従来、自動車窓の材料としてはガラス材が一般に用いられてきたが、車両の軽量化を図るために、ガラス材よりも軽量なポリカーボネート等のプラスチック(樹脂材)を用いる開発が進められている。
ここで、自動車窓には、例えば、テレビ、カーナビ用のアンテナ線や曇り止め用の熱線等の導電線を形成することが一般的である。導電線の原料となる液体をプラスチック製パネル表面に吐出し塗布する装置が例えば特許文献1に開示されている。このものでは、パネルを支持体にて支持し、多関節ロボットの各関節を回転及び揺動させることにより、吐出ヘッドが設けられた先端ロボットアームをパネル表面に対して相対移動させながら、この吐出ヘッドのワーク表面に向けて開口するノズル端から所定流量の液体を吐出している。
ここで、パネル表面全体に導電線を一定の幅で形成するには、ノズル端から吐出された液体が一定の幅で線状に塗布されなければならない。それには、ロボットアームをパネル表面に対して相対移動させる間、パネル表面とノズル端との間の間隔を一定(例えば、0.1mm±10μm)に制御する必要がある。然し、例えば民生産業機械のロボットアームは、ワーク表面が平坦である場合には、ワーク表面に対して精度良く追従させることができる一方で、ワーク表面が曲面である場合には、ワーク表面に対して精度良く追従させることができない。このため、ワークの曲面形状に追従させてロボットアームを相対移動させるだけでは上記間隔を一定に制御することは困難である。そこで、上記特許文献1記載のものでは、吐出ヘッドに設けた非接触センサによりパネル表面とノズル端との間を測定し、その測定値を基に、吐出ヘッドに設けたアクチュエータ等の駆動手段により、パネル表面形状に追従させて吐出ヘッドを一方向でロボットアームに対して相対移動させている。
ところで、近年の樹脂成型技術の向上に伴い、樹脂成型されたワークの表面形状が金型の曲面形状を正確にトレースできるようになっているが、樹脂の硬化収縮などの影響によりワーク内部に応力が残留し、金型からワークを取り外したときにワーク表面に微小な凹凸が形成される場合がある。このような微小な凹凸がワーク表面に存する場合、金型の設計データ等を教示データとして用いて、ロボットアームをワークの曲面形状に追従させて相対移動させながら、吐出ヘッドを一方向でロボットアームに対して相対移動させても、ワーク表面とノズル端との間隔を一定に維持することが難しい。特に、ワーク表面とノズル端との間隔が急速に変動すると、非接触センサの測定値が著しく変動したり、非接触センサの測定範囲を超えたりすることがある。この非接触センサの測定値を用いて駆動手段を駆動すると、例えば発振を起こすなど、駆動手段の動きが不安定になる。その結果、ワーク表面とノズル端との間隔を一定に維持できなくなり、ワーク表面に一定の幅で液体を線状に塗布することが困難となる。
また、例えばロボットアームの動作によっても、ワーク表面とノズル端との間隔が非接触センサの測定範囲を超える場合がある。この場合、非接触センサの測定範囲外となっている状態から非接触センサの測定範囲内に戻ったときに、駆動手段がジャンピングやハンチング等を起こして不安定になり、結果として、ワーク表面に一定の幅で液体を線状に塗布できなくなる。
本発明は、以上の点に鑑み、曲面に成形されたワーク表面に微小の凹凸が存する場合でも、ワーク表面に対して一定の幅で線状に液体を塗布することが可能な液体吐出方法を提供することをその課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ロボットアームをワーク表面の形状に追従させて相対移動させながら、このロボットアームに設けた吐出ヘッドのワーク表面に向けて開口するノズル端から液体を所定の流量で吐出する液体吐出方法であって、ロボットアームをワーク表面に対して相対移動させる間、吐出ヘッドに設けた駆動手段により、ワーク表面に対して一方向に当該ノズル端をロボットアームに対して相対移動させ、当該ワーク表面とノズル端との間隔を一定に制御するものにおいて、前記ワーク表面とノズル端との間隔を非接触センサで測定すると共に、ロボットアームに対するノズル端の相対変位量を変位センサで測定し、前記非接触センサの測定値と前記変位センサの測定値との何れか一方を前記駆動手段の目標値として選択して前記ノズル端の位置制御を行うことを特徴とする。
