JP5827492B2 - 振動特性測定装置および振動特性測定方法 - Google Patents
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Description
このような多段遠心圧縮機には、遠心羽根車の各段からの被圧縮流体の漏れを防止するために、回転軸の軸線を中心とする環状のシール部材を含んで構成されるシール機構が備わっている。
多段遠心圧縮機に備わるシール機構では被圧縮流体の漏れ流れによる不安定化力が発生し、この不安定化力が回転軸や遠心羽根車の回転の安定性に影響を与える。つまり、不安定化力が安定化力を上回ると、シールホワールと呼ばれる自励振動が発生する。
このように回転軸など回転体の振動特性を測定する場合、ばらつきの少ない高品質なデータを取得するためには、加振振幅が大きいことが好ましい。加振によって振動する回転体の振幅を大きくすることによって、振動を測定するセンサが出力する信号のSN比を向上でき、振幅を示すデータとして高品質なデータを取得できる。
しかしながら、回転機械の回転体は質量の偏りなどによって、通常の回転時にも許容値を超えない振幅の範囲で振動している。したがって、回転中の回転体への加振によって発生させることのできる振動の振幅は、通常の回転時における振動の振幅と許容値のマージンの範囲内に制限される。換言すると、加振によって回転軸に発生できる振動が小さく抑えられることになり、振動を測定するセンサが出力する信号のSN比が悪くなる。そして、この信号に基づいて取得されるデータ(回転軸の振動特性を示すデータ)の品質が低下するという問題がある。
しかしながら、平均化処理をするために大量のデータを取得すると、データの取得に時間がかかり工数が増大するという問題がある。また、大量のデータを取得するために回転軸の運転時間や加振する時間が長くなり、エネルギの消費量が増えるという問題もある。
そして、軸受やシール機構の損傷やシール機構の磨耗などの不具合を生じさせることなく振動特性を測定できる。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係る振動特性測定装置1は、多段遠心圧縮機50などの回転機械に取り付けられて回転軸51や遠心羽根車53を含む回転体の振動特性を測定可能な装置である。
本実施形態に係る振動特性測定装置1は多段遠心圧縮機50に限定されず、回転軸51などの回転体を有する回転機械(タービン、電動機等)に取り付け可能であるが、以下では多段遠心圧縮機50に取り付けられる一例を説明する。
このように回転軸51は複数の軸受部材52a〜52cによって回転可能に支持されている。
以下、回転軸51や遠心羽根車53を含み、回転軸51と一体に回転する構造物を総称して「回転体」と記載する場合がある。また、回転体に対して静止している構造物(ハウジング54等)を総称して「静止体」と記載する場合がある。
また、遠心羽根車53の軸方向の両端部には、ハウジング54と回転軸51の間隙をシールするためのシール機構55が備わっている。
また、クリアランスが形成されることによって、例えば静止体に備わるシール機構55のシール部材が回転体と接触することが防止され、シール部材の磨耗が抑制される。
なお、図1には、シール機構55が静止体(ハウジング54)に備わる構成が図示されているが、シール機構55が回転体(回転軸51、遠心羽根車53等)に備わる構成であってもよい。また、シール機構55が、ハウジング54以外の静止体に備わる場合もある。
回転体の質量が周方向に均一でない場合、図2の(a)示すように、周方向の1点が質量の集中点(質量集中点G)となるように回転体をモデル化することができる。質量集中点Gを有する回転体が回転すると質量集中点Gには遠心力が作用して外方に引き寄せられ、回転体は質量集中点Gの方に変位する。このような変位が回転体の回転にともなって連続的に発生し、不釣合い振動が発生する。
なお、図2の(a)に示す12X,12Yは、回転軸51を非接触支持するように振動特性測定装置1(図1の(a)参照)に備わる磁気軸受12の電磁石である。
そこで、回転体の不釣合い振動を常に監視し、その振幅が所定の許容値を超えないように回転体の運転を管理する場合もある。
回転体の軸振動に対する安定性は、回転体を加振し、それによって引き起こされる回転体の振動の応答特性を測定することによって評価可能である。
このため、回転体の軸振動に対する安定性を評価するときには、回転している回転体を強制的に振動させて、つまり、加振して、そのときの回転体振動の振幅と位相を測定し、入力(回転体に与える振動)に対する出力(回転体の実際の振動)の応答特性を測定することが実施される。
