JP5829900B2 - 油類又は油類組成物の引火点向上方法及び引火点が向上された油性組成物 - Google Patents

油類又は油類組成物の引火点向上方法及び引火点が向上された油性組成物 Download PDF

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本発明は、油類又は油類組成物に対する引火点向上方法及び引火点が向上された油性組成物に関し、特に、消防法に定める危険物第4類の引火性流体及び指定可燃物の可燃性液体類に対する引火点向上方法などに係わり、更に詳しくは、引火点が250℃以上の可燃性液体類に対する引火点を向上させる方法及び引火点が向上された油性組成物に関する。
消防法によって危険物第4類に規定されている引火性流体や、指定可燃物に規定されている可燃性液体類には、主として石油類や動植物油等の油類が含まれている。これらのものは引火性があるために消防法によって危険物に指定されているが、引火点が低いほど火災のリスクが高いことから、引火点に応じて、その取り扱いや貯蔵量などについて法的な規制が行われている。
2002年6月に消防法が改正され、引火点が250℃以上の一部の第四石油類の危険物は、新たに「指定可燃物可燃性液体類」とされ、貯蔵や管理に対する規制が大幅に緩和されることとなった。これにより、油類及びその組成物の引火点が250℃以上であれば、火気取扱い上も比較的安全であることから、その貯蔵や管理などの取り扱いも容易になって、これらに要する設備や管理コストを大幅に低減することができることとなる。
上記の如く引火点が高いほど安全性が高くなり、貯蔵や管理も容易かつ経済的に取り扱うことができるところから、石油類の引火点を向上させるために種々の方法が採られてきたが、主として、石油類の低蒸気圧成分への改質や蒸留による高蒸気圧成分の除去などが行われてきた。
これらの方法は石油類の分子構造や構成成分を変化させる必要があるため、石油類の製造段階において物理的・化学的操作を行う必要があり、そのために製造や精製設備に高いコストを必要とするものであった。更に、石油類の分子構造や構成成分の変化によって、引火点以外の物理的・化学的特性にも変化を引き起こすこともあって、その処理操作に困難を伴う点もあった。
また、添加物を使用するものとしては、変圧器油又は絶縁油に、有機フッ素化合物であるペルフルオロアルキルプロミドなどの着火抑制剤を添加して、電気機器において短絡が生じたときのアークが鉱油を発火させ爆発や火災を起すことを抑制するものが知られている。(特許文献1)
特開平3−157499号公報
上記の如く、油類又は油類組成物の引火点を上昇させる為には、油類の製造、精製段階から対応する必要があり、既に製造、精製された油類又は油類組成物の引火点を上昇させるための有効な手段がなかったが、これを簡易な手段によって行えるようにしようとするものである。
本発明者らは、油類又は油類組成物の引火点を上昇させるために、種々の検討と研究を重ねていたところ、ある種のシリコーン誘導体を油類又は油類組成物に少量加えたところ引火点が上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。
一般に、シリコーン誘導体は、絶縁油、ダンパー油、熱媒体油等の各種潤滑油の組成材料、樹脂や液体の潤滑性付与剤や消泡剤、など工業製品の添加剤として広く使用されているが、本発明は、ジメチルポリシロキサンのシリコーン化合物を有効成分として、少量を引火点が250〜400℃の油類又は油類組成物に加えて、それらの引火点を向上させるようにしたものである。
こうしたシリコーン化合物としては、下記一般式(1)で示されるものがある。
Figure 0005829900
(RはCHである。)
上記式1において、aは200〜1500の整数である。
こうしたジメチルポリシロキサンは、1つ又は必要により数種のものを適宜に組合わせて、油類又は油類組成物に0.1〜10000質量ppm程度の少量で使用することができる。
本発明によれば、引火点が250〜400℃の油類又は油類組成物に上記した引火点向上剤を添加することによって、物理的・化学的な特性の双方に大きな変化を引き起こすことなく引火点を容易に上昇させることができる。これにより、この引火点向上剤を添加するという簡易な方法で、消防法の規制のよりゆるやかな区分の油性組成物に変えることができ、効果的に利用することもできる。
本発明における、油類又は油類組成物としては、主として、消防法に定める引火点が250℃以上の可燃性液体類などがある。また、特に、飲食に供されないものに対して有効である。
可燃性液体類は、1気圧・温度20℃において液体であって、引火点250℃以上の可燃性の液体で、ISO粘度グレードが100以上の鉱油、ISO粘度グレードが32以上の合成炭化水素、脂肪酸エステル等の潤滑油基油、及びそれらを潤滑油基油として使った、各種産業機械用潤滑油、エンジン油などが挙げられる。
上記の油類又は油類組成物には、シリコーン化合物が添加される。こうしたシリコーン化合物としては、下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
Figure 0005829900