本発明によれば、ロボットアームをワーク表面の形状に追従させて相対移動させながら、ロボットアームに設けた吐出ヘッドのノズル端から液体を所定の流量で吐出する。このロボットアームを相対移動させる間、吐出ヘッドに設けた駆動手段により、ノズル端をロボットアームに対して一方向に相対移動させ、ワーク表面とノズル端との間隔を一定に制御する。このとき、ワーク表面とノズル端との間隔を非接触センサで測定すると共に、前記駆動手段によりノズル端を相対移動させたときのロボットアームに対するノズル端の相対変位量を変位センサで測定する。
ところで、上述したように、ワーク表面に微小の凹凸が形成される場合がある。ワーク表面に凹部が存在すると、ノズル端とワーク表面とが離間する。このとき、凹部の深さによっては非接触センサの測定可能範囲を超えてしまい、非接触センサの測定値が急激に小さくなる(又は急激に大きくなる)ことがある。この場合、非接触センサの測定値を駆動手段の目標値とすると、即ち、非接触センサの測定値が所定の目標値となるように駆動手段を駆動すると、駆動手段は例えば発振を起こすなどしてその動きが不安定になる。結果として、ノズル端の位置制御を精度良く行うことができなくなる。
そこで、本発明では、非接触センサの測定値と変位センサの測定値との何れか一方を駆動手段の目標値として選択してノズル端の位置制御を行うようにした。例えば、ワーク表面に凹部が存在することでノズル端とワーク表面とが離間する場合には、非接触センサの測定値が急激に小さく(又は急激に大きく)なるが、この非接触センサの測定値に代えて変位センサの測定値を駆動手段の目標値として選択できる。即ち、変位センサの測定値が所定の目標値となるように駆動手段が駆動される。これにより、駆動手段は発振を起こすことなく安定して駆動されるため、ノズル端の位置制御を精度良く行うことができ、ワーク表面に一定の幅で液体を線状に塗布することができる。
また、例えばロボットアームの動作によっては、ノズル端とワーク表面とが離間して両者の間隔が非接触センサの測定範囲を超える場合もある。この場合、両者の間隔が非接触センサの測定範囲内に戻るときに、駆動手段の目標値が変位センサの測定値から非接触センサの測定値に略同じ値で切り替えられる。これにより、駆動手段はジャンピングやハンチングを起こすことなく安定して駆動されるため、ノズル端の位置制御を精度良く行うことができ、ワーク表面に一定の幅で液体を線状に塗布することができる。
本発明において、非接触センサは、ノズル端がワーク表面に近接するときに出力が増加する特性を有し、変位センサは、ロボットアームからノズル端が伸長するときに出力が増加する特性を有する場合、非接触センサの測定値と変位センサの測定値のうち大きい値が選択される。これによれば、例えば、ノズル端がワーク表面に近接すると、通常、非接触センサの測定値が変位センサの測定値よりも大きくなるため、非接触センサの測定値が所定の目標値となるように、ロボットアームにノズル端が縮退(退避)される。一方、ノズル端がワーク表面から離間すると、選択した非接触センサの測定値または変位センサの測定値が所定の目標値となるように、ロボットアームからノズル端が伸長される。また、例えばワーク表面に凹部が存すると、ワーク表面からノズル端までの距離が非接触センサの測定可能範囲を超えてしまい、非接触センサの測定値が急激に小さくなることがある。この場合、変位センサの測定値が非接触センサの測定値よりも大きくなり、変位センサの測定値が駆動手段の目標値として選択される。すなわち、非接触センサの測定値ではなく変位センサの測定値が所定の目標値となるように、ロボットアームからノズル端が伸長される。これにより、駆動手段は発振を起こすことなく安定に駆動される。その後、ワーク表面からノズル端までの距離が非接触センサの測定可能範囲内に入り、非接触センサの測定値が変位センサの測定値よりも大きくなると、非接触センサの測定値が駆動手段の目標値として選択される。