このため振動特性測定装置1は、回転軸51を加振する磁気軸受12と回転軸51の振幅(変位)を測定する測定装置(変位センサ13)を含んで構成される。
磁気軸受12は、電磁石12X,12Y(図1の(b)参照)を含んで構成され、図示しないコイルに供給される電流によって発生する磁力で回転軸51を非接触支持することが、軸受としての本来の機能である。
さらに、回転軸51と電磁石12Xの間隙を連続的に調節することによって、回転軸51をX軸方向に振動させることができ、回転軸51と電磁石12Yの間隙を連続的に調節することによって、回転軸51をY軸方向に振動させることができる。このようにして磁気軸受12で回転軸51を加振できる。
このとき、回転体は回転しているため前記した不釣合い振動が発生している。したがって、回転軸51を加振すると、不釣合い振動に加えて加振による振動(以下、強制振動と称する)が発生し回転体の振幅が増大する。
前記したように、静止体に備わるシール機構55と回転体の接触を回避するため、回転体の振幅は所定の許容値より小さいことが要求される。したがって、不釣合い振動が発生している回転体には、不釣合い振動による振幅と許容値のマージンに相当する振幅が最大となるような振動が入力可能である。
したがって、強制振動による回転軸51の振幅が小さくなり、変位センサ13が出力する、回転軸51の変位を示す信号(変位信号)のSN比が悪くなる。
具体的に、振動特性測定装置1は、図3に示すように釣合せ信号発生装置8を備え、回転体の応答特性の測定時に、一時的に不釣合い振動を解消するように構成される。
このように、本実施形態に係る振動特性測定装置1は、図3に示す釣合せ信号発生装置8で回転体の不釣合い振動を解消する信号を発生し、本実施形態における電流供給装置である電流増幅器11(図3参照)に入力する機能を有する。そして、電流増幅器11は入力された信号(不釣合い振動を解消する信号)を所定のゲインで増幅した電流を磁気軸受12に供給する。
なお、電流供給装置は、入力される信号に応じた磁力を発生させる電流を磁気軸受12に供給可能な装置であれば、入力される信号を増幅した電流を磁気軸受12に供給する電流増幅器11に限定されない。
そして、釣合せ信号発生装置8には、入力される回転パルス信号Rpを基準信号とするフェーズロックドループ回路(PLL回路)が組み込まれ、回転体の回転周波数に同期した正弦波信号と余弦波信号を発振するように構成されている。PLL回路が発振する正弦波信号と余弦波信号は、位相が90度異なる単一周波数の信号である。
このように質量集中点Gの回転角度から180度遅らせた位相Phとすることで、質量集中点Gに作用する遠心力を打ち消す方向の力を発生させることができる。
また、相殺振幅Amは、質量集中点Gに作用する遠心力を打ち消す量を示す。
Fx=Am・Cos(Ωt+Ph) (1a)
Fy=Am・Sin(Ωt+Ph) (1b)
なお、Ωは回転体の回転角速度、tは時間を示す。
また、回転角速度Ωは、例えば、入力される回転パルス信号Rpに基づいて算出される値である。
釣合せ信号発生装置8は、このように、振幅がともにAmであって位相が互いに90度ずれた発振信号Fx,Fyを発生する。
このように、釣合せ信号発生装置8は、余弦波成分(Am・Cos(Ωt+Ph))を含んだX軸方向の発振信号Fxと、正弦波成分(Am・Sin(Ωt+Ph))を含んだY軸方向の発振信号Fyを発生する。
X増幅器11Xでは、入力された発振信号Fxを所定のゲインで増幅して電磁石12Xに供給する。また、Y増幅器11Yでは、入力された発振信号Fyを所定のゲイン(例えば、X増幅器11Xのゲインと同等のゲイン)で増幅して電磁石12Yに供給する。X増幅器11X、Y増幅器11Yのゲインは、磁気軸受12の特性や回転体の振動特性に応じ、適宜設定されることが好ましい。
Fz=Fx+jFy=Am・ej(Ωt+Ph) (2)
なお、jは虚数単位を示す。
つまり、合成発振信号Fzは、余弦波成分(Am・Cos(Ωt+Ph))をX軸方向の振動を解消する成分、正弦波成分(Am・Sin(Ωt+Ph))をY軸方向の振動を解消する成分とする振動解消信号となる。
釣合せ信号発生装置8は、このように発振信号Fx,Fyを生成し、さらに発振信号Fx,Fyを合成した合成発振信号(振動解消信号)Fzを発生して回転体の不釣合い振動を解消する。
この構成によると、加振信号Exは、回転体をX軸方向に加振する、加振制御信号の成分(第1方向加振成分)となり、加振信号Eyは、回転体をY軸方向に加振する、加振制御信号の成分(第2方向加振成分)となる。
