JP5831361B2 - 焼結原料の事前処理方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、焼結鉱の製造において、二系列の造粒ラインを用い、この両ラインで使用する生石灰の合計量を変えることなく、各造粒ラインで使用する生石灰の配合比を変えることで、焼結原料の造粒性を改善する方法が開示されている。
また、特許文献2には、生石灰による水和反応により消費される水分量を考慮することにより、焼結原料の水分制御の効果を高める方法が開示されている。
そして、特許文献3には、焼結原料の擬似粒化法において、フルード数((回転数)2×(ドラム径)/(重力加速度))を調整することや、撹拌時間(ミキサー滞留時間)を長くすることにより、擬似粒化が促進して、擬似粒化指数(GI)が高くなることが開示されている。ここで、回転数は、実質的に撹拌速度と同じものであることから、特許文献3には、造粒性向上に対して、撹拌速度や撹拌時間が各々影響することが記載されている。
更に、特許文献4には、焼結原料の前処理方法において、分散剤(界面活性剤)の添加割合を増加することで、擬似粒化が促進し、生産性が改善することが開示されている。
なお、近年は、劣質な鉄鉱石を粉砕処理し浮遊選鉱処理して得られる難造粒性の粉鉱石(即ち、微粉原料)が、焼結原料中に多量に配合されるようになり、この微粉原料の配合の違いによって、焼結原料の粒度変化(微粉量の変化)が大きくなってきている。このため、前記した従来の方法を使用しても、必ずしも造粒性が向上せず、もしくは造粒性向上のために生石灰や分散剤の使用量が増加して高コストになることが明らかになった。
鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%未満もしくは80質量%超の粒度の粉鉱石を用いる前記焼結原料中の粉鉱石の粒度を、500μmアンダーが50質量%以上80質量%以下の粒度範囲に変更する際、あるいは、鉄鉱石として前記粒度範囲にある粒度の粉鉱石を用いる前記焼結原料中の粉鉱石の粒度を、更に前記粒度範囲内で変更する際に、
撹拌羽根の直径が0.1〜1.5mである前記撹拌機を使用し、前記撹拌羽根の周速を1m/秒以上として、撹拌時における前記生石灰の添加量と前記水の量を、粒度変更前の前記焼結原料に対する設定値から変更する。
まず、本発明に想到した経緯について、図1を参照しながら説明する。
図1は、造粒性の改善に寄与する各因子(水分量、生石灰量、撹拌時間、撹拌速度、有機分散剤量)が、粉率低減効果に及ぼす影響を示している。
試験は、粉鉱石中の500μmアンダーの割合(量)を種々の値に設定した焼結原料に、バインダー(生石灰、有機分散剤)を添加し、これを万能ミキサー(自転する撹拌羽根の軸を公転させる竪型ミキサー)で撹拌した後、ドラムミキサーで造粒して行った。なお、種々の値に設定した500μmアンダーの割合(以下、設定量ともいう)は、40質量%、70質量%、90質量%、及び100質量%、である。また、造粒条件は、ドラムの周速:1.0m/秒、造粒時間:60秒、である。
なお、使用した原料に含まれる水分は、通常3〜10質量%の範囲である。
また、水分は、(原料中の水分量)/{(絶乾後の原料質量)+(原料中の水分量)}×100(質量%)、で算出した。
そして、周速は、万能ミキサー(混練機)とドラムミキサー(造粒機)において、回転するもの(羽根、ドラム等)で、一番速い部分の速度を意味する。
上記した造粒処理した焼結原料(2kg)を、150℃で1時間乾燥した後、0.5mm(500μm)の篩目(JIS Z8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に拠る)で分級し、0.5mmアンダーの割合を粉率と定義した。
試験は、焼結原料中の粉鉱石の500μmアンダーの割合が、40質量%、70質量%、90質量%、100質量%の4種類の焼結原料に対して、それぞれ生石灰を外掛けで0.5質量%から1.0質量%に変更した。その他の条件は、原料水分:7質量%、有機分散剤:0.1質量%、撹拌水分:9質量%、撹拌羽根の周速:1.5m/秒、撹拌時間:60秒、造粒時のドラムの周速:1.0m/秒、造粒時間:60秒、である。
この表1において、生石灰量が0.5質量%と1.0質量%のときの各粉率は、小数点以下第2位を四捨五入した数値である。また、粉率低減量は、生石灰量が0.5質量%と1.0質量%のときの各粉率の小数点以下第3位を四捨五入した数値を用い、生石灰量が0.5質量%のときの粉率から1.0質量%のときの粉率を引いた数値を、小数点以下2桁で表示した。