(RはCHである。)
aは上記の如く100〜2000の整数であり、200〜1500が好ましい。100より小さいとジアルキルポリシロキサンの引火点が下がり、その添加効果も低下する。2000より大きいとジアルキルポリシロキサンの油類や油類組成物への溶解性や分散性が低下して貯蔵に伴って沈降することがあり、その効果が低下するようになる。
上記したジメチルポリシロキサンは、重合度aが2〜2200の各種のシリコーンオイルが一般に市販されているので、所望の重合度のものを入手することができる。
本発明に使用される上記シリコーン化合物は、ホモジナイザーを使って油類又は油類組成物に直接添加して、溶解又は分散させることによって添加することができる。
また、必要に応じて、シリコーン化合物を溶解できる溶剤によってあらかじめ濃縮溶液を作成し、これを油類又は油類組成物に加えて稀釈、分散させて添加することができる。濃縮溶液の作製に用いる溶剤としては、灯油、トルエン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等が使用できるが、所望のジアルキルポリシロキサンやその誘導体に容易に溶解又は分散できる溶剤であれば特に限定されず、各種のものが使用できる。
この溶剤として低引火点のものを使用した場合、希釈溶剤の量が多くなり過ぎると引火点を低下させることとなるので、溶剤の量は出来るだけ少なくするのが望ましく、油類又は油類組成物の全量に対して約0.1質量%以下で使用するのが好ましい。
上記したジメチルポリシロキサンは、引火点を向上させようとする油類又は油類組成物の全量に対して0.1〜10000質量ppmの範囲で使用することができ、好ましくは1〜1000質量ppmの範囲、より好ましくは1〜100質量ppmの範囲、更に好ましくは2〜50質量ppmの範囲で使用することが望ましい。
ジメチルポリシロキサン濃度が低すぎると引火点向上効果が期待できない虞があり、高すぎると良好な溶解、分散状態を維持することが困難となって、分離・沈降が起り引火点向上効果が持続されない虞がある。
以下に、本発明の方法及び引火点が向上された油性組成物について実施例、参考例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実施例、参考例及び比較例を作製するために、下記のものを用意した。
(油類及び油類組成物)
油類1:ポリα―オレフィン(PAO)〔性状等:密度が0.831g/ml(15℃)、引火点(COC)が250℃、40℃動粘度が34.9mm/s、粘度指数が138、流動点が−50℃以下、硫黄分が0質量ppm、窒素分が0質量ppm〕
油類2:米国石油協会(API)潤滑油基油カテゴリーのグループIIに該当する水素化精製基油〔性状等:密度が0.876g/ml(15℃)、引火点(COC)が260℃、40℃動粘度が91.0mm/s、粘度指数が105、流動点が−15℃、硫黄分が10質量ppm、窒素分が3質量ppm〕
油類3:米国石油協会(API)潤滑油基油カテゴリーのグループIIIに該当する高粘度指数水素化精製基油〔性状等:密度が0.850g/ml(15℃)、引火点(COC)が254℃、40℃動粘度が47.0mm/s、粘度指数が128、流動点が−15℃、硫黄分が10質量ppm、窒素分が1質量ppm〕
油類4(油類組成物):トリメチロールプロパンとペンタエリスリトールのオレイン酸フルエステルを基油として、バリウムスルフォネート系防錆剤とフェノール系酸化防止剤が配合されたISO粘度グレード56の市販ポリオール系難燃性作動油〔性状等:密度が0.926g/ml(15℃)、引火点(COC)が318℃、40℃動粘度が55.1mm/s、粘度指数が185、流動点が−30℃以下、硫黄分が60質量ppm、窒素分が110質量ppm〕
油類5(油類組成物):API(米国石油協会)潤滑油基油カテゴリーのグループIの基油にジアルキルジチオリン酸亜鉛耐摩耗兼酸化防止剤、過塩基性カルシウムサリシレート防錆剤、ポリメタクリレート系流動点降下剤が配合されたISO粘度グレード32の市販鉱油系耐摩耗性作動油〔性状等:密度が0.869g/ml(15℃)、引火点(COC)が225℃、40℃動粘度が32.0mm/s、粘度指数が106、流動点が−32.5℃以下、硫黄分が5820質量ppm、亜鉛分が250質量ppm、カルシウム分40質量ppm〕
(添加剤)
添加剤A:ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製 KF96H-12500)〔性状等:25℃動粘度が12500mm/s、動粘度からA.J. Barryの式(Appl. Physics, 17, 1020(1946))で計算した上記式1中の重合度aが860〕
添加剤B:ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製 KF96H-30000)〔性状等:25℃動粘度が30000mm/s、動粘度から上記A.J. Barryの式で計算した上記式1中の重合度aが1080〕
添加剤C:フッ素変性ジメチルポリシロキサン〔性状等:25℃動粘度が1000mm/s、下記式2中のR=CH a=0、b=40、p=2、q=0〕
Figure 0005829900

