圧延機、及び、本発明の熱間圧延方法が適用される熱間仕上圧延機におけるロールの数は特に限定されない。いわゆる4段圧延機であっても良く、6段圧延機であっても良い。
ここで、圧延時の肌荒れは、特に高圧下圧延を行う際に発生し易くなる。通常、仕上前段スタンドでは高圧下圧延が行われ、圧延される板厚が厚いので、先端部の噛み込み時に摩擦係数が低下しているとスリップを起こしやすくなる。そのため、潤滑圧延を行う際には上述した尾端部での焼き切りが行われる。一方、仕上後段スタンドでは通常高圧下圧延を行うことが少ないため、肌荒れ発生が少なく、潤滑圧延も行われることが少ない。しかしながら、近年、被圧延材の特性向上等を目的として仕上後段スタンドにおける高圧下圧延が必要になることがあるため、仕上後段スタンドにおける高圧下圧延に伴う肌荒れ発生も問題になっている。仕上後段スタンドでは仕上前段スタンドと比較して、板厚が薄いため、先端部噛み込み時のスリップに対する許容範囲が広く、先端部噛み込みよりも尾端部の肌荒れ防止を重要視した操業が求められる。上述のように、本発明によれば、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制できるので、本発明の熱間仕上圧延機、及び、本発明の熱間圧延方法が適用される熱間仕上圧延機が、仕上後段スタンド、特に仕上最終スタンドである場合に本発明の効果が得られやすい。
また、本発明において、ロールに供給される潤滑剤の供給形態は特に限定されない。熱間仕上圧延において潤滑圧延は日常的に実施されており、合成エステルなどの潤滑剤を水又は温水に混ぜて強制混合状態とし、それをワークロールやバックアップロールの表面にスプレー噴射することが多い。本発明では、潤滑剤を停止した場合の応答性の早さや、ワークロールに過度に油を付着させない潤滑油濃度の範囲の広さ等の制御性を考慮すると、ロールバイト入側でワークロールに潤滑剤をスプレー塗布する形態とすることが好ましい。
なお、本発明によって潤滑剤の供給量を制御しようとしても、何らかの理由で目標通りに制御できない状況も出現する可能性がある。その場合には、尾端部の焼き切りが間に合う時点で潤滑剤供給を停止して焼き切りを行うか、尾端部圧延直前まで潤滑剤供給を継続するかを判断して対処すれば良い。
次材の噛み込み性が問題になると判断した場合には、焼き切り時間を十分に確保することで次材の先端部が噛み込まれる時のスリップ事故の低減を図り、そうでない場合は、当該圧延材の尾端部の圧延が終了する直前まで潤滑剤を供給することにより、歩留まり改善を図る。ここで、「当該圧延材の尾端部の圧延が終了する直前」とは、未圧延部の長さが、おおよそワークロールの全周に相当する長さである状態を意味し、潤滑剤の停止タイミングが遅れて圧延終了後にも潤滑剤の供給が停止されずにワークロールに潤滑剤が蓄積する事態を現実的に防止可能なタイミングを意味する。
本発明例及び比較例の試験結果を参照しつつ、本発明についてさらに説明を続ける。
本発明は、被圧延材の全長に亘って、潤滑剤量を制御する技術であるため、制御形態まで含めた実施例を示すのが困難である。そこで、被圧延材の全長に亘って潤滑剤供給量を固定した場合について実験を行い、xの値と被圧延材の表面品質及び次材噛み込み性との関係を調査した。また、次材の圧下率や板厚を変更することにより、xの値と次材の圧下率や板厚との関係についても調査した。
ワークロール径が760mmである4Hi圧延機(図1に示した形態の熱間仕上圧延機10)を用いて、0.15%C−0.7%Mn鋼を温度850℃前後で圧延した結果を表1乃至表3に示す。表1は、入側板厚が4mmである次材を出側板厚が2.6mmになるように圧延する条件を一定にしたまま、当該圧延材の入側板厚及び出側板厚、及び、潤滑油供給量の条件を変更した場合の結果を示している。また、表2は、潤滑油供給量の条件及び次材の圧下率を変更した場合の結果を示しており、表3は、潤滑油供給量の条件及び次材の入側板厚を変更した場合の結果を示している。表1乃至表3において、目視にて肌荒れが発生していると判断された場合に尾端部の表面品質を×とし、次材の先端部がワークロールに噛み込まれる際にスリップが発生した場合に次材噛み込みを×とした。