また、本発明において、非接触センサは、ノズル端がワーク表面に近接するときに出力が減少する特性を有し、変位センサは、ロボットアームからノズル端が伸長するときに出力が減少する特性を有する場合、非接触センサの測定値と変位センサの測定値のうち小さい値が選択される。これによれば、例えば、ノズル端がワーク表面に近接すると、通常、非接触センサの測定値が変位センサの測定値よりも小さくなるため、非接触センサの測定値が所定の目標値となるように、ロボットアームにノズル端が縮退(退避)される。一方、ノズル端がワーク表面から離間すると、選択した非接触センサの測定値または変位センサの測定値が所定の目標値となるように、ロボットアームからノズル端が伸長される。また、例えばワーク表面に凹部が存すると、ワーク表面からノズル端までの距離が非接触センサの測定可能範囲を超えてしまい、非接触センサの測定値が急激に大きくなることがある。この場合、変位センサの測定値が非接触センサの測定値よりも小さくなり、変位センサの測定値が駆動手段の目標値として選択される。すなわち、非接触センサの測定値ではなく変位センサの測定値が所定の目標値となるように、ロボットアームからノズル端が伸長される。これにより、駆動手段は発振を起こすことなく安定に駆動される。その後、ワーク表面からノズル端までの距離が非接触センサの測定可能範囲内に入り、非接触センサの測定値が変位センサの測定値よりも大きくなると、非接触センサの測定値が駆動手段の目標値として選択される。
本発明において、前記非接触センサの測定値の選択を一時的に停止し、その停止する間、前記変位センサの測定値を基に前記駆動手段を駆動することもできる。
本発明において、前記駆動手段を駆動しながら前記ロボットアームを移動させ、前記駆動手段によりノズル端が変位可能な最大ストロークの中点に位置するノズル端を前記変位センサにより検出し、この検出したノズル端の位置を基準位置として登録することが好ましい。これによれば、登録した基準位置にノズル端を位置させることにより、ノズル端とワーク表面とが近接する方向及び離間する方向の双方においてノズル端の可動量を同等にできるため、上記間隔を一定に制御し得るマージンが向上する。
本発明において、前記ロボットアームの前記ワークに対する相対移動に先立ち、非接触センサのゼロ校正を行うことが好ましい。この場合、ノズル端がワーク表面又は所定の校正板に接触するように前記ロボットアームを一方向に移動させ、接触時の前記非接触センサの出力をゼロに校正すればよい。
本発明において、非接触センサの測定値が選択された場合、駆動手段の駆動量が可動量を超えるか否かを変位センサの測定値に基づいて予測し、可動量を超えると予測された場合、ロボットアームを一方向に移動させながら、駆動手段によりノズル端の位置制御を行うことが好ましい。これによれば、駆動手段の可動量を見かけ上増やすことができる。さらに、ロボットアームを一方向に移動させた後に測定された変位センサの測定値に基づき前記予測を再び行い、可動量を超えると再び予測された場合、前記駆動手段の駆動を中止することが好ましい。この場合、更にエラー発報してもよい。
図1及び図2を参照して、Mは、液体吐出装置であり、この液体吐出装置Mは、図示省略の多関節のロボットと、このロボットの先端ロボットアーム(「ロボットハンド」ともいう)Aに取り付けられる吐出ヘッドHとを備える。
液体吐出装置Mは、ワークWを保持する図示省略の保持部を備え、保持されたワークWの表面たる曲面に対して直交する一方向に後述するノズルが延びるように、図示省略のロボットコントローラによりロボットの各関節の回転及び揺動が制御される。これにより、ワークWの表面形状に追従させて、ロボットアームAひいては後述するノズル吐出口を相対移動できるようになっている。
