JP5830498B2 - 超電導ケーブルの接続構造 - Google Patents
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Description
この超電導ケーブルを電力供給線として使用する場合には、電力供給源から遠方の電力消費地まで超電導ケーブルを敷設する必要があるが、超電導ケーブルは製造上又は運搬上の理由から、単一のケーブル長には限界がある。このため、長距離のケーブル敷設の際には、いくつもの超電導ケーブルをつなぎ合わせる必要があった。
また、他の従来の技術として、超電導ケーブルのフォーマ同士を導体のスリーブで接続し、フォーマの外周の超電導層同士を超電導線材で接続した接続構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
互いの前記超電導ケーブルの超電導導体層同士が、前記超電導ケーブルの径方向に湾曲した接続用の超電導線によって接続され、
前記接続用の超電導線の外周を覆う電界緩和カバーを有することを特徴とする。
また、接続用の超電導線の湾曲部により、ケーブルコアの曲がり方向の変形の際にも、各超電導導体層に対する応力の集中を低減し、これらの破損を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、上記接続構造では、接続用の超電導線の外周を覆う電界緩和カバーを設けているので、接続用の超電導線の湾曲部が外側に凸状になる場合に当該凸状部の電界集中の発生を効果的に抑制することが可能である。
図1は超電導ケーブルの一例を示す図である。
超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。ケーブルコア11は、フォーマ140、超電導導体層130、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等により構成される。
また、このフォーマ140は、内部が中空に形成されており、当該中空部には、当該フォーマ140及び超電導導体層130を冷却するために、液体冷媒(例えば液体窒素)が供給される。なお、この液体冷媒は後述する断熱管12内においてケーブルコア11の周囲に供給されるものと同一のものである。
この超電導導体層130を構成する超電導線100は、例えば、図2に示すように、基板1上に中間層2、超電導層3、保護層4が順に積層された積層体と、その積層体の周囲を被覆する銅安定化層5を備えているテープ状の超電導線である。
超電導層3を構成する超電導体としては、液体窒素温度以上で超電導を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)、例えば化学式YBa2Cu3O7-yで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体)が代表的である。また、超電導体には、ビスマス系超電導体、例えば化学式Bi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi2212),Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ(Bi2223)も適用でき、図2に示す積層体ではなく金属マトリクス中に多数のフィラメント状の超電導体が配された多芯線を用いることもできる。なお、化学式中のδは酸素不定比量を示す。
この超電導シールド層114を構成する超電導線には、超電導導体層130と同様の超電導線100(図2参照)を適用できる。
保護層116は、例えば、絶縁紙、高分子不織布などで構成され、常電導シールド層115の上に巻回することにより形成される。
断熱内管121及び断熱外管122は、例えばステンレス製のコルゲート管(波付き管)である。断熱内管121と断熱外管122の間には、例えばアルミを蒸着したポリエチレンフィルムの積層体で構成された多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、真空状態に保持される。また、断熱外管122の外周はポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
超電導ケーブル10同士の接続の際には、互いの断熱管12同士を連結する図示しない固定ボックスが使用される。この固定ボックスは、断熱管12と同様に二重壁面構造であり、壁面間が真空引きされると共にボックス内部には冷媒が循環される。また、ボックス内部において、各超電導ケーブル10のケーブルコア11同士が連結される。
フォーマ140,140及び第一の超電導導体層131,131は、その先端部における外周面が一定の範囲で露出しており、これらに比べて、第二の超電導導体層132,132は、その先端部からより広い範囲で露出するように、電気絶縁層113,113が段剥ぎされている。