なお、ここでは、生石灰量を、0.5質量%から1.0質量%に0.5質量%変更した際の結果を示しているが、生石灰量を0.1〜6.0質量%の範囲内で0.5質量%変更した際の粉率低減効果も、略同じであった。また、生石灰量の変更を、0.5質量%から1.0質量%以上とした場合も、結果の傾向は同じであった。
なお、各因子の粉率低減量の絶対値は、各因子の粉率低減効果が最も高くなる点、即ち粉率低減効果が「1」となる点で、3〜5%となり、略同等であった。
(水分)
一般的に、水分が増加すると共に、水の表面張力による架橋効果により、造粒性が向上する傾向となる。
しかしながら、水分による微粉低減効果は、造粒物の形態の違いにより異なる。
原料中の微粉量が少ない場合(核となる粗粒子が多い場合)、造粒物の形態は、核粒子のまわりに微粉が付着する、いわゆる核粒子型となる。これにより、造粒物に衝撃が加わった際には、核が衝撃を吸収するため、衝撃による造粒物の粉化を抑制し、粉率が低くなる。
一方、原料中の微粉量が多い場合(核となる粗粒子が少ない場合)、造粒物の形態は、無核粒子型となる。これにより、造粒物に衝撃が加わった際には、衝撃の影響が顕著になり、微粉同士の付着力が密接に粉率に影響することになる。
従って、焼結原料中の500μmアンダーの割合が増加すると、衝撃による粉化が著しくなり、粉率が高くなるため、図1の×印に示すように、500μmアンダーの割合の増加と共に水分による粉率低減効果が小さくなる。
一般的に、生石灰が水と接触することで、一部の生石灰が吸湿し消化(消石灰化)して微粒化し、原料に均一に混ざり易くなる。また、生成した消石灰の一部が水に溶解することでも、原料に均一に混ざり易くなる。更に、生石灰の消化で生成する消石灰や、水の蒸発によって再晶出する消石灰は、10μm以下の微粒子(サブミクロンオーダーを含む)も多く含まれており、固体架橋によって、上記微粉原料の造粒性向上や造粒物の強度向上に大きく寄与する。
従って、焼結原料に添加する生石灰量が増加すると共に、造粒性は向上する傾向となる。
しかしながら、生石灰増加による微粉低減効果は、原料中の微粉量が少ない場合、造粒物の粉化が抑制されるため、生石灰の固体架橋による微粉同士の付着力向上の影響が小さくなり、一方、微粉量が多い場合、微粉同士の付着力が密接に粉率に影響することになる。
従って、焼結原料中の500μmアンダーの割合が増加すると、生石灰の固体架橋による微粉同士の付着力向上の効果がより顕著に発揮され、図1の△印に示すように、500μmアンダーの割合の増加と共に生石灰増加による粉率低減効果が大きくなる。
一般的に、撹拌時間が増加することで、生石灰等のバインダーが原料に均一に混ざり易くなるため、撹拌時間が増加すると共に、造粒性は向上する傾向となる。
しかしながら、撹拌時間増加による微粉低減効果は、原料中の微粉量が少ない場合、造粒物の粉化が抑制されるため、撹拌時間の増加に伴うバインダーの均一分散による微粉同士の付着力向上の影響が小さくなり、一方、微粉量が多い場合、微粉同士の付着力が密接に粉率に影響することになる。
従って、焼結原料中の500μmアンダーの割合が増加すると、撹拌時間の増加に伴うバインダーの均一分散による微粉同士の付着力向上の効果がより顕著に発揮され、図1の◆印に示すように、500μmアンダーの割合の増加と共に撹拌時間の増加による粉率低減効果が大きくなる。
一般的に、撹拌時間と同様、撹拌速度を増加することで、生石灰等のバインダーが原料に均一に混ざり易くなるため、撹拌速度が増加すると共に、造粒性は向上する傾向となる。
しかしながら、撹拌速度増加による微粉低減効果は、原料中の微粉量が少ない場合、造粒物の粉化が抑制されるため、撹拌速度の増加に伴うバインダーの均一分散による微粉同士の付着力向上の影響が小さくなり、一方、微粉量が多い場合、微粉同士の付着力が密接に粉率に影響することになる。
従って、焼結原料中の500μmアンダーの割合が増加すると、撹拌速度の増加に伴うバインダーの均一分散による微粉同士の付着力向上の効果がより顕著に発揮され、図1の○印に示すように、500μmアンダーの割合の増加と共に撹拌時間の増加による粉率低減効果が大きくなる。
一般的に、有機分散剤は、原料中に含まれる10μmアンダーの微粒子を分散させ、微粒子の固体架橋による微粉原料の造粒性向上や造粒物の強度向上に大きく寄与する。