ここで、表1乃至表3に結果を示したすべての試験において、潤滑油としては、熱間圧延油として市販されている合成エステル系の潤滑油を用いた。潤滑油のキャリア水として40℃の水を上下ワークロールに合計40L/min供給し、表中の潤滑油供給量として潤滑圧延を行った。1000mmの被圧延材幅に対して潤滑剤はほぼ1000mm幅に均一に噴射した。
表1乃至表3に示したFSAは、無潤滑の圧延実績に基づき摩擦係数μを0.3〜0.35として計算した結果であり、表1乃至表3に示したFSBは、潤滑圧延実績に基づき摩擦係数μを0.15〜0.2として計算した結果である。また、表1乃至表3における「表面品質」は尾端部の表面品質を意味し、「噛み込み」は次材噛み込みを意味する。
Figure 0005831405
Figure 0005831405
Figure 0005831405
表1に示したように、次材の圧下率及び入側板厚の条件を一定にした場合、上記式1のxの条件(0.4≦x≦0.9。以下において同じ。)を満たしていたA3、A4、A13、及び、A14では、尾端部の表面品質が良好であり、且つ、次材の先端部が噛み込まれる際に噛み込み不良が発生しなかった。これに対し、xが上記式1における上限値(0.9。以下において同じ。)を超えたA1、A2、及び、A10乃至A12は潤滑剤の供給量が少なかったため、尾端部に肌荒れが発生し、xが上記式1における下限値(0.4。以下において同じ。)未満であったA5乃至A9、及び、A15乃至A18は次材の先端部が噛み込まれる際にスリップが発生した。以上の結果から、本発明によれば、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制しつつ、次材の先端部噛み込み時におけるスリップ等の操業トラブルを抑制することが可能であった。
表2に示したように、当該圧延材の入側板厚及び出側板厚の条件並びに次材の入側板厚の条件を一定にする一方、潤滑油供給量及び次材の圧下率を変更した場合、上記式1のxの条件を満たしていたB3、B4、B12乃至B14、B21乃至B24、及び、B30乃至B34では、尾端部の表面品質が良好であり、且つ、次材の先端部が噛み込まれる際に噛み込み不良が発生しなかった。これに対し、xが上記式1における上限値を超えたB1、B2、B10、B11、B19、B20、B28、及び、B29は潤滑剤の供給量が少なかったため、尾端部に肌荒れが発生し、xが上記式1における下限値未満であったB8、B9、B17、B18、B26、B27、B35、及び、B36は次材の先端部が噛み込まれる際にスリップが発生した。また、上記式1のxの条件を満たしていたものの、B5、B6、B7、B15、B16、及び、B25は、次材の先端部が噛み込まれる際にスリップが発生した。この原因を検討するため、表2に示した結果から得られるx及び次材の圧下率と、噛み込み不良の有無との関係を図7にまとめて示した。
図7より、次材の圧下率と次材に噛み込み不良が発生しないxの下限値との間には相関があり、次材の圧下率が高い場合には、次材の圧下率が低い場合よりもxの値を大きくすることにより、次材の噛み込み不良を防止しやすくなることが確認された。表2に示したように、xの値がB5と同じであっても、B14、B23、及び、B32のように、次材の圧下率が40%、35%、30%の場合には次材の噛み込み不良が生じない。同様に、xの値がB6やB15と同じであっても、B24及びB33のように、次材の圧下率が35%、30%の場合には、次材の噛み込み不良が生じない。同様に、xの値がB7、B16、及び、B25と同じであっても、B34のように次材の圧下率が30%の場合には、次材の噛み込み不良が生じない。以上より、B5乃至B7で次材の噛み込み不良が生じたのは、次材の圧下率を50%にする場合にはxを0.66よりも大きくすることが有効であったためであり、B15及びB16で次材の噛み込み不良が生じたのは、次材の圧下率を40%にする場合にはxを0.54よりも大きくすることが有効であったためであり、B25で次材の噛み込み不良が生じたのは、次材の圧下率を35%にする場合にはxを0.41よりも大きくすることが有効であったためと考えられる。