また、各電気絶縁層113,113は、先端部に向かうにつれて縮径する三段の円錐形状で形成されている。また、各電気絶縁層113,113がこのような形状であることから、当該各電気絶縁層113,113の互いの円錐面と円錐面との間に大きなスペースが生じる。このスペースには、フォーマ140,140同士を接続する構造、超電導導体層130,130を接続する構造及びこれらの電界緩和を図る構造が設けられ、その周囲を囲繞するように、絶縁紙の巻き付けによる電気絶縁層210,220が形成されている。
なお、図3以降の図面では超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116の図示を省略している。
上記ケーブルコア11,11の接続構造では、フォーマ140,140がその先端部端面同士が突き合わされた状態で圧縮スリーブ141の締め付けにより接続されている。圧縮スリーブ141は、良導体(例えば、フォーマ140を同じ銅製)からなる円筒である。
さらに、フォーマ140,140の外周の超電導導体層130は、内側となる第一の超電導導体層131と外側の第二の超電導導体層132の二層から構成され、それぞれの超電導導体層131,132は段剥ぎによりその先端部の外周面が露出している。
そして、それぞれの第一の超電導導体層131,131は、相互間に懸架された湾曲した接続用の超電導線133により電気的に接続されている。
また同様に、それぞれの第二の超電導導体層132,132もまた、相互間に懸架された湾曲した接続用の超電導線134により電気的に接続されている。
また、各接続用の超電導線133,134は、いずれも、その中央部が超電導ケーブル10の中心線Cを中心とする径方向(以下、単に「径方向」という)の外側に向かって膨らんだ湾曲形状となるように撓ませた状態でその両端部が各超電導導体層131,132に接続されている。
湾曲部133b,134bは、外側に向かって半円状で凸となる部分と,その両端部において内側向かってに凸となる部分とから構成されており、これらはいずれも直径φの曲率で湾曲している。そして、この直径φは、接続用の超電導線133,134として使用されている超電導線の破壊、破損を生じることなく適正に送電可能な許容曲げ径以上の値が選択されている。
湾曲部133b,134bの超電導ケーブル10の中心線C方向の長さ(C方向成分の長さ)は、2φであり、各接続用の超電導線133,134の中心線C方向の全長(C方向成分の全長)は、片側の接合部133a,134aの同方向の長さをg(例えば50[mm])とすると、2φ+2gとなる。また、湾曲部133b,134bは径方向に対して高さφで凸となっている。
ここで、図2に示したような形状を有し、許容曲げ径が圧縮方向にφ=10[mm]、伸張方向にφ=20[mm]である超電導線100を用いた場合、φに例えば1.5倍の裕度をもたせてφ=30[mm]を湾曲部133b,134bの曲げ径とすれば、中心線方向Cの変動に対する許容長さは30×(π−2)=34.2[mm]となる。また、湾曲部133b,134bの径方向の高さは30[mm]、接続用の超電導線133,134の中心線C方向の全長は2φ+2g=160[mm]となる。銅の熱収縮率から見積もられる接続構造のフォーマ140,140の収縮はおよそ10[mm]であり、中心線方向Cの変動に対する許容長さがおよそ3.4倍の裕度となり、十分なものであると考えられる。
また、湾曲部133b、134bの形状は一例であって、より扁平な形状としても良い。例えば、湾曲部133b、134bの湾曲形状を楕円とする、或いは、凸部の頂上部分に直線部分を設けて長円状としても良い。或いは、余長をもって接続用の超電導線133,134の両端部のその両端部を接合部133a,134aを取り付けた場合に、接続用の超電導線133,134の剛性に従って自然に形成される湾曲形状としても良い。
この電界緩和カバー150は、図4及び図6に示すように、それぞれの第二の超電導導体層132,132の先端部外周に固定装備された導体リング151,152を介して取り付けが行われている。導体リング151,152は、いずれも良導体、例えば銅、アルミニウムなどから形成されている。また、電界緩和カバー150は、電界緩和を図ることが可能な導体であれば良く、ここでは、SUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼)が使用されている。
各超電導ケーブル10,10の電気絶縁層113,113は、図3に示すように、三段の円錐形状で形成されている。そして、各段の外径に応じて、円錐面と円錐面との間のスペースに層状に第一〜第三の補強絶縁層210,220,230が形成されている。