添加剤D:フッ素変性ジメチルポリシロキサン〔性状等:25℃動粘度が10000mm/s、上記式2中のR=CH a=0、b=150、p=2、q=0〕
添加剤E:フッ素変性ジメチルポリシロキサン〔性状等:25℃動粘度が1600mm/s、上記式2中のR=CH a=140、b=65、p=2、q=3〕
添加剤F:ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製 KF96-10cs)〔性状等:25℃動粘度が10mm/s、動粘度から上記A.J. Barryの式で計算した上記式1中の重合度aが16〕
添加剤G:ポリアクリレート系ポリマー消泡剤(Solutia製 PC1244)
添加剤H:潤滑油用非シリコーン系消泡剤(コグニスコーポレーション製 Clerol AMH2)〔性状等:ケイ素含有量が0.1質量%、窒素含有量が0.36質量%〕、
(実施例1)
添加剤Aのジメチルポリシロキサンを溶剤の灯油に加えて10質量%の希釈液を作成し、これを油類1のPAOに添加剤Aが10質量ppm濃度となるように加え、よく撹拌して油性組成物を得た。
(実施例2〜11)
表1に示す配合に基づいて、表中に示した溶剤で添加剤の希釈液を作成し、実施例1に準じて各油性組成物を得た。
(参考例1〜8)
表2に示す配合に基づいて、表中に示した溶剤で添加剤の希釈液を作成し、実施例1に準じて各油性組成物を得た。
(比較例1〜11)
表3に示す配合に基づいて、比較例1、2、7及び8は灯油で添加剤を希釈し実施例1に準じて各油性組成物を得た。
比較例3〜6、9〜11は希釈溶剤を使用せず添加剤の所要量を直接添加し、50℃でよく撹拌して各油性組成物を得た。
(引火点の測定)
引火点は、JISK2265−4によるクリーブランド開放式自動引火点測定装置によって実施例、参考例及び比較例の各1試料について5回の繰り返し測定を行い、平均値を小数点以下1桁の四捨五入により求めた。
(引火点の測定結果及び評価)
引火点測定の結果を表1〜表3に示す。
表1〜表3に示すように、各実施例においては引火点を4〜14℃向上させることができることが判る。また、特に添加剤Bにおいて好成績が得られている。
一方、比較例においては、引火点を向上させることができず、比較例8においてはむしろ引火点を降下させていることが判る。
Figure 0005829900
Figure 0005829900
Figure 0005829900

Claims (4)

  1. 引火点が250〜400℃である油類又は油類組成物に、下記一般式(1)においてaが200〜1500の整数であるジメチルポリシロキサンを0.1〜10000質量ppm添加することを特徴とする引火点向上方法。
    Figure 0005829900
    (RはCHである。)
  2. 上記ジメチルポリシロキサンを2〜50質量ppm添加することを特徴とする請求項1に記載の引火点向上方法。
  3. 引火点が250〜400℃である油類又は油類組成物に、下記一般式(1)においてaが200〜1500の整数であるジメチルポリシロキサンを0.1〜10000質量ppm添加した引火点が向上された油性組成物。
    Figure 0005829900
    (RはCHである。)
  4. 上記ジメチルポリシロキサンを2〜50質量ppm添加したことを特徴とする請求項3に記載の引火点が向上された油性組成物。
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