従って、有機分散剤が増加するにつれて、造粒性は向上する傾向となる。
しかしながら、有機分散剤による微粉低減効果は、原料粒度の違いにより異なる。
近年増加傾向にある、劣質な鉄鉱石を選鉱処理して得られる難造粒性を有する微粉原料は、鉄鉱石の粉砕処理と水による比重選鉱処理を繰り返すことで、500μmアンダーの微粉は増加するものの、固体架橋により造粒性を向上させる10μmアンダーの微粒子は減少する。このため、500μmアンダーの微粉が少ない場合は、相対的に10μmアンダーの微粒子が多くなり、有機分散剤による微粒子分散効果(造粒性向上効果)が発揮されるが、500μmアンダーの微粉が多い場合は、相対的に10μmアンダーの微粒子が減少し、有機分散剤による微粒子分散効果が発揮されなくなる。
従って、図1の*印に示すように、焼結原料中の500μmアンダーの割合が増加すると共に、有機分散剤の増加による粉率低減効果は小さくなる。
しかし、核粒子型と無核粒子型との間の造粒物が形成される中間的な粒度を有する焼結原料の造粒方法については、議論されておらず、特に、鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%以上80質量%以下の粒度の粉鉱石を用いる焼結原料については、どのように造粒を行えば効率的な造粒できるかが分かっていなかった。
また、造粒を行う焼結原料は、常に同じ粒度を有する焼結原料が使用されるものではなく、例えば、粉鉱石銘柄や原料配合の変更により、焼結原料の粒度が変更されている。
即ち、生石灰と焼結原料とを撹拌機に装入して、水の存在下で撹拌する焼結原料の事前処理方法であり、鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%未満もしくは80質量%超の粒度の粉鉱石を用いる焼結原料中の粉鉱石の粒度を、500μmアンダーが50質量%以上80質量%以下の粒度範囲に変更する際、あるいは、鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%以上80質量%以下の粒度範囲にある粒度の粉鉱石を用いる焼結原料中の粉鉱石の粒度を、更にこの粒度範囲内で変更する際に、撹拌時における生石灰の添加量と水の量を、粒度変更前の焼結原料に対する設定値から変更する。
以下、詳しく説明する。
また、上記した粒度範囲にある粒度の粉鉱石を用いる焼結原料中の粉鉱石の粒度を、更にこの粒度範囲内で変更する場合もある。この変更は、粉率の変化が顕著に現れる場合、例えば、500μmアンダーの割合が5質量%以上変動した場合に行う(500μmアンダーの割合が、例えば、55質量%から50質量%又は60質量%へ、また70質量%から65質量%又は75質量%へ、減少又は増加した場合に行う)。
・現在使用中の焼結原料中の粉鉱石の銘柄Aを、銘柄Bに変更する場合。
・焼結原料として使用する複数の鉱石種の配合比率を変更する場合。
・操業時の自然変動で、焼結原料中の粉鉱石の粒度が±数質量%程度変動(粉率が変動)する場合。
そして、設定値の変更は、上記したように、焼結原料中の粉鉱石の粒度を変更する際に行うが、遅くとも、次の粒度変更(例えば、配合変更)までに行えばよい。具体的には、焼結原料中の粉鉱石の粒度の変更直後や、粒度の変更をした後に、設定値を変更すればよいが、粉率が部分的に悪化しないように(粉率が連続的に安定するように)、安全代を考慮して、粒度の変更直前や、その手前で、設定値を変更することもできる。
なお、設定値の変更は、造粒性を改善できるように、設定値を上昇させることは勿論であるが、造粒性が悪化しない範囲内で、設定値を低下させることもできる。この設定値の変更は、上記した図1の試験条件で示した各因子の範囲内で、それぞれできる。
なお、使用する撹拌機は、撹拌速度(撹拌羽根の周速)を1m/秒以上にできるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、前記した万能ミキサーの他に、従来公知のアイリッヒミキサー、レディゲミキサー、パドルミキサー等を使用できる。この撹拌速度の上限値は、世の中で一般的に使用されている撹拌機を考慮すれば、例えば、35m/秒程度である。また、撹拌羽根の直径は、0.1〜1.5m程度である。