吐出ヘッドHは、略円筒状のホルダ1と、このホルダ1に駆動手段たるアクチュエータ2を介して設けられた、ホルダ1に対して進退自在なノズル3とで構成されている。ホルダ1の上端部にはロボットアームAの先端形状に対応する係合部11が設けられ、この係合部11をロボットアームA先端に係合させ図示省略のビス等により固定することで、吐出ヘッドHがロボットアームAに取り付けられる。
アクチュエータ2は、ホルダ1に設けられたロッド12に案内されて一方向に移動する2つのリニアモータで構成される。2つのリニアモータ2は連結板21により連結され、この連結板21とノズル3とが一方向に長手でホルダ1の外側に延出する固定板22により固定されている。固定板22には一方向に延びるリニアガイドブロック23が並設され、リニアガイドブロック23がリニアガイド24に係合している。このような構成によれば、リニアモータ2を駆動すると、リニアガイド24で案内されたリニアガイドブロック23に設けられた固定板22が一方向に移動し、ノズル3がホルダ1ひいてはロボットアームAに対して一方向に相対移動する。
また、ホルダ1には、変位センサ4が設けられ、リニアモータ2の一方向の変位量を測定することで、ノズル3(吐出口33)の一方向の変位量を検出できるようになっている。変位センサ4の測定値(出力Gb)は、後述する制御部Cに入力されるようになっている。変位センサ4の出力勾配は、後述する非接触センサの出力勾配と概ね同一に予め設定されている。以下、リニアモータ2の一方向に変位可能な最大ストロークの中点にリニアモータ2が位置する点、即ち、リニアモータ2の駆動により吐出口33がワーク表面に向かう一方向(例えばワーク表面に対して直交する方向)に変位可能な最大ストロークの中点に吐出口33が位置する点を「基準位置(0)」とする。そして、この基準位置に位置する吐出口33が、ロボットアームAから(図中下方に)伸長するときには出力がプラス(+)側となり、ロボットアームAに(図中上方に)縮退するときには出力がマイナス(−)側となる。つまり、本実施形態では、変位センサ4として、ロボットアームAから吐出口33が伸長するときに出力が増加する特性を有するものを用いる。変位センサ4としては、公知の構造を有するものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
ノズル3は、上記固定板22に固定される基部31と、基部31に固定されたヘッド部32と、ヘッド部32先端に設けられた、一方向(例えば、ワーク表面に対して直交する方向)に開口するノズル端たる吐出口33とで構成されている。そして、上記アクチュエータ2の駆動により固定板22が移動すると、基部31が移動する。その結果、吐出口33が一方向でホルダ1ひいてはロボットアームAに対して相対移動する。また、基部31には、図外の液体供給源に通じる供給管34が接続され、供給管34を介して供給された液体が吐出ヘッド32の内部を通って吐出口33から所定流量で吐出できるようになっている。また、基部31の吐出ヘッド32とは反対側には、液体圧送手段31aが設けられている。
吐出口33の近傍には非接触センサ5が並設され、ワークW表面と吐出口33との間隔Gaを測定できるようになっている。非接触センサ5としては、レーザセンサや磁気センサ等の公知のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。本実施形態では、非接触センサ5として、吐出口33がワークW表面に近接するときに出力が増加する特性を有し、測定範囲を外れると出力が負の値(例えば、−10V)に飽和するレーザセンサを用いる。レーザセンサ5の測定値(出力Ga)は、信号線51を介して制御部Cに入力される。制御部Cは、シーケンサ等を備え、レーザセンサ出力Gaと変位センサ出力Gbのうちの大きい値をアクチュエータ2の目標値(FB値)として選択してアクチュエータ2等の作動を統括制御できるようになっている。尚、制御部Cにより、ロボットアームAの作動も併せて制御することが好ましい。以下、図3〜図8を参照して、上記液体吐出装置Mを用いた本実施形態の液体吐出方法について、ワークWをプラスチック製の窓材とし、吐出口33から熱線を形成するための導電性インクをワークW表面に吐出して塗布する場合を例に説明する。