この第一の補強絶縁層210は、幅の狭い帯状の絶縁紙を巻き付けることで、電界緩和カバー150と段部113a,113aの間を埋めるように形成することが可能である。
この第二の補強絶縁層220は、幅の広い帯状の絶縁紙を巻き付けて形成した電気絶縁層をケーブル中心線Cの方向に沿って複数並べて形成し、これにより生じた隙間のスペースに幅の狭い帯状の絶縁紙を巻き付けて形成すればよい。
この外部補強絶縁層240は、三層とし、これらの各層は、幅の広い帯状の絶縁紙を巻き付けて形成すればよい。
また、外部補強絶縁層240の両端部は、先端部から離れるにつれて縮径する円錐面が形成されている。
上記の超電導ケーブル10,10の接続構造の形成方法を図7〜図12に基づいて順番に説明する。
まず、図7に示すように、接続を行う端部の端面が平滑な未加工の超電導ケーブル10,10同士を互いに突き合わせた状態で配置する(ケーブル配置工程)。
次に、図8に示すように、各超電導ケーブル10,10について、図示しない保護層116、常電導シールド層115、超電導シールド層114を順番に段剥ぎし、さらに、各超電導ケーブル10,10の電気絶縁層113,113を段剥ぎして、三段の円錐形状に成形する(図示しない)。これにより第二の超電導導体層132,132の先端部側の外周面が露出される(段剥ぎ工程)。
また、第二の超電導導体層132,132と第一の超電導導体層131,131とを順番に段剥ぎし、第一の超電導導体層131,131とフォーマ140,140の先端部側の外周面が露出される。
そして、図10に示すように、圧縮スリーブ141の両端部にそれぞれフォーマ140,140を挿入させた状態とし、圧縮スリーブ141の外周からダイスを用いて圧縮することで、フォーマ140,140同士を締め付け固定すると共に電気的に接続する(フォーマ接続工程)。
さらに、各超電導ケーブル10,10の第二の超電導導体層132,132の先端部において、当該第二の超電導導体層132,132を構成する各超電導線100に、湾曲部134bを形成した状態の接続用の超電導線134を懸架状態で半田接続する。この場合も、湾曲部134bの形状は図5の条件を満たす形状とすることが好ましい。
これらにより、各超電導ケーブル10,10の第一の超電導導体層131,131間と第二の超電導導体層132,132間は互いに電気的に接続される。
さらに、最外層となる第三の補強絶縁層230の外周面全体を被覆するように外部補強絶縁層240を形成する(補強絶縁層形成工程)。
さらに、上記構成からなる超電導ケーブル10,10のケーブルコア11,11の接続部分を断熱構造の固定ボックス内に収容し、当該固定ボックスを各超電導ケーブル10,10の断熱管12,12に接続する(固定ボックス取り付け工程)。
上記の各工程により超電導ケーブル10,10の接続構造としての中間接続部の形成作業が完了する。
図13にフォーマ140,140の先端部の周辺における接続構造の他の例を示す。この例では、図3及び図4に示す構成に加えて、接続されたフォーマ140,140と接続用の超電導線133との間(厳密には、圧縮スリーブ141と接続用の超電導線133との間)に形成した絶縁紙からなる絶縁層251と、接続用の超電導線133と接続用の超電導線134との間に形成した絶縁紙からなる絶縁層252と、接続用の超電導線134と電界緩和カバー150との間に形成した絶縁紙からなる絶縁層253とを備える場合を示している。
なお、上記絶縁層251〜253の内で、いずれか一つ又はいずれか二つを設けても良い。
これらの絶縁層251〜253により、超電導ケーブル10,10の接続構造において、絶縁性能のさらなる向上を図ることができる。
上記超電導ケーブル10,10の接続構造では、超電導ケーブル10,10の第一の超電導導体層131,131同士と第二の超電導導体層132,132同士が、径方向に湾曲した接続用の超電導線133,134により懸架状態で接続されている。このため、接続用の超電導線133,134の湾曲部133b,134bの膨らみの撓み変形により、ケーブルコア11,11が温度変化により伸縮した場合でも、中心線C方向の変化を許容し、各超電導導体層131,132に対する応力の集中を低減し、これらの破損を効果的に抑制することが可能となる。
また、接続用の超電導線133,134の湾曲部133b,134bにより、ケーブルコア11,11の曲がり方向の変形の際にも、各超電導導体層131,132に対する応力の集中を低減し、これらの破損を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、上記接続構造では、各接続用の超電導線133,134の外周を覆う電界緩和カバー150を設けているので、各接続用の超電導線133,134の湾曲部133b、134bの径方向外側に凸状にとなる先端部の電界集中の発生を効果的に抑制することが可能である。