この難造粒性微粉原料が、通常の鉄鉱石と異なる点は、10μmアンダーが5質量%以下であることからも明らかなように、10μmアンダーの微粒子が極めて少ない点であり、例えば、鉄鉱石の粉砕処理と水による比重選鉱処理を繰り返すことで、この特徴が得られる。
上記した粒度構成、即ち10μmオーバーかつ500μmアンダー程度に揃った難造粒性微粉原料を造粒すると、隣接する原料粒子の間に空間が形成される。
従って、上記した粒度構成を有する難造粒性微粉原料に、本発明の焼結原料の事前処理方法を適用することで、本発明の効果がより顕著になる。
試験は、焼結原料にバインダー(生石灰、有機分散剤)を添加し、これを前記した万能ミキサーで撹拌した後、ドラムミキサーで造粒して行った。なお、各因子(水分量、生石灰量、撹拌時間、撹拌速度、有機分散剤量)の量の算出方法は、前記した図1と同様の方法で行い、また、造粒時の条件は、前記した図1の条件と同一とした。
評価は、前記した500μmアンダーの割合を粉率(質量%)と定義して行った。
そこで、生石灰の添加量を0.5質量%から1質量%へ、水の量を9質量%から9.5質量%へ、それぞれ増加(変更)したところ、粉率が25.6質量%まで低下した(実施例1)。一方、生石灰の添加量のみを増加した場合(比較例1)と、生石灰及び有機分散剤の添加量を増加した場合(比較例2)の粉率は、それぞれ27.4質量%、25.9質量%まで低下したが、実施例1よりも低下量が小さかった。
そこで、生石灰の添加量を1.5質量%から3質量%へ、水の量を9.5質量%から11質量%へ、それぞれ増加(変更)したところ、粉率が28.8質量%まで更に低下した(実施例2)。一方、生石灰の添加量のみを増加した場合(比較例3)と、生石灰及び有機分散剤の添加量を増加した場合(比較例4)の粉率は、それぞれ33.6質量%、29.8質量%まで低下したが、実施例2よりも低下量が小さかった。
そこで、生石灰の添加量を0.5質量%から2質量%へ、水の量を9質量%から10.5質量%へ、それぞれ増加(変更)したところ、粉率が48.4質量%まで低下した(実施例3)。一方、生石灰の添加量のみを増加した場合(比較例5)と、生石灰及び有機分散剤の添加量を増加した場合(比較例6)の粉率は、それぞれ51.3質量%、49.2質量%まで低下したが、実施例3よりも低下量が小さかった。
そこで、生石灰の添加量を0.5質量%から1質量%へ、水の量を9質量%から9.5質量%へ、それぞれ増加(変更)したところ、粉率が25.6質量%まで更に低下した(実施例1)。一方、生石灰の添加量のみを増加した場合(比較例1)と、生石灰及び有機分散剤の添加量を増加した場合(比較例2)の粉率は、それぞれ27.4質量%、25.9質量%まで低下したが、実施例1よりも低下量が小さかった。
つまり、ベース8では、ほとんど造粒できていないことが分かった。
そこで、生石灰の添加量を0.5質量%から2質量%へ、水の量を9質量%から10.5質量%へ、それぞれ増加(変更)したところ、粉率が51.9質量%まで低下した(実施例4)。一方、生石灰の添加量のみを増加した場合(比較例7)と、生石灰及び有機分散剤の添加量を増加した場合(比較例8)の粉率は、それぞれ67.6質量%、63.8質量%まで低下したが、実施例4よりも低下量が小さかった。なお、比較例7では、造粒できない場合もあった(粉率のバラツキ(偏差:図4(B)に「I」で示すエラーバー)の上端が79.8)。
Claims (2)
- 生石灰と焼結原料とを撹拌機に装入して、水の存在下で撹拌する焼結原料の事前処理方法において、
鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%未満もしくは80質量%超の粒度の粉鉱石を用いる前記焼結原料中の粉鉱石の粒度を、500μmアンダーが50質量%以上80質量%以下の粒度範囲に変更する際、あるいは、鉄鉱石として前記粒度範囲にある粒度の粉鉱石を用いる前記焼結原料中の粉鉱石の粒度を、更に前記粒度範囲内で変更する際に、
撹拌羽根の直径が0.1〜1.5mである前記撹拌機を使用し、前記撹拌羽根の周速を1m/秒以上として、撹拌時における前記生石灰の添加量と前記水の量を、粒度変更前の前記焼結原料に対する設定値から変更することを特徴とする焼結原料の事前処理方法。 - 請求項1記載の焼結原料の事前処理方法において、前記焼結原料中の粉鉱石は、10μmアンダーが5質量%以下であることを特徴とする焼結原料の事前処理方法。
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