図3に示すように、ワークW表面に対してロボットアームAを相対移動させながら、ワークW表面と吐出口33との距離Gaが目標値Gtになるようにアクチュエータ2を作動させて吐出口33の位置を制御する。なお、図3、5〜8では、説明を分かりやすくするために、ワークW表面を平面で示している。図3中、aは、吐出口33をロボットアームAから伸長させる側(図中下方)のアクチュエータ2の可動量であり、bは、吐出口33をロボットアームAに縮退(退避)させる側(図中上方)のアクチュエータ2の可動量である。
図3に示す例では、間隔Gaを目標値Gtに一致させるために吐出口33を伸長させる量が上記可動量aよりも小さい。このため、アクチュエータ2を駆動して吐出口33を伸長させることで、ワーク表面と吐出口33との間隔Gaを目標値Gtに制御できる。一方、例えばアクチュエータ2がワークW側(+側)に大きく変位している場合には、吐出口33を伸長させる量が上記可動量aを超えることがある。この場合、アクチュエータ2をワークW側の限界まで(可動量aだけ)移動させても、ワーク表面と吐出口33との間隔Gaを目標値Gtに制御できない。そこで、本実施形態では、ロボットアームAを一方向(ワークW側)に移動させながら、アクチュエータ2による吐出口33の位置制御を継続して行う。ロボットアームAを移動させることでアクチュエータ2による吐出口33の可動量を増やすことができるため、ワーク表面と吐出口33との間隔Gaを目標値Gtに制御できるようになる。以下、吐出口33の詳細な位置制御について、図4のフロー並びに図5〜図8の説明図を参照して説明する。
図4に示す液体吐出方法では、先ず、イニシャライズ工程を実行する。本工程では、先ず、ロボットアームAを校正開始位置に移動する(S1)。ここで、校正開始位置とは、校正基準面たるワークW表面と吐出口33との間隔がレーザセンサ5の測定可能範囲を外れている位置をいう。この校正開始位置では、吐出口33を上記基準位置に位置させるようにする。次いで、リニアモータ2の目標値(FB値)を変位センサ出力Gbに固定する(S2)。これにより、図5(a)に示す如く変位センサ出力Gbが目標値Gtとなるようにリニアモータ2を駆動することにより、ロボットアームAから吐出口33が伸長する。次いで、図5(b)に示すように、リニアモータ2を駆動せずに、レーザセンサ5の測定可能範囲に入るまで、ロボットアームAを図示省略の校正基準面に向かう一方向に移動させる(S3)。レーザセンサ5の測定可能範囲内に入った後、ロボットアームAを更に一方向に微速移動させて吐出口33を校正基準面に近づけながら、変位センサ出力Gbをモニタする(S4)。そして、モニタ中の変位センサ出力(電圧値)Gbと目標値Gtの偏差に基づいて、校正基準面への吐出口33の接触を検知する(S5)。接触を検知した後、ロボットアームAを校正基準面から離間する方向に移動させることにより、校正基準面から吐出口33を一旦離間させ(S6)、接触時のレーザセンサ出力Gaを所定値に校正する(S7)。なお、校正基準面から吐出口33を離間させずに、校正を行ってもよい。
次いで、リニアモータ2の目標値(FB値)をレーザセンサ出力Gaに固定する(S8)。これにより、レーザセンサ出力Gaが目標値Gtとなるように、リニアモータ2が駆動される。次いで、このリニアモータ2の駆動を継続しながら、ロボットアームAを校正基準面に向かう一方向に微速移動させると、吐出口33がロボットアームAに縮退(退避)していく。このロボットアームAの微速移動を、図5(c)に示すように、吐出口33が変位可能な最大ストロークの中点に位置することが変位センサ4により検出されるまで行う(S9)。そして、この吐出口33の位置を基準位置として登録し、イニシャライズ工程を終了する。