正弦波信号である加振信号ExがX増幅器11Xで増幅された電流が電磁石12Xに供給されると、回転体はX軸方向に加振される。また、正弦波信号である加振信号EyがY増幅器11Yで増幅された電流が電磁石12Yに供給されると、回転体はY軸方向に加振される。
同様に、Y軸方向の加振信号Eyを正弦波信号とする場合、加振応答分析装置9は、時間経過とともに周期を変えながら加振信号Eyを出力し、入力されるY変位信号Myに基づいて回転体のY軸方向の変位をデータとして取得する。そして、加振信号Ey(正弦波信号)に対する回転体のY軸方向の応答特性(周波数特性)を測定する。
このようにして加振応答分析装置9は、回転体に対する入力(X軸方向の加振信号Ex、Y軸方向の加振信号Ey)に対する回転体の出力(X変位信号Mx、Y変位信号My)の応答特性を測定する。
しかしながら、加振実行期間においても回転体には不釣合い振動が発生しているため、加振による強制振動の振幅は、不釣合い振動の振幅に重ね合わされた振幅となる。そして、強制振動する回転体の振幅は、加振されていない回転体の振幅より大きくなる。したがって、加振によって回転体に生じさせることのできる振幅は、図2の(b)に示すように(図5に(従来例)として再度示す)、不釣合い振動の振幅と前記した許容値とのマージン1の範囲に制限される。
同様に、Y軸方向の変位のデータの品質も低下する。
加算信号ADDxはX増幅器11Xに入力され、加算信号ADDxをX増幅器11Xで増幅した電流が磁気軸受12の電磁石12X(図1の(b)参照)に供給される。
また、加算信号ADDyはY増幅器11Yに入力され、加算信号ADDyをY増幅器11Yで増幅した電流が磁気軸受12の電磁石12Y(図1の(b)参照)に供給される。
この回転体制御信号は、振動解消信号の余弦波成分と、加振制御信号の第1方向加振成分が加算された成分を含む加算信号ADDx、および振動解消信号の正弦波成分と、加振制御信号の第2方向加振成分が加算された成分を含む加算信号ADDyからなる合成信号である。
加算信号ADDxは、X軸方向の発振信号Fxと加振信号Exが加算された信号であり、回転体のX軸方向の発振信号Fxの成分と、X軸方向の加振信号Exの成分を含んだ加算信号になる。
また加算信号ADDyは、Y軸方向の発振信号Fyと加振信号Eyが加算された信号であり、回転体のY軸方向の発振信号Fyの成分と、Y軸方向の加振信号Eyの成分を含んだ加算信号になる。
このことによって、X変位センサ13X(図3参照)は強制振動のX軸方向の振幅のみを測定し、その測定結果をX変位信号Mx(図3参照)として加振応答分析装置9(図3参照)に入力できる。同様にY変位センサ13Y(図3参照)は強制振動のY軸方向の振幅のみを測定し、その測定結果をY変位信号My(図3参照)として加振応答分析装置9(図3参照)に入力できる。
そして、加振応答分析装置9が取得するX軸方向の変位のデータ及びY軸方向の変位のデータの品質を向上できる。
例えば、X軸方向の応答特性を単独で測定する場合、加振応答分析装置9は、釣合せ信号発生装置8が出力するX軸方向の発振信号Fxと、加振応答分析装置9が出力するX軸方向の加振信号Exを加算した加算信号ADDxをX増幅器11Xに入力する。
さらに、釣合せ信号発生装置8が出力するY軸方向の発振信号FyをY増幅器11Yに入力する。つまり、Y軸方向の加振信号Eyをゼロとする加算信号ADDyをY増幅器11Yに入力する。
このとき、磁気軸受12には、X軸方向の発振信号Fxの成分と、Y軸方向の発振信号Fyの成分と、X軸方向の加振信号Exの成分と、を含んだ電流が供給される。
回転体は磁気軸受12に供給される電流のX軸方向の発振信号Fxの成分によって、X軸方向の不釣合い振動が解消され、X変位センサ13Xは加振によって振動する回転体の振幅を測定できる。
回転体は磁気軸受12に供給される電流のY軸方向の発振信号Fyの成分によって、Y軸方向の不釣合い振動が解消され、Y変位センサ13Yは加振によって振動する回転体の振幅を測定できる。
このように、回転体のX軸方向の応答特性とY軸方向の応答特性をそれぞれ単独に測定可能な構成であってもよい。
加算信号ADDx,ADDyは、加振制御装置7(図3参照)からの出力信号として電流増幅器11(X増幅器11X(図3参照),Y増幅器11Y(図3参照))に入力される。
X増幅器11Xは、加算信号ADDxを増幅した電流を磁気軸受12の電磁石12X(図3参照)に供給し、Y増幅器11Yは、加算信号ADDyを増幅した電流を磁気軸受12の電磁石12Y(図3参照)に供給する。
加振応答分析装置9が、正弦波信号以外の信号を加振信号として発生する場合も、その加振信号の成分(第1方向加振成分、第2方向加振成分)に発振信号の成分(余弦波成分、正弦波成分)を加算した回転体制御信号を電流増幅器11(図3参照)で増幅した電流を磁気軸受12(図3参照)に供給する構成とすればよい。