表3に示したように、当該圧延材の入側板厚及び出側板厚の条件並びに次材の圧下率の条件を一定にする一方、潤滑油供給量及び次材の入側板厚を変更した場合、上記式1の条件を満たしていたC3、C4、C12乃至C14、C21乃至C24、及び、C30乃至C34では、尾端部の表面品質が良好であり、且つ、次材の先端部が噛み込まれる際に噛み込み不良が発生しなかった。これに対し、xが上記式1における上限値を超えたC1、C2、C10、C11、C19、C20、C28、及び、C29は潤滑剤の供給量が少なかったため、尾端部に肌荒れが発生し、xが上記式1における下限値未満であったC8、C9、C17、C18、C26、C27、C35、及び、C36は次材の先端部が噛み込まれる際にスリップが発生した。また、上記式1のxの条件を満たしていたものの、C5、C6、C7、C15、C16、及び、C25は、次材の先端部が噛み込まれる際にスリップが発生した。この原因を検討するため、表3に示した結果から得られるx及び次材の入側板厚と、噛み込み不良の有無との関係を図8にまとめて示した。
図8より、次材の入側板厚と次材に噛み込み不良が発生しないxの下限値との間には相関があり、次材の入側板厚が厚い場合には、次材の入側板厚が薄い場合よりもxの値を大きくすることにより、次材の噛み込み不良を防止しやすくなることが確認された。表3に示したように、xの値がC5と同じであっても、C14、C23、及び、C32のように、次材の入側板厚が6mm、4mm、3mmの場合には次材の噛み込み不良が生じない。同様に、xの値がC6やC15と同じであっても、C24及びC33のように、次材の入側板厚が4mmや3mmの場合には、次材の噛み込み不良が生じない。同様に、xの値がC7、C16、及び、C25と同じであっても、C34のように次材の入側板厚が3mmの場合には、次材の噛み込み不良が生じない。以上より、C5乃至C7で次材の噛み込み不良が生じたのは、次材の入側板厚が8mmである場合にはxを0.66よりも大きくすることが有効であったためであり、C15及びC16で次材の噛み込み不良が生じたのは、次材の入側板厚が6mmである場合にはxを0.54よりも大きくすることが有効であったためであり、C25で次材の噛み込み不良が生じたのは、次材の入側板厚が4mmである場合にはxを0.41よりも大きくすることが有効であったためと考えられる。
以上より、本発明によれば、被圧延材の尾端部に近い部分の肌荒れを抑制しつつ、次材の先端部噛み込み時におけるスリップ等の操業トラブルを抑制することが可能な、熱間圧延方法及び該熱間圧延方法を用いる熱延鋼板の製造方法、並びに、熱間仕上圧延機及び該熱間仕上圧延機を備える熱延鋼板の製造装置を提供できる。
S…被圧延材
1a…ワークロール
1b…バックアップロール
2…給水配管(潤滑剤供給手段)
3、8…バルブ(潤滑剤供給手段)
4…強制混合機(潤滑剤供給手段)
5…潤滑ヘッダー(潤滑剤供給手段)
6…潤滑剤供給配管(潤滑剤供給手段)
7…流量制御装置(潤滑剤供給手段)
9a…センサー(荷重測定手段)
9b…センサー(板速度特定手段)
9c…センサー(ワークロール回転数測定手段)
10…熱間仕上圧延機
11…潤滑剤調整手段(且つ周速度特定手段)
20…熱間仕上圧延機列
30…冷却装置
100…熱延鋼板の製造装置

Claims (10)

  1. 潤滑剤がワークロールに供給されている熱間仕上圧延機にて被圧延材に潤滑圧延を行う際に、