このため、ケーブルコア11,11の長手方向の伸縮やケーブルコア11,11の曲げ方向の変形に際し、電界緩和カバー150の一端部が導体リング152に対して摺動し、接続位置を変化させることができるので、第二の超電導導体層132に対して電界緩和カバー150により応力の集中を低減することができる。これにより、各ケーブルコア11,11の変形や伸縮時にも、第二の超電導導体層132及びその下側の第一の超電導導体層131の破壊や破損を効果的に抑制することが可能となる。
これにより、フォーマ140,140の接続の方法が、周囲の水冷が必要となる溶接作業に制限されず、施工性を向上させることが可能となる。
このため、収縮時の内側となる接続用の超電導線133による干渉を低減することが可能である。また、外側となる接続用の超電導線134を容易に取り付けることが可能となり、施工性をより向上させることが可能となる。
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えは、超電導ケーブル10のケーブルコア11の超電導導体層130は二層の場合に限らず、一層又は三層以上の多層としても良い。多層とする場合には、各層ごとに、接続用の超電導線により相互間を接続することが望ましい。
また、フォーマ140,140の接続は、圧縮スリーブ141を用いる場合に限らず、例えば、フォーマ140,140の先端部同士を溶接等により接続しても良い。
また、上記実施形態では、超電導ケーブル10の超電導導体層130では、積層体の超電導線100を用いているが、多芯線の超電導線(例えばBi系超電導線)を用いてもよい。
また、上記超電導ケーブルの接続構造の各構成において例示した数値はいずれも一例であり、その数値に限定するものではなく、任意に変更可能である。
11 ケーブルコア
100 超電導線
113 電気絶縁層
113a,113b 段部
130 超電導導体層
131 第一の超電導導体層
132 第二の超電導導体層
133,134 接続用の超電導線
133a,134a 接合部
133b,134b 湾曲部
140 フォーマ
141 圧縮スリーブ
150 電界緩和カバー
151,152 導体リング
154,157 開口部
210,220,230 第一〜第三の補強絶縁層
240 外部補強絶縁層
251,252,253 絶縁層
C ケーブル中心線
Claims (7)
- フォーマと超電導導体層を有するケーブルコアを備える超電導ケーブルの互いの端部を接続する超電導ケーブルの接続構造であって、
互いの前記超電導ケーブルの超電導導体層同士が、前記超電導ケーブルの径方向に湾曲した接続用の超電導線によって接続され、
前記接続用の超電導線の外周を覆う電界緩和カバーを有し、
それぞれの前記超電導ケーブルの対向する端部近傍の前記超電導導体層の外周にそれぞれ導体リングが固定されており、
前記電界緩和カバーの一端部が一方の前記導体リングに固定され、前記電界緩和カバーの他端部が他方の前記導体リングに対して摺接状態で接続されていることを特徴とする超電導ケーブルの接続構造。 - 前記電界緩和カバーと前記接続用の超電導線との間に電気絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の超電導ケーブルの接続構造。
- 前記接続用の超電導線と前記フォーマとの間に電気絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導ケーブルの接続構造。
- 前記接続用の超電導線は径方向外側に向かって膨らんだ状態であって、それぞれの前記フォーマが圧縮スリーブによって接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの接続構造。
- 前記接続用の超電導線の両端部が、いずれも前記超電導導体層に対して溶加材を介して接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの接続構造。
- 前記超電導導体層が複数層から構成され、
互いの前記超電導ケーブルの前記超電導導体層同士が、層ごとに前記接続用の超電導線で接続され、
前記ケーブルコアの径方向において外側に位置する前記超電導導体層同士を接続する前記接続用の超電導線は、前記ケーブルコアの径方向において内側に位置する前記超電導導体層同士を接続する前記接続用の超電導線よりも湾曲部の径が大きく形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの接続構造。 - 前記接続用の超電導線は、その許容曲げ径以上の範囲で湾曲していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの接続構造。
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