加振信号遮断器10には、X変位センサ13Xが出力するX変位信号MxとY変位センサ13Yが出力するY変位信号Myが入力される。
そして加振信号遮断器10は、X変位信号Mxに基づいて算出される回転体のX軸方向の変位、またはY変位信号Myに基づいて算出される回転体のY軸方向の変位の少なくとも一方が所定の閾値を超えたときに、加算信号ADDx、ADDyの信号の出力を遮断するように構成される。
この構成によると、回転体に発生している、許容値を超えた振幅での振動をより速やかに収束させることができる。
7 加振制御装置
8 釣合せ信号発生装置
9 加振応答分析装置
10 加振信号遮断器
11 電流増幅器(電流供給装置)
12 磁気軸受
13 変位センサ(測定装置)
50 多段遠心圧縮機(回転機械)
51 回転軸(回転体)
52a,52b,52c 軸受部材
53 遠心羽根車(回転体)
54 ハウジング(静止体)
55 シール機構
ADDx,ADDy 加算信号(回転体制御信号)
Ex,Ey 加振信号(加振制御信号)
Fx,Fy 発振信号
Fz 振動解消信号
Claims (4)
- 回転機械の回転体を非接触支持する磁気軸受と、
前記回転体が振動するときの振幅を測定する測定装置と、
前記磁気軸受に電流を供給する電流供給装置と、
前記回転体を加振するように前記磁気軸受を制御する加振制御信号を出力するとともに、前記測定装置が測定する前記振幅に基づいて、前記加振制御信号に対する前記回転体の振動の前記加振制御信号に対する応答特性を測定する加振制御装置と、を備える振動特性測定装置であって、
前記加振制御装置は前記応答特性を測定するときに、
前記回転体が回転するときに発生する不釣合い振動を前記磁気軸受で解消するための振動解消信号を前記加振制御信号に加算した回転体制御信号を出力し、
前記電流供給装置は、前記回転体制御信号に応じた磁力を発生させる電流を前記磁気軸受に供給し、
前記回転体をモデル化したときの質量集中点における質量の大きさと前記質量集中点の位相に対応して、前記質量集中点に作用する遠心力を打ち消すような前記振動解消信号を設定することを特徴とする振動特性測定装置。 - 前記加振制御装置は、
回転する前記回転体の回転周期と等しい周期で、前記質量集中点の回転に対して180度位相が遅れる余弦波成分を、前記回転体の軸線方向と直交する第1方向の振動を解消する成分とし、
回転する前記回転体の回転周期と等しい周期で、前記質量集中点の回転に対して180度位相が遅れる正弦波成分を、前記軸線方向および前記第1方向と直交する第2方向の振動を解消する成分として前記振動解消信号を生成し、
前記回転体を前記第1方向に加振する第1方向加振成分と、前記回転体を前記第2方向に加振する第2方向加振成分と、を含んで前記加振制御信号を生成し、
さらに、前記余弦波成分と前記第1方向加振成分を加算し、前記正弦波成分と前記第2方向加振成分を加算して前記回転体制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の振動特性測定装置。 - 前記加振制御装置は、
前記測定装置が測定する前記振幅が所定の許容値より大きいときに、前記回転体制御信号の出力を遮断する加振信号遮断器を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動特性測定装置。 - 回転機械の回転体を非接触支持する磁気軸受と、
前記回転体が振動するときの振幅を測定する測定装置と、
前記回転体を加振するように前記磁気軸受を制御する加振制御信号および前記回転体が回転するときに発生する不釣合い振動を解消する振動解消信号を出力するとともに、前記測定装置が測定する前記振幅に基づいて、前記回転体の振動の前記加振制御信号に対する応答特性を測定する加振制御装置と、を備える振動特性測定装置における振動特性測定方法であって、
前記回転体の回転周期と等しい周期で、前記回転体をモデル化したときの質量集中点の回転に対して180度位相が遅れる余弦波成分、及び、前記回転体の回転周期と等しい周期で、前記質量集中点の回転に対して180度位相が遅れる正弦波成分を合成して前記質量集中点に作用する遠心力を打ち消すような前記振動解消信号を発生するステップと、
前記加振制御信号に前記振動解消信号を加算して回転体制御信号を発生するステップと、
前記回転体制御信号に応じた磁力を発生させる電流が前記磁気軸受に供給されたときに前記振幅を測定するステップと、
を有することを特徴とする振動特性測定方法。
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