    前記ワークロールの出側における前記被圧延材の速度、及び、前記ワークロールの周速度を用いて算出された先進率FS、理論計算により算出される無潤滑状態の先進率FSAと、理論計算により算出される圧延荷重低減が飽和する状態にまで潤滑剤を多量に供給した場合の先進率FSBを用いて下記式で表わされる変数xが0.4以上0.9以下を満たす範囲内の値となるように、前記潤滑剤の供給量を調整する、熱間圧延方法。
    x=(FS−FSB)/(FSA−FSB)
  2. 前記範囲内で、前記変数xが満たすべき数値範囲を、前記被圧延材の次に圧延される被圧延材の圧下率及び/又は板厚に応じて変更する、請求項1に記載の熱間圧延方法。
  3. 少なくとも前記ワークロールの10回転分の被圧延部を前記ワークロールの上流側に残した状態よりも前に、前記潤滑剤の量の調整を実施完了している、請求項1又は2に記載の熱間圧延方法。
  4. 少なくとも前記ワークロールの10回転分の被圧延部を前記ワークロールの上流側に残した状態よりも前に、前記先進率FSを算出し、
    算出された前記先進率FSを用いて算出される前記変数xが前記範囲内の値である場合には、前記被圧延材の尾端部を圧延する直前まで前記潤滑剤を供給しながら前記潤滑圧延を行い、
    算出された前記先進率FSを用いて算出される前記変数xが前記範囲内の値でない場合には、前記潤滑剤の供給を直ちに停止する、請求項1又は2に記載の熱間圧延方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱間圧延方法を用いて鋼板を熱間圧延する工程を有する、熱延鋼板の製造方法。
  6. ワークロールと、該ワークロールへと供給される潤滑剤を放出する潤滑剤供給手段と、前記ワークロールの出側における被圧延材の速度を特定する板速度特定手段と、前記ワークロールの周速度を特定する周速度特定手段と、
    前記板速度特定手段により特定された前記速度、及び、前記周速度特定手段により特定された前記周速度を用いて算出される先進率FSが満たすべき条件を特定し、特定された条件に沿って前記潤滑剤の量を調整する潤滑剤制御手段と、を有し、
    前記条件は、前記先進率FSと、理論計算により算出される無潤滑状態の先進率FSAと、理論計算により算出される圧延荷重低減が飽和する状態にまで潤滑剤を多量に供給した場合の先進率FSBとを用いて下記式で表わされる変数xが0.4以上0.9以下を満たす範囲内の値になることである、熱間仕上圧延機。
    x=(FS−FSB)/(FSA−FSB)
  7. 前記範囲内で、前記変数xが満たすべき数値範囲が、前記被圧延材の次に圧延される被圧延材の圧下率及び/又は板厚に応じて変更される、請求項に記載の熱間仕上圧延機。
  8. 少なくとも前記ワークロールの10回転分の被圧延部を前記ワークロールの上流側に残した状態よりも前に、前記潤滑剤の量の調整を実施完了させる、請求項6又は7に記載の熱間仕上圧延機。
  9. 少なくとも前記ワークロールの10回転分の被圧延部を前記ワークロールの上流側に残した状態よりも前に、前記先進率FSが算出され、
    算出された前記先進率FSを用いて算出される前記変数xが前記範囲内の値である場合には、前記被圧延材の尾端部を圧延する直前まで前記潤滑剤を供給するように、前記潤滑剤制御手段によって前記潤滑剤の量が制御され、
    算出された前記先進率FSを用いて算出される前記変数xが前記範囲内の値でない場合には、前記潤滑剤制御手段によって前記潤滑剤の供給が直ちに停止される、請求項6又は7に記載の熱間仕上圧延機。
  10. 請求項のいずれか1項に記載の熱間仕上圧延機と、該熱間仕上圧延機の出側に配設された冷却装置と、を備える、熱延鋼板の製造装置。
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