イニシャライズ工程が終了すると、液体吐出工程を実行する(S10)。本工程では、例えば、ワーク成型時の金型の設計データを教示データとして用いて、上記ロボットコントローラによりロボットアームAをワークW表面の曲面形状に追従させて相対移動させながら、上記制御部Cにより以下のように吐出口33の位置制御を行うと共に、この位置制御された吐出口33から導電性インクを所定流量で吐出する。吐出口33の位置制御では、以下に説明するように、リニアモータ2の目標値として、レーザセンサ出力Gaと変位センサ出力Gbのうち大きい値の方が選択される。
液体吐出工程では、ロボットアームAを初期位置たる基準位置に移動させる。この上記登録された基準位置では、レーザセンサ出力Gaが目標値Gtにされている。ロボットアームAを初期位置から移動させる間、例えば、図6(a)に示すように、吐出口33がワークW表面に近接すると、レーザセンサ出力Gaが変位センサ出力Gbよりも大きくなるため、レーザセンサ出力Gaがリニアモータ2の目標値(FB値)として選択される。これにより、図6(b)に示すように、レーザセンサ出力Gaが目標値Gtとなるようにリニアモータ2が駆動され、ロボットアームAに吐出口33が縮退する。
また、例えば、図7(a)に示すように、吐出口33がワークW表面から離間し、レーザセンサ出力Gaが変位センサ出力Gbよりも大きいと、レーザセンサ出力Gaがリニアモータ2の目標値として選択される。これにより、図7(b)に示すように、レーザセンサ出力Gaが目標値Gtとなるようにリニアモータ2が駆動され、ロボットアームAから吐出口33が伸長する。
また、例えば、ワークW表面に凹部が存在したりロボットアームAの動作によっては、図8(a)に示すように、ワーク表面Wから吐出口33が急激に離間し、両者間の距離がレーザセンサ5の測定可能範囲を超えてしまう。この場合、レーザセンサ出力Gaが著しく小さくなるため、変位センサ出力Gbがレーザセンサ出力Gaよりも大きくなる。このため、変位センサ出力Gbがリニアモータ2の目標値として選択され、ロボットアームAから吐出口33が伸長されるので、リニアモータ2は発振を起こすことなく安定に駆動される。そして、図8(b)に示すように、ワークW表面から吐出口33までの距離がレーザセンサ5の測定可能範囲内に入り、レーザセンサ出力Gaが変位センサ出力Gbよりも大きくなると、レーザセンサ出力Gaがリニアモータ2の目標値として選択される。ここで、変位センサ出力Gbからレーザセンサ出力Gaに切り替わる際、略同じ値で切り替わるため、リニアモータ2のジャンピングやハンチングが生じることを防止できる。尚、両センサ出力Ga,Gbの勾配を同一とし、両センサ出力Ga,Gbの目標値Gtを同一とすることで、両センサ出力Ga,Gb間の切り替えをよりスムーズに行うことができる。その後、図8(c)に示すように、レーザセンサ出力Gaが目標値Gtに一致する。このように、レーザセンサ出力Gaと変位センサ出力Gbのうちの大きい値をリニアモータ2の目標値として選択することにより、吐出口33の位置制御を精度良く行うことができ、ワークW表面に一定の幅で液体を線状に塗布することができる。
ところで、変位センサ出力Gbがプラス側(又はマイナス側)の最大変位量の90%よりも大きい場合、一方向におけるアクチュエータ2(吐出口33)の可動量が小さいので、アクチュエータ2の駆動量(ひいては吐出口33の移動量)が可動量を超えると予測される。この場合、ロボットアームAを一方向に移動させながら、上記の如くアクチュエータ2の目標値Gtを選択して吐出口33の位置制御を行う。これにより、アクチュエータ2の可動量を増やすことができる。尚、ロボットアームAの移動量は、固定量であってもよく、また、変位センサ出力Gbに応じて可変させてもよい。移動量を可変にする場合、アクチュエータ2(吐出口33)の変位量が0になるように(基準位置となるように)ロボットアームAの移動量を決定すれば、一方向における±両側の可動量を同等にでき、吐出口33とワークW表面との間の間隔の制御マージンが向上できてよい。ロボットアームAを一方向に移動させた後、変位センサ出力Gbが最大変位量の90%よりも大きい場合、即ち、アクチュエータ2の駆動量(ひいては吐出口33の移動量)が可動量を超えると再び予測される場合には、例えば、アクチュエータ2の故障や、ワーク表面Wと吐出口33の間隔の変動に対してロボットアームA及びアクチュエータ2の動作が追従できない異常な状態が発生したと判断されるため、アクチュエータ2への通電を中止してゼロ推進状態にする。通電中止と共に、アクチュエータ2のブレーキを作動させてもよい。さらに、エラー発報してオペレータに知らせるようにしてもよい。
また、変位センサ出力Gbがプラス側(又はマイナス側)の最大変位量の98%よりも大きい場合、例えば、変位センサ4の故障や、ワーク表面Wと吐出口33の間隔の変動に対してロボットアームA及びアクチュエータ2の動作が追従できない異常な状態が発生したと判断される。この場合も、アクチュエータ2への通電を中止すると共に、アクチュエータ2のブレーキを作動させることが好ましい。さらに、エラー発報してオペレータに知らせるようにしてもよい。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、レーザセンサ出力Gaと変位センサ出力Gbのうち大きい値をアクチュエータ2の目標値(FB値)として選択する場合について説明したが、吐出口33がワーク表面に近接するときに出力Gaが減少する特性を有するレーザセンサ5と、ロボットアームAから吐出口33が伸長するときに出力Gbが減少する特性を有する変位センサ4を用いる場合、レーザセンサ出力Gaと変位センサ出力Gbのうち小さい値をアクチュエータ2の目標値(FB値)として選択することができる。
この場合、例えば、吐出口33がワーク表面に近接すると、通常、レーザセンサ出力Gaが変位センサ出力Gbよりも小さくなるため、レーザセンサ出力Gaが所定の目標値Gtとなるように、ロボットアームAに吐出口33が縮退(退避)される。一方、吐出口33がワーク表面から離間すると、選択したレーザセンサ出力Gaまたは変位センサ出力Gbが所定の目標値Gtとなるように、ロボットアームAから吐出口33が伸長される。また、例えばワーク表面に凹部が存すると、ワーク表面から吐出口33までの距離がレーザセンサ5の測定可能範囲を超えてしまい、レーザセンサ出力Gaが急激に小さくなることがある。この場合、変位センサ出力Gbがレーザセンサ出力Gaよりも小さくなり、変位センサ出力Gbがアクチュエータ2の目標値(FB値)として選択される。すなわち、レーザセンサ出力Gaではなく変位センサ出力Gbが所定の目標値となるように、ロボットアームAから吐出口33が伸長される。これにより、アクチュエータ2は発振を起こすことなく安定に駆動される。その後、ワーク表面から吐出口33までの距離がレーザセンサ5の測定可能範囲内に入り、レーザセンサ出力Gaが変変位センサ出力Gbよりも大きくなると、レーザセンサ出力Gaがアクチュエータ2の目標値(FB値)として選択される。
また、ノズル3(吐出口33)を移動させる機構としては、上記のように構成されるものに限らず、モータに接続された送りねじと、送りねじに螺合するナット部材と、ナット部材が係合するレール部材とで構成されるものを用いることができる。この場合、モータとして、ロータリエンコーダ内蔵のサーボモータを用いれば、このロータリエンコーダを変位センサに代用することもできる。
また、上記実施形態では、校正基準面をワーク表面とし、このワーク表面に吐出口33を接触させて非接触センサ5のゼロ校正を行っているが、ワークとは別に設けた校正板の表面を校正基準面としてゼロ校正を行ってもよい。
また、ノズル3のロッド31aを案内する案内部材をホルダ1に設け、ノズル3の移動精度を向上させるようにしてもよい。